説明

ドアークローザーの回転ダンパユニット、ドアークローザーのスプリングユニット

【課題】 各種ドア類を全開から閉塞途中までは速度調節可能に速く閉動作し、完全閉塞の直前から完全閉塞を低速調節可能に遅く閉動作させる速度制御系を備え、シンプルで耐久性を向上させたドアークローザーを提供する。
【解決手段】 筒体11とこの内部に回転軸体14と制動油Oを充填したドアークローザー100において、ドア2類が全開Iから閉塞途中IIへの閉口時は速く閉動作させる高速調節可能な第1速制御機構SC1と、完全閉塞の直前から完全閉塞IIIへの閉口時は遅く閉動作させる低速調節可能な第2速制御機構SC2と、からなる二段階速度制御系SCを具備したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ドアや開閉パネルや蓋類をその閉塞速度を制御しつつ自動閉塞する機能をヒンジ(蝶番)に装備したドアークローザーに係り、特に、各種ドアや開閉パネルや蓋類が全開から閉塞途中までは速度調節可能に速く閉動作し、完全閉塞の直前から完全閉塞を低速調節可能に遅く閉動作させる2速制御機構をシンプルで耐久性を向上させたドアークローザーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種ドアや開閉パネルや蓋類をその閉塞速度を制御しつつ自動閉塞する機能をヒンジ(蝶番)に装備したドアークローザー(回転ダンパー)が多数提供されている。例えば、手等で勢いよくドア等を閉方向に押すと、閉回転の終了時にドア等が枠体に勢いよく衝突して、ドア等や枠体が破損する場合がある。このため、筒体と軸体との間に形成される間隙に粘性液体を充填し、この間隙内に弁機構を設け、筒体が開方向に動作する時は大量の粘性液体が移動して比較的容易に開放動作させる一方で、逆に閉方向に動作する時は粘性液体の移動がオリフィス孔だけで行われて閉動作を遅動させる回転ダンパ構造を組み込んだヒンジが提供されている。また、回転ダンパを組み込むことにより、開動作をも遅動させることも行われている。
【0003】
その具体的なヒンジは、各々取付け板を備え、縦列に配置される複数の筒体を有するヒンジにおいて、該複数の筒体に跨るように配設される軸体であって、その一端側から軸方向に沿って所定の深さで設けられた溝部を有すると共に、該溝部の周壁に、軸方向に沿って、軸体の外周面及び筒体の内周面により形成される間隙と該溝部とを連通するオリフィス孔が所定間隔をおいて形成されている軸体と、該軸体の溝部内を進退可能に配設され、実質的に開口するオリフィス孔の数を調整可能なオリフィス調整桿と、を有するヒンジである。この筒体内に、バネ部材が配設されていて、ドア等を積極的に閉動作させたものである。そして、このヒンジによれば、オリフィス調整桿を進退させて、実質的に開口している軸体に形成されたオリフィス孔の数を増減させることができる構造を有しているため、使用者の好みやドア等の種類に応じて、容易に制動力を調整することができると、したものである(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
更に、別の自動復帰型ヒンジは、挿入孔が形成された軸部となる円筒部を有する内ウイングと、前記挿入孔に回転不能に挿入されるケーシングと、該ケーシングに対して所定方向回転のとき高トルクを発生し、該ケーシングの外方に突出し外周面が多角形状をした突出軸部を有する回転軸と、前記挿入孔に回転不能に挿入される外枠と、該外枠に回転可能に装着されて該外枠の外方に突出し外周面が多角形状をした突出軸部を有する回転軸と、前記外枠内に装着されて前記回転軸の所定方向回転の際に復帰力を発生するばね手段とを有するスプリングユニットと、前記回転ダンパユニットおよびスプリングユニットを前記挿入孔に挿入する際、中央に介在させて前記回転ダンパユニットおよび前記スプリングユニットをそれぞれ外方向に弾発させる弾発スプリングと、前記回転ダンパユニットの突出軸部および前記スプリングユニットの突出軸部の形状に対応する形状を有する嵌入孔が形成されている軸受け部を有する外ウィングと、から構成されている自動復帰型ヒンジとした。これにより、回転ダンパユニットおよびスプリングユニットを共に、ユニット化してヒンジの軸部となる円筒部の挿入孔に収納されて、自動復帰型のヒンジ組立てが非常に簡単でワンタッチで行なえる。また、一つのヒンジでダンパ機能および復帰機能が得られ、製造上複数の種類のヒンジを製造する必要がなく、ローコスト化が得られるとするものである(例えば、特許文献2を参照。)。
【0005】
更に、別のヒンジ機構は、低速時の速度制御の精度性等を向上したヒンジ機構を提供するもので、一対のロータリカムと、一対のスライドカムと、スプリング及びオリフィスを有する弁体と、をそれぞれ内蔵して備え、カム面とカム面との間には、両カム面の噛み合い位置が変化することにより体積が変化する第1の空間部を形成し、カム面とカム面との間には、両カム面の噛み合い位置が変化することにより体積が変化する第2の空間部を形成する。空間部と空間部とは、両スライドカムの中心孔を介して連通し、オイルが封入されたオイル室を構成し、ロータリカムとスライドカムとの筒部に対する周方向の初期位置を、空間部及び空間部の一方の体積が減少状態のとき、他方の体積が増大状態となるよう設定したものである(例えば、特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特許3641666号公報
【特許文献2】 特許3475307号公報
【特許文献3】 特開2000−161342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許3641666号公報のヒンジによると、オリフィス調整桿を進退させて、実質的に開口している軸体に形成されたオリフィス孔の数を増減させることができる構造を有しているため、使用者の好みやドア等の種類に応じて、容易に制動力を調整することができる。しかし、各種ドアや開閉パネルや蓋類が全開から閉塞途中までは速度調節可能に速く閉動作し、完全閉塞の直前から完全閉塞を低速調節可能に遅く閉動作させる2速制御ができず、ドア閉塞時の全開から閉塞までのスムーズなドアの閉塞動作が得られないという改善すべき問題点がある。
【0008】
また、上記特許3475307号公報の自動復帰型ヒンジによると、一つのヒンジでダンパ機能および復帰機能が得られ、製造上複数の種類のヒンジを製造する必要がなく、ローコスト化が得られるとする。しかし、各種ドア類を、全開から閉塞途中や完全閉塞時における速度制御機能がないから、ドアの閉口動作速度が固定化していて、安全な閉塞速度への調節ができず、ドア閉塞時の安全閉塞動作が得られないことによる危険回避や高質感のあるドア動作が得られないと云う問題点がある。
【0009】
また、上記特開2000−161342号公報のヒンジ機構によると、新提案のロータリカムとスライドムで構成されたヒンジ機構により、ドアの完全閉塞時において、低速閉塞させる速度制御の精度性等が向上されている。しかし、各種ドアや開閉パネルや蓋類が全開から閉塞途中までは速度調節可能に速く閉動作し、完全閉塞の直前から完全閉塞を低速調節可能に遅く閉動作させる2速制御ができず、ドア閉塞時の全開から閉塞までのスムーズなドアの閉塞動作が得られないという改善すべき問題点がある。
【0010】
本発明は、上記各ヒンジ機構の問題点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、各種ドア類を全開から閉塞途中までは速度調節可能に速く閉動作し、完全閉塞の直前から完全閉塞を低速調節可能に遅く閉動作させる速度制御系を備えることでシンプルで耐久性を向上させたドアークローザーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するべく本発明の請求項1によるドアークローザーの回転ダンパユニットは、筒体とこの内部に回転軸体と制動油を充填したドアークローザーの回転ダンパユニットにおいて、ドア類が全開から閉塞途中への閉口時は快速閉動作させるべく調節可能な第1速制御機構と、完全閉塞の直前から完全閉塞への閉口時は遅速閉動作させるべく調節可能な第2速制御機構と、からなる二段階速度制御系を具備したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2のドアークローザーの回転ダンパユニットは、請求項1のドアークローザーの回転ダンパユニットにおいて、上記二段階速度制御系となる第1速制御機構及び第2速制御機構は、回転軸体の外周のベーンと、このベーン前後に形成される各制動油室内の制動油を回転軸体の回転時に回転軸体内を流通させる各通路と、上記各通路に各々独立させドア類の開口動作時に制動油を流通させる逆止弁と、上記ドア類の閉口動作時に逆止弁で制動油を遮断するとともに制動油を流量制御する絞弁と、上記回転軸体の両端に各絞弁の調節軸と、を具備したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項3のドアークローザーのスプリングユニットは、筒体とこの内部に回転軸体と自動復帰用のコイルばねを装備しドア類を全開から全閉へ強制動作させるドアークローザーのスプリングユニットにおいて、上記回転軸体に嵌めた一対のスラスト円板間の窪みに複数の鋼球を介在させ、回転軸体の軸方向へ働く押圧力を複数枚の皿バネにより発生させる構成したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項4のドアークローザーの回転ダンパユニットは、請求項1または2のドアークローザーの回転ダンパユニットにおいて、ドア類を強制的に閉口操作するスプリングユニットを筒体とこの内部の回転軸体間に介在させたことを特徴とする。
【0015】
しかして、本発明の請求項1〜2のドアークローザーの回転ダンパユニットは、ドア類が全開から閉塞途中への閉口時は快速閉動作させるべく調節可能な第1速制御機構と、完全閉塞の直前から完全閉塞への閉口時は低速調節可能に遅く閉動作させる第2速制御機構とからなる二段階速度制御系を装備している。これにより、各種ドアや開閉パネルや蓋類が全開から閉塞途中までは使用者の好みの速度に各絞弁の調節軸の調節により快速閉動作され、完全閉塞の直前から完全閉塞までは使用者の好みに遅速閉動作させるべく、各絞弁の調節軸の調節により遅く閉動作させられる2速制御が行える。しかして、ドア閉塞時の全開から途中までは比較的速く閉じ動作し、途中から完全閉塞までは遅く閉じ動作する2速制御がスムーズに行われる。
【0016】
また、本発明の請求項3のドアークローザーのスプリングユニットは、回転軸体の軸方向へ働く押圧力を複数枚の皿バネにより発生させられるから、ドアを全開位置に強力にクランプさせられる。
【0017】
また、本発明の請求項4のドアークローザーの回転ダンパユニットは、請求項1または2のドアークローザーの回転ダンパユニットにおいて、請求項3のスプリングユニットを筒体とこの内部の回転軸体間に介在させたから、ヒンジを構成する一つの筒体内の回転軸に、ドア類のダンパ機能と自動復帰機能が働き、同種類の上下一対のヒンジをドアに設置するだけで、ドアークローザーの機能が果たせられ、ドア閉塞動作時において、全開から全閉塞までの各区間が速いから遅い2速制御がスムーズに行われる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のドアークローザーの回転ダンパユニットによると、各種ドアや開閉パネルや蓋類が全開から閉塞途中までは比較的に速く閉口動作し且つ繊細な速度調節でき、完全閉塞の直前から完全閉塞までは低速閉口動作し且つ繊細な速度調節できる2速制御機構を備えたドアークローザーが提供できる。更に、シンプルで耐久性の高いメカニズム、省スペース、低コスト、バックラッシュ除去効果の高く、高品質なドアークローザーが提供できる。
【0019】
また、本発明のドアークローザーのスプリングユニットによると、回転軸体の軸方向へ働く押圧力を複数枚の皿バネにより発生させられるから、ドアを全開位置に強力にクランプできる。
【0020】
また、本発明のドアークローザーの回転ダンパユニットによると、一つのドアークローザーに、ドア類を強制的に閉口操作するスプリングユニットを筒体とこの内部の回転軸体間に介在させたから、ヒンジを構成する一つの筒体内の回転軸に、ドア類のダンパ機能と復帰機能が発揮でき、製造上及び使用上において、複数種類のヒンジを製造及び使用する必要がなく、ドアークローザーの全ての製造工程や施工工程においてローコスト化が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】 本発明の第1の実施の形態を示し、ドアにドアークローザーを備えた斜視図である。
【図2】 本発明の第1の実施の形態を示し、スプリングユニットの断面図である。
【図3】 本発明の第1の実施の形態を示し、回転ダンパユニットの断面図である。
【図4】 本発明の第1の実施の形態を示し、回転ダンパユニットの筒体の断面図である。
【図5】 本発明の第1の実施の形態を示し、回転ダンパユニットの回転軸体の断面図である。
【図6】 本発明の第1の実施の形態を示し、ドアークローザーの作用線図である。
【図7】 本発明の第1の実施の形態を示し、二段階速度制御系の作用断面図である。
【図8】 本発明の第1の実施の形態を示し、二段階速度制御系の作用断面図である。
【図9】 本発明の第1の実施の形態を示し、二段階速度制御系の作用断面図である。
【図10】 本発明の第1の実施の形態を示し、二段階速度制御系の作用断面図である。
【図11】 本発明の第2の実施の形態を示し、ドアークローザーの断面図である。
【図12】 本発明の第3の実施の形態を示し、スプリングユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のドアークローザー100は、図1に概念図(ドア2への取付状態)を示し、具体的な第1の実施の形態を図2〜図5に示す。先ず、図1に示すように、ドアークローザー100は、住宅又は事務所等の出入口1に設置されたドア2において、ドア2の上下にヒンジタイプの回転ダンパユニット10とスプリングユニット20とを取り付けたものである。上記ドア2は、スプリングユニット20により、全開位置I(105°〜120°開口)から全閉位置III(0°閉口)へと途中位置II(90°〜30°閉口途中)を介して自動復帰動作される。また、回転ダンパユニット10により、ドア類が全開位置I(105°〜120°開口)から途中位置II(90°〜30°閉口途中)への閉口時は調節可能に速く閉動作され、全閉塞の直前から全閉位置III(0°閉口)への閉口時は調節可能に遅く閉動作される。尚、上記回転ダンパユニット10とスプリングユニット20との配置は上下逆の関係としても良い。
【0023】
先ず、図2に上記スプリングユニット20の詳細を示す。筒体21の両端内には軸受スリーブ22,23が螺合され、この軸受スリーブ22,23間に回転軸体24が回転可能に支持されている。上記回転軸体24の両端24A,24Bには、蝶番25の支持片25A,25BがボルトBで連結されている。また、筒体21の両端外には、蝶番26の支持片26Aが接着されている。上記筒体21内の回転軸体24との空間には、コイルバネ27が巻装され、その一端27Aは回転軸体24の止め孔24Cに掛止めされ、他端27Bは筒体21の壁面に螺着したボルトB2に掛止めされている。このコイルバネ27は、図6に示す作用線図に示すように、ドア2を全開位置I(105°〜120°開口)から全閉位置III(0°閉口)へと自動復帰させる旋回力Fが付与されている。勿論、この旋回力Fの調節は、図示しないが適宜に行えるように構成されている。また、二枚の蝶番25,26を全開状態でクランプすべく、クランプボール28が筒体21の壁面孔21Cに嵌められ、ボルトB3で蝶番25の桟25Cに取り付けられた板バネ29の押圧力F2により強くクランプされている。しかして、図1及び図6に示すように、ドア2を全開位置I(105°〜120°開口)に停止させる機能を果たしている。
【0024】
続いて、本発明の主体となる上記回転ダンパユニット10は、図3〜図5に示すように構成されている。先ず、筒体11は、図4に示すように、両端内面に雌ネジ11A,11Bが螺設され、且つ、内周面11Cのほぼ全長にわたり突辺11D,11Eが対向位置に配置されている。また、筒体11の外周面の一部には、蝶番16の支持片16Aが接着されている。そして、図3に示すように、上記筒体11の両端内には軸受スリーブ12,13が螺合され、この軸受スリーブ12,13間に回転軸体14がニードル軸受NとオイルシールOLを介して回転可能に支持されている。上記回転軸体14には、両端14A,14Bから軸芯方向に長い通孔14C,14Dが中間付近まで空けられていて、中腹に雄ねじM1,M2を設けた調節軸B3,B4が通孔14C,14Dの両端14A,14Bに近い位置に設けた雌ネジM3,M4に螺合されている。そして、上記調節軸B3,B4の外端が回転軸体14の両端14A,14Bから突出し、回転軸体14の両端14A,14Bに蝶番15の支持片15A,15Bが嵌められ、ナットN1,N2で連結されている。
【0025】
上記筒体11内の対向する突辺11D,11Eを境にした二つの空間(制動油室)S1,S2と、この空間内に挿入する回転軸体14における上下位置には、二段階速度制御系SCとなる第1速制御機構SC1及び第2速制御機構SC2を構成している。その詳細構成は、図3と図5に示すように、回転軸体14の外周対称位置に設けたベーン14F,14Gと、このベーンの前後に形成される各制動油室S1,S2内の制動油Oをドア2の開閉動作に基づく回転軸体14の回転時に、回転軸体内に設けた各々2本の通路孔L1,L2およびL3,L4を介して各制動油室S1,S2間に流通させるように回路構成されている。上記通路孔L2及び通路孔L3には、各々独立させドア2類の開口動作時に各制動油室S1,S2内の制動油Oを流通解除する一方、閉口動作時に逆方向に流動する各制動油室S1,S2内の制動油Oを停止させる第1逆止弁V1,第2逆止弁V2を内蔵させている。更に、上記通路孔L1,L4には、閉口動作時に各制動油室S1,S2内の制動油Oを流量制御する第1絞弁V3と,第2絞弁V4とを内蔵させている。上記第1絞弁V3と,第2絞弁V4とは、回転軸体14の両端に螺合する調節軸B3,B4の各々の先端部a,bを円錐形に形成し、調節軸B3,B4の回転により個別に絞り調節するものである。尚、上記第1逆止弁V1,第2逆止弁V2は、各球体Kが調節軸B3,B4の各々の先端部a,bの間に圧装したコイルばねCBにより通路孔L2及び通路孔L3の凹座部Zに加圧閉塞されている。
【0026】
しかして、第1速制御機構SC1において、上記第1逆止弁V1は、ドア2の開口操作時に、制動油Oが通路孔L2から通路L5を介して通路孔L1への流れを開放し、ドア2の閉口操作時には、制動油Oが通路孔L1から通路L5を介して通路孔L2への流れを遮断する。そして、上記第1絞弁V3は、ドア2の開閉動作に係わりなく各制動油室S1,S2間の制動油Oを少し絞った状態に流量制御するとともに、特に、ドア2が全開位置I(105°〜120°開口)から途中位置II(90°〜30°閉口途中)への閉口区間時に、制動油Oの流動量を僅かに絞った状態に調節可能として速く閉動作させる回路構成になっている。
【0027】
また、第2速制御機構SC2において、上記第2逆止弁V2は、ドア2の開口操作時に、制動油Oが通路孔L3から通路L6を介して通路孔L4への流れを開放し、ドア2の閉口操作時には、制動油Oが通路孔L4から通路L6を介して通路孔L3への流れを遮断する。そして、第2絞弁V4は、ドア2の開閉動作に係わりなく各制動油室S1,S2間の制動油Oの流動量を大きく絞った状態に流量制御するとともに、特に、途中位置II(90°〜30°閉口途中)から全閉位置III(0°閉口)への閉口区間時に、調節可能に遅く閉動作させる回路構成になっている。
【0028】
上記第1の実施形態のドアークローザー100における回転ダンパユニット20は、上記のように構成されており、図6〜図10に示すように作用する。先ず、ドア2が閉塞から全開への開口操作時は、ドア2の上下にヒンジタイプの回転ダンパユニット10とスプリングユニット20とが取り付けられているから、ドア2を全閉位置(III)から全開位置(I)への開口は、使用者により、スプリングユニット20の旋回力Fに打ち勝って強制的に開口操作する。このドア2の開口操作時、上記第1逆止弁V1と第2逆止弁V2は、制動油Oが一方の制動油室S2の通路孔L2(L3)から通路L5(L6)を介して他方の通路孔L1(L4)を介して他の制動油室S1への流れを良くし、制動力を解除する。この全開位置Iにドア2を保持すべく、スプリングユニット20に備えるクランプボール28が筒体21の壁面孔21Cに嵌められ、板バネ29の押圧力F2により強くクランプされる。
【0029】
続いて、ドア2を全開位置I(105°〜120°開口)から全閉位置III(0°閉口)への閉口操作は、以下の手順で行われる。先ず、上記ドア2を全開位置(I)から全閉位置(III)へ自動復帰させる閉口操作は、使用者により、先ず、全開位置(I)にクランプされているドア2を強制的に閉じ操作する。ここで、図6に示すように、ドア2は全開(I)の105°から90°へと僅かに旋回されると、クランプボール28が筒体21の壁面孔21Cから外れ、スプリングユニット20の旋回力Fにより、全閉位置(III)に向けて自動復帰が始まる。
【0030】
上記スプリングユニット20の旋回力Fによる全閉位置(III)へ自動復帰時において、ドア2が全開位置I(105°〜120°開口)から90°になり、ここから途中位置II(90°〜30°閉口途中)への閉口区間では、図6と図7と図8に示すように,第1速制御機構SC1の第1絞弁V3内に制動油Oが流通して最適な速度に調節された状態の第1速度制御にて閉動作される。即ち、第1速制御機構SC1において、ドア2の閉口操作時に、上記第1逆止弁V1は、制動油Oが通路孔L1から通路L5を介して通路孔L2への流れを遮断している。上記第1絞弁V3は、ドア2の開閉動作に係わりなく各制動油室S1,S2間の制動油Oを少し絞った状態に各制動油室S1からS1´へ,S2からS2´へ流量制御する。これにより、ドア2は比較的速いが軽快に感じられる安全な第1速度制御で閉口する。
【0031】
続く、途中位置II(90°〜30°閉口途中)から全閉位置III(0°閉口)への閉口操作は、図6と図9と図10に示すように,第1速制御機構SC2の第2絞弁V4内に制動油Oが流通して最適な速度に調節された状態の第2速度制御にて閉動作される。即ち、第2速制御機構SC2において、ドア2の閉口操作時に、上記第2逆止弁V2は、制動油Oが通路孔L4から通路L6を介して通路孔L3への流れを遮断している。第2絞弁V4は、ドア2の開閉動作に係わりなく各制動油室S1,S2間の制動油Oを大きく絞った状態に各制動油室S1からS1´へ,S2からS2´へ流量制御する。これにより、ドア2は非常に遅いが軽快且つ安全な第2速度制御で閉口動作して全閉位置III(0°閉口)に至り、回転軸体14のベーン14F,14Gが筒体11内の対向する突辺11D,11Eに当接して静かに停止する。
【0032】
上記ドア2のように、全開位置Iから全閉位置IIIに至る閉口作用は、各種ドアや開閉パネルや蓋類において適用される。そして、そのドア2が自動復帰する閉じ速度は、全開から閉塞途中までは使用者の好みの第1速制御に各絞弁V3,V4の調節軸B3,B4の調節により速く閉動作される。また、完全閉塞の直前から完全閉塞までは、使用者の好みの低速に各絞弁V3,V4の調節軸の調節により遅く閉動作させられる第2速制御が行える。かくして、ドア閉塞時の全開から閉塞までの2速制御がスムーズに行われる。
【0033】
本発明の第1の実施形態となるドアークローザー100によれば、下記の効果が得られる。先ず、本発明のドアークローザーによると、各種ドアや開閉パネルや蓋類が全開から閉塞途中までは比較的に速く閉口動作し且つ繊細な速度調節可能でき、完全閉塞の直前から完全閉塞までは低速閉口動作し且つ繊細な速度調節可能できる2速制御機構を備えたドアークローザーが提供できる。更に、シンプルで耐久性の高いメカニズム、省スペース、低コスト、バックラッシュ除去効果の高く、高品質なドアークローザーが提供できる。
【0034】
本発明は上記第1の実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨内において、設計変更が可能である。図11に示すように、本発明の第2の実施の形態となるドアークローザー200は、筒体11内において、筒体11と回転軸体14間に各々の機能となる回転ダンパユニット(ダンパ機能)10とスプリングユニット(復帰機能)20とを内装させた回転ダンパユニット(ダンパ機能)30の構成としても良い。その他の構成は、上記第1の実施の形態のドアークローザー100と同一に付き、同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
この構成によると、一つのドアークローザー200に、ドア類を強制的に閉口操作するスプリングユニット(復帰機能)20とドア類のダンパ機能の回転ダンパユニット(ダンパ機能)10とを筒体11とこの内部の回転軸体14間に介在させたから、ヒンジを構成する一つの筒体内の回転軸14に、ドア類のダンパ機能と自動復帰機能が働き、同種類の上下一対のヒンジをドアに設置するだけで、ドアークローザーの機能が果たせ、ドア閉塞時の全開から閉塞までの2速制御がスムーズに行われる。
【0036】
本発明の第2の実施形態となるドアークローザー200によれば、下記の効果が得られる。一つのドアークローザー200に、ドア類を強制的に閉口操作するスプリングユニット20を筒体11とこの内部の回転軸体14間に介在させたから、ヒンジを構成する一つの筒体内の回転軸に、ドア類のダンパ機能と復帰機能が得られ、製造上及び使用上において、複数種類のヒンジを製造及び使用する必要がなく、ドアークローザーの全ての製造工程や施工工程においてローコスト化が得られる。
【0037】
本発明の第3の実施の形態となるドアークローザー300は、図12に示し、スプリングユニット(復帰機能)40を設計変更したものである。その構成の特長は、スプリングユニット(復帰機能)20では、クランプボール28に対する押圧力F2を板バネ29によっていたが、これを一対のスラスト円板41,42間の窪み41A,42Aに複数(例えば4個)の鋼球43〜46を介在させ、その軸方向へ働く押圧力(例えば、300kg)F3を複数枚の皿バネ47によって強力に発生させたものである。その他の構成は、上記第1の実施の形態のスプリングユニット(復帰機能)20と同一に付き、同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
しかして、上記スプリングユニット(復帰機能)40によると、全開位置Iにドア2を保持すべく、スプリングユニット40に備える複数(例えば4個)の鋼球43〜46が一対のスラスト円板41,42間の窪み41A,42Aに嵌り、且つ複数枚の皿バネ47によって強力に軸方向へ押圧力(例えば、300kg)F3が働き、ドア2をより一層強くクランプされる。これにより、風や弱い外力による誤操作がなくなり、全開位置Iにドア2をより一層確実に保持できる。
【0039】
更に、本発明のドアークローザー100,200,300の各実施の形態に限定されない。例えば、細部の設計変更となる絞弁V3,V4や逆止弁V1,V2の形式や配置の変更が可能である。その他の構成細部の設計変更も発明の要旨内においてできる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のドアークローザー100,200,300は、住宅又は事務所等の出入口1に設置された実施例について説明した。しかし、これに限定されるものではなく、各種ドアや開閉パネルや各種の蓋類、更には、通常の産業機械・一般機械におけるドア・蓋類を枢支するヒンジ(蝶番)に装備させれば、このドア・蓋類を自動閉塞させるドアークローザーとしても広範囲にわたり適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 出入口
2 ドア
10 回転ダンパユニット
11 筒体
11A,11B 雌ネジ
11C 内周面
11D,11E 突辺
12,13 軸受スリーブ
14 回転軸体
14A,14B 両端
14C,14D 通孔
14F,14G ベーン
15 蝶番
15A,15B 支持片
20 スプリングユニット
21 筒体
21C 壁面孔
22,23 軸受スリーブ
24 回転軸体
24A,24B 両端
24C 止め孔
25 蝶番
25A,25B 支持片
25C 桟
26 蝶番
26A 支持片
27 コイルバネ
27B 他端
28 クランプボール
29 板バネ
30 回転ダンパユニット
40 スプリングユニット(復帰機能)
41,42 スラスト円板
41A,42A 窪み
43〜46 鋼球
47 複数枚の皿バネ
100〜300 ドアークローザー
I 全開位置
II 途中位置
III 全閉位置
B0 コイルばね
B3 調節ボルト
B3,B4 調節軸
B5,B6 ナット
F 旋回力
F2,F3 押圧力
G 凹座部
KO 球体
N ニードル軸受
M1,M2 雄ねじ
M3,M4 雌ネジ
OL オイルシール
O 制動油
SC 二段階速度制御系
SC1 第1速制御機構
SC2 第2速制御機構
S1,S2 制動油室
S1´,S2´ 制動油室
L1〜L6 通路孔
V1 第1逆止弁
V2 第2逆止弁
V3 第1絞弁
V4 第2絞弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体とこの内部に回転軸体と制動油を充填したドアークローザーの回転ダンパユニットにおいて、ドア類が全開から閉塞途中への閉口時は快速閉動作させるべく調節可能な第1速制御機構と、完全閉塞の直前から完全閉塞への閉口時は遅速閉動作させるべく調節可能な第2速制御機構と、からなる二段階速度制御系を具備したことを特徴とするドアークローザーの回転ダンパユニット。
【請求項2】
上記二段階速度制御系となる第1速制御機構及び第2速制御機構は、回転軸体の外周のベーンと、このベーン前後に形成される各制動油室内の制動油を回転軸体の回転時に回転軸体内を流通させる各通路と、上記各通路に各々独立させドア類の開口動作時に制動油を流通させる逆止弁と、上記ドア類の閉口動作時に逆止弁で制動油を遮断するとともに制動油を流量制御する絞弁と、上記回転軸体の両端に各絞弁の調節軸と、を具備したことを特徴とする請求項1記載のドアークローザーの回転ダンパユニット。
【請求項3】
筒体とこの内部に回転軸体と自動復帰用のコイルばねを装備しドア類を全開から全閉へ強制動作させるドアークローザーのスプリングユニットにおいて、上記回転軸体に嵌めた一対のスラスト円板間の窪みに複数の鋼球を介在させ、回転軸体の軸方向へ働く押圧力を複数枚の皿バネにより発生させる構成したことを特徴とするドアークローザーのスプリングユニット。
【請求項4】
請求項1または2記載のドアークローザーの回転ダンパユニットにおいて、ドア類を強制的に閉口操作する請求項3記載のスプリングユニットを筒体とこの内部の回転軸体間に介在させたことを特徴とするドアークローザーの回転ダンパユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−64050(P2011−64050A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237736(P2009−237736)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(592040619)株式会社ヤマザキ (10)
【Fターム(参考)】