説明

トロリ線の摩耗状態監視装置

【課題】トロリ線とパンタグラフが離れたときに発生するアークを検知し、このときのトロリ線の下面、すなわち摩耗面を閲覧することができるトロリ線の摩耗状態監視装置を提供する。
【解決手段】トロリ線の摩耗状態監視装置において、車両10の屋根10a上にパンタグラフ11に向けて設置されパンタグラフ11を監視するエリアカメラ1と、前記車両10の屋根10a上に鉛直上向きに設置されトロリ線13の下面を撮影するラインセンサカメラ2と、前記エリアカメラ1及び前記ラインセンサカメラ2により撮影した画像を入力及び録画し、前記パンタグラフ11からアークが発生したときの前記ラインセンサカメラ2により撮影した画像を閲覧することができる画像処理装置3とを備えることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロリ線の摩耗状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気鉄道等において軌道に沿って車両に電力を供給するために設置されるトロリ線の保守や点検作業、特に、パンタグラフを有する集電装置とトロリ線の接触状態を点検し、離線位置を検出する技術が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
下記特許文献1に開示される技術では、アークの照度を検出する2台の照度検出器又は分光光度計の明るさを強度として検知し、アーク発生時にパンタグラフとトロリ線の接触点を撮影した画像にアーク検知情報、すなわち離線検知情報を付加する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−288893号公報
【特許文献2】特開2002−139305号公報
【特許文献3】特開2006−248411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示される技術では、照度検出器や分光光度計を用いる必要があり、例えば、監視用等に用いられる一般的なカメラ(以下、エリアカメラという)と比較すると、費用が高いという問題がある。
【0006】
また、上記特許文献1に開示される技術は、パンタグラフとトロリ線の接触点を撮影した画像を閲覧することはできるものの、パンタグラフ全体を撮影した画像により離線の有無を確認することができるだけであって、離線箇所のトロリ線の詳細な摩耗状態を視覚的に確認することができるものではない。このため、例えば、トロリ線の下面に発生するアーク跡等の詳細なトロリ線の状態を画像により視認することができないという問題がある。
【0007】
以上のことから、本発明は、トロリ線とパンタグラフが離れたときに発生するアークを検知し、このときのトロリ線の下面、すなわち摩耗面を閲覧することができるトロリ線の摩耗状態監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための第1の発明に係るトロリ線の摩耗状態監視装置は、
車両の屋根上にパンタグラフに向けて設置されパンタグラフを撮影するエリアカメラと、
前記車両の屋根上に鉛直上向きに設置されトロリ線の下面を撮影するラインセンサカメラと、
前記エリアカメラ及び前記ラインセンサカメラにより撮影した画像を入力及び録画し、前記パンタグラフからアークが発生したときの前記ラインセンサカメラにより撮影した画像を閲覧することができる画像処理手段と
を備える
ことを特徴とする。
【0009】
上記の課題を解決するための第2の発明に係るトロリ線の摩耗状態監視装置は、第1の発明に係るトロリ線の摩耗状態監視装置において、
前記画像処理手段は、前記パンタグラフからアークが発生したときに前記ラインセンサカメラにより撮影した画像にインデックスを付与する
ことを特徴とする。
【0010】
上記の課題を解決するための第3の発明に係るトロリ線の摩耗状態監視装置は、第1の発明に係るトロリ線の摩耗状態監視装置において、
前記画像処理手段は、前記エリアカメラにより撮影した画像中の濃淡値の平均を算出し、濃淡値平均が所定の閾値を超えたときに前記ラインセンサカメラにより撮影した画像にインデックスを付与する濃淡値平均算出手段を備える
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トロリ線とパンタグラフが離れたときに発生するアークを検知し、このときのトロリ線の下面、すなわち摩耗面を閲覧することができるトロリ線の摩耗状態監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係るトロリ線の摩耗状態監視装置の構成を示した模式図である。
【図2】本発明の実施例に係るトロリ線の摩耗状態監視装置における画像処理装置の構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の実施例に係るトロリ線の摩耗状態監視装置における処理の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るトロリ線の摩耗状態監視装置を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0014】
以下、本発明に係るトロリ線の摩耗状態監視装置の実施例について説明する。
はじめに、本実施例に係るトロリ線の摩耗状態監視装置の構成について説明する。
図1は、本実施例に係るトロリ線の摩耗状態監視装置の構成を示した模式図である。
図1に示すように、本実施例に係るトロリ線の摩耗状態監視装置は、車両10の屋根10a上にパンタグラフ11に向けて設置されパンタグラフ11を撮影する監視用等に用いられる一般的なエリアカメラ1(例えば、上記特許文献2参照)と、車両10の屋根10a上に鉛直上向きに設置され電柱12に支持されたトロリ線13の下面、すなわち摩耗面を撮影するラインセンサカメラ2(例えば、上記特許文献3参照)と、エリアカメラ1及びラインセンサカメラ2により撮影した画像を処理する画像処理装置3とにより構成されている。
【0015】
本実施例に係るトロリ線の摩耗状態監視装置においては、パンタグラフ11を監視するエリアカメラ1と、トロリ線13の摩耗面を撮影するラインセンサカメラ2を単純に並べるのではなく、パンタグラフ11を撮影するエリアカメラ1(例えば、上記特許文献2参照)と、トロリ線13の摩耗を測定する機能を有するラインセンサカメラ2(例えば、上記特許文献3参照)とを組み合わせることにより、はじめてアーク発生時のトロリ線13の下面、すなわち摩耗面を閲覧する機能を実現することを特徴としている。
【0016】
なお、上記特許文献3においては、作業者の希望する車両10の位置(任意のkm地点)を入力してその車両10の位置における摩耗幅を画像により閲覧することができる構成となっているが、本実施例に係るトロリ線13の摩耗状態監視装置のように、アーク発生箇所におけるトロリ線13の摩耗状態を画像により閲覧することができる構成とはなっていない。
【0017】
図2は、本実施例に係るトロリ線の摩耗状態監視装置における画像処理装置の構成を示したブロック図である。
図2に示すように、本実施例に係るトロリ線の摩耗状態監視装置における画像処理装置3は、エリアカメラ1からの出力画像が入力される第1の画像入力部10と、第1の画像入力部10から出力された画像における濃淡値の平均を算出する濃淡値平均算出部11と、ラインセンサカメラ2からの出力画像が入力される第2の画像入力部20と、濃淡値平均算出部11と第2の画像入力部20からの出力画像が記憶される記憶部30と、記憶部30に記憶されたエリアカメラ1により撮影された画像を録画するエリアカメラ画像録画部40と、記憶部30に記憶されたラインセンサカメラ2により撮影された画像を録画するラインセンサカメラ画像録画部50とにより構成されている。
以上が本実施例に係るトロリ線の摩耗状態監視装置の構成である。
【0018】
次に、本実施例に係るトロリ線の摩耗状態監視装置における処理の手順について説明する。
図3は、本実施例に係るトロリ線の摩耗状態監視装置における処理の手順を示したフローチャートである。
図3に示すように、本実施例に係るトロリ線の摩耗状態監視装置は、処理の開始後、ステップP1において、車両10の走行中にエリアカメラ1により連続的に撮影された画像を第1の画像入力部10に入力し、エリアカメラ画像録画部40において録画する。
次に、ステップP2において、濃淡値平均算出部11によりエリアカメラ1により撮影された画像における濃淡値の平均値を算出する。
次に、ステップP3において、車両10の走行中にラインセンサカメラ2により連続的に撮影された画像を第2の画像入力部20に入力し、ラインセンサカメラ画像録画部50において録画する。
【0019】
次に、ステップP4において、パンタグラフ11からアークが発生したとき、エリアカメラ1の画像が明るく映るため、濃淡値平均算出部11によりエリアカメラ1の画像中の濃淡値の平均を算出し、濃淡値平均が所定の閾値を超えたとき、ラインセンサカメラ2の画像にインデックスを付与する。なお、所定の閾値は、実験的に求めることとする。
【0020】
したがって、ラインセンサカメラ画像録画部50に録画されたラインセンサカメラ2の画像から、インデックスを元にトロリ線13のアークが発生したと想定される箇所を容易に判別し、閲覧することができる。
【0021】
次に、ステップP5において、エリアカメラ1から第1の画像入力部10及びラインセンサカメラ2から第2の画像入力部20への画像の入力が終了したか判断する。画像の入力が終了した場合には一連の処理を終了し、画像の入力が終了していない場合にはステップP1を再度実行する。
以上が本実施例に係るトロリ線の摩耗状態監視装置における処理の手順である。
【0022】
したがって、本実施例に係るトロリ線の摩耗状態監視装置によれば、エリアカメラ1とラインセンサカメラ2を用い、トロリ線13とパンタグラフ11が離れたときに発生するアークを検知することにより、アークが発生したときのトロリ線13の下面、すなわち摩耗面を閲覧することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、例えば、トロリ線の摩耗状態を監視するトロリ線の摩耗状態監視装置、特に、トロリ線とパンタグラフが離れたときに発生するアークを検知し、このときのトロリ線の下面の表面状態を確認するトロリ線の摩耗状態監視装置に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 エリアカメラ
2 ラインセンサカメラ
3 画像処理装置
10 車両
10a 屋根
11 パンタグラフ
12 電柱
13 トロリ線
10 第1の画像入力部
11 濃淡値平均算出部
20 第2の画像入力部
30 記憶部
40 エリアカメラ画像録画部
50 ラインセンサカメラ画像録画部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の屋根上にパンタグラフに向けて設置されパンタグラフを撮影するエリアカメラと、
前記車両の屋根上に鉛直上向きに設置されトロリ線の下面を撮影するラインセンサカメラと、
前記エリアカメラ及び前記ラインセンサカメラにより撮影した画像を入力及び録画し、前記パンタグラフからアークが発生したときの前記ラインセンサカメラにより撮影した画像を閲覧することができる画像処理手段と
を備える
ことを特徴とするトロリ線の摩耗状態監視装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、前記パンタグラフからアークが発生したときに前記ラインセンサカメラにより撮影した画像にインデックスを付与する
ことを特徴とする請求項1に記載のトロリ線の摩耗状態監視装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、前記エリアカメラにより撮影した画像中の濃淡値の平均を算出し、濃淡値平均が所定の閾値を超えたときに前記ラインセンサカメラにより撮影した画像にインデックスを付与する濃淡値平均算出手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のトロリ線の摩耗状態監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−185104(P2012−185104A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49736(P2011−49736)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】