説明

ナノインプリント用硬化性組成物および硬化物

【課題】 表示装置に用いても表示ムラの発生しない微細パターンを提供可能なナノインプリント用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(A)重合性単量体および(B)光重合開始剤を含有し、硬化後の鉛筆硬度が2H以上である、ナノインプリント用硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント用硬化性組成物に関する。好ましくは、光照射を利用した微細パターン形成のための光ナノインプリント用硬化性組成物に関するものである。特に、表示装置の構成部材に用いるナノインプリント用硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、微細パターニングを行う方法が種々検討されている。
例えば、特許文献1には、半導体製造に際して、100nmレベルのパターニング技術として、スタンピング成形であるナノインプリントの技術が開示されている。該特許文献1には、25nm以下のサイズを持つパターンのモールドを形成し、これをレジスト膜に押し付けることでレジストの微細パターニングを行なう方法が開示されている。しかし、該文献に開示された技術ではレジストとして、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の硬化収縮の大きい材料を使用しており、モールドとの寸法差が大きくなり、微細な部分の転写がうまくできないことや歩留まりの低下等の問題がおこる。
【0003】
また、ナノインプリントにおいては、スタンパと、高分子膜(レジスト)との剥離性を向上させることが重要な課題となっていることは広く知られている。ここで、スタンパに設けられるパターンが今後さらに微細化することが予想されることから、スタンパの転写性能のさらなる向上が求められている。
【0004】
そこで、材料の硬化に伴う収縮を低減させ、剥離性を向上させることが検討されている。
例えば、特許文献2には、シアン酸エステルモノマーまたはオリゴマーを転写材料として使用することで硬化収縮を低減できることが記載されている。さらに、特許文献3には、基板側に配置された深層部と、前記深層部上に配置され、前記深層部に比してフッ素化合物含有量が多い表層部とを備えることを特徴とするインプリント用レジスト膜が開示されている。そして、該レジスト膜により剥離性を向上でき、微細パターンを繰り返しきれいに形成できることが記載されている。
また、特許文献4には、フッ素ポリマー等を含む硬化性組成物を用いることにより、硬化収縮を低減させ、剥離性を向上させることができることが記載されている。
このように従来技術により、材料の硬化に伴う収縮にかかる問題については、種々の解決手段が知られている。
【0005】
一方、ナノインプリント法は、液晶表示装置(LCD)やプラズマ表示装置(PDP)などの表示装置へ応用されている。特に、LCD用基板やPDP用基板の大型化や高精細化の動向に伴い、薄膜トランジスタ(TFT)や電極板の製造時に使用する従来のフォトリソグラフィ法に代わる安価なリソグラフィとして光ナノインプリント法が、近年注目されている。そのため、従来のフォトリソグラフィ法で用いられるエッチングフォトレジストに代わる光硬化性レジストの開発が必要になってきている。ここで、LCDなどの構造部材のレジストのように最終的にディスプレイ内に残るものは、“永久レジスト”、あるいは“永久膜”と称されることがある。また、液晶ディスプレイにおけるセルギャップを規定するスペーサも永久膜の一種である。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5772905号公報
【特許文献2】特開2004−71934号公報
【特許文献3】特開2006−80447号公報
【特許文献4】特開2007−1250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本願発明者が検討した結果、従来技術で作成した微細パターンを、表示装置などに組み込んだ時には問題があることが判明した。すなわち、従来技術で得られる微細パターンを保護膜やスペーサに用いて液晶表示装置を作成すると、ムラが発生してしまうことがわかった。また、従来技術で得られる微細パターンを、有機EL素子等の他の表示装置に用いても、同様に表示ムラが発生してしまう。
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、表示装置に用いても表示ムラの発生しない微細パターンを提供可能なナノインプリント用硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、驚くべきことに、ナノインプリント用組成物の硬化後の鉛筆硬度が2Hとなる組成物を用いることにより、該組成物を用いて得られる微細パターンを用いた表示装置の表示ムラが著しく軽減されることを見出した。具体的には、以下の手段により、達成された。
【0010】
(1)(A)重合性単量体および(B)光重合開始剤を含有し、硬化後の鉛筆硬度が2H以上である、ナノインプリント用硬化性組成物。
(2)粘度が18〜100mPa・sである、(1)に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(3)230℃で40分間加熱して硬化させた後の透過率が90%以上である、(1)または(2)に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(4)(A)重合性単量体として、重合性基を2つ以上有する重合性単量体を含む、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(5)(A)重合性単量体として、重合性基を3つ以上有する重合性単量体を含む、(1)〜(4)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(6)(A)重合性単量体が有する重合性基が、(メタ)アクリル基および/またはエポキシ基である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(7)さらに、(C)界面活性剤を含有する、(1)〜(6)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(8)(C)界面活性剤がフッ素系界面活性剤である、(7)に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(9)さらに、(D)酸化防止剤を含有する、(1)〜(8)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(10)(D)酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系化合物である、(9)に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(11)(1)〜(10)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
(12)(11)に記載の硬化物を製造する方法であって、少なくとも(1)〜(10)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物を基板に塗布する工程と、
前記塗布物にモールドを押圧する工程と、
前記塗布物に光照射する工程とを、
この順番に含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
(13)(11)に記載の硬化物を有する表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物を用いた微細パターンを表示装置に用いることにより、表示装置の表示ムラを著しく軽減することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0013】
本明細書において、本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、単に、「本発明の組成物」ということがある。また、本明細書において、本発明の組成物を硬化したものを、単に、「本発明の硬化物」ということがある。また、本明細書において、“(メタ)アクリレート”は“アクリレート”および“メタクリレート”を表す。本発明における重合性単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、“重合性基”は重合に関与する基をいう。
また、本発明でいうナノインプリントとは、およそ数十nmから数十μmのサイズのパターン転写をいい、ナノオーダーのものに限定されるものではない。
【0014】
本発明の組成物は、硬化後の鉛筆硬度が2H以上であり、好ましくは3H以上であり、より好ましくは4H以上である。鉛筆硬度をこの範囲にすることでより高品位な表示装置を作成することができる。鉛筆硬度の上限は特に定めるものではないが、通常、9H以下である。
組成物の硬化後の鉛筆硬度を高める手段は特に定めるものではないが、例えば、(A)重合性単量体として、重合性基の数が多いもの(多官能化合物)を採用することや、ベーク時間を長くすることが挙げられる。
【0015】
本発明の組成物は、硬化前の粘度が、18〜100mPa・sであることが好ましい。このような粘度のものを採用することにより、本発明の硬化物を表示装置に組み込んだ際の表示ムラをより改善できる。本発明の組成物の硬化前の粘度は、18〜50mPa・sであることがより好ましい。
【0016】
本発明の組成物は、230℃で40分間加熱して硬化させた後の透過率が90%以上であることが好ましい。ここで、本発明の組成物の透過率は以下のような方法で評価することができる。本発明の組成物をガラス基板上にスピンコートし、モールドを圧着せずに露光し、その後オーブンで230℃、40分間加熱して硬化させた膜の波長400〜410nmにおける透過率を測定し、算術平均する。別途膜厚も測定し、1μmあたりの透過率を計算する。
230℃で40分間加熱して硬化させた後の透過率は、94%以上がより好ましく、97%以上がさらに好ましく、99%以上が特に好ましい。
【0017】
透過率を高める手段は特に定めるものではないが、例えば、(D)酸化防止剤を添加することが考えられる。また、窒素原子を含む化合物を添加しないことでも透過率の悪化を防ぐことができる。
【0018】
(A)重合性単量体
本発明の組成物に用いる重合性単量体は、その種類等を特に定めるものではなく、公知のものを広く採用することができる。
本発明で用いる重合性単量体は、重合性基を有するものが広く採用できる。重合性基の種類は、特に限定されないが、好ましくは、(メタ)アクリレート基、ビニル基またはエポキシ基であり、より好ましくは、(メタ)アクリレート基である。また、2つ以上の重合性基を有する重合性単量体は、それぞれの重合性基が同一であってもよいし、異なっていても良い。
本発明で用いる重合性単量体の分子量は、分子量1000以下であることが好ましく、600以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の組成物の粘度をより低く抑えることが可能になる。本発明で用いる重合性単量体の分子量の下限値は、特に定めるものではないが、通常は、100以上である。
【0019】
本発明における重合性単量体の種類は、特に定めるものではなく、公知のものを採用できる。例えば、ビニル系化合物、エポキシ系化合物、メラミン系化合物および(メタ)アクリレート系化合物が好ましい例として挙げられる。
【0020】
重合性基を1つ有する重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を1つ有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)を挙げることができる。1官能の重合性不飽和単量体は組成物を低粘度にするのに適している。低粘度化の観点から、特にN−ビニルピロリドン、ベンジルアクリレートがより好ましい。
【0021】
重合性基を2つ有する重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体を挙げることができる。2官能の重合性不飽和単量体は組成物を低粘度にするのに適している。
【0022】
特に、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0023】
重合性基を3つ以上有する重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体を挙げることができる。これら多官能の重合性不飽和単量体は機械的強度付与の点で優れる。
具体的には、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が好適である。
【0024】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが本発明に好適に用いられる。
【0025】
本発明で用いる重合性単量体として、オキシラン環を有する化合物も採用できる。オキシラン環を有する化合物としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ系化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その1種を単独で使用することもできるし、また、その2種以上を混合して使用することもできる。
【0026】
好ましく使用することのできるエポキシ系化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などを例示することができる。
【0027】
これらの成分の中、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0028】
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR−6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報、特許第2906245号公報、特許第2926262号公報などの文献を参考にして合成できる。
【0030】
さらに、エポキシ硬化剤としては、特に限定されないが、25℃で液状の酸無水物、例えば、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸等が挙げられ、中でも脂環式酸無水物が好ましく、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物が特に好ましい。これら酸無水物は単独もしくは複数の混合物として用いても良く、例えば、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸と、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物等であってもよい。
【0031】
本発明で用いる重合性単量体として、ビニルエーテル系化合物を用いてもよい。
ビニルエーテル系化合物は、適宜選択すれば良く、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0032】
これらのビニルエーテル系化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers Paint Colour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
また、本発明で用いる重合性単量体として、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、p−メトキシスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0034】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッソ原子を有する化合物も併用することができる。
【0035】
本発明で用いる重合性単量体として、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを配合できる。例えば、1−ドデシル−1−プロペニルエーテル、1−ドデシル−1−ブテニルエーテル、1−ブテノキシメチル−2−ノルボルネン、1−4−ジ(1−ブテノキシ)ブタン、1,10−ジ(1−ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1−ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1−ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1−ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0036】
なお、本発明の組成物は、調整時における水分量が好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%、さらに好ましくは1.0質量%以下である。調整時における水分量を5.0質量%以下とすることにより、本発明の組成物の保存性をより安定にすることができる。
【0037】
また、本発明の組成物は、有機溶剤の含有量を少なくすることができる。有機溶剤を含まなければ、溶剤の揮発を目的としたベーキング工程が不要となるため、プロセス簡略化に有効となるなどのメリットが大きい。この観点では有機溶剤の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下であり、実質的に含有しないことが特に好ましい。
一方、塗布性付与のため、有機溶剤を添加することもできる。有機溶剤で希釈することで粘度の調整が可能となる。溶剤の揮発を目的としたベーキング工程が必要となるため、一般には好ましいものではない。
【0038】
前記有機溶剤としては、例えば、メトキシプロピレングリコールアセテート、2−ヒドロキシプロピン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノンなどが好ましい。
【0039】
(B)光重合開始剤
本発明の組成物には、光重合開始剤が含まれる。本発明に用いられる光重合開始剤は、全組成物中、例えば0.1〜15質量%含有し、好ましくは0.2〜12質量%であり、さらに好ましくは0.3〜10質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
光重合開始剤の割合を0.1質量%以上とすることにより、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の割合を15質量%以下とすることにより、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
【0040】
本発明で用いる光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、適切な活性種を発生させるものを用いる。このようにすることで感度が向上し、露光時間を短縮できる。
【0041】
本発明で使用されるラジカル光重合開始剤は、市販されている公知の開始剤を適宜用いることができる。
【0042】
さらに本発明の組成物には、光重合開始剤の他に、光増感剤を加えて、UV領域の波長を調整することもできる。本発明において用いることができる典型的な増感剤としては、クリベロ〔J.V.Crivello,Adv.in Polymer Sci,62,1(1984)〕に開示しているものが挙げられ、具体的には、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンゾフラビン、N−ビニルカルバゾール、9,10−ジブトキシアントラセン、アントラキノン、クマリン、ケトクマリン、フェナントレン、カンファキノン、フェノチアジン誘導体などを挙げることができる。
【0043】
(C)界面活性剤
本発明の組成物には、界面活性剤を含めることができる。本発明に用いられる界面活性剤は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%含有し、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。この範囲にすることで、より良好な塗布性を付与できる。
界面活性剤は、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびフッ素・シリコーン系界面活性剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、フッ素系界面活性剤を含むことがより好ましい。
このような界面活性剤を用いることにより、塗布均一性を大幅に改良でき、スピンコーターやスリットスキャンコーターを用いた塗布において、基板サイズに依らず良好な塗布適性が得られる。
さらに、このような界面活性剤を用いることにより、モールド剥離性を向上させることができる。このモールド剥離性の向上の観点からは、フッ素系界面活性剤を用いることがより好ましい。
【0044】
本発明で用いる非イオン性フッ素系界面活性剤の例としては、商品名フロラードFC−430、FC−431(住友スリーエム社製)、商品名サーフロン「S−382」(旭硝子社製)、EFTOP「EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100」(トーケムプロダクツ社製)、商品名PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA社)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18(いずれも(株)ネオス社製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451(いずれもダイキン工業(株)社製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、780F(いずれもDIC社製)が挙げられ、非イオン性ケイ素系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂社製)、メガファックペインタッド31(DIC社製)、KP−341(信越化学工業社製)が挙げられる。
本発明で用いる、フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも信越化学工業社製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれもDIC社製)が挙げられる。
【0045】
(D)酸化防止剤
さらに、本発明の組成物には、公知の酸化防止剤を含めることができる。酸化防止剤を含むことにより、透過率を向上させることができる。本発明に用いられる酸化防止剤は、全組成物中、0.1〜10質量%が好ましく、0.3〜5質量%がより好ましく、1.0〜5質量%がさらに好ましい。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
【0046】
酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止できる、または分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中では、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色防止、膜厚減少の観点で好ましい。
【0047】
[その他の成分]
本発明の組成物には前記成分の他に必要に応じて離型剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0048】
本発明の組成物には、貯蔵安定性等を向上させるために、重合禁止剤を配合してもよい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類;ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン類;銅類等を用いることができる。重合禁止剤は、本発明の組成物の全量に対して任意に0.001〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0049】
[パターン形成方法]
次に、本発明の組成物を用いたパターン(特に、微細凹凸パターン)形成方法や表示装置について説明する。
本発明では、本発明の組成物を塗布して硬化してパターンを形成することができる。ここで、本発明の組成物は、光および熱により硬化させることが好ましい。具体的には、基板または、支持体上に少なくとも本発明の組成物からなるパターン形成層を塗布し、必要に応じて乾燥させて本発明の組成物からなる層(パターン形成層)を形成してパターン受容体を作製し、当該パターン受容体のパターン形成層表面にモールドを圧接し、モールドパターンを転写する加工を行い、微細凹凸パターン形成層を光照射により硬化させる。その後モールドを剥離する。必要に応じてモールド剥離前や後に加熱することもできる。このようにして本発明の微細パターンを得ることができる。
【0050】
液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)においては、ディスプレイの動作を阻害しないようにするため、レジスト中の金属あるいは有機物のイオン性不純物の混入を極力避けることがのぞましく、その濃度としては、1000ppm以下、望ましくは100ppm以下にすることが必要である。
【0051】
本発明の組成物は、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法などにより、塗布することにより形成することができる。本発明の組成物からなる層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.05μm〜30μmである。また、本発明の組成物は、多重塗布してもよい。
【0052】
本発明の組成物を塗布するための基板または支持体は、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、紙、SOG、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの半導体作製基板など特に制約されない。基板の形状は、板状でも良いし、ロール状でもよい。
【0053】
本発明の組成物を硬化させる光としては特に限定されないが、高エネルギー電離放射線、近紫外線、遠紫外線、可視線、赤外線等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。光源の汎用性やエネルギー量などの観点から紫外線が特に好ましい。
露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御しても良い。
【0054】
本発明の組成物を硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分が好ましく、15〜45分がより好ましい。
【0055】
次に本発明で用いることのできるモールド材について説明する。本発明の組成物を用いた光ナノインプリントリソグラフィは、モールド材および/または基板の少なくとも一方は、光透過性の材料を選択する必要がある。本発明に適用される光インプリントリソグラフィでは、基板の上にナノインプリント用硬化性組成物を塗布し、光透過性モールドを押し当て、モールドの裏面から光を照射し、ナノインプリント用硬化性組成物を硬化させる。また、光透過性基板上にナノインプリント用硬化性組成物を塗布し、モールドを押し当て、基板の裏面から光を照射し、ナノインプリント用硬化性組成物を硬化させることもできる。
光照射は、モールドを付着させた状態で行ってもよいし、モールド剥離後に行ってもよいが、本発明では、モールドを密着させた状態で行うのが好ましい。
【0056】
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。モールドは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールドパターン形成方法は特に制限されない。
本発明において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであれば良い。具体的には、ガラス、石英、石英ガラス、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0057】
本発明の透明基板を用いた場合に使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの基板などが例示され、特に制約されない。形状は板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0058】
本発明の組成物を用いて光インプリントリソグラフィを行う場合、通常、モールドの圧力が10気圧以下で行うのが好ましい。モールド圧力を10気圧を以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にあり、また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にあり好ましい。モールドの圧力は、モールド凹部にナノインプリント用硬化性組成物が充分行き渡るように調整する。
【0059】
また、モールドを加圧する前に減圧状態にして、モールド加圧と露光を行うと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制に効果がある。この観点からは減圧状態にしてからモールドを加圧することが好ましい。本発明において、好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲で行われる。生産性の観点からは大気圧のまま加圧することが好ましい。プロセスの設計上の都合の良い方を適宜選択できる。
【0060】
本発明において、光インプリントリソグラフィにおける光照射は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、ナノインプリント用硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて決定される。
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。
本発明においては、ナノインプリント用硬化性組成物からモールドを剥離する。この際、モールド圧を除去しモールドを基板から離すだけで剥離できることが理想である。モールドを基板から離すだけで剥離できない場合には超音波による振動などで剥離を促進することができる。
【0061】
本発明の組成物は、液晶表示装置などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)として好ましく使用することができる。なお、保護膜/スペーサについては、特開2007−272222号公報、特開2007−86464号公報、特開2006−208480号公報に詳細がある。
【0062】
[表示装置]
本発明の表示装置としては既述の本発明の組成物を硬化してなる微細パターンを有するものであれば、特に限定するものではなく、液晶表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置などの表示装置などを言う。表示装置の定義や各表示装置の説明は例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。
【0063】
本発明の表示装置のうち、本発明の微細パターンを有するカラーフィルタを備えた液晶表示装置は特に好ましい。液晶表示装置については例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。本発明はこれらのなかで特にカラーTFT方式の液晶表示装置に対して有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)1996年発行)」に記載されている。さらに本発明はもちろんIPSなどの横電界駆動方式、MVAなどの画素分割方式などの視野角が拡大された液晶表示装置にも適用できる。これらの方式については、例えば、「EL、PDP、LCDディスプレイ−技術と市場の最新動向−(東レリサーチセンター調査研究部門 2001年発行)」の43ページに記載されている。
【0064】
液晶表示装置はカラーフィルタ以外に電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサ、視野角補償フィルムなどさまざまな部材から構成される。これらの部材については例えば「’94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島 健太郎 (株)シーエムシー 1994年発行 )」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表 良吉 (株)富士キメラ総研 2003年発行)」に記載されている。
【0065】
本発明の液晶表示装置は、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)、GH(Guest Host)のような様々な表示モードが採用できる。本発明の微細パターンは平坦性に優れるのでIPSに特に好適である。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0067】
[実施例1〜7]
表1に示す各素材を混合し、十分に攪拌して本発明の組成物を調整した。調整した組成物について、下記に従い、評価した。
【0068】
粘度測定
粘度の測定は、東機産業(株)社製のRE−80L型回転粘度計を用い、25±0.2℃で測定した。
測定時の回転速度は、0.5mPa・s以上5mPa・s未満は100rpm、5mPa・s以上10mPa・s未満は50rpm、10mPa・s以上は30mPa・s未満は20rpm、30mPa・s以上60mPa・s未満は10rpm、60mPa・s以上120mPa・s未満は5rpm、120mPa・s以上は1rpmで、それぞれ、行った。
評価は、下記の5段階で示した。
A:18mPa・s以上50mPa・s以下
B:50mPa・sより大きく100mPa・s以下
C:18mPa・s未満
D:100mPa・sより大きく、300mPa・s以下
E:300mPa・sより大きい。
【0069】
硬化物鉛筆硬度
ベーク後の膜厚が2.0μmとなるように本発明の組成物をガラス基板上にスピンコートした。スリットコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯を光源とするナノインプリント装置にセットし、真空度10Torrに減圧した。次いでモールドを押し付けずにそのまま150mJ/cm2の条件で露光し、レジスト膜を得た。得られたレジストパターンをオーブンで230℃、30分間加熱した。このベーク後の硬化膜についてJIS K5400に準じた鉛筆引っかき値を求めた。
【0070】
表示装置目視
カラーフィルタ、表示装置を作製した。特開2004−182787号公報の応用例1の記載の方法に従ってカラーフィルタを得た。このカラーフィルタにITO(IndiumTinOxide)の透明電極をスパッタリングにより形成した。
【0071】
本発明の組成物をスリットコーターで、上記カラーフィルタの上に厚さ4.0μmとなるように塗布した。次いで、上記カラーフィルタのブラックマトリックス(BM)上に相当する位置に、深さ3.5μm、直径25μmのスペーサパターンの凹部を有するモールドを用いて特開2004−333817号公報の応用例1と同様に押し付けた。完全に押し付けるのではなく、オーバーコート層として厚さ1.0μmの膜が残るように押し付けた。こうして上記カラーフィルタ上にオーバーコート層として1.0μm、オーバーコート層上面からの高さが3.5μmのスペーサの役目の凸部を有する本発明の微細パターンを得た。カラーフィルタに起因する凹凸が平坦化され、且つスペーサは高さ均一性の良いものであった。
【0072】
別途、対向基板としてガラス基板を用意し、対向基板上にITO電極を形成した。前記微細パターン上にさらにポリイミドよりなる配向膜を設けた。その後、カラーフィルタの画素群を取り囲むように周囲に設けられた隔壁外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射し、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして得た液晶セルの両面に、(株)サンリッツ製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。次いで、冷陰極管のバックライトを構成し、前記偏光板が設けられた液晶セルの背面となる側に配置し、本発明の液晶表示装置とした。
【0073】
表示装置に各種画像を表示させ目視観察し、以下のとおり評価した。
A:大変美しい画像が表示されている
B:美しい画像が表示されている
C:普通(実用レベル)
D:ムラが認められる
E:ムラが多く認められる
【0074】
[実施例21〜23]
表2に示す各素材を混合し、十分に攪拌して本発明の組成物を調整した。調整した組成物について、下記に従い、評価した。
【0075】
透過率の評価
本発明の組成物を膜厚約3μmとなるようにガラス基板上にスリットコートした。スリットコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯を光源とするナノインプリント装置にセットし、真空度10Torrに減圧した。次いでモールドを押し付けずにそのまま150mJ/cm2の条件で露光し、レジスト膜を得た。得られたレジストパターンをオーブンで230℃、40分間加熱した。
得られた加熱後のレジスト膜の透過スペクトルを、SolidSpec−3700(島津製作所製)で測定した。なお、測定の際はバンド幅を1.0nmとした。またガラス基板単体のスペクトルを差し引いてベースライン作成した。
このようにして得た透過率スペクトルの400nm〜410nmの平均値を計算した。
また別途、加熱後のレジスト膜の接触式表面粗さ計P−16(TENCOR社製)を用いて測定した。400〜410nmの平均値を膜厚で割り算して得た1μmあたりの透過率もってそのサンプルの透過率とした。
評価は、下記の5段階で示した。
A:99%以上
B:99%未満97%以上
C:97%未満94%以上
D:94%未満90%以上
E:90%未満
尚、評価D以上が、実用レベルである。
【0076】
[比較例1、2]
本発明の組成物を表3に記載の比較例1および比較例2の組成物に変更した以外は実施例1と同様に行って評価した。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
<重合性単量体>
アクリレート系化合物
<重合性基を1つ有する重合性単量体(1官能単量体)>
B−01:ベンジルアクリレート
N−01:N−ビニルピロリドン
<重合性基を2つ有する重合性単量体(2官能単量体)>
アロニックスM−220(東亞合成社製)
Fモノマー:CF2=CFCF2C(CF3)(OH)CH2CH=CH2
<重合性基を3つ以上有する重合性単量体(多官能単量体)>
アロニックスM−309、アロニックスM−408、アロニックスM−404(いずれも東亞合成社製)
【0081】
エポキシ系化合物
<重合性基を1つ有する重合性単量体(1官能単量体)>
デナコールEX−111(ナガセケムテックス株式会社製)
<重合性基を2つ有する重合性単量体(2官能単量体)>
デナコールEX−211(ナガセケムテックス株式会社製)
<重合性基を4つ有する重合性単量体(4官能単量体)>
デナコールEX−411(ナガセケムテックス株式会社製)
【0082】
メラミン系化合物
MW−30HM(三和ケミカル社製)
【0083】
<光重合開始剤>
P−1:Irg907、チバガイギー社製
【0084】
<界面活性剤>
PF−656:フッ素系界面活性剤(OMNOVA社製、フッ素系界面活性剤)
【0085】
<酸化防止剤>
A−1:スミライザーGA80(住友化学製)
【0086】
上記表から明らかなとおり、硬化後の鉛筆硬度が2H以上である組成物を用いると、重合性単量体の種類に関わらず、高品位な表示装置が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の組成物は、粘度、モールド剥離性、対モールドパターン精度等のインプリント適性を付与しつつ、スペーサや保護膜などの高い弾性回復率が要求される用途に適したナノインプリント用硬化性組成物に用いることが可能になる。
さらに本発明の組成物は、硬化後に高い透過率を有するものとすることができる。
また、本発明の組成物を用いることにより、高品位なカラーフィルタや表示装置を提供することが可能になる。特に、本発明の組成物を用いることにより、機械的特性、特に弾性回復率に優れた高精度な微細パターンを提供できるため、該微細パターンを用いた高品位なカラーフィルタや表示装置を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性単量体および(B)光重合開始剤を含有し、硬化後の鉛筆硬度が2H以上である、ナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項2】
粘度が18〜100mPa・sである、請求項1に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項3】
230℃で40分間加熱して硬化させた後の透過率が90%以上である、請求項1または2に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項4】
(A)重合性単量体として、重合性基を2つ以上有する重合性単量体を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項5】
(A)重合性単量体として、重合性基を3つ以上有する重合性単量体を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項6】
(A)重合性単量体が有する重合性基が、(メタ)アクリル基および/またはエポキシ基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項7】
さらに、(C)界面活性剤を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項8】
(C)界面活性剤がフッ素系界面活性剤である、請求項7に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項9】
さらに、(D)酸化防止剤を含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項10】
(D)酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系化合物である、請求項9に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化物を製造する方法であって、少なくとも請求項1〜10のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物を基板に塗布する工程と、
前記塗布物にモールドを押圧する工程と、
前記塗布物に光照射する工程とを、
この順番に含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の硬化物を有する表示装置。

【公開番号】特開2010−17936(P2010−17936A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180416(P2008−180416)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】