説明

ナビゲーション装置

【課題】 所定の距離内に建物が存在する場合、その建物の構内地図を表示し、事前に建物内の様子を把握できるようにする。
【解決手段】 ナビゲーション装置は、現在の車両位置を中心にして基準距離内に建物が存在するか否かを検出し、建物が存在することを検出した場合、その建物に係る構内データを読み出して構内データに係る構内地図30をモニタに表示する。検出した建物が目的地又は中継点として設定されている場合は、その建物に対応する誘導路データも読み出して構内地図30及び車両誘導路31を組み合わせた詳細地図25を作成してモニタに表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在位置から所定距離の範囲内に駅、空港等の建物が含まれる場合、その建物の構内地図を表示できるようにしたナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されて目的地までのルート案内を行うナビゲーション装置が普及している。昨今のナビゲーション装置は多機能化が進み、案内するルートを平面的な地図で示す以外に、ドライバーの視界に入る実際の周囲状況と同様な三次元的な表示でルート案内を行う機種も存在する。
【0003】
また、サーバー装置との通信手段を設けて、設定した目的地に到着した場合、目的地周辺の周辺情報を受信してナビゲーション装置が備えるモニタに表示できるようにしたものも開示されている(特許文献1参照)。さらに、乗車している者が途中から公共交通機関に乗り換えて目的地まで行く場合に、その目的地まで最も早く行き着くことができる駅を検索し、その駅までのルート案内を行うものも開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−303528号公報
【特許文献2】特開2004−117031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のナビゲーション装置では、駅及び空港等までの大まかなルート案内を行うことは可能であるが、その駅及び空港等の専用のロータリーのような車両誘導路まで詳細に案内することができないと云う問題がある。例えば、大型の駅へ車両で送迎する場合、一般車両が進入可能なロータリーを表示して、そのロータリーにおける何れの場所に停車すればよいかを示すことを従来のナビゲーション装置では詳細に行えない。
【0005】
また、従来のナビゲーション装置では、モニタに表示する地図は基本的にルート案内に関連する道路を示すものに限られるため、駅及び空港等の建物の構内地図まで表示できないと云う問題がある。特に大型の駅及び空港等では建物内も広大であるため、目的の建物に到着しても、その建物内の目標場所に行き着くまでに手間取ると云う事態も現実には発生する。
【0006】
さらに、従来のナビゲーション装置では、現在の走行箇所が駅の近辺を通過することを運転者に知らせる機能は存在しないと云う問題がある。即ち、駅等の近辺は歩行者及び走行する自転車等が一般的に多いため、駅近辺を通過する旨をモニタに示すことができれば、運転者に一段と周囲に注意を払って走行することを喚起できることになる。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、駅及び空港等の所定の建物の近辺に位置する場合、その建物の構内地図を表示してユーザの利便性を高めると共に周囲に対して注意して運転することを促すようにしたナビゲーション装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、その建物が目的地又は経由地である場合、建物専用の車両誘導路、停車位置、及び建物の出入り口等を表示するようにして、その建物への詳細な案内を実現可能にしたナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために第1発明に係るナビゲーション装置は、位置検出手段と、地図データを記憶する記憶手段と、前記位置検出手段が検出した位置を地図データに係る地図上に表示する表示部とを備えるナビゲーション装置において、前記地図データに係る地図中に含まれる建物の構内地図を示す構内データを記憶する手段と、前記位置検出手段が検出した位置から前記建物までの距離を算出する距離算出手段と、該距離算出手段が算出した距離が基準距離以下であるか否かを判定する判定手段と、該判定手段が基準距離以下であると判定した場合、前記構内データに係る構内地図を前記表示部で表示する手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
第1発明にあっては、検出した位置から建物までの距離が基準距離以下である場合、構内地図を表示するので、運転者は基準距離範囲内に所要の建物が存在することを一目で把握できるようになり、建物の存在を前提にした運転操作を心がけることが可能になる。また、運転者及び同乗者は建物に到着する以前に、その建物の内部を詳細に把握できるようになり、その建物の利用をスムーズに行うことが可能になる。
【0010】
第2発明に係るナビゲーション装置は、前記構内地図が表示される時間を計測する時間計測手段と、該時間計測手段が計測した時間が基準時間を越えたか否かを判定する時間判定手段と、該時間判定手段が基準時間を超えたと判定した場合、前記構内地図の表示を停止する手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
第2発明にあっては、基準時間を経過すると構内地図の表示を停止するので、通常のナビゲーション機能に係るルート案内の表示が妨げられることを極力抑えて、詳細な建物の案内と通常のルート案内とをバランス良く両立して表示できる。
【0012】
第3発明に係るナビゲーション装置は、前記位置検出手段が検出した位置から基準距離の範囲内に複数の建物がある場合、該位置から各建物までの距離の比較を行う比較手段と、該比較手段の比較に基づく順序に従い各建物の構内地図を前記表示部で順次表示する手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
第3発明にあっては、検出した位置から基準距離の範囲内に複数の建物がある場合、距離に応じた順序で各建物の構内地図を順次表示するので、効率良く各建物に係る構内地図表示できるようになり、運転者は表示される順序により各建物の位置関係を把握でき、一段と周囲の状況に応じた運転操作が可能になる。
【0014】
第4発明に係るナビゲーション装置は、建物用の車両誘導路を示す誘導路データを記憶する手段と、目標及び/又は経由に係る行き先を受け付ける手段と、受け付けた行き先が前記建物である場合、該建物の構内地図を表示するときに前記誘導路データに係る車両誘導路を表示する手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
第4発明にあっては、基準距離内に位置する建物が行き先として設定されている場合、建物用の車両誘導路も構内地図と合わせて表示するので、運転者は、その建物へ向かう道路から建物用の車両誘導路までの道筋を詳細に把握できるようになり、建物へスムーズにアクセスすることが可能になる。
【0016】
第5発明に係るナビゲーション装置は、前記車両誘導路が表示された場合、車両の停車位置を示す手段を備えることを特徴とする。
第5発明にあっては、車両誘導路が表示されると、車両の停車位置が示されるので、運転者は車両誘導路へ進入したときの車両の停車位置を事前に把握できるようになり、運転者は建物への送迎を一段と容易に行える。
【0017】
第6発明に係るナビゲーション装置は、前記停車位置が示された場合、停車位置から前記建物の出入り口までの経路を示す手段を備えることを特徴とする。
第6発明にあっては、停車位置から建物の出入り口までの経路が示されるので、建物まで送られた者は、下車した位置から建物の出入り口まで事前に把握できるようになり、下車後スムーズに建物内に入ることが可能になる。
【0018】
第7発明に係るナビゲーション装置は、前記停車位置の前記建物に対する方向に応じた表示配置で前記構内地図を前記表示部で表示する手段を備えることを特徴とする。
第7発明にあっては、停車位置の建物に対する方向に応じた配置で構内地図を表示するので、ユーザが直感的に把握しやすいレイアウトで構内地図を表示できるようになり、車両の搭乗者が認識しやすい表示形態を提供できる。
【0019】
第8発明に係るナビゲーション装置は、建物内の場所の設定を受け付ける手段と、前記構内地図を表示する場合、設定を受け付けた場所を構内地図中の他の場所と相異させて示す手段とを備えることを特徴とする。
第8発明にあっては、建物内の場所の設定を受け付けて、その場所を他の場所と区別して示すので、建物内における目的の場所を事前に把握できるようになり、建物に入った者は、建物内の最終の行き先までスムーズに進むことが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
第1発明にあっては、検出した位置から建物までの距離が基準距離以下である場合、構内地図を表示するので、基準距離範囲内に所要の建物が存在することを一目で把握でき、運転者へ建物の存在を意識した運転操作を促すことができ、また、車両の搭乗者は建物への到着前に建物内部を詳細に把握して建物の利用をスムーズに行える。
第2発明にあっては、基準時間を経過すると構内地図の表示を停止するので、詳細な建物の案内と通常のルート案内とをバランス良く両立して表示できる。
【0021】
第3発明にあっては、検出した位置から基準距離の範囲内に複数の建物がある場合、距離に応じた順序で各建物の構内地図を順次表示するので、車両の搭乗者は表示される順序により複数の建物の位置関係を把握でき、運転者は建物が多く存在するという周囲の状況に対応して運転操作を行える。
第4発明にあっては、基準距離内に位置する建物が行き先にされている場合、建物用の車両誘導路も構内地図と合わせて表示されるので、運転者は、車両誘導路を進んでスムーズに建物へアクセスできる。
【0022】
第5発明にあっては、車両誘導路が表示されると、車両の停車位置が示されるので、運転者は車両誘導路へ進入したときの車両の停車位置を事前に把握でき、建物への送迎を一段と容易に行える。
第6発明にあっては、停車位置から建物の出入り口までの経路が示されるので、車両で送られた者は、下車した位置から建物の出入り口まで事前に把握でき、スムーズに建物内へ入ることができる。
【0023】
第7発明にあっては、停車位置の建物に対する方向に応じた配置で構内地図を表示するので、直感的に把握しやすいレイアウトで構内地図を表示できる。
第8発明にあっては、建物内の場所の設定を受け付けて、その場所を他の場所と区別して示すので、建物内の目的の場所を事前に把握でき、建物内の最終の行き先までスムーズに進むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るナビゲーション装置1の主要な内部構成を示すブロック図である。本実施形態のナビゲーション装置1は車両に搭載されるものであり、図2に示すように所要の建物の構内地図(図2ではA駅の構内)を表示可能にしたことを特徴にしている。
【0025】
ナビゲーション装置1はGPS(Global Positioning System)を利用して人工衛星から発せられる電波を受信して現在の位置を検出しており、図1に示すように電波受信用のアンテナ2及び位置検出部3を備える。また、ナビゲーション装置1は、ナビゲーションに係る各種処理制御を行う制御部4に、位置検出部3、DRAM(Dynamic RAM)5等の各種メモリ群、ハードディスク装置9、操作部10、及びインタフェース部11を夫々接続し、インタフェース部11にはモニタ12を接続している。以下、各部を個別に説明する。
【0026】
位置検出部3は、アンテナ2が受信した電波に基づき現在の緯度・経度を算出し、算出した結果を制御部4へ伝送する。なお、位置検出部3は所要の時間間隔(例えば、3秒間隔)で随時位置の算出処理を行う。
【0027】
各種メモリ群の中でDRAM5は、後述のROM7から読み出されるプログラム等を一時的に記憶する。SRAM(Static RAM)6は、処理に係るデータ等を一時的に記憶し、記憶したメモリ内容をバックアップ的に保存し、装置のメイン電源スイッチ(図示せず)がオフの場合でも車両に搭載されたバッテリーからの給電によりメモリ内容を保持する。ROM7は、制御部4の処理を規定したプログラムを予め記憶し、プログラムは装置起動時にDRAM5へ読み出される。また、ROM7は、後述する構内地図の表示処理で用いられる基準距離及び基準時間等のデータも予め記憶する。VRAM(Video RAM)8は、モニタ12に表示する表示データを記憶するものである。
【0028】
また、ハードディスク装置9は各種データ記憶し、具体的には地図データ20、構内データ21、誘導路データ22、及びメニューデータ23等を記憶している。地図データ20は、道路及び主要な建物等を含む地図をモニタ12で表示するためのデータであり、一般的な使用状況では、地図データ20に係る地図がモニタ12に表示されると共に、その地図中に現在の車両位置が示される。なお、地図データ20は、地図中に含まれる建物の中心点(ポイント)となる緯度・経度データを有しており、また、本実施形態の地図データ20では駅及び空港の建物に対して識別用フラグが付されている。
【0029】
構内データ21は、地図データ20において識別用フラグが付された建物(駅及び空港)に対する構内地図をモニタ12で表示するためのデータであり、具体的には図2に示す詳細地図25の中の二点鎖線で囲まれた構内地図30の部分を示すためのデータである。なお、図2中の二点鎖線は、構内地図30の範囲を便宜的に示すために記載したものであり、実際には表示されない。また、構内データ21は、図1では一つのブロックとして示したが、実際には、地図データ20で識別用フラグが付された駅及び空港毎にデータが存在し、各構内データ21は、それぞれの識別用フラグに連携して読み出し可能にハードディスク装置9に記憶されている。
【0030】
図2に示す構内データ21に係る構内地図30は、A駅の構内の形状及び所要箇所の配置等を示すものであり、具体的には三箇所の出入口、二箇所の改札、二箇所の切符売場、二箇所の売店、改札間の通路、及び1番線ホームから4番線ホームの位置関係等を示している。なお、このように示される建物の各対象も位置を判別するためのデータが付されている。
【0031】
また、図1に示す誘導路データ22は、上述した構内データ21に係る建物へ車両を誘導するロータリー及び車両導入路等に相当する車両誘導路をモニタ12で表示するためのデータであり、具体的には図2に示す詳細地図25の中の一点鎖線で囲まれた車両誘導路31に相当する図部分を示すためのデータである。
【0032】
誘導路データ22は、対応する建物に係る構内データ21と連携されており、各建物データ21に夫々対応した誘導路データ22がハードディスク装置9に記憶されている。図2に示すA駅に対応した車両誘導路31は、A駅をアクセスするロータリーに相当する駅専用路を示すと共に車両が停車できる場所を停車位置31a〜31cとしてハッチングで示している。なお、上述した構内データ21の二点鎖線と同様に、図2中の車両誘導路31の図部分を囲う一点鎖線も車両誘導路31の範囲を示すためのものであり、実際には表示されない。また、対象となる実際の建物に車両誘導路が併設されていない場合、その建物の構内データ21に連携する誘導路データ22は存在しない。
【0033】
ハードディスク装置9に記憶されるメニューデータ23は、ナビゲーション装置1に関する各種メニューをモニタ12で表示するためのデータであり、具体的なメニューの内容としては、図6(a)〜(c)に示すメニューM1〜M3等がある。
【0034】
図6(a)の設定先選択メニューM1は、これから設定操作を行う設定先が目的地及び中継点のいずれであるかを受け付けるものであり、ユーザは、操作部10を適宜操作することで、設定先の対象を指定する指示をナビゲーション装置1へ与える。目的地が指定された場合は、最終的な行き先を特定(検索)する処理が行われ、中継点が指定されると最終的な行き先までの経由場所を特定(検索)する処理が行われる。なお、本実施形態のナビゲーション装置1は、中継点として複数の地点を設定することが可能である。
【0035】
図6(b)に示すジャンル選択メニューM2は、行き先を特定する際にジャンルから行き先を絞り込んで検索するためのものであり、ユーザが操作部10を適宜操作して行き先の属するジャンルを選択することになる。
【0036】
また、図6(c)は、本実施形態のナビゲーション装置1の特徴的なメニューである構内行き先メニューM3である。構内行き先メニューM3は、ジャンル選択メニューM2等により設定されたルート案内の行き先が、構内データ21に係る建物である場合、その建物内の行き先までも設定できるようにしたものである。図6(c)の構内行き先メニューM3は、図2の構内地図30が示されるA駅に対応したものであり、A駅の中の「1番線ホーム」、「2番線ホーム」、「3番線ホーム」、「4番線ホーム」のいずれか行き先として選択できるようになっている。なお、構内行き先メニューM3で構内の行き先を選択するか否かはユーザの自由であり、選択を行わないことも勿論可能である。
【0037】
なお、上述した地図データ20及び構内データ21等の各種データを記憶するハードディスク装置9は、図1では示していないが、検索用のデータベース及び地図に関連する各種データ等も記憶している。
【0038】
また、図1に示す操作部10は、ユーザからの指示を受け付けて、受け付けた内容を制御部4へ伝えるようになっている。操作部10は、ユーザからの操作指示を受け付けるために十字キー及び各種スイッチに加えて、モニタ12の表示画面を被うタッチパネルスイッチを備えている。また、本実施形態の操作部10は、通常のルート案内用の地図のみを表示する通常表示モードと、図2に示す構内地図30の表示を行う構内地図表示モードとを切り替えるためのスイッチも設けている。
【0039】
インタフェース部11は、モニタ12と制御部4との間に介在してモニタ12で表示させる内容のデータの伝送状態を制御してモニタ12へ送る処理を行う。また、モニタ12は矩形状の表示画面を有し、インタフェース部11から送られてデータに係る内容を表示画面に表示する。
【0040】
制御部4は、ROM7に記憶されたプログラムに基づきナビゲーション機能に係る各種処理を行うと共に、本実施形態では操作部10のスイッチで構内地図表示モードに切り替えられた場合は、構内地図表示に係る各種制御処理も行う。ナビゲーション機能に係る一般的な処理として制御部4は、図6(a)(b)に示すメニューM1、M2等をモニタ12に表示して、ユーザから目的地、中継点として行き先の設定を受け付け、位置検出部3から送られる現在の位置に応じた地図をモニタ12に表示し、進むルートを示す案内矢印を作図して現在の位置に応じた車両の印と合わせた状態で地図上に随時示し、ルート案内を行う。なお、設定を受け付けた行き先等の内容は、SRAM6に適宜記憶される。
【0041】
また、制御部4の構内地図表示に係る処理としては、構内地図表示モードである場合、図5(a)に示すように、検出された現在の車両位置Sを中心にした基準距離L(ROM7に記憶)の範囲Hの内部に識別用のフラグが付された建物のポイントが含まれると、その建物に対応した構内データ21に係る構内地図30をモニタ12で表示する処理を行う。範囲Hに建物が含まれるか否かは、位置検出部3から送られる車両位置Sに係る経度・緯度及び地図データ20に含まれる建物の識別用のフラグが付された建物のポイントに係る位置データに基づいて現在の車両位置Sから建物までの距離を算出し、算出した距離が基準距離L以下である場合、その建物が範囲Hに含まれると判定する。
【0042】
さらに制御部4は、その含まれると判定した建物がルート案内に係る目的地又は中継点として設定を受け付けているか否かを判断し、目的地又は中継点の設定を受け付けているときは、その建物の構内データ21に連携する誘導路データ22があれば、その誘導路データ22及び構内データ21をハードディスク装置9から読み出し、図2に示すように構内地図30に車両誘導路31を組み合わせた詳細地図25を作成する。
【0043】
さらにまた、制御部4は、現在の車両位置Sから最適(直近)となる車両の停車位置を特定し、その特定した停車位置を他の停車位置と区別できるように構内地図30中の示す処理を行う。また、制御部4は、その特定した停車位置から直近となる建物の出入り口までの経路を各出入り口に係る位置判別用のデータに基づいて特定し、直近となる出入り口を他と区別した表示形態に変更すると共に、特定した経路も作図して詳細地図25の中に表示する。
【0044】
このような制御部4の処理による表示を図2に基づき具体的に説明すると、特定された停車位置31aは太線のハッチングで示され、停車位置31aから直近の出入り口として特定された出入り口30aまでを結ぶ矢印線の経路32が表示され、出入り口30aも他の出入り口と区別して太線で表示される。
【0045】
また、図6(c)の構内行き先メニューM3で、構内の行き先の設定も受け付けている場合、制御部4は行き先の場所も構内地図中に含まれる他の場所と相異させて示すと共に、その場所までの経路も作図して構内地図30に示す処理を行う。この処理内容を2番線ホームが行き先として設定されている場合で図2に基づき具体的に説明すると、行き先の2番線ホーム30cは太線で表示されると共に、出入り口30aから改札を通過して2番線ホーム30cまでを結ぶ矢印線の案内経路33が構内地図30の中に示される。
【0046】
よって、このような詳細地図25が表示されることで、車両の運転者はA駅に併設された車両誘導路(ロータリー等)の形状を把握できると共に、どの箇所に車両を停車すればよいかも一目で判断でき、A駅まで送ってもらう同乗者は、車両を降りた後、どの出入り口から入って目的の2番線ホームまで進むかを事前に把握できる。
【0047】
さらに、制御部4は、上述した処理に基づき作成した詳細地図25をモニタ12に表示する場合、モニタ12の上下(天地)に対して詳細地図25を表示する方向を規定する制御も行う。具体的には、図2に示すように詳細地図25中に車両誘導路31が組み合わされる場合は、特定された停車位置の建物(A駅)に対応する方向として、停車位置の上方にA駅の構内地図30が配置した状態でモニタ12に表示されるように表示制御を行う。
【0048】
例えば、現在の車両位置に応じた停車箇所として停車位置31aが特定された場合、停車位置31aの上方にA駅の構内地図30が位置するように詳細地図25の図2中の上側の長辺25aをモニタ12の上辺側にして表示を行う。また、最適な停車箇所として停車位置31b又は停車位置31cが特定された場合、構内地図30が上方となるように図2に示す状態から詳細地図25を90度右回転させて詳細地図25の図2中の左側の短辺25bをモニタ12の上辺側にして表示を行う。
【0049】
なお、詳細地図25中に車両誘導路31が組み合わされない場合は、詳細地図25には構内地図30のみが含まれ、この場合、制御部4は、現在の車両の進行方向と建物の位置関係に応じて詳細地図25を表示する方向を定める。
【0050】
具体的には、図3に示すように、実線で示される車両位置Sの車両の進行方向を示す頂点Saの上方に建物(駅)の構内地図30が位置する場合、詳細地図25の長辺25aにモニタ12の上辺12aが対応するように表示される。しかし、図3中の右方に破線で示される車両位置S′の場合では、車両位置S′の進行方向に合わせて構内地図30が上方に位置するように、詳細地図25を図3で示す状態から90度右回転させて短辺25bがモニタ12の上辺12aに対応するように表示を行う。また、図3中の上方に破線で示される車両位置S″の場合では、車両位置S″の進行方向に合わせて構内地図30が上方に位置するように詳細地図25を180度回転させて下側の長辺25cがモニタ12の上辺12aに対応するように表示を行う。
【0051】
なお、上述したように詳細地図25の表示方向が調整される場合、構内地図30に表記される文字は表示方向に合うように制御部4で横書きと縦書きとが適宜変更される。このように詳細地図25は、車両の停車位置又は進行方向に応じて表示される方向が調整されるため、車両の運転者及び同乗者は自然なイメージで建物の構内の位置関係等を把握できる。
【0052】
作図された詳細地図25の表示形態としては、全画面的にモニタ12に表示することも可能であり、また、図4(a)に示すようにモニタ12の表示画面Gを分割して表示すること、さらには、図4(b)に示すようにウインドウ的に表示することも可能である。このような表示形態はユーザからの指示を操作部10で受け付けることで、制御部4は適宜切り替えるようにしている。
【0053】
図4(a)に示すように分割表示される場合、制御部4は、詳細地図25が表示される領域L2に隣り合う領域L1に車両位置Sを示したルート案内用の案内地図26を表示し、案内地図26中に詳細地図25の位置を示す枠Tを作図する処理を行う。なお、詳細地図25の領域L2と案内地図26の領域L1との割合は、ユーザの指示に基づき可変となっている。また、図4(b)に示すように詳細地図25がウインドウ的に表示される場合、表示画面Gには全画面的にルート案内用の案内地図26が表示され、車両位置S及び枠Tが同様に示される。なお、ウインドウ的に表示される詳細地図25の大きさ及び位置等もユーザからの指示に基づき制御部4で調整可能にしている。
【0054】
また、制御部4は、案内地図26の視認性も考慮して、一定時間経過後に上述した詳細地図25の表示を停止するように制御を行う。具体的に制御部4は、詳細地図25を表示すると同時に表示時間の計測を開始し、予めROM7に記憶されている基準時間と計測中の表示時間とを比較して計測中の表示時間が基準時間を越えたか否かを判定し、計測中の表示時間が基準時間を超えたと判定すると、詳細地図25の表示を停止して案内地図26のみの表示に切り替える処理を行う。
【0055】
さらに、図5(b)に示すように、車両位置Sから基準距離Lの範囲Hの内部に識別用のフラグが付された建物が複数存在する場合、制御部4は、各建物の構内地図を車両位置Sから近い順でモニタ12に表示する処理を行う。即ち、図5(b)に示すように範囲H内にA駅、B駅及びC駅が存在すると、制御部4は車両位置Sから各駅までの距離をそれぞれ算出し、算出した距離を比較して近い順に順番を決定する。図5(b)の場合では、1番近い駅をA駅、2番目に近い駅をC駅、3番目に近い駅をB駅と決定する。
【0056】
それから、制御部4は、設定された行き先を考慮して決定した順番に従って駅の構内データ21及び誘導路データ22の両方、又は構内データ21のみをハードディスク装置9から読み出して詳細地図25を作成して表示する。1番目に表示されるA駅にかかる詳細地図25は、上述した基準時間に係る処理に基づき表示が停止すると、2番目のC駅に係る詳細地図が表示され、その後同様に3番目の詳細地図までが自動的に順次表示される。このように各駅の詳細地図を順次表示することで、運転者は現在通過中の箇所の周囲には駅が多数存在することを容易に認識でき、歩行者の飛び出しといった危険予知を前提に運転操作を行うことができる。
【0057】
次に、上述した構成のナビゲーション装置1による詳細地図25の表示に係る一連の処理手順を図7に示す第1フローチャート及び図8に示す第2フローチャートに基づき説明する。なお、以下の説明では目的地、中継点等の設定が既に行われ、ルート案内に係るナビゲーション処理が行われている状態であるとする。
【0058】
先ず、ナビゲーション装置1の制御部4は、操作部10のスイッチの操作により構内地図表示モードになっているか否かを判断する(S1)。構内地図表示モードでないと判断した場合(S1:NO)、構内地図の表示に係る処理を行わず終了し、通常のナビゲーションに係る処理を行う。また、構内地図表示モードであると判断した場合(S1:YES)、図5(a)(b)に示すように、現在の車両位置Sから基準距離Lの範囲H内に識別用のフラグが付された建物があるか否かを検出する(S2)。建物を検出しない場合(S2:NO)、最初の処理段階(S1)へ戻る。
【0059】
建物を検出した場合(S2:YES)、検出した建物の数が複数であるか否かを判定する(S3)。建物が複数ある場合(S3:YES)、図8の第2フローチャートに示す複数表示処理を行う。なお、複数表示処理の詳細は後述する。また、建物が単数の場合(S3:NO)、検出した建物が目的地又は中継点として設定を受け付けているか否かを判断する(S4)。
【0060】
検出した建物が目的地又は中継点として設定を受け付けていると判断した場合(S4:YES)、ナビゲーション装置1の制御部4は、検出した建物の構内データ21及び誘導路データ22をハードディスク装置9から読み出し、現在の車両位置S、進行方向及び設定された構内の行き先等を考慮して図2に示すよう構内地図30及び車両誘導路31を組み合わせた詳細地図25を作図してモニタ12に表示する(S5)。なお、検出した建物に対応する誘導路データ22が存在しないときは、構内地図30のみが表示される。
【0061】
一方、検出した建物が目的地又は中継点として設定を受け付けていないと判断した場合(S4:NO)、制御部4は、検出した建物の構内データ21のみをハードディスク装置9から読み出し、現在の車両位置及び進行方向等を考慮した表示形態で図3に示すよう構内地図30のみを含む詳細地図25を作図してモニタ12に表示する(S6)。地図表示後、制御部4は表示時間を計測し、計測した表示時間が基準時間を経過したか否かを判定し(S7)、基準時間を経過していない場合は(S7:NO)、地図表示の処理段階(S5又はS6)へ戻る。
【0062】
また、基準時間を経過した場合(S7:YES)、制御部4は詳細地図25の表示を停止し(S8)、最初の段階(S1)へ戻り、以下、構内地図表示モードがオフに切り替えられるまで上述した処理を繰り返す。
【0063】
次に、複数表示処理について図8の第2フローチャートに基づき説明する。先ず、制御部4は、現在の車両位置から各建物のまでの距離をそれぞれ算出し、算出した各距離を比較する(S10)。続いて、制御部4は、距離を比較した結果に基づいて近い建物から順番(1〜N:Nは検出した建物の数)を付ける(S11)。
【0064】
それから、制御部4は、図7の第1フローチャートの処理段階(S4〜S7)と同様の処理を順次繰り返す。即ち、制御部4は、1番目の建物が目的地又は中継点として設定を受け付けているか否かを判断し(S12)、設定を受け付けていると判断した場合(S12:YES)、1番目の建物の構内地図30及び車両誘導路31を組み合わせた詳細地図25を表示し(S13)、1番目の建物が目的地又は中継点として設定を受け付けていないと判断した場合(S12:NO)、1番目の建物の構内地図30のみを含む詳細地図25を表示する(S14)。
【0065】
さらに、制御部4は、表示時間が基準時間を経過したか否かを判定し(S15)、基準時間を経過していない場合は(S15:NO)、詳細地図の表示処理段階(S13又はS14)へ戻り、基準時間を経過した場合(S15:YES)、次の順番(N番目)の建物が目的地又は中継点として設定を受け付けているか否かを判断し(S16)、設定を受け付けている場合(S16:YES)、N番目の建物の構内地図30及び車両誘導路31を表示し(S17)、設定を受け付けていない場合(S16:NO)、N番目の建物の構内地図30のみを表示する(S18)。
【0066】
さらに、制御部4は、表示時間が基準時間を経過したか否かを判定し(S19)、基準時間を経過していない場合は(S19:NO)、地図表示の処理段階(S17又はS18)へ戻り、基準時間を経過した場合(S19:YES)、複数表示処理を終了し、図7の第1フローチャートの最初の段階(S1)へ戻る。
【0067】
以上に説明したように、本発明のナビゲーション装置1は、構内地図30等を含む詳細地図25を表示できるため、駅及び空港等へ車両で送迎する際に詳細な案内を行えると共に、車両で送迎される者は構内を事前に把握できるため、スムーズに構内に入り目的場所まで移動できる。また、構内地図に対応する建物が設定されていない場合でも、基準距離内に近付くと詳細地図が表示されるため、運転者は人通りが多い箇所を通過することを認識でき、状況に応じた運転を行える。
【0068】
なお、本発明のナビゲーション装置1は、上述した形態に限定されるものではなく種々の変形例の適用が可能である。例えば構内地図を表示する建物としては駅及び空港以外に百貨店、ショッピングセンター、ホテル、会議場、展示場、病院、図書館、及び博物館等の一定の大きさを有する各種建物も対象にすることができ、また、本発明における建物には、野球場、競技場、遊園地及びテーマパークのような一定の大きさの敷地内に出入り口が設けられた施設等も含む。
【0069】
上述した各種建物の構内地図を表示するためには、表示させる建物の識別用フラグのようなデータを地図データ中の建物の位置データに対応して付加しておくことが必要であると共に、構内地図に対応した構内データ、車両誘導路に対応した誘導路データをナビゲーション装置1が記憶しておくことが必要である。
【0070】
また、構内データ及び誘導路データを予めハードディスク装置9のような記憶媒体に記憶しておく以外に、ナビゲーション装置1に通信装置を設け、基準距離Lの範囲H内に表示用の建物が存在することを検出した場合、その建物に係る構内データ、誘導路データ等を外部のデータサーバに送信の要求を行い、要求に基づいて通信装置を介して構内データ等を受信して記憶し、その構内データに係る構内地図等を表示するようにしてもよい。
【0071】
さらに、上述した実施形態では、図5(a)(b)に係る建物検出に係る処理をROM7に記憶した基準距離Lに従い行うが、基準距離Lをユーザが設定できるようにしてもよく、同様に表示時間に係る基準時間もユーザが設定できるようにしてもよい。また、上述した実施形態における詳細地図の表示処理は、必ずしも全てを行う必要はなく、ナビゲーション装置1の機種又はグレード等によって、適宜省略することも可能であり、例えば、建物内の行き先場所の示す作図処理等は省略可能である。
【0072】
また、地図データ20及び構内データ21等を記憶する記憶媒体は、ハードディスク装置9に限定されるものではなく、光ディスク、半導体メモリのような他の記憶媒体を適用することも勿論可能である。さらに、図5(b)に示すように、基準距離Lの範囲H内に複数の建物が存在する場合は、近い距離順ではなく、遠い順、又は距離の比較に基づく所定の順番に各建物に係る構内地図を表示してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態に係るナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】構内地図及び車両誘導路を含む詳細地図を示す概略図である。
【図3】モニタにおける構内地図の表示形態を示す概略図である。
【図4】(a)は分割表示を示す概略図、(b)はウインドウ的な表示を示す概略図である。
【図5】(a)は建物の検出状況を示す概略図、(b)は複数の建物の検出状況を示す概略図である。
【図6】(a)は設定先選択メニューを示す概略図、(b)はジャンル選択メニューを示す概略図、(c)は構内行き先メニューを示す概略図である。
【図7】詳細地図の表示処理に係る第1フローチャートである。
【図8】複数の建物に対する複数表示処理に係る第2フローチャートである。
【符号の説明】
【0074】
1 ナビゲーション装置
3 位置検出部
4 制御部
9 ハードディスク装置
10 操作部
12 モニタ
20 地図データ
21 構内データ
22 誘導路データ
23 メニューデータ
25 詳細地図
26 案内地図
30 構内地図
31 車両誘導路
31a〜31c 停車位置
32 経路
33 案内経路
L 基準距離
S 車両位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置検出手段と、地図データを記憶する記憶手段と、前記位置検出手段が検出した位置を地図データに係る地図上に表示する表示部とを備えるナビゲーション装置において、
前記地図データに係る地図中に含まれる建物の構内地図を示す構内データを記憶する手段と、
前記位置検出手段が検出した位置から前記建物までの距離を算出する距離算出手段と、
該距離算出手段が算出した距離が基準距離以下であるか否かを判定する判定手段と、
該判定手段が基準距離以下であると判定した場合、前記構内データに係る構内地図を前記表示部で表示する手段と
を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記構内地図が表示される時間を計測する時間計測手段と、
該時間計測手段が計測した時間が基準時間を越えたか否かを判定する時間判定手段と、
該時間判定手段が基準時間を超えたと判定した場合、前記構内地図の表示を停止する手段と
を備える請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記位置検出手段が検出した位置から基準距離の範囲内に複数の建物がある場合、該位置から各建物までの距離の比較を行う比較手段と、
該比較手段の比較に基づく順序に従い各建物の構内地図を前記表示部で順次表示する手段と
を備える請求項1又は請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
建物用の車両誘導路を示す誘導路データを記憶する手段と、
目標及び/又は経由に係る行き先を受け付ける手段と、
受け付けた行き先が前記建物である場合、該建物の構内地図を表示するときに前記誘導路データに係る車両誘導路を表示する手段と
を備える請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記車両誘導路が表示された場合、車両の停車位置を示す手段を備える請求項4に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記停車位置が示された場合、停車位置から前記建物の出入り口までの経路を示す手段を備える請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記停車位置の前記建物に対する方向に応じた表示配置で前記構内地図を前記表示部で表示する手段を備える請求項5又は請求項6に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
建物内の場所の設定を受け付ける手段と、
前記構内地図を表示する場合、設定を受け付けた場所を構内地図中の他の場所と相異させて示す手段と
を備える請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−90818(P2006−90818A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276181(P2004−276181)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】