説明

ナビゲーションシステム

【課題】道路の状況に応じた適切な車速及びステアリングの操舵(だ)角を判断するための情報を運転者に対して適切に提供するようにして、多様な事項についての判断処理を行う必要がある場所を走行する場合であっても、運転者の負担を低減することができ、車両の安全な走行に寄与することができるようにする。
【解決手段】地図データを格納する記憶手段と、情報を表示する表示部と、車速を検出する車速センサ13と、前記地図データと車速とに基づいて、進行方向前方の道路区間の表示形状を決定し、該道路区間の表示形状を前記表示部に表示させる制御部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーションシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に搭載され、GPS(Global Positioning System)と呼ばれる位置測定装置や各種センサを使用して、前記車両の運転者に対して、車両の現在位置を表示したり、目的地までの経路を探索して表示したりするナビゲーション装置が知られている。
【0003】
また、該ナビゲーション装置が搭載された車両がコーナのように安全に関する状況が判断しにくい箇所に差し掛かった場合に、車両の前方に位置するコーナについて、警告音を出力したり、表示部の地図画面における道路の表示色を変更したり、警告を示すマークを表示したりすることによって、運転者に注意を促す技術が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【特許文献1】特開平9−35186号公報
【特許文献2】特開平9−189565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のナビゲーション装置においては、車両が山岳路のように複数のコーナが連続し、勾(こう)配が変化し、前方視界領域が狭いような場所を通行する場合には、運転者に対して適切に情報を提供することができなかった。例えば、多数のコーナが連続する場合に、すべてのコーナについて同様の警告を表示すると、運転者は急なコーナと緩いコーナとの区別が付かず、緩いコーナについての警告に気を取られ、より注意が必要な急なコーナについての警告に気が付かないことがある。すなわち、必要性の低い情報も提供されるので、必要な情報について的確に判断することが困難になってしまう。
【0005】
また、山岳路のような場所を通行する場合、運転者は、コーナの緩急、勾配の変化、対向車両の有無等のように多様な事項についての判断処理を短時間で連続的に行う必要があるので、運転操作に余裕がなくなってしまう。さらに、ブレーキの多用、ステアリングの切り過ぎや切り足し等の運転ロスによって、車両の走行状況が不安定になってしまう。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、道路の状況に応じた適切な車速及びステアリングの操舵(だ)角を判断するための情報を運転者に対して適切に提供するようにして、多様な事項についての判断処理を行う必要がある場所を走行する場合であっても、運転者の負担を低減することができ、車両の安全な走行に寄与することができるナビゲーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明のナビゲーションシステムにおいては、地図データを格納する記憶手段と、情報を表示する表示部と、車速を検出する車速センサと、前記地図データと車速とに基づいて、進行方向前方の道路区間の表示形状を決定し、該道路区間の表示形状を前記表示部に表示させる制御部とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、道路の状況に応じた適切な車速及びステアリングの操舵角を判断するための情報を運転者に対して適切に提供するようになっている。そのため、多様な事項についての判断処理を行う必要がある場所を走行する場合であっても、運転者の負担を低減することができ、車両の安全な走行に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明の実施の形態におけるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【0011】
図において、10は演算手段、記憶手段等を有する一種のコンピュータシステムとしてのナビゲーションシステムであり、道路を走行する乗用車、トラック、バス、オートバイ、作業車等の車両に配設されている。そして、前記ナビゲーションシステム10において、11は、地図の表示、車両の現在位置の認識、経路案内等のナビゲーション基本処理、コーナ形状決定処理等の各種の処理を実行する制御部としてのナビ制御装置である。また、12は、図示されないGPS衛星からのGPS情報を受信して、ナビ制御装置11に送信するGPS受信装置であり、GPSアンテナ等を備え、通常のナビゲーション装置において使用されるものと同様の構成を有する。さらに、13は車速センサであり、通常の車両における車速センサと同様の構成を有し、前記車両の走行速度、すなわち、車速を検出してナビ制御装置11に送信する。
【0012】
そして、14はマイクロフォン等を備える集音装置であり、車両の車室内に配設され、運転者に聞こえる風切音、エンジン音等の外界の音を検出してナビ制御装置11に送信する。また、15はフォトセンサ等を備える明るさセンサであり、例えば、昼と夜、野原と山中等による外界の明るさの変化を検出してナビ制御装置11に送信する。さらに、16は振動センサであり、車両の車室内に配設され、運転席等の座席における振動を検出してナビ制御装置11に送信する。さらに、17はCCD(Charge Coupled Device)等の撮像手段を備える道路面センサであり、車両の前方の映像を撮影し、例えば、路面からの反射光における水平偏光成分と垂直偏光成分との比、すなわち、偏光特性に基づいて、路面上の水分を検出し、乾燥、湿潤、積雪、凍結等の路面状態を検出してナビ制御装置11に送信する。
【0013】
また、18は記憶手段内に格納された地図データベースであり、探索データ等を含む地図データを記憶する。すなわち、地図データベース18は、経路を探索するための探索データの他、後述される表示装置22の画面に、探索された経路に沿って案内図を表示したり、他の案内情報を表示したりするために、施設データ等の各種のデータを記録する。そして、前記地図データベース18は、交差点データファイル、ノードデータファイル、道路データファイル、各地域のホテル、ガソリンスタンド等の施設の情報が記録された施設情報データファイルを含むものである。この場合、交差点データファイルには交差点データが、ノードデータファイルにはノードデータが、道路データファイルには道路データが、それぞれ、記録され、前記交差点データ、ノードデータ及び道路データによって道路状況が前記表示装置22の画面に表示される。なお、前記交差点データには、交差点の種類、すなわち、交通信号灯器の設置されている交差点であるか又は交通信号灯器の設置されていない交差点であるかが含まれる。また、前記ノードデータは、前記地図データベース18に記録された地図データにおける少なくとも道路の位置及び形状を構成するものであり、実際の道路の分岐点(交差点、T字路等を含む)、ノード点、及び、各ノード点間を連結するリンクを示すデータから成る。さらに、前記ノード点は、少なくとも道路の屈曲点の位置を示す。
【0014】
さらに、前記道路データには、道路自体について、幅員、勾配、カント、バンク、道路の車線数、該車線数の減少する地点、幅員の狭くなる地点等のデータが含まれる。なお、高速道路や幹線道路の場合、対向方向の車線のそれぞれが別個の道路データとして格納され、二条化道路として処理される。例えば、片側2車線以上の幹線道路の場合、二条化道路として処理され、上り方向の車線と下り方向の車線は、それぞれ、独立した道路として道路データに格納される。また、コーナについては、曲率半径、交差点、T字路、コーナの入口等のデータが含まれる。さらに、道路属性については、踏切、高速道路出入口ランプウェイ、高速道路の料金所、道路種別等のデータが含まれる。
【0015】
そして、19はラウドスピーカ等を備える音声出力装置であり、ナビ制御装置11に接続され、経路案内、前方のコーナに関する情報等を音声出力する。また、表示部における主表示部としての表示装置22は、CRT、液晶ディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、ホログラフィ装置等を備え、ナビ制御装置11に接続されて、地図、経路、検索された施設等の情報を表示する。さらに、21は表示部における補助表示部としての補助表示装置であり、CRT、液晶ディスプレイ、LEDディスプレイ、ホログラフィ装置等を備え、ナビ制御装置11に接続されて、コーナを含む道路形状等の道路情報等を表示する。なお、前記補助表示装置21は、表示装置22と一体的に構成されていてもよいが、本実施の形態においては、補助表示装置21と表示装置22とが個別に構成されているものとして説明する。
【0016】
そして、表示装置22には地図画面が表示され、該地図画面上に車両の走行する道路26及び車両の現在位置を示す現在位置マーク25が表示されている。また、本実施の形態において、ナビゲーションシステム10は、車両が走行している道路における進行方向前方の道路区間の形状等の情報を前記補助表示装置21に表示することによって、運転者に提供するようになっている。より具体的には、進行方向前方の道路区間の形状等の情報を示す道路区間情報表示マークとして、進行方向前方の道路区間の状況を示す矢印27を補助表示装置21に表示し、道路区間の形状等の状況に応じて、矢印27の曲がる方向、曲がり度合い、太さ、色合い等の表示態様を変化させることによって、運転者が進行方向前方の道路区間の状況を感覚的に把握することができるようになっている。
【0017】
図1に示される例において、補助表示装置21には、進行方向前方の2つの連続する道路区間の状況が、それぞれ、矢印27で示されている。この場合、次の区間は左方向に曲がるコーナであり、それに続く第2の区間は右方向に曲がるコーナであることが分かる。すなわち、2つの矢印27は、表示装置22に示される道路26において現在位置マーク25の前方に存在するコーナを表している。また、補助表示装置21に表示される道路区間の形状等の情報は車速等の条件に応じて変更されるようになっている。すなわち、補助表示装置21に表示される矢印27は、次の区間の手前において所定の表示更新タイミングで更新されるようになっていて、該表示更新タイミングは、車速等の条件に応じて変化するように設定されている。
【0018】
次に、前記構成のナビゲーションシステム10の動作について説明する。
【0019】
図2は本発明の実施の形態における表示切り替えのタイミングを判定する動作を示す図、図3は本発明の実施の形態におけるナビゲーションシステムの動作を示すフローチャートである。
【0020】
ここでは、車両が、図2に示されるように、複数のコーナが連続する道路26を走行する場合を例にして、補助表示装置21に表示されている情報を更新するか否かを判定する動作、すなわち、表示更新判定の動作について説明する。なお、図2において、26aは車両が現在走行している道路区間としての現在区間であり、26bは車両の進行方向前方に位置し、現在区間26aに隣接する道路区間としての次の区間であり、26cは車両の進行方向前方に位置し、次の区間26bに隣接する道路区間としての第2の区間である。なお、28は現在区間26aの終端から所定の距離N〔m〕だけ手前に位置する表示更新タイミングに該当する表示更新地点である。
【0021】
まず、ナビ制御装置11は、GPS受信装置12が受信したGPS信号に基づいて検出された車両の現在位置の読み込みを行う。なお、前記ナビ制御装置11が地磁気センサ、距離センサ、ビーコンセンサ、高度計等の他のセンサを備えている場合には、他のセンサが検出した情報も参照して車両の現在位置を検出することができる。これにより、図2に示される例において、現在区間26aにおいて現在位置マーク25で示される位置を車両が走行していることが分かる。そして、前記ナビ制御装置11は、現在速度の読み込みを行う。すなわち、車速センサ13が受信した車速の読み込みを行う。これにより、図2に示される例において、現在位置マーク25で示される位置における車速が分かる。
【0022】
続いて、前記ナビ制御装置11は、現在コーナ情報の読み込みを行い、車両の現在位置に基づいて、地図データベース18から現在区間26aに関する情報を読み込む。なお、図2に示される例において、現在区間26aは、直線ではなくコーナになっているので、現在区間26aに関する情報としての現在コーナ情報が読み込まれる。該現在コーナ情報には、現在区間26aに含まれる各ノードの位置情報等を含むノードデータ、現在区間26aが右コーナ又は左コーナであるか、すなわち、コーナの曲がる方向を示す左右情報、現在区間26aが短いコーナ、中程度のコーナ又は長いコーナであるか、すなわち、コーナ長さを示す形状長、現在区間26aが急コーナ、中程度のコーナ又は緩コーナであるか、すなわち、コーナの緩急を示す形状パターン、現在区間26aの旋回角の大きさを示すコーナの旋回角、現在区間26aの上り又は下り及び傾斜角を示す勾配、現在区間26aのカント、現在区間26aの車線幅、現在区間26aの車線数、現在区間26aの進入部及び退出部におけるクロソイド曲線に対応する部分の長さ、現在区間26aの曲率が一定の部分の長さ等の情報が含まれる。
【0023】
続いて、前記ナビ制御装置11は、表示更新タイミングであるか否かを判断する。この場合、前記ナビ制御装置11は、現在コーナとしての現在区間26aにおける残距離、すなわち、車両の現在位置から現在区間26aの終端までの距離に基づいて、表示更新タイミングであるか否かを判断する。換言すると、車両の現在位置が現在区間26aの終端から所定の距離N〔m〕だけ手前に位置する表示更新地点28に到達したか否かを判断し、表示更新地点28に到達したか又は表示更新地点28よりも現在区間26aの終端に近い位置にあると、表示更新タイミングであると判断する。なお、前記Nの値は、表示更新地点28が現在区間26aにおいてステアリングを戻し始める地点、すなわち、運転に余裕が出始める地点となるように定めることもできる。
【0024】
そして、前記ナビ制御装置11は、表示更新タイミングでないと判断すると処理を終了する。また、表示更新タイミングであると判断した場合、前記ナビ制御装置11は、NEXTコーナ情報の読み込みを行い、車両の現在位置に基づいて、地図データベース18から次の区間26bに関する情報を読み込む。この場合、図2に示される例において、次の区間26bは、直線ではなくコーナになっているので、次の区間26bに関する情報としてのNEXTコーナ情報が読み込まれる。該NEXTコーナ情報には、次の区間26bに含まれる各ノードの位置情報等を含むノードデータ、次の区間26bが右コーナ又は左コーナであるか、すなわち、コーナの曲がる方向を示す左右情報、次の区間26bが短いコーナ、中程度のコーナ又は長いコーナであるか、すなわち、コーナ長さを示す形状長、次の区間26bが急コーナ、中程度のコーナ又は緩コーナであるか、すなわち、コーナの緩急を示す形状パターン、次の区間26bの旋回角の大きさを示すコーナの旋回角、次の区間26bの上り又は下り及び傾斜角を示す勾配、次の区間26bのカント、次の区間26bの車線幅、次の区間26bの車線数、次の区間26bの進入部及び退出部におけるクロソイド曲線に対応する部分の長さ、次の区間26bの曲率が一定の部分の長さ等の情報が含まれる。
【0025】
続いて、前記ナビ制御装置11は、NEXTコーナが表示対象であるか否かを判断する。ここで、前記ナビ制御装置11は、読み込んだ車速に基づいて次の区間26bの情報を補助表示装置21に表示するべきか否かを判断する。この場合、あらかじめ前記Nの値に対応して車速が定められており、図示されない更新タイミングテーブルとして記憶手段に格納されているので、前記ナビ制御装置11は、前記更新タイミングテーブルを参照することによって、読み込んだ車速が前記Nの値に対応する車速を超えているか否かを判断することができる。そして、車速が前記Nの値に対応する車速を超えている場合、前記ナビ制御装置11は、次の区間26bの情報を補助表示装置21に表示するべきであると判断して、表示更新処理を実行する。
【0026】
これは、次の区間26bの情報を不必要に早く補助表示装置21に表示しないためである。すなわち、前記Nの値に対して車速が低い場合には、車両が次の区間26bに到達するまでに時間がかかるので、表示更新地点28に車両が到達した時点で次の区間26bの情報を表示すると、運転者に対して不必要に早くから次の区間26bの情報を提供することになってしまう。そこで、本実施の形態においては、前記Nの値に対して車速が低い場合には、次の区間26bの情報を表示しないようにして、運転者に対して必要な情報を適切なタイミングで提供するようになっている。
【0027】
なお、次の区間26bの情報を補助表示装置21に表示するべき車速を、現在区間26aの終端、すなわち、次の区間26bに到達するまでの時間が所定の時間m秒となるように、前記Nの値から随時算出することもできる。この場合、更新タイミングテーブルをあらかじめ作成して記憶手段に格納する必要がない。
【0028】
また、車速が前記Nの値に対応する車速以下である場合、前記ナビ制御装置11は、次の区間26bの情報を補助表示装置21に表示するべきでないと判断して、現在速度における対象コーナの残距離を算出する。この場合、現在コーナとしての現在区間26aにおける残距離、すなわち、車両の現在位置から現在区間26aの終端までの距離と、NEXTコーナとしての次の区間26bの距離、すなわち、該次の区間26bの始端から終端までの距離とを合算した値を、車速における対象コーナの残距離とする。
【0029】
続いて、前記ナビ制御装置11は、表示更新タイミングであるか否かを判断する。この場合、前記ナビ制御装置11は、前記車速における対象コーナの残距離が所定の距離以下であるかに基づいて表示更新タイミングであるか否かを判断する。そして、前記車速における対象コーナの残距離が所定の距離以下でないと、前記ナビ制御装置11は、表示更新タイミングでないと判断して処理を終了する。
【0030】
また、前記車速における対象コーナの残距離が所定の距離以下であり、表示更新タイミングであると判断した場合、前記ナビ制御装置11は、再び、NEXTコーナ情報の読み込みを行い、前述の動作を繰り返す。この場合、現在コーナとしての現在区間26aにおける残距離に代えて、前記車速における対象コーナの残距離を使用するので、NEXTコーナは第2の区間26cとなる。
【0031】
なお、表示更新判定の動作は、所定の周期(例えば、0.1秒)の周期で繰り返し実行される。
【0032】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 現在位置の読み込みを行う。
ステップS2 現在速度の読み込みを行う。
ステップS3 現在コーナ情報の読み込みを行う。
ステップS4 表示更新タイミングであるか否かを判断する。表示更新タイミングである場合はステップS5に進み、表示更新タイミングでない場合は処理を終了する。
ステップS5 NEXTコーナ情報の読み込みを行う。
ステップS6 NEXTコーナが表示対象であるか否かを判断する。NEXTコーナが表示対象である場合はステップS9に進み、NEXTコーナが表示対象でない場合はステップS7に進む。
ステップS7 現在速度における対象コーナの残距離を算出する。
ステップS8 表示更新タイミングであるか否かを判断する。表示更新タイミングである場合はステップS5に戻り、表示更新タイミングでない場合は処理を終了する。
ステップS9 表示更新処理を実行する。
【0033】
次に、表示更新処理において、補助表示装置21に表示する道路区間情報表示マークの形状を決定する動作について説明する。
【0034】
図4は本発明の実施の形態における道路区間情報表示マークの形状を決定する方法を示す図、図5は本発明の実施の形態における道路区間情報表示マークの形状決定テーブルの第1の例を示す図、図6は本発明の実施の形態における道路区間情報表示マークの形状決定テーブルの第2の例を示す図、図7は本発明の実施の形態における道路区間情報表示マークの形状決定テーブルの第3の例を示す図、図8は本発明の実施の形態における道路区間情報表示マークの形状を決定する動作を示すフローチャートである。
【0035】
まず、ナビ制御装置11は、現在速度の読み込みを行って、車速センサ13が受信した車速の読み込みを行う。続いて、前記ナビ制御装置11は、NEXTコーナ情報の読み込みを行い、車両の現在位置に基づいて、地図データベース18から次の区間26bに関する情報を読み込む。そして、NEXTコーナ情報、すなわち、次の区間26bに関する情報から静的な道路情報を取得する。ここで、該静的な道路情報とは、例えば、次の区間26bが右コーナ又は左コーナであるか、すなわち、コーナの曲がる方向を示す左右情報、次の区間26bが短いコーナ、中程度のコーナ又は長いコーナであるか、すなわち、コーナ長さを示す形状長、次の区間26bが急コーナ、中程度のコーナ又は緩コーナであるか、すなわち、コーナの緩急を示す形状パターン、次の区間26bの旋回角の大きさを示すコーナの旋回角等の情報である。
【0036】
続いて、前記ナビ制御装置11は、現在速度でNEXTコーナを旋回した場合に発生する横加速度を算出する。すなわち、車両が現在の車速のままで次の区間26bを走行した場合に、コーナを旋回したことによって車両に発生する旋回横加速度Gを次の式(1)に従って算出する。
G=V2 /R ・・・式(1)
ここで、Vは車速であり、Rは次の区間26bの曲率半径であるが、該曲率半径Rは一定であると仮定されている。
【0037】
なお、一般に旋回横加速度Gが0.5〔G〕以上であると車両がコーナから飛び出すと言われているが、前記式(1)によって0.5〔G〕となる車速Vで実際に走行しても、道幅を活用して、前記曲率半径R以上の曲率半径となる軌跡を描いて走行することになるので、車両がコーナから飛び出すことはないと考えられる。そのため、前記式(1)によって0.5〔G〕となる車速Vが適切な値であると考えることができる。
【0038】
続いて、前記ナビ制御装置11は、道路情報及び横加速度をパラメータにして描画形状テーブルより形状を決定する。すなわち、次の区間26bに関する情報から静的な道路情報及び算出した旋回横加速度Gをパラメータとして、あらかじめ作成されて記憶手段に格納されている描画形状テーブルを参照し、補助表示装置21に表示する道路区間情報表示マークの形状を決定する。
【0039】
ここで、該道路区間情報表示マークとしての矢印27は、図4に示されるように、曲がる方向、太さを表す数値としての根本部の幅W、及び、曲がり度合いを表す数値としての曲率半径Rを変化させることによって表示態様を変化させ、運転者が進行方向前方の道路区間の状況を感覚的に把握することができるようになっている。なお、前記曲がる方向、幅W及び曲率半径Rは、地図データベース18から読み込まれた次の区間26bに関する静的な道路情報によって決定される。そして、前記幅W及び曲率半径Rに旋回横加速度Gから定められる変形率r及びwを乗算して得た値を新たな幅W及び新たな曲率半径Rとし、新たな幅W及び新たな曲率半径Rを使用して、図4に示されるような矢印27を描画するようになっている。
【0040】
この場合、前記変形率r及びwは、図5に示されるようなテーブルに従って決定される。該テーブルは道路区間の形状に関するものであり、あらかじめ作成されて記憶手段に格納されている。図5(a−1)は、縦軸に変形率r、横軸に旋回横加速度Gとしての旋回Gを採ってあり、道路区間の長さとしての区間長が短い場合における変形率rと旋回横加速度Gとの関係を示している。そして、図5(a−2)は、縦軸に変形率w、横軸に旋回横加速度Gとしての旋回Gを採ってあり、道路区間の長さとしての区間長が短い場合における変形率wと旋回横加速度Gとの関係を示している。また、図5(b−1)は、縦軸に変形率r、横軸に旋回横加速度Gとしての旋回Gを採ってあり、道路区間の長さとしての区間長が中程度の場合における変形率rと旋回横加速度Gとの関係を示している。そして、図5(b−2)は、縦軸に変形率w、横軸に旋回横加速度Gとしての旋回Gを採ってあり、道路区間の長さとしての区間長が中程度の場合における変形率wと旋回横加速度Gとの関係を示している。また、図5(c−1)は、縦軸に変形率r、横軸に旋回横加速度Gとしての旋回Gを採ってあり、道路区間の長さとしての区間長が長い場合における変形率rと旋回横加速度Gとの関係を示している。そして、図5(c−2)は、縦軸に変形率w、横軸に旋回横加速度Gとしての旋回Gを採ってあり、道路区間の長さとしての区間長が長い場合における変形率wと旋回横加速度Gとの関係を示している。
【0041】
また、前記描画形状テーブルは、図5に示されるような変形率r及びwと旋回横加速度Gとの関係を格納したものでなく、図6に示されるような矢印27の形状を格納したものであってもよい。図6に示される描画形状テーブルにおいては、コーナの緩急と旋回横加速度Gとによって決定された矢印27の形状が、AからZまであらかじめ描画されて格納されている。
【0042】
図6(a)は道路区間の長さとしての区間長が短い場合、すなわち、区間長Lが所定値L1以下である場合を示し、コーナの緩急がコーナ形状が緩い、中程度及びヘアピンの3つに分類され、旋回横加速度Gとしての横加速度Gが所定値G2以上、所定値G2未満で、かつ、もう1つの所定値G1より大、及び、もう1つの所定値G1以下の3つに分類されている。なお、前記所定値L1はあらかじめ設定されている。また、G1は0.1〔G〕であり、G2は0.5〔G〕である。そして、コーナの緩急及び旋回横加速度Gのそれぞれに対して、矢印27の形状がAからIまであらかじめ描画されて格納されている。
【0043】
また、図6(b)は道路区間の長さとしての区間長が中程度の場合、すなわち、区間長Lが所定値L1より大であり、かつ、もう1つの所定値L2未満である場合を示し、コーナの緩急がコーナ形状が緩い、中程度及びヘアピンの3つに分類され、旋回横加速度Gとしての横加速度Gが所定値G2以上、所定値G2未満で、かつ、もう1つの所定値G1より大、及び、もう一つの所定値G1以下の3つに分類されている。なお、前記所定値L2はあらかじめ設定されている。そして、コーナの緩急及び旋回横加速度Gのそれぞれに対して、矢印27の形状がJからRまであらかじめ描画されて格納されている。
【0044】
さらに、図6(c)は道路区間の長さとしての区間長が長い場合、すなわち、区間長Lが所定値L2以上である場合を示し、コーナの緩急がコーナ形状が緩い、中程度及びヘアピンの3つに分類され、旋回横加速度Gとしての横加速度Gが所定値G2以上、所定値G2未満で、かつ、もう1つの所定値G1より大、及び、もう1つの所定値G1以下の3つに分類されている。そして、コーナの緩急及び旋回横加速度Gのそれぞれに対して、矢印27の形状がSからZまであらかじめ描画されて格納されている。
【0045】
なお、図6(d)は、あらかじめ描画されて格納されている矢印27の形状を示している。図6(d)は、図6(b)に対応するものであり、JからRまでの矢印27の形状がそれぞれ示されている。図6(d)の記載から、コーナ形状が同一であっても、旋回横加速度Gが大きくなるほど矢印27の幅Wが大きくなり、かつ、曲率半径Rが短くなることが分かる。すなわち、同じコーナであっても、車速が高いほど矢印27の幅Wが大きくして遠近感を強調し、かつ、矢印27の曲率半径Rを小さくしてコーナを急に感じさせるようになっている。
【0046】
ところで、本実施の形態においては、風切音、エンジン音等の外界の音のように運転者に心理的な影響を及ぼす要因、車両の高さ、すなわち、車高のように車両の安定性に影響を及ぼす要因、外界の明るさの変化のように運転のし易さに影響を及ぼす要因、運転継続時間のように運転者の疲労に影響を及ぼす要因、及び、乾燥、湿潤、積雪、凍結等の路面状態のように車両の路面グリップに影響を及ぼす要因によっても、矢印27の形状を変化させるようになっている。この場合、矢印27の形状は、例えば、図7に示されるような描画形状テーブルに従って決定される。図7(a)は第1の表示テーブルを示し、図7(b)は第2の表示テーブルを示し、図7(c)は第3の表示テーブルを示している。そして、前記要因の変化に応じて前記第1〜第3のテーブルのいずれかが選択され、選択された該テーブルに従って矢印27の形状が決定されるようになっている。
【0047】
まず、前記要因が風切音、エンジン音等の外界の音のように運転者に心理的な影響を及ぼす要因である場合、例えば、外界の音が50〔デシベル〕未満であれば第3のテーブルが選択され、該第3のテーブルに従って矢印27の形状が決定される。また、外界の音が50〔デシベル〕以上であって100〔デシベル〕未満であれば第2のテーブルが選択され、該第2のテーブルに従って矢印27の形状が決定される。さらに、外界の音が100〔デシベル〕以上であれば第1のテーブルが選択され、該第1のテーブルに従って矢印27の形状が決定される。
【0048】
次に、前記要因が車高のように車両の安定性に影響を及ぼす要因である場合、例えば、現在の車高が標準車高よりも高く、その差が10〔mm〕以上であれば第1のテーブルが選択され、該第1のテーブルに従って矢印27の形状が決定される。また、前記差が10〔mm〕未満であれば第2のテーブルが選択され、該第2のテーブルに従って矢印27の形状が決定される。
【0049】
次に、前記要因が外界の明るさの変化のように運転のし易さに影響を及ぼす要因である場合、例えば、外界の明るさがヘッドライトを点灯すべき程度の明るさであれば第1のテーブルが選択され、該第1のテーブルに従って矢印27の形状が決定される。また、外界の明るさがヘッドライトを非点灯とすべき程度の明るさであれば第2のテーブルが選択され、該第2のテーブルに従って矢印27の形状が決定される。
【0050】
次に、前記要因が運転継続時間のように運転者の疲労に影響を及ぼす要因である場合、例えば、運転継続時間が1時間未満であれば第3のテーブルが選択され、該第3のテーブルに従って矢印27の形状が決定される。また、運転継続時間が1時間以上であって2時間未満であれば第2のテーブルが選択され、該第2のテーブルに従って矢印27の形状が決定される。さらに、運転継続時間が2時間以上であれば第1のテーブルが選択され、該第1のテーブルに従って矢印27の形状が決定される。
【0051】
次に、前記要因が乾燥、湿潤、積雪、凍結等の路面状態のように車両の路面グリップに影響を及ぼす要因である場合、例えば、路面状態に影響を及ぼす外気温度が5〔℃〕以上であれば第3のテーブルが選択され、該第3のテーブルに従って矢印27の形状が決定される。また、外気温度が5〔℃〕未満であって0〔℃〕以上であれば第2のテーブルが選択され、該第2のテーブルに従って矢印27の形状が決定される。さらに、外気温度が0〔℃〕未満であれば、凍結の可能性があるので、第1のテーブルが選択され、該第1のテーブルに従って矢印27の形状が決定される。
【0052】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS11 現在速度の読み込みを行う。
ステップS12 NEXTコーナ情報の読み込みを行う。
ステップS13 NEXTコーナ情報から静的な道路情報を取得する。
ステップS14 現在速度でNEXTコーナを旋回した場合に発生する横加速度を算出する。
ステップS15 道路情報及び横加速度をパラメータにして描画形状テーブルより形状を決定する。
【0053】
このように、本実施の形態においては、地図データと車速とに基づいて、進行方向前方の道路区間の表示形状を決定し、該道路区間の表示形状を表示部に表示させるようになっている。すなわち、進行方向前方の道路区間の形状等の情報を示す矢印27の向き、根本部の幅及び曲がり度合いを前記道路区間の形状と車速とに応じて変化させるようになっている。そのため、車両の運転者は、進行方向前方の道路区間の形状等の情報を直感的に把握することができ、車速を前記道路区間の状況に応じた適切な車速にすることができ、前記道路区間の形状等に応じたステアリングの操舵角を判定することができる。すなわち、運転者は道路の状況に応じて適切に車両を運転することができる。例えば、車速が高くなると、矢印27の根本部の幅Wが広くなって遠近感が強調され、また、矢印27の曲率半径Rが小さくなってより曲がり度合いが強調されて表示されるので、コーナの形状がより急なコーナに感じられる。そのため、運転者はより減速することが必要であり、また、より素早くステアリングを操作する必要があることを直感的に把握することができる。
【0054】
また、進行方向前方の道路区間の形状等の情報、例えば、コーナの曲がる方向、コーナ長さ、コーナの緩急等の情報を直接運転者に提供せずに、矢印27の形状によって提供するようになっているので、運転者は多量の情報を受け取ることがなく、情報過多の状態となって的確な判断に支障を来すことがない。
【0055】
さらに、前記矢印27の表示が車両が表示更新地点28に到達したときに更新されるので、道路区間の状況を示す報が適切なタイミングで運転者に提供される。そのため、運転者は余裕を持って情報を理解し、それに対処することができる。
【0056】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態におけるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における表示切り替えのタイミングを判定する動作を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるナビゲーションシステムの動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態における道路区間情報表示マークの形状を決定する方法を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における道路区間情報表示マークの形状決定テーブルの第1の例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における道路区間情報表示マークの形状決定テーブルの第2の例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における道路区間情報表示マークの形状決定テーブルの第3の例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態における道路区間情報表示マークの形状を決定する動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
10 ナビゲーションシステム
11 ナビ制御装置
13 車速センサ
21 補助表示装置
22 表示装置
26a 現在区間
26b 次の区間
26c 第2の区間
27 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)地図データを格納する記憶手段と、
(b)情報を表示する表示部と、
(c)車速を検出する車速センサと、
(d)前記地図データと車速とに基づいて、進行方向前方の道路区間の表示形状を決定し、該道路区間の表示形状を前記表示部に表示させる制御部とを有することを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記道路区間の表示形状を表示させるタイミングを車速に応じて変更する請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項3】
(a)前記記憶手段は前記道路区間の表示形状に関するテーブルを格納し、
(b)前記制御部は、前記テーブルに従って前記道路区間の表示形状を決定する請求項1又は2に記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記制御部は、前記道路区間の表示形状を矢印とし、該矢印の向き、根本部の幅及び曲がり度合いを決定する請求項1〜3のいずれか1項に記載のナビゲーションシステム。
【請求項5】
(a)前記道路区間はコーナであり、
(b)前記制御部は、前記コーナの長さ及び緩急、並びに、車速から算出される旋回横加速度に基づいて、前記矢印の向き、根本部の幅及び曲がり度合いを決定する請求項4に記載のナビゲーションシステム。
【請求項6】
前記表示部は、地図を表示する主表示部及び前記矢印を表示する補助表示部を備える請求項4又は5に記載のナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−47198(P2006−47198A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231146(P2004−231146)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】