説明

ナビゲーション装置

【課題】 運転者等の操作者が意図する受信条件を的確に捉えて最適な経路探索できるナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】 地図データ記憶手段5と、前記地図データ記憶手段に記憶された地図データに基づいて目的地までの経路探索を行なう経路探索手段8と、前記経路探索手段により探索された経路を地図データとともに表示する経路表示手段9,25とを設けてあるナビゲーション装置であって、電波受信装置による受信条件を指定する受信条件指定手段26を備え、前記経路探索手段8に、走行エリアの受信環境情報に基づいて指定された受信条件を満たすように目的地までの経路を探索する受信優先経路探索手段を設けるとともに、前記受信優先経路探索手段は、指定された受信条件の逸脱範囲が最小となるように経路を探索する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地までの経路探索を行なう経路探索手段により探索された経路を表示する経路表示手段とを設けてあるナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体内でナビゲーションを行う際に、テレビ受信機等の電波受信装置で受信中の電波が途切れるのを回避できるように案内することを目的として、地図データに基づいて目的地までの経路探索を行うと共に、所定の電波を受信している場合に、その電波の受信状態が悪化することが予想されるトンネル等の地点又は領域を回避した経路探索を行い、その探索された経路によりナビゲーションを行うようにしたナビゲーション方法が提案されている。
【0003】
また、移動体に搭載して用いられる放送受信装置であって、放送の受信状態を求める受信状態取得手段と、移動体の位置を求める位置取得手段と、求められた受信状態を、その受信状態が得られたときの移動体位置と関連づけて記憶する受信状態記憶手段と、移動体の移動目的地までの経路を探索する経路探索手段を備え、前記経路探索手段は、前記受信状態記憶手段が位置情報と関連づけて記憶している受信状態情報に基づき、受信状態が良好な場所を通る経路を探索することを特徴とする放送受信装置が提案されている。
【特許文献1】特開平11−325941号公報
【特許文献2】特開2001−156659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1に記載された技術によれば、地図データに基づいて得られたトンネルや上部に高速道路などの高架橋が設置された道路を、電波の受信状態が悪化することが予想される地点又は領域として認識するものに過ぎず、そのような物理的障害の無い道路で電波強度が弱い等の原因で電波の受信状態が悪化することが予想される地点又は領域を判別することができないという問題があった。
【0005】
また、特許文献2に記載された技術によれば、受信状態記憶手段に記憶された受信状態および位置情報を参照して、受信状態が良好な場所を通る目的地までの最適経路を探索する際に、経路上の受信不良場所の数が少なくなるような経路を探索するものであり、受信不良場所の数が少なくなるように探索しても、その受信不良場所が広範囲に及ぶ場合、結果として受信不良状態が長く続く場合があり、操作者の意図する最適な経路が探索されるものではないという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の従来欠点に鑑み、運転者等の操作者が意図する受信条件を的確に捉えて最適な経路探索できるナビゲーション装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明によるナビゲーション装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、目的地までの経路探索を行なう経路探索手段により探索された経路を表示する経路表示手段を設けてあるナビゲーション装置であって、電波受信装置による受信条件を指定する受信条件指定手段を備え、前記経路探索手段に、走行エリアの受信環境情報に基づいて前記受信条件指定手段により指定された受信条件を満たすように目的地までの経路を探索する受信優先経路探索手段を設けるとともに、前記受信優先経路探索手段は、指定された受信条件の逸脱範囲が最小となるように経路
を探索する点にある。
【0008】
経路探索手段による経路探索には、通常、目的地までの距離が最短となるように距離を優先する距離優先探索モードと、主に幹線道路を選択して目的地までの到達時間が早くなるように時間を優先する時間優先探索モード等が選択可能に構成されているが、受信優先経路探索手段を設けることにより、それらの経路探索モードよりも優先して電波受信装置に対して指定された受信条件を満たすように最適な経路が選択されるので、受信された映像や音声等が途切れること無く楽しみながら目的地までドライブすることができるようになる。そして経路探索手段は受信条件指定手段により指定された受信条件を満たすように経路を探索するので、予め操作者の意図に沿った条件を設定しておけば、その受信条件の逸脱範囲が最小となるように経路探索され、安心して運転に集中できるようになるのである。
【0009】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記逸脱範囲が受信不可距離である点にある。
【0010】
この場合には、指定された受信条件の下での受信不可距離が最小となるように経路が探索されるので、走行中の受信不可回数が増える可能性があるものの、比較的長時間にわたり安定して受信できるというよさがある。
【0011】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記逸脱範囲が受信不可時間である点にある。
【0012】
この場合には、指定された受信条件の下での受信不可時間が最小となるように経路が探索されるので、同様に比較的長時間にわたり安定して受信できるというよさがある。
【0013】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記指定された受信条件が受信時間帯である点にある。
【0014】
走行中にどうしてもこの放送番組だけは逃さずに視聴したいという要望に対して、受信条件指定手段から放送時間帯を指定条件として設定入力しておけば、その時間帯で確実に視聴できるようになる。
【0015】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記受信優先経路探索手段による探索経路でのルート案内時に、前記経路表示手段に目的地への予想到着時刻を表示する時刻表示手段を設けてある点にある。
【0016】
時刻表示手段により目的地への予想到着時刻が表示されると、その予想到着時刻を参照して運転計画を立てることができ、必要に応じて適宜経路を変更することも可能になる。
【0017】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記受信優先経路探索手段による探索経路でのルート案内時に、前記経路表示手段に走行位置における受信レベルを前記受信環境情報に基づいて表示する受信レベル表示手段を設けてある点にある。
【0018】
この場合、受信状態が変化したときに、受信レベル表示手段により表示される受信レベルを参照することにより、その原因を推定把握することができるので、安心感をもたらすことができるという利点がある。
【0019】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第六の何れかの特徴
構成に加えて、前記受信優先経路探索手段による探索経路でのルート案内時に、前記受信環境情報に基づいて指定された受信条件から逸脱することが予測されるときに警告を行なう警告手段を設けてある点にある。
【0020】
走行中に前方における受信状態がどのように変化するのかが前記受信環境情報に基づいて把握することができる。そこで、警告手段により指定された受信条件から逸脱することが予測されるときに警告を行なうことにより、例えば、車両を停止させるとか、パーキングエリアに入るとかの必要な対処を事前に考えて準備することができるようになる。ここに、警告内容や態様は種々設定でき、例えば、逸脱時間や逸脱原因を音声または画面表示により伝えることができる。
【0021】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一から第七の何れかの特徴構成に加えて、前記受信優先経路探索手段による探索経路でのルート案内時に、前記受信環境情報に基づいて指定された受信条件から逸脱することが予測されるときに、当該受信条件を満たす新たな経路を案内する非常案内手段を設けてある点にある。
【0022】
前記受信優先経路探索手段は、指定された受信条件の逸脱範囲が最小となるように経路を探索するものであるが、そのような逸脱範囲に向けて走行するときであっても、非常案内手段により当該受信条件を満たす新たな経路が案内されるので、重要な放送を受信しているときであっても、安心して新たな経路に進むことができる。ここに新たな経路とは、例えば、当該受信条件を満たすパーキングエリアへの経路等を挙げることができる。
【0023】
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第一から第八の何れかの特徴構成に加えて、前記電波受信装置による走行エリア毎の受信環境情報を記憶する受信環境情報記憶手段を備え、前記受信環境情報が前記電波受信装置の種別情報と前記電波受信装置による受信チャンネル毎の受信評価情報とを走行エリアに対応付けた情報で構成される点にある。
【0024】
受信環境情報記憶手段に記憶された受信環境情報として、例えば、アンテナやチューナの型式、受信制御方式等の組合せによる電波受信装置の種別情報と、当該電波受信装置による受信チャンネル毎の受信レベル情報や受信可否情報等の受信評価情報とを、走行エリアに対応付けた情報で構成することが好ましい。電波受信装置の種別情報を組み合わせるのは、同一地点で同一周波数帯域の電波を受信しても、電波受信装置の構成により受信状況が異なるため、このような受信環境情報によればさらに正確な判断が可能になるのである。
【0025】
同第十の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第一から第九の何れかの特徴構成に加えて、前記受信環境情報に基づいて探索された経路を走行エリアの気象情報に基づいて補正する経路補正手段を設けてある点にある。
【0026】
受信環境情報に基づけば正常に受信できるルートであると判断される場合であっても、曇天や雨天のように雨雲で覆われたエリアではマルチパスによりフェージングが起きて受信状態が悪化する場合がある。そこで、経路補正手段により走行エリアの気象情報に基づいて補正することにより、そのようなマルチパスの発生するエリアを回避することができるようになるのである
【発明の効果】
【0027】
以上説明した通り、本発明によれば、運転者等の操作者が意図する受信条件を的確に捉えて最適な経路探索できるナビゲーション装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に本発明による車載受信装置の受信環境情報提供システムが搭載されたナビゲーション装置の実施の形態を説明する。車載受信装置の受信環境情報提供システムは、図1に示すように、国内の道路網に沿った走行エリア毎の受信環境情報が格納される受信環境情報データベース1が地域拠点に分散設置されるとともに、地上波デジタル放送用の電波受信装置2と、前記電波受信装置2による走行エリア毎の受信環境情報を記憶する受信環境情報記憶手段3と、前記受信環境情報記憶手段3に記憶された受信環境情報のうち指定走行エリアの受信環境情報に基づいて所定の処理を行なう受信環境情報処理手段4等を車両に設置して構成されている。上述の各ブロックは、単一または複数のCPUとその動作プログラムが格納されたROM及びワーキングエリアに使用されるRAM等のハードウェアにより実現されるものである。
【0029】
前記車両には、道路地図データを記憶した地図データ記憶手段5と、自車の位置情報を認識するGPS受信手段6と、GPSアンテナ6aと、自車の走行状態を管理する自律航法手段7と、走行エリアの受信環境情報に基づいて指定された受信条件を満たすように目的地までの経路を探索する経路探索手段8と、地図上に自車の走行位置を表示する走行状態表示処理手段9と、各種の動作モードや動作条件を設定する操作部26とからなり、単一または複数のCPUとその動作プログラムが格納されたROM及びワーキングエリアに使用されるRAMを備えて各ブロックが制御されるように構成され、指定された地点に自車を誘導するナビゲーション装置Nを備えてある。
【0030】
さらに前記車両には、前記GPS受信手段6により認識された位置に対応して前記電波受信装置2による受信環境を評価する受信環境評価手段10と、前記受信環境評価手段10による評価データに基づいて受信環境情報を生成する受信環境情報生成手段11と、生成された受信環境情報を外部に設置された受信環境情報データベースに提供する受信環境情報出力手段12を設けるとともに、前記受信環境情報記憶手段3に記憶される受信環境情報を外部に設置された前記受信環境情報データベース1から獲得する受信環境情報入力手段13を設けてある。これらも同様に、単一または複数のCPUとその動作プログラムが格納されたROM及びワーキングエリアに使用されるRAMを備えて各ブロックが制御される。
【0031】
前記受信環境情報入力手段13は、前記受信環境情報を通信回線を介して前記受信環境情報データベース1からダウンロードするデータ通信手段を備えて構成され、前記受信環境情報出力手段12は、前記データ通信手段により前記受信環境情報を通信回線を介して前記受信環境情報データベース1にアップロードするデータ通信手段を備えて構成されている。詳述すると、前記データ通信手段は、例えば、衛星通信システムに対応した無線端末で構成され、ゲートウェイを介して衛星通信網からインターネットに接続するように構成され、インターネット上のウェブサーバを介して前記受信環境情報データベース1にアクセスし、所要の受信環境情報を前記受信環境情報データベース1からダウンロードして前記受信環境情報記憶手段3に格納し、或いは前記受信環境情報生成手段11により自車で生成された受信環境情報を前記受信環境情報データベース1にアップロードする。尚、通信回線としては衛星通信回線に限るものではなく、携帯電話回線等の他の無線通信回線を使用することも可能である。
【0032】
前記電波受信装置2は、受信アンテナ20と、前記受信アンテナ20を介して受信された伝送チャンネル(周波数帯域)を選局するチューナ21と、選局された受信信号からデジタル信号を取り出して誤り訂正処理を行ないTS(トランスポートストリーム)パケットを出力するOFDM復調部22と、TSパケットのうち映像・音声パケットから音声信号を復号してスピーカ24に出力するとともに、映像信号を復号して表示部25に出力するデコーダ23を備えたデジタルテレビ受信機で構成されている。
【0033】
前記表示部25は、運転席側に設置され、前記電波受信装置2からの映像情報と前記ナビゲーション装置Nからの誘導地図情報が切替表示可能な第一表示部25aと、後部座席側に設置され、前記電波受信装置2からの映像情報が表示される第二表示部25bで構成され、ともにタッチパネル式の液晶表示装置とその表示装置への表示データを格納するビデオRAM等を備えて構成されている。
【0034】
運転者が前記操作部26を操作してテレビ受信モードに設定すると、前記第一表示部25aにチャンネル選択画面が表示され、好みのチャンネルを選択すると選択された伝送チャンネルが前記チューナ21により選局され、前記表示部25に映像が表示される。そして、運転者が前記操作部26を操作してナビゲーションモードに設定すると、前記走行状態表示処理手段9により前記地図データ記憶手段5に記憶されている地図データに基づいて前記GPS受信手段6で検出された自車の走行位置の周辺地図と、その周辺地図上に前記自律航法手段7による自車の走行位置マーカが、前記ビデオRAMの階層化された表示領域に夫々展開され、重ね合わせた画像として表示される。つまり、前記走行状態表示手段9が後述の経路表示手段として構成される。
【0035】
上述のナビゲーションモードで前記操作部26を操作して目的値設定モードを選択すると前記第一表示部25aに目的地設定画面が表示され、運転者が目的地を設定すると前記地図データ記憶手段5に記憶されている地図データに基づいて前記経路探索手段8により現在地から目的地までの走行経路が探索され、探索された経路が自車の走行位置マーカとともに前記走行状態表示処理手段9により前記第一表示部25aに表示されて目的地まで誘導される。経路探索に際しては、目的地までの距離が最短となるように距離を優先する距離優先探索モードと、主に幹線道路を選択して目的地までの到達時間が早くなるように時間を優先する時間優先探索モードと、後述の受信優先経路探索モードとが選択可能に構成されている。尚、前記第二表示部25bも同様に構成することが可能である。
【0036】
前記受信環境情報記憶手段3に記憶される受信環境情報は、図2(a)に示すような前記電波受信装置の種別情報と、同図2(b)に示すような緯度と経度で示される走行エリア情報とその走行エリアでの車速情報と受信チャンネル毎の受信評価データである受信レベルとから構成され、このような受信環境情報により電波受信装置の種別毎に走行エリアにおける各チャンネルの受信レベルが把握できるように構成される。
【0037】
電波受信装置の種別情報とは、同一の走行エリアで同一のチャンネルを受信する場合であっても、アンテナ、チューナ、受信制御方式により受信状態が異なることを考慮するもので、例えば、アンテナとして無指向性アンテナか指向性アンテナかの種類とその本数、受信方式としてダイバシティ制御かアダプティブ制御か等の制御方式等によりマルチパスやドップラー効果の影響の程度が異なる点に着目して採用されている。従って、当該種別情報はそのような性能が把握できるものであれば電波受信装置、またはそれを構成する部品の型式データであってもよく、また、車種によって搭載されている電波受信装置が特定できるものであれば車種データであってもよい。
【0038】
前記受信環境情報処理手段4は、前記受信環境情報記憶手段3に記憶された受信環境情報と前記GPS受信手段6により受信された自車の走行位置でなる指定走行エリア情報に基づいて、現在の走行エリアにおける受信環境情報を前記表示部25に表示する。詳述すると、上述のテレビ受信モードで前記操作部26を操作して受信環境情報表示モードを選択すると前記第一表示部25aに表示条件設定モードが表示され、表示画面から選択された表示条件の下で前記GPS受信手段6から入力された走行位置に対応する受信環境情報を前記受信環境情報記憶手段3から読み出して前記表示部25に表示するように作動する。
【0039】
ここで、前記受信環境情報処理手段4は、前記地図データ記憶手段5に記憶され、前記走行状態表示処理手段9により表示された地図上から運転者等により指定された位置情報を指定走行エリアデータとして入力し、そのエリアの受信環境情報を前記受信環境情報記憶手段3から読み出して表示するように構成することもできる。この場合には、目的地または目的地に到着するまでの中間位置における受信環境も把握できるようになる。
【0040】
また、指定走行エリアとしては、指定された位置そのものに限る必要は無く、その位置から進行方向に所定距離の範囲を指定走行エリアとしてその範囲の受信環境情報を表示することも可能である。所定距離として、例えば10Km先の範囲といったように距離で規定することも可能であるし、現在の走行速度から演算して10分後に到達する迄の範囲というように処理することも可能であり、前記受信環境情報処理手段4として作動するCPUの実行プログラムの設定により実現させることができる。
【0041】
前記表示条件としては、現在の走行エリアにおいて、選択されたチャンネルに関する受信レベルの表示、全チャンネルに関する受信レベルの表示、受信可能なチャンネルの受信レベルの表示の各条件が選択され、選択された条件における表示態様として、図3に示すように、チャンネル毎のアンテナ図形の側方にレベルを識別するための複数のバーを表示する態様(例えば、受信レベルが高いほどバーの数を増し、さらにその長さを異ならせる)、図4に示すように、受信レベルに応じて道路または領域を異なる色に着色表示し(例えば、受信レベルが高いほど暖色系の色で表示する)、或いは図5に示すように、受信レベルの悪い領域を枠で囲むように、地図データに受信環境情報を反映させた表示態様等が選択可能に構成されている。ここに、後者の表示態様が選択されているときであっても、テレビ画像が表示されているときには優先して前者の表示態様で表示する優先態様表示手段が設けられている。
【0042】
尚、後者の表示態様は選択されたチャンネルに関する受信レベルの表示に適しているが、その他の表示条件であってもチャンネル毎に識別できるように色を異ならせて表示してもよい。さらには、その表示色を操作者自らが設定できるようにユーザーインターフェースを構成してもよい。ユーザーインターフェースとしては、表示部25の画面に設定または選択のための操作ボタンを表示し、当該操作ボタンの操作をタッチパネルで検出して、当該操作ボタンに対応した処理を実行するGUI(Graphical User Interface)方式を採用することができる。
【0043】
このように、前記表示部25に表示された受信環境情報に基づいて、自車に搭載された電波受信装置にマッチした受信環境のよいチャンネルを適切に選択することができるので良好な放送映像及び音声を楽しめるようになるのである。
【0044】
また、前記受信環境情報処理手段4は、受信環境情報を表示処理するものとして他にメッセージ表示するものであってもよく、表示処理以外に音声で案内処理するもの、音声と表示で案内処理するもの等であってもよい。
【0045】
さらに、前記受信環境情報処理手段4は、前記経路探索手段8による目的地までの経路探索時に、探索された経路毎に選択されたチャンネルに対する受信環境情報を前記受信環境情報記憶手段3から読み出して提供することで、選択されたチャンネルの受信環境のよい経路で目的地まで誘導することができるように構成されている。つまり、前記経路探索手段8と前記受信環境情報処理手段4により、上述の距離優先探索モードや時間優先探索モードよりも優先して受信環境のよい経路を探索する受信優先経路探索モードとして動作する受信優先経路探索手段が構成されるのである。
【0046】
ナビゲーションモードで前記操作部26を操作して目的地設定モードを選択して目的地を指定し、さらに、前記受信優先経路探索モードを選択すると、前記操作部26の一部で構成される受信条件指定手段が作動し、前記電波受信装置2による受信条件の指定画面が表示される。当該受信条件指定画面では受信を望む単一または複数のチャンネルの指定、チャンネル毎の受信開始時刻と終了時刻の設定等の受信条件が入力されると、前記操作部26から指定された受信条件が前記環境情報処理手段4に入力され、前記経路探索手段8と協同して指定された受信条件の逸脱範囲が最小となるように経路を探索する。
【0047】
例えば、受信条件として特定のチャンネルが指定されている場合には、図6(a)に示すように、前記受信環境情報記憶手段3に記憶された受信環境情報に基づいて、受信不可距離が最小となるルートBを探索して前記表示部25に表示する。ここに、受信不可距離が最小となる経路ではなく、探索された経路における想定走行速度(例えば、予め一般道と専用道路とで夫々走行速度が設定されている)での走行時間に基づいて受信不可時間が最小となる経路を探索するものであってもよく、前記操作部26からその何れかを選択できるように構成するものであってもよい。
【0048】
さらに、例えば、受信条件として特定の二つのチャンネルが指定されている場合には、図6(b)に示すように、前記受信環境情報記憶手段3に記憶された受信環境情報に基づいて、指定チャンネル毎のルートB,Cを探索して前記表示部25に表示する。ここに、各ルートは、上述したように、指定された受信条件の逸脱範囲が最小となるように探索されるものである。前記経路探索手段8には、時刻表示手段が設けられ、各ルートの目的地への予想到着時刻が表示されるように構成してあり(単一チャンネルを指定した場合であっても予想到着時刻が表示されるように構成することも可能である)、運転者が予想到着時刻と指定チャンネルに基づいて何れかのルートを選択操作するように構成されている。
【0049】
また、図7(a)に示すように、受信条件として単一チャンネルが指定されているときに、複数のルートをその目的地への予想到着時刻とともに表示し、運転者が何れかを選択できるように構成するものであってもよい。この場合には、受信中の番組の放送時間に合わせてルートを選択できるようになる。
【0050】
受信条件としてチャンネルとそのチャンネルにおける方向開始時刻と終了時刻でなる時間帯条件が入力される場合には、前記受信環境情報記憶手段3に記憶された受信環境情報に基づいて、その時間帯における受信不可距離または受信不可時間が最小となる経路が探索されるように構成することも可能である。つまり、上述の想定走行速度に基づいてその時間帯における走行位置を演算導出して探索するのである。
【0051】
このようにして、指定された受信条件を満たすように探索されたルートに基づいて電波受信状態の良い快適な走行が可能になるのであるが、前記受信優先経路探索手段8による探索経路でのルート案内時に、前記経路表示手段9に走行位置における受信レベルを前記受信環境情報に基づいて表示する受信レベル表示手段を設けて単一または複数の選択されたチャンネル毎の受信状態を表示することにより、現在の受信環境を案内表示し、適切な他のチャンネルも受信できるように構成されている。
【0052】
道路状況や走行状態によっては、探索した経路で満足できない場合も生じる。例えば、大切な番組を録画中にトンネルに入り録画が途切れたり、渋滞等により指定時間帯に電波の受信状態が悪化する等である。このような場合備えて、前記受信環境情報処理手段4には、受信優先経路探索手段8による探索経路でのルート案内時に、前記受信環境情報に基づいて指定された受信条件から逸脱し、または回復することが予測されるときに警告を行なう警告手段を設けてあり、走行中に前方における受信状態の変化を事前に運転者に伝えるように構成してある。前記警告手段による警告は、メッセージ表示や音声表示で行なわ
れる。例えば、トンネルに入るような場合には、図7(b)に示すように、メッセージ等で表示される。
【0053】
また、前記受信優先経路探索手段8による探索経路でのルート案内時に、前記受信環境情報に基づいて指定された受信条件から逸脱することが予測されるときに、当該受信条件を満たす新たな経路を案内する非常案内手段を設けてある。例えば、図8(a)に示すように、高速道路を走行中に電波受信不良エリアに差し掛かるときに、その直前の指定チャンネルが受信できるサービスエリアに案内したり、新たな経路をその時点で探索して誘導するものである。このような構成によれば、番組開始時刻と終了時刻に指定チャンネルを受信するという初期に指定した受信条件から逸脱する虞があるときに、非常案内手段により条件を満たす新たなルートを探索して誘導することも可能になる。
【0054】
さらに、前記受信環境情報に基づいて探索された経路を走行エリアの気象情報に基づいて補正する経路補正手段を設けてあり、経路手段は新たな経路を探索し誘導するようにも構成されている。このような構成により、曇天や雨天のように雨雲で覆われたエリアで生じるマルチパスによるフェージングで悪化する受信状態に対処できるようになる。前記気象情報は、例えば前記受信環境情報入力手段13による衛星回線を介したインターネットからを介した気象情報サイトから取得することができ、例えば、車のワイパーの稼動状況から得ることができる。このようにして気象情報から天候の悪化による受信状態の悪化が判断されると、前記受信環境情報に基づいてより受信環境のよいルートで誘導することが可能に構成されている。
【0055】
以下に、前記受信環境評価手段10及び受信環境情報生成手段11について説明する。前記受信環境評価手段10は、前記OFDM復調部22による誤り訂正処理の際に、単位時間当たりの誤り訂正処理の回数や誤り訂正の可否状態に基づいて選択された受信レベルを複数段階に分割して所定時間毎に前記受信環境情報生成手段11に出力する。前記受信環境情報生成手段11は、入力された選択チャンネルに対する受信レベルと前記自律航法手段7から得られた走行位置データ及び走行速度データとさらに前記電波受信装置2の種別情報(予め設定されているか前記受信環境評価手段10から入力されるように構成されている)をサンプリング受信環境情報として内部メモリに記憶する。
【0056】
記憶されたサンプリング受信環境情報は、前記受信環境情報出力手段12により定期的に或いは操作者により操作されたときに通信回線を介して前記受信環境情報データベース1にアップロードされる。このようにして、各車両で蓄積されたサンプリング受信環境情報が前記受信環境情報データベース1にアップロードされることにより、前記受信環境情報データベース1の受信環境情報は常に最新のデータにアップデートされ、その最新の受信環境情報が各車両に提供されるようになる。
【0057】
以下に別実施形態を説明する。前記サンプリング受信環境情報が、前記受信環境情報生成手段11の内部メモリに蓄積されるものを説明したが、前記受信環境情報記憶手段3のサンプリング受信環境情報格納エリアに格納されるように構成することも可能である。この場合、サンプリング受信環境情報を自車の受信環境情報に対するアップデート用の情報としても使用できることは言うまでもない。
【0058】
上述の実施形態では、受信環境情報処理手段4は、受信環境情報データベース1からダウンロードされた受信環境情報に基づいて各種の処理を行なうものを説明したが、受信環境情報としては、この他に、前記受信環境情報生成手段11により、前記地図データ記憶手段5に格納された地図データから得られるトンネル等の電波障害物情報に基づいて受信環境情報を生成し、または、図9に示すように、前記地図データ記憶手段5に格納された地図データから得られる電波中継局の位置から自車までの距離に基づいて演算導出した電
波強度データ、或いはその間に存在する建物や自然地形による障害物の有無を考慮した電波強度データ、さらには、自車と電波中継局とのなす角度(アンテナ角度で、前記自律航法手段7から自車の走行方向データが得られ、そのデータから演算される)に基づいて受信環境情報を生成し、それらの受信環境情報に基づいて各種の処理を行なうものであってもよい。
【0059】
前記受信環境情報記憶手段3を構成する記憶デバイスは特に制限されるものではなく、ハードディスクや光磁気ディスク、半導体メモリ等で適宜構成することができる。そして、前記受信環境情報記憶手段3を車両から着脱自在に設置することにより、他の車両の受信装置に設置して受信環境情報提供システムを構築することも可能になる。
【0060】
尚、受信環境情報としては、少なくとも走行エリアに対応したチャンネル毎の受信レベルデータを備えていれば一定の効果を奏するシステムが実現できるものであることは言うまでもない。
【0061】
上述した実施形態では、デジタル地上波放送を受信する電波受信装置を例に説明したが、本発明による車載受信装置の受信環境情報提供システムの対象はこれに制限されるものではなく、FM,AMのラジオ放送を受信する電波受信装置、携帯電話機等の電波受信装置にも適用可能である。
【0062】
上述した実施形態は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において各ブロックの具体的構成等を適宜変更設計できることは言うまでもない。更に地図データ記憶手段、経路探索手段、受信優先経路探索手段は車両のナビゲーションに設ける他、車外のセンターに設けるようにしても良い。尚、この場合、受信条件指定手段は、ユーザーからの指定であるため、車両側に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】車載受信装置の受信環境情報提供システムのブロック構成図
【図2】受信環境情報の説明図
【図3】受信環境情報の表示態様の説明図
【図4】受信環境情報の表示態様の説明図
【図5】受信環境情報の表示態様の説明図
【図6】表示部の画面の説明図
【図7】表示部の画面の説明図
【図8】表示部の画面の説明図
【図9】別実施形態を示す受信環境情報生成プロセスの説明図
【符号の説明】
【0064】
1:受信環境情報データベース
2:電波受信装置
3:受信環境情報記憶手段
4:受信環境情報処理手段
5:地図データ記憶手段
6:GPS受信手段
7:自律航法手段
8:経路探索手段
9:走行状態表示処理手段
10:受信環境評価手段
11:受信環境情報生成手段
12:受信環境情報出力手段
13:受信環境情報入力手段
26:操作部(受信条件指定手段)
N:ナビゲーション装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地までの経路探索を行なう経路探索手段により探索された経路を表示する経路表示手段を設けてあるナビゲーション装置であって、
電波受信装置による受信条件を指定する受信条件指定手段を備え、前記経路探索手段に、走行エリアの受信環境情報に基づいて前記受信条件指定手段により指定された受信条件を満たすように目的地までの経路を探索する受信優先経路探索手段を設けるとともに、前記受信優先経路探索手段は、指定された受信条件の逸脱範囲が最小となるように経路を探索するナビゲーション装置。
【請求項2】
前記逸脱範囲が受信不可距離である請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記逸脱範囲が受信不可時間である請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記指定された受信条件が受信時間帯である請求項1から3の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記受信優先経路探索手段による探索経路でのルート案内時に、前記経路表示手段に目的地への予想到着時刻を表示する時刻表示手段を設けてある請求項1から4の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記受信優先経路探索手段による探索経路でのルート案内時に、前記経路表示手段に走行位置における受信レベルを前記受信環境情報に基づいて表示する受信レベル表示手段を設けてある請求項1から5の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記受信優先経路探索手段による探索経路でのルート案内時に、前記受信環境情報に基づいて指定された受信条件から逸脱することが予測されるときに警告を行なう警告手段を設けてある請求項1から6の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記受信優先経路探索手段による探索経路でのルート案内時に、前記受信環境情報に基づいて指定された受信条件から逸脱することが予測されるときに、当該受信条件を満たす新たな経路を案内する非常案内手段を設けてある請求項1から7の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
前記電波受信装置による走行エリア毎の受信環境情報を記憶する受信環境情報記憶手段を備え、前記受信環境情報が前記電波受信装置の種別情報と前記電波受信装置による受信チャンネル毎の受信評価情報とを走行エリアに対応付けた情報で構成される請求項1から8の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項10】
前記受信環境情報に基づいて探索された経路を走行エリアの気象情報に基づいて補正する経路補正手段を設けてある請求項1から9の何れかに記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−64550(P2006−64550A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247731(P2004−247731)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】