説明

ネマティック液晶性有機半導体材料

【課題】 分子配向による高い移動度と流動性を併せ持つ芳香族低分子ネマティック液晶性を示す新しい有機半導体材料を提供する。
【解決手段】
芳香族低分子ネマティック液晶を精製し、time−of−flight法を用いて精製した試料と溶媒によって希釈した試料の移動度を比較することによって、純度を保証することにより、有機半導体としての特性を実現する。10−4cm/Vs以上の移動度を持ち、希釈した試料の移動度より大きいことを特徴とする芳香族低分子ネマティック液晶物質が有機半導体として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶性を示す有機半導体材料に関し、特に、光学的に均一な大面積の材料の形成が可能で、かつ、分子配向による高い移動度と流動性を併せ持つネマティック液晶性を示す新しい有機半導体材料の実現方法、有機半導体構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、低コスト、軽量、衝撃に対する信頼性などの点から、有機半導体層を電気的な活性層に用いた有機半導体デバイスが注目され、有機トランジスタ、光センサ、有機発光素子、太陽電池などの開発が進められている。これらのデバイスの有機半導体材料には、一般には、非液晶性の有機半導体材料のアモルファス薄膜や多結晶薄膜が用いられている。
【0003】
1990年代になって、コア部に芳香族系部位をもつ、カラム状の分子凝集体を形成するディスコティック液晶や層状の凝集体を形成するスメクティック液晶物質が従来、広く有機半導体として用いられてきたアモルファス有機半導体が示す移動度をはるかに上回る、電子や正孔による高速の伝導を示すことが見出されて以来、これらの液晶物質が高品質な有機半導体となりうることが認識され、有機半導体部材への適用も検討されはじめた。
【特許文献1】特開平11−241069
【0004】
しかしながら、よく知られているように、これらの液晶物質では広い面積にわたって、単一の分子配向をもつドメインからなる液晶相を形成することは困難であるため、ドメインごとに分子配向が異なるポリドメイン構造を用いてデバイスの作製が行なわれている。このため、作製されるデバイスは光学的には不均一で、偏光を取り扱う光学的に活性なデバイスの作製に適用するとは不向きであった。
【0005】
この問題を解決するための手段として、単一な分子配向を実現しやすいネマティック液晶物質、中でも、分子配向が容易な低分子量のネマティックを有機半導体として用いることが有効である。しかし、
【非特許文献1】G.H.Heilmeir and P.M.Heyman:Phys.Rev.Lett.,18.583(1967).
【非特許文献2】G.H.Heimeier,L.A.Zanoni,and L.A.Burton.H.“Dynamic Scattering:Proc.IEEE,56.1162(1968).
【非特許文献3】S.Kusabayashi and M.M.Labes,“Conductivity in Liquid Crystals”,Mol.Cryst.Liq.Cryst.,7.395(1969).
に示されている様に、従来、低分子量のネマティック液晶物質ではイオン伝導のために電子的な伝導を基盤とした電子デバイスには適用することが困難であった。このため、ネマティック液晶物質を有機半導体として用いる際には、イオン伝導を抑制するために、高分子ネマティック液晶やネマティック液晶のガラス相などの固体薄膜を用いることによりこの問題の解決がはかられてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記要請に基づいてなされたもので、従来、有機半導体として用いることができなかった、芳香族低分子ネマティック液晶物質を有機半導体として液晶相において電子デバイスに適用可能にするための方法を提供することにある。また、そうした方法によって形成された有機半導体構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
芳香族π−電子共役系をコア部にもつ低分子ネマティック液晶物質の電気伝導は、古くからイオン伝導によるもの考えられてきた
【非特許文献4】H.Naito,M.Okuda,and A.Sugimura,Phy.Rev.A44,R3434(1991)
また、
【非特許文献5】Masahiro Funahashi and Nobuyuki Tamaoki,Chem.Mat.,19.608、(2007)
によれば、低分子量のネマティック液晶物質では、粘性が小さい、あるいは、電荷の移動に係わるπ−電子共役系のサイズが小さいために、電子伝導よりもイオン伝導が起こり易いとされ、現在でも、その伝導はイオン伝導と考えられている旨が記載されている。実際、この論文では、大きなπ−電子共役系のもつphenylquaterthiopheneをコア部を採用することにより、初めてネマティック相において電子伝導を実現し、このネマティック液晶物質が有機半導体として利用できることを明らかにしている。
【0008】
本発明者らは低分子ネマティック液晶物質の電荷輸送特性の関する詳細な検討から、イオン伝導が液晶物質の本来の性質によるものではなく、合成等の際に外的に混入した電荷のトラップとなるような不純物がイオン化して、粘性の低いネマティック液晶物質中を泳動することによる起こる現象であることが明らかにした。
【0009】
本発明は、上記、発見に基づいて、低分子ネマティック液晶物質に含まれる不純物の低減することにより、本来、ネマティック液晶物質が示す電子伝導特性を実現する方法を明らかにし、必要となる精製の目安を与えることにより、上記課題を解決する。
【0010】
具体的には、カラムクロマトグラフィー、再結晶、蒸留などの通常の有機合成的手段や、昇華などの物理的手段、あるいは、それらを組み合わせて用いることによって精製し、有機半導体としての利用を可能にする純度を測定による評価によって保障するものである。
【0011】
目安となる純度は、液晶セルにつめた低分子ネマティック液晶物質を試料として、Time−of−flight(TOF)法による過渡光電流の測定を行い、電荷の走行時間から、移動度が10−4cm/Vs以上の値を持つことを確認すること、次に、同一の低分子ネマティック液晶物質を蒸留によって精製した低粘度の炭化水素系の溶媒、例えばn−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカンなどを用いて相分離が起きない濃度に希釈したサンプルを液晶セルにつめ、同様に、Time−of−flight(TOF)法による過渡光電流の測定を行うことによって、電荷の走行時間から求めた移動度が減少することを確認することによって、有機半導体としての利用が可能に十分な純度を保証することができる。
【0012】
上記目的を達成するための本発明の第1形態に係る液晶性有機化合物は、下記化学式1のL個の6π電子系芳香環、M個の10π電子系芳香環、N個の14π電子系芳香環(ただし、L、M、Nはそれぞれ0〜4の整数を表わし、L+M+N=1〜4とする。)を含む骨格構造を有し、当該骨格構造の末端に液晶性を発現する末端構造を有する棒状分子の有機半導体材料(Z1)であり、下記化学式1中にZ1として含まれることを特徴とする有機化合物。
【化学式1】

(化学式1において、R1とR2)は、それぞれ独立に炭素数0〜22の直鎮、分岐鎖又は環状構造を有する飽和又は不飽和炭化水素であり、化学式1の骨格構造のいずれかの部位に結合していることを特徴とし、Y1又はY2を介さずにZ1に結合してもよい。Y1とY2は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、−CO−基、−OCO−基、−COO−基、−N=CH−基、−CONH−基、−NH−基、−NHCOO−基及び−CH−基から選ばれる。)
【0013】
この発明の液晶性有機化合物は、スメクティック液晶相(以下、Sm相)を利用していたことに加えて、低分子の液晶物質のネマティック液晶相(以下N相)も液晶相の電子伝導を使用した電荷輸送を実現する液晶性有機化合物を提供することを特徴とすることにより、高い電荷移動度の発現を可能にするN相を利用した液晶性有機化合物、及びその液晶性有機化合物を有する有機半導体構造物及び有機半導体装置、及びネマティック相を有する液晶性有機化合物の純度の評価方法を提供することにある。
【0014】
上記目的を達成するための本発明の第2形態に係る液晶性有機化合物は、下記化学式2のL個の6π電子系芳香環、M個の10π電子系芳香環、N個の14π電子系芳香環(ただし、L、M、Nはそれぞれ0〜4の整数を表わし、L+M+N=1〜4とする。)を含む骨格構造を有し、当該骨格構造の末端に液晶性を発現する末端構造を有する棒状分子の有機半導体材料(Z1)であり、下記化学式2中にZ1、Z2として含まれることを特徴とする有機化合物。
【化学式2】

(化学式2において、R1とR2は、炭素数0〜22の直鎖、分岐鎖又は環状構造を有する飽和又は不飽和炭化水素であり、化学式2の骨格構造のいずれかの部位に結合していることを特徴とし、R1とR2は、Y1又はY2を介さずにZ1、Z2に結合してもよい。Y1とY2は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、−CO−基、−OCO−基、−COO−基、−N=CH−基、−CONH−基、−NH−基、−NHCOO−基及び−CH−基から選ばれる。Xは、炭素数1〜22の直鎖、分岐鎖又は環状構造を有する飽和又は不飽和炭化水素であってもよいし、又は、Xは存在せずに直接Z1とZ2とが結合していてもよい。n=1以上の整数を表す。Z1とZ2は同じL個の6π電子系芳香環、M個の10π電子系芳香環、N個の14π電子系芳香環(ただし、L、M、Nはそれぞれ0〜4の整数を表わし、L+M+N=1〜4とする。)を含む骨格構造または、異なるL個の6π電子系芳香環、M個の10π電子系芳香環、N個の14π電子系芳香環(ただし、L、M、Nはそれぞれ0〜4の整数を表わし、L+M+N=1〜4とする。)を含む骨格構造でも良い。)である。
【0015】
本発明の液晶性有機化合物は、上記第1ないし第2形態に係る本発明のN相を有する液晶性有機化合物において、熱分解温度以下の温度において、少なくとも一種類のネマティック液晶相状態を有することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、熱分解温度以下の温度で少なくとも一種類のN相液晶相状態を有するので、(i)N相以外のSm相とを組み合わせることも可能となり広い面積で均一且つ柔軟な分子配向薄膜を形成することが可能となる。(ii)加えて、本発明においては必ずしもSm相を発現する必要がなく、Sm相以外にN相も利用できるため、合成の幅や材料の骨格も拡張できる。(iii)更に、N相で電子伝導が観測できるということは、純度が高いことを意味しており、N相の発現する有機材料の純度の評価が可能となる。
【0017】
上記目的を達成する本発明の有機半導体構造物は、上記本発明の液晶性有機化合物からなる有機半導体層を有する有機半導体構造物であって、前記液晶性有機化合物が、熱分解温度以下の温度において、少なくとも一種類のネマティック液晶相状態を有し、前記有機半導体層が電子移動度1.0×10−4cm/V・s以上、又は、正孔輸送移動度1.0×10−4cm/V・s以上であることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、有機半導体層を形成するための液晶性有機化合物が熱分解温度以下の温度において、少なくとも一種類のネマティック液晶相状態を有するので、広い面積で均一且つ柔軟な分子配向薄膜を形成することが可能となり、各種光センサ、有機EL素子、太陽電池やフレキシブルディスプレイ装置等に利用可能な薄膜トランジスタ等のデバイスに応用することができる。
【0019】
上記目的を達成する本発明の有機半導体装置は、少なくとも基板、ゲート電極、ゲート絶縁層、有機半導体層、ドレイン電極、及びソース電極を有する有機半導体装置、あるいは、少なくとも、基板、一対の電極、有機半導体層からなるを有する有機半導体装置、であって、前記有機半導体層が、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶性有機化合物で形成されていることを特徴とする。
【0020】
Sm相以外にN相でも高移動度電子伝導発現する液晶性有機化合物を利用することにより、今まで液晶状態の利用範囲がSm相に限定されてたがN相にまで拡張可能であり、より広範囲の液晶化温度範囲で利用可能であること。これにより、従来Sm相に限定されていた液晶状態をN相にまで拡張することにより、液晶状態を最大限に生かすことができる。
【0021】
本発明における有機化合物においては、必ずしもSm相を発現する必要がなく、Sm相以外にN相が利用できるために(N相さえが発現すれば良い)合成のバリエーションや液晶性有機化合物の骨格も拡張できること。これにより、従来は電荷輸送に不利であったN相を発現させにくくするために、Sm相を優先的に発現させるために、液晶材料のコア部(化学式1のZ1、化学式2のZ1、Z2)のアルキル鎖を調節する必要があったが、本発明によりN相を発現させるために側鎖のディスオーダーを大きくさせる要因となる短いアルキル基(化学式1のR1、R2、化学式2のR1、R2)の長さが短くても良く、合成のバリエーションや液晶性有機化合物の骨格も拡張が可能となる。
【0022】
低分子液晶物質のN相での電荷輸送は、本質的にイオン伝導が起こるものと考えられてきたが、そのイオン伝導は、▲1▼液晶物質に含まれる不純物による外因的なイオン伝導であり、▲2▼高純度の物質においては本質的に電子伝導が起こるものと結論される。そのため、N相を有する有機材料の純度の評価が可能となる。
【0023】
一般的に精製が十分でない液晶物質では、電子伝導とイオン伝導の共存が見られる。
【0024】
ここで言うイオン伝導とは、伝導に関わるイオン種は必ずしもイオン性物貢の解離によって生じたイオン種に限られるものではなく、もともと電荷をもたない非イオン性の不純物が正孔や電子を捕獲したり、光イオン化によって生じた不純物イオンもイオンとして同様に伝導に寄与する。すなわち、液晶物質に電子や正孔のトラップとなる不純物が含まれる場合は、イオン化した不純物は前述のイオン伝導チャネルを介して輸送され、イオン伝導を誘起する。
【0025】
イオン伝導は、一般に、粘性の小さな媒質の中で起こりやすいため、液晶相の中でも、粘性の低いN相、SmA相、SmCでは、特に、イオン伝導が起こりやすく、実際にこの場合、TOF法による過渡光電流の測定を利用すると、含まれる不純物濃度が0.1ppm程度の微量であっても、イオン伝導を観測することができる。数十ppm程度を超える不純物が含まれる場合は、電子伝導は完全に消失し、イオン伝導しか観測されなくなる。そのため、従来のN相での電荷輸送はこのイオン伝導であるため、N相で電子伝導が観測できるということは、液晶性有機化合物は純度が高いために、N相の発現する有機材料の純度の評価が可能なことを提供できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明による低分子ネマティック液晶物質の有機半導体としての適用化は、上記、従来のネマティック液晶物質の有機半導体としての利用を可能にする方法と異なり、高分子化やガラス化によりネマティック液晶物質の固体化や、あるいは、π−電子共役系のサイズの拡大などの分子設計に基づいた材料技術によるのではなく、精製とその精製の目安を評価によって保障するもので、芳香族ネマティック液晶物質であれば、どのような液晶物質であっても、有機半導体として用いることを原理的に可能にするもので、材料面から見ると、特定の低分子ネマティック液晶物質に限られるものではなく、極めて広範な液晶物質を有機半導体としての利用を可能にする。
【0027】
本発明の液晶性有機化合物によれば、L個の6π電子系芳香環、M個の10π電子系芳香環、N個の14π電子系芳香環(ただし、L、M、Nはそれぞれ0〜4の整数を表わし、L+M+N=1〜4とする。)を含む骨格構造を有し、当該骨格構造の末端に液晶性を発現する末端構造を有する棒状分子の有機半導体材料(Z1)であり、下記化学式2中にZ1、Z2として含まれることを特徴とする化学構造を持つ。
【0028】
本発明の有機半導体構造物及び有機半導体装置によれば、有機半導体層を本発明に係る液晶性有機化合物で形成するので、広い面積で均一且つ柔軟な有機半導体薄膜を形成することが可能となり、フレキシブルディスプレイ装置等に利用可能な薄膜トランジスタ等のデバイスに応用することができる。
【0029】
本発明の液晶性有機化合物の製造方法によれば、電荷移動度を低下させる原因となる不純物を効果的に除去することができるので、この発明の液晶性有機化合物は、熱分解温度以下の温度で少なくとも一種類のN相液晶相状態を有する高い電荷移動度の発現を可能にする液晶性有機化合物を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の液晶性有機化合物及びその製造方法について詳しく説明する。
【0031】
(液晶性有機化合物)
本発明の有機半導体材料は、棒状の液晶材料であり、その骨格構造(コア構造ともいう。)は、L個の6π電子系芳香環、M個の10π電子系芳香環、N個の14π電子系芳香環(ただし、L、M、Nはそれぞれ0〜4の整数を表わし、L+M+N=1〜4とする。)を含み、その骨格構造の末端に液晶性を発現する末端構造(ターミナルグループともいう。)を有するものである。
【0032】
骨格構造を構成する6π電子系芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ピリジン環ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トロポロン環等を挙げることができ、10π電子系芳香環としては、例えば、ナフタレン環、アズレン環、ベンゾフラン環、インドール環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環等を挙げることができ、14π電子系芳香環としては、例えば、フェナントレン環、アントラセン環等を挙げることができる。こうした骨格構造を有する化合物は、
【特許文献2】特開平10−312711
に挙げられている。
【0033】
この第1形態に係る液晶性有機化合物においては下記化学式1のL個の6π電子系芳香環、M個の10π電子系芳香環、N個の14π電子系芳香環(ただし、L、M、Nはそれぞれ0〜4の整数を表わし、L+M+N=1〜4とする。)を含む骨格構造を有し、当該骨格構造の末端に液晶性を発現する末端構造を有する棒状分子の有機半導体材料(Z1)であり、下記化学式1中にZ1として含まれることを特徴とする有機化合物である。
【0034】
(化学式3において、R1とR2は、それぞれ独立に炭素数0〜22の直鎖、分岐鎖又は環状構造を有する飽和又は不飽和炭化水素であり、化学式1の骨格構造のいずれかの部位に結合していることを特徴とし、Y1又はY2を介さずにZ1に結合してもよい。Y1とY2は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、−CO−基、−OCO−基、−COO−基、−N=CH−基、−CONH−基、−NH−基、−NHCOO−基及び−CH−基から選ばれる。)
【化学式3】

【0035】
また、本発明の第2形態に係る液晶性有機化合物は、下記化学式4のL個の6π電子系芳香環、M個の10π電子系芳香環、N個の14π電子系芳香環(ただし、L、M、Nはそれぞれ0〜4の整数を表わし、L+M+N=1〜4とする。)を含む骨格構造を有し、当該骨格構造の末端に液晶性を発現する末端構造を有する棒状分子の有機半導体材料であり、下記化学式2中にZ1、Z2として含まれることを特徴とする有機化合物である。
【化学式4】

【0036】
(化学式4において、R1とR2は、炭素数0〜22の直鎖、分岐鎖又は環状構造を有する飽和又は不飽和炭化水素であり、化学式2の骨格構造のいずれかの部位に結合していることを特徴とし、R1とR2は、Y1又はY2を介さずにZ1、Z2に結合してもよい。Y1とY2は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、−CO−基、−OCO−基、−COO−基、−N=CH−基、−CONH−基、−NH−基、−NHCOO−基及び−CH−基から選ばれる。Xは、炭素数1〜22の直鎖、分岐鎖又は環状構造を有する飽和又は不飽和炭化水素であってもよいし、又は、Xは存在せずに直接Z1とZ2とが結合していてもよい。n=1以上の整数を表す。Z1とZ2は同じL個の6π電子系芳香環、M個の10π電子系芳香環、N個の14π電子系芳香環(ただし、L、M、Nはそれぞれ0〜4の整数を表わし、L+M+N=1〜4とする。)を含む骨格構造または、異なるL個の6π電子系芳香環、M個の10π電子系芳香環、N個の14π電子系芳香環(ただし、L、M、Nはそれぞれ0〜4の整数を表わし、L+M+N=1〜4とする。)を含む骨格構造でも良い。)である。
【0037】
上述した第1形態及び第2形態に係る液晶性有機化合物において、R1、R2は、炭素数が0〜15の直鎖、分岐鎖又は環状構造を有する飽和又は不飽和炭化水素であることが好ましい。炭素数が0〜15のR1、R2を有する液晶性有機化合物は、液晶相(N相、Sm相)を発現し易く、且つ液晶化温度範囲を広くすることができるという利点がある。炭素数が、15以上であると溶解性が悪くなり精製が困難になり易い、液晶化温度が高くなりすぎ、熱分解の恐れが生じるので好ましくない。
【0038】
炭素数1〜22の直鎖、分岐鎖又は環状構造を有する飽和又は不飽和炭化水素の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、エイコシル、ヘンイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、エテン、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、イコセン、エイコセン、ヘンイコセン、ヘンエイコセン、ドコセン、エチン、プロピン、ブチン、ペンチン、ヘキシン、ヘプチン、オクチン、ノニン、デシン、ウンデシン、ドデシン、トリデシン、テトラデシン、ヘンタデシン、ヘキサデシン、ヘプタデシン、オクタデシン、ノナデシン、イコシン、エイコシン、ヘンイコシン、ヘンエイコシン、ドコシン、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等を挙げることができる。また、好ましく用いられる炭素数8〜15の直鎖、分岐鎖又は環状構造を有する飽和又は不飽和炭化水素の具体例としては、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、プロピン、ブチン、ペンチン、ヘキシン、ヘプチン、オクチン、ノニン、デシン、ウンデシン、ドデシン、トリデシン、テトラデシン、ペンタデシン、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等を挙げることができる。
【0039】
上述した第1形態及び第2形態に係る液晶性有機化合物において、Y1及びY2が、酸素原子、硫黄原子、−CO−基、−OCO−基、−COO−基、−N=CH−基、−CONH−基、−NH−基、−NHCOO−基及び−CH−基から選ばれることが、化学的な安定性の点で好ましく、酸素原子、−CO−基、−OCO−基、−COO−基、−CH−基から選ばれることがより好ましい。
【0040】
本発明の液晶性有機化合物は、熱分解温度以下の温度において、少なくとも一種類のネマティック液晶相状態を有している。ここで、「熱分解温度以下の温度」とは、液晶性有機化合物がそれ自身熱分解されない温度条件の下で、の意味であり、具体的には、本発明の液晶性有機化合物は、200℃以下の温度範囲で液晶相を呈することができる。なお、熱分解温度は本発明の技術的範囲に含まれる個々の液晶性有機化合物によって異なる。また、「少なくとも一種類のネマティック液晶相状態を有している」とは、本発明の液晶性有機化合物の熱分解温度以下の温度条件下(すなわち、ネマティック液晶相と複数の液晶相もしくは最低一種類のネマティック液晶相を持っている、という意味である。例えば、ネマティック(以下、Nともいう)、スメクティック(以下、Smともいう)液晶相としてはSmA相、SmB相、SmC相、…等々の複数種類の液晶状態が知られている。
【0041】
液晶性有機化合物で形成される有機半導体層は、ホッピング伝導に基づいた高い電子と正孔についていずれも高速の電荷輸送能が発現する、という電荷移動特性を有している。この理由は以下のように考えられる。
【0042】
図1は、従来の液晶性有機化合物が自己組織化してなる有機半導体層の一例を示すモデル図である。
【0043】
【化学式5】

【0044】
図1より従来の液晶性有機化合物は、例えば2−(4′−ヘプチルオキシフェニル)−6−ドデシルチオベンゾチアゾール(以下、7O−PBT−S12と略記する)。7O−PBT−S12は、Cryst3(結晶相3)62℃ Cryst2(結晶相2)77℃ Cryst1(結晶相1)87.9℃ SmA(スメクティックA相)99.7℃ Iso(等方相)の相転移温度を示す液晶材料である(降温下5℃/minで測定)。また、本材料はSmAで正孔は1×10−4cm/Vs、エレクトロンで1×10−4cm/Vsの両極性の電子伝導が発現する。更に、Cryst1においては、正孔で8×10−3cm/Vsの電子伝導が発現する材料である。
【0045】
本液晶材料は7O−PBT−S12では両側鎖の炭化水素直鎖、分岐鎖又は環状構造を有する飽和又は不飽和炭化水素であるアルキル鎖の存在(ロ)により自己組織化を起こし、極めて秩序的に配向する。有機半導体層には、そうした液晶性有機化合物により高い自己組織性を有した分子凝集部分である領域(イ)が形成される。その領域(イ)においては、液晶性有機化合物の剛直な骨格部位(上記の化学式1及び2におけるZ1とZ2)が、隣接する液晶性有機化合物と極めて小さな距離で隣接する。その結果、液晶性有機化合物の領域(イ)では、分子間のπ電子軌道の重なりが大きくなることにより、ホッピング伝導に基づいた高速の電子伝導と高速のホール伝導が起こるので、形成された有機半導体層は、高い電荷輸送特性を示すこととなる。なお、この場合における骨格同士の間隔は、0.3〜0.5nm程度である。
【0046】
また、本発明のN相における電荷輸送においても、N相は1軸の分子配向をもつ凝集相であるが、配向秩序は一般に小さいため、平均的な分子間距離は7〜9Å程度となる。この値はSm相における分子間距離3〜6Åに比べるとはるかに大きいものの、隣接する分子への電荷の移動は十分に起こりうる距離である。実際、固体のアモルファス物質中では分子間距離が10Åを超える場合であっても電子伝導が観測される。よって高純度に精製した液晶材料のN相においては、上記のような伝導も十分に考えられる。
【0047】
これまでの例から見ると、液晶相における移動度が10−3〜10−4cm/Vsを超える場合は電子伝導と考えて良いが、一般に、移動度の値やその温度依存性のデータだけでは、観測された伝導がイオン伝導であるか、電子伝導であるかを判断することは難しい。実験的にこれを区別する最も簡便な方法は、炭化水素などの電子伝導に関わらない粘性の小さな液体を用いて液晶物質を希釈し、希釈前後での移動度を比較することである。電子伝導の場合は、希釈によって電荷の移動に関わる分子間距離が増大するため、移動度の減少が見られ、イオン伝導の場合は希釈による粘性の減少のために、移動度は増大することになる。
【0048】
本発明で用いられる液晶性有機化合物は、例えば
【特許文献2】特開平10−312711
に記載されているような液晶材料などでN相が発現するものが挙げられる。
【0049】
本発明の液晶性有機化合物は、最終的に形成される有機半導体層に要求される特性を考慮して選定される。選定基準の特性としては、電子又は正孔の電荷移動度が最低でも1.0×10−4cm/V・s以上である。ここでいう電荷移動度とは、単位電界、1秒あたりの電荷の移動速度のことをいい、Time of flight法(以下、TOF法という)により測定できる。
【0050】
以上、本発明の液晶性有機化合物によれば、
【特許文献2】特開平10−312711
に記載されているような化学構造でN相を持つ。こうした液晶性有機化合物は、Sm相のみならずN相も電荷輸送相として広い温度範囲で液晶相を示すと共に、高い電荷移動度の発現を可能にすることができる。
【0051】
(有機半導体構造物)
本発明の有機半導体構造物は、上記本発明の液晶性有機化合物からなる有機半導体層を有するものであり、その液晶性有機化合物が熱分解温度以下の温度で少なくとも一種類のネマティック液晶相状態を有し、有機半導体層が電子移動度1.0×10−4cm/V・s以上、又は、正孔輸送移動度1.0×10−4cm/V・s以上であることに特徴を有している。
【0052】
有機半導体層は、本発明の液晶性有機化合物を配向させることにより形成される。配向手段としては、液晶性有機化合物を、例えばポリイミド系材料からなる液晶配向層上に積層したり、微少な凹凸を表面に有した硬化性樹脂からなる液晶配向層上に積層したりすることにより行うことができる。
【0053】
上述した液晶性有機化合物は、液晶状態を維持する温度以上において流動性を有するので、その状態で塗布することができる。こうした方法によれば、優れた電荷移動特性を有する大面積の有機半導体層を極めて容易に形成することができる。このときの塗布方法としては、各種の塗布方法および印刷方法を適用できる。
【0054】
本発明の有機半導体構造物は、第一の態様として基板、液晶配向層、有機半導体層を順次積層したものを挙げることができ、第二の態様として、基板、有機半導体層、液晶配向層を順次積層したものを挙げることができ、第三の態様として、基板、液晶配向層、有機半導体層、液晶配向層を順次積層したものを挙げることができる。本発明においては、有機半導体層を、配向処理を施した層と接する形態となるように構成することによって、液晶性有機化合物を構成する液晶相に高い配向性を付与することができる。
【0055】
以上説明したように、本発明の有機半導体構造物は、広い温度範囲で高次の液晶相を示す液晶性有機化合物からなる有機半導体層を含むので、その有機半導体層は、液晶としての柔軟性を保持する均一な分子配向薄膜として使用することができる。また、その有機半導体層は、広い温度範囲において、液晶相を示すので、分子性結晶相に近い形態の密なパッキング構造を実現することができ、望ましくは1.0×10−4cm/V・s以上の高い電荷移動特性を示すことができる。その結果、広い面積で均一且つ柔軟な分子配向薄膜を形成することが可能となり、光センサ、有機EL素子、太陽電池、やフレキシブルディスプレイ装置等に利用可能な薄膜トランジスタ等のデバイスに応用することができる。
【0056】
(有機半導体装置)
図2は、本発明の有機半導体装置のトランジスタの一例を示す断面図である。本発明の有機半導体装置10は、少なくとも基板11、ゲート電極12、ゲート絶縁層13、有機半導体層14、ドレイン電極15及びソース電極16で構成される。この有機半導体装置10は、有機半導体層14が、上述した本発明の有機半導体構造物を構成する液晶性有機化合物で形成されている。
【0057】
本発明の有機半導体装置10の構成の一例としては、基板11上に、ゲート電極12、ゲート絶縁層13、配向した有機半導体層14、ドレイン電極15とソース電極16、保護膜(図示しない。)の順に構成される逆スタガー構造、又は、基板11上に、ゲート電極12、ゲート絶縁層13、ドレイン電極15とソース電極16、有機半導体層14、保護膜(図示しない。)の順に構成されるコプラナー構造、を挙げることができる。こうした構成からなる有機半導体装置10は、ゲート電極12に印加される電圧の極性に応じて、蓄積状態又は空乏状態の何れかで動作する。
【0058】
本発明の有機半導体装置の他の態様として、(i)基板/ゲート電極/ゲート絶縁層(液晶配向層を兼ねる。)/ソース・ドレイン電極/液晶性有機半導体層(/保護層)、(ii)基板/ゲート電極/ゲート絶縁層/ソース・ドレイン電極/液晶配向層/液晶性有機半導体層(/保護層)、(iii)基板/ゲート電極/ゲート絶縁層(液晶配向層を兼ねる)/液晶性有機半導体層/ソース・ドレイン電極/(保護層)、(iv)基板/ゲート電極/ゲート絶縁層(液晶配向層を兼ねる)/液晶性有機半導体層/ソース・ドレイン電極がパターニングされた基板(保護層を兼ねる)、(v)基板/ソース・ドレイン電極/液晶性有機半導体層/ゲート絶縁層(液晶配向層を兼ねる)/ゲート電極/基板(保護層を兼ねる)、(vi)基板(配向層を兼ねる)/ソース・ドレイン電極/液晶性有機半導体層/ゲート絶縁層/ゲート電極/基板(保護層を兼ねる)、又は、(vii)基板/ゲート電極/ゲート絶縁層/ソース・ドレイン電極/液晶性有機半導体層/基板(配向層を兼ねる)、とすることもできる。
【0059】
図3は、本発明の有機半導体装置のもう一つの例を示す断面図である。本発明の有機半導体装置17は、少なくとも基板18、電極19、電極20、スペーサー21、有機半導体層22で構成される。この有機半導体装置17は、有機半導体層22が、上述した本発明の有機半導体構造物を構成する液晶性有機化合物で形成されている。電極19、20は同一材料で構成されてもよく、また、別材料でもよい。
【0060】
本発明の有機半導体装置17によれば、有機半導体層を本発明に係る液晶性有機化合物で形成するので、広い面積で均一且つ柔軟な有機半導体薄膜を形成することが可能となり、各種光センサ、有機EL素子、太陽電池に利用可能である。
【0061】
(液晶物質の精製)
本発明における低分子ネマティック液晶の精製では、蒸留、カラムクロマトグラフィー、再結晶などの有機合成的精製手法や、昇華による物理的精製手法を適用することができる。特に、これらの精製法を、単独、あるいは、組み合わせて、2〜3回行なうことが、少ない労力によって、効率よく精製を行なうことに有効である。
【0062】
(純度の確認方法)
Time−of−flight法による過渡光電流の測定は、材料中の電荷の移動速度を求め、移動度を決定する方法で、移動速度の異なる電荷がある場合は、その速度の違いに応じた信号を基本的に時間分解して測定することができる方法である。この測定法を用いると、イオン伝導の移動度は一般に10−5cm/Vs以下であるので、少なくとも電子伝導で輸送される電荷が10−4cm/Vs以上であれば、十分に信号としてその違いを識別できる。さらに、イオン伝導では移動度は媒質の粘度に逆比例するため、粘度の小さい溶媒、例えば、炭化水素などで希釈すると、媒質の粘度の方が大きい場合には希釈された媒質の粘度は小さくなるため移動度は増加する。媒質と希釈溶媒との粘度の差が小さい場合は希釈しても、希釈の有無により移動度には大きな違いは現れないことになる。これに対し、電荷が電子伝導で輸送されている場合には、同様に希釈すると、希釈の割合に応じて移動度は低下する。したがって、この二つの伝導の機構に違いにより、希釈による移動度の変化の方向が逆であるため、明確に、この二つ伝導機構の違いを区別することができることになる。このことについては、
【非特許文献6】H. Iino,J.Hanna and D.Haarer:Phys.Rev.B72,193203(2005).
に詳しく記載されている。
【0063】
具体的には、精製した低分子ネマティック液晶とそれを蒸留によって精製した純度の高い、ネマティック液晶相の液晶温度領域の温度よりも高い沸点を持つ粘性の低い溶媒、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン等の長鎖炭化水素、アルキルベンゼンなどを1〜20モル%程度加え希釈した試料をITO電極を設置した液晶セルにつめ、その液晶のネマティック相温度領域の温度で、その液晶物質のもつ吸収係数の大きな領域に発振波長をもつパルスレーザー光で励起し、同一条件(温度、電界強度)で過渡光電流の測定を行い、それぞれ液晶セルにおける移動度を求め、その移動度を比較する。この場合、希釈しない試料の移動度の値が10−4cm/Vs以上で、かつ、その移動度が希釈した試料の移動度に比べて大きい場合は精製が十分と評価できる。一方、希釈しない試料の移動度にくらべて、希釈した試料の移動度が大きくなる場合は、精製が不十分と判断できる。希釈しない試料の移動度の値が希釈した試料の移動度に比べて大きい場合であっても、移動度の値が10−4cm/Vsより小さい場合は、その液晶物質のネマティック相での電子伝導の移動度が10−4cm/Vsよりも小さいと考えられ、有機半導体として特性が劣ると考えることができる。
【0064】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。
【実施例1】
【0065】
<2−(4′−オクチルオキシフェニル)−6−ブトキシベンゾチアゾール(以下、8O−PBT−O4と略記する)の液晶相における電荷輸送特性>
【化学式6】

【0066】
合成した8O−PBT−04について、DSC(示差型走査熱分析)で相転移温度を測定した結果、相転移温度が「Cryst2(結晶相2)42.7℃ Cryst1(結晶相1)67.3℃ SmC(スメクティックC相)101℃ N(ネマティック相)123.8℃ Iso(等方相)を示す液晶材料である(降温下5℃/minで測定)。
【0067】
各相間の温度は、相転移温度を示している。液晶相の同定はX線回折で行なった。
【0068】
液晶セルとしては、真空成膜によりITO電極(表面抵抗100〜200Ω/□)を設けたセルギャップ9μmのガラス基板を用いた。試料の精製は、カラムクロマトグラフィー、再結晶を組み合わせて、2〜3回行なった。試料の液晶セルへの注入は、ホットプレート上で加熱した液晶セルに等方相にまで昇温した試料を毛細管現象を利用してセルにしみ込ませた。移動度の測定は、光源337nmの窒素レーザーを使用して液晶相でTime of Flight法による測定を行なった。このとき、N相での正孔の移動度は1.0×10−4cm/V・s以上であった。
【実施例2】
【0069】
<2−(4′−オクチルフェニル)−6−ブトキシベンゾチアゾール(以下、8−PBT−O4と略記する)の液晶相における電荷輸送相特性>
【化学式7】

【0070】
合成した8O−PBT−O1について、DSC(示差型走査熱分析)で相転移温度を測定した結果、相転移温度が「Cryst(結晶相)20.3℃ N(ネマティック相)84.8℃ Iso(等方相)を示す液晶材料である(降温下5℃/minで測定)。
【0071】
各相間の温度は、相転移温度を示している。液晶相の同定はX線回折で行なった。
【0072】
液晶セルとしては、真空成膜によりITO電極(表面抵抗100〜200Ω/□)を設けたセルギャップ9μmのガラス基板を用いた。試料の精製は、カラムクロマトグラフィー、再結晶を組み合わせて、2〜3回行なった。試料の液晶セルへの注入は、ホットプレート上で加熱した液晶セルに等方相にまで昇温した試料を毛細管現象を利用してセルにしみ込ませた。移動度の測定は、光源337nmの窒素レーザーを使用して液晶相でTime of Flight法による測定を行なった。このとき、N相での正孔の移動度は1.0×10−4cm/V・s以上であった。
【実施例3】
【0073】
<2−(4′−オクチルフェニル)−6−メトキシベンゾチアゾール(以下、8−PBT−01と略記する)の液晶相における電荷輸送特性>
【化学式8】

【0074】
合成した8−PBT−O1について、DSC(示差型走査熱分析)で相転移温度を測定した結果、相転移温度が「Cryst(結晶相)52.7℃ N(ネマティック相)73.4℃ Iso(等方相)を示す液晶材料である(降温下5℃/minで測定)。
【0075】
各相間の温度は、相転移温度を示している。液晶相の同定はX線回折で行なった。
【0076】
液晶セルとしては、真空成膜によりITO電極(表面抵抗100〜200Ω/□)を設けたセルギャップ9μmのガラス基板を用いた。試料の精製は、カラムクロマトグラフィー、再結晶を組み合わせて、2〜3回行なった。試料の液晶セルへの注入は、ホットプレート上で加熱した液晶セルに等方相にまで昇温した試料を毛細管現象を利用してセルにしみ込ませた。移動度の測定は、光源337nmの窒素レーザーを使用して液晶相でTime of Flight法による測定を行なった。このとき、N相での正孔の移動度は1.1×10−4cm/V・s以上であった。
【実施例4】
【0077】
<2−(4′−ペンチルオキシフェニル)−6−ドデシルベンゾチアゾール(以下、5O−PBT−12と略記する)の液晶相における電荷輸送特性>
【化学式9】

【0078】
合成した5O−PBT−12について、DSC(示差型走査熱分析)で相転移温度を測定した結果、相転移温度が「Cryst(結晶相)50.3℃ SmA(スメクティックA相)79.2℃ N(ネマティック相)86.4℃ Iso(等方相)を示す液晶材料である(降温下5℃/minで測定)。
【0079】
各相間の温度は、相転移温度を示している。液晶相の同定はX線回折で行なった。
【0080】
液晶セルとしては、真空成膜によりITO電極(表面抵抗100〜200Ω/□)を設けたセルギャップ9μmのガラス基板を用いた。試料の精製は、カラムクロマトグラフィー、再結晶を組み合わせて、2〜3回行なった。試料の液晶セルへの注入は、ホットプレート上で加熱した液晶セルに等方相にまで昇温した試料を毛細管現象を利用してセルにしみ込ませた。移動度の測定は、光源337nmの窒素レーザーを使用して液晶相でTime of Flight法による測定を行なった。このとき、N相での正孔の移動度は1.0×10−4cm/V・s以上であった。
【実施例5】
【0081】
<2−(4′−オクチルフェニル)−6−エトキシナフタレン(以下、8−PNP−O2と略記する)の液晶相における電荷輸送特性>
【化学式10】

【0082】
合成した8−PNP−O2について、DSC(示差型走査熱分析)で相転移温度を測定した結果、相転移温度が「Cryst2(結晶相2)35℃ Cryst1(結晶相1)69.7℃ SmE(スメクティックE相)115.3℃ N(ネマティック相)129.3℃ Iso(等方相)を示す液晶材料である(降温下5℃/minで測定)。
【0083】
各相間の温度は、相転移温度を示している。液晶相の同定はX線回折で行なった。
【0084】
液晶セルとしては、真空成膜によりITO電極(表面抵抗100〜200Ω/□)を設けたセルギャップ9μmのガラス基板を用いた。試料の精製は、カラムクロマトグラフィー、再結晶を組み合わせて、2〜3回行なった。試料の液晶セルへの注入は、ホットプレート上で加熱した液晶セルに等方相にまで昇温した試料を毛細管現象を利用してセルにしみ込ませた。移動度の測定は、光源337nmの窒素レーザーを使用して液晶相でTime of Flight法による測定を行なった。このとき、N相での正孔の移動度は1.1×10−4cm/V・s以上であった。
【実施例6】
【0085】
<2−(4′−ヘキシルオキシフェニル)−6−メトキシフェニルナフタレン(以下、6−PNP−O2と略記する)の液晶相における電荷輸送特性>
【化学式11】

【0086】
合成した6−PNP−O2について、DSC(示差型走査熱分析)で相転移温度を測定した結果、相転移温度が「Cryst(結晶相)66.3℃ SmX(スメクティックX相)121.4℃ N(ネマティック相)133.5℃ Iso(等方相)を示す液晶材料である(降温下5℃/minで測定)。
【0087】
各相間の温度は、相転移温度を示している。液晶相の同定はX線回折で行なった。
【0088】
液晶セルとしては、真空成膜によりITO電極(表面抵抗100〜200Ω/□)を設けたセルギャップ9μmのガラス基板を用いた。試料の精製は、カラムクロマトグラフィー、再結晶を組み合わせて、2〜3回行なった。試料の液晶セルへの注入は、ホットプレート上で加熱した液晶セルに等方相にまで昇温した試料を毛細管現象を利用してセルにしみ込ませた。移動度の測定は、光源337nmの窒素レーザーを使用して液晶相でTime of Flight法による測定を行なった。このとき、N相での正孔の移動度は1.1×10−4cm/V・s以上であった。
【比較例1】
【0089】
<2−(4′−オクチルオキシフェニル)−6−ブトキシベンゾチアゾール(以下、8O−PBT−O4と略記する)の液晶相における電荷輸送特性>
【化学式12】

【0090】
合成した8O−PBT−O4について、DSC(示差型走査熱分析)で相転移温度を測定した結果、相転移温度が「Cryst2(結晶相2)42.7℃ Cryst1(結晶相1)67.3℃ SmC(スメクティックC相)101℃ N(ネマティック相)123.8℃ Iso(等方相)を示す液晶材料である(降温下5℃/minで測定)。
【0091】
各相間の温度は、相転移温度を示している。液晶相の同定はX線回折で行なった。
【0092】
液晶セルとしては、真空成膜によりITO電極(表面抵抗100〜200Ω/□)を設けたセルギャップ9μmのガラス基板を用いた。試料の精製は、試料の精製は、カラムクロマトグラフィーで行った。試料の液晶セルへの注入は、ホットプレート上で加熱した液晶セルに等方相にまで昇温した試料を毛細管現象を利用してセルにしみ込ませた。移動度の測定は、光源337nmの窒素レーザーを使用して液晶相でTime of Flight法による測定を行なった。このとき、N相での正孔の移動度は3.0×10−5cm/V・s以下であった。
【比較例2】
【0093】
<2−(4′−オクチルフェニル)−6−ブトキシベンゾチアゾール(以下、8−PBT−O4と略記する)の液晶相における電荷輸送特性>
【化学式13】

【0094】
合成した8−PBT−O4について、DSC(示差型走査熱分析)で相転移温度を測定した結果、相転移温度が「Cryst(結晶相)20.3℃ N(ネマティック相)84.8℃ Iso(等方相)を示す液晶材料である(降温下5℃/minで測定)。
各相間の温度は、相転移温度を示している。液晶相の同定はX線回折で行なった。
【0095】
液晶セルとしては、真空成膜によりITO電極(表面抵抗100〜200Ω/□)を設けたセルギャップ9μmのガラス基板を用いた。試料の精製は、試料の精製は、カラムクロマトグラフィーで行った。試料の液晶セルへの注入は、ホットプレート上で加熱した液晶セルに等方相にまで昇温した試料を毛細管現象を利用してセルにしみ込ませた。移動度の測定は、光源337nmの窒素レーザーを使用して液晶相でTame of Flight法による測定を行なった。このとき、N相での正孔の移動度は5.0×10−5cm/V・s以下であった。
【比較例3】
【0096】
<2−(4′−オクチルフェニル)−6−メトキシベンゾチアゾール(以下、8−PBT−O1と略記する)の液晶相における電荷輸送特性>
【化学式14】

【0097】
合成した8−PBT−O1について、DSC(示差型走査熱分析)で相転移温度を測定した結果、相転移温度が「Cryst(結晶相)52.7℃ N(ネマティック相)73.4℃ Iso(等方相)を示す液晶材料である(降温下5℃/minで測定)。
【0098】
各相間の温度は、相転移温度を示している。液晶相の同定はX線回折で行なった。
【0099】
液晶セルとしては、真空成膜によりITO電極(表面抵抗100〜200Ω/□)を設けたセルギャップ9μmのガラス基板を用いた。試料の精製は、試料の精製は、カラムクロマトグラフィーで行った。試料の液晶セルへの注入は、ホットプレート上で加熱した液晶セルに等方相にまで昇温した試料を毛細管現象を利用してセルにしみ込ませた。移動度の測定は、光源337nmの窒素レーザーを使用して液晶相でTime of Flight法による測定を行なった。このとき、N相での正孔の移動度は4.0×10−5cm/V・s以下であった。
【比較例4】
【0100】
<2−(4′−ペンチルオキシフェニル)−6−ドデシルベンゾチアゾール(以下、5O−PBT−12と略記する)の液晶相における電荷輸送特性>
【化学式15】

【0101】
合成した5O−PBT−12について、DSC(示差型走査熱分析)で相転移温度を測定した結果、相転移温度が「Cryst(結晶相)50.3℃ SmA(スメクティックA相)79.2℃ N(ネマティック相)86.4℃ Iso(等方相)を示す液晶材料である(降温下5℃/minで測定)。
各相間の温度は、相転移温度を示している。液晶相の同定はX線回折で行なった。
【0102】
液晶セルとしては、真空成膜によりITO電極(表面抵抗100〜200Ω/□)を設けたセルギャップ9μmのガラス基板を用いた。試料の精製は、試料の精製は、カラムクロマトグラフィーで行った。試料の液晶セルへの注入は、ホットプレート上で加熱した液晶セルに等方相にまで昇温した試料を毛細管現象を利用してセルにしみ込ませた。移動度の測定は、光源337nmの窒素レーザーを使用して液晶相でTime of Flight法による測定を行なった。このとき、N相での正孔の移動度は5.0×10−5cm/V・s以下であった。
【比較例5】
【0103】
<2−(4′−オクチルフェニル)−6−エトキシナフタレン(以下、8−PNP−O2と略記する)の液晶相における電荷輸送特性>
【化学式16】

【0104】
合成した8−PNP−O2について、DSC(示差型走査熱分析)で相転移温度を測定した結果、相転移温度が「Cryst2(結晶相2)35℃ Cryst1(結晶相1)69.7℃ SmE(スメクティックE相)115.3℃ N(ネマティック相)129.3℃ Iso(等方相)を示す液晶材料である(降温下5℃/minで測定)。
【0105】
各相間の温度は、相転移温度を示している。液晶相の同定はX線回折で行なった。
【0106】
液晶セルとしては、真空成膜によりITO電極(表面抵抗100〜200Ω/□)を設けたセルギャップ9μmのガラス基板を用いた。試料の精製は、試料の精製は、カラムクロマトグラフィーで行った。試料の液晶セルへの注入は、ホットプレート上で加熱した液晶セルに等方相にまで昇温した試料を毛細管現象を利用してセルにしみ込ませた。移動度の測定は、光源337nmの窒素レーザーを使用して液晶相でTime of Flight法による測定を行なった。このとき、N相での正孔の移動度は5.0×10−5cm/V・s以下であった。
【比較例6】
【0107】
<2−(4′−ヘキシルオキシフェニル)−6−メトキシフェニルナフタレン(以下、6−PNP−O2と略記する)の液晶相における電荷輸送特性>
【化学式17】

【0108】
合成した6−PNP−O2について、DSC(示差型走査熱分析)で相転移温度を測定した結果、相転移温度が「Cryst(結晶相)66.3℃ SmX(スメクティックX相)121.4℃ N(ネマティック相)133.5℃ Iso(等方相)を示す液晶材料である(降温下5℃/minで測定)。
【0109】
各相間の温度は、相転移温度を示している。液晶相の同定はX線回折で行なった。
【0110】
液晶セルとしては、真空成膜によりITO電極(表面抵抗100〜200Ω/□)を設けたセルギャップ9μmのガラス基板を用いた。試料の精製は、試料の精製は、カラムクロマトグラフィーで行った。試料の液晶セルへの注入は、ホットプレート上で加熱した液晶セルに等方相にまで昇温した試料を毛細管現象を利用してセルにしみ込ませた。移動度の測定は、光源337nmの窒素レーザーを使用して液晶相でTime of Flight法による測定を行なった。このとき、N相での正孔の移動度は4.0×10−5cm/V・s以下であった。
【0111】
(評価方法)
上記の実施例1〜6及び比較例1〜6で合成したサンプルについて、下記に示す評価項目について試験を行い、そのデータを測定した。
【0112】
相転移温度の測定には、DSC(示差型走査熱分析、セイコー電子工業DSC220C)を用いた。液晶相の同定には、ホットステージ付きX線回折装置(RIGAKU RAD−B,理学電気製)を用いた。電荷移動度の測定は、図3に示す装置を用い、励起光として窒素パルスレーザー(Laser photonicsLN203C)を用い、Time of flight法による測定を各液晶相で行った。
【0113】
[図5]
精製を十分に行なった実施例1で示した80−PBT−04の希釈前後でのネマティック相における過渡光電流波形に見られる変化を示す。印下電圧は100Vとした。液晶セルとしては、真空成膜によりITO電極(表面抵抗100〜200Ω/□)を設けたセルギャップ9μmのガラス基板を用いた。72.6sec付近に見られる肩は、電荷が対向電極に到達したことを表しており、移動度は1.1×10−4cm/Vsに対応する。n−テトラデカン10モル%希釈した物では、103μsec付近に見られる肩は遅い時間領域に移動しており、移動度が減少したことを示している。これは、電子伝導に特徴的な特性である。
【0114】
[図6]
精製の不十分な80−PBT−04例に、比較例1で示した80−PBT−04の希釈前後でのネマティック相における過渡光電流波形に見られる変化を示す。印下電圧は100Vとした。液晶セルとしては、真空成膜によりITO電極(表面抵抗100〜200Ω/□)を設けたセルギャップ9μmのガラス基板を用いた。596μsec付近に見られる肩は、電荷が対向電極に到達したことを表しており、移動度は1.36×10−5cm/Vsに対応する。n−テトラデカンで10mol%希釈した物では、574μsec付近に見られる肩は速い時間領域に移動しており、移動度が増加したことを示している。これは、イオン伝導に特徴的な特性である。
【0115】
【表1】

表1は、time−of−flight法により、各ネマティック相温度で測定した、精製したネマティック液晶物質の移動度と同じ条件で測定したn−テトラデカンで3〜15モル%希釈した場合の液晶物質の示す移動度の変化をまとめたものである。n−テトラデカンによる移動度の変化から、実施例1〜6の精製した液晶物質におけるネマティック相における移動度は電子伝導による伝導が起きているものと判断され、有機半導体としての扱うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、ネマティック液晶物質が、その純度の保証をされれば、通常の固体系の有機半導体材料と同様に、種々の有機電子デバイスに適用可能である。具体的には、光センサ、有機EL素子、有機トランジスタ、太陽電池、有機電子メモリー素子などに利用できる。特に、分子配向の制御が容易であることから、偏光の受光発光素子として、特徴ある光学的にアクティブな光電子デバイスへの応用が本材料を活かすことになる。
また、光学活性なネマティック液晶物質を用いれば、同様に、円偏光の受光、発光素子にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】 液晶性有機化合物が自己組織化してなる有機半導体層の一例を示すモデル図である。
【図2】 本発明の有機半導体装置の一例を示す断面図である。
【図3】 本発明の有機半導体装置の一例を示す断面図である。
【図4】 過渡光電流測定法(TOF法)の構成図の一例である。
【図5】 精製を十分に行なった試料における過渡光電流波形の図である。
【図6】 精製が不十分な試料における過渡光電流波形の図である。
【符号の説明】
【0118】
10 有機半導体装置
11 基板
12 ゲート電極
13 ゲート絶縁層
14 有機半導体層
15 ドレイン電極
16 ソース電極
17 有機半導体装置
18 基板
19 電極
20 電極
21 スペーサー
22 液晶性有機半導体材料
201 Nパルスレーザー
301 試料
401 デジタルオシロスコープ
23 精製を十分に行なった80−PBT−O4でのネマティック相における過渡光電流波形である
24 精製を十分に行なった80−PBT−O4に対してn−テトラデカンを10mol%で希釈した時のネマティック相における過渡光電流波形である
25 精製が不十分な80−PBT−O4でのネマティック相における過渡光電流波形である
26 精製が不十分な80−PBT−O4に対してn−テトラデカンを10mol%で希釈した時のネマティック相における過渡光電流波形である

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L個の6π電子系芳香環、M個の10π電子系芳香環、N個の14π電子系芳香環(ただし、L、M、Nはそれぞれ0〜4の整数を表わし、L+M+N=1〜4とする。)を含む骨格構造を有し、当該骨格構造の末端に液晶性を発現する末端構造を有する棒状分子の有機半導体材料(Z1)であり、下記化学式1中にZ1として含まれることを特徴とする有機化合物。
〔化学式1〕

(化学式1において、R1とR2は、それぞれ独立に炭素数0〜22の直鎖、分岐鎖又は環状構造を有する飽和又は不飽和炭化水素であり、化学式1の骨格構造のいずれかの部位に結合していることを特徴とし、Y1又はY2を介さずにZ1に結合してもよい。Y1とY2は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、−CO−基、−OCO−基、−COO−基、−N=CH−基、−CONH−基、−NH−基、−NHCOO−基及び−CH−基から選ばれる。)
【請求項2】
L個の6π電子系芳香環、M個の10π電子系芳香環、N個の14π電子系芳香環(ただし、L、M、Nはそれぞれ0〜4の整数を表わし、L+M+N=1〜4とする。)を含む骨格構造を有し、当該骨格構造の末端に液晶性を発現する末端構造を有する棒状分子の有機半導体材料(Z1)であり、下記化学式2中にZ1、Z2として含まれることを特徴とする有機化合物。
〔化学式2〕

(化学式2において、R1とR2は、炭素数0〜22の直鎖、分岐鎖又は環状構造を有する飽和又は不飽和炭化水素であり、化学式2の骨格構造のいずれかの部位に結合していることを特徴とし、R1とR2は、Y1又はY2を介さずにZ1、Z2に結合してもよい。Y1とY2は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、−CO−基、−OCO−基、−COO−基、−N=CH−基、−CONH−基、−NH−基、−NHCOO−基及び−CH−基から選ばれる。Xは、炭素数1〜22の直鎖、分岐鎖又は環状構造を有する飽和又は不飽和炭化水素であってもよいし、又は、Xは存在せずに直接Z1とZ2とが結合していてもよい。n=1以上の整数を表す。Z1とZ2は同じL個の6π電子系芳香環、M個の10π電子系芳香環、N個の14π電子系芳香環(ただし、L、M、Nはそれぞれ0〜4の整数を表わし、L+M+N=1〜4とする。)を含む骨格構造または、異なるL個の6π電子系芳香環、M個の10π電子系芳香環、N個の14π電子系芳香環(ただし、L、M、Nはそれぞれ0〜4の整数を表わし、L+M+N=1〜4とする。)を含む骨格構造でも良い。)
【請求項3】
熱分解温度以下の温度において、少なくとも一種類のネマティック液晶相状態を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機半導体化合物を液晶セルにつめた低分子ネマティック液晶物質を試料として、Time−of−flight(TOF)法による過渡光電流の測定を行い、電荷の走行時間から炭化水素化合物で希釈しない試料の移動度の値が10−4cm/Vs以上で、かつ、炭化水素化合物で希釈した試料の移動度の値が10−4cm/Vsより小さいことを特徴とする有機半導体化合物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機化合物からなる有機半導体層を有する有機半導体構造物であって、前記液晶性有機化合物が熱分解温度以下の温度で少なくとも一種類以上のネマティック液晶相状態を有し、電子輸送移動度1.0×10−4cm/V・s以上、又は、正孔輸送移動度1.0×10−4cm/V・s以上の電子伝導が観測されることを特徴とする有機半導体構造物。
【請求項6】
少なくとも基板、ゲート電極、ゲート絶縁層、有機半導体層、ドレイン電極、及びソース電極を有する有機半導体装置であって、前記有機半導体層が、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶性有機化合物で形成されていることを特徴とする有機半導体装置。
【請求項7】
少なくとも基板、一対の電極、有機半導体層を有する有機半導体装置であって、前記有機半導体層が、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶性有機化合物で形成されていることを特徴とする有機半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−57360(P2009−57360A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258060(P2007−258060)
【出願日】平成19年9月2日(2007.9.2)
【出願人】(595062573)
【Fターム(参考)】