説明

ノズル、塗布装置、塗布方法およびプラズマディスプレイ用部材の製造方法

【課題】より高精度なノズルを安価で製作することができることから、プラズマディスプレイパネルの高精細化やコストダウンを実現でき、優れた品位の製品を提供する。
【解決手段】吐出孔から塗液を吐出して基材に塗布するノズルであって、内部に塗液を貯める塗液溜め部を形成するマニホールド部材および複数の吐出孔がノズル長手方向に略一直線状に配置された板状の吐出孔形成部材からなり、前記マニホールド部材と前記吐出孔形成部材が接合面を介して接合されており、該接合部の接合面が曲面または2以上の平面により構成される面であることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略す)に代表されるディスプレイパネルを構成するディスプレイ用部材、液晶表示装置用カラーフィルター(LCM)、光学フィルター、プリント基板、半導体等の高粘度塗液を塗布するような分野に使用されるものであり、例えばPDP製造工程における、ガラス基板などの塗布対象物の表面に非接触で塗液を吐出してパターン状の塗布を行うためのノズル、塗布装置、塗布方法およびプラズマディスプレイ用部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイはその方式において次第に多様化してきている。現在注目されているものの一つが、従来のブラウン管よりも大型で薄型軽量化が可能なプラズマディスプレイである。これは、前面板と背面板の間に形成された放電空間内で放電を生じさせ、この放電によりキセノンガスから生じる波長147nmを中心とする紫外線によって蛍光体層中の蛍光体を励起、発光することによって表示が可能となる。R(赤)、緑(G)、青(B)に発光する蛍光体を塗り分けた放電セルを駆動回路によって発光させることにより、フルカラー表示に対応できる。
【0003】
このうち、最近活発に開発が進められている交流(AC)型プラズマディスプレイは、表示電極/誘電体層/保護層を形成した前面ガラス板と、アドレス電極/誘電体層/隔壁層/蛍光体層を形成した背面ガラス板を貼り合わせ、ストライプ状の隔壁で仕切られた放電空間内にHe−Xe、または、Ne−Xeの混合ガスを封入した構造を有している。R、G、Bの各蛍光体層は、粉末状の蛍光体粒子を主成分とする蛍光体ペーストが、背面板に形成されたストライプ状の隔壁により形成された凹部に充填されてなる。このような構造のものを高い生産性と高品質で製造するには、蛍光体ペーストを一定のパターン状に塗り分ける技術が重要となる。
【0004】
蛍光体ペーストを一定のパターン状に塗り分ける技術として、たとえば特許文献1に記載されているように、内部に塗液を貯める塗液溜め部を形成するマニホールド部材と、複数の吐出孔を有する板状体の部材とが接合された構成のノズルで塗布する方法が開示されている。
【0005】
該ノズルは、前記マニホールド部材を有する部材と、吐出孔を有する板状体の部材がそれぞれ別部材で構成されているので、例えば塗液の吐出により吐出孔が摩耗した場合や、誤って吐出孔に傷を付けた場合でも、該板状体の部材を交換するだけで済み、コストの面で有利である。
【0006】
近年、プラズマディスプレイパネルは、更なる高精細化とコストダウンが求められている。そのため、その高精細化に対応するために前記ノズルの吐出孔の小径化、高精度化や製作コストダウンなど様々な検討が行われている。
【0007】
ここで、プラズマディスプレイパネルの更なる高精細化とは、隔壁により形成された凹凸部の間隔がより狭くなることを意味する。そのため、前記凹凸部に対応して設けられたノズルの吐出孔の孔径を小さくする必要がある。吐出孔から塗液を吐出するために、塗液に例えば加圧空気による圧力を作用させて吐出させるわけであるが、孔径が小さくなることでその部分の圧力損失が大きくなり、吐出のための圧力もそれ相応に大きくする必要がある。それにより塗液を吐出する際にノズル内部にかかる圧力が高くなる。
【0008】
また、プラズマディスプレイパネルのコストダウンのためには、単位時間あたりの生産枚数をより増す、つまり、タクトタイムを短くする必要がある。そこで、塗布速度を速くするわけであるが、そのためには単位時間あたりに吐出孔から吐出する塗液の量を多くする必要がある。この場合も吐出のための圧力をそれ相応に大きくする必要があり、これにより吐出する際にノズル内部にかかる圧力が高くなる。
【0009】
以上より、高精細化やコストダウンの要求に応えようとした場合、吐出する際にノズル内部にかかる圧力が高くなるため、マニホールドを有する部材と、吐出孔を有する板状体の部材との接合面の接合力が持ちこたえられず剥離してノズルが破損するという問題があった。
【0010】
また、充分な接合力を出すために、マニホールド部材と板状体部材の幅を大きくして接合面積を大きくすることも考えられる。しかし、塗布時にはノズルの吐出孔と背面板を対面させ、かつ、数百ミクロン程度に近接させて塗布するために、ノズルに僅かな傾きが生じた場合でも、ノズルと背面板が衝突する可能性があるため、単純にマニホールド部材と板状体部材の幅を大きくして接合面積を大きくすることは困難であった。
【特許文献1】特開平11−309402号公報(第12頁第5図)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、かかる従来技術の欠点を改良し、高精度で製作コストが低いながらも、より接合力の高いノズル、塗液の塗布装置および塗布方法ならびにプラズマディスプレイ用部材の製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、次の(1)〜(8)を特徴とするものである。
(1)吐出孔から塗液を吐出して基材に塗布するノズルであって、内部に塗液を貯める塗液溜め部を形成するマニホールド部材および複数の吐出孔がノズル長手方向に略一直線状に配置された板状の吐出孔形成部材からなり、該マニホールド部材と該吐出孔形成部材が接合面を介して接合されており、該接合面が曲面または2以上の平面により構成される面であることを特徴とするノズル。
(2)前記接合面が円柱面の一部または楕円柱面の一部である上記(1)に記載のノズル。
(3)前記接合面が複数の平面で構成されてなる上記(1)に記載のノズル。
(4)前記吐出孔形成部材として複数の吐出孔が略一直線状に配置された略平面状の板状材を用い、前記マニホールド部材の接合面に固定することによって接合してなる上記(1)〜(3)のいずれかに記載のノズル。
(5)前記板状材が平行度0.1mm以下の板状体である上記(4)に記載のノズル。
(6)基材を固定するテーブル、該基材の凹凸部に対面して設けられ、該凹凸基材の凹部に所定量の塗液を吐出するノズル、および該テーブルと該ノズルを3次元的に相対移動させる移動手段とを備えた塗布装置であって、該ノズルが上記(1)〜(5)のいずれかに記載のノズルである特徴とする塗布装置。
(7)基材と、該基材表面に対面して設けられた複数の吐出孔を有するノズルとを相対的に移動させ、同時に該吐出孔から塗液を吐出し、該基材表面に塗液を塗布する塗布方法であって、該ノズルが上記(1)〜(5)のいずれかに記載のノズルであることを特徴とする塗布方法。
(8)表面にストライプ状の隔壁が形成された基板と、該基板の隔壁が形成された面に対面して設けられた複数の吐出孔を有するノズルとを相対的に移動させ、同時に該吐出孔から赤色、緑色、青色のいずれかの色に発光する蛍光体粉末を含む蛍光体ペーストを吐出し、該基板に蛍光体粉末を含む蛍光体ペーストを塗布する工程を含むプラズマディスプレイ用部材の製造方法であって、該ノズルが上記(1)〜(5)のいずれかに記載のノズルを用いて塗布を行うことを特徴とするプラズマディスプレイパネル用部材の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るノズルによれば、マニホールド部材と吐出孔形成部材は高い接合力を有するためノズル内部にかかる圧力が高い場合も破損しにくく、高精度な塗布が可能であり、かつ、安価に製作することができる。更に、本発明に係る塗液の塗布装置および塗布方法ならびにプラズマディスプレイ用部材の製造方法によれば、プラズマディスプレイパネルの高精細化やコストダウンを実現でき、優れた品位の製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るノズルについて、図面を参照して説明する。
【0015】
図2は、本発明第1の例のノズルのノズル長手方向の縦断面図を示したものである。
【0016】
ノズル9は、内部に塗液91を貯める塗液溜め部51を形成するマニホールド部材52と、複数の吐出孔56が略一直線状に配置された吐出孔形成部材93からなる。また、図2に示された実施態様においては、ノズル9は塗液溜め部51に塗液を供給するための塗液供給口54と、塗液を吐出するために加圧空気を供給する圧空供給口200を有する。
【0017】
塗液供給口54は、塗液溜め部51に挿入された、パイプ57の先端に開口した孔からなる。塗布時は、ノズル9、特にノズル面9aと背面板を近接させて、圧空供給口200から加圧空気を供給して塗液を加圧することで吐出孔から塗液を押し出し、塗布する。
【0018】
ここで、塗液を吐出するための手段は、前述の加圧空気を用いることに限定されず、例えばノズル9の内部に塗液を充満させポンプなどで押し出してもよい。
【0019】
また、塗液溜め部51に塗液を供給するためには、塗液溜め部に挿入されたパイプ57を用いる以外に、塗液溜め部51の上流に一般的なダイコータのように塗液をノズルの長手方向に拡幅するマニホールドを形成して塗液溜め部51と連通させてもよい。
図3は図2のノズルの側面方向の縦断面図を記したものである。ノズル9は、マニホールド部材52と吐出孔形成部材93を有する。
【0020】
マニホールド部材52は塗液91を溜める塗液溜め部51を形成しており、吐出孔56が形成された板状の吐出孔形成部材93が接合面92を介して接合されている。
【0021】
本発明において、板状の吐出孔形成部材93を用いることは、吐出孔56の径、ピッチ等の加工精度を高くする上で有効であり、また、高粘度の塗液を吐出する場合に圧力損失が必要以上に大きくなり、ノズル内部にかかる圧力が大きくなるのを防ぐとともに、吐出孔ごとの吐出量に大きな差が生じるのを防ぐ効果がある。さらに、吐出孔が摩耗した場合や、誤って傷を付けた場合に容易に交換できるという利点がある。本発明において、吐出孔形成部材93は、吐出孔が形成される部分の厚さが0.1〜3mmであることが好ましい。吐出孔の直径は50〜500μmであることが好ましい。また、複数の吐出孔は300〜1500μmのピッチで略一直線上に配置されていることが好ましい。
【0022】
本発明のノズルは、マニホールド部材52と、吐出孔形成部材93とが接合する接合面92が曲面または2以上の平面により構成される面であることを特徴とする。ここで、曲面または2以上の平面により構成される面であるとは、単一の平面からなる面以外であることを指し、連続した曲面、曲面と平面の組み合わせまたは複数の平面からなるものを指す。図3に示した例では、接合面が円柱面の一部であるが、接合面は楕円柱面の一部でも良く、また、円柱面の一部または楕円柱面の一部と平面の組み合わせからなるような形状であっても良い。ここで、円柱面の一部または楕円柱面の一部の曲率半径は5〜200mmの範囲であることが好ましい。
【0023】
また、円柱面の一部または楕円柱面の一部である範囲は、その中心角が10〜180°の範囲であることが好ましい。
【0024】
このように、接合面92の形状を曲面または2以上の平面により構成される面とすることで、マニホールド部材52と吐出孔形成部材93の接合面積を大きくすることができ、その結果接合力が増し、それぞれの部材が剥がれにくくなる。更に、ノズル面9aを下に凸となる形状にすることで、基材である基板と対面するノズル面の基板と平行な部分の幅を小さくすることが可能となり、基板に塗液を塗布する際、ノズル面を基板に容易に近接させることができ、高精度な塗布を行う上で有利である。
【0025】
一方、接合面が単一の平面からなる場合、十分な接合力を得るためには図17に示すノズルのように接合面の幅を広くする必要があるが、この場合、ノズル面の基板と平行な部分の幅も広くなってしまう。このような場合に高精度な塗布を行う目的でノズル面と基板の距離を小さくすると、ノズルの長手方向を軸とした回転方向に僅かな傾きが生じた場合は、ノズル面と基板が衝突する恐れがある。そのため、それを回避するために、ノズルを取り付ける部分に、回転方向の位置調整機構を設け、傾きをなくし、基板との距離を均一に保つ必要があった。
【0026】
本発明のノズルにおいて、マニホールド部材52と吐出孔形成部材93を接合する手段としては、接着剤を用いることが好ましい。具体的には、シリコーン系接着剤やエポキシ系接着剤を適用することができるが、所望の接着力を得られるものであればいかなる接着剤を用いても良い。
【0027】
接着剤は、極力均一に塗布できることが好ましく、接合面92に直接塗りつける方法でも良いし、スプレーにより噴き付ける方法であっても良い。
【0028】
接着剤で接合することの長所は、容易に接合できること、および容易に剥がせることにある。例えば、塗液の吐出により吐出孔56が摩耗して所望の塗布品位が得られなくなったり、また、万が一吐出孔形成部材93が破損した場合でも、吐出孔形成部材93を接着剤除去剤等で剥がせば、マニホールド部材52は再度使用可能となり、コスト面で大変有利である。
また、上述のように接着剤で接合した上で、さらに複数のボルト94による締結固定を併用することも好ましい。つまり、マニホールド部材52と吐出孔形成部材93を接着剤により接合した後、複数のボルト94で締結固定することで、マニホールド部材52と吐出孔形成部材93をより強固に接合することができる。
この時、ボルト94の個数やボルトの間隔は、吐出圧力と、接着接合力により決定することが望ましい。
図4は本発明の第2の例のノズルの側面方向の縦断面図である。また、図5は図4のノズルを下側(吐出孔側)から見た図である。
【0029】
図4においては、マニホールド部材52と吐出孔形成部材93を接着剤により接着した後、中間部材95を介し、ボルト94で締結している。
【0030】
中間部材95は、図5に示す通り、ノズル9の長手方向に伸びる一体物であり、複数のボルト94で固定されている。 この中間部材95は、面で吐出孔形成部材93を押さえるため、図3のような、ボルト94だけで締結する実施態様より、より強固に吐出孔形成部材93を固定することが可能となる。
【0031】
この時、中間部材95の大きさ、ボルト94の個数や間隔は、吐出圧力の大きさに応じて決定することが望ましい。
【0032】
また、ノズル9がノズル長手方向に長い場合、中間部材95は任意の長さで分割し、それを並べた方が製作が容易となるので、低コストで製作できる。
【0033】
その他の接合手段としては、レーザー溶接で接合することも可能である。しかし、レーザー溶接の場合、溶着による接合であるため、熱が加わるために熱ひずみが問題となる場合がある。そのため、レーザーの出力が低く、熱が長時間加わることのないような溶接方法をとることで、この問題を回避することが可能となる。具体的には、YAGレーザー溶接機を用い、低出力で、かつ、溶接スポット径を極力小さくし、溶け込み深さを浅くすれば良い。
【0034】
接着接合とレーザー溶接は併用することも可能である。接着剤で接合した後、レーザー溶接することで、より高い接合力を得ることができる。また、接着剤によりあらかじめ吐出孔形成部材93をマニホールド部材52へ固定しておくことことで、レーザー溶接の溶接作業が格段に容易となる。
【0035】
またこの時、接着剤として、固化後に弾性体の接着層が形成されるシリコーン系接着剤を用いた場合、該弾性体がシールの役目を果たすことから、塗液の漏れだしを防ぐことができるため好ましい。
【0036】
なお、レーザー溶接は、吐出孔形成部材93の周囲全てを溶接しても良いし、任意の間隔で溶接を行うスポット溶接としても良い。
その他の接合手段として、拡散接合やビーム溶接等も挙げられるが、熱ひずみや製作精度が許容できる範囲内に収まるのであるならば、いかなる接合手段を用いても良い。
【0037】
図6およびと図7は本発明の第3、第4の例のノズルの側面方向の縦断面図である。
【0038】
図6のノズルにおいて、マニホールド部材52と吐出孔形成部材93を接合する接合面92は、3つの平面で構成される面である。
【0039】
このような複数の平面で構成される面の接合面とすることでも、前述の場合と同様の効果があり、マニホールド部材52と吐出孔形成部材93の接合面積を大きくすることができ、その結果接合力が増し、それぞれの部材が剥がれにくくなる。更に、ノズル面9aが下に凸状になるため、基板と対面するノズル面の塗布対象物である基板と平行な部分の幅を小さくすることが可能となり、基材に塗液を塗布する際、ノズル面を基板に容易に近接させることができる。
【0040】
ここで、接合面を構成する平面の数や形は特に規定するものではなく、所望の接合力が得られるのであれば、いかなる平面の数や形であっても良いが、基板と平行なノズル面とこれを挟む2つの傾斜面からなることが好ましい。ここで、基板と平行なノズル面の幅は、3〜30mmであることが好ましい。また、このとき傾斜面の角度は、例えばボルト94の頭がノズル面より下になって基材と接触しないような角度を選択する必要があり、ノズル面に対して傾斜面は5〜80°の範囲で傾斜していることが好ましい。また、接着手段は前述した場合と同様、接着剤を用いることが好ましく、熱ひずみや製作精度が許容できる範囲内に収まるのであるなら、レーザー溶接、拡散接合やビーム溶接等のいかなる接合手段を用いても良い。
【0041】
さらに図7に示すように、マニホールド部材52と吐出孔形成部材93を接着剤により接着した後、中間部材95を介し、ボルト94で締結固定しても良い。
【0042】
この中間部材95は、図4のノズルで用いたものと同様、面で吐出孔形成部材93を押さえるため、図6のような、ボルト94だけで締結する実施態様より、より強固に吐出孔形成部材93を固定することが可能となる。
図8に本発明の第5の例のノズルの側面方向の縦断面図を示す。
【0043】
前述したように、接着剤で接合した場合、吐出孔形成部材93の交換が可能となるためコスト面で有利であるが、例えば、レーザー溶接で完全にマニホールド部材52へ接合した場合や、接着剤をうまく剥がすことができない場合でも、図8のノズルとすることによって、吐出孔形成部材93のみを交換する場合と同様のコストメリットを得ることができる。
【0044】
図8のノズルにおいて、マニホールド部材52は上部材52aと下部材52bで構成され、吐出孔形成部材93は下部材52bと接合面92を介して接合されている。接合面92は三次元形状の面であり、この例では円弧を含む線である。下部材52bと吐出孔形成部材93の接合は、例えばYAGレーザー溶接を用いて接合した後、中間部材95を介し、ボルト94を用いて吐出孔形成部材93を強固に固定すればよい。
【0045】
また下部材52bと上部材52aの接触面には、塗液が漏れ出さないようにシール手段を用いることが好ましく、本実施態様ではOリング98を用いている。なお、シール手段としては、例えばゴムパッキンやメタルパッキン等を用いることができ、また他の手段として、下部材と上部材との接触面の面粗度を例えば0.4s程度に仕上げ、かつ、塗液が漏れない程度に平面度を良くしてお互いを密着させる面シールを行っても良い。
【0046】
そして、これら下部材52bと上部材52aをボルト(図示しない)で締結することでノズルを構成することができる。
【0047】
このようにすることで、吐出孔形成部材93に摩耗や破損等の問題が起きた場合でも、吐出孔形成部材93が接合された下部材52bを交換するだけで済むため、コスト面で有利となる。
【0048】
ここで、図8のノズルの製作手順について説明する。なお、図4のノズルにおいても同様の製作手順で製作することができる。
【0049】
図9は図8のノズルの製作手順の一例を示した模式図である。また、図14は図8のノズルを下方向から見た図である。
【0050】
吐出孔形成部材93は、下部材52bと吐出孔形成部材93の接合面と略同一の円弧にあらかじめ曲がられている。これを接着剤で下部材52bへ接合する。この時、下部材52bと吐出孔形成部材93の位置決めは図14に示した2カ所の位置決めピン96で行うことが好ましい。位置決めピン96は吐出孔形成部材93の厚さより長くしておき、接着が完了してから、もしくは、中間部材95を介してボルト94で締結し固定してから、吐出孔形成部材93より突出している部分を切除するのが好ましい。なお、位置決めピン96の位置は図14に示した位置以外にあっても良いし、数も2個に限らない。
【0051】
この時、吐出孔形成部材93は既に吐出孔56の加工が完了していることが好ましい。また、それぞれの部材または一方の部材の接合面をあらかじめ粗くしておくことで、接着剤による接合力を高くすることができる。これは、それぞれの部材の接合面をあらかじめ粗くすることで接合面の表面積を大きくでき、つまり接着剤との接触面積を大きくできるからである。
【0052】
以上の手順で接着剤により下部材52bと吐出孔形成部材93を接着剤を用いて接合した上で、必要に応じてYAGレーザー溶接等を用いて接合した後、中間部材95を介し、ボルト94を用いて吐出孔形成部材93を強固に固定する。
【0053】
図10は図8のノズルの製作手順の他の例を示した模式図である。
【0054】
吐出孔形成部材93は当初は平面であり、下部材52bへ接着剤を塗布した後、治具97を用いて吐出孔形成部材93を下部材52bへ押し付けることにより変形させた上で、接合する。この場合も、前述の場合と同様、下部材52bと吐出孔形成部材93の位置決めは位置決めピンにより行うことが好ましい。以上の手順で接着剤により下部材52bと吐出孔形成部材93を接合した上で、必要に応じてYAGレーザー溶接等を用いて接合した後、中間部材95を介し、ボルト94を用いて吐出孔形成部材93を強固に固定する。
【0055】
図11は本発明の第6の例のノズルの側面方向の縦断面図である。図8のノズルと同様、マニホールド部材52は上部材52aと下部材52bで構成され、吐出孔形成部材93は接合面92を介して下部材52bと接合されている。
【0056】
図11のノズルにおいても、下部材52bの吐出孔形成部材93との接合面92は、3つの平面で構成されてなる面である。
【0057】
そして、下部材52bと吐出孔形成部材93の接合手段としては、例えばYAGレーザー溶接を用いて接合した後、中間部材95を介し、ボルト94を用いて吐出孔形成部材93を強固に固定すればよい。
【0058】
また下部材52bと上部材52aとの接触面には、図8のノズルと同様、塗液が漏れ出さないようにシール手段を用いることが好ましく、本実施態様ではOリングを用いている。また、他の手段として、上述した場合と同様に面シールを行っても良い。
【0059】
そして、これら下部材52bと上部材52aをボルト(図示しない)で締結することでノズルを構成することができる。
【0060】
このようにすることで、前述と同様、吐出孔形成部材93に問題が起きた場合でも、吐出孔形成部材93が接合された下部材52bを交換するだけで済むため、コストの面で有利となる。
【0061】
ここで、図11のノズルの製作手順について説明する。なお、図7のノズルにおいても同様の製作手順で製作することができる。
図12は図11のノズルの製作手順の一例を示した模式図である。吐出孔形成部材93は、下部材52bと吐出孔形成部材93の接合面と略同一の形状にあらかじめ曲がられている。これを接着剤により下部材52bへ接合する。この場合も図8のノズルの製作手順で説明したように、下部材52bと吐出孔形成部材93の位置決めは、位置決めピンにより行うことが好ましい。
【0062】
この時、吐出孔形成部材93は既に吐出孔56の加工が完了していることが好ましい。また、この場合もそれぞれの部材あるいは一方の部材の接合面のめ表面を粗くしておくことで接着剤による接合力を高めても良い。
【0063】
図13は図11のノズルの製作手順の他の例を示した模式図である。
【0064】
吐出孔形成部材93は当初は平面であり、下部材へ接着剤を塗布した後、治具97を用いて吐出孔形成部材93を下部材52bへ押し付けることにより変形させた上で、接合する。この場合も前述と同様、下部材52bと吐出孔形成部材93の位置決めは位置決めピンにより行うことが好ましい。
【0065】
また、吐出孔形成部材93は折り曲げるためあらかじめ折り曲がる箇所に微小なV形の溝を加工しておくことが好ましい。
【0066】
以上の手順で接着剤により下部材52bと吐出孔形成部材93を接合した上で、必要に応じてYAGレーザー溶接等を用いて接合した後、中間部材95を介し、ボルト94を用いて吐出孔形成部材93を強固に固定する。
【0067】
なお、以上で述べてきた中で、吐出孔形成部材93は平行度0.1mm以下の板状体であることが好ましい。また、該板状体の厚みは0.2から3mmの範囲であることが好ましく、吐出孔56の孔長と板状体の厚みが同等であることがより好ましい。そうすることで、板状体の厚みを精度良く加工すれば、吐出孔56の孔長も高精度に加工することができる。
【0068】
また、塗液の吐出に最も重要な部分である吐出孔56を比較的安価な板状体に対して加工することから、ノズル自体の大幅な製作コストダウンを実現できる。また、単なる板状体への加工であるので、加工作業が容易となり高精度な吐出孔の形成ができる。
【0069】
以上の内容はいかなる組み合わせで適用することも可能であり、必要な接合力や塗液の特性等に応じて使い分けることが望ましい。
【0070】
次に、本発明に係る塗液の塗布装置、特にプラズマディスプレイパネル用部材への塗液の塗布装置の全体構成の例について説明する。
【0071】
図1は、本発明の一実施態様に係る塗液の塗布装置の概略斜視図である。図1において、塗布される基材である基板1はテーブル2の上に載置され、テーブル2に設けた吸着装置(図示略)により吸着して固定される。なお、プラズマディスプレイ用部材を製造する場合、基板1にはストライプ状の隔壁が設けらている。基板1は塗布領域3を有する。テーブル2は、その中心を軸として、回転を可能とするθ軸部材(図示しない)により支持されている。このθ軸部材はY軸搬送部4に搭載され、Y軸搬送部4はX軸搬送部5上に設けられたリニアガイド4a、4bに沿って機台6のY軸方向に移動する。X軸搬送部5は、機台6上に設けられたリニアガイド5a、5bに沿って機台6のX軸方向に移動する。このX、Y軸搬送部は直交するように調整されている。X軸搬送部5は基板1に塗液を塗布するための相対移動手段であって、塗布動作においてはテーブル2をX軸方向に移動させる。
【0072】
機台6の中央部上方には、X軸搬送部5によって移動されるテーブル2が通過するように門型の支持台7が、X軸と直交する形で設けられている。支持台7の奥側(以下、下流側と称する。)側面の両サイドには、テーブル2の面に対して垂直方向に移動するZ軸搬送部8a、8bが設けられ、Z軸搬送部8a、8bには塗液を吐出するノズル9が、機台6のY軸方向中央を基準にして取り付けられる。ノズル9は着脱式で、Z軸搬送部8a、8bに取り付けたときに、テーブル2のX軸移動方向に直交して、Z軸搬送部8a、8bに設けたチャック(図示略)により固定される。
【0073】
本発明の塗布装置は、上述したようにマニホールド部と吐出孔形成部材が曲面または2以上の平面により構成される面からなる接合面を介して接合されているノズルを有することを特徴とする。このようなノズルを有することによって、破損などの問題が発生しにくく、安価な塗布装置とすることができ、これを用いることによって高精細なプラズマディスプレイ用部材を高精度に、安価に製造することができる。
【0074】
次に、ノズル9のその他の特徴について図2を用いて説明する。ノズル9は、塗布する塗布領域3のサイズに合わせて選択され、その塗布領域3に形成された所定の全ての溝に対して1回の塗布動作で塗布を完了するための吐出孔56が略一直線状に配列して設けられている。例えば、塗布する基板がプラズマディスプレイの背面板の場合は、R、G、B何れか1色の蛍光体粉末を含んだ塗液を塗布する。従って、ノズル9には、その塗布する溝に対応した数、ピッチで吐出孔56が設けられる。
【0075】
またノズル9は、吐出孔56の数を減らして、複数回の塗布動作で基板1枚への塗布を完了するものであってもよい。つまり、短尺型のノズルであったり、吐出孔56のピッチを拡げたものであってもよい。
【0076】
ノズル9は内部に塗液を溜める塗液溜め部51を有し、塗液を供給するための配管が接続され、この配管の反対側先端部には塗液の供給をコントロールする開閉バルブ10を介して塗液タンク12が接続される。塗液タンク12には所定圧力の気体圧力源13が配管を介して接続されている。また、ノズル9には、吐出孔56から塗液を吐出させるための気体圧力を供給する配管が接続され、この配管の反対側先端部は気体圧力の切替バルブ11を介して、一方は所望圧力の気体圧力源13に接続され、他方は大気に開放されている。
【0077】
吐出孔56から塗液を吐出させる時は、切替バルブ11を開き、ノズル内部を加圧することで塗液を吐出孔から押し出す。この時、ノズル9は例えば図3に示すものを用いることで、加圧により大きな力が作用しても、吐出孔形成部材93の剥がれを防ぐことができる。
【0078】
ノズル9への塗液供給は、切替バルブ11を大気開放にした状態で開閉バルブ10を開くことにより行われる。このとき塗液は、例えば液面高さを検出する液面センサ58を設けておき、塗液溜め部51の上部に空間を残す形で所定量が蓄えられる。このような液面センサ58は、液面を検知できるものであれば特に限定されるものではないが、塗液に対し、非接触のものであるのが好ましい。これにより塗液の汚染を防ぐことができる。
【0079】
塗液の吐出は切替バルブ11を気体圧力源13に切り換えて、この空間に気体圧力を供給することにより行われる。
【0080】
基板への塗布工程は、ノズル9の塗液溜め部51に塗液を供給する工程と、塗布領域に塗液を塗布する工程を有し、それらを交互に繰り返す。塗布領域に塗液を塗布する工程では、一回の工程で、塗液溜め部51内の塗液のうち一部(所定量)を使って塗布領域3に塗布する。これにより、塗液溜め部51内の液面高さ(吐出孔から液面までの距離)は一定高さ下降するため、次の塗液供給工程で塗液を所定量供給(補給)し、液面を所定の高さ(塗液量)にする。
【0081】
支持台7の手前側(以下、上流側と称する。)側面には、基板1の塗布領域3の位置を計測する第1の位置センサとしてカメラ17、19が取り付けられ、かつ、塗布領域3の基準溝の位置を計測する第2の位置センサとしてカメラ18が取り付けられている。また、これらの計測手段は複数のカメラを有していてもよい。これらのカメラは、各々XおよびZ軸方向の微調整機構を介して、支持台7のY軸方向に独立して移動可能なY1搬送部14、Y3搬送部16、Y2搬送部15に取り付けられている。このY1、Y3搬送部はリニアガイド7a、7bによって、Y軸方向に移動した場合においてもテーブル面からの高さが一定になるよう調整されている。
【0082】
制御部22はマイクロコンピュータやRAM、ハードディスクなどにて構成される。制御部22は、移動制御部24を有し、移動制御部24は移動駆動部25を介して塗布機の動作を制御し、基板1とノズル9とを、X方向に相対移動させる。また制御部22は、供給制御部23を有し、ノズル9への塗液の供給、ノズル9からの塗液の吐出を制御するとともに、塗布条件を入力表示するタッチパネル部を有している。また、通常、各カメラはモニタテレビに接続され視野の画像を表示できるように構成される。
【0083】
図15は、基板1を上から見た一例を示す図である。基板1にはX方向(塗布方向)に塗布領域3がある。塗布領域3には、塗布領域長手方向に直交して、図示しない直線状のリブが全面に渡り所定間隔で形成され、リブの間に溝を構成している。さらに、リブ間に溝を分断するための横リブを形成したものもある。塗布領域3の四隅付近には、基板面に形成されたリブパターンとの位置関係を示すアライメントマークA1、A4が設けられている。このアライメントマークは、塗布領域のリブパターンを形成するときに一緒に作成される。これにより、パターンとの位置関係が精度良く形成される。
【0084】
アライメントマークは、A1とA3を結ぶ直線がリブのパターンと平行になるように、また、A1とA2を結ぶ直線がリブのパターンと直交するように設けられる。アライメントマークの間隔XA,YAおよび各塗液塗布溝の基準溝位置Ysは基板情報として制御部に与える。基準溝位置YsはYAのほぼ中央リブ間の溝中心であって、ノズル9の基準孔とのY軸方向の位置合わせを行う位置とし、アライメントマークA1からの距離で与える。
【0085】
塗布を開始する場合は、まず、ノズル9の塗液溜め部51内に塗液を供給する。塗液の供給は前述したように図1の切替バルブ11を大気開放にした状態で開閉バルブ10を開いて、所定の量に達するまで供給する。
次に、基板搭載に移る。この動作はノズル9内への塗液供給と並行して行うことが可能で、ノズル9への塗液供給の待ち時間を少なくすることができる。
テーブル2を上流側端部に移動する。Y軸およびθ軸は中央ゼロの位置でテーブル面のほぼ中央に外部移載機により塗布する基板1を搭載し、リブがテーブルのX軸方向とほぼ平行となる状態にして吸着固定する。外部移載機は例えば多軸のロボットを用い、ロボットのアームで基板1をテーブル2上部に横持ちする。テーブル2には複数の昇降可能なピンを設け、このピンを上昇して基板を受け取り、アームを退避させてピンを下降することにより基板をテーブル面に受け取る。なお、リブとテーブル2の平行出しは、例えばテーブル2の両サイドおよび上流側に、基板1の端面をサイズに対応して押し出しする機構(以下、センタリング装置と称する。)を設けて位置寄せする方法などにより行う。
【0086】
次に、塗布領域3に塗液を塗布する動作に入る。まず、基板位置決めを行う。テーブル2を移動させて、塗布領域3のアライメントマークA1、A2をカメラ17、19の視野に入れる。
【0087】
次に、カメラ17の視野中心を基準にアライメントマークA1のX、Y方向のずれ量を求める。また、カメラ19の視野中心からアライメントマークA2のX、Y方向のずれ量を求める。この2つのX軸方向のずれ量とアライメントマークの間隔YAから基板の傾きと、傾きを修正したときのアライメントマークA1の移動量を求める。算出した結果に応じ、テーブルのθ軸を回転して基板の傾きを修正し、X、Y軸を移動してカメラ17の視野中心にアライメントマークA1を位置合わせする。
【0088】
この時点で、カメラ18の視野内には塗布領域3のR(赤色)塗液塗布溝の基準溝が観測されるので、溝の中心位置を判断し、テーブル2のY軸を移動することで、ノズル9の基準孔と塗布領域3のR塗液塗布溝の基準溝中心とのY軸方向の位置を合わせる。
【0089】
位置決めが終わると塗液の塗布動作に移る。ノズル9の塗液溜め部内への塗液供給が完了していることを確認し(未完の場合は待つ)、テーブル2のX軸を塗布領域3の位置決め位置から下流方向に予めプログラムした速度で移動させる。X軸座標が、あらかじめ設定された塗液吐出位置になったらノズル9から塗液を吐出し、吐出停止位置になれば吐出を停止する。この塗液の吐出および停止は、図1に示した切替バルブ11により行う。これで塗布領域3への塗布が終了したことになる。
続いて、吐出孔56の清掃に入るために清掃装置がノズル9の下まで移動し、清掃する。
【0090】
塗布を終了すると、基板排出に移る。基板1の排出はテーブル2を下流端に移動し、吸着した基板1を解除し、ピンを上昇して移載機により取り出す。移載機は上流側の基板搬入と下流側の排出専用に各1台配置することで、基板排出中に次に塗布する基板が準備できるので、基板搬入から排出までの時間を短縮することができる。基板1を排出した時点で一連の動作が終了する。連続して基板1に塗布する場合には、上記塗液供給から開始する。
【0091】
次に、塗液の供給について説明する。塗液タンク12からノズル9への塗液の供給は、塗布領域3へ塗布していないとき、つまり、塗布領域3への塗布が一旦終了し、次の塗布領域3へ塗布を開始するまでの間のインターバルに行うのが好ましい。
インターバルは、主に、前述した被塗布材とノズル9の位置合わせや、被塗布材の搬入、搬出等に費やされるが、タクトタイムを考えれば、このインターバル内で、ノズル9への塗液供給を済ませるのがなお好ましい。
【実施例】
【0092】
次に、本発明の実施の形態に従って、プラズマディスプレイ背面板に塗液を塗布した場合の実施例を示す。
<実施例1>
被塗布基材であるプラズマディスプレイ背面板は、サイズ990×600mm、アライメント間隔970×580mm、被塗布面には高さ120μmで頂部の幅50μmのリブが、ピッチ300μm(溝幅250μm)で3097本形成されたパネルを用いた。
【0093】
本発明に係る塗液の塗布装置として、図1に示す塗布装置を用いた。ノズルは図8に示す構成のものを用いた。そのノズルの製作は、図9に示す方法を用いた。吐出孔形成部材とマニホールド部材の接合面は半径20mmの円柱面の一部(中心角60°)とそれに繋がる平面部分からなる面とした。そして、該接合面にスプレー式シリコーン系接着剤(商品名:FC−112 RTVシリコーンスプレー、メーカ:ファインケミカルジャパン)を噴き付け、その後、治具を用いて吐出孔形成部材を下部材へ押し付けた。吐出孔形成部材の位置決めは、図5に示したように、ノズル長手方向両端部に1カ所ずつの位置決めピンで行った。その後、中間部材をトラス小ねじで締結することで吐出孔形成部材を固定した。トラス小ねじはノズル長手方向に20mmの間隔で配置した。その後、接着剤が乾燥した後、前記位置決めピンが吐出孔形成部材より突出している部分を切除した。以上の手順で製作したノズルの幅は1000mm、吐出孔数は1032孔、吐出孔ピッチを0.90mm、吐出孔径はφ0.100mm、吐出孔形成部材の厚さは0.4mmとした。マニホールド部材、吐出孔形成部材の材質は、ステンレス鋼製(SUS304)とした。
【0094】
塗液は、蛍光体粉末 赤:(Y,Gd,Eu)BO3(累積平均粒子径2.7μm、比表面積3.1m2/cm3)と有機バインダー(エチルセルロース)と有機溶媒(テルピネオール)を用い、有機成分の各成分を水に60℃で加熱しながら溶解し、その後蛍光体粉末を添加し、混練機で混練して作製した粘度50Pa・sの蛍光体ペーストを用いた。
【0095】
塗布は、まず蛍光体ペーストを塗液タンクからノズル内へ塗液の液面が吐出孔より23mmになるまで供給する。次に、ノズルとテーブルを移動させ、ノズルと基板を位置決めし、ノズル面を基板に近接させ、ノズルと基板を相対移動させながら、圧力供給口から600kPaの圧縮空気を供給することで吐出孔からペーストを押し出し塗布する。基板一枚を塗布終了したところ液面高さは21.5mmを示していたので、23mmになるまで塗液タンクから蛍光体ペーストを供給する。
【0096】
なお、ノズル面を基板表面の隔壁頂部から200μmの距離まで近接させたが、ノズル面が基板に接触することは無かった。
【0097】
以上の塗布動作を100回繰り返したところ、ノズル部材の剥がれや、接合面から蛍光体ペーストの漏れはなく、かつ、塗布品位も非常に優れたプラズマディスプレイ背面板を形成することができた。
<実施例2>
次に、図11に示したノズルを用いた。そのノズルの製作は、図12に示す方法を用いた。吐出孔形成部材とマニホールド部材の接合面は半径20mmの円弧状とそれに繋がる直線部分を合わせた三次元形状とした。そして、該接合面に実施例1と同様のシリコーン系接着剤をスプレーで噴き付け、その後、治具を用いて吐出孔形成部材を下部材へ押し付けた。吐出孔形成部材の位置決めは、図5に示したように、長手方向両端部に1カ所ずつの位置決めピンで行った。その後、中間部材をトラス小ねじで締結することで吐出孔形成部材を固定した。トラス小ねじは長手方向に20mmの間隔で配置した。その後、接着剤が乾燥した後、前記位置決めピンが吐出孔形成部材より突出している部分を切除した。以上の手順で製作したノズルの幅は1000mm、吐出孔数は1032孔、吐出孔ピッチを0.90mm、吐出孔径はφ0.100mmとした。
【0098】
塗布は、実施例1と同様の方法で行った。なお、ノズル面を基板表面の隔壁頂部から200μmの距離まで近接させたが、ノズル面が基板に接触することは無かった。
以上の塗布動作を100回繰り返したところ、ノズル部材の剥がれや、接合面から蛍光体ペーストの漏れはなく、かつ、塗布品位も非常に優れたプラズマディスプレイ背面板を形成することができた。
<比較例1>
図16に示した平面状の接合面を有するノズルを用いた。
これは平面の吐出孔形成部材がマニホールド部材にエポキシ系接着剤で接合されたものである。接合面の幅は10mmである。
【0099】
実施例1と同様に塗布を行った場合、20回目の塗布動作に入り、吐出を行うためにノズル内に600kPaの圧力を付与したところ、吐出孔形成部材が剥がれ、蛍光体ペーストが基板上に飛散した。
<比較例2>
図17に示した平面状の接合面を有するノズルを用いた。平面の吐出孔形成部材がマニホールド部材にエポキシ系接着剤で接合されたものである。図18のノズルは、接合力を高めるために接合面の幅を50mmにしたものである。
【0100】
実施例1と同様に塗布を行った場合、ノズル面が基板と接触し、基板が破損してしまった。これは、ノズルの長手方向の軸に対して、僅かな傾き(θ)が生じていたためであり、クリアランスが極端に狭くなるところが発生し、基板と接触してしまったものである。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、プラズマディスプレイ用部材の製造装置やこれに適用するノズルに限らず、液晶パネルの製造装置やその口金、または、吐出孔がスリット状の開口部である塗布ヘッドなどにも応用することができるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明のノズルを搭載した塗液の塗布装置の概略斜視図である。
【図2】本発明の第1の例のノズルのノズル長手方向の縦断面図である。
【図3】図2のノズルの側面方向の縦断面図である。
【図4】本発明の第2の例のノズルの側面方向の縦断面図である。
【図5】図4のノズルを下側から見た図である。
【図6】本発明の第3の例のノズルの側面方向の縦断面図である。
【図7】本発明の第4の例のノズルの側面方向の縦断面図である。
【図8】本発明の第5の例のノズルの側面方向の縦断面図である。
【図9】図8のノズルの製作手順の一例を示した模式図である。
【図10】図8のノズルの製作手順の他の例を示した模式図である。
【図11】本発明の第6の例のノズルの側面方向の縦断面図である。
【図12】図11のノズルの製作手順の一例を示した模式図である。
【図13】図11のノズルの製作手順の他の例を示した模式図である。
【図14】図8のノズルを下方向から見た図である。
【図15】基板を上から見た一例を示す図である。
【図16】比較例1のノズルの側面方向の縦断面図である。
【図17】比較例2のノズルの側面方向の縦断面図である。:
【符号の説明】
【0103】
1 基板
2 テーブル
3 塗布領域
4 Y軸搬送部
4a、4b リニアガイド
5 X軸搬送部
5a、5b リニアガイド
6 機台
7 支持台
7a、7b リニアガイド
8a、8b Z軸搬送部
9 ノズル
9a ノズル面
10 開閉バルブ
11 切替バルブ
12 塗液タンク
13 気体圧力源
14 Y1搬送部
15 Y2搬送部
16 Y3搬送部
17、18、19 カメラ
22 制御部
23 供給制御部
24 移動制御部
25 移動駆動部
51 塗液溜め部
52 マニホールド部材
52a 上部材
52b 下部材
54 塗液供給口
56 吐出孔
57 パイプ
58 液面センサ
91 塗液
92 接合面
93 吐出孔形成部材
94 ボルト
95 中間部材
96 位置決めピン
97 治具
98 Oリング
200 圧空供給口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出孔から塗液を吐出して基材に塗布するノズルであって、内部に塗液を貯める塗液溜め部を形成するマニホールド部材および複数の吐出孔がノズル長手方向に略一直線状に配置された板状の吐出孔形成部材からなり、該マニホールド部材と該吐出孔形成部材が接合面を介して接合されており、該接合面が曲面または2以上の平面により構成される面であることを特徴とするノズル。
【請求項2】
前記接合面が円柱面の一部または楕円柱面の一部である請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記接合面が複数の平面で構成されてなる請求項1に記載のノズル。
【請求項4】
前記吐出孔形成部材として複数の吐出孔が略一直線状に配置された略平面状の板状材を用い、前記マニホールド部材の接合面に固定することによって接合してなる請求項1〜3に記載のノズル。
【請求項5】
前記板状材が平行度0.1mm以下の板状体である請求項4に記載のノズル。
【請求項6】
基材を固定するテーブル、該基材に対面して設けられ、該基材表面にに塗液を吐出するノズル、および該テーブルと該ノズルを3次元的に相対移動させる移動手段とを備えた塗布装置であって、該ノズルが請求項1ないし5のいずれかに記載のノズルであることを特徴とする塗布装置。
【請求項7】
基材と、該基材表面に対面して設けられた複数の吐出孔を有するノズルとを相対的に移動させ、同時に該吐出孔から塗液を吐出し、該基材表面に塗液を塗布する塗布方法であって、該ノズルが請求項1ないし5のいずれかに記載のノズルであることを特徴とする塗布方法。
【請求項8】
表面にストライプ状の隔壁が形成された基板と、該基板の隔壁が形成された面に対面して設けられた複数の吐出孔を有するノズルとを相対的に移動させ、同時に該吐出孔から赤色、緑色、青色のいずれかの色に発光する蛍光体粉末を含む蛍光体ペーストを吐出し、該基板に蛍光体ペーストを塗布する工程を含むプラズマディスプレイ用部材の製造方法であって、該ノズルが請求項1ないし5のいずれかに記載のノズルであることを特徴とするプラズマディスプレイパネル用部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−80227(P2008−80227A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261934(P2006−261934)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】