説明

ニアネットシェイプ翼形部前縁保護材を作るための高温付加製造システム及びそのツーリングシステム

【課題】高温付加製造システムを提供する。
【解決手段】本高温付加製造システム(29)は、金属堆積物(40)を供給するようになった高温付加製造装置(38)と、ツーリングシステム(30)とを含み、ツーリングシステム(30)は、金属堆積物を受けかつ該金属堆積物に形状を与えるようになったマンドレル(32)と、マンドレル(32)に施工されて、金属堆積物(40)の汚染を減少させるようになった金属クラッディング(34)と、マンドレル(32)と関連して、該システム(30)から熱を除去するようになった少なくとも1つの冷却チャネル(36)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載した実施形態は、総括的にはニアネットシェイプ翼形部前縁保護材を作るための高温付加製造システム及びその付加製造システムで使用するツーリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブレード及びベーンのような多くの最新式のタービンエンジン翼形部は、複合材積層体又は成形繊維で構成される。翼形部金属前縁(本明細書では、「MLE」)保護ストリップを使用して、エンジン環境内で発生する可能性があることが多い衝突及び侵食損傷から複合材翼形部を保護することができる。従来の実施法では、多くの場合において、翼形部の前縁及び側面をV字形保護金属ストリップで包んで、そのような保護を与えている。
【0003】
MLE保護ストリップは様々な材料で作ることができるが、その有利な重量及び機械的特性により、チタン及びチタン合金が利用されることが多い。しかしながら、それらチタン構成要素を製作するためには、加熱成形法を使用しなければならない。加熱成形法は一般的に、中間のケミカルミリング又は機械加工を伴った複数のステップを必要とする。それらのステップにより、高いツーリングコスト、高い収率損失及び環境に優しくない加工処理が生じる可能性がある。これらの不利な点は、特にMLE保護ストリップのような薄いかつ複雑なジオメトリを製作する場合に起こり易い。
【0004】
付加製造方法は、ネット又はニアネットシェイプ(NNS)構成要素を作るために金属部品又はプリフォームを構築することを含む。このやり方によると、低いコストでかつ改善した製造効率で複雑な構成要素を作ることができる。一般的に、自立形構成要素は、コンピュータ支援設計(CAD)モデルにより構築される。しかしながら、構成要素が薄くかつ/又は複雑な形状を有する場合には、支持用のツール上で構成要素を構築するのが有利である可能性がある。
【0005】
NNS構成要素を作る付加方法として、プラズマ移行アーク又はレーザクラッディングのような高温かつ溶融ベースのプロセスを使用する場合には、ツールは、幾つかの機能を果たさなければならない、すなわち、ツールは、部品に対して形状を与えなければならず、ツールは、入熱を制御して、構成要素の全長にわたって所望の結晶粒度を有する均一な微細構造を備えるようにしなければならず、また該ツールに対する堆積構成要素の融着を防止するのに十分なほど急速に堆積物から熱を伝導除去しなければならない。さらに、ツールは、金属堆積物の汚染が構成要素の物理的及び機械的特性に致命的な影響を与える可能性があるので、金属堆積物のいかなる汚染も生じないようにしなければならない。このことは、チタン及びチタン合金について作業する場合に、特に当てはまる。
【0006】
より具体的には、チタン及びチタン合金を堆積させる場合には、チタンの高い融点及び反応特性のために、ツーリングによる堆積物の汚染のリスクが高くなる。現在の実施法では、堆積させるのと同じ合金(例えば、チタン及びチタン合金)で製作した一体構造式ツールを利用している。このやり方は、汚染の問題を軽減するのに役立つが、ツールに対する堆積物の融着がない状態で健全な堆積物を作るためのプロセス窓が非常に狭くなる。それは、チタンが、他のヒートシンク材料(例えば、耐熱金属、軟鋼、銅)と比較した場合に、比較的低い熱伝導体であるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,785,498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、現在のMLE保護ストリップ製造に関連する前述の問題を解決しかつ克服する製造及びツーリングシステムに対する必要性が依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書における実施形態は、総括的にツーリングシステムに関し、本ツーリングシステムは、高温付加製造装置を使用して施工された金属堆積物を受けかつ該金属堆積物に形状を与えるようになったマンドレルと、マンドレルに施工されて、金属堆積物の汚染を減少させるようになった金属クラッディングと、マンドレルと関連して、該システムから熱を除去するようになった少なくとも1つの冷却チャネルとを含む。
【0010】
本明細書における実施形態は、総括的に高温付加製造システムに関し、高温付加製造システムは、金属堆積物を供給するようになった高温付加製造装置と、ツーリングシステムとを含み、ツーリングシステムは、金属堆積物を受けかつ該金属堆積物に形状を与えるようになったマンドレルと、マンドレルに施工されて、金属堆積物の汚染を減少させるようになった金属クラッディングと、マンドレルと関連して、該システムから熱を除去するようになった少なくとも1つの冷却チャネルとを含む。
【0011】
それらの及びその他の特徴、態様並びに利点は、以下の開示から当業者には明らかになるであろう。
【0012】
本明細書と共に提出した特許請求の範囲において、本発明を具体的に指摘しかつ明確に特許請求しているが、本明細書に記載した実施形態は、同じ参照符号が同様な要素を表している添付図面と関連させて行った以下の説明から一層良好に理解されることになると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本明細書における説明による、ガスタービンエンジン用の複合材ファンブレードの1つの実施形態の概略図。
【図2】本明細書における説明による高温付加製造システムの1つの実施形態の一部分の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に説明する実施形態は、総括的にはニアネットシェイプ翼形部前縁保護ストリップを作るための高温付加製造システム及びその付加製造システムで使用するツーリングシステムに関する。
【0015】
図1は、ガスタービンエンジン用の複合材ファンブレード10であり、複合材ファンブレード10は、前縁16から後縁18までほぼ翼弦方向Cに延びる複合材翼形部12を有する。翼形部12は、ほぼそのスパンを定める根元20から先端22までスパン方向Sに半径方向外向きに延びかつ負圧側面24及び正圧側面26を有する。翼形部12は、当技術分野で公知であるように複合材料の複数プライで構成することができる。本明細書における実施形態は、翼形部前縁16に対して付着させるようになったチタン又はチタン合金金属前縁(MLE)保護ストリップ28を作るための方法及びツーリングについて説明する。本明細書における実施形態は、複合材ファンブレードに焦点を当てているが、本明細書における方法、ツーリング及びMLE保護ストリップは、ブレード及びベーンを含むあらゆる複合材翼形部で使用するのに適している。
【0016】
MLE保護ストリップ28は、高温付加製造プロセスを使用して作ることができる。本明細書で使用する場合に、「高温付加製造法」というのは、プラズマ移行アーク蒸着、レーザクラッディング、ガスメタルアーク溶接、超音波溶接、電子ビーム自由形状製作成形、金属付着及び同様の方法を含むプロセスを意味する。そのようなプロセスは、約3000℃を越える作動温度を有し、この作動温度は、本ケースではチタン又はチタン合金金属堆積物の融点を十分越えている。高い融点及び/又は反応性材料について作業する場合におけるそのようなプロセスに共通な前述の問題を克服するためには、独特のツーリングを使用しなければならない。図2は、チタン及びチタン合金の高温付加製造法と共に使用するのに適したツーリングシステム30を含む高温付加製造システムの概略図である。
【0017】
より具体的には、ツーリングシステム30は、マンドレル32と、金属クラッディング34と、高温付加製造装置38で使用するようになった少なくとも1つの冷却チャネル36とを含む。マンドレル32は、金属堆積物40を受けることができかつMLE保護ストリップ28の所望の形状に対応する形状を有することができる。マンドレル32は、使い捨て又は再使用可能とすることができ、またあらゆる金属又は非金属材料で製作することができる。金属堆積物40の汚染を防止するのを助けるためには、マンドレル32は、金属堆積物の熱伝導率の少なくとも約2倍である熱伝導率を有するべきである。この熱伝導率の差によりまた、マンドレル32がヒートシンクとして働き、それによって現在の実施法と比較した場合に該マンドレルに対する融着がない状態で健全な堆積物を作るための大きなプロセス窓を構成するのを可能にすることができる。マンドレル32用の好適な「金属材料」の幾つかの実施例には、それに限定されないがチタン、チタン合金、モリブデン、タングステン、軟鋼及び銅が含まれ、一方、好適な非金属材料の幾つかの実施例には、それに限定されないが黒鉛、炭化ケイ素及び炭素間複合材が含まれる。
【0018】
金属クラッディング(又は、「クラッディング」)34は、マンドレル32に施工された金属堆積物40としてチタン又はチタン合金の薄い層を含む。クラッディング34は、金属堆積物40の汚染をさらに防止する働きをする。クラッディング34は、プラズマ溶射、ロールボンディング、プラズマ移行アーク蒸着、アーク溶接オーバレイ(被覆アーク溶接(SMAW))、ガスメタルアーク溶接(GMAW)、ガスタングステンアーク溶接、火炎溶射及び物理蒸着(PVD)を含む様々な方法によってマンドレル32に施工することができる。クラッディング34の厚さは、約2ミクロン〜約2mmの範囲とすることができ、1つの実施形態では、約2ミクロン〜約1mmとすることができる。従来通りの熱伝達モデリング法を使用して、使用する特定のクラッディング材料についての最適皮膜厚さを決定することができる。
【0019】
クラッディング34に加えて、マンドレル32の能動冷却は、MLE保護ストリップ28の熱を除去しかつ該マンドレル32及びクラッディング34に対する該MLE保護ストリップ28の融着を防止するのを助けるのに望ましいものとすることができる。能動冷却はまた、堆積物材料の結晶粒度を制御しかつMLE保護ストリップ28の機械的及び腐食性能を最適にするのを助けるように使用することができる。能動冷却は、マンドレル32と関連させた状態で少なくとも1つの冷却チャネル36を使用することによって達成することができる。そのような冷却チャネル36は、マンドレル32に対して取付る、マンドレル32内に埋込む(図2に示すように)、マンドレル32内に機械加工する、或いはそれらの幾つかの組合せとすることができる。次に、冷却チャネル36を通して能動冷却媒体を流して(矢印で示すように)、マンドレル32から熱を除去することができる。能動冷却媒体は、水又はグリコールのような液体、或いはアルゴン、窒素、空気又はヘリウムのような気体とすることができる。
【0020】
使用中に、高温付加製造装置38は、ツーリングシステム30の上方に配置して、金属堆積物40を供給するようにすることができる。マンドレル32に対する金属(チタン及びチタン合金)堆積物40の施工は、前述したような従来通りの方法で達成することができる。ほぼ周囲温度に冷却されると、得られたニアネットシェイプMLE保護ストリップ28は、さらに加工処理することができる。1つの実施形態では、MLE保護ストリップ28は、マンドレル32から取外しかつ翼形部前縁16に対して取付ける前に、従来通りの方法(例えば、機械加工)を使用して最終寸法形状に仕上げることができる。別の実施形態では、翼形部前縁16に対して保護ストリップ28を取付けた後に、あらゆる必要な仕上げ作業を実行することができる。MLE保護ストリップ28は次に、様々な従来通りの方法を使用して、形部前縁16に機能可能に連結することができる。
【0021】
本明細書における実施形態では、従来のMLE保護ストリップ製造方法に優る利点が得られる。より具体的には、付加製造法によると、前縁保護ストリップをニアネットシェイプに構築し、それによって材料投入、材料浪費及び総製造時間を低減することが可能になる。構成要素を完成させるのに必要な量の材料のみを使用することにより、高価な原材料を節約し、また材料の除去及び仕上げ加工(例えば、機械加工)の必要性を劇的に減少させる。さらに、付加製造法により、MLE保護ストリップの設計を、従来の機械加工法と比較して迅速にかつ低コストで変更又は改造する上での自由度が可能になる。さらに、付加製造プロセスを利用することにより、MLE保護ストリップは、その組成を機能的に強化してその特性及び構造を調整することが可能になり、それによって最新式の設計機能が可能になる。
【0022】
本明細書は最良の形態を含む実施例を使用して、本発明を開示し、また当業者が本発明を製作しかつ使用することを可能にもする。本発明の特許性がある技術的範囲は、特許請求の範囲によって定まり、また当業者が想到するその他の実施例を含むことができる。そのようなその他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言と相違しない構造的要素を有するか又はそれらが特許請求の範囲の文言と本質的でない相違を有する均等な構造的要素を含む場合には、特許請求の範囲の技術的範囲内に属することになることを意図している。
【符号の説明】
【0023】
10 複合材ファンブレード
12 翼形部
16 前縁
18 後縁
20 先端
22 根元
24 負圧側面
26 正圧側面
28 MLE保護ストリップ
29 高温付加製造システム
30 ツーリングシステム
32 マンドレル
34 金属クラッディング
36 冷却チャネル
38 高温付加製造装置
40 金属堆積物
C 翼弦方向
S スパン方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温付加製造システム(29)であって、
金属堆積物(40)を供給するようになった高温付加製造装置(38)と、
ツーリングシステム(30)と、
を含み、前記ツーリングシステム(30)が、
前記金属堆積物を受けかつ該金属堆積物に形状を与えるようになったマンドレル(32)と、
前記マンドレル(32)に施工されて、前記金属堆積物(40)の汚染を減少させるようになった金属クラッディング(34)と、
前記マンドレル(32)と関連して、該システム(30)から熱を除去するようになった少なくとも1つの冷却チャネル(36)と、を含む、
付加製造システム(29)。
【請求項2】
前記金属堆積物(40)が、熱伝導性を有するチタン又はチタン合金を含む、請求項1記載の付加製造システム(29)。
【請求項3】
前記マンドレル(32)が、前記金属堆積物(40)の熱伝導率よりも少なくとも2倍大きい熱伝導率を含む、請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の付加製造システム(29)。
【請求項4】
前記マンドレル(32)が、チタン、チタン合金、モリブデン、タングステン、軟鋼及び銅からなる群から選ばれた金属材料、或いは黒鉛、炭化ケイ素及び炭素間複合材からなる群から選ばれた非金属材料を含む、請求項1、請求項2又は請求項3のいずれか1項記載の付加製造システム(29)。
【請求項5】
前記高温付加製造装置(38)が、プラズマ移行アーク蒸着、レーザクラッディング、ガスメタルアーク溶接、超音波溶接、電子ビーム自由形状製作及び成形金属付着からなる群から選ばれたプロセスを実行することができる、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4のいずれか1項記載の付加製造システム(29)。
【請求項6】
前記高温付加製造装置(38)が、約3000℃以上の作動温度を含む、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5のいずれか1項記載の付加製造システム(29)。
【請求項7】
前記金属クラッディング(34)が、前記金属堆積物(40)と同一の材料を含む、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5又は請求項6のいずれか1項記載の付加製造システム(29)。
【請求項8】
前記金属クラッディング(34)が、プラズマ溶射、ロールボンディング、プラズマ移行アーク蒸着、アーク溶接オーバレイ、火炎溶射及び物理蒸着からなる群から選ばれたプロセスを使用して、前記マンドレルに施工される、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6又は請求項7のいずれか1項記載の付加製造システム(29)。
【請求項9】
前記クラッディング(34)が、約2ミクロン〜約2mmの厚さを含む、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7又は請求項8のいずれか1項記載の付加製造システム(29)。
【請求項10】
1つよりも多い冷却チャネル(36)を含む、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8又は請求項9のいずれか1項記載の付加製造システム(29)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−222705(P2010−222705A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−65577(P2010−65577)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】