説明

ナノファイバー材料の処理方法およびナノファイバー材料で作られる組成物

少なくとも1つの有機マトリックスコンポーネントにおいてナノファイバー材料を含み、前記ナノファイバー材料が少なくとも1つの方法ステップで前処理され、その組成物の物理的特性が調整される、1つの組成物、具体的には分散物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分によるナノファイバー材料の処理方法および請求項44の前提部分による組成物(または分散物)に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導率が改善されたおよび/または耐熱度が減少した組成物または分散物について、具体的にはサーマルグリースとしても使用され、有機基板にナノファイバー材料を含むことは周知である(特許文献1)。
【特許文献1】国際公開第2004/114404号明細書
【0003】
本発明の意味における「ナノファイバー材料」とは、ナノチューブおよび/または具体的にはナノファイバー、およびナノチューブとナノファイバーで作られる混合物である。
【発明の開示】
【0004】
本発明の目的は、ナノファイバー材料の処理方法を開示することであり、この場合(方法)本材料はその特性、具体的には物理的および/または化学的性質に関する特定の目的に合わせて調整される。
【0005】
さらに、本発明の目的は、有機基板においてナノファイバー材料を含む既知の組成物に関連する物理的および/または化学的特性が改善された組成物を開示することである。
【0006】
本目的を達成するために、請求項1による方法を実行する。1つの組成物は、請求項44の対象である。
【0007】
本発明においては、ナノファイバー材料が前処理される。この前処理には、例えば予備熱処理が含まれ、例えば次にさらなる処理が行われる。この前処理時に、少なくとも1つの方法ステップでナノファイバー材料の表面処理が、例えばこの表面処理により結果が改善される、具体的にはナノファイバー材料と有機基板を形成する少なくとも1つの基板コンポーネントとの熱結合が改善されるような方法で実施され、この方法では具体的にはナノファイバーまたはナノチューブの縦伸びに対し横軸方向においても組成物の熱伝導率が増加するおよび/または耐熱度が減少する。表面処理も、様々なステップを有し得る。
【0008】
この表面処理に加えて、あるいはその代わりに、前処理はポリマーまたはコポリマーにおけるナノファイバー材料の密閉または被覆も含み、組成物の特殊な特性を達成するおよび/またはナノファイバー材料の化学的および/または物理的特性を変化させる、例えば有機基板におけるナノファイバー材料の溶解性または分散性を改善するため、組成物の安定性が改善される。とりわけ分散性の改善により組成物および/または関連生成物(サーマルグリース等)を受けとる容器のなかでナノファイバー材料が容器の底に沈降するのが防がれ得るため、容器から採取される生成物量にはナノファイバー材料が常に同じ割合で含まれる。
【0009】
被覆のために使用されるポリマーまたはコポリマーは、それにより任意の溶解性および/または分散性が達成されるような方法で選択される。具体的には、ポリアニリン系のポリマーまたはコポリマーが、被覆には特に適している。
【0010】
例えば、ポリエチレングリコールは有機基板の基板コンポーネントとして適している。他の化合物も基板コンポーネントとして適している。具体的には、組成物がサーマルグリースとして使用される場合、この組成物はペースト状または粘性の軟度を有する。
【0011】
例えば、Electrovac GmbH(オーストリア、クロースタノイブルク市A‐3400)によりENF‐100‐HT、HTP‐150F‐LHT、HTP‐110FF‐LHT、およびHTP‐110F‐HHTという名称で販売されているこれらのファイバーは、ナノファイバーとして適している。
【0012】
本発明において使用できるさらなるナノファイバーもElectrovac GmbH(オーストリア、クロースタノイブルク市A‐3400)により販売されており、次の表1に明記する。
表1


ナノファイバー ナノファイバーの種類
AGF:そのままの状態
PSF:熱分解により被覆が剥がれたカーボンナノファイバー
LHT:〜1000°Cで焼成
HHT:〜3000°Cで焼成
HTE:EVACと一緒に〜1000°Cで焼成
GFE:EVACと一緒に〜3000°Cで焼成および/またはグラファイト化
従って、次の略語は以下の通りである:

【0013】
架橋または硬化されたプラスチックも、その組成物が固体の軟度または弾性の特性を有するような方法で、有機基板コンポーネントとして使用され得る。
【0014】
さらに、本発明は請求項63による複合材料、具体的にはセラミック層およびこのセラミック層上に少なくとも1種類以上の金属めっき層または金属層を含む複合材料に関するものである。この複合材料は、接着剤または結合剤として実装される組成物を用いて作製される。
【0015】
いわゆるDCBプロセスによる金属‐セラミック基板の形態をとる回路板としての複合材料の作製も既知である。この目的のため、印刷導体、端子等を創成するのに必要とされる金属めっきについて、いわゆる「DCB法」(直接銅結合技術)の助けを借り、金属めっきを形成する金属および/または銅の膜または金属および/または銅の板を用いてセラミック(酸化アルミニウムセラミック等)に適用し、金属および反応ガス、好ましくは酸素から作られた化合物で作られる表面側上に層または仕上塗(溶融層)をもつ。
【0016】
例えば特許文献2および特許文献3に記載されている本方法において、この層またはこの仕上塗(溶融層)は融解温度が金属(銅等)の融解温度より低い共晶材料を形成するため、セラミック上に膜を置き、全層を加熱することにより、特に金属および/または銅を用いて、実質的には溶融層または酸化被膜の領域において層が互いに結合され得る。
【特許文献2】独国特許出願公開第37 44 120号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第23 19 854号明細書
【0017】
次にこのDCB法では、例えば次の方法ステップがとられる。
酸化銅被膜の結果が均一となるような方法で銅フィルムを酸化する
銅膜をセラミック層上に置く
複合材料を約1071°C等、約1025〜1083°Cの加工温度まで加熱する
室温まで冷却する
【0018】
いわゆる活性はんだ法(特許文献4、特許文献5)も、金属めっきを形成する金属層または金属膜、具体的には銅層または銅膜と特定のセラミック材料を結合させるための方法として既知である。特に金属‐セラミック基板を作製するのに使用される本法においては、約800〜1000°Cの温度のときに、活性金属と、主なコンポーネントとして銅、銀、および/または金等も含む硬ろうを用いて、金属膜(銅膜等)とセラミック基板(窒化アルミニウムセラミック等)との間に結合を生じさせる。ハフニウム、スズ、ジルコニウム、ニオブ、およびセリウムの群の少なくとも1種類の元素であるこの活性金属は、例えば化学反応によりはんだとセラミックとの結合を生じさせるが、はんだと金属との間の結合は金属による硬ろう結合である。
【特許文献4】独国特許出願公開第22 13 115号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第A153 618号明細書
【0019】
本発明による複合材料は、好ましくは多層材料であり、より好ましくは電気回路、モジュール等用の回路板として適していて、少なくとも1面の表面側と金属板または銅板および/または金属膜または銅膜により形成される少なくとも1種類の金属めっき上に、複合材料を介して基板に結合される電気的絶縁材を備える板形の担体または基板を含むものである。
【0020】
本発明による複合材料には、製造が簡便で、なおかつ費用対効果が大きいという利点がある。さらに、金属めっきおよび基板の材料の様々な熱膨張係数は、接着剤または結合剤により形成される層を介して補正される。具体的には、結合層においてナノファイバー材料の少なくとも一部が結合面に対し平行またはほぼ平行に適切に配位されることにより、金属めっきの熱膨張を補正する作用が達成され得る。
【0021】
一般的に図1の1により確認される、ナノファイバー材料を含んでいて、サーマルグリースとしての使用に特に適している組成物(分散物等)の耐熱度Rthを測定するための測定配置は、実質的には銅を含む第1の板3の表面側上に電気ヒーター2と、具体的にはその中に減熱剤を流す冷却器としても実装される、銅を含む第2の板4と、給湿デバイス5とを備え、給湿デバイスを用いて板3に向けて板4を締め付け得る。板3および4にそれぞれ感温体3.1および4.1を設け、具体的には板3の温度T1および板4の温度T2を測定する。測定すべき組成物および/または分散物を板3と板4の間に層6として導入する。
【0022】
耐熱度Rthは、以下の通り定義される。Rth(°K/W)=(T1−T2)/ヒーターの電力(W)。そのときの熱伝導率は1/Rthである。
【0023】
1つの実施形態において、炭素系ナノファイバーの前処理は、図2において示される通り、2回のステップで実施される。第1ステップにおいて、ナノファイバーは、3:1の割合の硫酸(HSO)および塩酸(HNO)等の無機酸を含む混合物内で連続撹拌により処理され、具体的にはナノファイバーの表面上にカルボキシル基を形成する。第2ステップにおいて、ナノファイバーの表面上のカルボキシル基においてヒドロキシル基(OH基)をそれぞれ塩素原子と置換することにより、塩化チオニル(硫酸塩化物)おいてさらなる処理を実施する。この前処理も、TC前処理として以下で参照される。この前処理は、連続撹拌により実施される。この前処理の合計処理時間は、例えば1.5時間である。処理時間は、2つの方法ステップの合計時間に関連する。
【0024】
このように事前処理または表面改質されたナノファイバーは次に、例えば室温、例えば約40°Cの温度のときに、有機基板を形成する組成物と超音波下で混合される。例えば、基板コンポーネントとしてポリエチレングリコールが適している。エチレングリコール、NMP、THF、またはDMF等、他の材料も使用できる。
【0025】
耐熱度Rthの著明な減少は、下で再現された測定結果によっても証明された通り、前処理により達成され得る。
【0026】
測定時、各例とも同じ条件下で、図1の測定配置を用いて、PEG基板および/または分散物にナノファイバーが含まれる様々な試料について検査した。まず、ナノファイバーENF‐100‐HTを使用した。詳細には、測定時に前処理されていないナノファイバーを含む、もしくは上述の方法(TC前処理)で前処理されたナノファイバーを含む様々な試料について、耐熱度Rth、赤外線透過性、および生成物の安定性に関して検査した。
【0027】
以下で再現されたすべての測定においては、ヒーター2は電圧60Vおよび電流2.7 Aを用いて操作された。締め付けユニット5により生じた接触圧は、3バールであった。
【0028】
試料1は前処理されていないナノファイバーを含み、試料2〜5は上述の方法で前処理されたナノファイバーを含んでいた。ナノファイバーの割合は、それぞれ総量に対して試料1〜3では5重量%、試料4および5では10重量%であった。いずれの場合も試料1〜5の作製は、超音波洗浄機中で、処理時間30分、温度40°Cのときに実施した。
表2

【0029】
各試料および/または組成物を用いて、様々な測定を実施した。耐熱度Rthについて、前出の表2に明記した値は、これらの測定時に確認した平均値である。
【0030】
前出の表2は、この組成物により形成されるサーマルグリースの耐熱度Rthの著明な減少と、それゆえの特性の著明な改善(熱伝導率/Rth)が、TC前処理をされていないこれらのファイバーを含む組成物に対し、TC前処理されたナノファイバーにより著明に改善されることを示す。
【0031】
本発明の基礎を成す知見によれば、耐熱度Rthの減少および/または熱伝導率1/Rthの増加は、ナノファイバーのマトリックスへの組込みの改善および/またはTC前処理および/またはこのようにナノファイバーの表面上に形成されたカルボキシル基またはCOCl基により生ずるPEGマトリックスによる分散性の改善が原因であり、このようにカルボキシル基またはCOCl基はこの組込みの改善および/または分散性の改善をもたらす結合またはカップリング構造を形成する。この方法で、とりわけナノファイバーを介する熱輸送も縦伸びに対し横方向に改善されることは、特にサーマルグリースにおいて非常に重要であり、薄層として典型的に適用される。それはこのような薄層では、ナノファイバーは好ましくは縦伸びが、熱輸送が生ずる軸方向に横軸方向に向くよう配位される。
【0032】
図3は、PEGマトリックスにおいて、さらに総量に対して5重量%の割合でナノファイバーENF‐100HTを含んだ試料の赤外線透過性を示す。曲線Aは表面処理および前処理がなされなかったナノファイバーの曲線であり、曲線Bは、上述のTC前処理がなされたナノファイバーを有する組成物の曲線を示す。2本の曲線AおよびBの曲線によっても、とりわけこの組成物の熱的挙動の調整、具体的には前処理による耐熱度Rthの著明な減少が達成され得ることが確認される。
【0033】
上では、使用したナノファイバーが識別名ENF‐100‐HTとして入手し得るものと仮定した。図4〜図6のグラフが示す通り、赤外線透過性抵抗性の著明な減少および/または赤外線透過性の著明な増加および耐熱度Rthの著明な減少も、未処理のナノファイバーの使用と比較してTC処理による他のナノファイバーに生ずる。
【0034】
上述の表面処理および/または改質の前に、ナノファイバーまたはナノファイバー材料を2000°C以上、好ましくは2000°Cを超える温度で熱処理し、ナノファイバー材料作製時に使用した触媒を除去または気化させ、とりわけグラファイトファイバーを配位させた。この方法でのみ、前述の表面処理または改質、具体的にはカルボキシル化またはカルボキシル基の形成が可能になる。さらに、グラファイト化は熱処理により改善され得る。
【0035】
さらに図4〜図6は、曲線Aにおいては前処理されていないナノファイバーの波長の関数としての赤外線透過性抵抗性曲線を、曲線Bにおいては前処理されたナノファイバー、具体的にはHTP‐150FF‐LHT(図4)、HTP‐110FF‐LHT(図5)、およびHTP‐110FHH(図6)など、前処理に必要な時間が異なる様々なナノファイバーの曲線を示す。
表3

【0036】
様々なナノファイバーについて、前処理されていない形態または前処理された形態のナノファイバーを同じ割合で含んだ様々な試料の耐熱度を次の表4でさらに要約する。
表4

【0037】
上述の実施形態にもかかわらず、トルエンあるいはメチルベンゼン中でヨウ素を用いて、例えば処理時間14日間で撹拌し、ナノファイバー材料を再処理する可能性もある。この方法でヨウ素(Iドーピング)により前処理および/またはドーピングされたナノファイバー材料はさらに、耐熱度Rthが非常に低いサーマルグリースとしての使用に特に適切な組成物において、適切な有機マトリックス材料、例えばPEGにより分散する。
【0038】
例えばPEGマトリックスにおいてトルエン中でヨウ素により前処理された5重量%のナノファイバーENF‐100‐HTを含む組成物に関する測定により、PEGマトリックスにおいて前処理されていないナノファイバーを同じ割合で含む対応する組成物に対し、耐熱度Rthは約60%減少した。
【0039】
対応する対照測定値を次の表5において要約する。この表は、PEGマトリックスにおいて(組成物の総量に対し)5重量%のナノファイバーENF‐100‐HTを含む組成物に関連するものであり、ここで組成物は、超音波洗浄機中で処理時間30分、温度40°Cのときに処理および/または混合された。

表5

【0040】
前述の前処理法は、どちらも比較すると利益もあるが、不利益もある。このように、TC前処理により反応が比較的急速であるため、処理時間が短くて済むという利点が得られる。しかし、前処理に使用される材料は強力なため、腐食および損傷の危険がある。
【0041】
ヨウ素前処理により、具体的には耐熱度Rthの減少が著明に改善され、使用者にとっても使いやすい。しかし、この方法には、TC前処理と比較して反応時間または処理時間が著明に延長されるという不利益がある。
【0042】
さらに、本発明は前処理時に少なくとも1つの組成物および/またはポリマーまたはコポリマーを用いてナノファイバー材料を被覆し、組成物にとって特殊な物理的および/または化学的特性を達成する。
【0043】
例えば、ポリアニリンに基づく被覆は、被覆として適している。被覆は、例えば図7に対応する非常に様々な方法で実装され得るものであり、その場合、表面処理(TC前処理を使用して)されたナノファイバーをED(エメラルディン塩)と混合し、次に重合触媒として塩酸および過硫酸アンモニウムを用いる重合により、ナノファイバー上に直接被覆が創生される。
【0044】
この手順の基本的な利益は、とりわけ精製、費用対効果が高い、処理時間を短縮できる可能性である。実験によれば、被覆したにも関わらず、TC前処理により達成されたナノファイバーの耐熱度Rth減少は保たれる。
【0045】
次の表6において、耐熱度Rth(°K/Wt)は様々な試料、つまりPEGマトリックスにおいてそれぞれ総量に対し5重量%のナノファイバーを含む試料1〜3について明記しており、全試料においてナノファイバーは超音波洗浄機中で、30分間、温度40°CのときにPEG(ポリエチレングリコール)と混合され、分散物が作製された。試料4においては、ナノファイバーの割合は10重量%であった。
【0046】
さらに、図7に示される通り、試料1は前処理されていないナノファイバーを有する組成物または分散物に関連し、試料2は被覆されたナノファイバーを有する分散物に関連するが、TC前処理はされていない。試料3および4は、図2による前処理(TC前処理)がなされ、続いて図7に従って被覆されたナノファイバーを有する組成物に関連する。
表6

【0047】
前出の表6は、TC前処理により達成されたナノファイバーの耐熱度Rth減少はポリアニリン系ポリマーを用いる被覆により保たれるばかりでなく、むしろこの被覆により増加もする。しかし、この形態に密閉されたナノファイバーはPEGマトリックスにおいて不溶性または不適切な可溶性を示すため、この方法で密閉または被覆されたナノファイバーを用いての安定した生成物は可能性が低い。
【0048】
表面処理はされているが、ポリアニリンを用いては被覆されていないナノファイバーを有する生成物の色が黒であることに対し、図7に従って被覆されたナノファイバーを含む組成物の色は濃緑色である。ナノファイバー材料を被覆または密閉するのに他のポリマーまたはコポリマーが使用される場合、基本的には他の色も考えられるが、耐熱度Rthの任意の減少は損なわれる。
【0049】
図8により、ポリアニリンを用いてナノファイバー材料を密閉または被覆することも、EB(エメラルディン塩基)およびNHOH(塩化アンモン石)により実施され得るおよび/または混合され得る。
【0050】
実験によれば、このようにEBを用いて密閉されるナノファイバーは、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、NMP、THF、およびDMF等、様々な溶媒および/または分散剤中で優れた溶解性を示し、青色の安定した分散物および/または安定した生成物が生ずる。しかし、実験は、特に任意の低耐熱度Rthを求めて前処理(TC前処理)されたナノファイバーを使用しても耐熱度Rthの減少は生じないため、組成物中のナノファイバーまたはナノファイバー材料の割合を増やさなければならないことも示した。
【0051】
次の表7において、測定された耐熱度Rth(1°K/W)は4つの試料1〜4、つまりPEGマトリックスにおいてそれぞれ5重量%のナノファイバーを含む試料1〜3および10重量%のナノファイバーを含む試料4についてさらに明記する。いずれの試料も、超音波洗浄機中で、30分以上、温度40°Cのときにナノファイバーの混合により作製され、試料1では前処理されていないナノファイバーを使用し、試料2では前処理されていないが、図8によるポリアニリンを用いて被覆されたナノファイバーを使用し、試料3および4では図8によるポリアニリンを用いて前処理(TC前処理)および被覆されたナノファイバーを使用した。
表7

【0052】
前出の表7より、前処理されたナノファイバーおよび図8の式によるポリアニリンを用いて被覆されたナノファイバーにおいてのみ、ナノファイバーが5重量%を著明に上回る割合のときに耐熱度の著明な減少が生じることが考え得る。
【0053】
図9は、この図の7により一般的に識別されるナノファイバーENF‐100‐HTの一部分と、その作製時に使用されるコイル状の触媒8とを図示する。示される通り、ナノファイバー7は中空として実装されおよび/またはその中に管状構造7.1を有し、外面上に鱗状構造7.2を有するため、ナノファイバーの外面全体または外面のほぼ全体がさらなるコンポーネントを結合および/または合体させ得る。
【0054】
図10は、この図の9により一般的に識別されるナノファイバーHTF‐110の一部分と、これを作製するために使用される鉄触媒とを図示する。
【0055】
ナノファイバー9は竹の茎に似た構造を有しており、ファイバーの外面上に互いを縦方向に分け隔てる節または肥厚した場所9.1と、ファイバーの内部にそれ自体閉鎖していて、縦方向に連続している空洞9.2を有する。節9.1によってのみ、さらなるコンポーネントをカップリングおよび/または合体させ得る。
【0056】
1つの方法は図2と一緒にすでに記述されており、そこではナノファイバーと、特にナノファイバー7をまず無機酸を用いて、続いて塩化チオニルを用いて処理し、少なくともナノファイバーの外面上にカルボキシル基が形成され、その場合、塩化チオニル処理によりOH基が塩素原子と置換されるおよび/またはハロゲン化水素結合が形成される。
【0057】
図11は、図2の例の通り、このTC処理後にナノファイバーはPEGマトリックスに導入されていないおよび/またはこのマトリックス材料と混合されていないが、最初に適切な溶媒により希釈したポリエチレングリコール(PEG)を用いるさらなる方法ステップで処理し、数日かけて連続撹拌する方法の改良策を示す。例えば、このように前処理されたナノファイバーのみが、さらに超音波洗浄機中で、処理時間30分、温度40°Cを用いて、マトリックス中のナノファイバーの割合が約5重量%となるような方法でPEGマトリックスに導入されるおよび/またはこのマトリックスと混合される。
【0058】
様々な組成物または試料の耐熱度Rthは、PEG基板においてナノファイバーENF‐100‐HTを組成物の総量に対し5重量%の割合でそれぞれ含んでおり、次の表8に明記する。
表8

【0059】
試料Aは、PEGマトリックスに未処理のナノファイバーENF‐100‐HTを含む。試料BはTC前処理されたナノファイバー材料を含むがさらなる前処理はなく、試料Cは図11と一緒に上述の方法に従って前処理されたナノファイバー材料を含んでいる。耐熱度Rthの測定は、図1の装置を用いて、具体的には電気ヒーター2の加熱電圧60 Vおよび電流2.7 Aを用いて、板3と板4との間の層6により生じる接触圧3バールを用いてさらに実施した。
【0060】
しかし、図2、具体的には図11による前処理による熱伝導率の改善は、主に縦方向の熱伝導率が最適であるナノチューブおよび/またはナノファイバーによるものであるが、未処理のナノチューブおよび/またはナノファイバーにおいては横方向に熱伝導率が大幅に減少する、具体的には横方向に接触するナノファイバーおよび/ナノチューブとの間に高い熱伝達抵抗が存在することも考えられる。ナノファイバー材料は前処理により最適にマトリックスに組み込まれるため、近接するナノファイバーまたはナノチューブ間での熱伝導率および/または熱伝導も、横方向では著明に減少する。
【0061】
図12は、様々な組成物A〜Dに関する温度の関数としての質量分解のTGA図。この図において次の組成物は曲線A〜Dに割当てられており、ナノファイバー材料の割合はやはり5重量%である。
曲線A:図2の前処理によるナノファイバー材料等、TC前処理されたナノファイバー材料ENF‐100‐HT
曲線B:PEGマトリックスにおいて図11の方法により前処理されたナノファイバー材料ENF‐100‐HT
曲線C:PEGマトリックスにおいて図2の方法により前処理されたナノファイバー材料ENF‐100‐HT
曲線D:エチレングリコールマトリックスにおけるナノファイバー材料ENF‐100‐HT
曲線E:前処理されておらず、マトリックス外のナノファイバー材料ENF‐100‐HT
【0062】
曲線Aは、カルボキシル化および/またはTC前処理されたナノファイバー材料は、耐熱性または耐火性が極めて高いという結果を示すことから特に重要である。これは、具体的には無機酸を用いる前処理により除去および洗い流された触媒残留物、例えばナノファイバーENF‐100‐HTにおけるニッケル残留物と、具体的にはナノファイバー表面上に前処理により形成するハロゲン結合および/または難燃効果を有するハロゲン塩素が原因であることは明らかである。同様の効果は、ホウ素またはヨウ素を用いたナノファイバー材料の処理により達成され得る。全体として組成物の耐熱度および/または温度抵抗性または耐火性の改善も、ハロゲン塩素、ホウ素、およびヨウ素により達成され得る。
【0063】
さらに、一般的にグラファイトの温度抵抗性または耐火性の改善は、図2の処理あるいはヨウ素またはホウ素による処理、もしくは曲線Aに相当する処理より達成され得る。
【0064】
このように、カルボキシル処理またはグラファイトのホウ素またはヨウ素を用いる処理は、このような方法で耐火性および/または耐熱性または難燃性や、例えば一般的にグラファイトから作製される電子整流子モーターのブラシの耐用期間および/または焼失抵抗性等に関して、グラファイトで作られる非常に多様な生成物を改善する可能性に扉を開く。
【0065】
図13は、さらに様々な組成物F〜Jに関する温度の関数としての質量分解のTGA図。この図において次の組成物が曲線に割当てられており、初期状態のHTP‐110FF‐LTがナノファイバー材料として使用されている。
曲線F:未処理のナノファイバー材料
曲線G:カルボキシル化されたナノファイバー材料
曲線H:エチレングリコールを用いて処理されたナノファイバー材料
曲線I:PEGを用いて処理されたナノファイバー材料
曲線J:PEGモノラウリン酸を用いて処理されたナノファイバー材料
【0066】
最高温度による測定のときに試料Hの重量減少が最少であることは、図13の図から明らかである。
【0067】
測定値については、以下の通り要約し得る。
表9

【0068】
さらに、様々な溶媒、具体的にはクロロホルム、アセトン、THF、および希釈水において、試料H、I、およびJの溶解性を測定した。溶解性については、次の表で要約する。
表10

【0069】
溶解性を測定するのに使用される分散物は、30°Cのときに30分以上の超音波処理により作製した。
【0070】
図12で示された測定値は、以下の通り要約され得る。



表11

【0071】
CNT(カーボンナノチューブ)のTmaxはナノファイバー材料の分解温度の最高値であり、試薬のTmaxは処理培地の最高分解温度である。
【0072】
クロロホルム、アセトン、THF、および希釈水における様々な試料の溶解性については、次の表12で要約する。
表12

【0073】
相当する分散物は、30°Cのときに30分以上の超音波処理により作製した。
【0074】
図14および図15は、各例における様々な試料の赤外スペクトルを示す。
曲線A:カルボキシル化および/またはTC前処理されたナノファイバーENF‐100‐HT
曲線B:エチレングリコールを用いて前処理されたナノファイバーENF‐100‐HT
曲線C:PEGモノラウリン酸を用いて前処理されたナノファイバーENF‐100‐HT
曲線D:PEGを用いて前処理されたナノファイバーENF‐100‐HT
曲線E:カルボキシル化および/またはTC前処理されたナノファイバーHTP110FF‐LHT
曲線F:PEGを用いて前処理されたナノファイバーHTP‐110FF‐LHT
曲線G:エチレングリコールを用いて前処理されたナノファイバーHTP‐110FF‐LHT
曲線H:PEGモノラウリン酸を用いて前処理されたナノファイバーHTP‐110FF‐LHT
【0075】
図16は、それぞれPEGマトリックスにおいてナノファイバー材料を含む2種類の組成物の耐熱度Rthの時系列変化を示す。曲線Aは、未処理の形態のナノファイバー材料HTP‐110‐LHTを含む組成物に関する曲線である。図15の曲線Bは、PEGマトリックスにおける図11に従って前処理されたナノファイバー材料、具体的にはナノファイバーHTP‐110FF‐LHTを有するナノファイバー材料を含む組成物の耐熱度Rthの時系列変化を示す。
【0076】
適切な色素および/または小分子の添加によって組成物の色が変化し得るだけではなく、むしろ、とりわけ熱伝導率および/または耐熱度Rthの減少の改善も達成され得る。
【0077】
本発明による組成物への使用に適しているタイプの色素の化学式は、図17においてペリレンの形態で示されている。この色素を添加することにより、組成物はやや赤味を帯びる。
【0078】
様々な検体または試料について、組成物および耐熱度Rthの測定値は次の表13に明記する。PEGマトリックスにおいてナノファイバー材料HTP‐150FF‐HATを使用した。特定の試料について、超音波洗浄機中で、40°Cのときに35分間混合することにより作製した。請求項13に明記した数値は、それぞれ3回の測定の平均値である。測定は、さらに図1の装置を用いて、具体的には加熱電圧60 V、ヒーター電流2.7 A、接触圧3バールを用いて実施した。
表13

【0079】
ペリレンの割合が0.5〜2.5重量%のときに、組成物の熱伝導率が悪化するが、まだ許容範囲内である。しかし、ペリレンの割合が1重量%のときに、熱伝導率の改善も達成される。
【0080】
本発明の特別の、特に有利な実施形態により、ナノファイバー材料のナノチューブまたはナノファイバーは、表面接着剤として使用されるポリマーによりコーティングされ、次にナノファイバー材料は強磁性共鳴材料で作られるナノ粒子を用いて、例えばγ‐Feで作られるナノ粒子を用いてコーティングされる。例えば、ポリアニリンは接着剤の基剤として適している。ナノファイバー材料は、未処理である、あるいは例えば図2または図11に相当する前処理等を受けた。図18は、位置Aにおいて、例えば強磁性共鳴材料γ‐Feを用いるナノファイバーENF100‐HTのナノファイバー7等のナノファイバーのコーティングを示す。
【0081】
図18の位置Bは、当初任意のコースおよび/または当初任意の形状および造形を有する、例えばナノファイバーENF‐100‐HTに典型的なコイル状の造形を有するこのような強磁性共鳴ナノファイバー11が、外部磁界(矢印H)により磁線に沿ってどのように配位されるかを示す。
【0082】
この方法では、多種多様な適用分野の可能性が広がる。したがって、例えば、強磁性共鳴的にコーティングされたナノファイバー11またはこの種類のナノチューブを用いて、適切なマトリックス材料を用いてサーマルグリースを作製することは可能であり、これは隣接する2つの熱伝導面間、例えば冷却された面と冷却用放熱器の面との間の遷移領域または結合領域において、典型的な方法で適用する場合にもたらされる。2面を適用後、もしくは場合によっては結合または接続後、サーマルグリースおよび/または組成物においてナノファイバーが配位され、熱移動の方向に縦伸びを有するような方法で外部磁界により配位されるため、最適な熱伝導率1/Rthが達成される。外部磁界において配位された、強磁性共鳴的にコーティングされたナノファイバーは、次にマトリックスの硬化または重合化によりこの配位で固定される。
【0083】
マトリックスに使用される材料は、例えばそれが硬化または重合化された状態で硬いまたはゴム弾性であるような方法で選択されるため、ゴム弾性の場合、熱伝達のために提供される領域間で、熱的に面間隔および/または長さの変化および/または相対的および/または均一な挙動が可能である。例えば、環境温度で硬化するプラスチック、具体的には弾性プラスチック、様々なコンポーネントで作られるプラスチック、熱や紫外線の効果により硬化するプラスチック等もマトリックスとして適切である。
【0084】
材料もこれらのファイバーを外部磁界に配位することにより、規定または好適な軸方向の熱伝導率が高く、場合によっては配位されたナノファイバーを介して電気伝導率も高いと考えられる強磁性共鳴的にコーティングされたナノファイバー11を用いて作製され得るものであり、その強磁性共鳴的にコーティングされたナノファイバー11は、相当するマトリックスを硬化させることにより、あるいは同様に高粘度のマトリックス材料を硬化させることにより、外部磁界によって配位された状態で凍結および/または固定され得る。このように、例えば、ゴム弾性の特性を有する板の作製もこの方法で可能であり、次に熱流路において互いに隣接する2面間の遷移または端子材料としてサーマルグリースの代わりに、またはこれに追加して提供される。
【0085】
強磁性共鳴的にコーティングされたナノファイバーを液状または粘性のマトリックスに位置付けることにより、1つ以上の外部磁界を、例えば電気伝導率および/または熱伝導率等をコントロールするモジュールを適用または変更することにより、熱伝導率もコントロールされ得る。
【0086】
γ‐Feによるナノファイバー材料のコーティングを実施し得る使用法を図19に示す。
【0087】
図20は、磁界の強さHの関数としての磁化Mの磁化図を示し、磁化Mは特定の磁化プログラムとして明記する。さらに、磁化Mは、Feの割合(重量%)の関数である。HTP‐150FF‐LTは、各曲線A、B、およびCにおいてナノファイバー材料として使用されており、様々な割合(重量%)でFeを有する。曲線Dは、Feをもたないナノファイバー材料(初期状態のHTP‐150FF‐LHT)に関する。コバルト等、他の強磁性共鳴材料もナノファイバー材料をコーティングするのに適している。
【0088】
図21は、酸化鉄によりコーティングされたナノファイバー材料の磁化曲線(曲線B)とコバルトを有するナノファイバー材料の磁化曲線(曲線A)との比較をさらに示す。このナノファイバー材料も、初期状態のHTP‐150FF‐LHTである。
【0089】
磁性特性が突出しているため、強磁性共鳴的にコーティングされたナノファイバー材料は、例えば極めて多様な応用例用の記憶媒体(極めて多様な種類のデータの保存用等、電気的および電子的デバイス等)、医学分野(特に診断的適用例等)など、さらなる適用分野やすでに上で引用した適用分野に適している。
【0090】
低重量で高磁化が可能になる強磁性共鳴材料を用いてコーティングされたナノファイバー材料は、コーティングされていないナノファイバー材料と比較して元の状態での熱伝導率は低いが、強磁性共鳴ナノファイバーを磁界で配位させることにより極めて著明に増加され得るため、伝導率は強磁性共鳴的にコーティングされていないナノファイバー材料の伝導率をかなり上回る。
【0091】
図22において、21は、例えば電気回路またはモジュール用の回路板として適する多層材料である。この多層材料は板形の担体または基板22を含んでおり、この実施形態においては全体としてセラミック等(酸化アルミニウムセラミック、窒化アルミニウムセラミック、窒化ケイ素等)の電気的絶縁材から製造される。プラスチック(エポキシ系等)等、他の材料も基板22として考えられる。
【0092】
金属性の薄板または薄膜、例えば銅板または銅膜により形成される金属めっき23は、基板22の表面側上に平らに提供される。この金属めっき23は、接着剤または結合剤により形成される接着層または結合層24を介して基板22に平らに結合される。例示した実施形態において、基板22は両表面側上に金属めっき23を備える。このように組成物または多層材料21は、基板22の中心面に対し、少なくとも個々の層の種類および配列に関して対称である。しかし、基本的には、金属めっき23を基板22の1つの表面側上のみに提供することも可能である。印刷導体、接触域等、少なくとも基板22の片側上の金属めっき23を作製するために、次に典型的な既知のエッチング技術およびマスキング技術を用いて適切に構造化される。
【0093】
図23に示される通り、基板22それ自体は、具体的には金属めっき23が結合層24を介して隣接する場合、例えばアルミニウムで作られる金属担体層22.1と板形の基板22の表面側上の絶縁層22.2とを含む多層として実装することもさらに可能である。
【0094】
多層生成物21の特殊な特性とは、結合層24が本発明による組成物により形成され、その場合にマトリックスが接着剤、例えばエポキシ樹脂マトリックスとして適切であるマトリックスコンポーネントにより形成され、前処理されたナノファイバー材料がこのマトリックスに含まれるため、結合層24では耐熱度Rthが極めて低いおよび/または逆に熱伝導率1/Rthが高くなることである。以下でより詳細に説明する通り、酸化アルミニウムセラミックで作られる基板22を有する多層材料21は、このように全体として上と下の金属めっき23間の熱伝導率および/または耐熱度については、DVB法を用いて金属めっきをセラミック基板に適用している多層材料とほぼ同等である。マトリックスは接着剤または結合剤の総量に対して約5〜30重量%のナノファイバー材料を含む。
【0095】
好適な実施形態において、識別名「Pyrograf III」として市販されているカーボンナノファイバーはナノファイバー材料として使用されている。このナノファイバーは3000°Cで焼成後、場合によっては前処理の前にマトリックスに混合される。ポリエステル等、エポキシ系のマトリックスはマトリックスとして使用される。マトリックス材料においてナノファイバー材料を最適に組み込むには、とりわけ溶媒が使用される。トリエチレングリコールモノブチルエーテルは、特にこの目的に適切である。
【0096】
図24および図25は、結合層24により生ずる耐熱度を測定するための配置を再度略図にて示す。この配置は、上部熱板25と、熱板に隣接し、熱伝達のためにそこに最適に結合した測定板26と、下部測定板27とを備える。感温体26.1および27.1は、それぞれ測定板26および27に設けられ、これらの感温体を利用して板の温度が測定値として正確に検出され、測定または解析エレクトロニクスへと中継され得る。熱板25は電気的に、例えば加熱電圧60Vおよび一定の加熱電流(2.7A等)を用いて操作されるため、測定時には熱板25により正確に規定された、一定量の熱が生ずる。
【0097】
特定の素材板28が、2枚の測定板26と27との間に位置付けられており、硬化した結合層24を介して互いに結合する2枚の銅板29および30を備える。素材板28と測定板26および27との間で、可能な限りロスが少ない熱伝達を達成するには、典型的な、特にその特性に関しても既知のサーマルグリースで作られる層31または32を、測定板26および27と、それぞれ隣接する板29および30との間に設ける。
【0098】
耐熱度Rthは、以下の通り定義される。Rth(°K/W)=(T1−T2)/ヒーター5の電力(W)。そのときの熱伝導率は1/Rthである。
【0099】
図26は、様々な試料を測定しているときに確認された耐熱度Rth(°K/W)のグラフを示す。具体的には以下の通りである。
位置A:板29および30の一方がもう一方の上に置かれ、結合層24によって結合されてはいない。
位置B〜E:板29と30は結合層24を介して互いに結合される。
ただし、
位置B:さらなる温度処理なし
位置C:試料28について、120°Cの温度で2.8日間処理
位置D:試料28について、120°Cの温度で6日間処理
位置E:試料28について、160°Cで1日の処理
【0100】
図26は、結合層24の熱伝導率が、明らかにこの層のさらなる硬化によって、熱作用の長期化とともに改善することを示す。測定によれば、特定の試料28について測定された耐熱度Rthは、初期、例えば各測定の初期段階に若干減少するだけであり、測定システムの慣性が原因であるのは明らかであるが、その後この初期段階を過ぎてからは一定を保つことがさらに示された。
【0101】
図27は、銅‐セラミック多層材料の耐熱度の比較を示す。この測定では、2枚の銅板29および30を有する試料28の代わりに、そこで下の銅板30をサイズが等しいセラミック板またはセラミック基板と取り替えられる場合に試料を使用した。図24において、銅で作られる上の板29がセラミック(酸化アルミニウムセラミック)で作られる下の板30に押し付けられるが、結合していない場合の試料の耐熱度Rth(°K/Wt)は、位置Aに示される。位置BおよびDは、銅製の上の板29が、結合層24を介してセラミック製の下の板30と結合する場合の測定に関するものであり、具体的には位置Bでは試料28を150°Cの温度で3日間処理し、位置D〜Eでは試料28についてさらなる処理は行わない。
【0102】
位置Cは、DCB基板の耐熱度の比較を示す。位置Eは図21の測定デバイスを用いて測定した耐熱度であり(試料28等は用いないときの結果)、層31および32を介して互いに直接押し付け合う板26および27を測定する。
【0103】
すべての測定において、サイズが等しい板29および30を使用したことは明らかである。
【0104】
結合層24の熱伝導率も、使用されるナノファイバー材料のナノファイバーの長さ等が最適に選択される場合、これらのファイバーまたは少なくともこれらのファイバーの大部分の長さが1〜100 μm、好ましくは10 μmである場合、著明に増加され得る。この長さは、セラミック基板および/または銅膜に典型的に存在する表面のむらに相当するため、これらの長さのナノファイバーを用いて可能な限り最適にこれらのむらが穴埋めされ得る。
【0105】
ナノファイバー材料を上述の方法で前処理し、この前処理によって結合剤を形成するマトリックスに最適に組み込む。
【0106】
結合層24の熱伝導率のさらなる改善と、このような多層材料21の熱特性の改善は、ナノファイバーまたはナノチューブの大部分が熱流の方向に配位される場合、例えばナノファイバーまたはナノチューブが上述の方法で強磁性共鳴として実装されてからマトリックス等に導入され、強磁性共鳴材料で作られるナノ粒子を用いてコーティングされる場合に達成される。多層材料21を作製するときに、次にこれらのナノファイバーおよび/またはナノチューブを配位し、基板22の表面側および結合層24に隣接する金属めっき23に対し垂直にまたは少なくともほぼ垂直に縦伸びを有するような方法で外部磁界(矢印H)によってナノファイバーおよび/または最適な配位を実施する。結合層24を硬化させてから、ナノファイバーおよび/またはナノチューブをこの配位で固定する。
【0107】
多層材料21の熱特性のさらなる改善は、結合層24の硬化後の圧縮、例えばヒッピング(HIP法)または真空内処理により達成されるため、場合によっては特定の結合層24に存在する気泡や穴を閉じ得る。
【0108】
組成物または結合剤は、多層材料や基板を作製する場合だけでなく、一般的には2つのコンポーネント間に同時に起こる最適な熱伝達による接着層が必要とされるすべての適用分野に使用され得る。
【0109】
結合剤も炭素系ナノファイバー材料であることから導電性を有しているため、例えば接着による電気的接続が任意または必要な場合、例えば回路板へコンポーネント等を備えるとき等は必ず、導電性接着剤等として最適に使用され得る。
【0110】
図28は、表面上で処理された図2に相当するナノファイバーから開始し、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)およびトリエチルアミン(TEA)用いて、ナノファイバー材料を処理するための方法をさらに示す。安定性の高い分散物、例えば次の表14に明記した分散物は、この方法で安定した溶媒を用いて処理されたナノファイバー材料から作製され得る。
表14

【0111】
本発明の極めて重要な態様は、銀または銀粒子(特にナノ粒子も)を用いるナノファイバー材料のコーティングを含む。ナノファイバー材料を作製するのに使用される触媒が気化する温度、例えば1000°C〜1500°Cを大幅に上回る温度、好ましくは2500°C〜3000°Cの範囲の温度、すなわちこの範囲の上限により近い温度でのナノファイバー材料の予備熱処理が、この方法には必要である。
【0112】
ナノファイバー材料等、炭素で作られる個々のナノファイバーまたはナノチューブの銀によるコーティングは、例えば化学的方法で実施される。このタイプの方法、例えば還元による銀の析出は、図29に示される。ナノファイバー材料上での特に効果的な銀の析出は、この材料が以前に化学的表面処理されていたときにも達成される。図30は、相当する方法を示す。例えば、初期状態のナノファイバーHTP‐150FF‐LHTは、ナノファイバーとしてさらに使用される。化学的処理されたナノファイバー材料の赤外スペクトル(曲線7)と未処理のナノファイバー材料(初期状態のHTP‐150FF‐LHT)の赤外スペクトルとの比較は、図31に示される。
【0113】
次の表15は、水中銀と起泡剤を用いてコーティングされたナノファイバー材料の分散物に関する。
表15

【0114】
銀処理に先立つ予備熱処理は、好ましくは複数のステップで、まず第1の精製ステップにおいて、とりわけ1000〜1500°Cの範囲の温度で発生し、炭化水素から、特にとりわけナノファイバー作製法から生ずる重合化水素(炭化水素)からナノファイバー材料が精製される。
【0115】
第2の方法ステップにおいて、次にナノファイバー材料を作製するときに使用される触媒が、具体的には約3000°Cでの処理および/または加熱により精製される。少なくともナノファイバー材料の一部のグラファイト化も、この方法ステップで生ずる。
【0116】
その後、ナノファイバー材料の化学的前処理が続き、ナノファイバー材料の表面上に化合物、例えばカルボキシル基を形成し、(その化合物が)銀への親和性を増大させるため、銀ナノ粒子として銀をナノファイバーおよび/またはナノチューブの表面上で特に効果的に化学的に析出することは可能である。
【0117】
銀を用いてコーティングされたナノファイバー材料は極めて多様な適用分野、特に導電性サーマルグリースまたは導電性接着剤にも適しており、とりわけこれまでこのタイプのサーマルグリースや導電性接着剤では銀の割合が高いことが求められていたのが、銀コーティングナノファイバー材料によって銀を減少させ得るため、このような生成物の重量も減少させ得るという利点がある。
【0118】
銀によりコーティングされていないナノファイバー材料HTP‐150FF‐LTの熱伝導率および電気伝導率に対して、様々な組成物、具体的にはその熱伝導率および電気伝導率を次の表16に記載する。
表16


各試料は、ナノファイバー材料0.2 gと、PEG(400)1.7 gとを含んでいた。
【0119】
先立つ表16において熱伝導率はW/m°Kとして、また、電気伝導率はS/cmとして規定される。
【0120】
銀によるコーティングと同様に、本発明は個々のナノファイバーおよび/またはナノチューブ等、ナノファイバー材料もポリアニリン等のポリマー材料により被覆する。この形態で処理されたナノファイバー材料も、多種多様な適用分野、例えば電気絶縁サーマルグリースや、熱を伝えるが電気絶縁されている接着剤における適用分野に適している。これらの生成物の大きな利点は、とりわけ例えば回路板上に高濃度のコンポーネントを有する電気回路を製造する時に、例えば電気絶縁サーマルグリースを用いてコンポーネントの最適な冷却が可能であるが、製造時にランダムに周囲回路と接触するサーマルグリースが、例えばその場所にショートまたは他の障害を引き起こすことがない点である。
【0121】
表16から明らかなように、最適な熱伝導率および最適な電気伝導率は、ナノファイバー材料の割合に対する銀の割合を適切に選択することによって達成され得る。
【0122】
様々な試料の熱伝導率および電気伝導率は、次の表17においてナノファイバーとポリマー(ポリアニリン)間の比率の関数として示される。
表17

【0123】
先立つ表17において熱伝導率はW/m°Kとして、また、電気伝導率はS/cmとしてさらに規定される。
【0124】
これらの試料は、それぞれPEG(400)5.5 gに対しナノファイバー材料(初期状態のENF‐100‐HT)1gを含んでいたが、ナノファイバー材料の被覆は様々であった。つまり、
試料1:PEG(400)におけるナノファイバー材料(15重量%)
試料2〜4:エメラルディン塩の形態でポリアニリンを有するナノファイバー材料
試料5:エメラルディン塩基の形態でポリアニリンを有するナノファイバー材料
【0125】
表17は、例えば試料5において、ポリマー(ポリアニリン)と、ナノファイバー材料と、明記された方法で前処理されたナノファイバーの割合が特定の比率のときに、熱伝導率と、最高と考えられるその電気絶縁性に関して最適化され得る。
【0126】
本発明については、典型的な実施形態に基づいて上述された。多くの修正および変更が可能であるため、本発明に基づく発明的考えを残さないことは明らかである。
【0127】
本発明は、以下において、典型的な実施形態、実験結果、および図の参照に基づいて、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】ナノファイバーおよび/またはナノチューブを含む組成物(またはサーマルグリースの形態においても)等、ナノファイバー材料の耐熱度Rthを測定するための測定配置の組立略図。
【図2】ナノファイバーを表面処理後に有機基板コンポーネント、すなわちポリエチレングリコール(PEG)と混合する方法の説明図。
【図3】特にナノファイバーENF‐100HTの例について、ナノファイバーの形態で表面処理されたナノファイバー材料を用いて、その組成物について未処理のナノファイバー材料使用時と比較した場合の、波長の関数としての赤外線または熱の伝達。
【図4】図3と同様の説明であるが、ナノファイバーHTP‐110FF‐HHT、HTP‐110FF‐LHT、またはHTP‐150FF‐LTを使用している。
【図5】図3と同様の説明であるが、ナノファイバーHTP‐110FF‐HHT、HTP‐110FF‐LHT、またはHTP‐150FF‐LTを使用している。
【図6】図3と同様の説明であるが、ナノファイバーHTP‐110FF‐HHT、HTP‐110FF‐LHT、またはHTP‐150FF‐LTを使用している。
【図7】ポリアニン系の被覆をナノファイバー材料に適用する方法。
【図8】本発明のさらに考え得る実施形態に関する図7と同様の説明図である。
【図9】識別名ENF100として入手可能な、触媒としてニッケルを用いて作製されるナノファイバーの一部分の略図。
【図10】図9と同様の説明であり、識別名HTF110として入手可能な、触媒として鉄を用いて作製されるカーボンナノファイバー。
【図11】図2と同様の説明であり、図2に関連して図9のカーボンナノファイバーを用いる改質された方法の方法ステップ。
【図12】未処理状態および処理状態のカーボンナノファイバーENF100‐HTをそれぞれ無酸素窒素雰囲気中で測定した場合の温度記録図(温度の関数としての質量分解、以下TGA図)。
【図13】ナノファイバー(初期状態のHTP‐110FF‐LTに基づく様々な試料のTGA図
【図14】未処理状態および処理状態のナノファイバーENF‐100HTの赤外スペクトル。
【図15】様々な処理後のナノファイバーHTP‐110FF‐LTの赤外スペクトル。
【図16】図における耐熱度の経時的変化。
【図17】本発明による組成物の染色に適しているポリマーの略図(ペリレン)。
【図18】強磁性共鳴粒子(Fe等)によるコーティング後のカーボンナノファイバーの一部分および外部磁界Hにおけるコーティングされたナノファイバーの配位の略図。
【図19】γ‐Feの形態での強磁性共鳴粒子によりカーボンナノファイバーをコーティングする方法の説明図。
【図20】γ‐Feによりコーティングされたナノファイバー材料の様々な試料に関して測定された磁化曲線。
【図21】コバルトによりコーティングされたナノファイバー材料の様々な試料に関して測定された磁化曲線。
【図22】
【図23】本発明による複合材料を通しての断面略図。
【図24】本発明により接着剤および/または熱接着の接着剤として実装される組成物の熱的挙動を確認するための測定配置の略図
【図25】様々な試料を調製するための形状略図。
【図26】様々な試料に関して測定された耐熱度。
【図27】様々な材料化合物および/または多層材料に関して図24のデバイスを用いて測定した耐熱度の比較。
【図28】テトラヒドロフラン(FTF)およびトリエチルアミン(TEA)を用いてのカルボン酸ナノファイバーのさらなる処理法の説明図。
【図29】ナノファイバー材料の銀および/または銀粒子による化学コーティング法の説明図。
【図30】前処理されたナノファイバー材料による図29の方法の説明図。
【図31】図30の方法により前処理されたナノファイバー材料(初期状態のHTP‐150FF‐LHT)の赤外スペクトルと未処理のナノファイバー材料(初期状態のHTP‐150FF‐LHT)の赤外スペクトルとの比較。
【符号の説明】
【0129】
7 ナノファイバーENF‐100‐HT
7.1 ナノファイバー7の管状内室
7.2 ナノファイバー7の鱗状の外面
8 ナノファイバーのニッケル触媒
9 ナノファイバーHTF‐110
9.1 節セクション
9.2 ナノファイバー内部の空洞
10 ナノファイバー9の触媒
11 強磁性共鳴的にコーティングされたナノファイバー
21 多層材料
22 基板
22.1 担体材料
22.2 絶縁層
23 金属めっき
24 接着層または結合層
25 熱板
26、27 測定板
28 試料
29、30 板
31、32 サーマルグリースで作られる層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノファイバー材料を少なくとも1回処理し、組成物の物理的および/または化学的特性を調整することを特徴とする、具体的にはナノファイバー材料と、少なくとも1種類の有機マトリックスコンポーネントを有するマトリックスからなる組成物を作製するときの、ナノファイバー材料の処理方法。
【請求項2】
前記ナノファイバー材料と、少なくとも1種類の前記有機マトリックスコンポーネントを有する前記マトリックスからなる組成物を作製するため、前記ナノファイバーを少なくとも1回処理し、前記組成物の物理的および/または化学的特性を調整してから少なくとも1種類の前記有機基マトリックスコンポーネントと併用または混合することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ナノファイバー材料を熱処理し、その温度および/または処理時間が、前記ナノファイバー材料の前記作製時に使用した触媒を前記ナノファイバー材料から除去、好ましくは気化により除去するような方法で選択されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱処理が2000°C以上、好ましくは約3000°Cの温度で生ずることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記熱処理が少なくとも2回のステップで生じ、第1ステップにおいては処理が約1000〜1500°Cの範囲の温度で実施され、前記ナノファイバー材料である炭化水素や重合化炭化水素も精製し、前記ナノファイバー材料の前記熱伝導率および/または電気伝導率を増加させ、第2ステップにおいては熱処理が2000°Cを上回る温度で、好ましくは約3000°Cの温度で実施されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法
【請求項6】
前記ナノファイバー材料および/または前記ナノファイバーが、鉄および/またはコバルト等、強磁性共鳴材料を用いてコーティングされることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
銀または銀粒子(特に銀で作られるナノ粒子も)が前記ナノファイバー材料に適用されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
化学的析出による銀の前記適用が実施されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノファイバー材料および/またはこの材料を形成する前記ナノファイバーおよび/またはナノチューブが、電気的絶縁材を用いて、例えばアニリンおよび/またはポリアニリンを用いる等、プラスチック材料を用いて被覆されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記ナノファイバー材料を化学処理、具体的には表面処理することを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記ナノファイバー材料を処理、具体的には表面処理して前記耐熱度(Rth)を調整することを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記ナノファイバーを処理、具体的には表面処理し、前記赤外範囲で前記組成物の前記特性を調整する、特に伝達挙動および/または吸収挙動を調整することを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記処理、具体的には前記表面処理および/または表面改質が実施され、前記耐熱度の減少および/または前記赤外範囲での前記伝達の増加を特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ヨウ素、塩素、またはホウ素を用いて前記ナノファイバー材料および/または前記マトリックス材料が処理またはドーピングされることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記ナノファイバー材料が処理および/またはドーピングされ、化学結合またはカップリング構造を形成することを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記ナノファイバー材料が少なくともその表面上で前処理され、ハロゲン化水素および/またはカルボキシル基を形成することを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記処理が酸、好ましくは無機酸を用いて実施されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記処理、具体的には前記表面処理が硫酸および/または塩酸を用いて、好ましくは硫酸と塩酸を3:1の比率で含む混合物を用いて実施されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記処理のさらなる方法ステップにおいて、前記OH基がカルボキシル基または少なくとも部分的に塩素、ホウ素、あるいはヨウ素と置換されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
前記さらなる方法ステップにおいて前記ナノファイバー材料を処理、具体的には塩化チオニルを用いる表面処理により処理することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記処理、具体的には前記ナノファイバー材料の表面処理がヨウ素、好ましくはトルエン中のヨウ素を用いて実施されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
前記ナノファイバー材料が、前記予備熱処理後に前記化学処理およびまたは前記強磁性共鳴材料による前記コーティングおよび/または銀によるコーティングおよび/または前記電気的絶縁材料により前記被覆されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
前記ナノファイバー材料が前記化学処理後、具体的には前記表面処理後に前記強磁性共鳴材料による前記コーティングおよび/または銀による前記コーティングおよび/または前記電気的絶縁材料による前記被覆されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
前記ナノファイバー材料が、ナノファイバーおよび/またはナノチューブを含むことを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
前記ナノファイバーおよび/またはナノチューブが、少なくとも部分的に炭素系であることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ナノファイバー材料が、前処理時にポリマーまたはコポリマーを用いて密閉および/または被覆されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
前記ナノファイバー材料が、前記処理時に分散剤として作用するポリマーまたはコポリマーを用いて密閉および/または被覆されることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記被覆が、ポリアニリンを用いて実施されることを特徴とする、請求項26または請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記被覆を、エメラルディン塩を用いて、なおかつ、前記ナノファイバー材料上で重合により生じさせることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項30】
前記被覆を、エメラルディン塩基を用いて生じさせることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前処理時および/または前記マトリックスへの前記組込み前に前記ナノファイバー材料をポリマーまたはコポリマーを用いて、例えば易流動性のポリマーまたはコポリマーを用いて、あるいは少なくとも1種類の易流動性のポリマーまたはコポリマーを含む溶液を用いて処理し、なおかつ、
このポリマーの前記マトリックスを形成するポリマーおよび/または前記ドーパントへの親和性が優れていることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
前記前処理の前記ポリマーまたはコポリマーおよび/または前記マトリックスが前記ナノファイバー材料の前記ドーパントとの化学結合を形成することを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項33】
前記前処理の前記ポリマーまたはコポリマーが少なくとも1種類のマトリックスコンポーネントおよび/または物質的にこれと同一物に相当することを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項34】
前記前処理の前記ポリマーがポリエチレングリコール(PEG)であることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項35】
前記識別名「Pyrograf III」のナノファイバーが前記ナノファイバーとして使用されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項36】
前記強磁性共鳴的にコーティングされたナノファイバーが外部磁界により配位されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項37】
前記ナノファイバー材料が、40°Cの温度で前記マトリックスコンポーネントと混合されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項38】
前記ナノファイバー材料の前記混合が、混合時間30分間生ずることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項39】
前記ナノファイバー材料の前記混合が、超音波を用いて、好ましくは超音波清浄機中で生ずることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項40】
ポリエステルがマトリックスコンポーネントとして使用されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項41】
前記マトリックスが総量に対して5〜30重量%のナノファイバー材料を含むことを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項42】
前記ナノファイバー材料の前記マトリックスへの前記組込みが溶媒を用いて、例えばトリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いて実施されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項43】
サーマルグリースを作製するため、銀を用いてコーティングされたおよび/または前記ポリマーを用いて被覆された前記ナノファイバー材料を充填剤としてポリマーマトリックスに、例えばPEGおよび/またはPEを含むマトリックスに導入することを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1種類の有機マトリックスコンポーネントを有するマトリックスにおいてナノファイバー材料を含み、前記ナノファイバー材料を前処理し、少なくとも1つの方法ステップで前記組成物の物理的特性を調整することを特徴とする、組成物。
【請求項45】
前記ナノファイバー材料を前処理または表面処理および/または表面改質し、例えば前記耐熱度を減少および/または前記赤外範囲での前記伝達を増加させることを特徴とする、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記ナノファイバー材料および/または前記マトリックスを塩素および/またはホウ素および/またはヨウ素を用いて前処理またはドーピングすることを特徴とする、請求項44または請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記ナノファイバー材料がその表面上にハロゲン化水素および/またはカルボキシル基を有することを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項48】
前記カルボキシル基の前記OH基が少なくとも部分的に塩素、ホウ素、あるいはヨウ素と置換されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項49】
前記マトリックスまたは前記少なくとも1つのマトリックスコンポーネントが硬化したまたは硬化可能なプラスチックにより形成されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項50】
少なくとも1つの前記マトリックスコンポーネントがエチレングリコールまたはポリエチレングリコールであることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項51】
少なくとも1つの前記マトリックスコンポーネントがNMP、THF、および/またはDMFであることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項52】
前記ナノファイバー材料がナノファイバーおよび/またはナノチューブを含むことを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項53】
前記ナノファイバー材料の前記ナノファイバーおよび/またはナノチューブが少なくとも部分的に炭素系であることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項54】
前記ナノファイバー材料がポリマーまたはコポリマーにより密閉および/または被覆されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項55】
前記ナノファイバー材料が、分散剤として作用するポリマーまたはコポリマーを用いて密閉および/または被覆されることを特徴とする、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記被覆がポリアニリンを用いて形成されることを特徴とする、請求項54または請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
前記マトリックスが総量に対して5〜30重量%のナノファイバー材料を含むことを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項58】
前記識別名「Pyrograf III」のナノファイバーがナノファイバーとして使用されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項59】
前記ナノファイバー材料が予備熱処理されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項60】
前記ナノファイバー材料が、1000°C〜3000°Cの範囲の温度で、好ましくは約3000°Cの温度で予備熱処理されることを特徴とする、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記ナノファイバー材料がコーティングされることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項62】
前記ナノファイバー材料および/または前記ナノファイバーまたはナノチューブが、強磁性共鳴性または強磁性共鳴材料を用いる、例えば鉄および/またはコバルトを用いるコーティングとして実装されることを特徴とする、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
ナノ粒子の前記強磁性共鳴性コーティングが、例えばFe等、強磁性共鳴材料を含むことを特徴とする、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
前記強磁性共鳴性ナノファイバーが、外部磁界により配位される前記マトリックスに含まれることを特徴とする、請求項62または請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
前記ナノファイバー材料が銀を用いてコーティングされることを特徴とする、請求項61〜請求項64のいずれか1つに記載されている組成物。
【請求項66】
前記ナノファイバー材料および/または前記ナノファイバーまたはナノチューブがプラスチックを用いて、例えばアニリンを用いてコーティングまたは被覆されることを特徴とする、請求項61〜請求項65のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項67】
前記ナノファイバー材料の前記マトリックスへの前記組込みが、溶媒を用いて、例えばトリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いて実施されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項68】
液状またはペースト状の塊または分散物としてのその実装を特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項69】
固形または変形可能な、特に弾性の成形体または材料としてのその実装を特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項70】
サーマルグリースとしてのその実装を特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項71】
接着剤として適しているマトリックスまたはマトリックスコンポーネントを有する接着剤としての実装を特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項72】
前記マトリックスがエポキシ系マトリックスであることを特徴とする、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
前記マトリックスまたはマトリックスコンポーネントがポリエステルであることを特徴とする、請求項71または請求項72に記載の組成物。
【請求項74】
少なくとも2つのコンポーネント(2、3)からなり、その表面が互いに隣接し、熱伝達のために提供され、接着結合(4)により互いに結合されるものであって、
前記接着結合が上記請求項のいずれか1つに記載の組成物により形成されることを特徴とし、接着剤として適切なプラスチックマトリックスにおいて、例えばエポキシ系またはポリエステル系のマトリックスにおいて前記ナノファイバー材料を含む、複合材料、具体的には多層材料。
【請求項75】
この材料を形成する前記ナノファイバー材料および/または前記ナノファイバーまたはナノチューブが、少なくとも大部分において前記隣接する表面に対し軸方向に垂直に配位されることを特徴とする、請求項74に記載の複合材料。
【請求項76】
この材料を形成する前記ナノファイバー材料および/または前記ナノファイバーまたはナノチューブが、外部磁界による配位のため強磁性共鳴性として実装されることを特徴とする、請求項74または請求項75に記載の複合材料。
【請求項77】
この材料を形成する前記ナノファイバー材料および/または前記ナノファイバーおよび/またはナノチューブが、ナノ粒子を用いて強磁性共鳴性を示す、例えば強磁性共鳴材料(Fe)を用いて提供および/またはコーティングされることを特徴とする、請求項76に記載の複合材料。
【請求項78】
少なくとも前記さらなるコンポーネントに結合される前記表面上の前記組成物材料のコンポーネントが、電気的絶縁材と、金属、例えば銅からなるさらなるコンポーネントからなることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項79】
各例において、1つのコンポーネントが板形の担体または基板(22)であって、金属層(23)が結合層(24)を介して前記基板(22)に適用されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項80】
前記1つのコンポーネントがセラミック基板、例えば酸化アルミニウムセラミック、窒化アルミニウムセラミック、および/または窒化ケイ素セラミックで作られる基板であることを特徴とする、請求項78または請求項79に記載の複合材料。
【請求項81】
少なくとも1つの前記接着層(24)が、圧縮による、例えばヒッピングまたは真空内処理による硬化後に圧密されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項82】
ヨウ素、ホウ素、または塩素を用いての処理またはドーピングを特徴とする、グラファイト材料。
【請求項83】
その表面上にカルボキシル基を有し、そのOH基が少なくとも部分的に塩素、ホウ素、あるいはヨウ素と置換されることを特徴とする、請求項82に記載のグラファイト材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公表番号】特表2009−523193(P2009−523193A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531821(P2008−531821)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際出願番号】PCT/IB2006/003056
【国際公開番号】WO2007/036805
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(506263929)
【Fターム(参考)】