説明

ハンドラー装置

【課題】支持ばねが切れたことを検知し、ICデバイス,ICソケット,ワークプレス自身が損傷することがないハンドラ装置を実現する。
【解決手段】基台に取り付けられ上下動するワークプレスを具備するハンドラー装置において、このワークプレスに一端が取り付けられ他端が前記基台に取り付けられ前記ワークプレスを上方に引っ張る弾性装置と、前記弾性装置の弾性本体の抵抗値の閾値を設定する閾値設定回路と、前記弾性装置の弾性本体の抵抗値を測定し測定値が前記設定閾値を越えた場合に前記ワークプレスの上下動停止の信号を発する抵抗値測定回路とを具備したことを特徴とするハンドラー装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドラー装置に関するものである。
更に詳述すれば、ハンドラー装置のワークプレス部分に関するものである。
更に詳述すれば、ピックアンドプレイス型ICハンドラーのコンタクトヘッド及びピックアップノズルの支持ばねの破断を検知する機能を有するハンドラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハンドラー装置に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2001−212786号公報
【特許文献2】特開2003−218185号公報
【0004】
図6は従来より一般に使用されている従来例の要部構成説明図である。
図6において、プーリ2aを有するモータ2は、基台1に取り付けられ、プーリ2bを有する駆動ねじ3にベルト4を介して動力を伝達する。
5はワークプレスであり、一端が駆動ねじ3にねじ込まれたボールねじ6に固定されている。
【0005】
支持部材7には、端面に支持棒8aが突出して設けられている。
8bはワークプレス5の側面に設けられた支持棒、9は一端が支持棒8aに、他端が支持棒8bに係止された支持ばねである。
支持ばね9は、上側フック9a、ばね9b、下側フック9cから構成されている。
上側フック9aは支持棒8aと、また、下側フック9cはワークプレス5に固定された支持棒8bで支えられている。
【0006】
以上の構成において、モータ2が回転すると、その回転はプーリ2a,2bおよびベルト4を介して駆動ねじ3に伝達され、この駆動ねじ3の回転方向に対応して係合するボールネジ6により直線運動に変換され、ワークプレス5が上下に移動する。
同時に、このワークプレス5と支持棒8a,8bに両端が係合して配置された支持ばね9も伸縮する。
【0007】
ここで、支持ばね9は、例えばモータ1の電源がオフ時など、モータトルクが無い状態では、ワークプレス5が自重により下降してしまう為、落下しないように支持機構として機能する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような装置においては、以下の間題点がある。
ワークプレス5が繰り返し上下運動をすると、支持ばね9は疲労破壊を起こし、ワークプレス5は落下する。
落下したままでハンドラ装置を稼動すると、落下したワークプレス5は、
【0009】
ICデバイスに損傷を与える。
ICソケットに損傷を与える。
ワークプレス5自身が損傷する。
といった問題を生じていた。
【0010】
本発明の目的は、上記の課題を解決するもので、支持ばねが切れたことを検知し、ICデバイス,ICソケット,ワークプレス自身が損傷することがないハンドラ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を達成するために、本発明では、請求項1のハンドラー装置においては、
基台に取り付けられ上下動するワークプレスを具備するハンドラー装置において、
このワークプレスに一端が取り付けられ他端が前記基台に取り付けられ前記ワークプレスを上方に引っ張る弾性装置と、前記弾性装置の弾性本体の抵抗値の閾値を設定する閾値設定回路と、前記弾性装置の弾性本体の抵抗値を測定し測定値が前記設定閾値を越えた場合に前記ワークプレスの上下動停止の信号を発する抵抗値測定回路とを具備したことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2のハンドラー装置においては、請求項1記載のハンドラー装置において、
前記弾性装置は、コイルスプリングが使用されたことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3のハンドラー装置においては、請求項2記載のハンドラー装置において、
前記弾性装置は、コイルスプリングと、前記コイルスプリングに同心状に設けられた補助コイルスプリングとを具備したことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4のハンドラー装置においては、請求項3記載のハンドラー装置において、
前記弾性装置は、絶縁材よりなる筒状の第1のフックと、この第1のフックを貫通して設けられた導電材よりなる第1のフック端子と、前記第1のフックに一端が取り付けられたコイルスプリングと、前記コイルスプリングの他端が取り付けられ導電材よりなる第2のフックと、この第2のフックに設けられ絶縁材よりなる第2のフック端子と、前記第1のフック端子の一端に一端が取り付けられ前記第2のフックに他端が取り付けられた補助コイルスプリングとを具備し、前記抵抗値測定回路は、前記第1のフック端子と前記コイルスプリングの前記一端とに接続されたことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項5のハンドラー装置においては、請求項3記載のハンドラー装置において、
前記弾性装置は、導電材よりなる筒状の第3のフックと、この第3のフックを貫通して設けられ絶縁材よりなる第3のフック端子と、前記第3のフックに一端が取り付けられたコイルスプリングと、このコイルスプリングの他端が取り付けられ導電材よりなる第4のフックと、この第4のフックに設けられ絶縁材よりなる第4のフック端子と、一端が前記第3のフック端子を貫通して取り付けられ他端が前記第4のフックに取り付けられた補助コイルスプリングとを具備し、前記抵抗値測定回路は、前記コイルスプリングの前記一端と補助コイルスプリングとに接続されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1によれば、次のような効果がある。
弾性装置の疲労破壊を未然に抵抗値測定回路により検知して、ワークプレスの上下動を停止できる。
したがって
ICデバイスに損傷を与えることがないハンドラー装置が得られる。
ICソケットに損傷を与えることがないハンドラー装置が得られる。
ワークプレス自身が損傷することがないハンドラー装置が得られる。
【0017】
本発明の請求項2によれば、次のような効果がある。
弾性装置は、コイルスプリングが使用されたので、コイルスプリングは、引っ張り力に対しては好適であり、占有体積も小さくできて、市場性もありコンパクトで、安価なハンドラー装置が得られる。
【0018】
本発明の請求項3によれば、次のような効果がある。
弾性装置は、コイルスプリングと、コイルスプリングに同心状に設けられた補助コイルスプリングとが設けられたので、補助コイルスプリングにより確実にワークプレスの落下を防止することができるハンドラー装置が得られる。
【0019】
更に、補助コイルスプリングには引張り負荷を殆ど負担させないことにより、コイルスプリングよりも長寿命とすることができるため、コイルスプリングが疲労破壊を起こしても、補助コイルスプリングは切れずにコイルスプリングの断線を確実に検出することができるハンドラー装置が得られる。
【0020】
本発明の請求項4によれば、次のような効果がある。
抵抗値測定回路は、第1のフック端子とコイルスプリングの一端とに接続されたので、抵抗値測定回路は弾性装置の一端側に集中して接続でき、組み立て、接続が容易なハンドラー装置が得られる。
更に、コイルスプリングが断線した場合に交換が容易に行えるハンドラー装置が得られる。
【0021】
本発明の請求項5によれば、次のような効果がある。
抵抗値測定回路は、コイルスプリングの一端と補助コイルスプリングとに接続されたので、抵抗値測定回路は弾性装置の一端側に集中して接続でき、組み立て、接続が容易なハンドラー装置が得られる。
更に、コイルスプリングが断線した場合に交換が容易に行えるハンドラー装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例の要部構成説明図、図2は図1の動作説明図である。
図において、図6と同一記号の構成は同一機能を表す。
以下、図6との相違部分のみ説明する。
【0023】
図1において、弾性装置21は、ワークプレス5に一端が取り付けられ、他端が基台1に取り付けられ、ワークプレス5を上方に引っ張る。
この場合は、弾性装置21は、コイルスプリングが使用されている。
弾性装置21は、上側フック9a、ばね9b、下側フック9cから構成されている。
閾値設定回路22は、弾性装置21の弾性本体の抵抗値の閾値を設定する。
抵抗値測定回路23は、弾性装置21の弾性本体の抵抗値を測定し、測定値が設定閾値を越えた場合に、ワークプレス5の上下動停止の信号を発する。
【0024】
この場合は、支持棒8a,8bの少なくとも一方が電気的に絶縁されている。
そして、上側フック9aと下側フック9cを抵抗値測定回路23に接続する。
抵抗測定回路23は、支持ばね9の抵抗値が、閾値設定回路22で設定された値に達すると、電流遮断信号をモータ2のドライバ回路24に送り、モータ2を停止させる。
【0025】
以上の構成において、図2に示す如く、支持ばね9の抵抗値Rは、正常な動作をしている期間(T0〜T1)では、正常な抵抗値Rnであり、支持ばね9が疲労を起こし始めた時間T1を過ぎると、増加し、時間T2で破壊を起こす。
時間T1と時間T2の間にある時間Tthに対応する抵抗値Rthを閾値設定回路22の設定値とすると、支持ばね9が完全に切れる(T2)の前に、モータ2を停止させることができる。
【0026】
この結果、
弾性装置21の疲労破壊を、未然に抵抗値測定回路23により検知して、ワークプレス5の上下動を停止できる。
したがって
ICデバイスに損傷を与えることがないハンドラー装置が得られる。
ICソケットに損傷を与えることがないハンドラー装置が得られる。
ワークプレス5自身が損傷することがないハンドラー装置が得られる。
【0027】
弾性装置21は、コイルスプリングが使用されたので、コイルスプリングは、引っ張り力に対しては好適であり、占有体積も小さくできて、市場性もありコンパクトで、安価なハンドラー装置が得られる。
【0028】
図3は、本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
図3において、この場合は、弾性装置31は、コイルスプリング311と、コイルスプリング311に同心状に設けられた補助コイルスプリング312とを有する。
【0029】
即ち、弾性装置31は、導電材よりなる上部フック313と、上部フック313に設けられ絶縁材よりなる上部フック端子314と、上部フック313に一端が取り付けられたコイルスプリング311と、コイルスプリング311の他端が取り付けられ導電材よりなる下部フック315と、下部フック315に設けられ絶縁材よりなる下部フック端子316と、一端が上部フック端子314に取り付けられ他端が下部フック端子316に取り付けられた補助コイルスプリング312とを具備し、抵抗値測定回路32は、上部フック313と下部フッ315とに接続されている。
【0030】
この結果、弾性装置31は、コイルスプリング311と、コイルスプリング311に同心状に設けられた補助コイルスプリング312とが設けられたので、補助コイルスプリング312により確実にワークプレス5の落下を防止することができるハンドラー装置が得られる。
【0031】
更に、補助コイルスプリング312には引張り負荷を殆ど負担させないことにより、コイルスプリング311よりも長寿命とすることができるため、コイルスプリング311が疲労破壊を起こしても、補助コイルスプリング312は切れずにコイルスプリング311の断線を確実に検出することができるハンドラー装置が得られる。
【0032】
図4は、本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
図4において、弾性装置41は、絶縁材よりなる筒状の第1のフック411と、第1のフック411を貫通して設けられ導電材よりなる第1のフック端子412と、第1のフック411に一端が取り付けられたコイルスプリング413と、コイルスプリング413の他端が取り付けられ導電材よりなる第2のフック414と、第2のフック414に設けられ絶縁材よりなる第2のフック端子415と、第1のフック端子412の一端に一端が取り付けられ、第2のフック414に他端が取り付けられた補助コイルスプリング416とを有する。
【0033】
抵抗値測定回路42は、第1のフック端子412とコイルスプリング413の一端とに接続されている。
【0034】
この結果、抵抗値測定回路42は、第1のフック端子412とコイルスプリング413の一端とに接続されたので、抵抗値測定回路42は弾性装置41の一端側に集中して接続でき、組み立て、接続が容易なハンドラー装置が得られる。
更に、コイルスプリング413が断線した場合に交換が容易に行えるハンドラー装置が得られる。
【0035】
図5は、本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
図5において、弾性装置51は、導電材よりなる筒状の第3のフック511と、第3のフック511を貫通して設けられた絶縁材よりなる第3のフック端子512と、第3のフック511に一端が取り付けられたコイルスプリング513と、コイルスプリング513の他端が取り付けられ導電材よりなる第4のフック514と、第4のフック514に設けられ絶縁材よりなる第4のフック端子515と、一端が第3のフック端子512を貫通して取り付けられ他端が第4のフック514に取り付けられた補助コイルスプリング516とを有する。
【0036】
抵抗値測定回路52は、コイルスプリング513の一端と補助コイルスプリング516とに接続されている。
【0037】
この結果、抵抗値測定回路52は、コイルスプリング513の一端と補助コイルスプリング516とに接続されたので、抵抗値測定回路52は弾性装置51の一端側に集中して接続でき、組み立て、接続が容易なハンドラー装置が得られる。
更に、コイルスプリング513が断線した場合に交換が容易に行えるハンドラー装置が得られる。
【0038】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。
したがって本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形をも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例の要部構成説明図である。
【図2】図1の動作説明図である。
【図3】本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
【図4】本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
【図5】本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
【図6】従来より一般に使用されている従来例の構成説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 基台
2 モータ
2a プーリ
2b プーリ
3 駆動ねじ
4 ベルト
5 ワークプレス
6 ボールねじ
7 支持部材
8a 支持棒
8b 支持棒
9 支持ばね
9a 上側フック
9b ばね
9c 下側フック
21 弾性装置
22 閾値設定回路
23 抵抗値測定回路
24 ドライバ回路
31 弾性装置
311 コイルスプリング
312 補助コイルスプリング
313 上部フック
314 上部フック端子
315 下部フック
316 下部フック端子
32 抵抗値測定回路
41 弾性装置
411 第1のフック
412 第1のフック端子
413 コイルスプリング
414 第2のフック
415 第2のフック端子
416 補助コイルスプリング
42 抵抗値測定回路
51 弾性装置
511 第3のフック
512 第3のフック端子
513 コイルスプリング
514 第4のフック
515 第4のフック端子
516 補助コイルスプリング
52 抵抗値測定回路
R 抵抗値
T 時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に取り付けられ上下動するワークプレスを具備するハンドラー装置において、
このワークプレスに一端が取り付けられ他端が前記基台に取り付けられ前記ワークプレスを上方に引っ張る弾性装置と、
前記弾性装置の弾性本体の抵抗値の閾値を設定する閾値設定回路と、
前記弾性装置の弾性本体の抵抗値を測定し測定値が前記設定閾値を越えた場合に前記ワークプレスの上下動停止の信号を発する抵抗値測定回路と
を具備したことを特徴とするハンドラー装置。
【請求項2】
前記弾性装置は、コイルスプリングが使用されたこと
を特徴とする請求項1記載のハンドラー装置。
【請求項3】
前記弾性装置は、コイルスプリングと、
前記コイルスプリングに同心状に設けられた補助コイルスプリングと、
を具備したことを特徴とする請求項2記載のハンドラー装置。
【請求項4】
前記弾性装置は、絶縁材よりなる筒状の第1のフックと、
この第1のフックを貫通して設けられた導電材よりなる第1のフック端子と、
前記第1のフックに一端が取り付けられたコイルスプリングと、
前記コイルスプリングの他端が取り付けられ導電材よりなる第2のフックと、
この第2のフックに設けられ絶縁材よりなる第2のフック端子と、
前記第1のフック端子の一端に一端が取り付けられ前記第2のフックに他端が取り付けられた補助コイルスプリングとを具備し、
前記抵抗値測定回路は、前記第1のフック端子と前記コイルスプリングの前記一端とに接続されたこと
を特徴とする請求項3記載のハンドラー装置。
【請求項5】
前記弾性装置は、導電材よりなる筒状の第3のフックと、
この第3のフックを貫通して設けられ絶縁材よりなる第3のフック端子と、
前記第3のフックに一端が取り付けられたコイルスプリングと、
このコイルスプリングの他端が取り付けられ導電材よりなる第4のフックと、
この第4のフックに設けられ絶縁材よりなる第4のフック端子と、
一端が前記第3のフック端子を貫通して取り付けられ他端が前記第4のフックに取り付けられた補助コイルスプリングとを具備し、
前記抵抗値測定回路は、前記コイルスプリングの前記一端と補助コイルスプリングとに接続されたこと
を特徴とする請求項3記載のハンドラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−142938(P2009−142938A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322685(P2007−322685)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】