説明

ナノ粒子の組成物

【課題】金属の無電解めっきの触媒として使用される、安定で、コスト効果的な金属ナノ粒子を提供する。
【解決手段】一般式:


(式中、R1は非置換(C14〜C30)アルキルであり、R2およびR3は同じかまたは異なっており、非置換(C1〜C6)アルキルである)を有するアミンオキシドで封入された金属ナノ粒子を含む組成物で、金属ナノ粒子が、銀、金、白金、インジウム、ルビジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、銅、コバルト、ニッケルおよび鉄から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2010年7月20日に出願された米国仮特許出願第61/365,911号に対する35U.S.C.119(e)の下での優先権の利益を主張し、その仮出願の全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
本発明は両性界面活性剤の層でコーティングされたナノ粒子の組成物に関する。より具体的には、本発明は、ナノ粒子の組成物が無電解金属めっきのための触媒として機能する両性界面活性剤の層でコーティングされたナノ粒子の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子は、生物学、化学、材料科学および医学など様々な用途に価値のある特性を有する。ナノ粒子の有用性はその安定性もしくは毒性によって制限される。ナノ粒子上のコーティングの特性はその物理的および化学的挙動に影響を与える。ナノ粒子上のコーティングはコーティングされたナノ粒子の表面特性を決定する。例えば、米国特許出願公開第2008/0089836号は表面結合性分子および両親媒性分子から形成される二層の分子でコーティングされている金属ナノ粒子を開示する。表面結合性分子はナノ粒子と直接接触しており、疎水性部分とナノ粒子に対する親和性を有する部分とを含む。両親媒性層は疎水性部分と親水性部分との双方を含む。この表面結合性層と両親媒性層は疎水性相互作用によって一緒に保持される。両親媒性層の親水性部分は、ナノ粒子の水溶性の増大などの外部環境に対する所望の特性を与える。ナノ粒子の直径は1nm〜200nm(ナノメートル)のサイズの範囲であり得る。米国特許出願公開第2008/0089836号に開示されたナノ粒子は実質的に生物学的用途、例えば、イムノラベリング、医療用造影および薬物療法に関する。
【0003】
典型的には、ナノ粒子はコーティングに使用される。コーティングは多くの産業、例えば、塗料、磁気ディスク、蛍光スクリーン、非粘着性表面、反射体、研磨剤、防錆剤、防水剤、接着剤、触媒表面、並びに多くの他の分野において重要な役割を果たす。
【0004】
さまざまな産業において、ナノ粒子を使用して基体上に金属を無電解めっきするための触媒表面を形成する。無電解めっきの特性はそのプロセスが自己触媒的であり堆積が触媒表面上で起こることである。無電解めっきはめっき浴に添加される化学的還元剤の存在に基づく。電解めっき浴中で電流が金属イオンを金属に還元するのと類似の方法で、還元剤はめっき浴中で正に帯電した金属イオンに電子を供給して、このイオンを金属に還元する。
【0005】
無電解めっきはいくつかの望ましい結果を生じさせる。作業者は多くの場合、電解めっき方法を用いて、均一な厚みの金属層を隙間もしくは穴を有する基体上に堆積させるのに困難を有している。この特性は、プリント回路もしくはプリント配線板が高アスペクト比のスルーホール内にめっきされた均一な金属堆積物を要求するエレクトロニクス産業などの多くの産業において重要である。無電解めっきの他の特性および用途は非導電体上に直接生じさせられうる堆積物、電解めっきよりも多くの場合多孔度が低い堆積物、並びに多くの場合従来のものではない化学的、機械的もしくは磁気的特性、例えば、より高い硬度および耐摩耗性を有する堆積物である。触媒を使用する無電解めっきは様々な装飾物品の製造、および多くの他のエレクトロニクス用途、例えば、電磁波妨害(EMI)および無線周波妨害(RFI)シールドの形成にも使用される。
【0006】
プリント回路板の金属化において、最も一般的な触媒は塩酸溶液中でのモル過剰の第1スズとパラジウムイオンとの反応生成物である。この反応生成物はスズ−パラジウムコロイドであると考えられている。酸化スズはパラジウムのための保護コロイドを形成し、過剰の第1スズは酸化防止剤として機能すると考えられている。しかし、パラジウムを還元させるために使用される塩化第1スズはコスト高であり、かつ酸化されたスズは別のアクセレレーションの工程を必要とする。触媒のコスト低減を助けるために塩化第1スズを排除するパラジウム触媒の開発の試みがなされてきた。このような触媒には、約50nmの小ささのパラジウム粒子が挙げられうるが、この粒子サイズ分布は幅広く変動する場合があり、約200nmの平均粒子サイズを有する場合があり、これは一般的にはその不安定性および全体的に劣った性能のせいでプリント回路板産業における商業化の目的に適さないことが見いだされてきた。さらに、パラジウム自体は非常にコスト高であり、かつこの触媒の劣った性能および不安定性はプリント回路板製造者並びに顧客に対してコストを増大させる。
【0007】
コロイド銅触媒のようなスズ−パラジウム触媒に代わるものを見いだす試みがなされてきたが、しかし、このような触媒は酸化的攻撃を受けやすく結果的に安定性および機能の喪失をもたらす。それらは高濃度の銅を必要とし、かつ限定された安定性の高活性銅めっき液を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0089836号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、金属の無電解めっきに使用される金属ナノ粒子の触媒が存在するが、安定で、コスト効果的であり、商業化目的に好適な金属堆積物を提供する金属ナノ粒子の触媒についての必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
組成物は、一般式:
【化1】

(式中、Rは非置換(C14〜C30)アルキルであり、RおよびRは同じかまたは異なっており、非置換(C〜C)アルキルである)
を有する1種以上のアミンオキシドで封入された金属ナノ粒子を含む。
方法は、a)基体を提供し;b)一般式:
【化2】

(式中、Rは非置換(C14〜C30)アルキルであり、RおよびRは同じかまたは異なっており、非置換(C〜C)アルキルである)
を有する1種以上のアミンオキシドで封入された金属ナノ粒子を含む触媒組成物を基体に適用し;並びにb)基体上に金属を無電解めっきすることを含む。
方法は、a)スルーホールを有する基体を提供し;b)スルーホールをデスメアし;c)カチオンを含む組成物を基体のスルーホールに適用し;d)一般式:
【化3】

(式中、Rは非置換(C14〜C30)アルキルであり、RおよびRは同じかまたは異なっており、非置換(C〜C)アルキルである)
を有する1種以上のアミンオキシドで封入された金属ナノ粒子を含む触媒組成物を基体のスルーホールに適用し;並びにe)スルーホールの壁上に金属を無電解めっきすることを含む。
【発明の効果】
【0011】
上記一般式を有するアミンオキシドはナノ粒子の表面に隣接してその周りに層を形成し、よってナノ粒子を封入する。このことは、基体の表面上に金属が無電解めっきされうるように、触媒金属ナノ粒子が基体の表面に付着することを可能にする。金属堆積物は低い多孔度を有し、かつ基体に充分に付着する。この触媒は標準のプリント回路板アセンブリプロセスに適合性であり、この触媒ナノ粒子の組成物はそれらが商業的に使用されうるように無電解めっき中で安定であり、かつこの組成物は長期間の貯蔵中でも安定である。さらに、この触媒ナノ粒子の組成物はスズを排除し、かつ触媒金属としてのパラジウムを排除することができ、よって製造者および顧客の双方に対して無電解めっきのコストを低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、空気に対する曝露にかけられた触媒溶液の老化時間の関数としての、12個の炭素の鎖を有するアミンオキシド両性界面活性剤で封入された銀金属ナノ粒子、並びに14および16個の炭素の鎖を有するアミンオキシド両性界面活性剤の混合物で封入された銀金属ナノ粒子で触媒化された表面上にめっきされた銅膜のシート抵抗率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書を通じて使用される場合、文脈が明らかに他のことを示さない限りは以下に示される略語は以下の意味を有する:g=グラム;mg=ミリグラム;ppm=百万あたりの部;ml=ミリリットル;L=リットル;cm=センチメートル;m=メートル;mm=ミリメートル;μm=ミクロン;℃=摂氏度;g/L=リットルあたりのグラム;重量%=重量パーセント;mΩ=ミリオーム;並びにT=ガラス転移温度。
【0014】
用語「プリント回路板」および「プリント配線板」は本明細書を通じて交換可能に使用される。用語「めっき」および「堆積」は本明細書を通じて交換可能に使用される。用語「アルキル」基とは脂肪族炭化水素基をいう。他に示されない限りは、全ての量は重量パーセントである。全ての数値範囲は包括的であり、かつ合計で100%になることにこのような数値範囲が制約されることが論理的である場合を除いて任意に組み合わせ可能である。
【0015】
組成物は、下記一般式:
【化4】

(式中、Rは非置換(C14〜C30)アルキル基であり、RおよびRは同じかまたは異なっており、非置換(C〜C)アルキル基である)
を有する1種以上のアミンオキシドで封入された金属ナノ粒子を含む。典型的には、Rは(C14〜C20)アルキルであり、より典型的にはRは(C14〜C18)アルキルである。Rには、これに限定されないが、アルキル基、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、およびノナデシルが挙げられる。好ましくはRはテトラデシル、ヘキサデシルもしくはオクタデシルである。より好ましくはRはテトラデシルおよびヘキサデシルである。典型的には、RおよびRは同じである。好ましくはRおよびRは同じであり、(C〜C)アルキルである。より好ましくはRおよびRは同じであり、Cアルキルである。RおよびRのアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、ペンチルおよびヘキシルが挙げられる。R、RおよびRは非環式炭化水素鎖である。
【0016】
アミンオキシドはアルキルジアルキルアミンオキシド両性界面活性剤であり、7より高いpHでアミンオキシドは正味負電荷を有する。アルキルジアルキルアミンオキシドは当該技術分野において周知であり、多くは市販されており、または文献に知られた方法に従って製造されうる。
【0017】
触媒組成物中に含まれるアミンオキシドの量は組成物中のナノ粒子を基準にする。触媒組成物のナノ粒子:アミンオキシド重量範囲の比率は重量比で1:5以上、または例えば重量比で1:5〜1:30、または例えば重量比で1:10〜1:15の範囲であり得る。
【0018】
金属ナノ粒子は50nm以下の平均直径を有する。典型的には、金属ナノ粒子は1nm〜30nm、または例えば5nm〜20nmの平均直径を有する。触媒金属には、これに限定されないが、銀、金、白金、インジウム、ルビジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、銅、コバルト、ニッケルおよび鉄が挙げられる。典型的な触媒金属には、銀、金および白金が挙げられる。より典型的には、銀および金が触媒金属の選択肢である。好ましくは、銀が触媒金属の選択肢である、というのは、それは熱力学的により安定な金属、すなわち腐蝕耐性なものの1つであり、かつパラジウムよりもかなり安価、すなわち、パラジウムよりも27倍安価だからである。パラジウムは触媒金属として使用されうるが、銀はパラジウムよりも好ましい、というのは、このコロイドは、パラジウムの使用を回避してパラジウム触媒に関連するコストを低減させ、同時に安定かつ商業的に有用な触媒を提供する触媒に関するからである。この組成物は好ましくはパラジウムを除く。ナノ粒子は75ppm以上、または例えば150ppm〜250ppm、または例えば180ppm〜210ppmの量で触媒組成物中に含まれる。
【0019】
金属塩もしくは金属酸化物が使用される場合には、1種以上の還元剤を用いてそれらはその金属状態に還元される。様々な還元剤が当該技術分野において知られている。このような還元剤には、これに限定されないが、水素化ホウ素アルカリ金属、例えば、水素化ホウ素ナトリウムおよび水素化ホウ素カリウム、置換水素化ホウ素、例えば、トリメトキシ水素化ホウ素、ボラン、例えば、アミンボラン、ジメチルアミノボラン、トリメチルアミノボラン、イソプロピルアミンボラン、およびモルホリンボラン、アスコルビン酸、イソ−アスコルビン酸、ギ酸、ホルムアルデヒド、およびホルムアルデヒド前駆体もしくは誘導体、例えば、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、ジメチルヒダントインおよびグリオキサール、およびヒドラジン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。還元剤は金属塩もしくは金属酸化物の50%モル過剰、または例えば50%〜70%モル過剰、または例えば50%〜60%モル過剰の量で触媒組成物中に含まれうる。
【0020】
組成物はアミンオキシドで封入された金属ナノ粒子の水性コロイド溶液である。この組成物はナノ粒子コロイド溶液を製造する当該技術分野で知られたあらゆる好適な方法によって製造されうる。一方法においては、還元された金属、金属塩もしくは金属酸化物は50nm以下のナノ粒子までボールミルされる。金属ナノ粒子が金属塩もしくは金属酸化物から製造される場合には、それらは水中に溶解され、攪拌下でアミンオキシドと混合される。次いで、還元剤が添加されて、金属イオンをその金属状態に還元する。その水溶液のpHは酸性、中性もしくはアルカリ性であり得る。典型的には、この溶液のpHは7より高く、または例えば7.5〜14、または例えば8〜12に維持され、アミンオキシドをそのアニオン性状態に維持する。典型的には、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムが水溶液に添加されて、pHを所望のアルカリ性範囲に調節する。酸性溶液が望まれる場合には、典型的には、塩酸もしくは硫酸が使用されてpHを調節する。酸性溶液においては、アミンオキシドは正味正電荷を有する。酸性溶液は7未満、または例えば1〜6、または例えば2〜4のpHを有する。pH7の中性溶液においては、アミンオキシドは実質的にその両性もしくは両性イオン状態にある。pHの安定性を維持するために緩衝性化合物が使用されうる。このような化合物には、これに限定されないが、アミン、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン、ホウ砂およびホスファートが挙げられる。
【0021】
組成物は、基体の無電解金属化のための様々な種類の基体のための触媒として使用されうる。このような基体には、これに限定されないが、EMIおよびRFIシールディングの形成のための誘電体表面の金属化におけるような、誘電体材料の金属化において、並びにスルーホールおよびバイアの金属化におけるようなプリント回路板が挙げられる。
【0022】
アミンオキシド封入ナノ粒子触媒組成物は様々な基体に適用されうる。このような基体には、これに限定されないが、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂であり得るプラスチックのような非導電体が挙げられる。典型的な熱可塑性樹脂には、これに限定されないが、汎用プラスチック、例えば、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、PP(ポリプロピレン)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、AS(アクリロニトリル−スチレン)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PVA(ポリ酢酸ビニル)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、PPO(ポリフェニレンオキシド)、およびPET(ポリエチレンテレフタラート);汎用エンジニアリングプラスチック、例えば、PA(ポリアミド)、POM(ポリアセタール)、PC(ポリカルボナート);PPE(改変ポリフェニレンエーテル)、PBT(ポリブチレンテレフタラート)、GE−PET(ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタラート)、およびUHPE(超高分子量ポリエチレン);およびスーパーエンジニアリングプラスチック、例えば、PSF(ポリスルホン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PAR(ポリアリーラート)、PAI(ポリアミドイミド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PI(ポリイミド)およびフルオロカーボン樹脂が挙げられる。典型的な熱硬化性樹脂には、これに限定されないが、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フタル酸ジアリルポリマー、ポリウレタンおよびシリコーン樹脂が挙げられる。
【0023】
高および低Tポリマー樹脂含有基体の双方は金属ナノ粒子触媒を使用して金属化されうる。低Tポリマー樹脂は典型的に160℃未満のTを有する樹脂である。高Tポリマー樹脂は一般に160℃以上のT値を有する。典型的には、高Tポリマー樹脂は、160℃〜280℃、または例えば170℃〜240℃の範囲のTを有する。
【0024】
ポリマー樹脂の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリテトラフルオロエチレンブレンドの高T樹脂が挙げられる。このようなブレンドには、例えば、ポリフェニレンオキシドおよびシアナートエステルを含むPTFEが挙げられる。高Tの樹脂を含むポリマー樹脂の別の種類には、これに限定されないが、エポキシ樹脂、例えば、二官能性および多官能性エポキシ樹脂、ビマレイミド/トリアジンおよびエポキシ樹脂(BTエポキシ)、エポキシ/ポリフェニレンオキシド樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカルボナート(PC)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリスルホン(PS)、ポリアミド、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、およびポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、エポキシおよびこれらのコンポジットが挙げられる。
【0025】
プリント回路板の製造においては、ドリルもしくはパンチもしくは当該技術分野で知られている何らかの他の方法によってスルーホールが板に形成される。小さなスルーホールは典型的には直径0.2mm〜0.5mmの範囲である。これに対して、大きなスルーホールは典型的には直径0.5mm〜1mmの範囲である。スルーホールのアスペクト比は1:1〜20:1の範囲であり得る。スルーホールの代わりにマイクロバイアが形成される場合には、典型的にはマイクロバイアは50μm〜300μmの直径を有する。
【0026】
スルーホールの形成後、板は水ですすがれ板を清浄化しグリース除去するために従来の有機溶液が使用され、次いで、スルーホール壁をデスメアする。スルーホールの典型的なデスメアは溶媒膨潤剤(solvent swell)の適用で始まる。
【0027】
スルーホールをデスメアするために何らかの従来の溶媒膨潤剤が使用されうる。溶媒膨潤剤の例としては、グリコールエーテルおよびその関連する酢酸エーテルが挙げられる。従来の量のグリコールエーテルおよびその関連する酢酸エーテルが使用されうる。このような溶媒膨潤剤は当該技術分野において周知である。市販の溶媒膨潤剤の例はサーキュポジットコンディショナー(CIRCUPOSIT CONDITIONER商標)3302溶媒膨潤剤、サーキュポジットホールプレプ商標3303溶媒膨潤剤、およびサーキュポジットホールプレプ商標4120溶媒膨潤剤(マサチューセッツ州、マルボロのザダウケミカルカンパニーから入手可能)が挙げられる。
【0028】
場合によっては、スルーホールは水ですすがれる。次いで、プロモーターがスルーホールに適用される。従来のプロモーターが使用されうる。このようなプロモーターには、硫酸、クロム酸、過マンガン酸アルカリもしくはプラズマエッチングが挙げられる。典型的には、過マンガン酸アルカリがプロモーターとして使用される。市販のプロモーターの例は、サーキュポジットプロモーター(CIRCUPOSIT PROMOTER商標)4130プロモーター(マサチューセッツ州、マルボロのザダウケミカルカンパニーから入手可能)が挙げられる。
【0029】
場合によっては、スルーホールは水で再びすすがれる。次いでスルーホールに中和剤が適用されて、プロモーターにより残される何らかの酸残留物もしくは塩基残留物を中和する。従来の中和剤が使用されうる。典型的には、中和剤は1種以上のアミンを含むアルカリ水溶液であるか、または3重量%のペルオキシドおよび3重量%の硫酸の溶液である。場合によって、スルーホールは水ですすがれ、プリント回路板は乾燥させられる。
【0030】
場合によっては、スルーホールおよびマイクロバイアは水酸化アルカリ水溶液で処理される。より典型的には、基体が高Tポリマー樹脂を含む場合に、このような水酸化アルカリ水溶液が使用される。水酸化アルカリ溶液は水酸化ナトリウム、水酸化カリウムもしくはこれらの混合物を含む。典型的には、水酸化ナトリウムの溶液が使用される。水酸化物は溶液中に0.1gm/L〜100gm/L、または例えば5gm/L〜25gm/Lの量で含まれる。より典型的には、水酸化物は、15gm/L〜20gm/Lの量で溶液中に含まれる。水酸化アルカリ溶液が水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合物である場合には、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとは4:1〜1:1、または例えば3:1〜2:1の重量比である。
【0031】
水酸化アルカリ水溶液はスルーホールおよびマイクロバイアと30秒〜120秒間、または例えば60秒〜90秒間接触しうる。スルーホールまたはマイクロバイアをデスメアした後でめっきする前に水酸化アルカリ溶液を適用することは封入ナノ粒子触媒を用いたスルーホール壁の良好なカバレッジを提供するのを助け、それによりその壁の良好な金属カバレッジを提供することができる。
【0032】
場合によっては、水酸化アルカリ溶液に界面活性剤が添加されうる。典型的には、界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。界面活性剤は表面張力を低減させて、スルーホールの適切な濡れを可能にする。界面活性剤は水酸化アルカリ溶液中に0.05重量%〜5重量%、または例えば0.25重量%〜1重量%の量で含まれうる。好適な非イオン性界面活性剤には、これに限定されないが、脂肪族アルコール、例えば、アルコールアルコキシラートが挙げられる。典型的には、このようなアルコールアルコキシラートは、7〜15炭素の炭素鎖を有する、線状もしくは分岐の、4〜20モルのエトキシラート、典型的には5〜40モルのエトキシラート、より典型的には5〜15モルのエトキシラートのアルコールエトキシラートである。市販のアルコールアルコキシラートの例は、ネオドール(NEODOL)91−6、ネオドール91−8、およびネオドール91−9(テキサス州、ヒューストンのシェルオイルカンパニーから入手可能)である。
【0033】
場合によっては酸もしくはアルカリコンディショナーがスルーホールもしくはマイクロバイアに適用されうる。従来のコンディショナーが使用されうる。このようなコンディショナーにはカチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、錯化剤およびpH調節剤もしくは緩衝剤の1種以上が挙げられうる。市販の酸コンディショナーの例はサーキュポジットコンディショナー商標3320およびサーキュポジットコンディショナー商標3327(マサチューセッツ州、マルボロのザダウケミカルカンパニーから入手可能)である。好適なアルカリコンディショナーには、これに限定されないが、1種以上の第四級アミンおよびポリアミンを含む水性アルカリ界面活性剤溶液が挙げられる。市販のアルカリ界面活性剤の例はサーキュポジットコンディショナー商標231、3325、813および860(マサチューセッツ州、マルボロのザダウケミカルカンパニーから入手可能)である。場合によっては、スルーホールはコンディショニング後に水ですすがれる。
【0034】
スルーホールもしくはマイクロバイアは次いでマイクロエッチングされる。従来のマイクロエッチング組成物が使用されうる。マイクロエッチングはマイクロ粗化表面を提供し、後の堆積金属の接着性を向上させるようにデザインされる。マイクロエッチング剤には、これに限定されないが、60g/L〜120g/Lの過硫酸ナトリウム、またはオキシモノ過硫酸ナトリウムもしくはカリウム、並びに硫酸(2%)混合物、またはジェネリック硫酸/過酸化水素が挙げられる。市販のマイクロエッチング剤の例はサーキュポジットマイクロエッチ(CIRCUPOSIT MICROETCH商標)3330マイクロエッチ(マサチューセッツ州、マルボロのザダウケミカルカンパニーから入手可能)である。場合によっては、スルーホールは水ですすがれる。
【0035】
封入ナノ粒子触媒の適用の前に、スルーホールもしくはマイクロバイア壁が処理されて、正味正電荷もしくは正味負電荷を提供する。アミンオキシド封入ナノ粒子が正味負電荷を有する場合には、この壁はカチオンで処理されて壁上に正味正電荷を形成する。あるいは、アミンオキシド封入ナノ粒子が正味正電荷を有する場合には、この壁はアニオンで処理されて壁上に正味負電荷を形成する。壁を正にもしくは負に帯電させる組成物および方法は限定されない。典型的には、この壁は無機酸、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、もしくはカチオン性ポリアミン、例えば、水凝集剤処理で使用されるもので処理されて、正味正電荷を提供する。酸溶液は10重量%〜70重量%の範囲であり得る。カチオン性ポリアミンには、これに限定されないが、エピクロロヒドリンとアンモニアとの重縮合物、アルキレンジアミンとエピクロロヒドリンとの、例えば、ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重縮合物、ポリアルキレンポリアミンとエピハロヒドリンとの重縮合物、第1級アミンとエピクロロヒドリンとの重縮合物、第2級アミンとエピクロロヒドリンとの重縮合物が挙げられる。このようなカチオン性ポリアミンは当該技術分野における並びに文献における既知の方法によって製造されうる。このような合成方法の例は文献「Synthesis of polyamine flocculants and their potential use in treating dye wastewater(ポリアミン凝集剤の合成および染料廃水処理におけるその潜在的用途)」Yueら、School of Environmental Science and Engineering, Shandong University, Jinan250100,中国に開示されている。また、エピクロロヒドリンとメチルアミンからの水溶性カチオン性ポリマーの製造方法を開示する米国特許第3,567,659号も参照。市販のカチオン性ポリアミンの例はナルコ(NALCO)カチオン性ポリアミン(イリノイ州オークブルックのナルコケミカルカンパニーから入手可能)、マイクロフロック(MICRO FLOCK)−90カチオン性ポリアミン(インド、グジャラト、アーメダバードのMalli Polymers PVT,Ltd.から入手可能)およびコンディショナー860および231(ザダウケミカルカンパニーから入手可能)である。このようなカチオン性界面活性剤は5重量%〜80重量%、または例えば20重量%〜60重量%の水溶液中で使用される。
【0036】
典型的には、壁はアルカリ塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムもしくはアニオン性界面活性剤で処理されて、正味負電荷を提供する。アルカリ塩基の水溶液は10重量%〜70重量%の範囲である。アニオン性界面活性剤は10重量%〜80重量%、または例えば20重量%〜60重量%の水溶液で使用される。このようなアニオン性界面活性剤には、これに限定されないが、一般式:
−SO−M
(式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖の、8〜24個の炭素、または例えば10〜16炭素原子の飽和脂肪族炭化水素基から選択され、Mはカチオン、例えば、ナトリウム、カリウムもしくはアンモニウムである)
の有機硫酸反応生成物の水溶性塩が挙げられる。このようなアニオン性界面活性剤の例はラウリル硫酸ナトリウムおよびラウリル硫酸アンモニウムである。
【0037】
他のアニオン性界面活性剤には、サルコシナート、例えば、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、コシルサルコシン酸ナトリウムおよびラウロイルサルコシン酸アンモニウムが挙げられる。さらに、他のアニオン性界面活性剤には、8〜24個の、または例えば10〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のアルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。このような脂肪酸は石けんを製造するのに使用され、植物もしくは動物由来のグリセリド、例えばパーム油、ココナツ油、大豆油、ひまし油、獣脂およびラードから得られうる。
【0038】
アミンオキシドで封入されたナノ粒子の触媒は、次いで、帯電したスルーホールもしくはマイクロバイアに適用される。スルーホールもしくはマイクロバイアを有する基体は、攪拌しつつコロイド懸濁物の溶液中に沈められて、スルーホールもしくはマイクロバイアの壁をコーティングする。浸漬は100秒〜400秒のもしくは例えば150秒〜250秒の範囲である。温度は室温〜60℃の範囲である。スルーホールもしくはマイクロバイアは、封入ナノ粒子触媒の適用の後で、場合によっては水ですすがれうる。
【0039】
次いで、スルーホールもしくはマイクロバイアの壁が金属で無電解めっきされる。従来の無電解浴および従来のめっきパラメータが使用されうる。典型的には、スルーホールの壁上に堆積されるべき所望の金属の金属イオンを含む無電解浴中にプリント回路板が配置される。スルーホールの壁上に堆積されうる金属には、これに限定されないが、銅、ニッケル、金、銀、および銅/ニッケル合金が挙げられる。好ましくは、銅が壁上に堆積される。浸漬金もしくは銀を使用する金もしくは銀仕上げの層が、銅、銅/ニッケル、もしくはニッケル堆積物上に堆積されてもよい。
【0040】
スルーホールの壁上に金属が堆積された後で、スルーホールは場合によっては水ですすがれる。場合によっては、スルーホールの壁上に堆積された金属にさび止め組成物が適用されうる。従来のさび止め組成物が使用されうる。市販のさび止め組成物の例はアンチターニッシュ(ANTI TARNISH商標)7130およびキュプラテック(CUPRATEC商標)3(ザダウケミカルカンパニーから入手可能)である。スルーホールは場合によっては30℃を超える温度で温水すすぎによってすすがれることができ、次いで板は乾燥させられうる。
【0041】
別の実施形態においては、アミンオキシド封入ナノ粒子はEMIおよびRFIシールディングのための基体の無電解金属めっきに使用されうる。このような基体には典型的には、上述のポリマー樹脂の1種以上が挙げられる。このようなポリマー樹脂は高もしくは低T樹脂であり得る。無電解めっきされるべき基体の表面は、従来のエッチング配合物を用いてまず粗化もしくはエッチングされる。従来のエッチング配合物の種類は、基体に含まれるポリマー樹脂の種類に応じて変化する。このようなエッチング配合物は当該技術分野において周知である。エッチング配合物の例はアルカリ過マンガン酸カリウム、400g/Lクロム酸および6g/Lのクロム酸を含む80重量%硫酸である。
【0042】
アミンオキシド封入ナノ粒子のコロイド溶液は基体をその溶液中に浸漬することにより適用されることができ、またはその溶液はエアガンのような好適な噴霧装置を用いて基体上に噴霧されうる。ブラシがけはコロイド溶液を適用する別の方法である。場合によっては、コロイド溶液が選択的に基体上に堆積され、それにより金属膜が基体上に選択的に堆積されうるように、コロイド溶液を適用する前に、所望のパターンを有するマスクもしくはツールが基体に適用されることができる。
【0043】
コロイド溶液の0.5〜30μmの湿潤膜が基体表面上に形成されうる。コロイド溶液はすすがれ、反対に帯電した基体に静電的に結合している帯電したナノ粒子を残す。乾燥は空気乾燥によるものであり得る。空気乾燥は20分〜2時間行われることができるが、しかし乾燥時間は乾燥室の周囲条件に応じてより短くてもまたはより長くても良い。
【0044】
乾燥後、基体は次いで従来の無電解めっき金属浴を用いて所望の金属で無電解めっきされる。連続金属膜は10nm〜10μm、または例えば0.1μm〜5μm、または例えば0.5μm〜2μmの厚みで変化することができる。
【0045】
金属膜の表面抵抗率は変化することができる。表面抵抗率は50mΩ/m以下、または例えば0.05mΩ/m〜30Ω/m、または例えば1mΩ/m〜15Ω/mでありうる。
【0046】
上記一般式を有するアミンオキシドはナノ粒子の表面に隣接してその周りに層を形成し、よってナノ粒子を封入する。このことは、基体の表面上に金属が無電解めっきされうるように、触媒金属ナノ粒子が基体の表面に付着することを可能にする。金属堆積物は密であり、かつ基体に充分に付着する。この触媒は標準のプリント回路板アセンブリプロセスに適合性であり、この触媒ナノ粒子の組成物はそれらが商業的に使用されうるように無電解めっき中で安定であり、かつこの組成物は長期間の貯蔵中でも安定である。さらに、この触媒ナノ粒子の組成物はスズを排除し、かつ触媒金属としてのパラジウムを排除することができ、よって製造者および顧客の双方に対して無電解めっきのコストを低減させる。
【0047】
以下の実施例は本発明の範囲を限定することを意図しておらず、本発明をさらに例示することを意図している。
【実施例】
【0048】
実施例1
4枚の低TFR4エポキシ/ガラス板(150℃)および4枚の高TFR4エポキシ/ガラス板(170℃)がウィスコンシン州ラクロセのイソラ(Isola)ラミネートシステムスコーポレーションから得られる。複数のスルーホールがそれぞれの板にドリルで穴開けされる。各板のスルーホールは、次いで、次のような水平デスメアラインプロセスでデスメアされる:
1.各板は240リットルの溶媒膨潤剤で100秒間80℃で処理される。溶媒膨潤剤は10%ジエチレングリコールモノブチルエーテル、界面活性剤、および35g/Lの水酸化ナトリウムの水溶液である。
2.次いで、板は冷水ですすがれる。
3.次いで、各板のスルーホールは、水性過マンガン酸アルカリのアルカリプロモーター500リットルで、pH12で、150秒間、80℃で処理される。
4.板は冷水ですすがれる。
5.次いで、板のスルーホールは、3重量%の過酸化水素および3重量%の硫酸からなる水性中和剤180リットルで、室温で75秒間処理される。
6.次いで、板は冷水ですすがれる。
7.2枚の低T板および2枚の高T板が、18g/Lの水酸化ナトリウムおよび1g/Lのネオドール91−8を含む150リットルの水酸化アルカリ水溶液で60秒間、50℃で処理される。
8.残りの4枚の板は水酸化アルカリ組成物で処理されない。しかし、1枚の低T板および1枚の高T板は190リットルの水性酸コンディショナーであるサーキュポジットコンディショナー商標3320で60秒間50℃で処理される。
9.次いで、各板は冷水ですすがれる。
10.次いで、各板のスルーホールは、20重量%の過マンガン酸ナトリウムおよび10重量%の水酸化ナトリウムのアルカリ水溶液100リットルで60分間50℃でマイクロエッチングされる。
11.次いで、板は冷水ですすがれる。
12.次いで、スルーホールはジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重縮合物5重量%で室温で40秒間処理されて、スルーホール内に正味正電荷を提供する。
13.次いで、各板のスルーホールは、平均サイズ50nmを有する銀ナノ粒子を封入している、40重量%対60重量%のテトラデシル−ジメチルアミンオキシドおよびヘキサデシル−ジメチルアミンオキシドからなるアミンオキシド両性界面活性剤のブレンドを含む水性コロイド触媒配合物125リットルで215秒間40℃で前処理される。ナノ粒子:アミンオキシドのブレンドの重量比は1:12である。pHは8である。銀のソースは硝酸銀であり、水素化ホウ素ナトリウムを用いてその金属に還元される。
14.次いで、板は冷水ですすがれる。
15.次いで、板のスルーホールの壁は無電解銅浴を用いて300秒間50℃で無電解銅でめっきされる。無電解銅浴は以下の成分を含む:0.02モル/Lの硫酸銅五水和物、0.15モル/Lのクエン酸、0.3モル/Lのジ亜リン酸ナトリウム、0.003モル/Lの四ホウ酸ナトリウム、およびpH10を維持するのに充分な水酸化ナトリウム。
16.無電解銅堆積後、板は冷水ですすがれる。
17.各板は横方向に切断され、スルーホールの銅めっき壁を露出させる。1mm厚の複数の横方向切片が各板の切断されたスルーホールの壁から取り出され、標準のヨーロピアンバックライト評価スケールを用いてその板についてスルーホール壁カバレッジを決定する。
【0049】
各板からの1mm切片は50倍拡大の従来の光学顕微鏡下に配置される。顕微鏡下で観察される光の量によって銅堆積物の品質が決定される。光が観察されない場合には、その切片は完全に黒色であり、バックライトスケールで5の評定がなされる。暗い領域なしに切片全体で光が透過する場合には、これは壁上に銅金属堆積物が非常にわずかしかまたは全く存在しないことを示し、この切片は0と評定される。切片がいくぶんかの暗い領域および明るい領域を有する場合には、その切片は0〜5の間の評定がなされる。
【0050】
穴および隙間が各切片について手作業で計数され、集計され、各板について平均化される。結果は、低および高T板双方のスルーホールが4〜5と評定され、またはスルーホールの壁は実質的に完全に銅で覆われていることを示すと考えられる。
【0051】
実施例2
2枚の低T(150℃)FR4エポキシ/ガラス板および2枚の高T(170℃)FR4エポキシ/ガラス板、並びに8枚の高T(180℃)NELCO4000−6板が提供される。複数のスルーホールがこの板にドリルで穴開けされ、その穴は実施例1に開示されるのと同じ手順でデスメアされる。
【0052】
1枚の低TFR4板が、7g/Lの水酸化ナトリウムを含む水酸化アルカリ組成物で、60秒間50℃で処理される。一枚の高TFR4板も水酸化アルカリ水溶液で60秒間50℃で処理されるが、この水酸化アルカリ組成物は18g/Lの水酸化ナトリウムと1g/LのNEODOL91−8界面活性剤を含んでいる。
【0053】
一枚のNELCO4000−6板のスルーホールは、7g/Lの水酸化ナトリウムを含む水性アルカリ組成物で処理され、別のNELCO4000−6板のスルーホールは18g/Lの水酸化ナトリウムを含む水性アルカリ組成物で処理される。それぞれの板は60秒間50℃で処理される。3枚のNELCO板のスルーホールは、18g/Lの水酸化ナトリウムおよび1g/LのNEODOL91−8を含む水酸化アルカリ水性組成物で50℃で60秒間処理される。
【0054】
全ての板のスルーホールは次いで実施例1におけるように酸性コンディショナーで処理され、次いでスルーホールをマイクロエッチングし、そしてジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重縮合物10重量%をスルーホールに適用して、スルーホールの壁に正味正電荷を提供する。
【0055】
次いで、各板のスルーホールは、平均サイズ40nmを有する銀金属粒子を封入している、40重量%対60重量%のテトラデシル−ジメチルアミンオキシド、ヘキサデシル−ジメチルアミンオキシドおよびオクタデシルれジメチルアミンオキシドからなるアミンオキシド両性界面活性剤のブレンドを含む125リットルの水性コロイド触媒配合物で210秒間40℃で前処理される。ナノ粒子:アミンオキシドのブレンドの重量比は1:13である。pHは10である。銀のソースは硝酸銀であり、アスコルビン酸を使用してその金属に還元される。
【0056】
この板は、次いで、無電解銅/ニッケル合金浴に300秒間50℃で浸漬される。この無電解銅/ニッケル浴は以下の組成を有する:0.02モル/Lの硫酸銅五水和物、0.02モル/Lの硫酸ニッケル六水和物、0.15モル/Lのクエン酸、0.3モル/Lのジ亜リン酸ナトリウム、0.003モル/Lの四ホウ酸ナトリウム、およびpH10を維持するのに充分な量の水酸化ナトリウム。
【0057】
スルーホールの金属化が完了した後で、標準手順IPC−TM650 2.4.8rev.Dに従って、板は6時間125℃でベークされ、次いで、熱サイクリングにかけられて、その後板を水平に切断して、スルーホールの壁を露出させる。熱サイクリングは288℃で10秒間60%スズおよび40%鉛からなるはんだ(アルファメタルズ(Alpha Metals)から入手可能)に板を浮かべ、次いでその板を110秒間空気冷却することを伴う。このサイクルは5回繰り返される。
【0058】
各板の複数のスルーホールから1mmの横方向切片が採られる。この切片は最初に光学顕微鏡下で、スルーホール壁に沿った銅/ニッケル堆積物を透過する光の量について分析され、そしてバックライトスケールと比較されて、各切片に値を付与する。このバックライト値は各板について平均化され、4〜5であると予想される。
【0059】
バックライト値を決定することに加えて、ニッケル/銅堆積物のスルーホール壁剥ぎ取りが決定される。ホール壁剥ぎ取り(HWPA)は、標準の手順を用いて光学顕微鏡下で観察される、ベーキングおよび熱サイクリングによって引き起こされるスルーホール壁からの銅/ニッケル堆積物剥ぎ取りの程度を測定する。評定は0〜3の範囲である。この数値がより小さいと、より少ない金属剥離が観察される。各スルーホール側壁が評定され、評価されるスルーホールの数について、各評定の総数が決定される。次いで、これは、以下の式から平均スルーホール剥ぎ取り(HWPA)を計算するために使用される。
【数1】

板の全てについての平均HWPAは0〜1であると予想される。
【0060】
実施例3(比較)
封入銀ナノ粒子を含む2セットのコロイド溶液が製造された。1つのセットは、ドデシルジメチルアミンオキシドで封入された50nmの平均粒子サイズを有する銀ナノ粒子0.3g/Lを含む複数のコロイド溶液を含んでいた。ナノ粒子:アミンオキシドの重量比は1:30であった。第2のセットは、テトラデシル−ジメチルアミンオキシドとヘキサデシル−ジメチルアミンオキシドの40重量%対60重量%混合物で封入された50nmの平均粒子サイズを有する銀ナノ粒子を含む複数のコロイド溶液を含んでいた。銀ナノ粒子:アミンオキシドの重量比は1:10であった。それぞれのセットについての銀のソースは0.3g/Lの濃度の硝酸銀であった。0.06g/Lの水素化ホウ素ナトリウムを用いて、銀イオンはその金属に還元された。アミンオキシドおよび硝酸銀は一緒にブレンドされて、最後に、30℃で高速フィッシャーサイエンティフィックホモジナイザーによって提供される攪拌下で還元剤が添加された。水酸化ナトリウムで、コロイド混合物のpHは8.5〜11に維持され、アミンオキシド封入銀ナノ粒子上に正味負電荷を形成した。
【0061】
複数のエポキシ/ガラス繊維回路板が提供された。この板はサーキュポジットコンディショナー商標860でカチオン処理された。次いで、各板は、板をコロイド懸濁物の浴に200秒間50℃で浸漬することによって、2つのタイプのコロイドの一方で処理された。次いで、処理された板は水ですすがれ;そして、0.02モル/Lの硫酸銅五水和物、0.15モル/Lのクエン酸、0.3モル/Lのジ亜リン酸ナトリウム、0.003モル/Lの四ホウ酸ナトリウム、およびpH10を維持するのに充分な量の水酸化ナトリウムを含む銅無電解めっき浴中に浸漬された。無電解銅浴の温度は35℃であった。板の表面上に1μm〜1.5μm厚の銅膜が形成されるまでめっきがなされた。
【0062】
それぞれの銅膜堆積物のシート抵抗率がJandel HM20四点プローブを使用して測定された。結果は図に示されるような「抵抗率(mΩ)/スクエア」対「日数」のデカルト平面上にプロットされた。結果は、テトラデシル−ジメチルアミンオキシドとヘキサデシル−ジメチルアミンオキシドとの混合物を含んでいたコロイドを使用してめっきされた銅堆積物の1日目のシート抵抗率が90mΩ/スクエア〜100mΩ/スクエアのシート抵抗率を有していたことを示す。一方、ドデシル−ジメチルアミンオキシドでめっきされた銅堆積物は、150mΩ/スクエア〜160mΩ/スクエアの範囲のさらに高いシート抵抗率を有していた。ドデシル−ジメチルアミンオキシドコロイドを使用してめっきされた銅堆積物のさらに高いシート抵抗率は、これらの板がより少ない銅厚みを有していたことを示し、これはドデシル−ジメチルアミンオキシド安定化銀がより少ない触媒活性銀コロイドしか生じさせなかったことを暗示する。
【0063】
40℃で4日間貯蔵し、開放雰囲気に曝した後で、コロイド溶液は別の複数のカチオン処理されたエポキシ/ガラス繊維板に適用された。この板は同じ条件下でコロイド溶液で処理され、同じ種類の無電解銅めっき浴で、上述のと同じ条件下でめっきされた。銅膜のシート抵抗率は四点プローブで測定され、デカルト平面上の4日目のところにプロットされた。図から、テトラデシル−およびヘキサデシルアミンオキシドで触媒化された銅膜のシート抵抗率はドデシル−ジメチルアミンオキシドで触媒化された銅膜よりもかなり低く、かつより緊密にまとまっていることが認められうる。さらに、この図は、テトラデシル−およびヘキサデシルアミンオキシドから製造されたコロイドがドデシル−ジメチルアミンオキシドコロイドよりも長期間にわたってその活性を維持していたことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化1】

(式中、Rは非置換(C14〜C30)アルキルであり、RおよびRは同じかまたは異なっており、非置換(C〜C)アルキルである)
を有する1種以上のアミンオキシドで封入された金属ナノ粒子を含む組成物。
【請求項2】
が非置換(C14〜C20)アルキルである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
およびRが同じであって、非置換(C〜C)アルキルである請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
組成物が7を超えるpHを有する請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ナノ粒子が50nm以下の平均直径を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
金属ナノ粒子が、銀、金、白金、インジウム、ルビジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、銅、コバルト、ニッケルおよび鉄から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
a)基体を提供し;
b)一般式:
【化2】

(式中、Rは非置換(C14〜C30)アルキルであり、RおよびRは同じかまたは異なっており、非置換(C〜C)アルキルである)
を有する1種以上のアミンオキシドで封入された金属ナノ粒子を含む触媒組成物を基体に適用し;並びに
c)基体上に金属層を無電解めっきする;
ことを含む方法。
【請求項8】
金属層が銅、銅合金、ニッケルもしくはニッケル合金から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
a)スルーホールを有する基体を提供し;
b)スルーホールをデスメアし;
c)カチオンを含む組成物を基体のスルーホールに適用し;
d)一般式:
【化3】

(式中、Rは非置換(C14〜C30)アルキルであり、RおよびRは同じかまたは異なっており、非置換(C〜C)アルキルである)
を有する1種以上のアミンオキシドで封入された金属ナノ粒子を含む触媒組成物を、スルーホールを有する基体に適用し;並びに
e)スルーホールの壁上に金属層を無電解めっきする;
ことを含む方法。
【請求項10】
カチオンのソースがカチオン性ポリアミンである請求項9に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−52222(P2012−52222A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−157678(P2011−157678)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】