説明

ハイブリッド油圧ショベル

【課題】回生モータ及び電動発電機を大型化させることなく、回生エネルギーの回収効率を向上させる。
【解決手段】コントロールバルブ14の切換え操作によりブームシリンダ8を駆動するとともに、ブームシリンダ8の戻り油により回生モータを回転してブームエネルギーを回収するハイブリッド油圧ショベルにおいて、ブームシリンダ8に対してコントロールバルブ14と回生モータが並列に接続されているとともに、回生モータの上流側に回生弁28が設けられ、回生弁28の開口量は、コントローラ20からの指令信号により電磁比例弁31を介してストローク変位して可変制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド油圧ショベルに関するものであり、特に、ブームシリンダの戻り油のエネルギーを回収できるようにしたハイブリッド油圧ショベルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ブームを含む作業機が搭載されたハイブリッド油圧ショベルにおいては、ブームを動作させるブームシリンダと、該ブームシリンダにコントロールバルブ(方向切換弁)を介して圧油を供給する油圧ポンプと、前記ブームシリンダに接続された回生モータと、該回生モータに連結された電動発電機とを備え、ブームシリンダの戻り油が有するブームエネルギー(ブームの位置エネルギー)を回収できるように構成されている。
【0003】
この場合、ブームシリンダの戻り油により回生モータを回転駆動し、このとき得られた回転エネルギーを電動発電機によって電力に変換して回収している(例えば、特許文献1,2又は3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−190845号公報
【特許文献2】特願2004−143203号公報
【特許文献3】特開2004−247251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、回生モータはブームシリンダのボトム室に接続され、ブームシリンダのボトム室の油圧、即ち、ブームボトム圧により回転駆動される。この場合、ブーム下げ動作時には、ブームシリンダから最大で油圧ポンプ2台分の多量の戻り油が回生モータ側に流れる。従って、前記多量の戻り油を円滑に処理するには、回生モータの容積を大きくして該回生モータにおける最大流量を増大させる必要がある。しかし、回生モータの容積を大きくすると、該回生モータの大型化と設備コストの高騰を招く。
【0006】
また、回生モータに流れる戻り油の流量が増加すると、それに応じて負荷圧が増大するので、該回生モータの圧力変動も広範囲(0〜35MPa)になり、その結果、電動発電機に発生するトルクの変動範囲も広くなる。この広いトルク変動範囲に対応するためには、電動発電機の高出力化が不可欠になるが、この場合には電動発電機の大型化と設備コストの高騰を招く。
【0007】
さらに、通常の掘削作業では、ブーム下げ動作時のポンプ流量は最大流量に対して6割程度の流量に設定すれば良い。依って、効率的なエネルギー回収を確保するには、回生モータの流量もポンプ流量に応じて設定すれば良く、最大流量に設定する必要はない。
【0008】
そこで、回生モータ及び電動発電機を大型化させることなく、回生エネルギーの回収効率を向上させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、コントロールバルブの切換え操作によりブームシリンダを駆動するとともに、該ブームシリ
ンダの戻り油により回生モータを回転してブームエネルギーを回収するハイブリッド油圧ショベルにおいて、前記ブームシリンダに対して前記コントロールバルブと前記回生モータが並列に接続されているとともに、該回生モータの上流側に回生弁が設けられ、該回生弁は、コントローラからの指令信号により電磁比例弁を介してストローク変位することにより、該回生弁の開口量が可変制御されるハイブリッド油圧ショベルを提供する。
【0010】
この構成によれば、回生モータの上流側に設けた回生弁の開口量は、コントローラからの指令信号の大きさに応じて可変制御される。依って、ブームシリンダからの戻り油の流量に応じて回生弁の開口量を制御することにより、回生モータの流量が前記戻り油の流量に対応して調整される。
【0011】
請求項2記載の発明は、ブーム下げ操作量が大きいときには、前記回生弁と前記コントロールバルブの双方の開口量制御にて対応する請求項1記載のハイブリッド油圧ショベルを提供する。
【0012】
この構成によれば、ブーム下げ操作量が小さい場合には、回生弁若しくはコントロールバルブの一方の開口量の制御のみで対応するが、前記操作量が大きくなったときは、回生弁とコントロールバルブの双方の開口量制御にて対応する。依って、ブームシリンダからの戻り油の流量が最大量になっても、回生モータの最大流量はコントロールバルブの開口量の分だけ減少する。
【0013】
請求項3記載の発明は、上記回生モータの負荷圧が高いときには、上記回生弁の開口量は小さくなるように絞り制御される請求項1又は2記載のハイブリッド油圧ショベルを提供する。
【0014】
この構成によれば、回生モータが高負荷である場合には、回生弁の開口量が絞られる。そのため、回生モータに向かう戻り油の流量が減少して、該回生モータの負荷圧が低減する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明は、ブームシリンダに対してコントロールバルブと回生モータを並列に接続してブームシリンダの戻り油を分流させることにより、回生モータの最大流量が減少するのみならず、回生弁の開口量制御によって、電動発電機のトルクが許容値を超えないように、回生モータの流量を適切に可変制御できる。斯くして、回生モータの圧力変動を抑制して該回生モータ及び電動発電機を大型化させることなく、エネルギーの回収効率を向上させることができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、ブーム下げ操作量の大小に応じて、回生弁及び/又はコントロールバルブの開口量制御にて自在に対応できるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、例えば、通常の掘削作業時には、ブームシリンダの戻り油の流量に応じて回生モータの流量を制御でき、回生弁における圧力損失を効率良く防止することができる。又、前記戻り油の流量が最大量になっても、コントロールバルブの開口量の分だけ、回生モータの最大流量が減少するので、回生モータの一層の小型化を図ることができる。
【0017】
請求項3記載の発明は、ブームを急停止させた時でも、回生弁の開口量を絞ることにより、回生モータの負荷圧を低減できるので、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、回生モータの圧力変動範囲及び電動発電機のトルク変動範囲を従来例に比べて小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る一実施例を示し、ハイブリッド油圧ショベルの側面図。
【図2】一実施例に係るハイブリッド油圧ショベルのエネルギー回生制御油圧回路図。
【図3】一実施例に係るコントローラの入力信号又は出力信号を説明する解説図。
【図4】一実施例に係るバルブ開口特性線図であり、(a)はコントロールバルブの開口特性線図、(b)は回生弁の開口特性線図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、回生モータ及び電動発電機を大型化させることなく、回生エネルギーの回収効率を向上させるという目的を達成するために、コントロールバルブの切換え操作によりブームシリンダを駆動するとともに、該ブームシリンダの戻り油により回生モータを回転してブームエネルギーを回収するハイブリッド油圧ショベルにおいて、前記ブームシリンダに対して前記コントロールバルブと前記回生モータが並列に接続されているとともに、該回生モータの上流側に回生弁が設けられ、該回生弁は、コントローラからの指令信号により電磁比例弁を介してストローク変位することにより、該回生弁の開口量が可変制御されることによって実現した。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明の好適な実施例を図1乃至図4に基づいて説明する。図1は本実施例に係るハイブリッド駆動方式の油圧ショベル1を示し、該油圧ショベル1の下部走行体2上には旋回機構3を介して上部旋回体4が搭載され、又、上部旋回体4にはブーム5を含む作業部が搭載されている。
【0021】
即ち、上部旋回体4の前方中央部にはブーム5が俯仰動可能に取り付けられ、更に、ブーム5の先端部にアーム6が上下回動自在に取り付けられているとともに、該アーム6の先端部にバケット7が取り付けられている。これらブーム5、アーム6及びバケット7は、ブームシリンダ8、アームシリンダ9及びバケットシリンダ10により夫々駆動される。
【0022】
図2は本発明に係るエネルギー回生制御油圧回路を示す。同図において、11は上部旋回体4に搭載されたエンジンであり、該エンジン11の出力軸には可変容量型の油圧ポンプ12が連結されている。該油圧ポンプ12には高圧油圧ライン13を介して、圧油の方向を切り換える3位置6ポート型パイロット操作式のコントロールバルブ14が接続されていると共に、該コントロールバルブ14の下流側には油路15a,15bを介してブームシリンダ8,8が接続されている。従って、前記油圧ポンプ12からの吐出油がコントロールバルブ14を介してブームシリンダ8,8に供給されることにより、該ブームシリンダ8,8が伸長・収縮駆動される。
【0023】
前記コントロールバルブ14の流入口側にはP1ポート、P2ポート及びTnポートが設けられている。また、コントロールバルブ14の流出口側には、Bポート、Sポート及びTポートが設けられている。本実施例では、操作レバー17によりリモコン弁18をブーム上げ位置又はブーム下げ位置に操作することによって、コントロールバルブ14は中立位置からブーム上げ位置(イ)又はブーム下げ位置(ロ)に切り換えられる。
【0024】
コントロールバルブ14が中立位置にあるときには、P1ポートはBポートに接続され、且つ、P2ポート、Tnポート、Sポート及びTポートはブロック状態にあるが、ブーム上げ位置(イ)に切り換えられると、P1ポートはBポートに対して遮断されるとともに、P2ポート及びTnポートは夫々Tポート及びSポートに接続される。又、コントロールバルブ14がブーム下げ位置(ロ)に切り換えられると、P2ポートはSポートに接続されると共にTnポートはTポートに接続される。
【0025】
尚、ブーム下げ操作を行った時、リモコン弁18のパイロットライン16にブ−ム下げパイロット圧が発生する。このブ−ム下げパイロット圧は、圧力センサ19により検出されてコントローラ20に出力される。そして、コントローラ20に前記パイロット圧信号が入力されると、コントローラ20はブーム回生信号を出力する。
【0026】
本実施例では、ブームシリンダ8,8のボトム室22,22に接続した油路15bの途中には、逆流防止機能を有するホールディング弁25が介設されている。ここで、ブーム下げ操作がなされていない時には、ブームシリンダ8,8のボトム室22,22からの排出油は、ホールディング弁25を通過することができないため、ボトム室22,22の保持圧が低下しないように維持される。
【0027】
しかし、ブーム下げ操作がなされた時には、このとき発生するブーム下げパイロット圧に基づいて、ホールディング弁25が開放状態に切り換えられるため、ボトム室22,22からの排出油はホールディング弁25を通過できるようになる。
【0028】
また、ホールディング弁25とコントロールバルブ14を接続する油路15bの途中には分岐点26が設けられ、該分岐点26にはブーム戻り油ライン27が接続されている。
【0029】
そして、ブーム戻り油ライン27の下流側には回生弁28が設置されている。更に、回生弁28の下流側に回生油路29が接続されている。
【0030】
本発明に係る回生弁28としては、2位置4ポート型の方向切換弁が採択されている。回生弁28はノーマル位置ではブロック状態にあるが、オフセット位置では、ブーム戻り油ライン27と回生油路29が互いに連通する。また、回生弁28の制御ポート30には、該回生弁28をオフセット位置に切り換える電磁比例弁31が接続されている。この電磁比例弁31のソレノイドにはコントローラ20が接続され、該コントローラ20からの指令信号の電流値に基づいて電磁比例弁31の動作量を変化させることにより、回生弁28のスプールの開口量が自在に可変制御される。
【0031】
さらに、前記回生油路29の途中には回生モータ32が設置され、該回生モータ32は、ブームシリンダ8,8のボトム室22,22からの戻り油を油圧源として回転される。依って、該戻り油の有するブームエネルギーは回生モータ32により回転エネルギーに変換される。
【0032】
前記回生モータ32の駆動軸には電動発電機33が連結されている。この電動発電機33の回転軸には、該回転軸の回転位置及び回転角度を検出するレゾルバ(図示せず)と、該回転軸に制動力を加えるメカニカルブレーキ及び減速機(図示せず)とが設けられている。該電動発電機33は、回生モータ32と一体的に回動することにより、回生モータ32の回転エネルギーを回生発電に変換する。
【0033】
更に、電動発電機33にはインバータ34が接続されているとともに、該インバータ34にバッテリ(図示せず)が接続されている。依って、電動発電機33により回生発電された電力は、インバータ34を介してバッテリに随時蓄電できるように構成されている。
【0034】
本実施例では、ブームシリンダ8,8のボトム室22,22からの戻り油が回生油路29を通過する際、該回生油路29に油圧が発生するが、該油圧は、圧力センサ35により検出されてコントローラ20に出力される。又、図3に示すように、コントローラ20には、前記回生モータ32の回転速度を検出する回転センサ39が接続され、該回転センサ39による検出値はコントローラ20に逐次入力される。
【0035】
次に、本実施例によるエネルギー回生制御回路の作用について説明する。いま、操作レバー17によりリモコン弁18をブーム上げ位置側に操作すると、コントロールバルブ14が中立位置からブーム上げ位置(イ)に切り換わる。その結果、油圧ポンプ12からブームシリンダ8,8のボトム室22,22に圧油が供給されるとともに、ロッド室23,23の圧油が油タンク36に戻される。これにより、ブームシリンダ8,8が伸長して上記ブーム5が上げ動作を行う。
【0036】
一方、リモコン弁18をブーム下げ位置側に操作すると、コントロールバルブ14がブーム下げ位置(ロ)に切り換わり、このとき生ずるブ−ム下げパイロット圧は、圧力センサ19により検出されてコントローラ20に送信される。
【0037】
そして、コントローラ20はブ−ム下げパイロット圧信号に基づき、電磁比例弁31を介して回生弁28をオフセット位置に切り換えるとともに、ホールディング弁25が開放状態に切り換えられる。
【0038】
従って、油圧ポンプ12からの吐出油がブームシリンダ8,8のロッド室23,23に供給されると共に、ボトム室22,22からの戻り油は、ホールディング弁25、回生弁28及び回生モータ32を通過して油タンク37に排出される。これにより、ブームシリンダ8,8が短縮してブーム5が下げ動作を行う。
【0039】
ここで、前記ボトム室22,22からの戻り油が回生弁28を経て回生モータ32を通過する際、該戻り油を油圧源として回生モータ32が回転駆動してエネルギーを発生させる。この回転エネルギーは電動発電機33により電力に変換される。そして、電動発電機33により変換された電力は、インバータ34を介してバッテリに蓄電される。
【0040】
本実施例では、回生弁28のスプールの開口量はコントローラ20により可変制御される。例えば、ブーム上げ動作時に、ブームボトム圧が回生モータ32の制動可能負荷圧を超えた場合は、回生弁28の開口量が小さくなるように絞り制御を行う。依って、回生モータ32に高い負荷圧が作用することを抑止し得る。
【0041】
また、前記回生弁28の開口量は、コントローラ20からの指令信号により電磁比例弁31を介して、アナログ方式にて所要値に制御される。すなわち、電磁比例弁31はコントローラ20の指令信号(電流値)の大きさに応じてストローク動作し、それに対応して回生弁28のスプール開口量が可変調整される。そのため、回生弁28の初期開口量は、通常の掘削動作時における油圧負荷に応じた最適値に容易に調整できる。
【0042】
ここに、初期開口量とは、回生弁28のスプール開口量のみでブーム5の降下速度を制御するときの従来例における開口面積に相当するものである。本実施例でコントロールバルブ14と回生弁28とに担当させることにより、回生モータ32に作用する負荷圧は極めて低圧になる。
【0043】
本発明に係るエネルギー回生制御油圧システムは従来例とは異なり、ブームシリンダ8の戻り油をコントロールバルブ14側と回生弁28側に流量分流することにより、ポンプ2台分の戻り油の最大流量に対応して処理することができる。
【0044】
そして、ブーム操作量が小さくてブームシリンダ8から回生モータ32に向かう戻り油の流量が少ない場合、即ち、回生モータ32で流量制御可能な流量範囲においては回生モータ32の開口量のみで対応するが、ブーム下げ操作量が増大して、回生モータ32で流量制御可能な流量範囲を超えたときは、回生モータの開口量制御に加えて、コントロール
バルブ14の開口量を制御して前記戻り油の排出処理を補助する。
【0045】
また、ブームシリンダ8のボトム室の負荷圧は通常15MPa以下であるが、ブーム下げ動作時に、15MPa以上の高圧が発生した時は、高圧負荷信号に基づきコントローラ20は、回生弁28の開口量を小さく絞るように制御する。これにより、前記高圧発生に伴う回生モータ32の負荷圧を低減させる。
【0046】
本発明は、回生モータ32の負荷圧が所定値を超える高圧以外では、回生弁28の開口量制御を増大させて圧力損失の発生を未然に防止できる。尚、高圧負荷の検出は、圧力センサ35によるブームボトム圧(又はモータ負荷圧)の検出、或いはインバータ34のトルク指令信号(トルク発生量)により実行し、その結果、オーバートルクの場合には、コントローラ20から絞り指令信号を電磁比例弁31に出力して回生弁28の開口量を絞る。
【0047】
ここで、吊り作業等の微速操作の対応については、回生弁28のみの開口量制御によって実行し、回生弁28の開口後に前記回生モータ32への速度指令を行うことにより、吊り作業等の微速操作性を向上させる。
【0048】
なお、回生モータ32の漏洩流量により回生弁28のスプール開口量が小さい時は、回生弁28のスプール開口にて圧力降下が生ずるため、回生モータ32に発生するトルクは小さくなる。
【0049】
本実施例では、上記初期開口量は、コントロールバルブ14と回生弁28の2つのスプールで実現できる。この場合、初期開口量のほぼ半分(前半)までの領域は回生弁28の開口量で対応し、それ以降のほぼ後半領域についてはコントロールバルブ14の開口制御にても対応する。
【0050】
又、本実施例では、コントロールバルブ14の開口特性線図と回生弁28の開口特性線図との関係は、図4(a)、(b)に示すように設定することもできる。即ち、コントロールバルブ14では、ストローク量(パイロット圧Piに対応する量)が0から増加するに伴い、開口量も漸次増大するが、回生弁28の開口量増加の制御は、ストローク量(パイロット圧PDに対応する量)が所定値Sになったときに開始される。依って、開口量制御は、流量が所定値Sに応じた分だけ増加した領域から、コントロールバルブ14のみによる開口量制御に加えて、回生弁28による開口量制御も加わるので、操作レバー17による吊り作業時などにおける微小操作性が一層向上することとなる。
【0051】
如上の如く本発明によると、ブームシリンダに対してコントロールバルブと回生モータを並列に接続してブームシリンダの戻り油を分流させることにより、回生モータの最大流量が大幅に減少する。
【0052】
又、回生モータの上流側に設けた回生弁の開口量は、コントローラからの指令信号の大きさに応じて可変制御される。依って、ブームシリンダからの戻り油の流量に応じて回生弁の開口量を制御することにより、回生モータの流量を前記戻り油の流量に対応して可変調整できる。
【0053】
斯くして、電動発電機のトルクが許容値を超えないように、回生モータの流量を常に最適量に制御でき、その結果、回生モータの大きな圧力変動を抑制して、該回生モータ及び電動発電機を大型化させることなく、エネルギーの回収効率を向上させることができる。
【0054】
更に、ブーム下げ操作量が小さい場合には、回生弁若しくはコントロールバルブの一方
の開口量制御のみで対応するが、前記操作量が大きくなったときは、回生弁とコントロールバルブの双方の開口量制御にて対応する。例えば、通常の掘削作業時には、ブームシリンダの戻り油の流量に応じて回生モータの流量を制御できるので、回生弁における圧損発生を効率良く防止することができる。
【0055】
又、前記戻り油の流量が最大量になっても、コントロールバルブの開口量の分だけ、回生モータの最大流量が減少するので、回生モータの一層の小型化を図ることができる。
本実施例では、回生モータが高負荷であるとき、例えば、ブームを急停止させた時でも、回生弁の開口量を絞ることにより、回生モータに向かう戻り油の流量を減少させることができる。従って、回生モータの圧力変動及び電動発電機のトルク変動を効果的に抑制することができる。
【0056】
本実施例では、回生モータの低速領域では、コントローラから速度指令を実行しない(速度ゼロ)状態で回生モータが回転駆動される。依って、回生弁の開口後に、回生モータの速度指令を直ちに立ち上げて、電動発電機による発電動作を迅速に開始させることができる。
【0057】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、コントロールバルブの切り換えによりブームシリンダを駆動するとともに、該ブームシリンダの戻り油により回生モータを駆動する建設機械であれば全て適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 ハイブリッド駆動式油圧ショベル
5 ブーム
8 ブームシリンダ
11 エンジン
12 油圧ポンプ
14 コントロールバルブ
20 コントローラ
25 ホールディング弁
28 回生弁
31 電磁比例弁
32 回生モータ
33 電動発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントロールバルブの切換え操作によりブームシリンダを駆動するとともに、該ブームシリンダの戻り油により回生モータを回転してブームエネルギーを回収するハイブリッド油圧ショベルにおいて、
前記ブームシリンダに対して前記コントロールバルブと前記回生モータが並列に接続されているとともに、該回生モータの上流側に回生弁が設けられ、該回生弁は、コントローラからの指令信号により電磁比例弁を介してストローク変位することにより、該回生弁の開口量が可変制御されることを特徴とするハイブリッド油圧ショベル。
【請求項2】
ブーム下げ操作量が大きいときには、前記回生弁と前記コントロールバルブの双方の開口量制御にて対応することを特徴とする請求項1記載のハイブリッド油圧ショベル。
【請求項3】
上記回生モータの負荷圧が高いときには、上記回生弁の開口量は小さくなるように絞り制御されることを特徴とする請求項1又は2記載のハイブリッド油圧ショベル。
















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−97844(P2012−97844A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246581(P2010−246581)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】