説明

ナノインプリント用テンプレート及びパターン転写装置

【課題】高精度な位置合わせを弊害なく実現する。
【解決手段】実施形態に係わるナノインプリント用テンプレートは、同一面に転写パターン16a及びアライメントマークAM2を備え、アライメントマークAM2は、偏光子又は位相差フィルム17により構成される。そして、ナノインプリント技術による基板上へのパターン転写時に、偏光を用いることにより、又は、光の位相差を検出することにより、基板とナノインプリント用テンプレートとの位置合わせを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、ナノインプリント用テンプレート及びパターン転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上に微細パターンを形成するに当たり、低コスト化の観点から、ナノインプリント技術が採用され始めている。ナノインプリント技術は、微細パターンを有するテンプレートを基板上に塗布された樹脂に押し付けて、テンプレートから基板上の樹脂にパターンの転写を行う技術のことである。
【0003】
ここで、パターン転写時には、テンプレートと基板(例えば、半導体ウェハ)との位置合わせを行う必要があり、その位置合わせには両者に形成されたアライメントマークを使用する。しかし、テンプレートと樹脂(例えば、レジスト)の光の屈折率が非常に近いため、パターン転写時に、テンプレートのアライメントマーク内に樹脂が満たされると、それが見えなくなってしまい、高精度な位置合わせが困難になる。
【0004】
これを解決するための技術として以下が提案されている。
【0005】
一つは、テンプレート上にMORTと呼ばれる物理的な堰を設け、パターン転写時に、樹脂がアライメントマーク内に進入することを防止する技術である。しかし、この技術の場合、MORTを設けることにより、微細パターンを形成する領域が小さくなる、という弊害が生じる。
【0006】
他の一つは、テンプレートに段差を有する第1及び第2の面を設け、第1の面(基準面)に微細パターンを形成し、第2の面(オフメサ部)にアライメントマークを形成し、パターン転写時に、樹脂がアライメントマーク内に満たされないようにする技術である。しかし、この技術の場合、微細パターンが形成される面とアライメントマークが形成される面とが異なることから、高精度な位置合わせが困難になる。また、テンプレートの製造時に、微細パターンとアライメントマークとを別々に形成しなければならないため、製造コストが増加する問題も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−147328号公報
【特許文献2】米国特許第4454614号公報
【特許文献3】特開2004−348050号公報
【特許文献4】特開2009−105252号公報
【特許文献5】特表2008−509825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
実施形態は、高精度な位置合わせを弊害なく実現するナノインプリント用テンプレート及びパターン転写装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、ナノインプリント技術による基板上へのパターン転写時に用いるナノインプリント用テンプレートは、同一面に転写パターン及びアライメントマークを備え、前記アライメントマークは、偏光子により構成される。
【0010】
この場合、パターン転写装置は、前記ナノインプリント用テンプレートの位置を計測する位置計測部と、前記ナノインプリント用テンプレートの位置を制御する制御部とを備え、前記位置計測部は、前記ナノインプリント用テンプレートのアライメントマークへの照射光の偏光方向を調整する偏光調整部を備える。
【0011】
実施形態によれば、ナノインプリント技術による基板上へのパターン転写時に用いるナノインプリント用テンプレートは、同一面に転写パターン及びアライメントマークを備え、前記アライメントマークは、位相差フィルムにより構成される。
【0012】
この場合、パターン転写装置は、前記ナノインプリント用テンプレートの位置を計測する位置計測部と、前記ナノインプリント用テンプレートの位置を制御する制御部とを備え、前記位置計測部は、前記ナノインプリント用テンプレートのアライメントマークからの反射光の位相差を検出する位相差検出計を備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】パターン転写装置の主要部を示す図。
【図2】テンプレートを示す図。
【図3】パターン転写方法を示すフローチャート。
【図4】パターン転写方法の1ステップを示す図。
【図5】パターン転写方法の1ステップを示す図。
【図6】パターン転写方法の1ステップを示す図。
【図7】パターン転写方法の1ステップを示す図。
【図8】位置計測部の例を示す図。
【図9】位置計測部の例を示す図。
【図10】位置計測部の例を示す図。
【図11】パターン転写装置の全体を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
【0015】
図1は、パターン転写装置の主要部を示している。
【0016】
このパターン転写装置は、ナノインプリント技術による基板上へのパターン転写時(例えば、ナノインプリントフォトリソグラフィ時)に使用される。
【0017】
基板(例えば、半導体基板)11は、アライメントマークAM1を有し、ナノインプリント用テンプレート12は、アライメントマークAM2を有する。位置計測部13は、第1の光L1を用いて基板11のアライメントマークAM1を検出することにより基板11の位置を計測する。また、位置計測部14は、第2の光L2を用いてナノインプリント用テンプレート12のアライメントマークAM2を検出することによりナノインプリント用テンプレート12の位置を計測する。
【0018】
制御部15は、位置計測部13,14からの情報に基づき、基板11及びナノインプリント用テンプレート12の相対位置を制御する。
【0019】
本例では、アライメントマークAM1を検出するために位置計測部13を設け、アライメントマークAM2を検出するために位置計測部14を設けている。しかし、位置計測部13,14のうちの1つを用いて、2つのアライメントマークAM1,AM2を同時に検出することも可能である。この場合、位置計測部13,14のうちの1つを省略できる。
【0020】
図2は、ナノインプリント用テンプレートを示している。
【0021】
本例のテンプレートは、同一面に転写パターン16a及びアライメントマークAM2を備える。これは、アライメントマークAM2が形成される面と転写パターン16aが形成される面とが異なると、その段差により高精度な位置制御が不可能になるためである。
【0022】
しかし、パターン転写時に、転写パターン16a内に樹脂を満たすとき、同時に、アライメントマークAM2内にも樹脂が満たされる。この場合、テンプレートと樹脂(例えば、レジスト)の光の屈折率が非常に近いことから、アライメントマークAM2が見えなくなってしまう問題が発生する。
【0023】
そこで、本例では、アライメントマークAM2は、偏光子17a又は位相差フィルム17bにより構成される。
【0024】
例えば、アライメントマークAM2を偏光子(例えば、偏光フィルム)17aから構成すれば、アライメントマークAM2への照射光の偏光方向を調整することにより、アライメントマークAM2内に樹脂が満たされても、アライメントマークAM2を検出できる。
【0025】
また、アライメントマークAM2を位相差フィルム17bから構成すれば、アライメントマークAM2からの反射光の位相差を検出することにより、アライメントマークAM2内に樹脂が満たされても、アライメントマークAM2を検出できる。
【0026】
尚、偏光子17a又は位相差フィルム17bは、図2(a)に示すように、テンプレート12の凹部内に形成し、従来のアライメントマークと組み合わせてもよいし、図2(b)に示すように、偏光子17a又は位相差フィルム17bのみによりアライメントマークAM2を構成してもよい。
【0027】
図3は、図1のパターン転写装置及び図2のテンプレートを用いたパターン転写方法を示している。また、図4乃至図7は、それぞれ、図3のパターン転写方法の1ステップを示している。
【0028】
本例では、基板11上に、絶縁層18、導電層19及びレジスト層20を形成し、テンプレート12のパターンをレジスト層20に転写する例を説明する。
【0029】
まず、基板11のアライメントマークAM1及びテンプレート12のアライメントマークAM2を検出し、基板11とテンプレート12との位置合わせを行う。この後、基板11上に樹脂を塗布し、レジスト層20を形成する(ステップST1〜ST2)。
【0030】
この状態を図4に示す。
【0031】
そして、基板11とテンプレート12との位置関係を保った状態で、テンプレート12を樹脂(レジスト層20)に押し付ける(ステップST3)。
【0032】
ここで、テンプレート12をレジスト層20に押し付けるに当たっては、基板11のみを移動させてもよいし、テンプレート12のみを移動させてもよいし、さらには、両者を移動させてもよい。
【0033】
テンプレート12がレジスト層20に押し付けられた状態では、図5に示すように、アライメントマークAM2内に樹脂(レジスト層20)が満たされる。しかし、アライメントマークAM2は、偏光子17a又は位相差フィルム17bにより検出できるので、この状態においても、図1の制御部15は、基板11とテンプレート12との位置関係を把握し続けることができる。
【0034】
従って、仮に、両者の位置関係が所定の関係を満たしていないときは、テンプレート12がレジスト層20に押し付けられた後であっても、これを所定の関係を満たすように微修正することが可能である。
【0035】
そして、レジスト層20を固化させた後、テンプレート12をレジスト層20から剥がすと、図6に示すように、レジスト層20にテンプレートのパターン16bが転写される。この後、レジスト層20をマスクにして導電層19をエッチングすると、図7に示すように、導電層19のパターン16cが形成される。
【0036】
ここで、アライメントマークがテンプレート表面の凹凸と、偏光子17a又は位相差フィルム17bとにより構成されるとき(例えば、図2(a)の場合)、図7に示すように、テンプレートのアライメントマークは、導電層19に転写され、新たなアライメントマークXを形成する。
【0037】
このアライメントマークXは、導電層19よりも上の層に新たなパターンを形成するときに、基板とテンプレートとの位置合わせに使用することが可能である。
【0038】
図8乃至図10は、図1のパターン転写装置の位置計測部14の例を示している。
【0039】
図8は、テンプレートのアライメントマークが偏光子を備えるときの位置計測部14の構成例である。この例では、位置計測部14は、アライメントマークへの照射光を発生する光源21と、照射光の偏光方向を調整する偏光調整部22と、アライメントマークからの反射光を検出する検出部23とを備える。
【0040】
この場合、図1の制御部15の制御の下で、偏光子の偏光方向と偏光調整部の偏光方向との組み合わせを変えることにより、テンプレートのアライメントマークが樹脂により充填されても、アライメントマークとその周辺とのコントラストを観測することができる。
【0041】
従って、高精度な位置合わせを弊害なく実現することができる。
【0042】
図9は、テンプレートのアライメントマークが位相差フィルムを備えるときの位置計測部14の構成例である。この例では、位置計測部14は、アライメントマークへの照射光を発生する光源21と、アライメントマークからの反射光の位相差を検出する位相差検出計24を有する検出部23とを備える。
【0043】
この場合、図1の制御部15の制御の下で、反射光の位相差を検出することにより、テンプレートのアライメントマークが樹脂により充填されても、アライメントマークとその周辺とのコントラストを観測することができる。
【0044】
従って、高精度な位置合わせを弊害なく実現することができる。
【0045】
図10は、テンプレートのアライメントマークが凹凸のみから構成されるとき(コンベンショナルなアライメントマークを用いるとき)の位置計測部14の構成例である。この例では、位置計測部14は、アライメントマークへの照射光を発生する光源21と、アライメントマークからの反射光の屈折率の変化を検出する干渉計25を有する検出部23とを備える。
【0046】
この場合、図1の制御部15の制御の下で、テンプレートのアライメントマークが樹脂により充填される前は、撮像装置(CCD、CMOSイメージセンサなど)を用いた通常の位置合わせを行い、テンプレートのアライメントマークが樹脂により充填された後は、干渉計25を用いて反射光の屈折率の変化を検出する。
【0047】
干渉計(例えば、微分干渉計)25は、アライメントマークと樹脂との微小な屈折率の変化を検出できるため、両者の界面を観測することができる。
【0048】
従って、高精度な位置合わせを弊害なく実現することができる。
【0049】
図11は、適用例としてのパターン転写装置を示している。
【0050】
パターン転写装置は、位置計測部13,14、基板ホルダ31、テンプレートホルダ32、アライメント計測部33、樹脂塗布部34、及び、制御部15を備える。また、ここでは図示しないが、パターン転写装置は、樹脂を固化させるための紫外線の光源を備えていてもよい。
【0051】
基板ホルダ31は、例えば、真空チャックによりアライメントマークAM1を有する基板11を保持する。基板ホルダ31は、基板11を水平方向(x−y方向)に移動させる機構を備える。また、基板ホルダ31は、基板11を垂直方向(z方向)に移動させる機構を備えていてもよい。
【0052】
テンプレートホルダ32は、例えば、真空チャックによりナノインプリント用テンプレート12を保持する。テンプレートホルダ32は、テンプレート12を垂直方向(z方向)に移動させる機構を備える。テンプレート12は、基板11と対向する面に、転写パターン及びアライメントマークAM2を有する。
【0053】
アライメント計測部33は、基板11上に形成された所定のマークパターンの位置の計測を行う。この計測結果は、制御部15に転送される。
【0054】
樹脂塗布部34は、基板11上に樹脂20を塗布する機能を有する。
【0055】
位置計測部13は、第1の光L1を用いて基板11のアライメントマークAM1を検出することにより基板11の位置を計測する。また、位置計測部14は、第2の光L2を用いてナノインプリント用テンプレート12のアライメントマークAM2を検出することによりナノインプリント用テンプレート12の位置を計測する。既に述べたように、位置計測部13,14のうちの1つは、省略することも可能である。
【0056】
制御部15は、位置計測部13,14、基板ホルダ31、テンプレートホルダ32、アライメント計測部33、及び、樹脂塗布部34の動作を制御する。
【0057】
このようなパターン転写装置を用いれば、パターン転写時に高精度な位置合わせを弊害なく実現することができる。
【0058】
実施形態によれば、高精度な位置合わせを弊害なく実現するナノインプリント用テンプレート及びパターン転写装置を実現できる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
11: 基板、 12: ナノインプリント用テンプレート、 13,14: 位置計測部、 15: 制御部、 16a,16b,16c: パターン、 17a: 偏光子、 17b: 位相差フィルム、 18: 絶縁層、 19: 導電層、 20: レジスト層、 21: 光源、 22: 偏光調整部、 23: 検出部、 24: 位相差検出計、 25: 干渉計、 31: 基板ホルダ、 32: テンプレートホルダ、 33: アライメント計測部、 34: 樹脂塗布部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノインプリント技術による基板上へのパターン転写時に用いるナノインプリント用テンプレートにおいて、同一面に転写パターン及びアライメントマークを備え、前記アライメントマークは、偏光子により構成されることを特徴とするナノインプリント用テンプレート。
【請求項2】
ナノインプリント技術による基板上へのパターン転写時に用いるナノインプリント用テンプレートにおいて、同一面に転写パターン及びアライメントマークを備え、前記アライメントマークは、位相差フィルムにより構成されることを特徴とするナノインプリント用テンプレート。
【請求項3】
請求項1に記載のナノインプリント用テンプレートの位置を計測する位置計測部と、前記ナノインプリント用テンプレートの位置を制御する制御部とを具備し、前記位置計測部は、前記ナノインプリント用テンプレートのアライメントマークへの照射光の偏光方向を調整する偏光調整部を備えることを特徴とするパターン転写装置。
【請求項4】
請求項2に記載のナノインプリント用テンプレートの位置を計測する位置計測部と、前記ナノインプリント用テンプレートの位置を制御する制御部とを具備し、前記位置計測部は、前記ナノインプリント用テンプレートのアライメントマークからの反射光の位相差を検出する位相差検出計を備えることを特徴とするパターン転写装置。
【請求項5】
ナノインプリント技術によりナノインプリント用テンプレートから基板へのパターン転写を行うパターン転写装置において、前記ナノインプリント用テンプレートの位置を計測する位置計測部と、前記ナノインプリント用テンプレートの位置を制御する制御部とを具備し、前記位置計測部は、前記ナノインプリント用テンプレートのアライメントマークからの反射光の屈折率の変化を検出する干渉計を備えることを特徴とするパターン転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−64810(P2012−64810A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208540(P2010−208540)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】