トロイダル無段変速機および無段変速装置
【課題】押圧装置の押付力に基づくスラスト荷重をコッタで支持する構造において、コッタの薄型化を図ることができるトロイダル型無段変速を提供する。
【解決手段】トロイダル型無段変速機は、入力軸1と、入力軸1に支持されて回転する入力側ディスク2と、入力側ディスク2との間に挟持されるパワーローラ11を介して入力側ディスク2から回転トルクが伝達される出力側ディスクとを備える。入力側ディスク、出力側ディスクおよびパワーローラに押し付け力を付与する押圧装置を備える。押圧装置12により発生するスラスト荷重を入力軸1に設けられたコッタ溝1fに係止された複数の円弧状のコッタ110により支持する。コッタ110には、押圧装置12の反対側となる側面のコッタ溝1fより外周側に入力軸1の外周面に接触した状態の凸部112が設けられている。
【解決手段】トロイダル型無段変速機は、入力軸1と、入力軸1に支持されて回転する入力側ディスク2と、入力側ディスク2との間に挟持されるパワーローラ11を介して入力側ディスク2から回転トルクが伝達される出力側ディスクとを備える。入力側ディスク、出力側ディスクおよびパワーローラに押し付け力を付与する押圧装置を備える。押圧装置12により発生するスラスト荷重を入力軸1に設けられたコッタ溝1fに係止された複数の円弧状のコッタ110により支持する。コッタ110には、押圧装置12の反対側となる側面のコッタ溝1fより外周側に入力軸1の外周面に接触した状態の凸部112が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル無段変速機および、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを組み合わせた無段変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図6および図7に示すように構成されている。図6に示すように、ケーシング50の内側には入力軸(中心軸)1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
【0003】
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
【0004】
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面)2a,2aと出力側ディスク3,3の内側面(凹面)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図7参照)が回転自在に挟持されている。
【0005】
図6中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図6の右面)がローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力を付与する。
【0006】
図7は、図6のA−A線に沿う断面図である。図7に示すように、ケーシング50の内側には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図7においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、支持板部16の長手方向(図7の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
【0007】
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部(第1の軸部)23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部(第2の軸部)23bの周囲には、各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
【0008】
また、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図7の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。各ヨーク23A,23Bは鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、ヨーク23A,23Bの幅方向(図6の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は球状凹面として、球面ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
【0009】
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図7で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
【0010】
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受(スラスト軸受)24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉(以下、転動体という)26,26と、これら各転動体26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
【0011】
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
【0012】
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図7の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(トラニオン軸)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
【0013】
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸1の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
【0014】
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、図7の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動する。
【0015】
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
【0016】
このようなトロイダル型無段変速機においては、動力伝達のために大きな荷重でディスク2,3と、パワーローラ11とを押し付けている。そして、入力軸1の押圧装置12の反対側となるリア側(図中右端部側)の入力側ディスク2は、前記荷重を受けるようにローディングナット9により入力軸1に対して軸方向に位置決め固定されている。
【0017】
また、ローディングナット9に代えて入力軸1のコッタ溝に嵌め込まれたコッタにより入力軸1に対してリア側の入力側ディスク2を位置決め固定することも提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
ローディングナット9ではなく、コッタを使用することで、上記押し付け力を受ける部分の軸方向寸法をコンパクトにすることができるとともに、強度検討の精度を高めることができる。すなわち、大きな押し付け力が作用するので、ローディングナットやコッタについては耐久性について考慮する必要があるが、ローディングナット9よりコッタの方が強度を確保し易い。
【0018】
また、上述のようなトロイダル型無段変速機に遊星歯車式変速機を組み合わせて無段変速装置を構成する事が、従来から提案されている。
図8は、トロイダル型無段変速機101の入力軸1の同軸上に遊星歯車式変速機102を設けた無段変速装置を示すものであるが、遊星歯車式変速機102は一部だけが図示されている。また、図9は、図8のコッタが配置された部分を拡大したものである。
図8および図9に示すように、トロイダル型無段変速機101の基本的構成は、上述のトロイダル型無段変速機と同様であるが、上記例では、出力歯車4を介して入力軸1と並列に配置された出力軸に出力を取り出すようになっていたが、図に示す例では、出力側ディスク3,3の内周側に入力軸1が挿入された状態の円筒状の出力軸41が設けられ、当該出力軸41がトロイダル型無段変速機101のリア側から遊星歯車式変速機102に突出した状態とされるとともにリア側の端部に太陽歯車42が一体に回転可能に設けられている。
【0019】
したがって、リア側の入力側ディスク2は、その内周側に円筒状の出力軸41が配置され、出力軸41の内部に配置された入力軸1に直接的に固定することができない。そして、リア側の入力側ディスク2の内周と出力軸41との間には、ラジアルニードル軸受43が配置されており、出力軸41に対してリア側の入力側ディスク2が回転自在となっている。
【0020】
そして、リア側の入力側ディスク2の背面には遊星歯車式変速機102のキャリア44が入力側ディスク2と一体に回転可能に接合されており、このキャリア44が太陽歯車42よりリア側で入力軸1に位置決め固定されることで、リア側の入力側ディスク2が入力軸1と一体に回転可能とされるとともに、入力軸1に対して軸方向に位置決めさ固定れている。
この位置決め固定に、コッタ103を使用し、このコッタ103により上述のような押圧装置12によるスラスト荷重を受ける構造とすることができる。なお、遊星歯車式変速機102とトロイダル型無段変速機101とを組み合わせるとともに、例えば、周知の低速クラッチと高速クラッチとを備えるギアードニュートラルシステムを用いる場合には、ディスク2,3とパワーローラ11,11とを極めて高い荷重で押し付けることになる。
【0021】
また、無段変速装置の遊星歯車式変速機102は、例えば、入力軸1およびリア側の入力側ディスク2にそれぞれ結合固定された前記キャリア44を備えている。このキャリア44には、伝達軸55により同軸上に前後で一体に回転可能にされた遊星歯車45,46がそれぞれ太陽歯車42および当該太陽歯車42と同軸上に配置される別の太陽歯車54に噛み合った状態で自転可能および公転可能に支持されている。
【0022】
また、キャリア44は、入力側ディスク2に結合固定されるフロント側の支持板47と、リア側の支持板48とを備え、これら支持板47,48の間に一体に回転可能に前後に接合された遊星歯車45,46が回転自在に複数組(例えば、3組もしくは4組)支持されている。
また、キャリア44は、前後の支持板47,48同士を接合した状態に支持する接続壁部が複数組の遊星歯車45,46の間となる伝達軸55部分に形成されるとともに、これら接続壁部の内周側の前後方向の中央部には、入力軸1にキャリア44を一体に回転可能に固定する固定部49が設けられている。
【0023】
この固定部49の部分に前記コッタ103が配置されている。また、入力軸1のコッタ103が配置される部分には、コッタ溝(係止溝)1fが形成されている。なお、コッタ103は、その内周側がコッタ溝1fに嵌め込まれた状態で、外周側が入力軸1の周方向に沿って延出した状態とされるが、コッタ溝1fに後付けされるため、コッタ103は、1つの円環状の部材ではなく、円環を2つもしくは3つに分割した半円弧状や1/3円弧状等の円弧状に形成されており、これらのコッタ103を周方向に並べてコッタ溝1fに嵌め込むことで、コッタ103が概略円環状に配置されることになる。
【0024】
そして、コッタ103の前面側(入力側ディスクに望む側)のコッタ溝1fより外周側に配置される部分がキャリア44の固定部49側の部材に当接し、コッタ103のコッタ溝1f内の内周側の後面側がコッタ溝1fの後側の面に当接した状態となり、入力側ディスク側から後方側への押し付け力に対抗するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2000−205361号公報
【特許文献2】特開2003−343674号公報
【特許文献3】特開2008−2599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
ところで、コッタ103は、上述のように大きな押し付け荷重を支持する必要があることから、軸方向の厚さが大きいことが好ましいが、上述の図8および図9に示す例では、コッタ103の厚みを大きくすると、前後に接合された2つの遊星歯車45,46の間の内周側に配置されるキャリア44の固定部49の軸方向長さ(X)が長くなってしまい、それに伴なって一体とされた2つの遊星歯車45,46どうしの間隔となる軸方向長さ(Y)が長くなってしまう。また、遊星歯車45,46が長くなることでキャリア44も軸方向長さが長くなり、キャリア44の軽量化が阻害される。
【0027】
また、一体の遊星歯車45,46が長くなる(大きくなる)ことで重量が重くなると、遠心力に対して一体の遊星歯車45,46内に配置される軸受56の耐力不足となることが懸念され、軸受56に耐力が要求されることから軸受56においても小型化、軽量化が阻害される。
【0028】
これらのことを考慮すると、コッタ103の軸方向厚さを薄くすることが望まれるが、コッタ103を薄くする場合に以下のような問題がある。
すなわち、コッタ103は、上述のように円弧状の形状を有するので、外周部分に曲げ側から押し付け力が作用した場合に、円弧状のコッタ103の左右両端部より中央部の方が僅かに後となるように僅か倒れた状態(僅かに傾斜した状態)となる。
【0029】
この場合に、円弧状のコッタ103の両端部の間となる中央部の断面図である図10に示すように、円弧状のコッタ103が僅かに後に傾くことにより、コッタ103の中央部では、その外周側部分の前側の側面がキャリア44の固定部49側の部材から僅かに離れ、内周側部分の後側の側面が入力軸1のコッタ溝1fの後側の内側面に接触する。
【0030】
一方の円弧状のコッタ103の左右両端部のうちの一方の端部の断面図である図11に示すように、コッタ103の端部では、その外周側部分の前側の側面が固定部49側の部材に当接し、内周側部分の後側の側面が入力軸1のコッタ溝1fの後側の内側面から離れた状態となる。この状態では、上述の大きな押付力が作用していることから、コッタ103に大きな曲げ応力が生る。この場合に、コッタ103に大きな曲げ応力が生じることで、薄くされたコッタ103が破損する虞が生じることになり、コッタ103を薄くすることが困難となる。
【0031】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、押圧装置の押し付け力で生じるスラスト荷重を支持するコッタを薄くすることによりコッタに大きな曲げ応力が生じるのを防止し、コッタの薄型化を可能とするトロイダル型無段変速機および無段変速装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
前記目的を達成するために、請求項1に記載のトロイダル型無段変速機は、回転トルクが入力される入力軸と、前記入力軸に支持され前記入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、前記入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して当該入力側ディスクから変更可能な変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに押し付け力を付与する押圧装置と、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに対して前記押圧装置の反対側となる位置で、当該押圧装置により発生するスラスト荷重を前記入力軸に設けられた係止溝に係止された複数の円弧状のコッタにより支持するトロイダル型無段変速機において、
前記コッタには、前記押圧装置の反対側となる側面の前記係止溝より外周側に、前記入力軸の外周面に沿って突出するとともに、当該入力軸の外周面に当接する凸部が設けられていることを特徴とする。
【0033】
請求項1に記載の発明においては、円弧状のコッタに前側からスラスト荷重がかかった際に、入力軸の係止溝に内周側が係止された円弧状のコッタの周方向の中央部が両端部より後側に傾くように(倒れるように)力が作用するが、コッタに設けられた凸部が入力軸の外周面に当接していることで、コッタが傾く状態となるのを防止できる。また、コッタが傾斜した場合にスラスト荷重によりコッタの周方向の中央部と端部との間に曲げ応力が生じるが、コッタの傾斜を防止することで、曲げ応力の発生を防止することができる。また、曲げ応力の発生が防止できることにより、コッタの軸方向に沿った厚みを薄くすることが可能となり、コッタが使用される部分の小型化や軽量化を図ることができる。
【0034】
請求項2に記載のトロイダル型無段変速機は、回転トルクが入力される入力軸と、前記入力軸に支持され前記入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、前記入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して当該入力側ディスクから変更可能な変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに押し付け力を付与する押圧装置と、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに対して前記押圧装置の反対側となる位置で、当該押圧装置により発生するスラスト荷重を前記入力軸に設けられた係止溝に係止された複数の円弧状のコッタにより支持するトロイダル型無段変速機において、
前記コッタには、前記押圧装置側を向く側面の周方向の両端部と、前記押圧装置の反対となる側面の周方向の中央部とのうちの少なくとも一方に、他の部材との接触を避ける凹みが形成されていることを特徴とする。
【0035】
請求項2に記載の発明においては、コッタの押圧装置側を向く側面の周方向の両端部に他の部材との接触を避ける凹み(逃げ形状)があることで、上述のように傾いたコッタの両端部がコッタにスラスト荷重を伝動する前側の部材に強く接触することを防止することができる。
また、同様に、コッタの押圧装置の反対側を向く側面の周方向の中央部も例えば係止溝の後側の内側面に他の部材との接触を避ける凹み(逃げ形状)があることで、後ろ側の部材にコッタの中央部が強く接触することを防止することができる。
これらのことから、コッタで大きな曲げ応力が生じるのを防止することができ、例えば、コッタの軸方向に沿った厚さを薄くすることが可能となり、コッタが使用される部分の小型化、軽量化を図ることができる。
【0036】
請求項3に記載のトロイダル型無段変速機は、回転トルクが入力される入力軸と、前記入力軸に支持され前記入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、前記入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して当該入力側ディスクから変更可能な変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに押し付け力を付与する押圧装置と、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに対して前記押圧装置の反対側となる位置で、当該押圧装置により発生するスラスト荷重を前記入力軸に設けられた係止溝に係止された複数の円弧状のコッタにより支持するトロイダル型無段変速機において、
前記コッタには、前記押圧装置側を向く側面の周方向の両端部と、前記押圧装置の反対となる側面の周方向の中央部とのうちの少なくとも一方に、他の部材との接触を避ける凹みが形成され
かつ、前記コッタには、前記押圧装置の反対側となる側面の前記係止溝より外周側に、前記入力軸の外周面に沿って突出するとともに、当該入力軸の外周面に当接する凸部が設けられていることを特徴とする。
【0037】
請求項3に記載の発明においては、請求項1に記載の発明と同様に、前記凸部によりコッタの傾斜を防止できるとともに、コッタが僅かにでも傾斜した場合に、請求項2に記載の発明と同様にコッタに大きな曲げ応力が作用するのを防止できる。したがって、より確実にコッタに大きな曲げ応力が作用するのを防止することができる。
【0038】
請求項4に記載の無段変速装置は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のトロイダル型無段変速機と、遊星歯車式変速機とを組み合わせ、前記遊星歯車式変速機のキャリアが前記入力軸および前記入力側ディスクと一体に回転可能に設けられた無段変速装置において、
前記入力側ディスクを介してキャリアに作用する前記スラスト荷重を前記コッタにより支持することを特徴とする。
【0039】
請求項4に記載の発明においては、トロイダル無段変速機単独よりも大きな前記スラスト荷重を必要とする可能性がある無段変速装置において、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
これにより、コッタの薄型化を図ることが可能となるが、無段変速装置の遊星歯車式変速機では、例えば、キャリアに前後に2つの遊星歯車が一体に回転可能に複数組配置される構成において、当該2つの遊星歯車の間にコッタを配置するものとした際に、コッタの薄型化を図ることで、これら2つの遊星歯車からなる部分の長さを短くして小型化を測ることが可能となる。これにより、これら遊星歯車のベアリング(軸受)に作用する遠心力を低減可能となり、ベアリングを含む遊星歯車の小型軽量化と図ることできる。それに基づいてキャリアの小型軽量化を図ることが可能となり、さらに、遊星歯車式変速機の小型軽量化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0040】
本発明のトロイダル型無段変速機および無段変速装置によれば、コッタによりディスクとパワーローラに付与される押し付け力を受ける場合にコッタに大きな曲げ応力が生じるのを防止することができ、コッタの薄型化を図ることができる。
また、コッタの薄型化によりトロイダル型無段変速機および当該トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを備える無段変速装置の軽量小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態のトロイダル無段変速機を備える無段変速装置を示す要部断面図である。
【図2】前記コッタを示す斜視図である。
【図3】本発明の第2実施形態のトロイダル型無段変速機を備える無段変速装置に設けられるコッタを示す斜視図である。
【図4】第2実施形態のコッタを示す背面側の斜視図である。
【図5】本発明の第3実施形態のトロイダル型無段変速機を備える無段変速装置に設けられるコッタを示す斜視図である。
【図6】従来から知られているハーフトロイダル型無段変速機の具体的構造の一例を示す断面図である。
【図7】図6のA−A線に沿う断面図である。
【図8】前記トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを備えコッタを有する無段変速装置を示す断面図である。
【図9】コッタを有する無段変速装置を示す要部断面図である。
【図10】コッタを有する無段変速装置を示す要部断面図である。
【図11】コッタを有する無段変速装置を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態について説明する。なお、第1実施形態のトロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを備える無段変速機の特徴は、リア側の入力側ディスクにかかる押圧装置の押付力に基づくスラスト荷重をキャリア側でコッタにより支持する際のコッタの構造にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、この実施の形態の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図6から図11と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
【0043】
図1は本発明の第1実施形態のトロイダル無段変速機を備える無段変速装置を示す要部断面図、図2は前記コッタを示す斜視図である。
図1および図2に示すコッタは、図6に示すダブルキャビティ型トロイダル型無段変速機101と遊星歯車式変速機102とを備えた無段変速装置のリア側(図6中の右側)の入力側ディスク2に固定されるとともに入力軸1に固定されてこれら入力側ディスク2と入力軸1と一体に回転するキャリア44のリア側への軸方向移動を規制するようになっている。
【0044】
また、上述のようにキャリア44には、固定部49が設けられ、当該固定部49が入力軸1に対して回転不可となる状態で入力軸1に係合しているとともに、コッタ110により軸方向リア側への移動が規制されている。
そして、コッタ110は、例えば、略半円弧状もしくは、1/3円弧状に形成されている。
また、コッタ110は、その内周側の入力軸1のコッタ溝1fに挿入される先端部が先端側に向うにつれて軸方向に沿った幅が狭くなる概略楔状とされている。
【0045】
また、コッタ110は、押圧装置側(トロイダル型無段変速機101側)を向く前側の側面に、固定部49側の部材に当接する当接面111が設けられている。当該当接面111は、コッタ110の内周側部分を入力軸1に形成されたコッタ溝(係止溝)1fに挿入して、コッタ110がコッタ溝1fに係止された状態では、入力軸1の軸方向に対して直角となる平面となっている。また、コッタ110の前側側面において、当接面111が最も前側に配置された状態となる。
【0046】
この当接面111は、入力軸1の外周面近傍となる径方向位置から外周面より外側となる径方向位置、すなわち、コッタ溝1fより外側に露出している位置まで、コッタ110の前側の側面に、円弧状の当該コッタ110に対応する円弧状で、かつ、帯状に形成されている。
また、コッタ110の後側の側面(押圧装置12の反対側となる側面)には、コッタ溝1fに当該コッタ110の内周側が係止された状態で、円弧状のコッタ110の外周縁から、入力軸1の外周面に対応する位置までの径方向範囲の部分が後側に突出した凸部112となっている。なお、凸部112は、円弧状のコッタ110と、入力軸1の外周面とに対応して円弧状に形成されており、入力軸1のコッタ溝1fに隣接する外周面を覆うように配置されている。すなわち、凸部112は、入力軸1の外周面に沿って押圧装置12の反対側となる方向に突出している。そして、凸部112の内周面が入力軸1の外周面に当接している。
【0047】
また、コッタ110の凸部112より下側、すなわち、入力軸1のコッタ溝1f内に挿入された状態となる部分には、背面側当接面113が設けられている。背面側当接面113は、入力軸1のコッタ溝1fの後側となる内側面1g(押圧装置12側を向く内側面)に当接するようになっている。また、背面側当接面113と、コッタ溝1fの前記内側面1gのうちの背面側当接面113に当接する部分とは、それぞれ、入力軸1の軸方向と直交する平面となっている。
【0048】
そして、背面側当接面113と凸部112の円弧状の内周面とは、略直交した状態となっている。そして、上述のように入力軸1のコッタ溝1fにコッタ110の内周側を係止させた状態では、背面側当接面113がコッタ溝1fのリア側の内側面1gに当接し、凸部112の内周面が入力軸1のコッタ溝1fよりリア側の外周面に当接した状態となっている。
【0049】
これにより、コッタ110の前側からスラスト荷重がかかった場合に、コッタ110が傾斜する(後側に倒れる)ように力がかかった際に、凸部112の内周面が入力軸1の外周面に当接していることにより、コッタ110の傾斜が防止されることになる。これにより、コッタ110の前面側の当接面111の周方向の左右両端部だけが固定部49側の部材に当接して、前側から押されるとともに、コッタ110の背面側の背面側当接面113の中央部だけがコッタ溝1fの内側面1gに当接する状態となるのを防止することできる。
【0050】
これにより、コッタ110に大きな曲げ応力がかかるのを防止することができる。したがって、コッタ110の薄型化を図ることができ、この場合にキャリア44に支持される遊星歯車45,46の長さを短くして軽量化を図ることが可能となる。すなわち、図9に示した固定部49の長さ(X)や、2つの遊星歯車45,46を一体に接続する伝達軸55の部分の長さ(Y)を短くすることができる。
これにより、遊星歯車45,46の軸受56にかかる遠心力を低減することが可能となり、軸受56の軽量化を図ることも可能となる。また、キャリア44の軸方向長さも短くなる。これらのことから、無段変速装置の遊星歯車式変速機102の小型軽量化を図ることが可能となり、無段変速装置のコンパクト化を図ることができる。
【0051】
なお、コッタ110の凸部112の部分においては、コッタ110が後側に向かって突出することで、軸方向長さが長くなるが、コッタ110の前側の構造は、従来のコッタ103と同様とすることができるので、コッタ110の後側のスラスト荷重がかからない部分に配置される部材の形状を凸部112を逃げるように凸部112を避けた形状とすること、すなわち、凸部112に対応する凹部を備える形状とすれば、凸部112によって、キャリア44の固定部49が軸方向に長くなることがない。
【0052】
図3は本発明の第2実施形態のトロイダル型無段変速機を備える無段変速装置に設けられるコッタを示す斜視図、図4は第2実施形態のコッタを示す背面側の斜視図である。
第2実施形態のトロイダル型無段変速機101と遊星歯車式変速機102を備える無段変速装置は、コッタ120以外の構成が基本的に第1実施形態の無段変速装置と同様となっている。
【0053】
この例のコッタ120は、前面側に第1実施形態のコッタ110と略同様の当接面121を備えるとともに背面側に、背面側当接面123を備える。コッタ120の背面側には、第1実施形態の凸部112が形成されておらず、背面側当接面123は、第1実施形態のコッタ110の背面側当接面113を外周側まで平面状に広げた形状となっている。
そして、コッタ120の当接面121の左右両端部には、それぞれ、当接面121の端に向うほど後側に後退するテーパー面が設けられることで、当接面121に対して凹んだ状態の切欠部(凹み)125が設けられている。
【0054】
また、背面側当接面123の周方向の中央部には、径方向に沿って溝状の凹みである凹部(凹み)126が形成されている。
第2実施形態では、第1実施形態のようにコッタ110の倒れ防止のための凸部112が形成されておらず、従来と同様にコッタ110の両端部に対して中央側が僅かに後側となるように傾斜した状態(僅かに倒れた状態)となるが、この際に、コッタ120の前側でコッタ120の当接面121に当接する部材に対して、コッタ120の当接面121の両端部に後側に凹んだ状態となる切欠部125があることにより、コッタ120の左右両端部は、前側の部材に当接しない状態となる。これにより、コッタ120の当接面121のうち前側の部材に当接するのは、当接面121の両端部より内側の部分となる。
【0055】
また、コッタ120の背面側当接面123の中央部に凹部126が形成されているので、コッタ120の背面側当接面123の中央部は、入力軸1のコッタ溝1fの後側内側面1gに当接せず、その左右両側の部分が後側内側面1gに当接することになる。
これらのことから、従来、コッタ103の前側側面の両端部と、後側側面の中央部が他の部材に当接して押圧された状態に比較して、曲げ応力の発生を抑制することが可能となる。すなわち、大きな曲げ応力の発生を防止できることから、コッタ120の薄型化を図ることが可能となり、第1実施例の場合と同様に無段変速装置のコンパクト化を図ることができる。なお、切欠部125および凹部126のうちの一方だけを設ける構成としてもよく、この場合も曲げ応力の低減を図ることができる。
【0056】
図5は、本発明の第3実施形態のトロイダル型無段変速機を備える無段変速装置に設けられるコッタを示す斜視図である。なお、第3実施形態の無段変速装置は、第1実施形態に対してコッタ130の形状が異なる以外は、同じ構成となっている。
そして、第3実施形態のコッタ130は、第1実施形態のコッタ110の構成と、第2実施形態のコッタ120の構成とを合わせた構成を有するものとなっている。
【0057】
すなわち、第3実施形態のコッタ130には、第1実施形態のコッタ110の凸部112と同様の凸部132を備えるとともに、第2実施形態のコッタ120と切欠部125および凹部126と同様の凹みとしての切欠部135および凹部(図示略)を備える。
また、凸部132は、コッタ130の背面側当接面133の外周側に形成されて後方側に円弧状に突出するものであり、入力軸1のコッタ溝1fの後側の外周面に当接するように形成されている。
また、切欠部135は、コッタ130の前側の当接面131の両端部に上述のテーパー面を設けるように形成されている。
また、前記凹部は、凸部132の内周側となる背面側当接面133の中央部に径方向に沿った溝状に形成されている。
【0058】
第3実施形態のコッタ130においては、凸部132によりコッタ130の上述の倒れによる僅かな傾斜が第1実施形態の場合と同様に防止されるとともに、僅かに傾斜傾向となった場合も切欠部135と前記凹部とにより第2実施形態の場合と同様に大きな曲げ応力の発生が防止される。
したがって、第3実施形態においては、コッタ130の更なる薄型化が可能となり、無段変速装置のコンパクト化を図ることができる。
【0059】
なお、第1実施形態から第3実施形態においては、トロイダル型無段変速機101に遊星歯車式変速機102を組み合わせ、リア側の入力側ディスク2および入力軸1と一体に回転可能なキャリア44にかかる前記スラスト荷重を受ける構成としたが、入力側ディスク2の背面側部分にコッタを接触するように配置してもよい。この場合に、トロイダル型無段変速機101のリア側に遊星歯車式変速機102を同軸上に直結した状態の無段変速装置だけではなく、トロイダル型無段変速機101と遊星歯車式変速機102とを並列に備える無段変速装置や、遊星歯車式変速機102を持たないトロイダル型無段変速機101などに本発明を適用できる。
また、押圧装置12の押し付け力に基づくスラスト荷重を受ける部材ならば入力側ディスク2以外の部材であっても本発明のコッタによりスラスト荷重を支持する構造とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、シングルキャビティ型やダブルキャビティ型などの様々なハーフトロイダル型無段変速機や、トラニオンが無いフルトロイダル型無段変速機や、遊星歯車式変速機とハーフトロイダル型無段変速機を用いた無段変速装置の他、遊星歯車式変速機とフルトロイダル型無段変速機を用いた無段変速装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 入力軸
1f コッタ溝(係止溝)
2 入力側ディスク
3 出力側ディスク
11 パワーローラ
12 押圧装置
110 コッタ
112 凸部
120 コッタ
125 切欠部(凹み)
126 凹部(凹み)
130 コッタ
133 凸部
135 切欠部(凹み)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル無段変速機および、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを組み合わせた無段変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図6および図7に示すように構成されている。図6に示すように、ケーシング50の内側には入力軸(中心軸)1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
【0003】
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
【0004】
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面)2a,2aと出力側ディスク3,3の内側面(凹面)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図7参照)が回転自在に挟持されている。
【0005】
図6中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図6の右面)がローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力を付与する。
【0006】
図7は、図6のA−A線に沿う断面図である。図7に示すように、ケーシング50の内側には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図7においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、支持板部16の長手方向(図7の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
【0007】
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部(第1の軸部)23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部(第2の軸部)23bの周囲には、各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
【0008】
また、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図7の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。各ヨーク23A,23Bは鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、ヨーク23A,23Bの幅方向(図6の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は球状凹面として、球面ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
【0009】
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図7で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
【0010】
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受(スラスト軸受)24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉(以下、転動体という)26,26と、これら各転動体26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
【0011】
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
【0012】
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図7の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(トラニオン軸)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
【0013】
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸1の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
【0014】
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、図7の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動する。
【0015】
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
【0016】
このようなトロイダル型無段変速機においては、動力伝達のために大きな荷重でディスク2,3と、パワーローラ11とを押し付けている。そして、入力軸1の押圧装置12の反対側となるリア側(図中右端部側)の入力側ディスク2は、前記荷重を受けるようにローディングナット9により入力軸1に対して軸方向に位置決め固定されている。
【0017】
また、ローディングナット9に代えて入力軸1のコッタ溝に嵌め込まれたコッタにより入力軸1に対してリア側の入力側ディスク2を位置決め固定することも提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
ローディングナット9ではなく、コッタを使用することで、上記押し付け力を受ける部分の軸方向寸法をコンパクトにすることができるとともに、強度検討の精度を高めることができる。すなわち、大きな押し付け力が作用するので、ローディングナットやコッタについては耐久性について考慮する必要があるが、ローディングナット9よりコッタの方が強度を確保し易い。
【0018】
また、上述のようなトロイダル型無段変速機に遊星歯車式変速機を組み合わせて無段変速装置を構成する事が、従来から提案されている。
図8は、トロイダル型無段変速機101の入力軸1の同軸上に遊星歯車式変速機102を設けた無段変速装置を示すものであるが、遊星歯車式変速機102は一部だけが図示されている。また、図9は、図8のコッタが配置された部分を拡大したものである。
図8および図9に示すように、トロイダル型無段変速機101の基本的構成は、上述のトロイダル型無段変速機と同様であるが、上記例では、出力歯車4を介して入力軸1と並列に配置された出力軸に出力を取り出すようになっていたが、図に示す例では、出力側ディスク3,3の内周側に入力軸1が挿入された状態の円筒状の出力軸41が設けられ、当該出力軸41がトロイダル型無段変速機101のリア側から遊星歯車式変速機102に突出した状態とされるとともにリア側の端部に太陽歯車42が一体に回転可能に設けられている。
【0019】
したがって、リア側の入力側ディスク2は、その内周側に円筒状の出力軸41が配置され、出力軸41の内部に配置された入力軸1に直接的に固定することができない。そして、リア側の入力側ディスク2の内周と出力軸41との間には、ラジアルニードル軸受43が配置されており、出力軸41に対してリア側の入力側ディスク2が回転自在となっている。
【0020】
そして、リア側の入力側ディスク2の背面には遊星歯車式変速機102のキャリア44が入力側ディスク2と一体に回転可能に接合されており、このキャリア44が太陽歯車42よりリア側で入力軸1に位置決め固定されることで、リア側の入力側ディスク2が入力軸1と一体に回転可能とされるとともに、入力軸1に対して軸方向に位置決めさ固定れている。
この位置決め固定に、コッタ103を使用し、このコッタ103により上述のような押圧装置12によるスラスト荷重を受ける構造とすることができる。なお、遊星歯車式変速機102とトロイダル型無段変速機101とを組み合わせるとともに、例えば、周知の低速クラッチと高速クラッチとを備えるギアードニュートラルシステムを用いる場合には、ディスク2,3とパワーローラ11,11とを極めて高い荷重で押し付けることになる。
【0021】
また、無段変速装置の遊星歯車式変速機102は、例えば、入力軸1およびリア側の入力側ディスク2にそれぞれ結合固定された前記キャリア44を備えている。このキャリア44には、伝達軸55により同軸上に前後で一体に回転可能にされた遊星歯車45,46がそれぞれ太陽歯車42および当該太陽歯車42と同軸上に配置される別の太陽歯車54に噛み合った状態で自転可能および公転可能に支持されている。
【0022】
また、キャリア44は、入力側ディスク2に結合固定されるフロント側の支持板47と、リア側の支持板48とを備え、これら支持板47,48の間に一体に回転可能に前後に接合された遊星歯車45,46が回転自在に複数組(例えば、3組もしくは4組)支持されている。
また、キャリア44は、前後の支持板47,48同士を接合した状態に支持する接続壁部が複数組の遊星歯車45,46の間となる伝達軸55部分に形成されるとともに、これら接続壁部の内周側の前後方向の中央部には、入力軸1にキャリア44を一体に回転可能に固定する固定部49が設けられている。
【0023】
この固定部49の部分に前記コッタ103が配置されている。また、入力軸1のコッタ103が配置される部分には、コッタ溝(係止溝)1fが形成されている。なお、コッタ103は、その内周側がコッタ溝1fに嵌め込まれた状態で、外周側が入力軸1の周方向に沿って延出した状態とされるが、コッタ溝1fに後付けされるため、コッタ103は、1つの円環状の部材ではなく、円環を2つもしくは3つに分割した半円弧状や1/3円弧状等の円弧状に形成されており、これらのコッタ103を周方向に並べてコッタ溝1fに嵌め込むことで、コッタ103が概略円環状に配置されることになる。
【0024】
そして、コッタ103の前面側(入力側ディスクに望む側)のコッタ溝1fより外周側に配置される部分がキャリア44の固定部49側の部材に当接し、コッタ103のコッタ溝1f内の内周側の後面側がコッタ溝1fの後側の面に当接した状態となり、入力側ディスク側から後方側への押し付け力に対抗するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2000−205361号公報
【特許文献2】特開2003−343674号公報
【特許文献3】特開2008−2599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
ところで、コッタ103は、上述のように大きな押し付け荷重を支持する必要があることから、軸方向の厚さが大きいことが好ましいが、上述の図8および図9に示す例では、コッタ103の厚みを大きくすると、前後に接合された2つの遊星歯車45,46の間の内周側に配置されるキャリア44の固定部49の軸方向長さ(X)が長くなってしまい、それに伴なって一体とされた2つの遊星歯車45,46どうしの間隔となる軸方向長さ(Y)が長くなってしまう。また、遊星歯車45,46が長くなることでキャリア44も軸方向長さが長くなり、キャリア44の軽量化が阻害される。
【0027】
また、一体の遊星歯車45,46が長くなる(大きくなる)ことで重量が重くなると、遠心力に対して一体の遊星歯車45,46内に配置される軸受56の耐力不足となることが懸念され、軸受56に耐力が要求されることから軸受56においても小型化、軽量化が阻害される。
【0028】
これらのことを考慮すると、コッタ103の軸方向厚さを薄くすることが望まれるが、コッタ103を薄くする場合に以下のような問題がある。
すなわち、コッタ103は、上述のように円弧状の形状を有するので、外周部分に曲げ側から押し付け力が作用した場合に、円弧状のコッタ103の左右両端部より中央部の方が僅かに後となるように僅か倒れた状態(僅かに傾斜した状態)となる。
【0029】
この場合に、円弧状のコッタ103の両端部の間となる中央部の断面図である図10に示すように、円弧状のコッタ103が僅かに後に傾くことにより、コッタ103の中央部では、その外周側部分の前側の側面がキャリア44の固定部49側の部材から僅かに離れ、内周側部分の後側の側面が入力軸1のコッタ溝1fの後側の内側面に接触する。
【0030】
一方の円弧状のコッタ103の左右両端部のうちの一方の端部の断面図である図11に示すように、コッタ103の端部では、その外周側部分の前側の側面が固定部49側の部材に当接し、内周側部分の後側の側面が入力軸1のコッタ溝1fの後側の内側面から離れた状態となる。この状態では、上述の大きな押付力が作用していることから、コッタ103に大きな曲げ応力が生る。この場合に、コッタ103に大きな曲げ応力が生じることで、薄くされたコッタ103が破損する虞が生じることになり、コッタ103を薄くすることが困難となる。
【0031】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、押圧装置の押し付け力で生じるスラスト荷重を支持するコッタを薄くすることによりコッタに大きな曲げ応力が生じるのを防止し、コッタの薄型化を可能とするトロイダル型無段変速機および無段変速装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
前記目的を達成するために、請求項1に記載のトロイダル型無段変速機は、回転トルクが入力される入力軸と、前記入力軸に支持され前記入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、前記入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して当該入力側ディスクから変更可能な変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに押し付け力を付与する押圧装置と、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに対して前記押圧装置の反対側となる位置で、当該押圧装置により発生するスラスト荷重を前記入力軸に設けられた係止溝に係止された複数の円弧状のコッタにより支持するトロイダル型無段変速機において、
前記コッタには、前記押圧装置の反対側となる側面の前記係止溝より外周側に、前記入力軸の外周面に沿って突出するとともに、当該入力軸の外周面に当接する凸部が設けられていることを特徴とする。
【0033】
請求項1に記載の発明においては、円弧状のコッタに前側からスラスト荷重がかかった際に、入力軸の係止溝に内周側が係止された円弧状のコッタの周方向の中央部が両端部より後側に傾くように(倒れるように)力が作用するが、コッタに設けられた凸部が入力軸の外周面に当接していることで、コッタが傾く状態となるのを防止できる。また、コッタが傾斜した場合にスラスト荷重によりコッタの周方向の中央部と端部との間に曲げ応力が生じるが、コッタの傾斜を防止することで、曲げ応力の発生を防止することができる。また、曲げ応力の発生が防止できることにより、コッタの軸方向に沿った厚みを薄くすることが可能となり、コッタが使用される部分の小型化や軽量化を図ることができる。
【0034】
請求項2に記載のトロイダル型無段変速機は、回転トルクが入力される入力軸と、前記入力軸に支持され前記入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、前記入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して当該入力側ディスクから変更可能な変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに押し付け力を付与する押圧装置と、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに対して前記押圧装置の反対側となる位置で、当該押圧装置により発生するスラスト荷重を前記入力軸に設けられた係止溝に係止された複数の円弧状のコッタにより支持するトロイダル型無段変速機において、
前記コッタには、前記押圧装置側を向く側面の周方向の両端部と、前記押圧装置の反対となる側面の周方向の中央部とのうちの少なくとも一方に、他の部材との接触を避ける凹みが形成されていることを特徴とする。
【0035】
請求項2に記載の発明においては、コッタの押圧装置側を向く側面の周方向の両端部に他の部材との接触を避ける凹み(逃げ形状)があることで、上述のように傾いたコッタの両端部がコッタにスラスト荷重を伝動する前側の部材に強く接触することを防止することができる。
また、同様に、コッタの押圧装置の反対側を向く側面の周方向の中央部も例えば係止溝の後側の内側面に他の部材との接触を避ける凹み(逃げ形状)があることで、後ろ側の部材にコッタの中央部が強く接触することを防止することができる。
これらのことから、コッタで大きな曲げ応力が生じるのを防止することができ、例えば、コッタの軸方向に沿った厚さを薄くすることが可能となり、コッタが使用される部分の小型化、軽量化を図ることができる。
【0036】
請求項3に記載のトロイダル型無段変速機は、回転トルクが入力される入力軸と、前記入力軸に支持され前記入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、前記入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して当該入力側ディスクから変更可能な変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに押し付け力を付与する押圧装置と、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに対して前記押圧装置の反対側となる位置で、当該押圧装置により発生するスラスト荷重を前記入力軸に設けられた係止溝に係止された複数の円弧状のコッタにより支持するトロイダル型無段変速機において、
前記コッタには、前記押圧装置側を向く側面の周方向の両端部と、前記押圧装置の反対となる側面の周方向の中央部とのうちの少なくとも一方に、他の部材との接触を避ける凹みが形成され
かつ、前記コッタには、前記押圧装置の反対側となる側面の前記係止溝より外周側に、前記入力軸の外周面に沿って突出するとともに、当該入力軸の外周面に当接する凸部が設けられていることを特徴とする。
【0037】
請求項3に記載の発明においては、請求項1に記載の発明と同様に、前記凸部によりコッタの傾斜を防止できるとともに、コッタが僅かにでも傾斜した場合に、請求項2に記載の発明と同様にコッタに大きな曲げ応力が作用するのを防止できる。したがって、より確実にコッタに大きな曲げ応力が作用するのを防止することができる。
【0038】
請求項4に記載の無段変速装置は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のトロイダル型無段変速機と、遊星歯車式変速機とを組み合わせ、前記遊星歯車式変速機のキャリアが前記入力軸および前記入力側ディスクと一体に回転可能に設けられた無段変速装置において、
前記入力側ディスクを介してキャリアに作用する前記スラスト荷重を前記コッタにより支持することを特徴とする。
【0039】
請求項4に記載の発明においては、トロイダル無段変速機単独よりも大きな前記スラスト荷重を必要とする可能性がある無段変速装置において、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
これにより、コッタの薄型化を図ることが可能となるが、無段変速装置の遊星歯車式変速機では、例えば、キャリアに前後に2つの遊星歯車が一体に回転可能に複数組配置される構成において、当該2つの遊星歯車の間にコッタを配置するものとした際に、コッタの薄型化を図ることで、これら2つの遊星歯車からなる部分の長さを短くして小型化を測ることが可能となる。これにより、これら遊星歯車のベアリング(軸受)に作用する遠心力を低減可能となり、ベアリングを含む遊星歯車の小型軽量化と図ることできる。それに基づいてキャリアの小型軽量化を図ることが可能となり、さらに、遊星歯車式変速機の小型軽量化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0040】
本発明のトロイダル型無段変速機および無段変速装置によれば、コッタによりディスクとパワーローラに付与される押し付け力を受ける場合にコッタに大きな曲げ応力が生じるのを防止することができ、コッタの薄型化を図ることができる。
また、コッタの薄型化によりトロイダル型無段変速機および当該トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを備える無段変速装置の軽量小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態のトロイダル無段変速機を備える無段変速装置を示す要部断面図である。
【図2】前記コッタを示す斜視図である。
【図3】本発明の第2実施形態のトロイダル型無段変速機を備える無段変速装置に設けられるコッタを示す斜視図である。
【図4】第2実施形態のコッタを示す背面側の斜視図である。
【図5】本発明の第3実施形態のトロイダル型無段変速機を備える無段変速装置に設けられるコッタを示す斜視図である。
【図6】従来から知られているハーフトロイダル型無段変速機の具体的構造の一例を示す断面図である。
【図7】図6のA−A線に沿う断面図である。
【図8】前記トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを備えコッタを有する無段変速装置を示す断面図である。
【図9】コッタを有する無段変速装置を示す要部断面図である。
【図10】コッタを有する無段変速装置を示す要部断面図である。
【図11】コッタを有する無段変速装置を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態について説明する。なお、第1実施形態のトロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを備える無段変速機の特徴は、リア側の入力側ディスクにかかる押圧装置の押付力に基づくスラスト荷重をキャリア側でコッタにより支持する際のコッタの構造にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、この実施の形態の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図6から図11と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
【0043】
図1は本発明の第1実施形態のトロイダル無段変速機を備える無段変速装置を示す要部断面図、図2は前記コッタを示す斜視図である。
図1および図2に示すコッタは、図6に示すダブルキャビティ型トロイダル型無段変速機101と遊星歯車式変速機102とを備えた無段変速装置のリア側(図6中の右側)の入力側ディスク2に固定されるとともに入力軸1に固定されてこれら入力側ディスク2と入力軸1と一体に回転するキャリア44のリア側への軸方向移動を規制するようになっている。
【0044】
また、上述のようにキャリア44には、固定部49が設けられ、当該固定部49が入力軸1に対して回転不可となる状態で入力軸1に係合しているとともに、コッタ110により軸方向リア側への移動が規制されている。
そして、コッタ110は、例えば、略半円弧状もしくは、1/3円弧状に形成されている。
また、コッタ110は、その内周側の入力軸1のコッタ溝1fに挿入される先端部が先端側に向うにつれて軸方向に沿った幅が狭くなる概略楔状とされている。
【0045】
また、コッタ110は、押圧装置側(トロイダル型無段変速機101側)を向く前側の側面に、固定部49側の部材に当接する当接面111が設けられている。当該当接面111は、コッタ110の内周側部分を入力軸1に形成されたコッタ溝(係止溝)1fに挿入して、コッタ110がコッタ溝1fに係止された状態では、入力軸1の軸方向に対して直角となる平面となっている。また、コッタ110の前側側面において、当接面111が最も前側に配置された状態となる。
【0046】
この当接面111は、入力軸1の外周面近傍となる径方向位置から外周面より外側となる径方向位置、すなわち、コッタ溝1fより外側に露出している位置まで、コッタ110の前側の側面に、円弧状の当該コッタ110に対応する円弧状で、かつ、帯状に形成されている。
また、コッタ110の後側の側面(押圧装置12の反対側となる側面)には、コッタ溝1fに当該コッタ110の内周側が係止された状態で、円弧状のコッタ110の外周縁から、入力軸1の外周面に対応する位置までの径方向範囲の部分が後側に突出した凸部112となっている。なお、凸部112は、円弧状のコッタ110と、入力軸1の外周面とに対応して円弧状に形成されており、入力軸1のコッタ溝1fに隣接する外周面を覆うように配置されている。すなわち、凸部112は、入力軸1の外周面に沿って押圧装置12の反対側となる方向に突出している。そして、凸部112の内周面が入力軸1の外周面に当接している。
【0047】
また、コッタ110の凸部112より下側、すなわち、入力軸1のコッタ溝1f内に挿入された状態となる部分には、背面側当接面113が設けられている。背面側当接面113は、入力軸1のコッタ溝1fの後側となる内側面1g(押圧装置12側を向く内側面)に当接するようになっている。また、背面側当接面113と、コッタ溝1fの前記内側面1gのうちの背面側当接面113に当接する部分とは、それぞれ、入力軸1の軸方向と直交する平面となっている。
【0048】
そして、背面側当接面113と凸部112の円弧状の内周面とは、略直交した状態となっている。そして、上述のように入力軸1のコッタ溝1fにコッタ110の内周側を係止させた状態では、背面側当接面113がコッタ溝1fのリア側の内側面1gに当接し、凸部112の内周面が入力軸1のコッタ溝1fよりリア側の外周面に当接した状態となっている。
【0049】
これにより、コッタ110の前側からスラスト荷重がかかった場合に、コッタ110が傾斜する(後側に倒れる)ように力がかかった際に、凸部112の内周面が入力軸1の外周面に当接していることにより、コッタ110の傾斜が防止されることになる。これにより、コッタ110の前面側の当接面111の周方向の左右両端部だけが固定部49側の部材に当接して、前側から押されるとともに、コッタ110の背面側の背面側当接面113の中央部だけがコッタ溝1fの内側面1gに当接する状態となるのを防止することできる。
【0050】
これにより、コッタ110に大きな曲げ応力がかかるのを防止することができる。したがって、コッタ110の薄型化を図ることができ、この場合にキャリア44に支持される遊星歯車45,46の長さを短くして軽量化を図ることが可能となる。すなわち、図9に示した固定部49の長さ(X)や、2つの遊星歯車45,46を一体に接続する伝達軸55の部分の長さ(Y)を短くすることができる。
これにより、遊星歯車45,46の軸受56にかかる遠心力を低減することが可能となり、軸受56の軽量化を図ることも可能となる。また、キャリア44の軸方向長さも短くなる。これらのことから、無段変速装置の遊星歯車式変速機102の小型軽量化を図ることが可能となり、無段変速装置のコンパクト化を図ることができる。
【0051】
なお、コッタ110の凸部112の部分においては、コッタ110が後側に向かって突出することで、軸方向長さが長くなるが、コッタ110の前側の構造は、従来のコッタ103と同様とすることができるので、コッタ110の後側のスラスト荷重がかからない部分に配置される部材の形状を凸部112を逃げるように凸部112を避けた形状とすること、すなわち、凸部112に対応する凹部を備える形状とすれば、凸部112によって、キャリア44の固定部49が軸方向に長くなることがない。
【0052】
図3は本発明の第2実施形態のトロイダル型無段変速機を備える無段変速装置に設けられるコッタを示す斜視図、図4は第2実施形態のコッタを示す背面側の斜視図である。
第2実施形態のトロイダル型無段変速機101と遊星歯車式変速機102を備える無段変速装置は、コッタ120以外の構成が基本的に第1実施形態の無段変速装置と同様となっている。
【0053】
この例のコッタ120は、前面側に第1実施形態のコッタ110と略同様の当接面121を備えるとともに背面側に、背面側当接面123を備える。コッタ120の背面側には、第1実施形態の凸部112が形成されておらず、背面側当接面123は、第1実施形態のコッタ110の背面側当接面113を外周側まで平面状に広げた形状となっている。
そして、コッタ120の当接面121の左右両端部には、それぞれ、当接面121の端に向うほど後側に後退するテーパー面が設けられることで、当接面121に対して凹んだ状態の切欠部(凹み)125が設けられている。
【0054】
また、背面側当接面123の周方向の中央部には、径方向に沿って溝状の凹みである凹部(凹み)126が形成されている。
第2実施形態では、第1実施形態のようにコッタ110の倒れ防止のための凸部112が形成されておらず、従来と同様にコッタ110の両端部に対して中央側が僅かに後側となるように傾斜した状態(僅かに倒れた状態)となるが、この際に、コッタ120の前側でコッタ120の当接面121に当接する部材に対して、コッタ120の当接面121の両端部に後側に凹んだ状態となる切欠部125があることにより、コッタ120の左右両端部は、前側の部材に当接しない状態となる。これにより、コッタ120の当接面121のうち前側の部材に当接するのは、当接面121の両端部より内側の部分となる。
【0055】
また、コッタ120の背面側当接面123の中央部に凹部126が形成されているので、コッタ120の背面側当接面123の中央部は、入力軸1のコッタ溝1fの後側内側面1gに当接せず、その左右両側の部分が後側内側面1gに当接することになる。
これらのことから、従来、コッタ103の前側側面の両端部と、後側側面の中央部が他の部材に当接して押圧された状態に比較して、曲げ応力の発生を抑制することが可能となる。すなわち、大きな曲げ応力の発生を防止できることから、コッタ120の薄型化を図ることが可能となり、第1実施例の場合と同様に無段変速装置のコンパクト化を図ることができる。なお、切欠部125および凹部126のうちの一方だけを設ける構成としてもよく、この場合も曲げ応力の低減を図ることができる。
【0056】
図5は、本発明の第3実施形態のトロイダル型無段変速機を備える無段変速装置に設けられるコッタを示す斜視図である。なお、第3実施形態の無段変速装置は、第1実施形態に対してコッタ130の形状が異なる以外は、同じ構成となっている。
そして、第3実施形態のコッタ130は、第1実施形態のコッタ110の構成と、第2実施形態のコッタ120の構成とを合わせた構成を有するものとなっている。
【0057】
すなわち、第3実施形態のコッタ130には、第1実施形態のコッタ110の凸部112と同様の凸部132を備えるとともに、第2実施形態のコッタ120と切欠部125および凹部126と同様の凹みとしての切欠部135および凹部(図示略)を備える。
また、凸部132は、コッタ130の背面側当接面133の外周側に形成されて後方側に円弧状に突出するものであり、入力軸1のコッタ溝1fの後側の外周面に当接するように形成されている。
また、切欠部135は、コッタ130の前側の当接面131の両端部に上述のテーパー面を設けるように形成されている。
また、前記凹部は、凸部132の内周側となる背面側当接面133の中央部に径方向に沿った溝状に形成されている。
【0058】
第3実施形態のコッタ130においては、凸部132によりコッタ130の上述の倒れによる僅かな傾斜が第1実施形態の場合と同様に防止されるとともに、僅かに傾斜傾向となった場合も切欠部135と前記凹部とにより第2実施形態の場合と同様に大きな曲げ応力の発生が防止される。
したがって、第3実施形態においては、コッタ130の更なる薄型化が可能となり、無段変速装置のコンパクト化を図ることができる。
【0059】
なお、第1実施形態から第3実施形態においては、トロイダル型無段変速機101に遊星歯車式変速機102を組み合わせ、リア側の入力側ディスク2および入力軸1と一体に回転可能なキャリア44にかかる前記スラスト荷重を受ける構成としたが、入力側ディスク2の背面側部分にコッタを接触するように配置してもよい。この場合に、トロイダル型無段変速機101のリア側に遊星歯車式変速機102を同軸上に直結した状態の無段変速装置だけではなく、トロイダル型無段変速機101と遊星歯車式変速機102とを並列に備える無段変速装置や、遊星歯車式変速機102を持たないトロイダル型無段変速機101などに本発明を適用できる。
また、押圧装置12の押し付け力に基づくスラスト荷重を受ける部材ならば入力側ディスク2以外の部材であっても本発明のコッタによりスラスト荷重を支持する構造とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、シングルキャビティ型やダブルキャビティ型などの様々なハーフトロイダル型無段変速機や、トラニオンが無いフルトロイダル型無段変速機や、遊星歯車式変速機とハーフトロイダル型無段変速機を用いた無段変速装置の他、遊星歯車式変速機とフルトロイダル型無段変速機を用いた無段変速装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 入力軸
1f コッタ溝(係止溝)
2 入力側ディスク
3 出力側ディスク
11 パワーローラ
12 押圧装置
110 コッタ
112 凸部
120 コッタ
125 切欠部(凹み)
126 凹部(凹み)
130 コッタ
133 凸部
135 切欠部(凹み)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転トルクが入力される入力軸と、前記入力軸に支持され前記入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、前記入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して当該入力側ディスクから変更可能な変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに押し付け力を付与する押圧装置と、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに対して前記押圧装置の反対側となる位置で、当該押圧装置により発生するスラスト荷重を前記入力軸に設けられた係止溝に係止された複数の円弧状のコッタにより支持するトロイダル型無段変速機において、
前記コッタには、前記押圧装置の反対側となる側面の前記係止溝より外周側に、前記入力軸の外周面に沿って突出するとともに、当該入力軸の外周面に当接する凸部が設けられていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】
回転トルクが入力される入力軸と、前記入力軸に支持され前記入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、前記入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して当該入力側ディスクから変更可能な変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに押し付け力を付与する押圧装置と、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに対して前記押圧装置の反対側となる位置で、当該押圧装置により発生するスラスト荷重を前記入力軸に設けられた係止溝に係止された複数の円弧状のコッタにより支持するトロイダル型無段変速機において、
前記コッタには、前記押圧装置側を向く側面の周方向の両端部と、前記押圧装置の反対となる側面の周方向の中央部とのうちの少なくとも一方に、他の部材との接触を避ける凹みが形成されていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項3】
回転トルクが入力される入力軸と、前記入力軸に支持され前記入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、前記入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して当該入力側ディスクから変更可能な変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに押し付け力を付与する押圧装置と、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに対して前記押圧装置の反対側となる位置で、当該押圧装置により発生するスラスト荷重を前記入力軸に設けられた係止溝に係止された複数の円弧状のコッタにより支持するトロイダル型無段変速機において、
前記コッタには、前記押圧装置側を向く側面の周方向の両端部と、前記押圧装置の反対となる側面の周方向の中央部とのうちの少なくとも一方に、他の部材との接触を避ける凹みが形成され
かつ、前記コッタには、前記押圧装置の反対側となる側面の前記係止溝より外周側に前記入力軸の外周面に沿って突出するとともに、当該入力軸の外周面に当接する凸部が設けられていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のトロイダル型無段変速機と、遊星歯車式変速機とを組み合わせ、前記遊星歯車式変速機のキャリアが前記入力軸および前記入力側ディスクと一体に回転可能に設けられた無段変速装置において、
前記入力側ディスクを介してキャリアに作用する前記スラスト荷重を前記コッタにより支持することを特徴とする無段変速装置。
【請求項1】
回転トルクが入力される入力軸と、前記入力軸に支持され前記入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、前記入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して当該入力側ディスクから変更可能な変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに押し付け力を付与する押圧装置と、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに対して前記押圧装置の反対側となる位置で、当該押圧装置により発生するスラスト荷重を前記入力軸に設けられた係止溝に係止された複数の円弧状のコッタにより支持するトロイダル型無段変速機において、
前記コッタには、前記押圧装置の反対側となる側面の前記係止溝より外周側に、前記入力軸の外周面に沿って突出するとともに、当該入力軸の外周面に当接する凸部が設けられていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】
回転トルクが入力される入力軸と、前記入力軸に支持され前記入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、前記入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して当該入力側ディスクから変更可能な変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに押し付け力を付与する押圧装置と、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに対して前記押圧装置の反対側となる位置で、当該押圧装置により発生するスラスト荷重を前記入力軸に設けられた係止溝に係止された複数の円弧状のコッタにより支持するトロイダル型無段変速機において、
前記コッタには、前記押圧装置側を向く側面の周方向の両端部と、前記押圧装置の反対となる側面の周方向の中央部とのうちの少なくとも一方に、他の部材との接触を避ける凹みが形成されていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項3】
回転トルクが入力される入力軸と、前記入力軸に支持され前記入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、前記入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して当該入力側ディスクから変更可能な変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに押し付け力を付与する押圧装置と、前記入力側ディスク、前記出力側ディスクおよび前記パワーローラに対して前記押圧装置の反対側となる位置で、当該押圧装置により発生するスラスト荷重を前記入力軸に設けられた係止溝に係止された複数の円弧状のコッタにより支持するトロイダル型無段変速機において、
前記コッタには、前記押圧装置側を向く側面の周方向の両端部と、前記押圧装置の反対となる側面の周方向の中央部とのうちの少なくとも一方に、他の部材との接触を避ける凹みが形成され
かつ、前記コッタには、前記押圧装置の反対側となる側面の前記係止溝より外周側に前記入力軸の外周面に沿って突出するとともに、当該入力軸の外周面に当接する凸部が設けられていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のトロイダル型無段変速機と、遊星歯車式変速機とを組み合わせ、前記遊星歯車式変速機のキャリアが前記入力軸および前記入力側ディスクと一体に回転可能に設けられた無段変速装置において、
前記入力側ディスクを介してキャリアに作用する前記スラスト荷重を前記コッタにより支持することを特徴とする無段変速装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−112106(P2011−112106A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267060(P2009−267060)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
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