説明

ハニカム構造体

【課題】再生効率に優れたセラミックフィルタを得られるハニカム構造体を提供すること。
【解決手段】本発明のハニカム構造体1は、隔壁により区画された軸方向に伸びる多数のセルをもつハニカム構造体1において、ハニカム構造体1は、セルののびる方向に垂直な断面において、熱伝導率が他の部分よりも小さくなるように形成された外周部6をもち、かつ外周部6がチタン酸アルミニウムを主成分とするセラミックスよりなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関し、詳しくは、保温効果にすぐれた触媒を提供できるハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、ボイラー、化学反応機器、燃料電池用改質器等の触媒作用を利用する触媒用担体、排ガス中の微粒子(特にディーゼルエンジンからの排気ガス中の微粒子物質(PM))の捕集フィルタ(以下、DPFという)等には、セラミックス製のハニカム構造体の表面に触媒金属(貴金属)をもつ触媒層をもつ排ガス浄化用触媒が用いられている。
【0003】
セラミックス製のハニカム構造体は、一般に、多孔質体よりなり、隔壁によって区画された流体の流路となる複数のセルを有している。そして、端面が市松模様状を呈するように、隣接するセルが互いに反対側となる一方の端部で封止された構造を有している。
【0004】
このような構造のハニカム構造体は、被処理流体が流入孔側端面が封止されていないセル、即ち流出孔側端面で端部が封止されているセルに流入し、多孔質の隔壁を通って隣のセル、即ち、流入孔側端面で端部が封止され、流出孔側端面が封止されていないセルから排出される。この際、隔壁がフィルタとなり、例えば、DPFとして使用した場合には、ディーゼルエンジンから排出される微粒子物質(PM)等が隔壁に捕捉され隔壁上に堆積していた。
【0005】
このようにDPFに使用されるハニカム構造体は、排気ガスの急激な温度変化や局所的な発熱によってハニカム構造体の温度分布が不均一となり、ハニカム構造体にクラックを生ずる等の問題があった。具体的には、排ガス浄化用触媒は、セルに高温の排気ガスを流入させ、排気ガス中の有害成分を除去している。つまり、高温の排気ガスにより排ガス浄化用触媒が加熱される。この加熱によりハニカム構造体が熱膨張を生じ、クラックが発生する。また、DPFとして使用する場合には、堆積したPMを燃焼させて除去し再生することが必要であり、この燃焼時に局所的な高温化がおこり、再生温度の不均一化による再生効率の低下及び大きな熱応力によるクラックが発生し易かった。
【0006】
また、車両のDPFは、一般的には、エンジンの排気マニホールドに連結された排気管の管路中に金属製ケーシングを設け、その中にハニカム構造体を配置した構成を有している。
【0007】
このような構成のDPFは、ハニカム構造体の外周部からケーシング側に熱が逃げやすく、中心部に比べて外周部のほうが低温になる傾向にある。ハニカム構造体に部分的な温度差が発生すると、温度差に起因する応力が発生し、ひいては熱衝撃によりハニカム構造体が破損しやすくなる。また、温度が十分に上がりにくい集合体外周部においてはススの燃え残りが生じ、再生効率が悪くなるおそれがある。
【0008】
さらに、炭化珪素(SiC)に代表される非酸化物系セラミック材料をフィルタ用材料として用いた場合、集合体全体の外形を整えるために、硬質なハニカムフィルタの一部を切削加工により除去する必要がある。それゆえ、製造が面倒であることに加え、コスト高になりやすいという問題がある。
【特許文献1】特開2003−275522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、再生効率に優れたセラミックフィルタを得られるハニカム構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明者らは、ハニカム構造体について検討を重ねた結果、本発明をなすに至った。
【0011】
本発明のハニカム構造体は、隔壁により区画された軸方向に伸びる多数のセルをもつハニカム構造体において、ハニカム構造体は、セルののびる方向に垂直な断面において、熱伝導率が他の部分よりも小さくなるように形成された外周部をもち、かつ外周部がチタン酸アルミニウムを主成分とするセラミックスよりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のハニカム構造体は、外周部が低熱伝導率となるように形成されている。この外周部をもつことで、外周部を介しての熱伝導が阻害され、内周部の熱が外周部を介して放熱されにくくなっている。この結果、本発明のハニカム構造体によると、保温性にすぐれた触媒を得られる。
【0013】
また、本発明のハニカム構造体は、外周部がその内部にマイクロクラックを持つチタン酸アルミニウム系のセラミックスにより形成されている。これにより、耐熱衝撃性が向上した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のハニカム構造体は、隔壁により区画された軸方向に伸びる多数のセルをもつハニカム構造体である。本発明のハニカム構造体において、多数のセルは、それぞれの軸方向が平行な状態で配置されている。
【0015】
そして、本発明のハニカム構造体は、セルののびる方向に垂直な断面において、熱伝導率が他の部分よりも小さくなるように形成された外周部をもち、かつ外周部がチタン酸アルミニウムを主成分とするセラミックスよりなる。
【0016】
本発明のハニカム構造体は、外周部の熱伝導率が低いことにより、外周部からの熱の伝導が少なくなっている。つまり、ハニカム構造体の中心部などの内部で発生した熱が外周部に伝達しても、外周部を介して外部に伝達されにくくなっている。このことは、本発明のハニカム構造体全体の保温効果が向上したことを示す。
【0017】
また、本発明のハニカム構造体は、外周部がチタン酸アルミニウムを主成分とするセラミックスにより形成される。チタン酸アルミニウムを主成分とするセラミックスとは、チタン酸アルミニウムが最も含有割合が大きなセラミックスであり、チタン酸アルミニウムのみからなるセラミックスを含む。外周部がチタン酸アルミニウムよりなることで、外周部が低い熱伝導率をもつことができる。チタン酸アルミニウムよりなるセラミックスは、その内部にマイクロクラックをもつ。そして、このマイクロクラックにより、外周部の熱伝導が阻害され、低い熱伝導率が得られる。また、マイクロクラックをもつことで、熱衝撃が加わって膨張・収縮を生じても、このマイクロクラックの開口が開閉することとなり、外周部全体の形状変化が生じなくなる。このことにより、本発明のハニカム構造体は、耐熱衝撃性が向上する。
【0018】
本発明のハニカム構造体に占める外周部の割合は、特に限定されるものではない。たとえば、セルの伸びる方向に垂直な断面(見かけの断面)において、ハニカム構造体の断面(見かけの断面)を100%としたときに、外周部の占める割合が30〜90%であることが好ましい。すなわち、ハニカム構造体の軸方向に垂直な断面において、外周部の面積は、ハニカム構造体の断面積の30〜90%であることが好ましい。外周部がハニカム構造体の断面積の30〜90%に形成されることで、外周部を配置した効果が特に発揮される。外周部の占める割合が30%未満では、外周部の占める割外が少なく、低熱伝導率による保温効果が十分に発揮されなくなる。また、90%を超えると、外周部の占める割合が大きくなりすぎ、外周部の割合に対する効果が十分に得られなくなる。ここで、ハニカム構造体に区画されたセルの断面積が一定であれば、ハニカム構造体の断面における面積は、区画されたセル数で代用できる。
【0019】
本発明のハニカム構造体は、外周部が低熱伝導率をもつように形成されていればよく、外周部以外の部分の熱伝導率は特に限定されるものではない。たとえば、外周部以外の部分が一定の熱伝導率をもつように形成されていても、複数の熱伝導率をもつように形成されていても、いずれでもよい。
【0020】
ハニカム構造体は、断面で外周部の内部の熱伝導率が一定に形成されたことが好ましい。このような構成のハニカム構造体は、外周部と内部とが異なる二つの熱伝導率をもつ。二つの熱伝導率をもつことで、多数の熱伝導率をもたせなくともよいため、比較的簡単にハニカム構造体を製造することができる。
【0021】
ハニカム構造体は、断面で外周部の内部の熱伝導率が複数の熱伝導率をもつように形成されたことが好ましい。ハニカム構造体全体でも多数の熱伝導率をもつこととなり、ハニカム構造体の保温性が向上する。
【0022】
ハニカム構造体の内部が複数の熱伝導率をもつときに、内部における熱伝導率の異なる部分の配置の形態は特に限定されるものではない。
【0023】
ハニカム構造体は、断面での中心部から外周部に向かって熱伝導率が徐々に変化することが好ましい。熱伝導率が徐々に変化することで、保温性がより向上する。
【0024】
本発明のハニカム構造体は、外周部がチタン酸アルミニウムにより低熱伝導率となるように形成された以外の構成は、特に限定されるものではない。たとえば、外周部以外の部分は、従来公知のハニカム構造体と同様の材質により製造することができる。たとえば、アルミナ、ジルコニア、コーディエライト、チタニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを主成分とするセラミックスにより形成することができる。また、外周部よりも大きな熱伝導率をもつように調節されたチタン酸アルミニウムを用いてもよい。
【0025】
本発明のハニカム構造体は、従来公知のハニカム構造体のように、複数部のハニカム分体を接合材で接合した構成としてもよい。このような構成は、ハニカム分体ごとの熱伝導率を変化させることができ、ハニカム構造体の断面において熱伝導率が部分的に異なる構造を簡単に形成できる。ハニカム構造体が複数部のハニカム分体よりなるときに、それぞれのハニカム分体の材質は同じであっても異なっていてもいずれでもよい。
【0026】
また、ハニカム分体を接合する接合材についても、従来公知の接合材を用いることができる。この接合材としては、例えば、SiC系接合材を用いることができる。ハニカム分体を接合材で接合したときにハニカム分体の間に形成される接合材層は、0.5〜5mmの厚さで形成することが好ましい。
【0027】
さらに、本発明のハニカム構造体は、その外周部にハニカム構造体の外周面を形成する外周材層を形成したことが好ましい。外周材層をもつことで、ハニカム構造体の形状変化が抑えられる。具体的には、ハニカム構造体をDPFなどの用途に使用したときに、ハニカム構造体は高熱にさらされる。そして、ハニカム構造体は、熱膨張を生じる。外周材層をもつことでこの熱膨張を抑えることができる。外周材層を構成する材質は、従来公知の材質を用いることができる。たとえば、SiC、シリカ系化合物、アルミナ系化合物などを用いることができる。また、外周材層は、ハニカム構造体の形状により異なるため、その厚さが一概に決定できるものではないが、たとえば、0.5〜5mmの厚さで形成することが好ましい。
【0028】
ハニカム構造体は、複数部のハニカム分体と、複数のハニカム分体を接合する接合材と、複数のハニカム分体の接合体の外周にもうけられハニカム構造体の外周面を形成する外周材層と、を有することが好ましい。
【0029】
本発明のハニカム構造体において、隔壁により区画されるセルの形状(断面形状)は特に限定されるものではなく、従来公知の形状とすることができる。
【0030】
本発明のハニカム構造体は、ストレートフロー型の触媒あるいはウォールフロー型の触媒のいずれの触媒に用いてもよい。より好ましくは、DPFなどのウォールフロー型のフィルタ触媒である。DPFなどのフィルタ触媒に用いるときには、隣接したセルの互いに異なる端部が目封じ材で目封じして用いることが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
【0032】
本発明の実施例として、DPF用ハニカム構造体を製造した。なお、本発明の実施例を示した各図においては、ハニカム基材10を構成するハニカム分体2,3,7のそれぞれを区別するためにそれぞれのハニカム分体2,3の記載方法を変えている。つまり、本発明を示す各図においては、ハニカム分体2,3,7のセル数およびセルの形状が異なるように見られるが、それぞれのハニカム分体2,3,7を区別するためにこのような記載方法をとったものであり、ハニカム分体2,3,7は同じセルをもつように形成されている。
【0033】
(実施例1)
本実施例は、多孔質のセラミックスより形成され、隔壁により軸方向に多数のセルが区画されたハニカム構造体である。本実施例のハニカム構造体は、全体の形状が円柱状をなすように形成されている。本実施例のハニカム構造体1をその構成がわかるように端面で図1に示した。本実施例のハニカム構造体1は、以下に記載の方法により製造された。ハニカム構造体の製造を図2〜3に示した。
【0034】
まず、軸方向に多数のセルが形成された70×70×150mmの柱状のチタン酸アルミニウムよりなるハニカム分体3、軸方向に多数のセルが形成された70×70×150mmの柱状のSiCよりなるハニカム分体2をそれぞれ製造した。ハニカム分体2,3は、材質が異なるのみでいずれも同じ形状に形成されている。つまり、ハニカム分体2、3は、いずれも同じ形状であり、同じセル数およびセル形状でセルが形成されている。ハニカム分体2,3を図2に示した。ハニカム分体2,3は、各セルの両端部に形成された2つの開口部のうち1つは、封止材によって交互に封止されている。つまり、多数あるセルのうち、約半数のものは一方の端面において開口し、残りのものは他方の端面において開口している。ハニカム分体2,3の端面において、封止されたセルと開口したセルとが交互に並んだ市松模様状になっている。なお、本実施例を示す各図においては、封止材は図示していない。
【0035】
そして、SiCよりなるハニカム分体2同士をSiC系接合材で接合した。接合材による接合は、厚さが1.5〜2.0mmとなるように接合材を塗布した後、別のハニカム分体2をすりあわせて接合した。この接合を繰り返して、断面が正方形をなすように4個のハニカム分体2を接合した。
【0036】
そして、ハニカム分体2の接合体の外周面にハニカム分体3を接合した。ハニカム分体3の接合は、上記のハニカム分体2の接合方法と同様にしてなされた。これにより、断面正方形状のハニカム分体2の接合体の外周の全周にわたってハニカム分体3が接合してなる断面正方形のハニカム基材10が製造された。ハニカム基材10は、四つのハニカム分体2と、12個のハニカム分体3とから形成された。ハニカム基材10をその構成がわかる端面で図3に示した。
【0037】
その後、80℃で乾燥した後に750℃で加熱して接合材を固化させた。そして、外周を切削して円柱形状に整形した後に、再び接合材を外周面に塗布して接合材を固化して外周材層4を形成した。
【0038】
これにより、本実施例のハニカム構造体1が製造できた。
【0039】
本実施例のハニカム構造体1は、ハニカム分体2が接合してなる内周部5と、ハニカム分体3が接合してなる外周部6と、をもつ。また、ハニカム分体2,3同士およびハニカム分体2,3の間には、SiC系接合材よりなる接合材層11が形成されている。そして、本実施例のハニカム構造体1は、外周部6の外周には、SiC系接合材よりなる外周材層4が形成されている。
【0040】
本実施例のハニカム構造体1は、内周部5を構成するハニカム分体2の熱伝導率が7.6W/m・Kであり、外周部6を構成するハニカム分体3の熱伝導率が2.7W/m・Kであった。つまり、本実施例のハニカム構造体1は、外周部6が内周部5よりも小さな熱伝導率をもつ。
【0041】
また、本実施例のハニカム構造体1は、軸方向に垂直な断面の断面積が314cm2であり、この断面における外周部6の面積が118cm2であった。つまり、ハニカム構造体1の断面において外周部6の占める割合は、37.6%であった。
【0042】
(実施例2)
まず、軸方向に多数のセルが形成された34×34×150mmの柱状のチタン酸アルミニウムよりなるハニカム分体3、軸方向に多数のセルが形成された34×34×150mmの柱状のSiCよりなるハニカム分体2をそれぞれ製造した。ハニカム分体2,3は、材質が異なるのみでいずれも同じ形状に形成されている。つまり、ハニカム分体2、3は、いずれも同じ形状であり、同じセル数およびセル形状でセルが形成されている。ハニカム分体2,3は、実施例1の時と同様に、封止材によってセルが交互に封止されている。
【0043】
そして、SiCよりなるハニカム分体2同士をSiC系接合材で接合した。接合材による接合は、厚さが1.5〜2.0mmとなるように接合材を塗布した後、別のハニカム分体2をすりあわせて接合した。この接合を繰り返して、断面が正方形をなすように4個のハニカム分体2を接合した。
【0044】
そして、ハニカム分体2の接合体の外周面にハニカム分体3を接合した。ハニカム分体3の接合は、上記のハニカム分体2の接合方法と同様にしてなされた。そして、この接合体の外周面にさらにハニカム分体3を接合した。これにより、断面正方形状のハニカム分体2の接合体の外周の全周にわたって二重にハニカム分体3が接合してなる断面正方形のハニカム基材が製造された。ハニカム基材は、四つのハニカム分体2と、36個のハニカム分体3とから形成された。
【0045】
その後、実施例1の時と同様にして外周を切削して円柱形状に整形した後に、再び接合材を外周面に塗布して接合材を固化して外周材層4を形成した。
【0046】
これにより、本実施例のハニカム構造体1が製造できた。本実施例のハニカム構造体1を図1と同様にして図4に示した。
【0047】
また、本実施例のハニカム構造体1は、軸方向に垂直な断面の断面積が314cm2であり、この断面における外周部6の面積が265cm2であった。つまり、ハニカム構造体1の断面において外周部6の占める割合は、84.4%であった。
【0048】
(実施例3)
本実施例は、内周部5がさらに、二つの熱伝導率をもつように形成された以外は、実施例1と同様なハニカム構造体である。本実施例のハニカム構造体1を図1と同様にして図5に示した。
【0049】
まず、軸方向に多数のセルが形成された34×34×150mmの柱状のチタン酸アルミニウムよりなるハニカム分体3、軸方向に多数のセルが形成された34×34×150mmの柱状のSiCよりなるハニカム分体2、軸方向に多数のセルが形成された34×34×150mmの柱状のコーディエライトよりなるハニカム分体7、をそれぞれ製造した。ハニカム分体2,3,7は、材質が異なるのみでいずれも同じ形状に形成されている。つまり、ハニカム分体2、3,7は、いずれも同じ形状であり、同じセル数およびセル形状でセルが形成されている。ハニカム分体2,3,7は、実施例1の時と同様に、封止材によってセルが交互に封止されている。
【0050】
そして、ハニカム分体2同士を実施例1の時と同様にSiC系接合材で接合した。この接合を繰り返して、断面が正方形をなすように4個のハニカム分体2を接合した。
【0051】
そして、ハニカム分体2の接合物の外周面にハニカム分体7を接合した。このハニカム分体の接合は、実施例1の時と同様にしてなされた。これにより、ハニカム分体2の外周にハニカム分体7が接合された接合体が製造できた。
【0052】
そして、ハニカム分体7の接合体の外周面にハニカム分体3を接合した。このハニカム分体の接合は、上記の接合方法と同様にしてなされた。これにより、ハニカム分体2,3,7が接合してなるハニカム基材が製造された。
【0053】
その後、80℃で乾燥した後に750℃で加熱して接合材を固化させた。そして、外周を切削して円柱形状に整形した後に、再び接合材を外周面に塗布して接合材を固化して外周材層4を形成した。
【0054】
これにより、本実施例のハニカム構造体1が製造できた。
【0055】
本実施例のハニカム構造体1は、断面の中心から径方向外方にすすむにつれて熱伝導率が徐々に変化するようにそれぞれのハニカム分体2,3,7が配置された構成となっている。具体的には、ハニカム分体7の熱伝導率が3.5W/m・Kであり、ハニカム分体2の熱伝導率が7.6W/m・Kであり、ハニカム分体3の熱伝導率が2.7W/m・Kであった。つまり、本実施例のハニカム構造体1は、中心から径方向外方にすすむにつれて熱伝導率が小さくなるように形成されている。
【0056】
また、本実施例のハニカム構造体1は、軸方向に垂直な断面の断面積が314cm2であり、この断面における外周部6の面積が118cm2であった。つまり、ハニカム構造体1の断面において外周部6の占める割合は、37.6%であった。
【0057】
(比較例1)
ハニカム分体3に替えてハニカム分体2を用いた以外は、実施例1と同様な構成のハニカム構造体である。すなわち、本比較例のハニカム構造体は、SiCよりなるハニカム基材をもつ、従来公知のハニカム構造体である。
【0058】
(比較例2)
ハニカム分体2に替えてハニカム分体3を用いた以外は、実施例1と同様な構成のハニカム構造体である。すなわち、本比較例のハニカム構造体は、チタン酸アルミニウムよりなるハニカム基材をもつ、従来公知のハニカム構造体である。
【0059】
(比較例3)
ハニカム分体2と3を取り替えた以外は、実施例1と同様な構成のハニカム構造体である。すなわち、本比較例のハニカム構造体は、内周部がチタン酸アルミニウムよりなるハニカム分体3により形成され、外周部がSiCよりなるハニカム分体2により形成されたハニカム構造体である。本比較例のハニカム構造体1を図1と同様にして図6に示した。
【0060】
(評価)
実施例および比較例のハニカム構造体の評価として、PMを8g/Lの堆積量で堆積させた状態で再生試験を行い、PMの酸化率とPMの残留割合(燃え残り率)を測定した。具体的な試験方法を以下に示す。
【0061】
まず、試験されるハニカム構造体の重量を測定し、その後、ハニカム構造体にPMを8g/Lの堆積量で堆積させた。そして、ハニカム構造体に熱電対を挿入した。熱電対は、ハニカム構造体の軸方向の長さの中心部、それぞれの端面から16mm内部および中心部とそれぞれの端面から16mm内部との中間部に配置された。熱電対は、軸心部近傍および外周部近傍に設置された。
【0062】
熱電対がセットされたハニカム構造体を電気炉にセットし、ハニカム構造体のセル内に700℃に加熱した窒素ガスを流通させて、ハニカム構造体を昇温した。このとき、炉内は、PMに対して不活性な雰囲気となった。
【0063】
熱電対で測定されるハニカム構造体の温度が安定したら、窒素ガスから空気に切り替えた。空気は0.4m/sで流された。ハニカム構造体が十分に加熱された状態で、ハニカム構造体に流されるガスを窒素ガスから空気に切り替えたことにより、空気中の酸素とPMとが反応してハニカム構造体に堆積したPMが燃焼した。PMの燃焼は発熱反応であり、ハニカム構造体の内部が昇温した。
【0064】
その後、熱電対で測定される温度が安定したら、PMの燃焼が終了したとして空気の供給を終了した。
【0065】
PMの燃焼試験後のハニカム構造体の重量を測定し、試験の前後の重量からPMの燃え残り量(PM未燃焼量)およびPM燃焼率を算出し、結果を表1に示した。ここで、表1に燃焼試験後のPMの燃え残り量はPM以外の物質の重量も含む。このため、PMの燃焼率は、実際には表1に示した値よりも大きい。
【0066】
【表1】

【0067】
表1に示したように、各実施例のハニカム構造体は各比較例と同等程度以上のPM燃焼率を有していることがわかる。また、上記したように、実際のPMの除去率は、表1に示した燃焼率以上の値であるため、各実施例のハニカム構造体は十分に高い再生性を備えていることがわかる。
【0068】
上記したように、各実施例のハニカム構造体は、DPFとして十分な再生性能を持つとともに、耐熱衝撃性にすぐれたハニカム構造体であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1のハニカム構造体を示した図である。
【図2】実施例1のハニカム構造体の製造時の工程を示した図である。
【図3】実施例1のハニカム構造体の製造時の工程を示した図である。
【図4】実施例2のハニカム構造体を示した図である。
【図5】実施例3のハニカム構造体を示した図である。
【図6】比較例3のハニカム構造体を示した図である。
【符号の説明】
【0070】
1:ハニカム構造体 10:ハニカム基材
11:接合材層
2,3,7:ハニカム分体
4:外周材層
5:内周部
6:外周部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁により区画された軸方向に伸びる多数のセルをもつハニカム構造体において、
該ハニカム構造体は、該セルののびる方向に垂直な断面において、熱伝導率が他の部分よりも小さくなるように形成された外周部をもち、かつ該外周部がチタン酸アルミニウムを主成分とするセラミックスよりなることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記ハニカム構造体の軸方向に垂直な断面において、前記外周部の面積は、該ハニカム構造体の断面積の30〜90%である請求項1記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記ハニカム構造体は、前記断面で前記外周部の内部の熱伝導率が一定に形成された請求項1記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記ハニカム構造体は、前記断面での中心部から外周部に向かって熱伝導率が徐々に変化する請求項3記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記ハニカム構造体は、複数部のハニカム分体と、複数の該ハニカム分体を接合する接合材と、複数の該ハニカム分体の接合体の外周にもうけられ該ハニカム構造体の外周面を形成する外周材層と、を有する請求項1記載のハニカム構造体。
【請求項6】
複数部の前記ハニカム分体は、少なくとも2種類の熱伝導率をもつ請求項5記載のハニカム構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−43850(P2008−43850A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219958(P2006−219958)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000220767)東京窯業株式会社 (211)
【Fターム(参考)】