説明

ドアモール用クリップ

【課題】例えば自動車用ドアパネルのドアベルト部(窓枠部)にドアモールを取付ける場合などに使用するドアモール用クリップに係り、そのクリップを介してドアモールをドアベルト部に簡単・確実に取付けると共に上方への離脱等を確実に防止する。
【解決手段】ドアモール2の両側縁部2a・2bに係合保持させた状態で該ドアモール2とともにドアパネル3のドアベルト部3aに装着して上記ドアモール2をドアパネル3に取付けるためのドアモール用クリップ1において、上記クリップ1をドアモール2とともにドアベルト部3aに装着したときドアパネル3(インナパネル31)の縁部31bに当接して上記クリップ1を抜け止め係止する係止片14を備え、その係止片14の先端部に、上記ドアパネル3の縁部31bに両側から挟み込むようにして係合する離脱防止用の突起14a・14bを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用ドアパネルのドアベルト部(窓枠部)にウエザストリップ付きのドアベルトモール等のドアモールを取付ける場合などに使用するドアモール用クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車用ドアパネルの窓部下縁に沿って設けたドアベルト部に、ドアベルトモール等のドアモールを取付ける場合には、下記特許文献1に記載のようにドアモール用クリップが用いられ、そのクリップをドアモールに係合保持させると共に、そのクリップを介して上記ドアモールを上記ドアベルト部に取付けるようにしている。
【0003】
図7および図8は上記従来のドアモール用クリップの一例を示すもので、そのクリップ1は合成樹脂等により図のような形状に一体成形されている。そのクリップ1の略平板状の基部10の背面側には、ドアモールの車体内外方向内側の縁部に係合する内側係合片11が、また上記基部10の中央部正面側には、ドアモールの外側の縁部に係合する外側係合片12がそれぞれ左右一対ずつ設けられ、その両外側係合片12・12間には上記基部10との間に後述するドアベルト部を狭さんで固定するための狭持片13を設けると共に、上記内側係合片11・11間には図7(a)の正面側(車体内外方向外側)に突出する抜け止め係止片14が設けられている。
【0004】
上記ドアモール用クリップによりドアモールを自動車用ドアパネルのドアベルト部に取付けるに当たっては、先ず上記クリップ1をドアモール2に係合保持させるもので、例えば図9(a)に示すような金属芯金21とゴム等の被覆材22等よりなる断面略逆U字形のドアモール2に下からクリップ1を挿入すればよい。すると、図9(b)のように上記クリップ1の内側係合片11がドアモール2の内側の縁部2aに係合すると共に、外側係合片12がドアモール2の外側の縁部2bに係合して上記クリップ1をドアモール2に容易に係合保持させることができる。
【0005】
次に、上記のようにしてクリップ1を取付けたドアモール2を上記クリップ1を介して図9(b)に示すようなアウタパネル31とインナパネル32等からなるドアパネル3のドアベルト部3aに装着する。その際、図のようにクリップ1の基部10の下部10aを、インナパネル32に形成したクリップ挿入用の開口部32a内に挿入するもので、その開口部32a内への挿入を容易にするために従来は上記基部10の下部10aは前記図7に示すように舌片状に且つ図7(a)で手前側に屈曲形成されている。
【0006】
次いで、上記クリップ1とともにドアモール2をドアベルト部3aに押し込むと、図9(c)のようにクリップ1の前記狭持片13と基部10との間に上記ドアベルト部3aが狭持されて、上記クリップ1を介してドアモール2をドアパネル3のドアベルト部3aに取付けることができる。それと同時に、前記の抜け止め係止片14の先端部が、アウタパネル31のドアベルト部3aにおける折り返し部31aの下端縁部31bに当接して、上記クリップ1およびドアモール2の上方への抜け(離脱)が防止されると共に、クリップ1の基部10が上記開口部32aの下側のインナパネル32の側面に当接して上記クリップ1およびドアモール2が図中矢印a方向に回動するのが防止される構成である。図中、23はシール用リップ部、Gはドアガラスを示す。
【0007】
しかしながら、上記従来のクリップは抜け止め係止片14の先端部が、アウタパネル31の折り返し部31aの下端31bに単に当接して抜け止め係止する構成であるから、例えばドアモール2を上方に強く引き上げると、係止片14の先端部が往々にして前記アウタパネル下端縁部31bから外れて上記クリップ1およびドアモール2が上方に離脱するおそれがある。また従来のクリップは上記のようにクリップ1およびドアモール2が図中矢印a方向に回動するのを防止する等の目的で、インナパネル32にクリップ挿入用の開口部32aや、その開口部32aにクリップを円滑に挿入するための誘い込み形状等を設けなければならないので、加工が面倒で製作コストが増大する等の問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2000−43571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案したもので、インナパネルに上記のような開口部を必ずしも形成しなくてもクリップおよびドアモールの回動を阻止することができると共に、上記クリップおよびドアモールのドアベルト部からの上方への離脱を簡単・確実に防止することのできるドアモール用クリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために本発明によるドアモール用クリップは以下の構成としたものである。すなわち、ドアモールの両側縁部に係合保持させた状態で該ドアモールとともにドアパネルのドアベルト部に装着して上記ドアモールをドアパネルに取付けるためのドアモール用クリップにおいて、上記クリップをドアモールとともにドアベルト部に装着したときドアパネルの縁部に当接して上記クリップを抜け止め係止する係止片を備え、その係止片の先端部に、上記ドアパネルの縁部に両側から挟み込むようにして係合する離脱防止用の突起を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記のように抜け止め係止片の先端部に、ドアパネルの縁部に両側から挟み込むようにして係合する離脱防止用の突起を設けたことによって、上記クリップおよびドアモールのドアベルト部からの上方への離脱を簡単・確実に防止することが可能となると共に、前記従来例のようにインナパネルにクリップ挿入用の開口部を必ずしも形成しなくてもクリップおよびドアモールの回動を確実に阻止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明によるドアモール用クリップを、図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。なお、前記従来例と同様の機能を有する部材には同一の符号を付して説明する。図1(a)は本発明によるドアモール用クリップの一実施形態を示す正面図、同図(b)はその側面図、同図(c)は(a)におけるc−c断面図、図2は上記クリップの斜視図である。
【0013】
本実施形態のドアモール用クリップ1は、前記従来例と同様に合成樹脂等により図のような形状に一体成形されており、そのクリップ1には、前記従来例とほぼ同様に、ドアモール2の内側の縁部2aに係合する内側係合片11と外側の縁部2bに係合する外側係合片12とがそれぞれ左右一対ずつ設けられ、その両外側係合片12・12間にはドアベルト部を狭持する狭持片13が、また両内側係合片11・11間にはドアパネルの縁部に当接してクリップおよびドアモールの離脱を防止する抜け止め係止片14がそれぞれ設けられている。図中、15はクリップ1の基部10の上部に、それと一体に設けた突出部で、その突出部15は装着したドアモール2の上部内面に当接して該ドアモール2の上部を支持する機能を有する。
【0014】
そして本発明においては、上記ドアモールの縁部に当接する抜け止め係止片14の先端部に、上記ドアパネルの縁部に両側から挟み込むようにして係合する離脱防止用の突起14a,14bを設けたもので、特に図の場合は抜け止め係止片14の先端部が、前記従来例とほぼ同様にアウタパネル31のドアベルト部3aにおける折り返し部31aの下端縁部31bに当接する構成とし、その下端縁部31bの一方の側(図の場合は車体内外方向内側)には突起14aを2つ設けると共に、それと反対側(車体内外方向外側)には突起14bを1つ設けた構成である。また上記離脱防止用突起14a,14bのうち、車体内外方向内側に位置する突起14aが、外側に位置する突起14bよりも上方に高く突出するように構成されている。
【0015】
上記のように構成されたドアモール用クリップ1によりドアモール2を自動車用ドアパネル3のドアベルト部3aに取付けるに当たっては、前記従来例と同様にクリップ1をドアモール2に係合保持させるもので、例えば図3(a)に示すような金属芯金21とゴム等の被覆材22等よりなる断面略逆U字形のドアモール2に下からクリップ1を挿入すれば、前記従来例と同様にクリップ1の内側係合片11がドアモール2の内側の縁部2aに係合すると共に、外側係合片12がドアモール2の外側の縁部2bに係合して上記クリップ1をドアモール2に容易に係合保持させることができる。
【0016】
次に、上記のようにしてクリップ1を取付けたドアモール2を、上記クリップ1を介して図4のようにドアパネル3のドアベルト部3aに装着するもので、本実施形態のドアパネル3は前記従来例のインナパネル32を省略してアウタパネル31のみからなり、また前記従来例のようなインナパネル32に形成されるクリップ挿入用の開口部32aも省略されている。そして、図4(a)のように上記クリップ1とともにドアモール2をドアベルト部3aに上から押し込むと、同図(b)のようにクリップ1の前記狭持片13と基部10との間に上記ドアベルト部3aが狭持されて、上記クリップ1を介してドアモール2をドアパネル3のドアベルト部3aに取付けることができる。
【0017】
それと同時に、図5に示すように前記抜け止め係止片14の先端部がアウタパネル31の下端縁部31bに当接係合してクリップ1およびドアモール2の上方への離脱が防止されるもので、特に本発明においては上記係止片14の先端部に、ドアパネルの縁部、図の場合はアウタパネル31のドアベルト部3aにおける折り返し部31aの下方の下端縁部31bに両側から挟み込むようにして係合する離脱防止用の突起14a・14bを設けたことによって上記縁部31bと係止片14との当接係合状態を良好に維持させることができる。また上記のように突起14a・14b間に縁部31bを係合させたことによって、上記クリップ1およびドアモール2の図4(b)における矢印a方向への回動を阻止することが可能となり、前記従来例のようにインナパネル32にクリップ挿入用の開口部32aを設ける等の面倒が解消されると共に、前記図4の実施形態のように前記従来のインナパネル32を省略することも可能となるものである。
【0018】
また上記突起14a・14b間への上記縁部31bの挿入係合動作は、上記クリップ1およびドアモール2をドアベルト部3aに上から装着したのち上記クリップ1およびドアモール2を上記の装着方向と反対方向、すなわち上方に僅かに戻すことによって自動的に行われるようにしたもので、特に本実施形態においては上記係止片14を合成樹脂により弾性変形可能に構成すると共に、前記のように車体内外方向内側に位置する突起14aを外側に位置する突起14bよりも上方に高く突出させることによって、上記クリップ1およびドアモール2をドアベルト部3aに装着する際に上記係止片14がドアベルト部3aに当たって一旦基部10側に弾性変形して退避移動した後、係止片14の外側の突起14bの上端部がアウタパネル31の縁部31bよりも下方に移動したとき上記係止片14がその弾性復元力で基部10と反対方向に移動して内側の突起14aが上記縁部31bに当接し、その状態で上記クリップ1およびドアモール2を僅かに上方に引き上げることによって上記突起14a・14b間に上記縁部31bが自動的に浸入して係合するようにしたものである。
【0019】
なお、上記係止片14および突起14a・14bは、上記クリップ1およびドアモール2をドアベルト部3aに上から装着したのち上方に僅かに戻したとき、上記突起14a・14b間に上記アウタパネル31の縁部31bが自動的に進入する位置に予め設けるようにしてもよい。
【0020】
また前記離脱防止用の突起14a・14bの大きさ形状や個数等は適宜であるが、例えば図5(b)における左右方向の幅または/および前後方向の厚さを増やすことで、抜去力(外れ力)を上げることができる。また図5(a)における上下方向の高さ寸法を変えることで、上記突起14a・14bが係合するアウタパネル下端部32b等のドアパネル端部の製作誤差や機種による違い等によるバラツキを吸収することができる。
【0021】
さらに上記実施形態は、ドアパネル3をアウタパネル31のみで構成したが、図6のようにアウタパネル31とインナパネル32とで構成してもよく、その場合にも前記従来例のようなクリップ挿入用の開口部32aを省略することができる。また上記のようなインナパネル32を設けるものにあっては、そのインナパネル32の上部を下向きに折り返して、その下端縁部に上記係止片14および突起14a・14bが係合するように構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上のように、本発明によるドアモール用クリップによれば、クリップおよびドアモールのドアベルト部からの上方への離脱を簡単・確実に防止することが可能となると共に、前記従来例のようにインナパネルにクリップ挿入用の開口部を必ずしも形成しなくてもクリップおよびドアモールの回動を確実に阻止することが可能となるもので、各種のドアモールをドアパネルに取付ける場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は本発明によるドアモール用クリップの一実施形態を示す正面図、(b)はその側面図、(c)は(a)におけるc−c断面図。
【図2】上記ドアモール用クリップの斜視図。
【図3】(a)および(b)は上記クリップをドアモールに係合保持させる状態の説明。
【図4】(a)および(b)は上記クリップおよびドアモールをドアパネルに取付ける状態の説明図。
【図5】(a)は図4(b)の一部の拡大図、(b)はその側面図。
【図6】本発明によるドアモール用クリップを適用したドアパネルの変更例を示す説明図。
【図7】(a)は従来のドアモール用クリップの正面図、(b)はその側面図。
【図8】上記従来のドアモール用クリップの斜視図。
【図9】(a)〜(c)は上記従来のクリップを用いてドアモールをドアパネルに取付ける状態の説明図。
【符号の説明】
【0024】
1 クリップ
11 内側係合片
12 外側係合片
13 狭持片
14 抜け止め係止片
14a、14b 突起
2 ドアモール
21 芯金
22 被覆材
23 リップ部
3 ドアパネル
3a ドアベルト部
31 アウタパネル
31a 折り返し部
31b 下端縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアモールの両側縁部に係合保持させた状態で該ドアモールとともにドアパネルのドアベルト部に装着して上記ドアモールをドアパネルに取付けるためのドアモール用クリップにおいて、
上記クリップをドアモールとともにドアベルト部に装着したときドアパネルの縁部に当接して上記クリップを抜け止め係止する係止片を備え、その係止片の先端部に、上記ドアパネルの縁部に両側から挟み込むようにして係合する離脱防止用の突起を設けたことを特徴とするドアモール用クリップ。
【請求項2】
上記クリップをドアモールとともにドアベルト部に装着した後、その装着方向と反対方向に僅かに戻したとき上記ドアパネルの縁部に上記離脱防止用の突起が自動的に係合するように構成してなる請求項1に記載のドアモール用クリップ。
【請求項3】
上記離脱防止用の突起のうち、車体内外方向内側に位置する突起を、外側に位置する突起よりも上方に高く突出するように構成した請求項1または2に記載のドアモール用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−216906(P2007−216906A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−42267(P2006−42267)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000175766)三恵技研工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】