説明

ハイドロリック装置のための圧力逃がし弁

本発明は、円錐ベルト車巻き掛け伝動装置を制御するハイドロリック装置のための圧力逃がし弁において、液圧媒体の流れを流入させるための開口絞りと、前記開口絞りを遮断するための遮断円錐体と、前記遮断円錐体を戻し力で前記開口絞りに押し付けて気密に当接させるための、前記遮断円錐体に配属されたばね装置と、前記遮断円錐体及び前記ばね装置を受容し、かつガイドするためのハイドロリックプレートとを有している形式のものに関する。本発明は、前記遮断円錐体に、該遮断円錐体を前記開口絞りに対して軸方向で整列させるための横方向力支持部が配属されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロリック装置のための圧力逃がし弁、並びに円錐ベルト車巻き掛け伝動装置(CVT)を制御するためのハイドロリック装置に関する。また本発明は、このような圧力逃がし弁及びハイドロリック装置によって制御される円錐ベルト車巻き掛け伝動装置、並びにこのような円錐ベルト車巻き掛け伝動装置を備えた自動車に関する。
【0002】
円錐ベルト車巻き掛け伝動装置は、連続的に可変な、特にオートマチック式に行われる変速比変化を有していてよい。
【0003】
このような無段階のオートマチックトランスミッションは、例えば発進装置、前進走行/後退走行装置としての遊星歯車伝動装置、ハイドロリックポンプ、変速機、インタミディエイトシャフト及びディファレンシャルを有している。変速機は、2つの円錐ベルト車対と1つの巻き掛け機構とから成っている。各円錐ベルト車対は、軸方向にシフト可能な1つの第2の円錐ベルト車を有している。この円錐ベルト車対の間で巻き掛け伝動機構例えばスライドベルト、引張チェーン又はベルトが走行する。第2の円錐ベルト車を調節することによって、巻き掛け機構の走行曲率半径が変化し、ひいては無段階のオートマチックトランスミッションの変速比が変化する。
【0004】
このような無段階のオートマチックトランスミッションは、変速機の円錐ベルト車をすべての運転時点において所定の速度に調節できるようにし、しかも十分な基礎押圧力で摩耗することなしにトルクを伝達できるようにするために、部分的に所定の高い圧力レベルを必要とする。全制御は、例えば電気的に操作される比例弁を有する、電気制御装置によって行われる。
【0005】
本発明の課題は、簡単に製造可能で、かつ/または温度の影響を受けにくい、特にヒステリシスの少ない改善された圧力逃がし弁を提供することである。
【0006】
この課題は、特に円錐ベルト車巻き掛け伝動装置を制御するハイドロリック装置のための圧力逃がし弁によって解決された。圧力逃がし弁は、液圧媒体の流れを流入させるための開口絞りと、該開口絞りを遮断するための遮断円錐体と、前記遮断円錐体を戻し力で前記開口絞りに押し付けて気密に当接させるための、前記遮断円錐体に配属されたばね装置と、前記遮断円錐体及び前記ばね装置を受容し、かつガイドするためのハイドロリックプレートとを有している。有利な形式で遮断円錐体に、遮断円錐体を前記開口絞りに対して軸方向で整列させるための軸方向力支持部が配属されている。圧力逃がし弁の運転条件及び/又は圧力逃がし弁の各構成部分の製造公差に応じて、遮断円錐体を前記開口絞りに対して同軸的に整列させる際に不都合な整列エラー生じることがある。整列エラーが生じると、開口絞りの縦軸線と遮断円錐体の縦軸線とは互いに小さい角度を成す。本発明によれば、このような整列エラーは横方向力支持部が設けられていることによって最小限にされる。これによって有利な形式で、逆止弁の正のヒステリシス特性並びに良好なシール性が得られる。公差を減少させるための費用のかかる製作作業は必要ない。
【0007】
圧力逃がし弁の実施例によれば、ばね装置が圧縮コイルばねを有していて、前記横方向力支持部が、圧縮コイルばねの円筒形内周面内に配置されている。有利な形式で、軸方向の整列を得るために、横方向力支持部が内側から圧縮コイルばねに当て付けられるようになっている。
【0008】
圧力逃がし弁の別の実施例によれば、液圧媒体の流れを流出させるための第1の出口開口及び第2の出口開口が設けられている。有利には、圧力逃がし弁の種々異なる出口開口が設けられるので、例えば低い温度レベルにおいては有利には一方の出口開口から流出され、また高い温度レベルにおいては主に他方の出口開口から流出される。有利な形式で例えば、そうでなければヒステリシスに不都合に作用する背圧が減少される。有利な形式で温度変化に強い逆止弁が得られる。
【0009】
圧力逃がし弁の別の実施例によれば、第1の出口開口が遮断円錐体に隣接して配置されている。液圧媒体は、遮断円錐体の気密な遮断円錐面の直ぐ隣の第1の出口開口に直ぐに流れ、この場合、有利な形式で場合によってはこの第1の出口開口に作用する流体力は、特に低い温度において減少される。
【0010】
圧力逃がし弁の別の実施例によれば、第1の出口開口の主流れ方向が、前記開口絞りの主流れ方向に対して所定の角度を成している。流入する液圧媒体の方向は、圧力逃がし弁の開放状態において、第1の出口開口に向かって変向されている。この場合、流れを、真っ直ぐな経路に沿って、つまりほぼ遮断円錐体に沿って流し、再び圧力逃がし弁から流出させることが可能である。
【0011】
圧力逃がし弁の別の実施例によれば、第2の出口開口が前記開口絞りに軸方向で向き合って配置されている。有利な形式で、遮断円錐体とほぼ同軸的な、開口絞りから第2の出口開口に向かう第2の流路が形成される。有利な形式で、この第2の流路によってシール円錐体に及ぼされる流体衝撃並びに横方向力はできるだけ僅かである。この第2の流路は、高い温度レベルにおいて有利に利用され、シール円錐体の軸方向の整列を促進する。
【0012】
圧力逃がし弁の別の実施例によれば、第1の出口開口が、前記開口絞りと前記第2の出口開口との間に配置されている。入口と第2の出口開口との間の流れから、第1の出口開口を介して部分流が分岐される。
【0013】
圧力逃がし弁の別の実施例によれば、遮断円錐体が、円環状の又はつば状の突起を有している。円環状の又はつば状の突起は、ほぼ同軸的な流れによって環流される。
【0014】
圧力逃がし弁の別の実施例によれば、前記突起が、前記遮断円錐体に前記ばね装置を配属させるためのばねストッパを有しているか又は形成している。有利な形式で、この突起のばねストッパを介してばね力が遮断円錐体に伝達される。
【0015】
圧力逃がし弁の別の実施例によれば、前記突起と前記ハイドロリックプレートの円筒形の弁孔との間に環状ギャップが残存している。このハイドロリックプレートとしては、一般的な鋳造プレートが用いられる。弁孔は、簡単な形式でハイドロリックプレートに設けられ、構成部分つまりばね装置及び圧力逃がし弁の遮断円錐体を受容及び/又は実現するために用いられる。環状ギャップは、第2の出口開口に向かって流れるほぼ同軸的な流れに適合される。
【0016】
有利な形式で環状ギャップは絞りのように働き、この場合、環状ギャップの寸法は、有利な形式で、第1の出口開口と第2の出口開口との間の特に温度に関連した流れ比を調節することができる。
【0017】
圧力逃がし弁の別の実施例によれば、ハイドロリックプレートに配属された中間プレートが開口絞りを有している。中間プレートは簡単な形式で、例えば打ち抜き成形部として製作され、例えば一般的な固定手段例えばねじ結合、リベット結合、接着及び/又はこれと類似の固定手段によってハイドロリックプレートに結合される。
【0018】
圧力逃がし弁の別の実施例によれば、弁孔の一方側が中間プレートによって閉鎖されるようになっている。
【0019】
圧力逃がし弁の別の実施例によれば、弁孔は段付きの貫通孔として構成されている。有利な形式で、段部に圧縮コイルばねが支えられていて、ここからばね力が、シール円錐体の外周面の突起に伝達される。また、前記貫通孔は流体路として働き、直径の小さい領域内で第2の出口開口を形成する。
【0020】
また前記課題は、前記圧力逃がし逃がし弁を備えた自動車の可変に調節可能な変速比を有する円錐ベルト車巻き掛け伝動装置を制御するためのハイドロリック装置によって解決された。これによって前記のような利点が得られる。
【0021】
また前記課題は、前記ハイドロリック装置を備えた円錐ベルト車巻き掛け伝動装置によって解決された。これによって、前記のような利点が得られる。
【0022】
さらに前記課題は、前記円錐ベルト車巻き掛け伝動装置を備えた自動車によって解決された。これによって前記のような利点が得られる。
【0023】
本発明のその他の利点、特徴及び詳細を、以下に図示の実施例用いて説明する。同じ、類似の及び/又は機能的に同じ構成部材には、同じ符号を付けた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】円錐ベルト車巻き掛け伝動装置を制御するための、ハイドロリック装置の油圧回路の、圧力逃がし弁を示す断面図である。
【図2】流跡が示されている、図1に示した圧力逃がし弁である。
【図3】図1及び図2に示した圧力逃がし弁の遮断円錐体の斜視図である。
【0025】
図1は、自動車7の円錐ベルト車巻き掛け伝動装置5を制御するためのハイドロリック装置3の油圧回路の一部としての圧力逃がし弁1を示す。圧力逃がし弁1は、遮断円錐体9と、圧縮コイルばね13を備えたばね装置11と、ハイドロリックプレート15と、該ハイドロリックプレート15に固定された中間プレート17とを有している。ハイドロリックプレート15は、液圧作用を有する一般的な鋳造プレートである。中間プレート17は、打ち抜き成形部分として製作されていて、開口絞り19を有しており、この開口絞り19は、遮断円錐体9によって閉鎖可能な、圧力逃がし弁1の入口21を形成している。遮断円錐体9を開口絞り19に押し付けるために、若しくは開口絞り19をシールするために、ばね装置11が、遮断円錐体9に向き合った位置でハイドロリックプレート15に支えられており、それによって、この遮断円錐体9に対して、図1の配列方向で見て下方に作用する戻し力を加える。遮断円錐体9は、第1の円錐形面23を有しており、該第1の円錐形面23は、前記ばね装置11の戻し力によって、前記開口絞り19に当て付けられて気密な当接を形成する。
【0026】
遮断円錐体9は、シール面を形成する前記第1の円錐形面23に軸方向で隣接して、第2の円錐形面25に沿って広がって環状突起27を形成しており、この環状突起27は第1の段部29において半径方向内方に引っ込んでおり、この場合、第1の段部29が、ばね装置11の圧縮コイルばね13のためのストッパ31を形成している。2つの円錐形面23及び25は、異なる円錐角度を有している。第1の円錐形面23の円錐角度は、有利には70°乃至100°である。第1の円錐形面23と第2の円錐形面25とは、第1の円筒形の中間部26を介して互いに対応配置されている。ストッパ31を介して、圧縮コイルばね13の戻し力が遮断円錐体9に加えられる。第2の段部33(図1の整列方向で見て第1に段部29の上にある)において、遮断円錐体9の外周面はさらに、より小さい直径に向かって半径方向で内方に引っ込んでいる。第2の段部33は任意に構成されていてよい。例えば第2の段部は、圧縮コイルばね13のための組み付け補助手段として面取りされていてもよい。遮断円錐体9の上端部35の下側に第3の段部37が配置されており、この場合、前記第3の段部37の上側で、若しくはこの第3の段部37と遮断円錐体9の前記上端部35との間で、遮断円錐体9の直径は横方向力支持部39に向かって増大されている。面取り部及び円錐形面23,25とは無関係に、遮断円錐体9は、複数の段部を有する円筒形の形状及びひいては種々異なる直径を有している。遮断円錐体9は回転切削部として製作される。
【0027】
前記遮断円錐体9、は第1の段部29と、上端部35に配置された横方向力支持部39との間の領域で、圧縮コイルばね13の円筒形内周面41内に配置されている。有利な形式で、横方向力支持部39は圧縮コイルばね13に当接し、圧縮コイルばね内の限定された周方向範囲内で整列されている。これは図1に二重矢印43によって示されている。横方向力支持部39が設けられているので、遮断円錐体9の大きい角度運動は不可能であり、従って横方向力支持部39は、遮断円錐体9の傾斜した同軸整列エラーを、ハイドロリックプレート5の円筒形の孔45の長手方向で制限する。開口絞り19と第1の円錐形面23との間の気密な当接接触は改善される。有利な形式で、横方向力支持部39及び第1の円錐形面23は、長手方向で互いに間隔を保って配置されている。しかも、円筒形内周面41と横方向力支持部39との間に間隔が維持される。この間隔によって制限されて、遮断円錐体9は回転することなしに、開口絞り19の中心軸線と同軸的に整列される。円錐形面23と横方向力支持部39との間の長手方向間隔に基づいて、不都合な流動比においても、僅かに傾斜した同軸整列エラーしか発生しない。何故ならば、このような傾斜した同軸整列エラーは、横方向力支持部39が圧縮コイルばね13の円筒形内周面41に当接することによって制限されるからである。円錐形面23と横方向力支持部39との間の前記長手方向間隔を長くすればする程、前記のような傾斜した同軸整列エラーはより狭く制限される。
【0028】
開口絞り19に隣接して、ハイドロリックプレート15の円筒形の孔45は第1の出口開口47を有している。前記円筒形の孔45は、段付きの貫通孔として構成されていて、図1の整列方向で見て上方に、つまり前記開口絞り19に向き合う位置に、孔直径を減少させる孔段部49を有しており、この孔段部49に、圧力逃がし弁1の第2の出口開口51が形成されている。遮断円錐体9の環状突起27と円筒形の孔45との間に環状ギャプ53が残存している。
【0029】
圧力逃がし弁1は、並列分岐部例えば分岐部59内において、ハイドロリックエネルギ源55に後置接続されている。ハイドロリックエネルギ源55は、ハイドロリック式の消費器(図1に符号57で示されている)に供給するように設計されている。このような消費器は、例えば円錐ベルト車巻き掛け伝動装置の走行シフトに入れるための別の弁装置、例えば円錐ベルト車巻き掛け伝動装置のパーキングロックを入れるか若しくは解除するための別の弁装置、円錐ベルト車巻き掛け伝動装置の伝達比を調節するための別の弁装置、並びに円錐ベルト車巻き掛け伝動装置及び/又は別の消費器の押圧力を調節若しくは維持するための別の弁装置である。圧力逃がし弁1は、分岐管路59を介して圧力逃がし弁1の開口絞り19に対応配置されていて、開放圧力を越えた時に遮断円錐体9をばね装置11の戻し力に抗して上方に移動させるように、つまり流れる液圧媒体のための開口絞り19を開放させるように、対応配置されている。これによって、分岐管路59内に所望の減圧が生ぜしめられる。付加的に、分岐管路59に、図1では符号61で示された容積流調節弁の圧力戻し管路が接続されている。容積流調節弁61の圧力戻し管路は、付加的に、圧力逃がし弁1の開放時に、消費器57にガイドされた、ハイドロリックエネルギ源55の容積流を制限し、それによって超過圧力に抗するように作用する。
【0030】
第1の出口開口47並びに第2の出口開口51は、下流側でそれぞれ円錐ベルト車巻き掛け伝動装置5のハイドロリック装置3のタンク63に対応配置されている。しかも、図2に示した圧力逃がし弁1は、開放した状態が示されており、この場合、遮断円錐体9は持ち上がっていて、開口絞り19が開放されている。流跡65は分割され、この場合流跡65の第1の部分は、開口絞り19を通って、図1の方向で見て、第1の出口開口47に向かって右に変向される。残りの流跡は、円筒形の孔45若しくは遮断円錐体9の整列方向に対してほぼ同軸的に、環状ギャップ53を通って流れ、圧縮コイルばね13の円筒形内周面41に沿って、横方向力支持部39の傍らを通り、そして第2の出口開口51を通って流れる。
【0031】
図3は、図1及び図2に示した圧力逃がし弁1の遮断円錐体9の、斜め下から見た斜視図を示す。第1の円錐形面23が示されており、この場合、環状のシール領域67が示されている。この環状のシール領域67は、開口絞り19と気密に当接接触している。横方向力支持部39は、遮断円錐体9の上端部に面取り部69を有している。この面取り部69は、遮断円錐体9の上部部分を圧縮コイルばね13の円筒形内周面41内に導入するための組み立て補助手段として用いられる。
【0032】
有利な形式で、圧力逃がし弁1は、減少されたヒステリシス特性を有している。圧力逃がし弁1は、105bar(バール)の作業範囲で働くように設計されている。有利な形式で、圧力逃がし弁1はハイドロリックプレート15内に組み込まれている。付加的なスリーブは必要ない。
【0033】
有利な形式で、ハイドロリックプレート15及び中間プレート17並びに遮断円錐体9内において、発生した製造公差は、特に横方向力支持部39によって補償される。圧力逃がし弁1は、遮断円錐体9とばね装置11とハイドロリックプレート15並びに中間プレート17とから構成されている。有利な形式で、比較的大きい同軸的な偏差をさらに補償する必要がある。さらに、横方向力及び/又は幾何学的な不正確さによって場合によっては発生する傾きは避けられ、かつ/または補償される。このために、第1の傾斜面23の角度は、自動的に公差補償が得られるように、開口絞り19に適合される。また、大きすぎる同軸角度のずれは、横方向支持部39によって避けられる。
【0034】
圧力逃がし弁1は、4つの関連した運転ポイントに設定される。つまり図2に示した開放状態、及び図1に示した閉鎖状態において、それぞれ高い温度及び低い温度に設定される。
【0035】
低い温度においては、ハイドロリックエネルギ源55によって供給された液圧媒体は、比較的高い粘性を有している。圧力逃がし弁1の開放後に、弁内室内つまり円筒形の孔45内に絞り作用によって比較的高い背圧が発生する。この背圧は、有利には第1の出口開口47によって減圧される。有利な形式で、液圧媒体の粘性が比較的高いにも拘わらず圧力逃がし弁1は、圧縮コイルばね13のリセット力によって再び適当な時期に閉鎖される。
【0036】
第1の出口開口47によって迅速に減圧されることによって、圧力逃がし弁の閉鎖特性は改善され、この場合、閉鎖点におけるヒステリシスは小さい。
【0037】
高い温度においては、比較的低い粘性によって液圧媒体の流れ速度は高くなる。このような高い流れ速度においては、第1の出口開口47に向かって変向された流れが、比較的大きい衝撃力を遮断円錐体9の特に円錐形面23及び25に加える。この場合、横方向力が発生し、遮断円錐体9は円筒形の孔45の壁部に向かって押し付けられる。従って、圧力逃がし弁の閉鎖点は、より低い方の圧力に向かってシフトする。これによって、基本的に暖か温度においてより大きいヒステリシスが得られる。有利な形式でこのような影響は、第2の出口開口51によって低減される。冷たい温度においては、非常にわずかな液圧媒体が第2の出口開口51を通って流れる。高い温度において、流れは、第1の出口開口47に向かう第1の流れと、第2の出口開口51に向かう第2の流れとに大きく分割される。これによって有利な形式で、圧力逃がし弁1は若しくは遮断円錐体9の位置は開口絞り19を介して安定化され、この際に有利な形式で衝撃力は相応に減少される。
【0038】
有利な形式で第1の出口開口47及び第2の出口開口51の流過横断面及び/又は流体抵抗は、高い温度において第1の出口開口47に負圧が形成されないか又は比較的低い負圧だけが形成される程度の量の主流だけが第2の出口開口51に向かって分岐されるように、互いに適合されている。このような形式で負圧が避けられることによって、遮断円錐体9は、円筒形の孔45の内周面に若しくは圧縮コイルばね13の円筒形内周面41に押し当てられ、ひいては同様にヒステリシス特性に良好な影響を及ぼすことができる。
【0039】
第1の円錐形面23の円錐角度は、有利には70°〜100°の間である。この角度範囲内で、有利には開口絞り19に対する遮断円錐体9の前記自動調節が得られる。
【0040】
有利な形式で、圧力逃がし弁1は安全弁としてハイドロリック装置3の液圧制御装置内に組み込まれ、この際に付加的なケーシングは必要ない。有利な形式で、4つに分割された構成部分(遮断円錐体9、圧縮コイルばね13、ハイドロリックプレート15、中間プレート17)の製造公差は補償される。有利な形式で、構成部分のこのように配置によって、公差が存在しても、良好なヒステリシス特性並びに良好な安定性が得られる。
【符号の説明】
【0041】
1 圧力逃がし弁、 3 ハイドロリック装置、 5 円錐ベルト車巻き掛け伝動装置、 7 自動車、 9 遮断円錐体、 11 ばね装置、 13 圧縮コイルばね、 15 ハイドロリックプレート、 17 中間プレート、 19 開口絞り、 21 入口、 23 第1の円錐面、 25 第2の円錐面、 26 第1の中間部、 27 環状突起、 29 第1の段部、 31 ストッパ、 33 第2の段部、 35 上端部、 37 第3の段部、 39 横方向力支持部、41 円筒形内周面、 43 二重矢印、 45 円筒形の孔、 47 第1の出口開口、 49 直径の減少された孔段部、 51 第2の出口開口、 53 環状ギャップ、 55 ハイドロリックエネルギ源、 57 消費器、 59 分岐管路、 61 容積流調節弁、 63 タンク、 65 流跡、 67 シール領域、 69 面取り部(傾斜面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殊に円錐ベルト車巻き掛け伝動装置(5)を制御するためのハイドロリック装置(3)用の圧力逃がし弁(1)において、
液圧媒体の流れを流入させるための開口絞り(19)と、
前記開口絞り(19)を遮断するための遮断円錐体(9)と、
前記遮断円錐体(9)を戻し力で前記開口絞り(19)に押し付けて気密に当接させるための、前記遮断円錐体(9)に配属されたばね装置(11)と、
前記遮断円錐体(19)及び前記ばね装置(11)を受容し、かつガイドするためのハイドロリックプレート(15)と、を有しており、
前記遮断円錐体(9)に、該遮断円錐体(9)を前記開口絞り(19)に対して軸方向で整列させるための横方向力支持部(39)が配属されている、
ことを特徴とする、ハイドロリック装置のための圧力逃がし弁。
【請求項2】
前記ばね装置(11)が圧縮コイルばね(13)を有していて、前記横方向力支持部(39)が、前記圧縮コイルばね(13)の円筒形内周面内に配置されている、請求項1記載の圧力逃がし弁。
【請求項3】
液圧媒体の流れを流出させるための第1の出口開口(47)及び第2の出口開口(51)が設けられている、請求項1又は2記載の圧力逃がし弁。
【請求項4】
前記第1の出口開口(47)が、前記遮断円錐体(9)に隣接して、殊に該遮断円錐体(9)の第1の円錐面(23)に隣接して配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の圧力逃がし弁。
【請求項5】
前記第1の出口開口(47)の主流れ方向が、前記開口絞り(19)の主流れ方向に対して所定の角度を成している、請求項3又は4記載の圧力逃がし弁。
【請求項6】
前記第2の出口開口(51)が前記開口絞り(19)に軸方向で向き合って配置されている、請求項3から5までのいずれか1項記載の圧力逃がし弁。
【請求項7】
前記第1の出口開口(47)が、前記開口絞り(19)と前記第2の出口開口(51)との間に配置されている、請求項3から6までのいずれか1項記載の圧力逃がし弁。
【請求項8】
前記遮断円錐体(9)が、円環状又はつば状の突起(27)を有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の圧力逃がし弁。
【請求項9】
前記突起(27)が、前記遮断円錐体(9)に前記ばね装置(11)を配属するためのばねストッパ(31)を有しているか又は形成している、請求項1から8までのいずれか1項記載の圧力逃がし弁。
【請求項10】
前記突起(27)と前記ハイドロリックプレート(15)の円筒形の弁孔(45)との間に環状ギャップ(53)が残存している、請求項8又は9記載の圧力逃がし弁。
【請求項11】
前記ハイドロリックプレート(15)に、開口絞り(19)を有する中間プレート(17)が配属されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の圧力逃がし弁。
【請求項12】
前記弁孔(45)の片側が前記中間プレート(17)によって閉鎖されている、請求項10又は11記載の圧力逃がし弁。
【請求項13】
前記弁孔(45)が段付きの貫通孔として構成されている、請求項10から12までのいずれか1項記載の圧力逃がし弁。
【請求項14】
自動車の可変に調節可能な変速比を有する円錐ベルト車巻き掛け伝動装置(5)を制御するためのハイドロリック装置(3)において、請求項1から13までのいずれか1項記載の圧力逃がし弁(1)を有することを特徴とする、ハイドロリック装置(3)。
【請求項15】
円錐ベルト車巻き掛け伝動装置(5)において、請求項14記載のハイドロリック装置(3)を有することを特徴とする、円錐ベルト車巻き掛け伝動装置(5)。
【請求項16】
自動車(7)において、請求項15記載の円錐ベルト車巻き掛け伝動装置(5)を有することを特徴とする、自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−533821(P2010−533821A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516362(P2010−516362)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【国際出願番号】PCT/DE2008/001052
【国際公開番号】WO2009/010033
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany
【Fターム(参考)】