説明

ドアロック装置

【課題】付勢力をクローズレバーに直接及ぼし連動レバーに対して直接及ぼすことのない付勢手段の付勢力を利用して連動レバーをフックに確実に係合させることが可能なドアロック装置を得る。
【解決手段】フック12が引込開始位置に達したとき、制御突起21cと制御穴23fの端面との接触部と、制御レバー23のベースプレート11に対する回動中心24と、を結ぶ直線に対して、クローズレバー20と連動レバー21の枢着中心22が結合解除補助位置側に位置し、連動レバー21がフック12と係合する結合位置に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けたドアを施解錠するドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドアロック装置には、閉成操作されたドアを、モータなどの駆動源を備えた電動駆動機構によって自動的に全閉状態にさせることが可能なタイプ(一般にドアクロージャーと呼ばれる)のものがある。
この種のドアロック装置の一例として、車両本体側にストライカを突設する一方で、ドア側にストライカと係脱可能なフックと、フックと径脱可能な連動レバーと、電動駆動機構の動力によって回転し、かつ連動レバーと回転可能に接続するクローズレバーと、車両に設けたオープンスイッチなどの操作によって回転し、かつ、連動レバーと連係するオープンレバー(制御レバー)と、を備えるものがある。フックは、ストライカを把持する保持位置、解放する解放位置、及び該保持位置と解放位置の間の引込開始位置(ハーフラッチ位置)に回動可能である。連動レバーは、フックが解放位置に位置するときはフックから離間し、フックが引込開始位置まで回転したときにフックと係合してフックを一時的に引込開始位置に保持する。電動駆動機構のモータはフックが引込開始位置まで移動したときに回転(正転)し、この回転力をクローズレバーを介して連動レバーに伝えることにより、引込開始位置まで回転したフックを連動レバーを介して保持位置まで回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3160553号公報
【特許文献2】特開平11−236776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記タイプのドアロック装置の一例として、クローズレバーをばね(付勢手段)によって一方向に回転付勢する構成が考えられる。
クローズレバーの付勢手段である上記ばねの付勢力は直接的にはクローズレバーのみに及び連動レバーに直接及ぶことはないので、連動レバーをフックと係合する方向に確実に回転させるためには、クローズレバーと連動レバーの間に連動レバーをフックと係合する方向に回転させる別の付勢手段(ばね)を設ければよい。
しかし、このようにクローズレバーと連動レバーの間に付勢手段を設けると部品点数が増えてしまうため、できればクローズレバー用の付勢手段(ばね)の付勢力を利用して連動レバーを回転付勢するのが理想的であり、そのような構造のドアロック装置が望まれていた。
【0005】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、付勢力をクローズレバーに直接及ぼし連動レバーに対して直接及ぼすことのない付勢手段の付勢力を利用して連動レバーをフックに確実に係合させることが可能なドアロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のドアロック装置は、車両本体に対して開閉可能なドアを全閉状態で保持するドアロック装置において、上記ドアと車両本体の一方に設けたベースプレートと、他方に設けたストライカ;上記ベースプレートに、ストライカの保持位置、解放位置、及び該保持位置と解放位置の間の引込開始位置に回動可能に支持され、上記ストライカ解放位置へ付勢されたフック;該フックと同軸で回動可能にベースプレート上に支持され、該フックの上記ストライカ保持位置方向の引込位置と、上記ストライカ解放位置方向の引込解除位置の間で回動するクローズレバー;上記フックが上記引込開始位置より解放位置側に位置するときは作動せず、解放位置側から引込開始位置まで移動したときに作動して上記クローズレバーを上記引込位置まで回転させるモータを有する電動駆動機構;該クローズレバーを上記引込解除位置へ付勢するクローズレバー付勢手段;上記フックが上記引込開始位置より上記解放位置側に位置する間、上記クローズレバー付勢手段の付勢力によってクローズレバーが上記引込解除位置側へ回転するのを規制する回転規制手段;上記クローズレバーに枢着され、上記フックと係合して該クローズレバーとフックを一体化させる結合位置と、上記フックとの係合を解除してクローズレバーとフックを相対回動可能にさせる結合解除位置とに回動可能で、かつ制御突起を有する連動レバー上記ベースプレート上に回動可能に支持され、結合補助位置と結合解除補助位置の間を回動可能な制御レバー;該制御レバーを上記結合補助位置へ付勢する制御レバー付勢手段;及び、該制御レバーに設けた、上記制御突起が相対移動可能に嵌合し、制御レバーが上記結合補助位置方向へ回動するときは上記制御突起を介して上記連動レバーを上記結合位置側へ移動させ、制御レバーが上記結合解除補助位置方向へ回動するときは上記制御突起を介して上記連動レバーを上記結合解除位置側へ移動させる長穴からなる制御穴;を備え、上記ストライカの押圧力によって上記フックが上記解放位置側から上記引込開始位置に達するまで、クローズレバーが上記クローズレバー付勢手段に付勢されることにより上記制御突起が上記制御穴の長手方向の一方の端面との当接状態を維持し上記フックが上記引込開始位置に達したとき、上記制御突起と上記制御穴の上記端面との接触部と、上記制御レバーの上記ベースプレートに対する回動中心と、を結ぶ直線に対して、上記クローズレバーと連動レバーの枢着中心が上記結合解除補助位置側に位置し、連動レバーが上記結合位置に移動することを特徴としている。
【0007】
上記フックが上記解放位置から上記引込開始位置に達するまで、上記枢着中心が上記直線に対して上記結合解除補助位置側に位置していてもよい。
【0008】
また、上記フックが上記解放位置から上記引込開始位置より手前の切替位置に達するまでは、上記枢着中心が上記直線に対して上記結合補助位置側に位置していてもよい。
【発明の効果】
【0009】
以上の本発明によれば、開放状態にあるドアを閉方向に移動させることにより解放位置に位置していたフックがストライカと係合しながら引込開始位置まで回転するときに、クローズレバー付勢手段の付勢力は連動レバーから制御レバーに、クローズレバーと連動レバーの枢着中心から制御突起と制御穴の長手方向の一方の端面との接触部に直線的に向かう力として伝わる。すると上記接触部と制御レバーのベースプレートに対する回動支持部とを結ぶ直線に対して上記枢着中心が結合解除補助位置側に位置するので、この力によって制御レバーは結合補助位置側に回転する。そのため、クローズレバーと連動レバーの間に付勢手段を設けていないにも拘わらず、連動レバーはフックと係合する結合位置まで確実に回転する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用したドアロック装置の分解斜視図である。
【図2】ドアロック装置のフックを単体で示した斜視図である。
【図3】ドアロック装置のラチェットを単体で示した斜視図である。
【図4】ドアロック装置のクローズレバーと連動レバーの斜視図である。
【図5】ドアロック装置のオープンレバーを単体で示した斜視図である。
【図6】ドアロック装置のセクタギヤを単体で示した斜視図である。
【図7】ドアロック装置を示した平面図である。
【図8】ハーフラッチ状態のドアロック装置を示した平面図である。
【図9】オープン状態からハーフラッチ状態になる前とハーフラッチ状態になった後の制御突起と連動レバー制御穴の端面との接触部とオープンレバーの軸ピンとを結ぶ直線と、連動レバーとオープンレバーを接続する軸ピンの位置関係を表す模式図である。
【図10】フルラッチ状態への動作が完了した状態のドアロック装置を示した平面図である。
【図11】ドアロック装置の通常作動状態を示すタイミングチャート図である。
【図12】ハーフラッチ状態からフルラッチ状態になる途中で電動によるオープン(クローズキャンセル)操作が行われた場合のタイミングチャート図である。
【図13】ハーフラッチ状態からフルラッチ状態になる途中で機械的なオープン(クローズキャンセル)操作が行われた場合のタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図示実施形態に基づき、本発明のドアロック装置を説明する。図に示すドアロック(ドアクロージャー)装置10は図示しないトランクドア側に取り付けられており、トランクドアを開閉可能に支持する車両本体側には、ドアロック装置10に対して係脱するストライカS(図7から図10)が設けられている。なお、ドアロック装置10とストライカSの位置関係は、これと逆にすることも可能である。
【0012】
図1に示すように、ドアロック装置10は、トランクドアに対して固定的に取り付けられるベースプレート11を有している。ベースプレート11には、ストライカSが進入可能なストライカ進入溝11aが形成され、ストライカ進入溝11aを挟んで位置する軸支持穴11b、11cに対して、軸ピン14と軸ピン15が固定されている。軸ピン14はフック12に形成した軸穴12aに挿通され、フック12は、軸ピン14を中心として回動可能に支持されている。軸ピン15はラチェット13に形成した軸穴13aに挿通され、ラチェット13は、軸ピン15を中心して回動可能に支持されている。
【0013】
図2に示すように、フック12は、軸穴12aを中心とする略半径方向に向けて形成されたストライカ保持溝12bと、このストライカ保持溝12bを挟んで位置する第1脚部12cと第2脚部12dを有している。第2脚部12dの先端部付近には、ストライカ保持溝12bに臨む側にラチェット係合段部(係合部)12eが形成されており、これと反対側の側部にラチェット押圧突部(ラチェット制御手段)12fが形成されている。また、ラチェット係合段部12eとラチェット押圧突部12fを接続する第2脚部12dの先端部は、凸状の円弧状面(ラチェット制御手段、ラチェット保持手段)12gとなっている。また、第2脚部12dには、ベースプレート11から離れる方向に突出する結合突起(オープンレバー保持手段)(回転規制手段)12hが形成されている。フック12は、図7に示すストライカ解放位置と図10に示すストライカ保持位置の間で回動可能であり、トーションばね16によって、ストライカ解放位置(図7から図10における時計方向)に向けて回動付勢されている。トーションばね16は、軸ピン14を囲むコイル部と、フック12のばね掛け穴12i及びベースプレート11のばね掛け穴11dに係合する一対のばね端部を備えている。
【0014】
図3に示すように、ラチェット13は、ベースプレート11に形成したラチェットガイド溝11eに対して摺動自在に係合するガイド突起13bを備えている。ラチェット13においてフック12に対向する側部には、ラチェット係合段部12eに対して係合可能な回動規制段部13cを有し、該回動規制段部13cに続く側面に、フック12の円弧状面12gに対応する凹状の円弧面部(ラチェット制御手段、ラチェット保持手段)13dが形成され、円弧面部13dのうち軸穴13aに近い基端部側に滑らかな段差部(ラチェット制御手段)13eが形成されている。また、軸穴13aから離れた先端部付近にはスイッチ操作片13fが設けられ、円弧面部13dとの反対側の側部には被押圧片(ラチェット制御手段、連動レバー連係部)13gが設けられている。ラチェット13は、フック12に接近して回動規制段部13cを該フック12のラチェット係合段部12eの移動軌跡上に位置させる(ラチェット係合段部12eと係合可能な)ラッチ位置(図7、図10)と、回動規制段部13cをラチェット係合段部12eの移動軌跡上から退避させる(ラチェット係合段部12eと係合しない)アンラッチ位置(図8)の間で回動可能であり、トーションばね(ラチェット付勢手段)17によって、ラッチ位置(図7から図10における反時計方向)に回動付勢されている。トーションばね17は、軸ピン15を囲むコイル部と、ラチェット13のばね掛け部13h及びベースプレート11のばね掛け穴11fに係合する一対のばね端部を備えている。
【0015】
軸ピン14はまた、クローズレバー20の軸穴20aにも挿通されており、クローズレバー20は、軸ピン14を中心として、フック12に対して独立して回動可能に支持されている。図4に示すように、クローズレバー20は、軸穴20aを中心とする半径方向に第1アーム20bと第2アーム20cを延設させたL字状をなし、同軸で回動するフック12のストライカ解放位置方向に位置する引込解除位置(図7、図8)と、該フック12のストライカ保持位置方向に位置する引込位置(図10)の間で回動可能である。
【0016】
クローズレバー20の第1アーム20bの先端部付近には、フック12の結合突起12hが当接可能な凹部20dと、軸ピン22が挿通支持される軸支持穴20eが形成されている。軸ピン22は連動レバー(ラチェット制御手段)21の軸穴21aに挿通され、連動レバー21は、軸ピン22を中心として回動可能にクローズレバー20上に枢着されている。図4に示すように、連動レバー21は、フック12の結合突起12hに対応する形状の結合凹部21bを側部に有し、該フック12の結合突起12hの移動軌跡上に結合凹部21bを位置させる(結合突起12hと係合可能な)結合位置(図8、図10)と、該フック12の結合突起12hの移動軌跡上から結合凹部21bを退避させた(結合突起12hと係合しない)結合解除位置(図7)との間で回動が可能である。連動レバー21はさらに、結合凹部21bの近傍に、ベースプレート11から離れる方向に突出する制御突起(回転規制手段)21cを有し、軸穴21aを有する基端部とは反対側の先端部に、ラチェット押圧突起21dが設けられている。
【0017】
ベースプレート11の軸支持穴11gには軸ピン24が固定され、軸ピン24に対して、オープンレバー(制御レバー)23に形成した軸穴23aが回動可能に嵌まっている。図5に示すように、オープンレバー23は、軸穴23aを中心として異なる方向へ延出された第1アーム23bと第2アーム(アーム部)23cを有し、第1アーム23bの先端部付近には、オープン操作ワイヤW(図1)が接続するワイヤ掛け部23dが形成され、軸穴23aとワイヤ掛け部23dの中間部にはスイッチ操作片23eが設けられている。オープン操作ワイヤWは、図示しないキー装置及び緊急解除ハンドルによって牽引操作可能である。第2アーム23cは、図7から図10のように平面視したときにラチェット13と概ね重なる位置にあり、連動レバー21の制御突起21cが挿入される連動レバー制御穴(ラチェット制御手段)(回転規制手段)23fと、フック12の結合突起12hに当接可能な回動規制壁(オープンレバー保持手段)(回転規制手段)23gと、後述するセクタギヤ26に対向するギヤ当接部23hが形成されている。連動レバー制御穴23fは、軸穴23aに近い側(クローズレバー20の引込位置方向)から第2アーム23cの先端部(クローズレバー20の引込解除位置方向)に向かうにつれて徐々に幅を広くする円弧状の長穴であり、それぞれ中心軸が異なる内側円弧面部(突起操作面)23f1と外側円弧面部(対向ガイド面)23f2を有している。オープンレバー23は、連動レバー制御穴23fを有する第2アーム23cを、ラチェット13のラッチ位置方向へ変位させるクローズ位置(図8、図10。結合補助位置)と、ラチェット13のアンラッチ位置方向へ変位させるオープン位置(図7。結合解除補助位置)との間で回動可能である。
【0018】
クローズレバー20の第2アーム20cに形成したばね掛け部20fと、オープンレバー23の第2アーム23cに形成したばね掛け部23iの間には、引張ばね(クローズレバー付勢手段、制御レバー付勢手段)25が張設されている。引張ばね25によって、クローズレバー20は、上記の引込解除位置側(図7から図10の時計方向)へ回動付勢され、オープンレバー23は、上記のクローズ位置側(図7から図10の時計方向)へ回動付勢されている。
【0019】
ベースプレート11の軸支持穴11hには軸ピン28が固定され、セクタギヤ26の軸穴26aが、軸ピン28に対して回動可能に嵌まっている。セクタギヤ26は、軸穴26aを中心とする扇状部の周縁に形成されたギヤ部26bと、オープンレバー23のギヤ当接部23hに当接可能なオープンレバー操作片26cを備えている。オープンレバー操作片26cの近傍には、クローズレバー20の第2アーム20cに対して係合可能なクローズレバー操作ピン26dが突設されている。ベースプレート11上に固定されるモータユニット27には、モータ27aによって正逆に回転駆動されるピニオン27bが設けられ、ピニオン27bがギヤ部26bに噛合している。このモータユニット27とセクタギヤ26が、電動駆動機構を構成している。
【0020】
ベースプレート11上には、ラチェット検知スイッチ(検知手段、第1のスイッチ)30と、オープンレバー検知スイッチ(検知手段、第2のスイッチ)31が設けられている。ラチェット検知スイッチ30は、ラチェット13に設けたスイッチ操作片13fによって押圧可能なスイッチであり、オープンレバー検知スイッチ31は、オープンレバー23に設けたスイッチ操作片23eによって押圧可能なスイッチである。具体的には、ラチェット検知スイッチ30は、ラチェット13が図7と図10に示すラッチ位置にあるときには、スイッチ操作片13fがスイッチ接片30aから離間したスイッチオフ状態にあり、ラチェット13が図8に示すアンラッチ位置に回動されると、スイッチ操作片13fがスイッチ接片30aを押圧してスイッチオン状態になる。また、オープンレバー検知スイッチ31は、オープンレバー23が図8と図10に示すクローズ位置にあるときには、スイッチ操作片23eがスイッチ接片31aから離間したスイッチオフ状態にあり、オープンレバー23が図7に示すオープン位置に回動されると、スイッチ操作片23eがスイッチ接片31aを押圧してスイッチオン状態になる。ラチェット検知スイッチ30とオープンレバー検知スイッチ31のオンオフ状態は電子制御ユニット(ECU)32に入力され、電子制御ユニット32によって、モータユニット27が後述するように制御される。
【0021】
ドアロック装置10はまた、セクタギヤ26の初期位置を検出するセクタギヤ位置検知センサ33(図1)と、モータ駆動によるオープン作動を行わせるためのオープン操作スイッチ34(図1)を備える。セクタギヤ位置検知センサ33は、モータユニット27内に設けたホールICからなり、作図の便宜上、モータユニット27の外側に概念的に示している。
【0022】
以上の構造のドアロック装置10の動作を、図7以下を参照して説明する。図7から図10はドアロック装置10の機構的な作動の態様を示し、図11から図13は電気的な制御を示すタイミングチャートである。機構図中のF1、F2、F3及びF4はそれぞれ、フック12、ラチェット13、クローズレバー20及びオープンレバー23に作用するばねの付勢力の方向を表している。以下に述べる各部材の回動方向は、図7から図10における回動方向である。また、モータ27aの駆動方向に関し、ドアを閉じさせる(ロックさせる)方向を正転、ドアロックを解除させる方向を逆転と呼ぶ。
【0023】
まず、図11に示す通常作動を説明する。図7は、図11のタイミングチャートにT1で示すトランクドア開放(全開)状態でのドアロック装置10を示している。このときフック12は、第2脚部12dをストライカ進入溝11a上に位置させ、第1脚部12cをストライカ進入溝11a上から退避させたストライカ解放位置にあり、ラチェット13は、フック12に接近する方向に回動されたラッチ位置にある。前述のように、ラチェット13は、ラッチ位置にあるときには、スイッチ操作片13fがラチェット検知スイッチ30のスイッチ接片30aを押圧しておらず、ラチェット検知スイッチ30はスイッチオフ状態にある。フック12とラチェット13のそれぞれの位置は、トーションばね16の付勢力F1とトーションばね17の付勢力F2によって維持される。具体的には、フック12は、第1脚部12cの側面がベースプレート11の立壁部11iに当て付くことによって、F1方向へのそれ以上の回動が制限され、ラチェット13は、ガイド突起13bをラチェットガイド溝11eの一端部に当接させることで、F2方向へのそれ以上の回動が規制されている。このとき、ラチェット押圧突部12fが段差部13eに当接している。
【0024】
図7のドア開放状態では、クローズレバー20は引込解除位置にあり、該クローズレバー20に軸ピン22を介して枢着された連動レバー21の制御突起21cが、オープンレバー23の連動レバー制御穴23fの下端部(幅広になっている側の端部)に当て付くことにより、引張ばね25が付勢するF3方向へのそれ以上の回動が規制されている。このとき、引張ばね25がクローズレバー20に及ぼす付勢力F3は、連動レバー21の制御突起21cを連動レバー制御穴23fの内側円弧面部23f1に押し付ける方向に作用しており、連動レバー21は、制御突起21cが内側円弧面部23f1に当て付くことによって、フック12に接近する方向への回動が規制され、フック12の結合突起12hに対して結合できない結合解除位置に保持されている。また、引込解除位置にあるクローズレバー20の第2アーム20cは、セクタギヤ26のクローズレバー操作ピン26dから離間している。この位置が、セクタギヤ位置検知センサ33によって検出されるセクタギヤ26の初期位置である。オープンレバー23は、回動規制壁23gがフック12の結合突起12hに当て付いて、引張ばね25に付勢されたF4方向への回動が規制され、オープン位置に保持されている。前述のように、オープンレバー23は、オープン位置にあるときには、スイッチ操作片23eがオープンレバー検知スイッチ31のスイッチ接片31aを押圧して、オープンレバー検知スイッチ31がスイッチオン状態にある。そして、ラチェット検知スイッチ30がオフ、オープンレバー検知スイッチ31がオンという信号入力の組み合わせによって、ECU32が図7のドア開放状態を検知する。
【0025】
トランクドアの閉成動作によって、ストライカSがストライカ進入溝11aに進入して第2脚部12dを押圧すると、フック12は、ストライカSをストライカ保持溝12b内に保持しつつ、トーションばね16の付勢力F1に抗して図7のストライカ解放位置から図8の引込開始位置へ反時計方向に回動される。すると、フック12のラチェット押圧突部12fがラチェット13の段差部13eを押し込んで、トーションばね17の付勢力F2に抗して、ラチェット13は図7のラッチ位置から図8に示すアンラッチ位置へ時計方向に回動される。ラチェット13がアンラッチ位置に回動すると、スイッチ操作片13fがスイッチ接片30aを押圧し、ラチェット検知スイッチ30がオフからオンに切り替わる(T2)。
【0026】
オープンレバー23の回動規制壁23gは第2アーム23cの長手方向に所定の長さを有しており、フック12が図7のストライカ解放位置から図8の引込開始位置に達する直前の切替位置(図示略)までは、回動規制壁23gがフック12の結合突起12hに当て付いて、オープンレバー23はクローズ位置(時計方向)への回動が規制されてオープン位置に保持され続けている。そして、引張ばね25がクローズレバー20を上記の引込解除位置側(図7から図10の時計方向)へ回動付勢し、オープンレバー23を上記のクローズ位置側(図7から図10の時計方向)へ回動付勢しているので、フック12の結合突起12hが回動規制壁23gとの対向位置から外れて回動規制が解除されると、引張ばね25の付勢力F4によって連動レバー21は、軸ピン22から制御突起21cの角部と連動レバー制御穴23fの底面23f3との接触部に向かって延びる直線L(図9参照)方向に付勢される(底面23f3と制御突起21cの接触はフック12が引込開始位置に達するまで維持される。)。図7及び図9の符号22Aで示すように、このとき制御突起21cの角部と底面23f3との接触部と軸ピン24とを結ぶ直線Lに対して軸ピン22は左側(即ち、オープンレバー23から見てクローズ位置側)に位置しているので、引張ばね25から連動レバー21に与えられた直線L方向の付勢力はオープンレバー23をオープン位置側に付勢するアシスト力となる。そのため、オープンレバー23は引張ばね25の付勢力に抗して微少距離だけオープン位置側に回転し回動規制壁23gと結合突起12hの間の摩擦抵抗を減じるので(このとき連動レバー21も軸ピン22周りに僅かに回転するがクローズレバー20は回転しない)、フック12はオープンレバー23に対して円滑に回転(摺動)できる。そして、フック12が上記切替位置を超えると、図8及び図9の符号22Bで示すように軸ピン22が直線Lの右側(即ち、オープンレバー23から見てオープン位置側)に位置するので(ターンオーバーするので。この状態はフック12が引込開始位置に達したときまで維持される。)、引張ばね25から連動レバー21に与えられた直線L方向の付勢力はオープンレバー23をクローズ位置側に付勢するアシスト力となる。このようなターンオーバーが生じるとオープンレバー23は引張ばね25の付勢力及び連動レバー21から受けるアシスト力によって図8に示すクローズ位置へ勢いよく回動する(T3)。オープンレバー23がクローズ位置に回動すると、連動レバー21の制御突起21cに対する連動レバー制御穴23fの内側円弧面部23f1による移動規制が解除されて、連動レバー21が、引張ばね25の付勢力F3によって軸ピン22を中心として時計方向に回動され、図7に示す結合解除位置から図8の結合位置に移動する。その結果、連動レバー21の結合凹部21bとクローズレバー20の凹部20dの間にフック12hの結合突起12hが挟着保持され、連動レバー21を介してフック12とクローズレバー20が一体化される。この状態が図8に示すハーフラッチ状態である。オープンレバー23がクローズ位置に回動すると、スイッチ操作片23eがスイッチ接片31aへの押圧を解除して、オープンレバー検知スイッチ31がオンからオフに切り替わる(T3)。そして、ラチェット検知スイッチ30がオン、オープンレバー検知スイッチ31がオフという信号入力の組み合わせによって、ECU32が図8のハーフラッチ状態を検知される。
【0027】
なお、図7のドア全開状態から図8のハーフラッチ状態になるとき、連動レバー21とオープンレバー23はいずれも時計方向に回動されるが、レバー比の相違によって、連動レバー21よりもオープンレバー23の第2アーム23cの先端付近の方が変位量が大きくなっている。そのため、連動レバー21の制御突起21cは、連動レバー制御穴23f内における幅方向への位置を相対的に変化させ、内側円弧面部23f1へ当接した状態(図7)から外側円弧面部23f2へ当接する状態(図8)に切り替わる。そして、この状態では、制御突起21cと外側円弧面部23f2の当接関係によって、結合解除位置への連動レバー21の回動が規制される。
【0028】
ハーフラッチ状態が検知されると、ECU32がモータユニット27のモータ27aを正転駆動させる(T4)。すると、ピニオン27bとギヤ部26bの噛合関係によってセクタギヤ26が図8中の時計方向に回動され(T5)、クローズレバー操作ピン26dがクローズレバー20の第2アーム20cを押圧し、クローズレバー20が図8の引込解除位置から図10の引込位置へ反時計方向に回動される。これにより、連動レバー21を介してクローズレバー20と一体化されたフック12も、図8の引込開始位置から図10のストライカ保持位置へ反時計方向に回動され、フック12のストライカ保持溝12bによってストライカSをストライカ進入溝11aの奥側へ引き込んでゆく。このとき、連動レバー21は、制御突起21cを連動レバー制御穴23fの外側円弧面部23f2に摺接させながら、結合凹部21bと結合突起12hの係合を維持した状態で、軸ピン14を中心として、クローズレバー20と一体的に移動される。すなわち、外側円弧面部23f2は、オープンレバー23がクローズ位置にあり、かつ連動レバー21が結合突起12hとの結合位置にあるときの、軸ピン14を中心とした制御突起21cの移動(回動)軌跡に沿って形成された円弧面である。そして、オープンレバー23がクローズ位置に保持されている間は、外側円弧面部23f2と制御突起21cの当接によって、結合凹部21bと結合突起12hの係合を解除する方向(結合解除位置)への連動レバー21の回動(軸ピン22を中心とした自転)が規制されている。換言すれば、外側円弧面部23f2は、ハーフラッチ状態からのクローズ作動時における連動レバー21の回動軌跡を決めるガイド面として機能する。
【0029】
フック12とクローズレバー20の結合体が図8のハーフラッチ状態からストライカSの引込方向に回動されている間は、フック12の第2脚部12dの先端部に形成した円弧状面12gが、ラチェット13の円弧面部13dに対して摺接し、ラチェット13は、トーションばね17の付勢力F2に抗して、図8のハーフラッチ状態と同様にアンラッチ位置に保持される。この間、オープンレバー23も、ハーフラッチ状態と同じくクローズ位置に保持される。すなわち、ラチェット検知スイッチ30がオン、オープンレバー検知スイッチ31がオフという状態が続く。そして、フック12が図10のストライカ保持位置まで回動されると、円弧状面12gが円弧面部13dとの対向位置から上方に逃げてラチェット13に対する回動規制が解除され、ラチェット13がトーションばね17の付勢力F2によってアンラッチ位置からラッチ位置(反時計方向)へ回動され、図10に示すように回動規制段部13cがラチェット係合段部12eに係合する。この回動規制段部13cとラチェット係合段部12eの係合により、ストライカ解放位置方向へのフック12の回動が規制され、ストライカSがストライカ進入溝11aの奥部に完全に保持されるフルラッチ状態(ドア全閉状態)となる。回動規制段部13cをラチェット係合段部12eに係合させるときのラチェット13の反時計方向回動により、スイッチ操作片13fがスイッチ接片30aに対する押圧を解除して、ラチェット検知スイッチ30がオンからオフに切り替わる(T6)。つまり、ラチェット検知スイッチ30とオープンレバー検知スイッチ31がいずれもオフになり、これによってフルラッチ状態が検知される。
【0030】
フルラッチ状態が検知されると、ECU32が、ラッチを確実にさせるために所定のオーバーストローク分のモータ正転駆動を継続させた後、モータ27aをオープン方向に逆転駆動させる(T7)。このモータ逆転駆動は、クローズ作動によって図10の位置まで回動されたセクタギヤ26を、図7に示す初期位置に戻すためのものであり、セクタギヤ位置検知センサ33によって初期位置への復帰が検知されると(T8)、モータ27aが停止される(T9)。このモータ停止状態で、クローズレバー操作ピン26dが第1アーム20bから離れて、セクタギヤ26からクローズレバー20への押圧力は解除されている。しかし、前述のように、ラチェット13との係合関係によって図10の時計方向(ストライカ解放方向)へのフック12の回動が規制されており、フック12と一体化されているクローズレバー20も、引張ばね25の付勢力4に抗して時計方向(引込解除位置方向)への回動が規制される。つまり、フルラッチ状態が維持される。
【0031】
フルラッチ状態においてオープン操作スイッチ34がオンされると(T10)、モータ27aが逆転駆動され(T11)、セクタギヤ26が図7に示す初期位置から反時計方向に回動される(T12)。すると、オープンレバー操作片26cがギヤ当接部23hを押圧し、オープンレバー23が、引張ばね25の付勢力F4に抗して図10のクローズ位置からオープン位置へ向けて反時計方向に回動され、オープンレバー検知スイッチ31がオフからオンに切り替わる(T13)。このオープンレバー23の反時計方向回動によって、連動レバー制御穴23fの内側円弧面部23f1が制御突起21cを押圧し、連動レバー21が軸ピン22を中心として反時計方向(結合解除位置)に回動(自転)される。図10から分かるように、フルラッチ状態では、連動レバー21の制御突起21cは、連動レバー制御穴23fのうち幅狭になっている上方領域に位置して内側円弧面部23f1との隙間が小さくなっているため、オープンレバー23がオープン位置に向けて回動したときに、内側円弧面部23f1が制御突起21cを押圧するまでのタイムラグは極めて小さい。そして、この連動レバー21の回動によって、結合凹部21bと結合突起12hの係合が解除され、フック12とクローズレバー20の結合が解除される。また、反時計方向に回動する連動レバー21のラチェット押圧突起21dがラチェット13の被押圧片13gを押圧して、トーションばね17の付勢力F2に抗して、ラチェット13がラッチ位置からアンラッチ位置へと時計方向に回動される(T14)。
【0032】
ラチェット13がアンラッチ位置へ回動することにより、回動規制段部13cとラチェット係合段部12eの係合、すなわちフック12に対する回動規制が解除されて、トーションばね16の付勢力F1によって、フック12が図10のストライカ保持位置から図7のストライカ解放位置へ向けて回動される。フック12との結合が解除されたクローズレバー20も、引張ばね25の付勢力F4によって図10の引込位置から図7及び図8の引込解除位置へ向けて時計方向に回動され、これに伴い、連動レバー21の制御突起21cは、内側円弧面部23f1に対して摺接しながら、連動レバー制御穴23f内を下端部(幅広端部)方向へ移動する。すなわち、連動レバー制御穴23fの内側円弧面部23f1は、オープンレバー23がオープン位置にあり、かつ連動レバー21が結合凹部21bと結合突起12hの係合を解除した結合解除位置にあるときに、軸ピン14を中心とした制御突起21cの移動(回動)軌跡に沿って形成された円弧面である。そして、オープンレバー23がオープン位置に保持されている間は、内側円弧面部23f1と制御突起21cの当接によって、結合凹部21bと結合突起12hを再係合させる方向(結合位置)への連動レバー21の回動(軸ピン22を中心とした自転)が規制されている。換言すれば、内側円弧面部23f1は、フルラッチ状態からのオープン作動時における連動レバー21の回動軌跡を決めるガイド面として機能する。
【0033】
クローズレバー20の引込解除位置への回動に伴って連動レバー21が所定量下方に移動したところで、該連動レバー21のラチェット押圧突起21dによる、ラチェット13の被押圧片13gに対するアンラッチ位置方向への押圧が解除される。しかし、フック12が図10のストライカ保持位置から図7のストライカ解放位置に達するまでの間は、フック12の第2脚部12dの円弧状面12gが、ラチェット13の円弧面部13dを押圧しており、トーションばね17の付勢力F2に抗してアンラッチ位置に保持され続ける。具体的には、クローズレバー20の引込位置(図10)から引込解除位置(図8)への回動量は、フック12のストライカ保持位置(図10)から引込開始位置(図8)までの回動量にほぼ等しく、オープン作動時には、クローズレバー20が図8の引込解除位置に達するよりも前の段階で、連動レバー21によるラチェット13のアンラッチ位置方向への押圧が解除される。一方、フック12の第2脚部12dによるラチェット13のアンラッチ位置方向への押圧は、連動レバー21よりも長く続き、フック12がストライカ解放位置(図7)に達し、ラチェット押圧突部12fがラチェット13の段差部13eを乗り越えて、互いの円弧面部12g、13dの当接が解除されると初めて、ラチェット13のラッチ位置への回動が許容される。そして、この回動許容が生じて初めて、トーションばね17の付勢力F2によって、ラチェット13がアンラッチ位置からラッチ位置へと復帰回動する(T15)。つまり、フック12がストライカ解放位置に達するまでは、ラチェット検知スイッチ30がオフ、オープンレバー検知スイッチ31がオンという、前述したドア開放状態の信号が入力されない。
【0034】
ドア開放状態が検知されると、ECU32が、ラッチ解除を確実にさせるために所定のオーバーストローク分のモータ逆転駆動を継続させた後、モータ27aをクローズ方向に正転駆動させる(T16)。このモータ正転駆動は、オープン作動に際して図7に示す初期位置から反時計方向に回動されたセクタギヤ26を、初期位置に戻すためのものであり、セクタギヤ位置検知センサ33によって初期位置への復帰が検知されると(T17)、モータ27aが停止されて(T18)、ドアロック装置10は図7に示すドア開放状態に戻る。
【0035】
図12は、図8のハーフラッチ状態から図10のフルラッチ状態になるまでの間に、オープン操作スイッチ34によるオープン(クローズキャンセル)操作があった場合の処理を示している。ハーフラッチ信号(ラチェット検知スイッチ30がオン、オープンレバー検知スイッチ31がオフ)の入力によってモータ27aが正転駆動され、セクタギヤ26が図8中の時計方向に回動されてクローズレバー20を引込位置へ向けて押圧回動しているところ(T5)までは、先に説明した通常作動と同じである。ここで、フルラッチ状態になる前にオープン操作スイッチ34がオンされると(T19)、ECU32はモータ27aを正転から逆転駆動に切り替える(T20)。すると、セクタギヤ26は、クローズレバー操作ピン26dによってクローズレバー20を押圧していた状態を解除する。これにより、トーションばね16と引張ばね25の付勢力F1、F3により、フック12とクローズレバー20の結合体は、図8のハーフラッチ状態の位置に戻る。セクタギヤ26は一旦初期位置に戻る(T21)が、モータ27aを停止させずに逆転駆動が継続される。すると、セクタギヤ26のオープンレバー操作片26cがギヤ当接部23hを押圧し、オープンレバー23が、引張ばね25の付勢力F4に抗してクローズ位置からオープン位置へ向けて反時計方向に回動され、この動作がオープンレバー検知スイッチ31によって検知される(T22)。
【0036】
図8のハーフラッチ状態においてオープンレバー23がオープン位置へ回動すると、所定の空走期間(制御突起21cの当接位置が外側円弧面部23f2から内側円弧面部23f1に切り替わる区間)の後、連動レバー制御穴23fの内側円弧面部23f1が制御突起21cを押圧して、連動レバー21がフック12の結合突起12hとの結合位置から結合解除位置に回動される。これによりフック12とクローズレバー20の結合が解除され、フック12がトーションばね16の付勢力F1によって単独で図8の引込開始位置から図7のストライカ解放位置に向けて回動される。フック12がストライカ解放位置に達したところで、第2脚部12dの円弧状面12gによる円弧面部13dの押圧が解除され、ラチェット13がラッチ位置からアンラッチ位置へ回動され、これがラチェット検知スイッチ30によって検知される(T23)。これによって、ラチェット検知スイッチ30がオフ、オープンレバー検知スイッチ31がオンという、ドア開放状態を示す信号となる。この信号が入力されたら、あとは通常作動時と同様に、オーバーストローク分の逆転駆動継続後にモータ27aを正転駆動に切り替えて(T24)、セクタギヤ26を初期位置に復帰させ(T25)、モータ27aを停止させる(T26)ことによって、図7に示すドア開放状態に復帰される。
【0037】
図13は、図8のハーフラッチ状態から図10のフルラッチ状態になるまでの間に、オープン操作スイッチ34に代えて、オープン操作ワイヤWを介した機械的なオープン(クローズキャンセル)操作があった場合の処理を示している。ハーフラッチ信号(ラチェット検知スイッチ30がオン、オープンレバー検知スイッチ31がオフ)の検出によってモータ27aが正転駆動され、セクタギヤ26が図8中の時計方向に回動されてクローズレバー20を押圧回動しているところ(T5)までは、先に説明した通常作動と同じである。ここでキー装置や緊急解除ハンドルの操作によってオープン操作ワイヤWが牽引されることにより(T27)、ワイヤ掛け部23dを引き上げようとする力が入力され、オープンレバー23がクローズ位置からオープン位置へ回動され、オープンレバー検知スイッチ31がオフ(クローズ位置)からオン(オープン位置)に切り替わる(T28)。このオープンレバー23の回動によって、連動レバー制御穴23fの内側円弧面部23f1が連動レバー21の制御突起21cを押圧し、連動レバー21が軸ピン22を中心として反時計方向に回動(自転)されて、フック12の結合突起12hとの結合を解除する。これによりクローズレバー20の結合が解除されたフック12が、トーションばね16の付勢力F1によって、図7のストライカ解放位置に向けて回動される。そしてフック12がストライカ解放位置に達したところで、第2脚部12dの円弧状面12gによる円弧面部13dの押圧が解除され、ラチェット13がラッチ位置からアンラッチ位置へ回動され、ラチェット検知スイッチ30がオンからオフに切り替わる(T29)。これとオープンレバー検知スイッチ31のオンとの組み合わせで、ドア開放状態が検知される。ドア開放状態が検知されると、ECU32がモータ27aを、クローズ用の正転駆動から逆転駆動に切り替え(T30)、セクタギヤ26が、クローズレバー20を押圧する位置から初期位置へ向けて回動される。セクタギヤ26が初期位置に戻ったことがセクタギヤ位置検知センサ33で検知されると(T31)、モータ27aが停止され(T32)、図7に示すドア開放状態に復帰する。
【0038】
以上のように、本実施形態のドアロック装置10では、フック12のクローズ動作時に(切替位置から引込開始位置に回転するときに)クローズレバー20とオープンレバー23を回転付勢するための付勢手段である引張ばね25の付勢力をアシスト力として利用しながらオープンレバー23をクローズ位置側に回転させているので、クローズレバー20と連動レバー21の間に付勢手段を設けていないにも拘わらず、連動レバー21をフック12と係合する結合位置に確実に回転させることが可能である。
しかも、フック12がストライカ解放位置側から切替位置まで回転する間は、引張ばね25の付勢力をオープンレバー23をオープン位置側に微少距離だけ回転付勢するアシスト力として利用し、切替位置を超えたときに引張ばね25の付勢力を反対方向(オープンレバー23をクローズ位置側に付勢する方向)にターンオーバーさせている。そのため、フック12が引込開始位置に達したときに連動レバー21の結合凹部21bをフック12hの結合突起12hに勢いよく係合させることが可能なので、連動レバー21の結合凹部21bとクローズレバー20の凹部20dの間でフック12hの結合突起12hを確実に挟着保持できる。
【0039】
さらにフック12がストライカ解放位置まで達したときに、ラチェット13をアンラッチ位置からラッチ位置に復帰動作させ、このラチェット復帰動作を参照してドアの開放(ラッチ解除、ロック解除)を検知している。これにより、フック12の位置を直接に検知せずに、すなわちフック12の周囲に検知手段を配する十分なスペースがなくてもドア開放状態を検出することが可能になった。そして、ドアロック装置10では、検知手段であるラチェット検知スイッチ30とオープンレバー検知スイッチ31を含めた各構成要素が、ベースプレート11上で予め位置決めされてユニット化されているため、取り扱いが容易であり、車両への組み付け時の面倒な調整も不要である。また、オープン作動時には、フック12がストライカ解放位置に達するまで、すなわちドアロックが完全に解除されるまではラッチ位置への復帰動作を行わないので、何らかのエラーでオープン作動の途中で止まってしまったような場合でも、これをドア開放と誤検出するおそれがない。例えば、オープン作動時に、所定の時間内にドア開放状態の信号入力(ラチェット検知スイッチ30がオフ、オープンレバー検知スイッチ31がオンの組み合わせ)が入力されない場合は、オープン作動のエラーと判断して、モータを停止させる、警告を出すなどの、適切な処理を実行させて安全性を確保することができる。
【0040】
また、以上のようなラチェット13の動作を達成するラチェット制御手段は、クローズレバー20に枢着した小型の連動レバー21やオープンレバー23に形成した連動レバー制御穴23fなど、スペース効率に優れた構造からなっており、ドアロック装置10の大型化を回避できる。
【0041】
以上、図示実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、図示実施形態はトランクドアのドアロック装置に適用したものであるが、本発明はトランクドア以外のドアにも適用が可能である。
さらに、フック12がストライカ解放位置から切替位置まで回転する間も、軸ピン22を図9の符号22Bで示す位置に位置させてもよい。このようにターンオーバーが生じない構成にした場合は、ターンオーバー時に制御突起21cと連動レバー制御穴23fの底面23f3とが互いに噛みつき、その後のオープンレバー23や連動レバー21などの回転動作が不円滑になるリスクを排除できる。
【符号の説明】
【0042】
10 ドアロック装置
11 ベースプレート
11a ストライカ進入溝
12 フック
12b ストライカ保持溝
12e ラチェット係合段部(係合部)
12f ラチェット押圧突部(ラチェット制御手段)
12g 円弧状面(ラチェット制御手段、ラチェット保持手段)
12h 結合突起(オープンレバー保持手段)(回転規制手段)
13 ラチェット
13c 回動規制段部
13d 円弧面部(ラチェット制御手段、ラチェット保持手段)
13e 段差部(ラチェット制御手段)
13f スイッチ操作片
13g 被押圧片(ラチェット制御手段、連動レバー連係部)
16 トーションばね
17 トーションばね(ラチェット付勢手段)
20 クローズレバー
20b 第1アーム
20c 第2アーム
20d 凹部
21 連動レバー(ラチェット制御手段)
21b 結合凹部
21c 制御突起(回転規制手段)
21d ラチェット押圧突起
22 軸ピン(枢着中心)
23 オープンレバー(制御レバー)
23b 第1アーム
23c 第2アーム(アーム部)
23e スイッチ操作片
23f 連動レバー制御穴(ラチェット制御手段)(回転規制手段)
23f1 内側円弧面部(突起操作面)
23f2 外側円弧面部(対向ガイド面)
23g 回動規制壁 (回転規制手段)
25 引張ばね(クローズレバー付勢手段、制御レバー付勢手段)
26 セクタギヤ(電動駆動機構)
26c オープンレバー操作片
26d クローズレバー操作ピン
27 モータユニット
27a モータ
27b ピニオン
30 ラチェット検知スイッチ(検知手段、第1のスイッチ)
31 オープンレバー検知スイッチ(検知手段、第2のスイッチ)
32 電子制御ユニット(ECU)
33 セクタギヤ位置検知センサ
34 オープン操作スイッチ
S ストライカ
W オープン操作ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に対して開閉可能なドアを全閉状態で保持するドアロック装置において、
上記ドアと車両本体の一方に設けたベースプレートと、他方に設けたストライカ;
上記ベースプレートに、ストライカの保持位置、解放位置、及び該保持位置と解放位置の間の引込開始位置に回動可能に支持され、上記ストライカ解放位置へ付勢されたフック;
該フックと同軸で回動可能にベースプレート上に支持され、該フックの上記ストライカ保持位置方向の引込位置と、上記ストライカ解放位置方向の引込解除位置の間で回動するクローズレバー;
上記フックが上記引込開始位置より解放位置側に位置するときは作動せず、解放位置側から引込開始位置まで移動したときに作動して上記クローズレバーを上記引込位置まで回転させるモータを有する電動駆動機構;
該クローズレバーを上記引込解除位置へ付勢するクローズレバー付勢手段;
上記フックが上記引込開始位置より上記解放位置側に位置する間、上記クローズレバー付勢手段の付勢力によってクローズレバーが上記引込解除位置側へ回転するのを規制する回転規制手段;
上記クローズレバーに枢着され、上記フックと係合して該クローズレバーとフックを一体化させる結合位置と、上記フックとの係合を解除してクローズレバーとフックを相対回動可能にさせる結合解除位置とに回動可能で、かつ制御突起を有する連動レバー;
上記ベースプレート上に回動可能に支持され、結合補助位置と結合解除補助位置の間を回動可能な制御レバー;
該制御レバーを上記結合補助位置へ付勢する制御レバー付勢手段;及び、
該制御レバーに設けた、上記制御突起が相対移動可能に嵌合し、制御レバーが上記結合補助位置方向へ回動するときは上記制御突起を介して上記連動レバーを上記結合位置側へ移動させ、制御レバーが上記結合解除補助位置方向へ回動するときは上記制御突起を介して上記連動レバーを上記結合解除位置側へ移動させる長穴からなる制御穴;
を備え、
上記ストライカの押圧力によって上記フックが上記解放位置側から上記引込開始位置に達するまで、クローズレバーが上記クローズレバー付勢手段に付勢されることにより上記制御突起が上記制御穴の長手方向の一方の端面との当接状態を維持し、
上記フックが上記引込開始位置に達したとき、上記制御突起と上記制御穴の上記端面との接触部と、上記制御レバーの上記ベースプレートに対する回動中心と、を結ぶ直線に対して、上記クローズレバーと連動レバーの枢着中心が上記結合解除補助位置側に位置し、連動レバーが上記結合位置に移動することを特徴とするドアロック装置。
【請求項2】
請求項1記載のドアロック装置において、
上記フックが上記解放位置から上記引込開始位置に達するまで、上記枢着中心が上記直線に対して上記結合解除補助位置側に位置するドアロック装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のドアロック装置において、
上記フックが上記解放位置から上記引込開始位置より手前の切替位置に達するまでは、上記枢着中心が上記直線に対して上記結合補助位置側に位置するドアロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−122353(P2011−122353A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280967(P2009−280967)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【Fターム(参考)】