説明

ネガ型感光性ペースト、パターンの形成方法および平面ディスプレイパネル用部材の製造方法。

【課題】高精細かつ高アスペクト比のパターンを形成するために、露光量マージンが大きく、かつ感度の高いネガ型感光性ペーストを提供する。
【解決手段】低軟化点ガラス粉末を含む無機成分ならびに感光性有機成分およびチタノセン誘導体を含む有機成分からなり、塗布、乾燥して膜厚150μmの塗布膜を形成した時の波長405nmにおける全光線透過率をT(%)、436nmにおける全光線透過率をT(%)としたとき、T>Tであることを特徴とするネガ型感光性ペーストとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションディスプレイ、および蛍光表示管等などの平面ディスプレイに用いる絶縁性パターンの形成に好適なネガ型感光性ペースト、それを用いたパターンの形成方法、および平面ディスプレイパネル用部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションディスプレイ、蛍光表示管、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、発光ダイオードなどの平面ディスプレイの開発が急速に進められている。このうち、プラズマディスプレイは、前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に備えられた放電空間内で対向するアノード電極とカソード電極間にプラズマ放電を生じさせ、上記放電空間内に封入されているガスから発生した紫外線を、放電空間内に設けた蛍光体に照射することにより表示を行うものである。プラズマディスプレイや蛍光表示管などのガス放電タイプのディスプレイは、放電空間を仕切るための絶縁性の隔壁を必要とする。また、フィールドエミッションディスプレイなどの電界放射型ディスプレイは、ゲート電極とカソードを隔絶するための絶縁性隔壁を必要とする。これらプラズマディスプレイパネルやフィールドエミッションディスプレイなどの絶縁性隔壁の形成においては、ガラス粉末などの無機材料を高精度でパターン加工ができる材料や加工方法が必要である。
【0003】
特にプラズマディスプレイに関して、より微細な隔壁を形成してより広い放電空間を確保することは、プラズマディスプレイを高精細化、高輝度化するための必須の技術である。従来、無機材料の微細パターン加工を行う方法として、感光性ペースト法によりパターンを形成する方法が提案されている(例えば特許文献1〜3)。プラズマディスプレイ用隔壁の断面形状は、より広い放電空間を確保し、隣接セルへの電荷漏れを抑制するために、底部線幅、頂部線幅が共に細いことが望まれるが、無機微粒子とバインダー樹脂を主成分とする感光性ペースト塗布膜においては、露光光の散乱は避け難いため、それに起因するパターン形状の線幅太りやパターン間の残膜形成などが起こりやすくなるという問題があった。そのため、特に高精細かつ高アスペクト比の隔壁パターンを形成する際に、パターン形状の線幅太りやパターン間の残膜形成の問題が起こらず、パターン加工性に優れた感光性ペーストを得ることが課題であった。また、プラズマディスプレイ用部材に用いる基板は対角800mm以上のものが一般的であり、露光工程においてはある程度露光量の面内ばらつきが避けられないため、面内における隔壁底部幅のばらつきも大きくなりやすく、パネル点灯時にちらつきや輝度斑が発生することがあった。このようなパターンの底部幅のばらつきを解消するために、目標とする形状のパターンを得ることができる露光量許容幅(露光量マージン)の拡大が図られてきた。例えば、有機成分に関しては紫外線領域に光吸収のある紫外線吸収剤を感光性ペーストに添加し、散乱光を吸収させることによって露光量マージンを拡大することが提案されている(特許文献4)。しかし、紫外線吸収剤を添加してもなお露光量マージンが不十分であったり、露光量マージンがある程度は拡大するものの、露光光も吸収されるため感光性ペーストの感度が低下してしまうという問題があった。
【特許文献1】特許第3249576号公報(請求項1)
【特許文献2】特許第3239759号公報(請求項1)
【特許文献3】特許第3402070号公報(請求項1)
【特許文献4】特開平11−249293号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題点に着目し、高精細かつ高アスペクト比のパターンを形成する場合であっても、線幅太りや残膜の欠点がなく、露光量マージンが大きく、かつ感度の高いネガ型感光性ペーストを提供することを目的とする。また、高精細かつ高アスペクト比の隔壁を形成したプラズマディスプレイパネル用部材を安定に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち本発明は、低軟化点ガラス粉末を含む無機成分ならびに感光性有機成分およびチタノセン誘導体を含む有機成分からなり、塗布、乾燥して膜厚150μmの塗布膜を形成した時の波長405nmにおける全光線透過率をT(%)、436nmの光に対する全光線透過率をT(%)としたとき、T>Tであることを特徴とするネガ型感光性ペーストによって達成される。また、前記ネガ型感光性ペーストを乾燥後の膜厚みが150μm以上となるよう塗布した後、少なくとも露光、現像、焼成してなることを特徴とするパターンの形成方法により達成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、パターン形状の線幅太りやパターン間の残膜などの欠点がなく、露光量マージンが大きく、かつ感度の高いネガ型感光性ペーストを提供できる。また、高精細かつ高アスペクト比の隔壁を形成したプラズマディスプレイパネル用部材を安定に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明でいうネガ型感光性ペーストとは、塗布、乾燥を行った後の塗膜に対し活性光線を照射することにより照射部分が現像液に不溶となり、しかる後現像液によって非照射部分のみを除去することによってパターン形成を行うことが可能なペーストをいう。ここで言う活性光線とは250〜1100nmの波長領域の光線を指し、具体的には超高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外光線、ハロゲンランプなどの可視光線、ヘリウム−カドミウムレーザー、ヘリウム−ネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、半導体レーザー、YAGレーザー、炭酸ガスレーザーなどの特定波長のレーザー光線などが挙げられる。
【0008】
発明者らは、高精細かつ高アスペクト比のパターンの形成について鋭意検討を行った結果、低軟化点ガラス粉末を含む無機成分ならびに感光性有機成分およびチタノセン誘導体を含む有機成分からなり、塗布、乾燥して膜厚150μmの塗布膜を形成した時の波長405nmにおける全光線透過率をT(%)、436nmの光に対する全光線透過率をT(%)としたとき、T>Tであることが必要であることを明らかにした。
【0009】
本発明のネガ型感光性ペーストは、無機成分として低軟化点ガラス粉末を必須成分とする。低軟化点ガラス粉末を含有することにより、低軟化点ガラス粉末の軟化温度以上の温度で焼成し、後述の感光性有機成分等の有機成分を除去し、無機成分からなるパターンを得ることができる。本発明において低軟化点ガラス粉末とは、荷重軟化温度が400〜600℃の範囲であるガラス粉末を指す。荷重軟化温度がこの範囲にあることで焼結時にパターンの変形がなく、溶融性も適切となるためである。より好ましい荷重軟化温度の範囲は450〜550℃である。荷重軟化温度は、径50mm、高さ50mmの円柱状の試験片をもって、JIS−R2209(2007)の方法によって求めることができる。また、低軟化点ガラス粉末の無機成分に占める割合は60体積%〜85体積%が好ましい。含有割合が60体積%より小さくなると、焼成時の焼結が困難になり、焼成後のパターンの空隙率が大きくなるため好ましくない。85体積%より大きくなると、焼成時の無機成分全体の流動性が大きくなってしまうため焼成後のパターン形状の制御が困難になる、焼成後のパターンの機械的強度が小さく衝撃によってパターンが欠ける、などの問題が発生する場合があるため好ましくない。
【0010】
低軟化点ガラス粉末の屈折率は1.50〜1.65であることが好ましい。このような低軟化点ガラス粉末を用いることによって無機成分と有機成分の屈折率を整合させ、光散乱を抑制することにより高精度のパターン加工が容易になる。また、低軟化点ガラス粉末の粒子径は、作製しようとするパターンの形状を考慮して選ばれるが、重量分布曲線における50%粒子径(平均粒子径)が0.1〜3.0μm、最大粒子経(トップサイズ)が10μm以下であることが好ましい。好ましく使用できる低軟化点ガラス粉末は例えば酸化リチウム7質量%、酸化ケイ素22質量%、酸化ホウ素33質量%、酸化亜鉛3質量%、酸化アルミニウム19質量%、酸化マグネシウム6質量%、酸化バリウム5質量%、酸化カルシウム5質量%の組成を有するものであるが、これに限定されない。
【0011】
本発明における無機成分としては、上記の低軟化点ガラス粉末以外にフィラー成分を含有することが好ましい。本発明におけるフィラー成分とは、パターンの強度や焼成収縮率を改善するために添加されるものであり、焼成温度でも溶融流動しにくい無機微粒子を指す。フィラー成分を添加することで、パターンの焼成による収縮を抑制したり、パターンの強度を向上させることができる。フィラー成分としてはネガ型感光性ペースト中への分散性や充填性、露光時の光散乱の抑制を考慮し、平均粒子径1〜4μm、平均屈折率1.4〜1.7であるものを好ましく使用することができる。本発明では、このようなフィラー成分として、ガラス転移温度が500℃以上である高軟化点ガラス粉末や、コーディエライト、アルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニアなどのセラミックス粉末から選ばれた少なくとも1種を用いることができるが、平均粒子径や平均屈折率の調節のしやすさの点から高軟化点ガラス粉末の使用が好ましい。
【0012】
フィラー成分として高軟化点ガラス粉末を用いる場合は、ガラス転移温度が500〜1200℃を有するものを、全無機微粒子に対して3〜40質量%の組成範囲で添加することが好ましい。3質量%より少ない場合は焼成時にパターンのエッジが崩れやすくなり、良好な形状のパターンが得られない場合がある。また40質量%より多い場合は形成するパターンの緻密性が低下しやすくなるので好ましくない。好ましく使用できる高軟化点ガラス粉末は例えば酸化ナトリウム1質量%、酸化ケイ素40質量%、酸化ホウ素10質量%、酸化アルミニウム33質量%、酸化亜鉛4質量%、酸化カルシウム9質量%、酸化チタン3質量%の組成を有するものであるが、これに限定されない。
【0013】
本発明において、上記無機成分は感光性ペーストの固形分中に40体積%〜65体積%、より好ましくは40体積%〜55体積%の含有率で含まれていることが望ましい。ここで、固形分とはペースト中に含まれる無機成分および溶媒を除く有機成分を意味する。無機成分の含有率が40体積%より小さくなると焼成によるパターンの収縮が大きくなり、形状が不良となりやすいので好ましくない。また、65体積%より大きくなると露光による架橋反応が不十分となり、パターン形成が難しくなるので好ましくない。
【0014】
固形分中の無機成分の含有割合(体積%)は、ペースト調製時に無機成分および有機成分の比重を考慮して、添加量(質量%)で制御できる。また、無機成分の含有割合を分析する方法としては、熱重量測定(TGA)と無機成分の焼成膜の比重測定により求める方法や、感光性ペーストを塗布、乾燥して得られるペースト乾燥膜の透過型電子顕微鏡観察像の画像解析により求める方法が挙げられる。熱重量測定と無機成分の焼成膜の比重測定により求める場合、例えば、感光性ペースト10mg程度をサンプルとして、室温〜600℃の重量変化をTGA(例えば、株式会社島津製作所製「TGA−50」)により評価する。通常、100〜150℃でペースト中の溶媒が蒸発するので、溶媒蒸発後の重量に対する600℃昇温後の重量の割合から、無機成分と有機成分の質量比を求める。一方、焼成膜の膜厚、面積と質量を基に無機成分の比重を評価すれば含有割合を評価できる。また、透過型電子顕微鏡観察により含有割合を求める場合は、ペースト乾燥膜の膜面に垂直な断面を、透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製「JEM−4000EX」)により観察し、像の濃淡により無機成分と有機成分を区別し、画像解析を行えばよい。透過型電子顕微鏡の評価エリアとしては、例えば、20μm×100μm程度の面積を対象とし、1000〜3000倍程度で観察すればよい。
【0015】
本発明のネガ型感光性ペーストは、有機成分としてチタノセン誘導体を含有することを特徴とする。本発明に用いられるチタノセン誘導体は、可視光領域の光によっても励起することが可能な光重合開始剤であり、例えば、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平3−27393号公報に記載のチタノセン誘導体が挙げられる。具体例としては、ジクロロビス(シクロペンタジエニル)チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ジフェニルチタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)チタン、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)チタン、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(2−(1−ピル−1−イル)エチル)フェニル]チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−((1−ピル−1−イル)メチル)フェニル]チタン、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−((1−ピル−1−イル)メチル)フェニル]チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−((2,5−ジメチル−1−ピル−1−イル)メチル)フェニル]チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−((3−トリメチルシリル−2,5−ジメチル−1−ピル−1−イル)メチル)フェニル]チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−((2,5−ビス(モルホリノメチル)−1−ピル−1−イル)メチル)フェニル]チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−4−((2,5−ジメチル−1−ピル−1−イル)メチル)フェニル]チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−メチル−4−(2−(1−ピル−1−イル)エチル)フェニル]チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1−メチル−2−(1−ピル−1−イル)エチル)フェニル]チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(6−(9−カルバゾル−9−イル)ヘキシル)フェニル]チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(3−(4,5,6,7−テトラヒドロ−2−メチル−1−インドル−1−イル)プロピル)フェニル]チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−((アセチルアミノ)メチル)フェニル]チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(2−(プロピオニルアミノ)エチル)フェニル]チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(4−(ビバロイルアミノ)ブチル)フェニル]チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(2−(2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)エチル)フェニル]チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(3−(ベンゾイルアミノ)プロピル)フェニル]チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(2−(N−アリルメチルスルホニルアミノ)エチル)フェニル]チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタンなどが挙げられる。このようなチタノセン誘導体を添加することにより、ペーストの感度が大幅に向上する。
【0016】
チタノセン誘導体の配合量は、ネガ型感光性ペーストに対し0.02〜1質量%の範囲であることが好ましい。0.02質量%以下では、感度向上の効果が不十分であることがあるため好ましくない。また、1質量%以上では、感度が高すぎるため未露光部までもが散乱光により不溶化し、現像後に残膜が発生することがあるため好ましくない。
【0017】
本発明においては、ネガ型感光性ペーストを塗布、乾燥し、膜厚150μmの塗布膜を形成した時の波長405nmの光に対する全光線透過率をT(%)、436nmの光に対する全光線透過率をT(%)としたとき、T>Tであることを特徴とする。本発明のネガ型感光性ペーストは、可視光領域の光によっても励起することができるチタノセン誘導体を含むため、塗膜の深部まで到達する波長436nmの光の透過率を小さくする、具体的にはT>Tとすることにより、隔壁底部が太りにくくなり、露光マージンが大きくなる。全光線透過率は分光光度計(例えば、株式会社日立製作所製「U−3410」)により評価する。
【0018】
本発明のネガ型感光性ペーストに、波長436nm、405nmおよび365nm付近の波長の吸光性が優れる紫外線吸収剤を添加することで、露光光のペースト内部における散乱を抑制でき、パターン形状の太りを小さくできる。本発明においては、全光線透過率が上記T>Tの上記の条件を満たすために、波長436nmにおけるモル吸光係数が405nmに比べて大きい紫外線吸収剤を添加することが好ましい。このような紫外線吸収剤の具体例としては、4−ジメチルアミノ−4’−ニトロアゾベンゼン、4−アミノ−4’−ニトロアゾベンゼン、4−[エチル(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−4’−ニトロアゾベンゼンなどのアゾ化合物や、PLAST ORANGE 8150、PLAST RED 8305、PLAST RED 8315、PLAST RED 8370(以上、有本化学工業社)などの市販の染料が挙げられるが、これらに限定されない。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
【0019】
本発明の有機成分は、上記のチタノセン誘導体および紫外線吸収剤以外に、感光性モノマ、感光性オリゴマ、感光性ポリマのうち少なくとも1種類から選ばれた感光性有機成分を必須成分とし、さらに非感光性ポリマ成分、酸化防止剤、光重合開始剤、可塑剤、増粘剤、分散剤、有機溶媒、沈殿防止剤などの添加剤成分を必要に応じて加えることで構成される。
【0020】
感光性ポリマとしてはアルカリ可溶性のポリマを好ましく用いることができる。ポリマがアルカリ可溶性を有することで現像液として環境に問題のある有機溶媒ではなくアルカリ水溶液を用いることができるためである。アルカリ可溶性のポリマとしては、アクリル系共重合体を好ましく用いることができる。アクリル系共重合体とは、共重合成分に少なくともアクリル系モノマを含む共重合体であり、アクリル系モノマの具体的な例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロへキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレートなどのアクリル系モノマ、及びこれらのアクリレートをメタクリレートに代えたものなどが挙げられる。アクリル系モノマ以外の共重合成分としては、炭素−炭素二重結合を有する化合物が使用可能であるが、好ましくはスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレンなどのスチレン類や、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
アクリル系共重合体にアルカリ可溶性を付与するためには、モノマとして不飽和カルボン酸等の不飽和酸を加えることにより達成される。不飽和酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸ビニル、またはこれらの酸無水物が挙げられる。これらを付加した後のポリマの酸価は50〜150の範囲であることが好ましい。
【0021】
アクリル系共重合体の露光による硬化反応の反応速度を大きくするためには、側鎖または分子末端に炭素−炭素二重結合を有するアクリル系共重合体とすることが好ましい。炭素−炭素二重結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。このような官能基をアクリル系共重合体に付加させるには、アクリル系共重合体中のメルカプト基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基と炭素−炭素二重結合有する化合物や、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させてつくる方法がある。
【0022】
グリシジル基と炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルエチルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、グリシジルクロトネート、グリシジルイソクロトネートなどが挙げられる。イソシアネート基と炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、アクリロイルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アクリロイルエチルイソシアネート、メタクリロイルエチルイソシアネートなどが挙げられる。
さらに、本発明のネガ型感光性ペーストは、有機成分として非感光性のポリマ成分、例えばメチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース化合物、高分子量ポリエーテルなどを含有しても良い。
【0023】
また、感光性モノマは、炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物であり、その具体的な例として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート、また、これらの芳香環の水素原子のうち、1〜5個を塩素または臭素原子に置換したモノマ、もしくは、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、塩素化スチレン、臭素化スチレン、α−メチルスチレン、塩素化α−メチルスチレン、臭素化α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボシキメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、および、上記化合物の分子内のアクリレートを一部もしくはすべてをメタクリレートに置換したもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。また、多官能モノマにおいて、不飽和結合を有する基はアクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基が混在していてもよい。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
【0024】
本発明で用いられるネガ型感光性ペーストは、さらにウレタン化合物を含有することが好ましい。ウレタン化合物を含有することにより、ペースト乾燥膜の柔軟性が向上し、焼成時の応力を小さくでき、亀裂や断線などの欠陥を効果的に抑制できるためである。また、ウレタン化合物を含有することにより、熱分解性が向上し、焼成工程において焼成残渣が発生しにくくなる。本発明で好ましく使用するウレタン化合物として、例えば、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0025】
【化1】

【0026】
ここで、RおよびRはエチレン性不飽和基を含む置換基、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アリル基、アラルキル基およびヒドロキシアラルキル基からなる群から選ばれたものであり、それぞれ同じであっても異なっていても良い。Rはアルキレンオキサイド基またはアルキレンオキサイドオリゴマ、Rはウレタン結合を含む有機基である。nは1〜10の整数である。
このようなウレタン化合物としては、エチレンオキサイド単位を含む化合物が好ましい。より好ましくは、一般式(1)中、Rがエチレンオキサイド単位(以下、EOと示す)とプロピレンオキサイド単位を含むオリゴマであり、かつ、該オリゴマ中のEO含有量が8〜70質量%の範囲内である化合物である。EO含有量が70質量%以下であることにより、柔軟性がさらに向上し、焼成応力を小さくできるため、欠陥を効果的に抑制できる。さらに、熱分解性が向上し、後の焼成工程において、焼成残渣が発生しにくくなる。また、EO含有量が8%以上であることにより、他の有機成分との相溶性が向上する。
【0027】
また、ウレタン化合物が炭素−炭素二重結合を有することも好ましい。ウレタン化合物の炭素−炭素二重結合が他の架橋剤の炭素−炭素二重結合と反応して架橋体の中に含有されることにより、さらに重合収縮を抑制することができる。
【0028】
本発明で好ましく用いられるウレタン化合物の具体例としては、UA−2235PE(分子量18000、EO含有率20%)、UA−3238PE(分子量19000、EO含有率10%)、UA−3348PE(分子量22000,EO含有率15%)、UA−5348PE(分子量39000、EO含有率23%)(以上、新中村化学(株)製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物は混合して用いてもよい。
【0029】
ウレタン化合物の含有量は、溶媒を除く有機成分の0.1〜10質量%であることが好ましい。含有量を0.1質量%以上とすることで、ペースト乾燥膜の柔性を向上することができ、ペースト乾燥膜を焼成する際の焼成収縮応力を緩和することができる。含有量が10質量%を超えると、有機成分と無機成分の分散性が低下し、また相対的にモノマおよび光重合開始剤の濃度が低下するので、欠陥が生じやすくなる。
【0030】
光重合開始剤は活性光源の照射によってラジカルを発生する光ラジカル開始剤を好ましく用いることができ、その具体的な例として、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、1−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホルフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾインおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組合せなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤は、感光性モノマと感光性ポリマの合計量に対し、0.05〜20質量%、より好ましくは、0.1〜15質量%の範囲で添加される。重合開始剤の量が少なすぎると、光感度が不良となるおそれがあり、光重合開始剤の量が多すぎれば、露光部の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
【0031】
本発明では酸化防止剤が好ましく添加される。酸化防止剤とは、ラジカル連鎖禁止作用、三重項の消去作用およびハイドロパーオキサイドの分解作用のうち1つ以上を持つものである。ネガ型感光性ペーストに酸化防止剤を添加すると、酸化防止剤がラジカルを捕獲したり、励起された光重合開始剤のエネルギー状態を基底状態に戻したりすることにより散乱光による余分な光反応が抑制され、酸化防止剤で抑制できなくなる露光量で急激に光反応が起こることにより、現像液への溶解、不溶のコントラストを高くすることができる。具体的にはp−ベンゾキノン、ナフトキノン、p−キシロキノン、p−トルキノン、2,6−ジクロロキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジブチルヒドロキノン、モノ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α−ナフトール、ヒドラジン塩酸塩、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムオキザレート、フェニル−β−ナフチルアミン、パラベンジルアミノフェノール、ジ−β−ナフチルパラフェニレンジアミン、ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、ピクリン酸、キノンジオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピロガロール、タンニン酸、トリエチルアミン塩酸塩、ジメチルアニリン塩酸塩、クペロン、2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)−2−エチルへキシルアミノニッケル−(II)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,2,3−トリヒドロキシベンゼンなどが挙げられるがこれらに限定されない。本発明ではこれらを1種以上使用することができる。酸化防止剤の添加量は、ネガ型感光性ペースト中に好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜20質量%の範囲である。酸化防止剤の添加量をこの範囲内とすることにより、ネガ型感光性ペーストの光感度を維持し、また重合度を保ちパターン形状を維持しつつ、露光部と非露光部のコントラストを大きくとることができる。
【0032】
ネガ型感光性ペーストを基板に塗布する時の粘度を塗布方法に応じて調整するために有機溶媒が使用される。このとき使用される有機溶媒としてはメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸などや、これらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混物が用いられる。
【0033】
本発明のネガ型感光性ペーストは、低軟化点ガラス粉末、チタノセン誘導体、感光性有機成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、分散剤、および溶媒などの各成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラーなどの混練機器を用いて本混練を行って、均質分散し、ネガ型感光性ペーストを作製する。また、本混練を終えたネガ型感光性ペーストを適宜、濾過、脱泡しておくことも好ましい。
【0034】
本発明はかくして得られた本発明のネガ型感光性ペーストを乾燥後の膜厚みが150μm以上となるよう塗布した後、少なくとも露光、現像、焼成してなるパターンの形成方法に関する。本発明のパターン形成方法を用いることによって、高精細かつ高アスペクト比のパターンを精度良く形成することができる。本発明のネガ型感光性ペーストは、上述の通り露光光の散乱が少なく感度が高いため乾燥後の厚みが150μm以上の場合であっても1回の露光でパターン化が可能である。
【0035】
さらに、本発明は上述のパターン形成方法を用いて隔壁パターンを形成する工程を含む平面ディスプレイパネル用部材の製造方法に関する。本発明の平面ディスプレイパネル用部材の製造方法により、高精細、高アスペクト比の隔壁パターンを有する平面ディスプレイパネル用部材を精度良く安定に製造することができる。
以下にプラズマディスプレイパネル用部材の作製手順を述べる。ここでは、プラズマディスプレイとして最も一般的な交流(AC)型プラズマディスプレイを例に取りその基本的構造などについて説明するが、必ずしもこれに限定されない。
【0036】
プラズマディスプレイは、前面板もしくは背面板またはその両方に形成された蛍光体層が内部空間内に面しているように、該前面板と該背面板を封着してなる部材において、前記内部空間内に放電ガスが封入されてなるものである。前面板には、表示面側の基板上に表示用放電のための透明電極(サスティン電極、スキャン電極)が形成されている。放電のため、前記サスティン電極と前記スキャン電極の間隙は比較的狭い方がよい。より低抵抗な電極を形成する目的で透明電極の背面側にバス電極を形成してもよい。但し、バス電極は材質がAg、Cr/Cu/Cr等で構成されていて、不透明であることが多い。従って、前記透明電極とは異なり、セルの表示の邪魔となるので、表示面の外縁部に設けることが好ましい。AC型プラズマディスプレイの場合、電極の上層に透明誘電体層およびその保護膜としてMgO薄膜が形成される場合が多い。背面板には、表示させるセルをアドレス選択するための電極(アドレス電極)が形成されている。セルを仕切るための隔壁や蛍光体層は前面板、背面板のどちらかまたは両方に形成してもよいが、背面板のみに形成される場合が多い。プラズマディスプレイは、前記前面板と前記背面板は封着され、両者の間の内部空間には、Xe−Ne、Xe−Ne−He等の放電ガスが封入されている。
【0037】
プラズマディスプレイ用部材である背面板の作製方法を説明する。ガラス基板は、ソーダガラスやプラズマディスプレイ用の耐熱ガラスである“PP8”(日本電気硝子社製)、“PD200”(旭硝子社製)を用いることができる。ガラス基板のサイズは特に限定はなく、厚みは1〜5mmのものを用いることができる。
【0038】
ガラス基板上に銀やアルミニウム、クロム、ニッケルなどの金属により、アドレス電極用のストライプ状の導電パターンを形成する。形成方法としては、これらの金属の粉末と有機バインダーを主成分とする金属ペーストをスクリーン印刷でパターン印刷する方法や、有機バインダーとして感光性有機成分を用いた感光性金属ペーストを塗布した後に、フォトマスクを用いてパターン露光し、不要な部分を現像工程で溶解除去し、さらに通常350〜600℃に加熱・焼成して電極パターンを形成する感光性ペースト法を用いることができる。また、ガラス基板上にクロムやアルミニウムを蒸着した後に、レジストを塗布し、レジストをパターン露光・現像した後にエッチングにより不要な部分を取り除く、エッチング法を用いることができる。さらに、アドレス電極上に誘電体層を設けることが好ましい。誘電体層を設けることによって、放電の安定性向上や、誘電体層の上層に形成する隔壁の倒れや剥がれを抑止することができる。また、誘電体層を形成する方法としては、ガラス粉末や高軟化点ガラス粉末などの無機成分と有機バインダーを主成分とする誘電体ペーストをスクリーン印刷、スリットダイコーター等で全面印刷または塗布する方法などがある。
【0039】
次に、フォトリソグラフィ法による隔壁の形成方法について説明する。隔壁パターンは特に限定されないが、格子状、ワッフル状などが好ましい。まず、誘電体を形成した基板上に本発明のネガ型感光性ペーストからなる隔壁ペーストを塗布する。塗布方法は、バーコーター、ロールコーター、スリットダイコーター、ブレードコーター、スクリーン印刷等の方法を用いることができる。塗布厚みは、所望の隔壁の高さとペーストの焼成による収縮率を考慮して決めることができる。塗布厚みは、塗布回数、スクリーンのメッシュ、ペーストの粘度等によって調整できる。本発明においては、乾燥後の塗布厚みは150μm以上となるように塗布することが好ましい。150μm以上とすることで、十分な放電空間が得られ、蛍光体の塗布範囲を広げてプラズマディスプレイの輝度を向上することができる。
【0040】
塗布した隔壁ペーストは乾燥後、露光を行う。露光は通常のフォトリソグラフィで行われるように、フォトマスクを介して露光する方法が一般的である。また、フォトマスクを用いずに、レーザー光などで直接描画する方法を用いてもよい。露光装置としては、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機などを用いることができる。この際使用される活性光源は、例えば、近紫外線、紫外線、電子線、X線、レーザー光などが挙げられる。これらの中で紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらのなかでも、超高圧水銀灯が好適である。露光条件は塗布厚みにより異なるが、通常、1〜100mW/cmの出力の超高圧水銀灯を用いて0.01〜30分間露光を行う。
【0041】
露光後、露光部分と非露光部分の現像液に対する溶解度の差を利用して現像を行うが、通常、浸漬法やスプレー法、ブラシ法等で行う。現像液としてはネガ型感光性ペースト中の有機成分が溶解可能である有機溶媒を用いることができるが、ネガ型感光性ペースト中にカルボキシル基などの酸性基を持つ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウムや、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム水溶液等を使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。
【0042】
有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的にはテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。
【0043】
アルカリ水溶液の濃度は通常0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。アルカリ濃度が低すぎれば可溶部が除去されにくく、アルカリ濃度が高すぎればパターンを剥離させたり腐食させるおそれがあり好ましくない。また、現像時の現像温度は20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
【0044】
また、隔壁は2層以上で構成されていても良い。2層以上の構造体とすることで、隔壁形状の構成範囲を3次元的に拡大することができる。例えば、2層構造の場合、1層目を塗布し、ストライプ状に露光した後、2層目を塗布し、1層目とは垂直方向のストライプ状に露光し、現像を行うことで段違い状の井桁構造を有する隔壁の形成が可能である。次に、焼成炉にて520〜620℃の温度で10〜60分間保持して焼成を行い、隔壁を形成する。
【0045】
本発明のネガ型感光性ペーストは上述の隔壁の形成に好適であり、本発明の感光性ガラスペーストは高感度で露光マージンが広いため、高精細な隔壁を精度良く形成することができる。
【0046】
次に、蛍光体ペーストを用いて蛍光体を形成する。感光性蛍光体ペーストを用いたフォトリソグラフィ法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法等によって形成できる。蛍光体の厚みは特に限定されるものではないが、10〜30μm、より好ましくは15〜25μmである。蛍光体粉末は特に限定されないが、発光強度、色度、色バランス、寿命などの観点から、以下の蛍光体が好適である。青色は2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩蛍光体(例えば、BaMgAl1017:Eu)やCaMgSiである。緑色では、パネル輝度の点からZnSiO:Mn、YBO:Tb、BaMgAl1424:Eu,Mn、BaAl1219:Mn、BaMgAl1423:Mnが好適である。さらに好ましくはZnSiO:Mnである。赤色では、同様に(Y、Gd)BO:Eu、Y:Eu、YPVO:Eu、YVO:Euが好ましい。さらに好ましくは(Y、Gd)BO:Euである。焼成する工程を経て蛍光体を形成する場合、上述の誘電体層や隔壁の焼成と同時に行っても良い。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
A.ネガ型感光性ペーストの作製
ネガ型感光性ペーストは以下の要領で作製した。
【0049】
チタノセン誘導体、紫外線吸収剤、感光性モノマ、感光性ポリマ、光重合開始剤、酸化防止剤、溶媒、低軟化点ガラス、高軟化点ガラスを表1記載の量秤量した後、3本ローラー混練機にて混練し、ネガ型感光性ペーストとした。
【0050】
【表1】

【0051】
隔壁用ネガ型感光性ペーストに用いた原料は次の通りである。
チタノセン誘導体:ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタン(チバスペシャリティーケミカルズ社製IC784)
紫外線吸収剤A−1:4−ジメチルアミノ−4’−ニトロアゾベンゼン
紫外線吸収剤A−2:スダンIV(東京応化工業株式会社製)
感光性モノマM−1:トリメチロールプロパントリアクリレート
感光性モノマM−2:テトラプロピレングリコールジメタクリレート
感光性ポリマ:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=40/40/30からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量43000、酸価100)
光重合開始剤:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(チバスペシャリティーケミカルズ社製IC369)
酸化防止剤:1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
溶媒:γ−ブチロラクトン
低軟化点ガラス粉末:酸化リチウム7質量%、酸化ケイ素22質量%、酸化ホウ素33質量%、酸化亜鉛3質量%、酸化アルミニウム19質量%、酸化マグネシウム6質量%、酸化バリウム5質量%、酸化カルシウム5質量%(ガラス転移温度491℃、d50:2μm、dmax:10μm)
高軟化点ガラス粉末:酸化ナトリウム1質量%、酸化ケイ素40質量%、酸化ホウ素10質量%、酸化アルミニウム33質量%、酸化亜鉛4質量%、酸化カルシウム9質量%、酸化チタン3質量%(ガラス転移温度;652℃、d50:2μm、dmax:10μm)
B.ネガ型感光性ペースト塗布膜の全光線透過率(T、T)の測定
ガラス基板上に乾燥後の厚みが150μmになるようにネガ型感光性ペーストを塗布、乾燥し、分光光度計(株式会社日立製作所製「U−3410」)を用いて全光線透過率の測定を行った。途中の乾燥は100℃で90分行った。測定は、塗膜を形成していないガラス基板の全光線透過率を100%として、波長405nm、436nmにおける全光線透過率を読み取り、これらの値をそれぞれTおよびTとした。
【0052】
C.中心露光量Eおよび露光量マージンの評価
評価は次の手順で行った。まず、ガラス基板上にスクリーン印刷法による複数塗布/乾燥によって、乾燥後150μmの厚みになるようにネガ型感光性ペーストを塗布した。途中の乾燥は100℃で10分行った。次に露光マスクを介して露光を行った。露光マスクは、ピッチ300μm、線幅40μm、プラズマディスプレイにおけるストライプ状の隔壁パターン形成が可能になるように設計したクロムマスクである。露光は、50mW/cmの出力の超高圧水銀灯で100mJ/cmから500mJ/cmまで、5mJ/cmおきに紫外線露光を行った。その後、モノエタノールアミンの0.3質量%水溶液をシャワーで150秒間かけることにより現像し、シャワースプレーを用いて水洗浄して光硬化していないスペース部分を除去した。さらに、560℃で30分保持して焼成し、サンプルとした。パネルを5分割して小基板とし、それぞれの小基板においてランダムに一点選出して隔壁の長手方向と垂直な断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製「S−2400」)で観察し、隔壁の底部幅Lを計測し、その平均値を算出した。
55≦L≦70(μm)を満たす最低露光量をE(mJ/cm)、最高露光量をE(mJ/cm)とし、中心露光量Eを(E+E)/2(mJ/cm)とした。この時、露光量マージンを(E−E)/E×100(%)で算出して示した。Eが小さいほど高感度であるといえる。42インチ以上のプラズマディスプレイで、不灯やちらつきの無い、高精細なプラズマディスプレイを作製するためには、Eは350mW/cm以下、かつ露光量マージンは25%以上であることが好ましい。
【0053】
D.ディスプレイ用部材の製造
プラズマディスプレイ背面板は以下の手順にて作製した。旭硝子株式会社製“PD−200”ガラス基板(42インチ)上に、感光性銀ペーストを用いたフォトリソグラフィ法によりアドレス電極パターンを形成した。次いで、アドレス電極が形成されたガラス基板上に誘電体層をスクリーン印刷法により20μmの厚みで形成した。しかる後、ネガ型感光性ペーストをスクリーン印刷法によりアドレス電極パターンおよび誘電体層が形成された背面板ガラス基板上に所望の厚みになるまで均一に塗布した。塗布膜にピンホールなどの発生を回避するために塗布・乾燥を数回以上繰り返し行い、乾燥後の厚みが150μmとなるようにした。途中の乾燥は100℃で10分行った。引き続き、上記のクロムマスクを用いて、上面から50mW/cm出力の超高圧水銀灯で紫外線露光した。露光量は、上記で求めたE(mJ/cm)とした。
【0054】
次に、35℃に保持したものエタノールアミンの0.3質量%水溶液をシャワーで150秒間かけることにより現像し、シャワースプレーを用いて水洗浄して光硬化していないスペース部分を除去した。さらに、560℃で30分保持して焼成することにより隔壁を形成した。次に蛍光体層をディスペンサー法にて厚さ20μmに形成し、焼成して背面板を得た。背面板パターン加工性の評価は、隔壁パターンの現像後に、最低露光量である100mJ/cmにおいても底部幅が70(μm)を超える線幅太りや、未露光部における残膜の発生が無ければ○、あれば×とした。
評価結果 実施例1〜4、および比較例1〜5で得られたネガ型感光性ペースト、隔壁、およびプラズマディスプレイの評価結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
実施例1〜4のネガ型感光性ペーストはいずれも高感度であり、露光量マージンも大きく、かつ背面板のパターン加工性にも優れていた。チタノセン誘導体を含まない比較例1、およびチタノセン誘導体の含有量が少ない比較例2では、実施例に比べEが非常に大きく低感度であった。また、チタノセン誘導体の含有量が多い比較例3では感度が高すぎるため、散乱光によって隔壁パターンの線幅太りや未露光部における残膜が発生し、背面板パターン加工性に問題があった。また、T>Tの条件を満たさない比較例4、5では、露光量マージンが小さかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低軟化点ガラス粉末を含む無機成分ならびに感光性有機成分およびチタノセン誘導体を含む有機成分からなり、塗布、乾燥して膜厚150μmの塗布膜を形成した時の波長405nmにおける全光線透過率をT(%)、436nmの光に対する全光線透過率をT(%)としたとき、T>Tであることを特徴とするネガ型感光性ペースト。

【請求項2】
前記チタノセン誘導体の含有量が0.02〜1重量%である請求項1に記載のネガ型感光性ペースト。
【請求項3】
前記チタノセン誘導体が、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタンである請求項1または2のいずれかに記載のネガ型感光性ペースト。
【請求項4】
前記有機成分としてさらにアゾ化合物を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のネガ型感光性ペースト。
【請求項5】
前記アゾ化合物として4−ジメチルアミノ−4’−ニトロアゾベンゼンを含有する請求項4に記載のネガ型感光性ペースト。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のネガ型感光性ペーストを乾燥後の膜厚みが150μm以上となるよう塗布した後、少なくとも露光、現像、焼成することを特徴とするパターンの形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載のパターンの形成方法を用いて隔壁を形成する工程を含む平面ディスプレイパネル用部材の製造方法。

【公開番号】特開2010−2669(P2010−2669A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161346(P2008−161346)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】