説明

ニーダ及び製パン機

【課題】混捏子とシャフトを固定することで、液状の材料によって生じる浮力、その他の要因によって混捏子が浮いて抜けてしまうことを防ぎ、かつ、着脱が容易であるニーダを提供する。
【解決手段】
シャフト1001は、混捏子の軸孔と連結する連結部1002を有し、連結部1002は、混捏子を抜け止めする面を持つ突部1007と、シャフト1001の軸芯方向に伸びるとともに周方向に開き角度を持って形成されている第1の平面1005および第2の平面1004と、を有し、突部1007は、第1の平面1005の先端部に庇状に形成され、第2の平面1004は、連結部1002の先端まで形成され、混捏子の軸孔は、軸芯方向にシャフト1001の第1の平面1005との係合平面を有することで横断面形状がD字状に形成され、軸孔の係合平面の端部は、連結部1002の突部1007と係合する受け部となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン生地や、うどん、そば等のめん生地、菓子生地、餅等の生地材料を混ぜて捏ねると共に、搗き固めるのに好適なニーダ及びそのニーダを使用した製パン機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パン生地や、うどん、そば等のめん生地、菓子生地、餅といった混捏物は、所定の材料を混ぜて捏ね、搗き固める工程を経て作られる。これらの工程は、たとえば、パン生地を直捏ね法で作る場合、まず、小麦粉、水、イースト、砂糖、塩、ショートニング等の材料を混ぜ合わせた後に、この混ぜ合わせた材料を、捏ねる、たたむ等という動作を繰り返すことからなる。これらの工程を適切かつ充分に行って初めて、水和、すなわち、グルテンの生成と結合が促進される。
【0003】
ところが、上記工程を手捏ね、つまり人の手で行うことは、多大な労力を要し、そのため近年では、家庭のみならず、大量生産するパン工場などにおいても、人の手ではなく、電気的、機械的な動力を利用したニーダによって上記工程が行われている。ニーダは、穀粉のようなやわらかい材料を混合し、均一な混合物とする装置であって、このニーダが備えるポット内に、混捏子が回転自在に配置される。そして、ポット底面の直交方向のシャフトを中心に、混捏子が駆動手段によって回転することで、ポット内に投入された材料を混ぜ合わせ捏ねることができる。
【0004】
一般的に混捏子を駆動手段と連動させるためには、駆動手段にシャフトを取り付けて、さらにこのシャフトと混捏子とを様々な構造で連結させる。例えば、特許文献1に記載の発明では、混捏子の軸孔の下半部内方に、山状の突起が突設され、混捏子が装着されるシャフトには、上述の山状の突起を収納可能なV字溝が縦方向に形成されている。シャフトのV字溝の一側面の下半部には係止突部が形成されていて、係止突部の下面が上述の山状突起の上面と当接することで、使用時に混捏子が逸脱しないとされている。
【0005】
特許文献2に記載された発明では、混捏子の軸孔に係合突起が突設され、また、シャフトの先端側には、この係合突起と嵌め合わさる係合溝が設けられている。特許文献3に記載の発明では、混捏子の軸孔に2つのストッパが突設されていて、シャフトには、混捏子側のストッパに対応し、混捏子側の2つのストッパを押さえ込む2つのシャフト側のストッパが形成されている。
【0006】
ところで、上述のようにニーダによって材料を混ぜ合わせる際には、当初液状である材料を次第に固化させていくような場合がある。上記各特許文献のシャフトと混捏子の構成は、シャフトの回転によって、混捏子側に設けられた突起部が、シャフト側に設けられた突起部の下部に入り込む特徴を有している。そして、混捏子側の突起の上面部がシャフト側の突起部の下面部に当接することにより、混捏子の浮き上がりや抜けを防止している。従って、混捏子が常時定速回転している場合は混捏子の浮き上がりや抜けはほとんど無い。
【0007】
しかしながら、ニーダによってパン生地等を捏ねる際には、シャフトの回転速度を変化させたり、あるいは、一時的に停止させる場合がある。そのような場合、シャフトが減速あるいは停止しても、混捏子は慣性によりそれまでの回転速度でわずかながら回転してから減速あるいは停止する。すると、上記各特許文献に記載されたシャフトと混捏子の構成では、混捏子側の突起上面部とシャフト側の突起下面部との当接状態が一瞬解除される場合がある。すなわち、シャフトと混捏子の相対位置関係が、混捏子を着脱する際の状態になり、そのため、容易に混捏子が浮き上がり、更には抜けてしまうことがある。また、シャフトの回転速度がたとえ一定でも、回転する混捏子とパン生地等とのぶつかり合いなど不規則な相互作用の影響で、混捏子側の突起の上面部とシャフト側の突起の下面部との当接状態が上記と同様に解除され、混捏子が浮き上がり、更には、抜けてしまうという問題が発生する。上述した問題は、混捏子側の突起の上面部とシャフト側の突起の下面部との当接状態がロックされていないことが原因である。また、上記各特許文献に記載されている混捏子の軸孔の構造とシャフトの構造では、混捏子を着脱する際に、シャフトと混捏子の相対的な回転方向位置合わせを厳密に行わなければならないため、混捏子の着脱が容易ではないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平2−8344号公報
【特許文献2】実開平2−94754号公報
【特許文献3】実開平2−125731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような従来技術の問題点を解消するためになされたもので、混捏子のシャフトに対する装着状態をロックすることで、液状の材料によって生じる浮力、その他の要因によって混捏子が浮いて抜けてしまうことを防ぎ、かつ、混捏子の着脱が容易であるニーダ及びこのニーダを用いた製パン機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるニーダは、混捏用ポットと、混捏用ポット内の底部に配置され、駆動手段によって回転駆動される円柱状のシャフトと、シャフトにより回転させられて上記混捏用ポット内の材料を混捏する混捏子を有するニーダ、であって、シャフトは、混捏子の軸孔と連結する連結部を有し、連結部は、混捏子を抜け止めする面を有する突部と、シャフトの軸芯方向に伸びるとともに周方向に所定の開き角度を持って形成されている第1の平面および第2の平面と、を有し、突部は、第1の平面の先端部に庇状に形成され、第2の平面は、連結部の先端まで形成され、混捏子の軸孔は、軸芯方向にシャフトの第1の平面との係合平面を有することで横断面形状がD字状に形成され、軸孔の係合平面の端部は、連結部の突部と係合する受け部となっていることを最も主要な特徴とする。
【0011】
また、本発明のニーダのシャフトは、突部の上記第2の平面側の側面は、上記第2の平面と同一面に形成され、抜け止めする面は、混捏子の受け部側方向に凸の略円弧状の傾斜面によって第2の平面側の側面につながっていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のニーダのシャフトは、連結部の後端部には、第1の平面と第2の平面に及ぶ段部が形成され、段部は、混捏子の軸孔の受け部とは反対側端部の係止部となっており、係止部の第2の平面側は、突部の略円弧状の傾斜面と同じ角度で傾斜していることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、ニーダのシャフトの連結部が、インサート成形によって樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる製パン機は、材料を混捏する際に用いられるニーダと、混捏された生地魂を焼き上げる際に用いられる焼き用ポットと、を有する製パン機であって、ニーダは、本発明にかかるニーダであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、混捏子をシャフトに挿入後、混捏子のみを手動で、所定方向に回転させることにより、シャフトに対する装着状態をロックすることができるので、材料を捏ねている途中で、浮力によって混捏子が浮いてしまったり、ひいてはシャフトから抜けてしまうことがなく、また、混捏子をシャフトから取り外す際には、混捏子のみを上記所定方向とは逆方向に手動で回転することにより簡単にロックを解除でき、同時に取り外しが可能な状態になるので、混捏子のシャフトに対する着脱作業が容易であるというところのニーダを提供することができる。
【0016】
また、本発明によれば、シャフトの、混捏子を抜け止めする面は、混捏子の受け部側方向に凸の略円弧状の傾斜面となっているため、混捏子を抜け止めする面は混捏子の受け部上を摺接し、スムーズに混捏子をシャフトに対して着脱することができると同時に、混捏子の特にシャフト軸方向に関する装着状態を確実にロックするところのニーダを提供することができる。
【0017】
また、本発明によれば、ニーダのシャフトの連結部の後端部には、第1の平面と、第2の平面に及ぶ段部が形成され、段部は、混捏子の係止部となっており、係止部の第2の平面側は、突部の円弧状の傾斜面と同じ角度で傾斜していることによって、混捏子のシャフト軸方向に関する装着状態を更に確実にロックし、同方向のガタを低減させるところのニーダを提供することができる。
【0018】
また、本発明によれば、シャフトの連結部がインサート成形によって樹脂で形成されていることによって、シャフトの連結部の形成をより簡易なものにし、使用時におけるシャフトと混捏子の間で不快な摩擦音を生じさせず、シャフトの製造のコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るニーダの実施例中のシャフトを示す斜視図である。
【図2】上記シャフトを第1の平面側から見た正面図である。
【図3】上記シャフトを第2の平面側から見た側面図である。
【図4】上記シャフトと混捏子の着脱の途中を示す縦断面図である。
【図5】上記シャフトに混捏子が装着された状態を示す縦断面図である。
【図6】上記シャフトと混捏子の着脱時の途中を示す横断面図である。
【図7】上記シャフトに混捏子が装着された状態を示す横断面図である。
【図8】上記シャフトに混捏子が装着された状態を示す側面図である。
【図9】上記混捏子を示す平面図である。
【図10】上記シャフトをより詳細に示す側面図である。
【図11】本発明に適用可能な混捏子の例を示す斜視図である。
【図12】上記混捏子の底面周縁形状を説明するための模式図であり、(a)は第1羽根部の底面周縁形状、(b)は第2羽根部の底面周縁形状、(c)は第1羽根部と第2羽根部を接合した状態の底面周縁形状である。
【図13】上記混捏子の平面図である。
【図14】上記混捏子の底面図である。
【図15】上記混捏子の正面図である。
【図16】上記混捏子の背面図である。
【図17】上記混捏子の右側面図である。
【図18】上記混捏子の左側面図である。
【図19】上記混捏子の断面形状を説明するために切断線を示した平面図である。
【図20】図19に示す(a)A−A線に沿う縦断面図、(b)B−Bに沿う縦断面図、(c)C−C線に沿う縦断面図である。
【図21】本発明に用いる混捏子の別の実施の形態を示す平面図である。
【図22】本発明に用いるニーダの混捏子のさらに別の実施の形態を示す平面図である。
【図23】本発明に用いるニーダの混捏子のさらに別の実施の形態を示す平面図である。
【図24】本発明に係るニーダの実施の形態を示す斜視図である。
【図25】本発明にかかる製パン機の実施の形態を示す部分断面図である。
【図26】上記製パン機の別の部分断面図である。
【図27】上記製パン機に設置される混捏用ポットの構成を説明するための模式図である。
【図28】上記製パン機に設置される焼き用ポットの構成を説明するための模式図である。
【図29】本発明にかかる製パン機の別の形態を示す部分断面図である。
【図30】従来のニーダの混捏子の実施の形態を示す、(a)は平面図、(b)は(a)の平面図中のA−A線断面図である。
【図31】本発明にかかるニーダの混捏子のさらに別の例の底面周縁形状を模式的に示す図である。
【図32】図21に示すニーダの混捏子の平面図である。
【図33】図21に示すニーダの混捏子の正面図である。
【図34】図21に示すニーダの混捏子の背面図である。
【図35】図21に示すニーダの混捏子の右側面図である。
【図36】図21に示すニーダの混捏子の左側面図である。
【図37】本発明にかかるニーダに用いる混捏子のさらに別の例を示す平面図である。
【図38】本発明にかかるニーダに用いる混捏子のさらに別の例を示す平面図である。
【図39】本発明にかかるニーダに用いる混捏子のさらに別の例を示す平面図である。
【図40】本発明にかかるニーダの別の実施の形態を示す斜視図である。
【図41】本発明にかかるシャフトと混捏子の着脱時の途中を別の態様から示す横断面図である。
【図42】上記シャフトに混捏子が装着された状態を別の態様から示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかるニーダに用いられるシャフトと混捏子の例と、ニーダの実施の形態について説明する。なお、図24で示すように、ニーダ10は、材料を混捏する際に用いられる混捏用のポット3と、混捏用のポット3内の底部に配置され、駆動手段によって回転駆動される円柱状の図1乃至図8、及び図41、図42に図示するシャフト1001と、シャフト1001により回転駆動されて混捏用のポット3内の材料を混捏する混捏子2をニーダ本体1に備えている。ニーダ10の詳細については後述する。まず、本発明の特徴部分であるニーダ10のシャフト1001及び混捏子2の軸孔30の実施の形態について説明する。
【0021】
図1乃至図3において、シャフト1001は、図9における混捏子2の軸孔30と連結する円柱状の樹脂からなる連結部1002と、円柱状のステンレスからなる胴部1003から主に構成されている。シャフト1001の連結部1002は、混捏子2が連結されているとき混捏子2を抜け止めする突部1007と、シャフト1001の軸芯方向から見て、互いに適宜の開き角度を持って形成されている第1の平面1005および第2の平面1004とを有している。また、第1の平面1005と、第2の平面1004は、もともと円柱状の連結部1002の周壁の一部を直線で軸芯方向にカットした形に形成されている。シャフト1001の軸芯方向から見た第2の平面1004から第1の平面1005に渡る開き角度は、略90度に形成されている。
【0022】
図1に示すように、シャフト1001の連結部1002は、先端面から基端近くまで第2の平面1004が形成されているのに対して、第1の平面1005の先端部にはこの第1の平面1005の先端部を覆うようにして庇状の突部1007が形成されている。この突部1007は、第2の平面1004側の側面が第2の平面と同一面に形成されている。したがって、シャフト1001の先端面は、D字状の平面からなる連結部1002の上端面で形成されている。庇状の突部1007の下面は混捏子2がシャフト1001から抜け落ちるのを防止する抜け止め面になっていて、この抜け止め面は、下方に凸の略円弧状の傾斜面1007Bによって上記第2の平面1004側の側面につながっている。図3で示すように、突部1007の傾斜面1007Bは、円滑な円弧状ではなく、第2の平面1004に近い側の傾斜角度の大きい面1007Cと、これよりも傾斜角の小さい第1の平面1005側の面1007Dによって2段階にカットされた形に形成されている。シャフト1001の周方向における突部1007の形成範囲のうち、傾斜面1007Bがほぼ3分の2を占め、他のほぼ3分の1はシャフト1001の中心軸線に対して直交する方向の平坦面1007F(図2参照)となっている。なお、傾斜面1007Bは、上述の形状に限らず、円滑な円あるいは楕円の面、その他適宜の形状を選択して採用することができる。
【0023】
連結部1002の基端部(下端部)には、第1の平面1005と、第2の平面1004に及ぶ段状の係止部1006が形成されている。係止部1006は、第1の平面1005と第2の平面1004の端部と、連結部1002の周面によって区画されていて、シャフト1001と混捏子2の連結時において、混捏子2をその下側から支持するようになっている。係止部1006の第2の平面1004側は、突部1007の円弧状の傾斜面1007Bの角度1007Aに見合う角度1006Aでシャフト1001の先端側に向かい立ち上がる傾斜面1006Cとなっている。係止部1006の第1の平面1005側は、この第1の平面1005の全域にわたり、シャフト1001の中心軸線に対して直交する方向の平坦面1006Bとなっている。
【0024】
図9において、混捏子2の軸孔30は、混捏子2を上下方向に貫いて形成されるとともに、シャフトの第1の平面1005との係合平面30Aが軸孔30の軸線方向のほぼ全域にわたり形成され、使用態様における水平方向の横断面形状がD字状になっている。係合平面30Aの上端縁部を軸孔30の上端縁部の若干手前に形成することで、軸孔30の上端縁部領域は段状に形成され、この段状の部分が図1乃至図3に示すシャフト1の連結部2の突部1007と係合する受け部30Bとなっている。なお、係合平面30Aは、軸孔30の上端縁部まで形成されていてもよく、即ち、軸孔30の上端縁部自体を突部1007が係合する受け部としてもよい。混捏子2の軸孔30以外の形状は任意で、混捏子2の詳細な構成については、後述する。
【0025】
次に、ここまで説明してきたシャフト1001と混捏子2との着脱について説明する。まず、シャフト1001に混捏子2を連結させるには、図4乃至図8に示すように、シャフト1001に混捏子2の軸孔30を挿入する。その際、図4、図6に示すように、シャフト1001側の第2の平面1004と混捏子2の軸孔30の係合平面30Aの位置を合わせる。図6で示すように、シャフト1001の先端面1008は、第2の平面1004が形成されていることによってD字状になっており、一方、混捏子2の軸孔30は、その係合平面30Aを有することによってD字状に形成されている。ここで、混捏子軸孔30のD字状横断面の大きさはシャフト先端面1008のそれよりも若干大きめに設計されていることから、シャフト1001に混捏子2を容易に挿入することができる。
【0026】
シャフト1001に混捏子2を挿入した段階では、混捏子2の係合平面30Aの下端縁部が、シャフト1001の連結部1002に段状に形成されている傾斜面1006Cの上端に当たり、混捏子2の挿入が制限される。次に、シャフト1001に対して混捏子2を図6において時計方向に相対回転させると、混捏子2の軸孔30の上端縁部が突部1007の下部にスムーズに入り込めるように傾斜面1007Bの傾斜面が形成されているため、混捏子2の軸孔30の上端縁部にシャフト1001側の突部1007が覆いかぶさるとともに、突部1007の傾斜面1007Bに軸孔30の上端縁部がガイドされることにより、混捏子2はシャフト1001の軸方向下方に力を受ける。この時、同時に、混捏子2の軸孔30の下端縁部が傾斜面1006Cにガイドされるため、結局、混捏子2はシャフト1001に沿って下降する。尚、シャフト1001に対して混捏子2を相対回転するとき、所定の抵抗感を持たせるように傾斜面1007B等各部の寸法が設定されている。
【0027】
さらに、シャフト1001に対して混捏子2を相対回転させると、混捏子2の係合平面30Aに対向する面は、シャフト1001における第2の平面1004から円筒面1007E、さらに第1の平面1005へと切り替わる(図7)。この間の混捏子2の相対回転角度は、第1の平面1005と第2の平面1004の開き角度とほぼ同じ約90度である。ここで、一旦、混捏子2の係合平面30Aに対向する面が第1の平面1005に切り替わると、円筒面1007Eの存在により、所定以上の回転力を与えない限り、第2の平面1004に戻ることは無い。従って、混捏子2のシャフト1001に対する装着状態が、回転方向に関してロックされる。同時に、混捏子2の係合平面30Aの上下の端面は、シャフト1001側の突部1007の平坦面1007Fと係止部1006の平坦面1006Bとの間に導かれる。このように、平坦面1007Fと平坦面1006Bとの間に混捏子2の係合平面30Aの上下の端面が挟み込まれた状態は、混捏子2の、シャフト1001の軸方向に対する装着状態をロックすることになる。
【0028】
混捏子2をシャフト1001に装着した状態では、シャフト1001側の第1の平面1005が混捏子2の係合平面30Aと対向し、シャフト1001が駆動手段によって回転駆動されることにより第1の平面1005と係合平面30Aが係合し、シャフト1001とともに混捏子2が回転駆動されるようになっている。当然ながら、シャフト1001の回転の向きは、シャフト1001から混捏子2が脱落しない向きである。すなわち、図6、図7において反時計方向であり、混捏子2をシャフト1001に装着するときの混捏子2の相対回転方向と反対方向である。混捏子2をシャフト1001に装着した状態では、シャフト1001側の突部1007が混捏子2の係合平面30Aの上端縁部に当たり、突部1007は混捏子2のシャフト1001からの抜け止めとなっている。
【0029】
シャフト1001から混捏子2を外す場合には、混捏子2をシャフト1001に対して装着時とは反対向きに略90度回転させればよい。突部1007と、係止部1006の上述の形状により、この回転の途中で抵抗感があり、抵抗感を感じながらさらに混捏子2を回転させると、急に抵抗感を感じなくなる。このときシャフト1001側の第2の平面1004と混捏子2の軸孔30の係合平面30Aとが対向しているので、混捏子2をシャフト1001から抜き取る。混捏子2の着脱時の回転角度は任意で、適宜の角度に設計することができる。この場合、図6、図7におけるシャフト1001の軸芯から見た第2の平面1004から第1の平面1005に渡る開き角度Aを変更することにより、混捏子2の着脱時の回転角度を変更することが可能である。即ち、図41のように、第2の平面1004から第1の平面1005に渡る開き角度をA´として円筒面1007Eの幅をより長くして略180度にすると、この回転角度を180度とすることができる。また理論的には、図42のように、開き角度をA´´とし、略270度までこの回転角度を設定することが可能である。また、この場合、係止部1006の平坦面1006Bとのシャフト1001の周面方向の長さを、第1の平面1005の周面方向と同じ長さとし、第2の平面1004からの逆端側から傾斜面1006Cを形成する。このようにすることにより、上述の傾斜面1006Cの傾斜の勾配を高くすることができるため、ねじ状の形状からのジャッキアップの効果により、使用時において後述するポットと混捏子2の間にパンなとの材料入り込んだ場合でも、混捏子2を回転させることによって容易に混捏子2を着脱することが可能となる。なお、上述のように突部1007には、平坦面1007Fと傾斜面1007Bを設けさせることができる。
【0030】
図1で示すように、連結部1002に形成されている段状の係止部1006の第2の平面1004側は、突部1007の円弧状の傾斜面1007Bの角度1007Aとほぼ同じ角度1006Aで円弧を描いてシャフト1001の先端側に向かって傾斜しているため、シャフト1001に対し混捏子2をねじ状に回転させて着脱することになる。また、第1の平面1005の軸芯方向の長さと、軸孔30の係合平面30Aの軸芯方向の長さが略同じとなっているため、図5のような混捏子2の装着時には、突部1007の平坦面1007Fと係止部1006の平坦面1006Bとの間に混捏子2があたかもリードねじにガイドされたかのようにして導き入れられ、混捏子2がシャフト1001に安定的に連結される。
【0031】
図10は、シャフト1001をさらに具体的に示している。図10において、円柱状のステンレス鋼からなる胴部1003は、連結部1002の中心軸1002Aから偏心した位置に中心軸1003Eを有する挿入部1003Aと、連結部1002が確実に固着されるように設けられた窪み1003Bとを有している。さらに、胴部1003は、後端部1003Cと、図示しない駆動手段に接続される接続部1003Dとを有している。樹脂部分である連結部1002は、インサート成形によって胴部1003と一体に形成されている。挿入部1003Aは、胴部1003の円周より細い円柱状となっていて、挿入部1003Aの中心軸1003Eは、連結部1002の中心1002Aから、第1の平面1005と第2の平面
1004の接線部と半径方向に逆の方向に偏心した位置に設けられている。このことにより、インサート成形で形成した連結部1002の第1の平面1005及び第2の平面1004の樹脂部分の半径方向の肉厚を厚くすることができ、その強度を上げることができる。また、胴部1003の連結部1002を一体成形すべき表面に適宜の溝を設けることにより、樹脂で成型された連結部1002と、胴部1003の固定を強化することもできる。連結部1002に挿入されている胴部1003の表面に、ローレット加工を施すことで同様の効果を得ることもできる。接続部1003Dは、駆動手段と接続するための適宜の形状をとることができ、例えば接続のためのねじ山を形成することができる。
【0032】
このように、複雑な形状を有しているシャフト1001の連結部1002を樹脂で成形することによって、連結部1002を含むシャフト全体を、金属を加工することによって形成するよりも手間を格段に省くことができ、シャフト1001の製造コストを低減することができる。また、連結部1002の材質に油脂成分を混ぜることによって混捏子2の着脱をスムーズに行うことができる。なお、シャフト1001を構成する素材は、上述のものに限られるものではなく、適宜のものを選択することができる。また、連結部1002に使用する樹脂は、適宜のものを選択できる。シャフト1001と、混捏子2の着脱をスムーズに行うことができるため、本発明にかかるニーダは清掃がしやすくなり、シャフト1001と、混捏子2と後述するポットの間に入った材料の残りかすを容易に取り除くことができ、衛生的である。
【0033】
次に、本発明にかかるニーダに用いる混捏子(以下、単に「混捏子」という。)の、これまで説明してきた軸孔以外の具体的な構成について説明する。
【0034】
なお、以下の説明においては、混捏子の形状の理解を容易にするために、あたかも2つの羽根部を別個に作製して、これらを連結して混捏子が作製されるかのような説明を行っている。しかし、混捏子の実際の作製にあたっては、たとえば、アルミニウムのブロックを切削加工、プレス加工、その他の作製方法により、2つの羽根部を一体的に作製するのがよい。また、最終的に、混捏子の表面をテフロン(登録商標)処理するとよい。また、以下の説明において、「長さ」とは、上述したシャフト1001による回転軸方向と直交方向の距離をいい、「高さ」とは、この回転軸方向の距離をいう。
【0035】
図11は、本発明にかかる混捏子の実施の形態を示す斜視図である。矢印は、混捏子2の回転方向を示す。符号Oは、ここでは図示しないシャフト1001の軸心を示す。図14は、混捏子2の底面図である。混捏子2には、上述した混捏子2を回転駆動させる駆動手段に連結されたシャフト1001(ニーダに設けられている)と連結可能な軸孔30が形成されている。
【0036】
図11に戻る。
混捏子2は、羽根部21と羽根部22とが連結したような形状に形成されている。符号23は、傾斜面26の上縁と立設面28の上縁とに周縁が連接する、混捏子2の頂面を示す。傾斜面26と立設面28については、後述する。頂面23は、略半楕円に形成されている。頂面23の面積は、羽根部22の底面の面積よりも小さい。
【0037】
羽根部21は、略半円錐状に形成されていて、その側面には、傾斜面25が形成されている。傾斜面25は、混捏子2の頂面23側から底面24側にかけて、羽根部21の頂点付近から羽根部21の底面外縁に向かう放射状に形成されている。
【0038】
羽根部22の側面には、傾斜面26が形成されている。傾斜面26は、混捏子2の頂面23側から底面24側にかけて、頂面23の周縁(略半楕円の曲線部)から羽根部22の底面外縁に向かう放射状に形成されている。
【0039】
図16は、混捏子2の背面図であり、図18は混捏子2の左側面図である。図16、18に示すように、羽根部21の回転方向背面には、立設面27が形成されていて、羽根部21の回転方向後端21bと羽根部22の回転方向前端22aとの間に段差が形成されている。
【0040】
図15は、混捏子2の正面図であり、図17は混捏子2の右側面図である。
図15、17に示すように、羽根部22の回転方向背面には、立設面28が形成されていて、羽根部22の回転方向後端22bと混捏子2の底面24との間に段差が形成されている。なお、図11に示すように、傾斜面25の回転方向前端21aは、立設面28と連なり、傾斜面26の回転方向前端22aは、立設面27と連なる。
【0041】
また、図16、17に示すように、羽根部22の底面24と傾斜面26との間には、立設面27の外縁と、傾斜面26の下縁と、羽根部22の底面24と、立設面28の外縁とに連接する立設面29が形成されている。立設面29の高さは、回転方向前方から回転方向後方にかけて漸次高くなっている。
【0042】
なお、立設面27、28、29は、いずれも、混捏子2の底面24と略直交する方向に絶壁状に設けられている。
【0043】
以下、羽根部21と羽根部22の底面形状について説明する。
【0044】
図12(a)は、羽根部21の底面周縁形状を示す図である。図中の矢印は、混捏子2の回転方向を示す。実線で示す羽根部21の底面周縁形状は、底面直線部31と底面曲線部131とで囲まれた略半楕円である。符号31aは、底面曲線部131の回転方向前端(底面直線部31の回転方向前端でもある)を示す。また、符号31bは、底面曲線部131の回転方向後端(底面直線部31の回転方向後端でもある)を示す。
【0045】
点線で示す楕円S1は、羽根部21の底面周縁形状の決定に用いた楕円であり、符号P1は楕円S1の中心点を示し、符号231は楕円S1の短軸を示す。楕円S1のアスペクト比(長軸:短軸)は、11:10である。符号αは、楕円S1の短軸231に対する底面直線部31の傾き(回転面内における)を示す。なお、本実施の形態では、α≒15°である。
【0046】
図12(b)は、羽根部22の底面周縁形状を示す図である。図中の矢印は、混捏子2の回転方向を示す。実線で示す羽根部22の底面周縁形状は、底面直線部32と底面曲線部132とで囲まれた略半楕円である。符号32aは、底面曲線部132の回転方向前端(底面直線部32の回転方向前端でもある)を示す。また、符号32bは、底面曲線部132の回転方向後端(底面直線部32の回転方向後端でもある)を示す。
【0047】
点線で示す楕円S2は、羽根部22の底面周縁形状の決定に用いた楕円であり、符号P2は楕円S2の中心点を示し、符号232は楕円S2の長軸を示す。楕円S2のアスペクト比は、17:14である。符号βは、楕円S2の長軸232に対する底面直線部32の傾き(回転面内における)を示す。なお、本実施の形態では、β≒25°である。
【0048】
楕円S1の長軸の長さは、楕円S2の長軸の長さの1/2としている。また、前述のアスペクト比から明らかなように、楕円S1は、楕円S2に比べて、より円に近い形状としてある。なお、楕円S1と楕円S2のアスペクト比は、適宜変更可能である。また、アスペクト比が1:1の円も楕円の一種として捉えてもよい。
【0049】
図12(c)は、羽根部21と羽根部22とが連結された状態での各羽根部の底面の様子を示す図である。羽根部21の底面直線部31の長さは、羽根部22の底面直線部32の長さよりも短い。また、羽根部21と羽根部22のいずれも、底面直線部(31、32)の回転方向前端(31a、32a)からシャフト1001の軸心Oまでの長さは、底面直線部(31、32)の回転方向後端(31b、32b)からシャフト1001の軸心Oまでの長さよりも短い。さらに、羽根部21の底面直線部31の回転方向後端31bからシャフト1001の軸心Oまでの長さと、羽根部22の底面直線部32の回転方向前端32aからシャフト1001の軸心Oまでの長さとは等しい。
【0050】
羽根部21と羽根部22は、底面直線部31と底面直線部32とが、シャフト1001の軸心O(不図示)と軸心Oを通る直線を挟んで接するように連結している。また、羽根部21と羽根部22は、底面曲線部131の回転方向後端31bと底面曲線部132の回転方向前端32aとが、円弧状に連なるように連結している。
【0051】
図12(a)に示すように、羽根部21の底面曲線部131は、回転方向前方において、楕円S1の内側(中心点P1側)に変位されている。この構成により、図12(c)に示すように、羽根部21の底面曲線部131の回転方向前端31aにおける、底面曲線部131と底面直線部32との角度γを大きくすることができる。この角度γを大きくすることで、混捏子2をポット内で回転させたとき、底面曲線部131と底面直線部32とで囲まれる領域での材料の滞留を防止する効果を高めることができる。なお、図12(c)に示すように、底面曲線部131と底面直線部32とで囲まれる領域に、円弧状の連続部20を設けることで、立設面28の底部と傾斜面25とが円弧状に連なるように連結して、前述の材料の滞留防止効果をさらに高めるようにしてもよい。
【0052】
また、図12(a)に示すように、羽根部21の底面直線部31は、中心点P1から変位されている。この構成により、底面曲線部131の回転方向後端31b(すなわち、底面曲線部132の回転方向前端32(a)において、底面曲線部131と底面曲線部132とが、よりスムーズな円弧状に連なるように混捏子2を形成することができる。
【0053】
さらに、図12(b)に示すように、羽根部22の底面曲線部132は、回転方向後方において、楕円S2の内側(中心点P2側)に変位されている。この構成により、混捏子2と生地魂との間の摩擦を低減することができ、生地魂に対する押圧力を高める効果を期待できる。
【0054】
これまで説明した、楕円S1と楕円S2の大きさやアスペクト比、図示しないシャフト1001の軸心Oの位置などは、軸心Oから混捏子2の底面周縁までの長さが、混捏子2の回転につれて漸次長くなるように設定されている。すなわち、混捏子2の平面図である図13において、軸心Oから羽根部22の回転方向後端の外縁28aまでの長さL1、軸心Oから羽根部22の回転方向前端の外縁(羽根部21の回転方向後端の外縁でもある)27aまでの長さL2、羽根部22の短手方向の長さL3、羽根部21の短手方向の長さL4との間に、「L1>L2」「L3>L4」の関係が成立するように楕円S1の大きさなどが設定されている。なお、ここでは、軸孔30は省略している。
【0055】
長さL1〜L4の間の関係をこのように設定することで、混捏子2とポット内底面間に生地が侵入し付着したとしても、この生地は、徐々に回転幅が増大する混捏子2の回転に連れて、その底面外周によって効率良く掻き出される効果がより高まり、直ちに除去することができる。なお、長さL1は、ポット内底面の半径より若干短めに設定されている。
【0056】
実験をしたところ、長さL1は、長さL2の2.0〜3.5倍が望ましく、ここでは、長さL1は長さL2の約2.5倍に設定されている。また、長さL3は、長さL4の1.0〜2.5倍が望ましく、ここでは、長さL3は長さL4の約2倍に設定されている。さらに、混捏子2の高さは、L1の0.3〜0.7倍が望ましく、傾斜面26の傾斜角度δは、20°〜60°が望ましい。
【0057】
なお、上記の各倍率などは、標準的なものであるが、実際の生地魂の動きなどを観察して、適宜、調整をするとよい。概して、L1が短くなるに従って、これらの倍率などを大きくするとよい。
【0058】
次に、羽根部21と羽根部22の側面の形状について説明する。
【0059】
羽根部21と羽根部22のいずれにおいても、羽根部(21、22)の底面に直交し、かつ、ここでは図示しないシャフト1001を含む平面で断面したとき、羽根部(21、22)の回転方向前方から回転方向後方にかけての一部の領域における傾斜面(25、26)の断面形状は、羽根部(21、22)の底面側に湾曲した曲線である。また、この曲線の曲率は、回転方向前方から回転方向後方にかけて漸次小さくなっている。
【0060】
この傾斜面の形状について、図19、20を参照しながら、傾斜面26を例に説明する。
図19は、混捏子2の平面図であり、図中の矢印は、混捏子2の回転方向を示す。図20は、前述の傾斜面26の断面形状を説明するための図であり、(a)は図20のA−A線、(b)は同図B−B線、(c)は同図C−C線、のそれぞれに沿う縦断面図である。図 に示すように、傾斜面26の断面形状は、概して羽根部22の底面方向に湾曲していて、混捏子2の回転方向前方から回転方向後方にかけて、その曲率は次第に小さくなっている。このように、羽根部22の傾斜面26の断面形状は、回転方向前方では窪んだ湾曲状で、回転方向後方にかけて、この窪みの深さが漸次浅くなっている。
【0061】
なお、羽根部22の回転方向後端における傾斜面26の断面形状は、曲線26Cに示されるように、ほぼ直線としているが、これに代えて、たとえば、羽根部26の底面と反対側(混捏子2の上面側)に湾曲した曲線となるように傾斜面26を形成してもよい。一方、羽根部21の傾斜面25の断面形状も、傾斜面26の断面形状と同様に、羽根部21の底面側に湾曲した曲線となるように形成され、かつ、混捏子2の回転方向前方から回転方向後方にかけて、その曲率は次第に小さくなっている。また、羽根部21の回転方向後端における傾斜面25の断面形状は、本実施の形態においては、若干、羽根部21の底面と反対側に湾曲した曲線になっているが、ほぼ直線となるように形成してもよい。ここでは、軸孔30の記載は省略している。
【0062】
以上説明した傾斜面の断面形状を採用することで、混捏子2の回転に伴って傾斜面に乗り上げた材料や生地魂を、傾斜面に沿って回転方向後方にガイドすることができる。特に、羽根部22の傾斜面26は、前述した、回転方向前方から回転方向後方にかけて高くなっている立設面29との相乗効果で、傾斜面26に沿って回転方向後方にガイドされた生地魂などを、ポット内壁(周面)の上方に向けて勢いよく放り投げることができる。その結果、生地魂に対して、ポット内壁の全領域から直接、大きな押圧力を加えることができる。
【0063】
次に、立設面27の形成位置について説明する。
【0064】
これまで説明した実施の形態では、羽根部21の回転方向背面に設けられた立設面27は、図11などに示すように、混捏子2の回転平面内において、立設面27の外縁27aとここでは図示しないシャフト1001の軸心Oを通る直線と、立設面28の外縁28aと軸心Oを通る直線とが、略平行となるように形成されていた。これに対して、図21には、立設面27の外縁27aが、立設面28に沿って軸心Oを通る直線上より、羽根部22側に位置するように、立設面27が形成されている例を示している。一方、図22には、立設面27の外縁27aが、立設面28に沿って軸心Oを通る直線上より、羽根部21側に位置するように、立設面27が形成されている例を示している。
【0065】
立設面28に対する立設面27の形成位置の違いは、生地魂に対して立設面27による落下効果を、遅い段階で与えるか(図21)、早い段階で与えるか(図22)、の違いである。したがって、立設面28に対する立設面27の形成位置は、材料の料や質などに応じて適宜最適化を図るようにするとよい。なお、立設面27の存在は、この部分への生地材料の付着とクリーニング洗浄を困難にさせる、という問題を生じさせうる。そこで、本発明にかかる混捏子においては、図23に示すように、立設面27を設けないようにしてもよい。この構成によれば、前述の立設面27を有する混捏子に比べて、立設面27における生地魂の落下が無くなる分、混捏効果は減じられるが、生地魂の混捏子上での転動による混捏効果は増大する。なお、図21乃至図23においては、軸孔30の記載は省略している。
【0066】
次に、本発明にかかるニーダの実施の形態について説明する。
【0067】
図24は、本発明にかかるニーダの実施の形態を示す斜視図である。
ニーダ10は、ニーダ本体1と、材料を混捏する際に用いられる混捏用のポット3と、混捏用のポット3内の底部に配置され、駆動手段によって回転駆動されるここでは図示しない円柱状のシャフト1001と、シャフト1001により回転させられて混捏用のポット3内の材料を混捏する混捏子2を有している。シャフト1001と、混捏子2の軸孔30の構成は、上述のものが適用されている。
【0068】
ニーダ本体1は、混捏子2を回転させる駆動手段(不図示)や、利用者が混捏子2の回転開始・中断・再開・終了などを指示するボタンや、混捏子2の回転時間を設定するダイヤルなどを有してなる。混捏子2は、ポット3内の材料を混捏する部材であり、先に説明した本発明にかかる混捏子を用いる。ポット3は、材料が投入される混捏用の容器である。
【0069】
ここで、ニーダ10は、約400〜600gの生地量を想定している。そのため、ポット3の内径は、たとえば23.0cm、高さは15.0cm、混捏子2の長手方向長さは12.5cm、高さは3.1cmとなっている。なお、ニーダ10における生地量やポットの大きさは、上述した値に限定せず、適宜最適化するとよい。また、ポット3は、略円筒形状としてもよく、あるいは、底部領域が上方に行くに従い次第にその径を大きくするような形状としてもよい。
【0070】
混捏子2は、上述のようにポット3中央部に設けられたシャフト1001を受け入れるここでは図示しない軸孔30の構造を有し、この軸孔30に同じくここでは図示しないシャフト1001を差込み、駆動手段により図中の矢印方向に回転駆動される。なお、本実施の形態では、混捏子2を回転駆動することで、ポット3内の材料を混捏するように構成されているが、混捏子2を回転させることなくポット3を回転させる構成でもよいし、あるいは、混捏子2とポット3の両方を回転させる構成でもよい。混捏子2とポット3の両方を回転させる場合には、互いに逆方向へ回転させる、あるいは、同方向に異なる速度で回転させるように構成してもよい。
【0071】
また、混捏子2あるいはポット3の回転速度は、一定でもよいし、あるいは、ガス抜き時や、材料粉と水とが次第に混ざり合っていく状態変化などに応じて間欠制御若しくは変動させるように構成してもよい。さらには、ニーダ10に、生地の混捏状態を監視するセンサを設けた上で、センサで監視した混捏状態に合わせた速度制御を行う手段を備えるようにしてもよい。
【0072】
以下、ポット3内に投入された材料が、混捏子2の回転に伴って混捏される様子について説明する。ポット3内に投入された材料は、混捏子2の回転に伴い、羽根部21の底面外周縁及び傾斜面25によりすくい上げられ、傾斜面25上を移動しながら頂面23方向に上昇し、立設面27にて重力により落下する。第1立設面27より落下した材料は、羽根部22の底面外周縁及び傾斜面26によりすくい上げられ、傾斜面26上を移動しながら頂面23方向に上昇し、立設面28にて重力により落下する。同時に、傾斜面25、26および立設面29により、ポット内周面方向に押圧される。以上の動きが繰り返されることで、ポット3内の材料が混合され、紛体状から次第に団子状にまとまり、さらに混捏される。
【0073】
ここで、生地が混捏子2とポット3内底面間に侵入付着すると、侵入生地は、羽根部21の回転方向前端部21aから羽根部22の回転方向後端部22bに至る底面外周縁により、ポット3の内周面方向に掻き出される。さらに、掻き出されずに残った混捏子2とポット3内底面間の侵入生地は、羽根部22の立設面28において落下してくる「混捏子2の回転につれて次第に形成される生地塊」と接着し、直ちに除去される。
【0074】
混捏子2の回転につれて次第に形成される生地塊は、その下部領域が混捏子2の底面外周縁により楔状に食い込まれることにより、先ずはその下部領域が押圧される。次に、生地塊は、混捏子2の側面(傾斜面25、26)に乗り上げ、回転しながらその側面により押圧される。その後、生地塊は、回転方向後端部の絶壁状の立設面にて落下する。この動きが、羽根部21から羽根部22へ、羽根部22から羽根部21へ、再び、羽根部21から羽根部22へと繰り返される。
【0075】
生地塊は、混捏子2の遠心力、及び、混捏子2の側面からの押圧力により、ポット3内周面方向に押し付けられると同時に、ポット3内周面からも応力としての押圧力を受ける。
【0076】
また、生地塊は、通常、混捏子2を被う程度の大きさとなる。そのため、混捏子2の立設面28とポット3底面との間に形成される空間は減圧状態になり、かつ、生地塊には混捏子2とは逆の回転が与えられる。その結果、この領域の生地塊はこの空間に吸い込まれ、転倒するように折込まれる。このように、生地塊に対して、いわゆる「手捏ね」、すなわち、生地塊を切断することなく、かつ、生地塊表面に対する摩擦の無い「捏ね」が繰り返される。前述のとおり、本発明の混捏子は、極めて優れた混捏効果を有しているので、従来のニーダでは生地魂の作製が困難とされた「そば生地」であっても、良好な生地魂を、短時間に、かつ、容易に作製することができる。
【0077】
なお、生地塊に対する混捏子2からの押圧力を更に高め、また、ポット3内周面からの生地塊に対する押圧力をより高めるためには、立設面29や混捏子2の高さを調節する(より高くする)とよい。また、羽根部22の回転方向後端部22bの側面傾斜角度δ(図15参照)を更に大きくするとよい。さらに、傾斜面26の断面形状を、直線あるいは外側(混捏子2の上面方向)に突出するように湾曲した曲線状にしてもよい。
【0078】
また、近年、「捏ね」から「焼き」までを全自動で行うことができる各種製パン機(ホームベーカリーなど)が普及してきた。これらの製パン機は、手間をかけずにパンを焼くことができて便利である。しかし、従来の製パン機には、適切な羽根(混捏子)が使用されていないために良好なニーディング(捏ね)が行われにくく、充分な弾性と粘着力を有するグルテンが形成されないという欠点もある。適量かつ良好なグルテンができないと、弾力性のあるふっくらとしたパンはできない。また、従来の製パン機は、ポット内に羽根を残したまま生地を焼くので、焼きあがったパンの底部には羽根による大きな穴ができ、見栄えが悪く、食欲を失うことにもなる。そこで、まず、本発明の混捏子で生地魂を作製し、その後、ポットごと、焼き用ポットと入れ替えるとよい。あるいは、単一の製パン機が「本発明の混捏子を備えた混捏用ポット」と「焼き用ポット」の両方を備えるように構成してもよい。
【0079】
以下、本発明にかかる製パン機の実施の形態について説明する。
図25と図26は、本発明にかかる製パン機の実施の形態を示す模式図であり、製パン機の部分的な断面図である。製パン機100の内部には、パン材料を入れるポットが配置される焼成室101が設けられている。ここで、ポットには、パン材料を混捏する際に用いる混捏用ポット210と、混捏されたパン材料を加熱する際に用いる焼き用ポット220の2種類があり、いずれの形状も有底円筒体である。混捏用ポット210と焼き用ポット220のいずれも、焼成室101内に着脱可能に配置される。図25は、混捏用ポット210が配置された状態、図26は、焼き用ポット220が配置された状態を示す。なお、混捏用ポット210が配置された場合には、上述のシャフト1001と、上述した軸孔30の構造を有する混捏子300が使用される。
【0080】
焼成室101は、開閉自在な蓋102で覆われている。蓋102には、蓋102の開閉用の取っ手103と、製パン機100の利用者が焼成室101内の製パン状態を目視するために覗きこむ覗き窓104が設けられている。
【0081】
図25は混捏用ポットの構成を説明するための模式図である。混捏用ポット210の内底面には、パン材料の混捏用の混捏子300が配置される。混捏用ポット210の底面中央部には、上述したシャフト1001が設けられている。シャフト1001は、上述した混捏子2に設けられた軸孔30に差込まれ、シャフト1001の後端側は、混捏用ポット210の外底面に設けられた従動コネクタ212に取付けられている。
【0082】
従動コネクタ212は、凹部を有している。混捏用ポット210を、図示しない手段により焼成室101内に固定したとき、製パン機100内の駆動コネクタ105に取付けられた駆動軸106の一端が従動コネクタ212の凹部に嵌め込まれる。混捏子300は、シャフト1001、従動コネクタ212、駆動コネクタ105、駆動軸106、大プーリ107、ベルト108、小プーリ109、モータ軸110、を介してモータ111により回転駆動される。なお、混捏子300として、前述の本発明にかかる混捏子を用いる。
【0083】
図26は、焼き用ポットの構成を説明するための模式図である。
焼き用ポット220の内面には、混捏用ポット210に設けられているシャフト1001のような突起物は、設けられていない。焼き用ポット220は、図示しない手段により、焼成室101内に固定されると、製パン機100内の加熱手段であるヒータ112により加熱される。
【0084】
なお、図25、図26に示した混捏用ポットと焼き用ポットの形状は、ポットの上方から下方にかけて略同一径の中空円筒状であるが、いずれのポットの形状もこれに限らず、たとえば、ポットの下方領域は底面から上方にいくに従い漸次径が大きくなり、上方領域は同一径の中空円筒状に形成したものでもよい。
【0085】
モータ111とヒータ112は、製パン機100内の制御手段である制御回路113の命令により動作し、パン材料の混捏工程、熟成工程、ガス抜き工程、仕上げ発酵工程、焼き工程などの製パン工程を行う。製パン機100の上面には、製パン機100の利用者が製パン機を動作させる際に使用する各種ボタンやタイマーなどが設けられた制御パネル114が配置されている。制御回路113は、制御パネル114からの信号などに基づいてモータ111やヒータ112を動作させる命令を発行する。
【0086】
以下、製パン機100による製パン工程について説明する。
【0087】
(混捏工程について)
混捏工程では、水和を効率的に行わせるために、材料を2回に分けて混捏するところの、いわゆる中種法が採用される。なお、1回目の混捏と2回目の混捏の間には、所定の休止時間が設けられる。
【0088】
(熟成工程 その1)
次に、混捏用ポット210内を所定の発酵温度に保持しながら、所定時間、混捏物を熟成させる。
【0089】
(ガス抜き工程 その1)
次に、熟成工程(その1)で膨らんだ生地をつぶし、生地中のガスを除去するために、若干の時間、混捏子300を回転させる。
【0090】
(熟成工程 その2)
次に、混捏用ポット210内を所定の発酵温度に保持しながら、所定時間、混捏物を熟成させる。
【0091】
(ガス抜き工程 その2)
次に、熟成工程(その2)で膨らんだ生地をつぶし、生地中のガスを除去するために、若干の時間、混捏子300を回転させる。
【0092】
(生地魂の入れ替え)
次に、ガス抜き工程の終了後、混捏用ポット210を焼成室101から取り出して、焼き用ポット220を焼成室101に設置して、ポットを入れ替える。また、混捏用ポット210内の生地魂を焼き用ポット220に入れ替える。生地魂の入れ替えは、人手で行う。ポットの入れ替えと生地魂の入れ替えの順序は、いずれを先にしてもよい。なお、ガス抜き工程の終了を製パン機100の利用者に報知する報知手段を製パン機100に設けてもよい。
【0093】
(仕上げ発酵工程)
次に、少しだけ温めた焼き用ポット220内に生地魂を所定時間放置して、仕上げの発酵をさせる。
【0094】
(焼き工程)
次に、焼き用ポット220内を所定の第1温度に設定して、所定時間、生地を焼く。その後、焼き用ポット220内の温度を第1温度より高い第2温度に上げて、さらに所定時間、生地を焼く。
【0095】
以上説明した工程を経ることで、製パン機100は、パンの材料の混捏からパンの焼き上げまで行うことができる。ここで、製パン機100がパンの材料を混捏する際に用いる混捏子300は、本発明にかかる混捏子であるため、前述のとおり、生地の良好な混捏が可能であり、充分な弾性と粘着力を有するグルテンが形成され、ふっくらとしたパンを作製することができる。また、焼き用ポット220の内面には突起物が存在せず、また、ポット内に混捏子を取付けることもないため、前述の従来の製パン機のように、焼き上がったパンの底部に大きな穴が形成されることもない。
【0096】
なお、以上説明した製パン機は、混捏用ポットと焼き用ポットとが入れ替え可能に構成されたものであったが、本発明にかかる製パン機はこれに限らず、たとえば、図29に示すように、混捏用ポットと焼き用ポットとが併設可能に構成されたものであってもよい。
【0097】
製パン機100bは、混捏用ポット210が設置される混捏・熟成室101aと、焼き用ポット220が設置される焼成室101bとを有してなる。空間101aは、開閉自在な蓋102aで覆われている。焼成室101bは、開閉自在な蓋102bで覆われている。
混捏子20は、図25に示した実施の形態と同様、ここでは図示しないシャフト1001、従動コネクタ212a、駆動コネクタ105a、駆動軸106a、大プーリ107a、ベルト108a、小プーリ109a、モータ軸110aを介してモータ111aにより回転駆動される。一方、焼き用ポット220は、ヒータ112bにより加熱される。なお、モータ111aとヒータ112a,112bは、制御回路113cが発行する命令に応じて動作する。なお、制御回路113cは、製パン機100bの制御パネル(図示省略)からの信号などに基づいて命令を発行する。
【0098】
この両ポット併設型の製パン機100bの製パン工程は、前述の製パン工程とほぼ同様である。ただし、生地魂の入れ替え工程でのポットの交換は不要である。
【0099】
次に、本発明にかかるニーダの混捏子とニーダ並びに製パン機のさらに別の実施の形態について、これまで説明した実施の形態と異なる部分を中心に説明する。本実施の形態におけるニーダの混捏子は、底面周縁形状が略半楕円の1つの羽根部を有してなる点において、底面周縁形状が略半楕円の2つの羽根部を連結したような形状に形成されたこれまで説明した実施の形態とは異なる。なお、混捏子2’も、図示しないが同様に上述した混捏子2の軸孔30の構造を有し、使用態様では、シャフト1001と連結されている。
【0100】
図32は、混捏子の実施の形態を示す平面図である。図中の矢印は、混捏子2’の回転方向を示している。また、符号O1は、ここでは図示しないシャフト1001の軸心を示している。混捏子2’は、底面周縁形状が略半楕円の羽根部22’を有してなる。羽根部22’の側面には、傾斜面26’が形成されている。傾斜面26’は、混捏子2’の頂面23’側から底面24’側にかけて、頂面23’の周縁から羽根部22’の底面外縁に向かう放射状に形成されている。
【0101】
なお、混捏子2’は、傾斜面26’の回転方向前端部22a’と回転方向後端部22b’とが略直線上に位置するように形成されている。ここで、傾斜面の回転方向の前端部と後端部との位置関係は、図37に示すように、回転方向前端部22a1’が回転方向後端部22b1’と比べて回転方向後方に位置するように構成してもよい。つまり、回転方向前端22a1’と回転方向後端22b1’とは、略直線上に位置するように形成されていない。
【0102】
また、図38に示すように、回転方向前端部22a2’
と回転方向後端部22b2 ’とを、略直線上に位置するように形成しつつ、軸心O3を、これら回転方向前端部と回転方向後端部とを結ぶ直線上に設けて、混捏子を形成してもよい。さらに、図39に示すように、傾斜面の回転方向前端部22a2’
’を曲線状に形成、つまり、たとえば、傾斜面の回転方向前端部を、混捏子の底面周縁側が頂面側に比べて回転方向後方に位置するように形成してもよい。ここで、図37〜39は混捏子の平面図であり、図中の矢印は混捏子の回転方向を示す。
【0103】
図33は、混捏子2’の正面図(図32のH方向から見た図)である。符号δ’は、羽根部22’の回転方向後端部22b’の側面傾斜角度である。図35は、混捏子2’の右側面図(図32のG方向から見た図)である。図33、35に示すように、羽根部22’の回転方向背面には、立設面28’が形成されている。
【0104】
図34は、混捏子2’の背面図(図32のJ方向から見た図)である。また、図36は、混捏子2’の左側面図(図32のI方向から見た図)である。図34、35、36に示すように、羽根部22’の底面24’と傾斜面26’との間には、立設面29’が設けられていて、立設面29’の高さは、回転方向前方から回転方向後方にかけて漸次高くなっている。
【0105】
次に、羽根部22’の底面形状について説明する。
図31は、羽根部22’の底面周縁形状を示す図である。図中の矢印は、混捏子2’の回転方向を示す。実線で示す羽根部22’の底面周縁形状は、底面直線部32’と底面曲線部132’とで囲まれた略半楕円である。なお、図31に示す底面直線部32’は基本的な形状であって、実際には、混捏する材料の種類などに応じて、例えば、図37から図39に示すように適宜変更すると良い。
【0106】
点線で示す楕円S2’は、羽根部22’の底面周縁形状の決定に用いた楕円である。符号P2’は楕円S2’の中心点を示し、符号232’は楕円S2’の長軸を示す。また、符号β’は、楕円S2’の長軸232’に対する底面直線部32’の傾き(回転面内における)を示す。なお、楕円S2’のアスペクト比は、適宜変更可能である。また、アスペクト比が1:1の円も楕円の一種として捉えてもよい。
【0107】
軸心O1から混捏子2’の底面周縁までの長さは、混捏子2’の回転につれて漸次長くなるように設定されている。すなわち、図32において、軸心O1から羽根部22’の回転方向後端の外縁28a’までの長さ「l1」、軸心O1から羽根部22’の回転方向前端の外縁27a’までの長さ「l2」、羽根部22’の短手方向の長さ「l3」との間には、「l1>l3>l2」の関係が成立するように、楕円S2’の大きさなどが設定されている。長さ「l1」「l2」「l3」の間の大小関係をこのように設定することで、混捏子2’とポット内底面間に生地が侵入し付着したとしても、この生地は、徐々に回転幅が増大する混捏子2’の回転につれて、その底面外周によって効率よく掻き出される効果がより高まり、直ちに除去することができる。なお、長さl1は、ポット内底面の半径より若干短めに設定されている。
【0108】
次に、羽根部22’の側面26’の形状について説明する。「羽根部の底面に対して直交し」かつ「シャフト1001を含む」平面で断面したとき、羽根部22’の回転方向前方から回転方向後方にかけての一部の領域における羽根部22’の傾斜面26’の断面形状は、羽根部22’の底面24側に湾曲した曲線である。また、この曲線の曲率は、回転方向前方から回転方向後方にかけて漸次小さくなっている。このように、羽根部22’の傾斜面26’の断面形状は、回転方向前方では窪んだ湾曲状で、回転方向後方にかけて、この窪みの深さが漸次浅くなっている。
【0109】
なお、羽根部の回転方向後端における傾斜面の断面形状は、図33では略直線としているが、これに代えて、たとえば、羽根部の底面と反対側(混捏子の上面側)に湾曲した曲線となるように形成してもよい。
【0110】
以上説明した傾斜面の断面形状を採用することで、混捏子2’の回転に伴って、傾斜面26’の回転方向前端部22a’から傾斜面26’に乗り上げた材料や生地魂を、傾斜面26’に沿って回転方向後方にガイドすることができる。特に、回転方向前方から回転方向後方にかけて高くなっている立設面29’との相乗効果で、傾斜面26’に沿って回転方向後方にガイドされた生地魂などを、ポット内壁(周面)の上方に向けて勢いよく放り投げることができる。その結果、生地魂に対して、ポット内壁の全領域から直接、大きな押圧力を加えることができる。
【0111】
したがって、図34に示したニーダ10の混捏子2に代えて、以上説明した混捏子2’をポット3内の底部に配置して完成する図40に示すニーダ10’は、ニーダ10と同様の効果、つまり、生地魂を切断することなく、かつ、生地魂表面に対する摩擦の無い「捏ね」を実現することができる。
【0112】
また、図35、39に示した製パン機100,100bの混捏子300に代えて、以上説明した混捏子2’を用いることで、製パン機100や100bと同様の効果、つまり、充分な弾性と粘着力を有するグルテンが形成され、ふっくらとしたパンを作製することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 ニーダ本体
2 混捏子
3 ポット
10 ニーダ
20 連続部
21 第1羽根部
22 第2羽根部
23 頂面
24 底面
25 第1傾斜面
26 第2傾斜面
27 第1立設面
28 第2立設面
29 第3立設面
30 軸孔
100 製パン機
210 混捏用ポット
220 焼き用ポット
1001 シャフト
1002 連結部
1003 胴部
1004 第2の平面
1005 第1の平面
1006 係止部
1007 突部
1008 先端面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
混捏用ポットと、
上記混捏用ポット内の底部に配置され、駆動手段によって回転駆動される円柱状のシャフトと、
上記シャフトにより回転させられて上記混捏用ポット内の材料を混捏する混捏子を有するニーダ、であって、
上記シャフトは、上記混捏子の軸孔と連結する連結部を有し、
上記連結部は、上記混捏子を抜け止めする面を有する突部と、上記シャフトの軸芯方向に伸びるとともに周方向に所定の開き角度を持って形成されている第1の平面および第2の平面と、を有し、
上記突部は、上記第1の平面の先端部に庇状に形成され、
上記第2の平面は、上記連結部の先端まで形成され、
上記混捏子の軸孔は、軸芯方向に上記シャフトの第1の平面との係合平面を有することで横断面形状がD字状に形成され、
上記軸孔の上記係合平面の端部は、上記連結部の上記突部と係合する受け部となっていることを特徴とするニーダ。
【請求項2】
上記突部の上記第2の平面側の側面は、上記第2の平面と同一面に形成され、
上記抜け止めする面は、上記混捏子の受け部側方向に凸の略円弧状の傾斜面によって上記第2の平面側の側面につながっている請求項1記載のニーダ。
【請求項3】
上記連結部の後端部には、上記第1の平面と上記第2の平面に及ぶ段部が形成され、上記段部は、上記混捏子の軸孔の上記受け部とは反対側端部の係止部となっており、上記係止部の上記第2の平面側は、上記突部の略円弧状の傾斜面と同じ角度で傾斜している請求項2記載のニーダ。
【請求項4】
上記連結部は、インサート成形によって樹脂で形成されている請求項1乃至3のいずれかに記載のニーダ。
【請求項5】
材料を混捏するニーダと、混捏された生地魂を焼き上げる際に用いられる焼き用ポットと、を有する製パン機であって、
上記ニーダは、請求項1乃至4のいずれかに記載のニーダであることを特徴とする製パン機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate


【公開番号】特開2012−55198(P2012−55198A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199403(P2010−199403)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(502354524)アシストV株式会社 (7)
【Fターム(参考)】