ハーネス固定用部材及びこれを備えるワイヤーハーネス組付体
【課題】嵩上げ部材に対してワイヤーハーネスを位置決め状態で固定することができるハーネス固定用部材を提供する。
【解決手段】本ハーネス固定用部材5は、車両用の嵩上げ部材3に形成された溝部14,15に挿入されるワイヤーハーネス4を固定するためのハーネス固定用部材であって、ワイヤーハーネスが挿通される挿通部17a,18aを有し、嵩上げ部材に溝部に連なるように形成された孔部12内に挿入可能であり、孔部内で拡開可能である第1脚片17及び第2脚片18と、第1脚片から外側方に延びるように設けられ、ワイヤーハーネスの外周面が取付けられる第1舌片19と、を備える。
【解決手段】本ハーネス固定用部材5は、車両用の嵩上げ部材3に形成された溝部14,15に挿入されるワイヤーハーネス4を固定するためのハーネス固定用部材であって、ワイヤーハーネスが挿通される挿通部17a,18aを有し、嵩上げ部材に溝部に連なるように形成された孔部12内に挿入可能であり、孔部内で拡開可能である第1脚片17及び第2脚片18と、第1脚片から外側方に延びるように設けられ、ワイヤーハーネスの外周面が取付けられる第1舌片19と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーネス固定用部材及びこれを備えるワイヤーハーネス組付体に関し、さらに詳しくは、嵩上げ部材に対してワイヤーハーネスを位置決め状態で固定することができるハーネス固定用部材及びこれを備えるワイヤーハーネス組付体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用のワイヤーハーネス組付体として、例えば、図16に示すように、車両の床面上に配置される嵩上げ部材103の表面に溝部114を形成し、この溝部114内にワイヤーハーネス104を挿入してなる組付体101が提案されている。このワイヤーハーネス組付体101では、嵩上げ部材103は、車両の床面上に敷設される敷設部107と、この敷設部107から立ち上がる立壁部108とを備え、ワイヤーハーネス104は、これら敷設部107と立壁部108との連絡部位で曲げられた状態で溝部114内に挿入される。そのため、ワイヤーハーネス104の配索時等に、敷設部107と立壁部108との連絡部位でワイヤーハーネス104が溝部114内から浮き上がったり、外れたりしてしまうことがある(図16中に仮想線で示す。)。このようなワイヤーハーネス組付体を車両に組付けて使用すると様々な問題が生じる。例えば、嵩上げ部材の足踏み時にワイヤーハーネスの踏み潰しによる断線が生じる恐れがある。嵩上げ部材の踏み心地が悪い。さらに、車両に対するワイヤーハーネス組付体の組付作業性が悪い。
【0003】
そこで、上記問題を解決するワイヤーハーネス組付体として、例えば、図17に示すように、嵩上げ部材203の溝部214内にワイヤーハーネス204を挿入してから、ミキシングヘッド200により溝部214の開口に樹脂材220を注入してこの開口を樹脂材220で閉塞してなる組付体201が知られている(例えば、特許文献1参照)。これにより、ワイヤーハーネス204は、嵩上げ部材203の溝部214内に保持されて浮き上がったり外れたりすることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−148639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1のワイヤーハーネス組付体201では、嵩上げ部材203に対してワイヤーハーネス204は位置決め状態で固定されていないので、溝部214に挿入されたワイヤーハーネス204を長手方向に引っ張るとワイヤーハーネス204が抜けてしまう。また、嵩上げ部材203の溝部214の開口を樹脂材220で閉塞しているので、樹脂材220を注入するための専用設備(例えば、ミキシングヘッド等)が必要であり、作業工数も多くかかる。その結果、ワイヤーハーネス組付体の生産効率が悪い等の問題がある。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、嵩上げ部材に対してワイヤーハーネスを位置決め状態で固定することができるハーネス固定用部材及びこれを備えるワイヤーハーネス組付体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
1.車両用の嵩上げ部材に形成された溝部に挿入されるワイヤーハーネスを固定するためのハーネス固定用部材であって、
前記ワイヤーハーネスが挿通される挿通部を有し、前記嵩上げ部材に前記溝部に連なるように形成された孔部内に挿入可能であり、該孔部内で拡開可能である第1脚片及び第2脚片と、
前記第1脚片から外側方に延びるように設けられ、前記ワイヤーハーネスの外周面が取付けられる第1舌片と、を備えることを特徴とするハーネス固定用部材。
2.前記第2脚片から外側方に延びるように設けられ、ワイヤーハーネスの外周面が接触可能な第2舌片を更に備える上記1.記載のハーネス固定用部材。
3.前記第1脚片と前記第1舌片とのなす角度は側面視で略直角であり、前記第2脚片と前記第2舌片とのなす角度は側面視で鈍角である上記2.記載のハーネス固定用部材。
4.前記第1脚片及び前記第2脚片のそれぞれの一端側に連なり、前記嵩上げ部材の前記孔部を閉塞可能な天井壁部を更に備える上記1.乃至3.のいずれか一項に記載のハーネス固定用部材。
5.前記第1舌片の長手方向の長さは前記第2舌片の長手方向の長さより長い上記2.又は3.に記載のハーネス固定用部材。
6.車両の床面上に敷設される敷設部及び該敷設部から立ち上がる立壁部を備える嵩上げ部材と、
前記嵩上げ部材に形成された溝部に挿入されるワイヤーハーネスと、
前記嵩上げ部材の前記敷設部と前記立壁部との連絡部位において前記溝部に連なるように形成された孔部に装着される、上記1.乃至5.のいずれか一項に記載のハーネス固定用部材と、を備えることを特徴とするワイヤーハーネス組付体。
【発明の効果】
【0008】
本発明のハーネス固定用部材によると、第1脚片及び第2脚片の挿通部にワイヤーハーネスが挿通され、第1舌片にワイヤーハーネスの外周面が取り付けられる。この状態より、嵩上げ部材の孔部内に第1脚片及び第2脚片を挿入させると、これら第1脚片及び第2脚片は拡開して孔部を形成する壁面に当接する。この第1脚片及び第2脚片の孔部への当接によって、嵩上げ部材の溝部に挿入されたワイヤーハーネスは嵩上げ部材に対して位置決め状態で固定される。そのため、嵩上げ部材の溝部からワイヤーハーネスが浮き上がったり、外れたりしてしまうことが防止されるとともに、ワイヤーハーネスを長手方向に引っ張ってもワイヤーハーネスが抜けてしまうことが防止される。
また、第2舌片を更に備える場合は、ワイヤーハーネスの曲げに伴って、ワイヤーハーネスの外周面が第2舌片に接触してこれを押圧し、第2舌片と一体の第2脚片が第1脚片に対して拡開される。これにより、ワイヤーハーネスの曲げにより第1脚片及び第2脚片をより確実に拡開させることができる。
また、前記第1脚片と前記第1舌片とのなす角度が側面視で略直角であり、前記第2脚片と前記第2舌片とのなす角度が側面視で鈍角である場合は、第1脚片及び第2脚片の挿通部に挿通されたワイヤーハーネスをある程度曲げた状態で、嵩上げ部材の孔部に第1脚片及び第2脚片を挿入させることができる。そのため、嵩上げ部材の孔部に第1脚片及び第2脚片をより円滑に挿入させ得るとともに、ワイヤーハーネスを曲げ易くその曲げにより第1脚片及び第2脚片をより確実に拡開させることができる。
また、天井壁部を更に備える場合は、天井壁部により嵩上げ部材の孔部が閉塞されるため、嵩上げ部材による防音機能をより効果的に発揮させることができる。
さらに、前記第1舌片の長手方向の長さが前記第2舌片の長手方向の長さより長い場合は、第1舌片をワイヤーハーネスの外周面により確実に取り付けることができるとともに、第2舌片の材料使用量を抑えることができる。
【0009】
本発明のワイヤーハーネス組付体によると、ハーネス固定用部材において、第1脚片及び第2脚片の挿通部にワイヤーハーネスが挿通され、第1舌片にワイヤーハーネスの外周面が取り付けられる。この状態より、嵩上げ部材の孔部内に第1脚片及び第2脚片を挿入させると、これら第1脚片及び第2脚片は拡開して孔部を形成する壁面に当接する。この第1脚片及び第2脚片の孔部への当接によって、嵩上げ部材の溝部に挿入されたワイヤーハーネスは嵩上げ部材に対して位置決め状態で固定される。そのため、嵩上げ部材の溝部からワイヤーハーネスが浮き上がったり、外れたりしてしまうことが防止されるとともに、ワイヤーハーネスを長手方向に引っ張ってもワイヤーハーネスが抜けてしまうことが防止される。また、従来のように嵩上げ部材の溝部開口を樹脂材で閉塞するものに比べて、嵩上げ部材に対してワイヤーハーネスを保持するための専用設備(例えば、ミキシングヘッド等)を必要とせず、組付け工数を低減できる。その結果、ワイヤーハーネス組付体の生産性を高めることができる。さらに、溝部開口は閉塞されていないため、溝部からワイヤーハーネスを容易に取り外すことができ、嵩上げ部材に対するワイヤーハーネスの配索性及び車両に対するワイヤーハーネス組付体の組付性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係るワイヤーハーネス組付体を車両のフロアパネル上に組み付けた状態を示す斜視図である。
【図2】上記ワイヤーハーネス組付体の斜視図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】図3のVI−VI線断面図である。
【図7】実施例に係る嵩上げ部材の要部斜視図である。
【図8】実施例に係るハーネス固定用部材の側面図である。
【図9】(a)は図8のA矢視図であり、(b)は図8のB矢視図である。
【図10】上記ハーネス固定用部材(第1脚片及び第2脚片の狭閉状態)の斜視図である。
【図11】上記ハーネス固定用部材(第1脚片及び第2脚片の拡開状態)の斜視図である。
【図12】上記ワイヤーハーネス組付体の製法を説明するための説明図である。
【図13】上記ワイヤーハーネス組付体の製法を説明するための説明図である。
【図14】その他の形態のハーネス固定用部材の斜視図である。
【図15】更にその他の形態のハーネス固定用部材の側面図である。
【図16】従来のワイヤーハーネス組付体の要部斜視図である。
【図17】その他の形態の従来のワイヤーハーネス組付体の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0012】
1.ハーネス固定用部材
本実施形態1.に係るハーネス固定用部材は、嵩上げ部材に形成された溝部に挿入されるワイヤーハーネスを固定するためのハーネス固定用部材であって、ワイヤーハーネスが挿通される挿通部を有し、嵩上げ部材に前記溝部に連なるように形成された孔部内に挿入可能であり、孔部内で拡開可能である第1脚片及び第2脚片と、第1脚片から外側方に延びるように設けられ、ワイヤーハーネスの外周面が取付けられる第1舌片と、を備えることを特徴とする(例えば、図10及び図11等参照)。
なお、上記嵩上げ部材としては、例えば、後述の実施形態2.のワイヤーハーネス組付体で説明する嵩上げ部材の構成を適用したものを挙げることができる。
【0013】
上記第1脚片及び第2脚片としては、例えば、(1)第1脚片及び第2脚片の挿通部に挿通されたワイヤーハーネスを曲げて、このワイヤーハーネスとハーネス固定用部材との接触により第1脚片及び第2脚片を拡開させる形態(例えば、図13等参照)、(2)ハーネス固定用部材を構成する部位の弾性変形により第1脚片及び第2脚片を拡開させる形態(例えば、図14等参照)などを挙げることができる。ハーネス固定用部材を簡易且つ安価な構成にできるといった観点から、上記(1)形態であることが好ましい。また、上記第1脚片及び第2脚片の拡開量(θ4)は、例えば、45〜90度(特に45〜60度)であることができる(例えば、図8等参照)。
【0014】
上記(1)形態では、例えば、上記ハーネス固定用部材は、第2脚片から外側方に延びるように設けられ、ワイヤーハーネスの外周面が接触可能な第2舌片を更に備えることができる。この場合、第1脚片と第1舌片とのなす角度(θ1)は側面視で略直角であり、第2脚片と第2舌片とのなす角度(θ2)は側面視で鈍角であることが好ましい(例えば、図8等参照)。この第2脚片と第2舌片とのなす角度(θ2)は、例えば、90〜135度(特に120〜135度)であることができる。また、上述の場合、第1舌片の長手方向の長さ(L1)は第2舌片の長手方向の長さ(L2)より長く設定されていることが好ましい(例えば、図8等参照)。この第1舌片の長さ(L1)は、例えば、30〜40mmであることができる。また、第2舌片の長さ(L2)は、例えば、10〜20mmであることができる。
【0015】
上記実施形態1.のハーネス固定用部材としては、例えば、第1脚片及び第2脚片のそれぞれの一端側に連なり、嵩上げ部材の孔部を閉塞可能な天井壁部を更に備える形態を挙げることができる(例えば、図3等参照)。この天井壁部は、通常、第1脚片及び第2脚片を拡開可能に支持する。
【0016】
2.ワイヤーハーネス組付体
本実施形態2.に係るワイヤーハーネス組付体は、車両の床面上に敷設される敷設部及び敷設部から立ち上がる立壁部を備える嵩上げ部材と、嵩上げ部材に形成された溝部に挿入されるワイヤーハーネスと、嵩上げ部材の敷設部と立壁部との連絡部位において溝部に連なるように形成された孔部に装着される上記実施形態1.のハーネス固定用部材と、を備えることを特徴とする(例えば、図3等参照)。
【0017】
上記嵩上げ部材は、例えば、嵩上げ機能の他に防音機能を有することができる。この嵩上げ部材としては、例えば、(1)車両の廃材から抽出したウレタン及び繊維を含むシュレッダーダストと熱可塑性バインダ樹脂との混合材料のプレス成形品、(2)ウレタンのモールド成形品、(3)フェルト材の積層品等を挙げることができる。また、上記敷設部の厚さは、例えば、10〜130mmであることができる。さらに、上記立壁部の厚さは、例えば、25〜50mmであることができる。
【0018】
上記孔部では、例えば、第1脚片及び第2脚片のそれぞれが当接する壁面のなす角度(θ3)は45〜90度(特に45〜60度)であることができる(例えば、図4等参照)。これにより、第1脚片及び第2脚片を孔部を形成する壁面により確実に当接させることができる。
【0019】
上記溝部は、例えば、嵩上げ部材の敷設部及び立壁部の車室内側の表面側(嵩上げ部材の敷設部を車両の床面上に敷設した状態で車室内側に向かう表面側)に形成されていることができる。これにより、溝部にワイヤーハーネスを挿入してワイヤーハーネス組付体とし、そのワイヤーハーネス組付体を反転させることなく車両に組付けることがきる。その結果、嵩上げ部材に対するワイヤーハーネスの配索性及び車両に対するワイヤーハーネス組付体の組付性を更に高めることができる。これに対して、嵩上げ部材の敷設部及び立壁部の車室外側の表面側に溝部が設けられている場合は、嵩上げ部材を裏返した状態で溝部にワイヤーハーネスを挿入してワイヤーハーネス組付体とし、そのワイヤーハーネス組付体を反転させて車両に組付ける必要がある。
【0020】
上記溝部は、例えば、敷設部又は立壁部の表面側に開口する開口部と、この開口部に連なり且つ開口部の開口幅(w1,w3)より大きな横幅(w2,w4)を有する孔部と、を有することができる(例えば、図5及び図6等参照)。これにより、溝部にワイヤーハーネスを挿入した状態において、ワイヤーハーネスは開口部に係止されて抜け止めされる。上記開口部の開口幅(w1,w3)は、例えば、2〜30mm(好ましくは2〜17.5mm、特に2〜7.5mm)であることができる。また、孔部の横幅(w2,w4)は、例えば、4.5〜33mmであることができる。さらに、開口部の開口幅(w1,w3)と孔部の横幅(w2,w4)との比(w2/w1,w4/w3)は、例えば、1.1〜4(好ましくは2.25〜4)であることができる。
【0021】
上記ワイヤーハーネスは、電源供給及び/又は信号通信のための複数の電線を束にしたものである限り、その大きさ、形状等は適宜選択される。このワイヤーハーネスの直径は、例えば、2〜30mm(特に15〜20mm)であることができる。
【0022】
3.ワイヤーハーネス組付体の製造方法
本実施形態3.に係るワイヤーハーネス組付体の製造方法は、上述の実施形態2.のワイヤーハーネス組付体の製造方法であって、上記実施形態1.のハーネス固定用部材の第1脚片及び第2脚片の挿通部にワイヤーハーネスを挿通するとともに、第1舌片にワイヤーハーネスの外周面を取り付け、その後、そのワイヤーハーネスを嵩上げ部材の溝部内に挿入するとともに、ハーネス固定用部材を嵩上げ部材の孔部内に装着することを特徴とする(例えば、図12及び図13等参照)。これにより、嵩上げ部材に対するワイヤーハーネスの配索性を高めることができ、ワイヤーハーネス組付体を効率よく得ることができる。
【実施例】
【0023】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
【0024】
(1)ワイヤーハーネス組付体の構成
本実施例に係るワイヤーハーネス組付体1は、図1及び図2に示すように、嵩上げ部材3と、この嵩上げ部材3に形成された後述の溝部に挿入されるワイヤーハーネス4と、この嵩上げ部材3に形成された後述の孔部に装着されるハーネス固定用部材5と、を備えている。
【0025】
上記嵩上げ部材3は、車両のフロアパネル2上に敷設される平面状の敷設部7と、この敷設部7の端縁側から立ち上がる平面状の複数(図中2つ)の立壁部8,9と、を備えている。この立壁部8は、フロアパネル2上で車両の左右方向に延びる第1クロスメンバ部10の縦壁10aに当接されている。また、この立壁部9は、第1クロスメンバ部10と第2クロスメンバ部11とを連絡する縦壁10aに当接されている。これら敷設部7と立壁部8,9との連絡部位には、嵩上げ部材3の車室内側及び車室外側に貫通する横断面矩形状の孔部12が形成されている。
【0026】
なお、本実施例では、嵩上げ部材3として、ウレタンのモールド成形品を例示する。また、車両のフロアパネル2上に複数(例えば、4つ)のワイヤーハーネス組付体1を配置する形態を例示する。
【0027】
上記敷設部7の車室内側の表面側7aには、図3及び図7に示すように、ワイヤーハーネス4を挿入可能な第1溝部14が設けられている。この敷設部7の車室外側の表面側7bには溝部が設けられていない。また、上記立壁部8,9の車室内側の表面側8a,9aには、ワイヤーハーネス4を挿入可能な第2溝部15が設けられている。この立壁部8,9の車室外側の表面側8b,9bには溝部が設けられていない。これら第1溝部14及び第2溝部15のそれぞれの長尺方向の端部は孔部12に連なっている。
【0028】
上記第1溝部14は、図5に示すように、敷設部7の車室内側の表面側7aに開口する開口部14aと、この開口部14aに連なり且つ開口部14aの開口幅w1(例えば、約5mm)より大きな直径w2(例えば、約22mm)の円形孔部14bと、を有しており、アンダーカット状に形成されている。そして、この第1溝部14にワイヤーハーネス4を挿入した状態において、ワイヤーハーネス4は開口部14aに係止されて抜け止めされる。なお、上記開口部14aの開口幅w1と孔部14bの直径w2との比(w2/w1)は約4とされている。また、上記第1溝部14は、車両の前後方向に斜めに延びる部位aと、この部位aの途中から車両の左右方向に延びる部位bと、を有している(図2参照)。
【0029】
上記第2溝部15は、図6に示すように、立壁部8,9の車室内側の表面側8a,9aに開口する開口部15aと、この開口部15aに連なり且つ開口部15aの開口幅w3(例えば、約5mm)より大きな直径w4(例えば、約22mm)の円形孔部15bと、を有しており、アンダーカット状に形成されている。そして、第2溝部15にワイヤーハーネス4を挿入した状態において、ワイヤーハーネス4は開口部15aに係止されて抜け止めされる。なお、上記開口部15aの開口幅w3と孔部15bの直径w4との比(w4/w3)は約4とされている。また、上記ワイヤーハーネス4の直径は約20mmとされている。
【0030】
(2)ハーネス固定用部材の構成
上記ハーネス固定用部材5は、嵩上げ部材3の孔部12に装着され、嵩上げ部材3の第1溝部14及び第2溝部15に挿入されるワイヤーハーネス4を固定するための部材である。このハーネス固定用部材5は、図8及び図9に示すように、樹脂製であり、第1脚片17、第2脚片18、第1舌片19、第2舌片20、及び天井壁部21を備えている。
【0031】
上記第1脚片17及び第2脚片18のそれぞれには、その自由端側から切り欠かれワイヤーハーネス4が挿通される切り欠き状の挿通部17a,18aが形成されている。また、これら第1脚片17及び第2脚片18のそれぞれの一端側は平板状の天井壁部21の両端側に連なっている。
【0032】
上記第1舌片19は、第1脚片17から外側方(第2脚片18の反対側)に延びるように設けられている。この第1舌片19と第1脚片17とのなす角度θ1は側面視で略直角とされている。また、この第1舌片19の長手方向の長さL1は約30mmとされている。また、この第1舌片19には、図10に示すように、第1脚片17及び第2脚片18の挿通部17a,18aに挿通されたワイヤーハーネス4の外周面がテープ23で取り付けられる。
【0033】
上記第2舌片20は、第2脚片18から外側方(第1脚片17の反対側)に延びるように設けられている。この第2舌片20と第2脚片18とのなす角度θ2は側面視で約60度とされている。また、この第2舌片20の長手方向の長さL2は約10mmとされている。この第2舌片20には、図11に示すように、第1脚片17及び第2脚片18の挿通部17a,18aに挿通されたワイヤーハーネス4の外周面が接触可能とされている。
【0034】
上記天井壁部21は、嵩上げ部材3の孔部12を閉塞可能な大きさで平板状に形成されている。この天井壁部21は、第1脚片17及び第2脚片18が嵩上げ部材3の孔部12内に挿入可能な狭閉状態となるようにこれら第1脚片17及び第2脚片18を支持している(図10参照)。そして、嵩上げ部材3の孔部12内に第1脚片17及び第2脚片18を挿入させた状態で、ワイヤーハーネス4を曲げてワイヤーハーネス4の外周面を第2舌片20に当接させると、天井壁部21が撓んで嵩上げ部材3の孔部12内で第1脚片17及び第2脚片18が拡開される(図11参照)。そして、それら拡開された第1脚片17及び第2脚片18は、孔部12を形成する壁面12a,12bに当接される(図4参照)。これら壁面12a,12bのなす角度θ3は約60度とされている。
【0035】
(3)ワイヤーハーネス組付体の製造方法
次に、上記構成のワイヤーハーネス組付体1の製造方法について説明する。図10に示すように、ハーネス固定用部材5の第1脚片17及び第2脚片18の挿通部17a,18aにワイヤーハーネス4を挿通するとともに、テープ23で第1舌片19にワイヤーハーネス4の外周面を取り付ける。その後、図12に示すように、ワイヤーハーネス4を嵩上げ部材3の第1溝部14及び第2溝部15内に挿入するとともに、ハーネス固定用部材5を嵩上げ部材3の孔部12内に装着する。
【0036】
上記ハーネス固定用部材5の孔部12への装着の際には、先ず、狭閉状態の第1脚片19及び第2脚片20が孔部12内に挿入され、次に、図13に示すように、作業者により曲げられるワイヤーハーネス4の外周面が第2舌片20に接触してこれを押圧し、第2舌片20と一体の第2脚片18が第1脚片17に対して拡開される。その拡開された第1脚片17及び第2脚片18は、図4に示すように、孔部12を形成する壁面12a,12bに当接され、嵩上げ部材3の孔部12に対してワイヤーハーネス4が位置決めされる。また、第1舌片19は第1溝部14の孔部14b内に位置して開口部14aに係止され、第2舌片20は第2溝部15内の孔部15b内に位置して開口部15aに係止される。さらに、嵩上げ部材3の孔部12はハーネス固定用部材5の天井壁部21により塞がれる。このように得られたワイヤーハーネス組付体1は、車両のフロアパネル2上に配置され適宜固定手段(例えば、接着材、クリップ等)で固定されて車両に組付けられる。また、このワイヤーハーネス組付体1から延びるワイヤーハーネス4は、車両の電装系やピラー内の各種センサ等に接続される。
【0037】
(4)実施例の効果
以上より、本実施例のワイヤーハーネス組付体1によると、ハーネス固定用部材5において、第1脚片17及び第2脚片18の挿通部17a,18aにワイヤーハーネス4が挿通され、第1舌片19にワイヤーハーネス4の外周面が取り付けられる。この状態より、嵩上げ部材3の孔部12内に第1脚片17及び第2脚片18を挿入させると、これら第1脚片17及び第2脚片18は拡開して孔部12を形成する壁面12a,12bに当接する。この第1脚片17及び第2脚片18の孔部12への当接によって、嵩上げ部材3の第1溝部14及び第2溝部15に挿入されたワイヤーハーネス4は嵩上げ部材3に対して位置決め状態で固定される。そのため、嵩上げ部材3の第1溝部14及び第2溝部15からワイヤーハーネス4が浮き上がったり、外れたりしてしまうことが防止されるとともに、ワイヤーハーネス4を長手方向に引っ張ってもワイヤーハーネス4が抜けてしまうことが防止される。
【0038】
また、従来のように嵩上げ部材の溝部開口を樹脂材で閉塞するものに比べて、嵩上げ部材3に対してワイヤーハーネス4を保持するための専用設備(例えば、ミキシングヘッド等)を必要とせず、組付け工数を低減できる。その結果、ワイヤーハーネス組付体1の生産性を高めることができる。さらに、第1溝部14及び第2溝部15の開口は閉塞されていないため、第1溝部14及び第2溝部15からワイヤーハーネス4を容易に取り外すことができ、嵩上げ部材3に対するワイヤーハーネス4の配索性及び車両に対するワイヤーハーネス組付体1の組付性を高めることができる。
【0039】
また、本実施例では、ハーネス固定用部材5を、第2舌片20を更に備えて構成したので、ワイヤーハーネス4の曲げに伴って、ワイヤーハーネス4の外周面が第2舌片20に接触してこれを押圧し、第2舌片20と一体の第2脚片18が第1脚片17に対して拡開される。これにより、ワイヤーハーネス4の曲げにより第1脚片17及び第2脚片18をより確実に拡開させることができる。
【0040】
また、本実施例では、第1脚片17と第1舌片19とのなす角度を側面視で略直角とし、第2脚片18と第2舌片20とのなす角度を側面視で鈍角としたので、第1脚片17及び第2脚片18の挿通部17a,18aに挿通されたワイヤーハーネス4をある程度曲げた状態で、嵩上げ部材3の孔部12に第1脚片17及び第2脚片18を挿入させることができる。そのため、嵩上げ部材3の孔部12に第1脚片17及び第2脚片18をより円滑に挿入させ得るとともに、ワイヤーハーネス4を曲げ易くその曲げにより第1脚片17及び第2脚片18をより確実に拡開させることができる。
【0041】
また、本実施例では、ハーネス固定用部材5を、天井壁部21を更に備えて構成したので、天井壁部21により嵩上げ部材3の孔部12が閉塞されるため、嵩上げ部材3による防音機能をより効果的に発揮させることができる。
【0042】
さらに、本実施例では、第1舌片19の長手方向の長さL1を第2舌片20の長手方向の長さL2より長くしたので、第1舌片19をワイヤーハーネス3の外周面により確実に取り付けることができるとともに、第2舌片20の材料使用量を抑えることができる。
【0043】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、第1脚片17及び第2脚片18をワイヤーハーネス4の曲げにより拡開させるハーネス固定用部材5を例示したが、これに限定されず、例えば、図14に示すように、天井壁部21’の弾性変形により第1脚片17’及び第2脚片18’を拡開させるハーネス固定用部材5’としてもよい。すなわち、拡開状態(図14中に実線で示す。)の第1脚片17’及び第2脚片18’を、天井壁部21を弾性変形させて狭閉状態(図14中に仮想線で示す。)とし、その状態のまま嵩上げ部材3の孔部12に挿入してから、弾性荷重を解除して第1脚片17’及び第2脚片18’を拡開させて孔部12を形成する壁面12a,12bに当接させるようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施例では、脚片17の自由端側から切り欠かれた挿通部17aを例示したが、これに限定されず、例えば、図14中に仮想線で示すように、脚片17(18)の側縁側から切り欠かれた挿通部17a’としてもよい。また、脚片17(18)の表裏面側に貫通する穴状の挿通部としてもよい。
【0045】
また、上記実施例では、一様な厚さの天井壁部21を例示したが、これに限定されず、例えば、図15に示すように、天井壁部21の表面中央側に凹部25を形成するようにしてもよい。この凹部25により、天井壁部21を更に容易に撓ませて第1脚片17及び第2脚片18をより確実に拡開させることができる。
【0046】
また、上記実施例では、嵩上げ部材3の表裏面側に貫通する孔部12を例示したが、これに限定されず、例えば、嵩上げ部材3の表裏面側に貫通し且つ嵩上げ部材3の側縁側から切り欠かれた切り欠き状の孔部としてもよい。
【0047】
また、上記実施例では、嵩上げ部材3の敷設部7の車室内側の表面側7aに第1溝部14を設け、立壁部8,9の車室内側の表面側8a,9aに第2溝部15を設ける形態を例示したが、これに限定されず、例えば、(1)嵩上げ部材3の敷設部7の車室外側の表面側7bに第1溝部14を設け、立壁部8,9の車室外側の表面側8b,9bに第2溝部15を設ける形態、(2)嵩上げ部材3の敷設部7の車室内側の表面側7aに第1溝部14を設け、立壁部8,9の車室外側の表面側8b,9bに第2溝部15を設ける形態、(3)嵩上げ部材3の敷設部7の車室外側の表面側7bに第1溝部14を設け、立壁部8,9の車室内側の表面側8a,9aに第2溝部15を設ける形態等を採用するようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施例では、車両の車室内に配置されるワイヤーハーネス組付体1を例示したが、これに限定されず、例えば、車両のトランクルーム内やエンジンルーム内に配置されるワイヤーハーネス組付体としてもよい。
【0049】
さらに、上記実施例では、車両のフロアパネル2上に複数のワイヤーハーネス組付体1を配置する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、車両のフロアパネル2上に1つのワイヤーハーネス組付体を配置する形態としてもよい。
【0050】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0051】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
車両用のワイヤーハーネスを配索する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0053】
1;ワイヤーハーネス組付体、2;フロアパネル、3;嵩上げ部材、4;ワイヤーハーネス、5,5’;ハーネス固定用部材、7;敷設部、8,9;立壁部、12;孔部、14;第1溝部、15;第2溝部、17;第1脚片、17a;挿通部、18;第2脚片、18a;挿通部、19;第1舌片、20;第2舌片、21;天井壁部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーネス固定用部材及びこれを備えるワイヤーハーネス組付体に関し、さらに詳しくは、嵩上げ部材に対してワイヤーハーネスを位置決め状態で固定することができるハーネス固定用部材及びこれを備えるワイヤーハーネス組付体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用のワイヤーハーネス組付体として、例えば、図16に示すように、車両の床面上に配置される嵩上げ部材103の表面に溝部114を形成し、この溝部114内にワイヤーハーネス104を挿入してなる組付体101が提案されている。このワイヤーハーネス組付体101では、嵩上げ部材103は、車両の床面上に敷設される敷設部107と、この敷設部107から立ち上がる立壁部108とを備え、ワイヤーハーネス104は、これら敷設部107と立壁部108との連絡部位で曲げられた状態で溝部114内に挿入される。そのため、ワイヤーハーネス104の配索時等に、敷設部107と立壁部108との連絡部位でワイヤーハーネス104が溝部114内から浮き上がったり、外れたりしてしまうことがある(図16中に仮想線で示す。)。このようなワイヤーハーネス組付体を車両に組付けて使用すると様々な問題が生じる。例えば、嵩上げ部材の足踏み時にワイヤーハーネスの踏み潰しによる断線が生じる恐れがある。嵩上げ部材の踏み心地が悪い。さらに、車両に対するワイヤーハーネス組付体の組付作業性が悪い。
【0003】
そこで、上記問題を解決するワイヤーハーネス組付体として、例えば、図17に示すように、嵩上げ部材203の溝部214内にワイヤーハーネス204を挿入してから、ミキシングヘッド200により溝部214の開口に樹脂材220を注入してこの開口を樹脂材220で閉塞してなる組付体201が知られている(例えば、特許文献1参照)。これにより、ワイヤーハーネス204は、嵩上げ部材203の溝部214内に保持されて浮き上がったり外れたりすることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−148639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1のワイヤーハーネス組付体201では、嵩上げ部材203に対してワイヤーハーネス204は位置決め状態で固定されていないので、溝部214に挿入されたワイヤーハーネス204を長手方向に引っ張るとワイヤーハーネス204が抜けてしまう。また、嵩上げ部材203の溝部214の開口を樹脂材220で閉塞しているので、樹脂材220を注入するための専用設備(例えば、ミキシングヘッド等)が必要であり、作業工数も多くかかる。その結果、ワイヤーハーネス組付体の生産効率が悪い等の問題がある。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、嵩上げ部材に対してワイヤーハーネスを位置決め状態で固定することができるハーネス固定用部材及びこれを備えるワイヤーハーネス組付体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
1.車両用の嵩上げ部材に形成された溝部に挿入されるワイヤーハーネスを固定するためのハーネス固定用部材であって、
前記ワイヤーハーネスが挿通される挿通部を有し、前記嵩上げ部材に前記溝部に連なるように形成された孔部内に挿入可能であり、該孔部内で拡開可能である第1脚片及び第2脚片と、
前記第1脚片から外側方に延びるように設けられ、前記ワイヤーハーネスの外周面が取付けられる第1舌片と、を備えることを特徴とするハーネス固定用部材。
2.前記第2脚片から外側方に延びるように設けられ、ワイヤーハーネスの外周面が接触可能な第2舌片を更に備える上記1.記載のハーネス固定用部材。
3.前記第1脚片と前記第1舌片とのなす角度は側面視で略直角であり、前記第2脚片と前記第2舌片とのなす角度は側面視で鈍角である上記2.記載のハーネス固定用部材。
4.前記第1脚片及び前記第2脚片のそれぞれの一端側に連なり、前記嵩上げ部材の前記孔部を閉塞可能な天井壁部を更に備える上記1.乃至3.のいずれか一項に記載のハーネス固定用部材。
5.前記第1舌片の長手方向の長さは前記第2舌片の長手方向の長さより長い上記2.又は3.に記載のハーネス固定用部材。
6.車両の床面上に敷設される敷設部及び該敷設部から立ち上がる立壁部を備える嵩上げ部材と、
前記嵩上げ部材に形成された溝部に挿入されるワイヤーハーネスと、
前記嵩上げ部材の前記敷設部と前記立壁部との連絡部位において前記溝部に連なるように形成された孔部に装着される、上記1.乃至5.のいずれか一項に記載のハーネス固定用部材と、を備えることを特徴とするワイヤーハーネス組付体。
【発明の効果】
【0008】
本発明のハーネス固定用部材によると、第1脚片及び第2脚片の挿通部にワイヤーハーネスが挿通され、第1舌片にワイヤーハーネスの外周面が取り付けられる。この状態より、嵩上げ部材の孔部内に第1脚片及び第2脚片を挿入させると、これら第1脚片及び第2脚片は拡開して孔部を形成する壁面に当接する。この第1脚片及び第2脚片の孔部への当接によって、嵩上げ部材の溝部に挿入されたワイヤーハーネスは嵩上げ部材に対して位置決め状態で固定される。そのため、嵩上げ部材の溝部からワイヤーハーネスが浮き上がったり、外れたりしてしまうことが防止されるとともに、ワイヤーハーネスを長手方向に引っ張ってもワイヤーハーネスが抜けてしまうことが防止される。
また、第2舌片を更に備える場合は、ワイヤーハーネスの曲げに伴って、ワイヤーハーネスの外周面が第2舌片に接触してこれを押圧し、第2舌片と一体の第2脚片が第1脚片に対して拡開される。これにより、ワイヤーハーネスの曲げにより第1脚片及び第2脚片をより確実に拡開させることができる。
また、前記第1脚片と前記第1舌片とのなす角度が側面視で略直角であり、前記第2脚片と前記第2舌片とのなす角度が側面視で鈍角である場合は、第1脚片及び第2脚片の挿通部に挿通されたワイヤーハーネスをある程度曲げた状態で、嵩上げ部材の孔部に第1脚片及び第2脚片を挿入させることができる。そのため、嵩上げ部材の孔部に第1脚片及び第2脚片をより円滑に挿入させ得るとともに、ワイヤーハーネスを曲げ易くその曲げにより第1脚片及び第2脚片をより確実に拡開させることができる。
また、天井壁部を更に備える場合は、天井壁部により嵩上げ部材の孔部が閉塞されるため、嵩上げ部材による防音機能をより効果的に発揮させることができる。
さらに、前記第1舌片の長手方向の長さが前記第2舌片の長手方向の長さより長い場合は、第1舌片をワイヤーハーネスの外周面により確実に取り付けることができるとともに、第2舌片の材料使用量を抑えることができる。
【0009】
本発明のワイヤーハーネス組付体によると、ハーネス固定用部材において、第1脚片及び第2脚片の挿通部にワイヤーハーネスが挿通され、第1舌片にワイヤーハーネスの外周面が取り付けられる。この状態より、嵩上げ部材の孔部内に第1脚片及び第2脚片を挿入させると、これら第1脚片及び第2脚片は拡開して孔部を形成する壁面に当接する。この第1脚片及び第2脚片の孔部への当接によって、嵩上げ部材の溝部に挿入されたワイヤーハーネスは嵩上げ部材に対して位置決め状態で固定される。そのため、嵩上げ部材の溝部からワイヤーハーネスが浮き上がったり、外れたりしてしまうことが防止されるとともに、ワイヤーハーネスを長手方向に引っ張ってもワイヤーハーネスが抜けてしまうことが防止される。また、従来のように嵩上げ部材の溝部開口を樹脂材で閉塞するものに比べて、嵩上げ部材に対してワイヤーハーネスを保持するための専用設備(例えば、ミキシングヘッド等)を必要とせず、組付け工数を低減できる。その結果、ワイヤーハーネス組付体の生産性を高めることができる。さらに、溝部開口は閉塞されていないため、溝部からワイヤーハーネスを容易に取り外すことができ、嵩上げ部材に対するワイヤーハーネスの配索性及び車両に対するワイヤーハーネス組付体の組付性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係るワイヤーハーネス組付体を車両のフロアパネル上に組み付けた状態を示す斜視図である。
【図2】上記ワイヤーハーネス組付体の斜視図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】図3のVI−VI線断面図である。
【図7】実施例に係る嵩上げ部材の要部斜視図である。
【図8】実施例に係るハーネス固定用部材の側面図である。
【図9】(a)は図8のA矢視図であり、(b)は図8のB矢視図である。
【図10】上記ハーネス固定用部材(第1脚片及び第2脚片の狭閉状態)の斜視図である。
【図11】上記ハーネス固定用部材(第1脚片及び第2脚片の拡開状態)の斜視図である。
【図12】上記ワイヤーハーネス組付体の製法を説明するための説明図である。
【図13】上記ワイヤーハーネス組付体の製法を説明するための説明図である。
【図14】その他の形態のハーネス固定用部材の斜視図である。
【図15】更にその他の形態のハーネス固定用部材の側面図である。
【図16】従来のワイヤーハーネス組付体の要部斜視図である。
【図17】その他の形態の従来のワイヤーハーネス組付体の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0012】
1.ハーネス固定用部材
本実施形態1.に係るハーネス固定用部材は、嵩上げ部材に形成された溝部に挿入されるワイヤーハーネスを固定するためのハーネス固定用部材であって、ワイヤーハーネスが挿通される挿通部を有し、嵩上げ部材に前記溝部に連なるように形成された孔部内に挿入可能であり、孔部内で拡開可能である第1脚片及び第2脚片と、第1脚片から外側方に延びるように設けられ、ワイヤーハーネスの外周面が取付けられる第1舌片と、を備えることを特徴とする(例えば、図10及び図11等参照)。
なお、上記嵩上げ部材としては、例えば、後述の実施形態2.のワイヤーハーネス組付体で説明する嵩上げ部材の構成を適用したものを挙げることができる。
【0013】
上記第1脚片及び第2脚片としては、例えば、(1)第1脚片及び第2脚片の挿通部に挿通されたワイヤーハーネスを曲げて、このワイヤーハーネスとハーネス固定用部材との接触により第1脚片及び第2脚片を拡開させる形態(例えば、図13等参照)、(2)ハーネス固定用部材を構成する部位の弾性変形により第1脚片及び第2脚片を拡開させる形態(例えば、図14等参照)などを挙げることができる。ハーネス固定用部材を簡易且つ安価な構成にできるといった観点から、上記(1)形態であることが好ましい。また、上記第1脚片及び第2脚片の拡開量(θ4)は、例えば、45〜90度(特に45〜60度)であることができる(例えば、図8等参照)。
【0014】
上記(1)形態では、例えば、上記ハーネス固定用部材は、第2脚片から外側方に延びるように設けられ、ワイヤーハーネスの外周面が接触可能な第2舌片を更に備えることができる。この場合、第1脚片と第1舌片とのなす角度(θ1)は側面視で略直角であり、第2脚片と第2舌片とのなす角度(θ2)は側面視で鈍角であることが好ましい(例えば、図8等参照)。この第2脚片と第2舌片とのなす角度(θ2)は、例えば、90〜135度(特に120〜135度)であることができる。また、上述の場合、第1舌片の長手方向の長さ(L1)は第2舌片の長手方向の長さ(L2)より長く設定されていることが好ましい(例えば、図8等参照)。この第1舌片の長さ(L1)は、例えば、30〜40mmであることができる。また、第2舌片の長さ(L2)は、例えば、10〜20mmであることができる。
【0015】
上記実施形態1.のハーネス固定用部材としては、例えば、第1脚片及び第2脚片のそれぞれの一端側に連なり、嵩上げ部材の孔部を閉塞可能な天井壁部を更に備える形態を挙げることができる(例えば、図3等参照)。この天井壁部は、通常、第1脚片及び第2脚片を拡開可能に支持する。
【0016】
2.ワイヤーハーネス組付体
本実施形態2.に係るワイヤーハーネス組付体は、車両の床面上に敷設される敷設部及び敷設部から立ち上がる立壁部を備える嵩上げ部材と、嵩上げ部材に形成された溝部に挿入されるワイヤーハーネスと、嵩上げ部材の敷設部と立壁部との連絡部位において溝部に連なるように形成された孔部に装着される上記実施形態1.のハーネス固定用部材と、を備えることを特徴とする(例えば、図3等参照)。
【0017】
上記嵩上げ部材は、例えば、嵩上げ機能の他に防音機能を有することができる。この嵩上げ部材としては、例えば、(1)車両の廃材から抽出したウレタン及び繊維を含むシュレッダーダストと熱可塑性バインダ樹脂との混合材料のプレス成形品、(2)ウレタンのモールド成形品、(3)フェルト材の積層品等を挙げることができる。また、上記敷設部の厚さは、例えば、10〜130mmであることができる。さらに、上記立壁部の厚さは、例えば、25〜50mmであることができる。
【0018】
上記孔部では、例えば、第1脚片及び第2脚片のそれぞれが当接する壁面のなす角度(θ3)は45〜90度(特に45〜60度)であることができる(例えば、図4等参照)。これにより、第1脚片及び第2脚片を孔部を形成する壁面により確実に当接させることができる。
【0019】
上記溝部は、例えば、嵩上げ部材の敷設部及び立壁部の車室内側の表面側(嵩上げ部材の敷設部を車両の床面上に敷設した状態で車室内側に向かう表面側)に形成されていることができる。これにより、溝部にワイヤーハーネスを挿入してワイヤーハーネス組付体とし、そのワイヤーハーネス組付体を反転させることなく車両に組付けることがきる。その結果、嵩上げ部材に対するワイヤーハーネスの配索性及び車両に対するワイヤーハーネス組付体の組付性を更に高めることができる。これに対して、嵩上げ部材の敷設部及び立壁部の車室外側の表面側に溝部が設けられている場合は、嵩上げ部材を裏返した状態で溝部にワイヤーハーネスを挿入してワイヤーハーネス組付体とし、そのワイヤーハーネス組付体を反転させて車両に組付ける必要がある。
【0020】
上記溝部は、例えば、敷設部又は立壁部の表面側に開口する開口部と、この開口部に連なり且つ開口部の開口幅(w1,w3)より大きな横幅(w2,w4)を有する孔部と、を有することができる(例えば、図5及び図6等参照)。これにより、溝部にワイヤーハーネスを挿入した状態において、ワイヤーハーネスは開口部に係止されて抜け止めされる。上記開口部の開口幅(w1,w3)は、例えば、2〜30mm(好ましくは2〜17.5mm、特に2〜7.5mm)であることができる。また、孔部の横幅(w2,w4)は、例えば、4.5〜33mmであることができる。さらに、開口部の開口幅(w1,w3)と孔部の横幅(w2,w4)との比(w2/w1,w4/w3)は、例えば、1.1〜4(好ましくは2.25〜4)であることができる。
【0021】
上記ワイヤーハーネスは、電源供給及び/又は信号通信のための複数の電線を束にしたものである限り、その大きさ、形状等は適宜選択される。このワイヤーハーネスの直径は、例えば、2〜30mm(特に15〜20mm)であることができる。
【0022】
3.ワイヤーハーネス組付体の製造方法
本実施形態3.に係るワイヤーハーネス組付体の製造方法は、上述の実施形態2.のワイヤーハーネス組付体の製造方法であって、上記実施形態1.のハーネス固定用部材の第1脚片及び第2脚片の挿通部にワイヤーハーネスを挿通するとともに、第1舌片にワイヤーハーネスの外周面を取り付け、その後、そのワイヤーハーネスを嵩上げ部材の溝部内に挿入するとともに、ハーネス固定用部材を嵩上げ部材の孔部内に装着することを特徴とする(例えば、図12及び図13等参照)。これにより、嵩上げ部材に対するワイヤーハーネスの配索性を高めることができ、ワイヤーハーネス組付体を効率よく得ることができる。
【実施例】
【0023】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
【0024】
(1)ワイヤーハーネス組付体の構成
本実施例に係るワイヤーハーネス組付体1は、図1及び図2に示すように、嵩上げ部材3と、この嵩上げ部材3に形成された後述の溝部に挿入されるワイヤーハーネス4と、この嵩上げ部材3に形成された後述の孔部に装着されるハーネス固定用部材5と、を備えている。
【0025】
上記嵩上げ部材3は、車両のフロアパネル2上に敷設される平面状の敷設部7と、この敷設部7の端縁側から立ち上がる平面状の複数(図中2つ)の立壁部8,9と、を備えている。この立壁部8は、フロアパネル2上で車両の左右方向に延びる第1クロスメンバ部10の縦壁10aに当接されている。また、この立壁部9は、第1クロスメンバ部10と第2クロスメンバ部11とを連絡する縦壁10aに当接されている。これら敷設部7と立壁部8,9との連絡部位には、嵩上げ部材3の車室内側及び車室外側に貫通する横断面矩形状の孔部12が形成されている。
【0026】
なお、本実施例では、嵩上げ部材3として、ウレタンのモールド成形品を例示する。また、車両のフロアパネル2上に複数(例えば、4つ)のワイヤーハーネス組付体1を配置する形態を例示する。
【0027】
上記敷設部7の車室内側の表面側7aには、図3及び図7に示すように、ワイヤーハーネス4を挿入可能な第1溝部14が設けられている。この敷設部7の車室外側の表面側7bには溝部が設けられていない。また、上記立壁部8,9の車室内側の表面側8a,9aには、ワイヤーハーネス4を挿入可能な第2溝部15が設けられている。この立壁部8,9の車室外側の表面側8b,9bには溝部が設けられていない。これら第1溝部14及び第2溝部15のそれぞれの長尺方向の端部は孔部12に連なっている。
【0028】
上記第1溝部14は、図5に示すように、敷設部7の車室内側の表面側7aに開口する開口部14aと、この開口部14aに連なり且つ開口部14aの開口幅w1(例えば、約5mm)より大きな直径w2(例えば、約22mm)の円形孔部14bと、を有しており、アンダーカット状に形成されている。そして、この第1溝部14にワイヤーハーネス4を挿入した状態において、ワイヤーハーネス4は開口部14aに係止されて抜け止めされる。なお、上記開口部14aの開口幅w1と孔部14bの直径w2との比(w2/w1)は約4とされている。また、上記第1溝部14は、車両の前後方向に斜めに延びる部位aと、この部位aの途中から車両の左右方向に延びる部位bと、を有している(図2参照)。
【0029】
上記第2溝部15は、図6に示すように、立壁部8,9の車室内側の表面側8a,9aに開口する開口部15aと、この開口部15aに連なり且つ開口部15aの開口幅w3(例えば、約5mm)より大きな直径w4(例えば、約22mm)の円形孔部15bと、を有しており、アンダーカット状に形成されている。そして、第2溝部15にワイヤーハーネス4を挿入した状態において、ワイヤーハーネス4は開口部15aに係止されて抜け止めされる。なお、上記開口部15aの開口幅w3と孔部15bの直径w4との比(w4/w3)は約4とされている。また、上記ワイヤーハーネス4の直径は約20mmとされている。
【0030】
(2)ハーネス固定用部材の構成
上記ハーネス固定用部材5は、嵩上げ部材3の孔部12に装着され、嵩上げ部材3の第1溝部14及び第2溝部15に挿入されるワイヤーハーネス4を固定するための部材である。このハーネス固定用部材5は、図8及び図9に示すように、樹脂製であり、第1脚片17、第2脚片18、第1舌片19、第2舌片20、及び天井壁部21を備えている。
【0031】
上記第1脚片17及び第2脚片18のそれぞれには、その自由端側から切り欠かれワイヤーハーネス4が挿通される切り欠き状の挿通部17a,18aが形成されている。また、これら第1脚片17及び第2脚片18のそれぞれの一端側は平板状の天井壁部21の両端側に連なっている。
【0032】
上記第1舌片19は、第1脚片17から外側方(第2脚片18の反対側)に延びるように設けられている。この第1舌片19と第1脚片17とのなす角度θ1は側面視で略直角とされている。また、この第1舌片19の長手方向の長さL1は約30mmとされている。また、この第1舌片19には、図10に示すように、第1脚片17及び第2脚片18の挿通部17a,18aに挿通されたワイヤーハーネス4の外周面がテープ23で取り付けられる。
【0033】
上記第2舌片20は、第2脚片18から外側方(第1脚片17の反対側)に延びるように設けられている。この第2舌片20と第2脚片18とのなす角度θ2は側面視で約60度とされている。また、この第2舌片20の長手方向の長さL2は約10mmとされている。この第2舌片20には、図11に示すように、第1脚片17及び第2脚片18の挿通部17a,18aに挿通されたワイヤーハーネス4の外周面が接触可能とされている。
【0034】
上記天井壁部21は、嵩上げ部材3の孔部12を閉塞可能な大きさで平板状に形成されている。この天井壁部21は、第1脚片17及び第2脚片18が嵩上げ部材3の孔部12内に挿入可能な狭閉状態となるようにこれら第1脚片17及び第2脚片18を支持している(図10参照)。そして、嵩上げ部材3の孔部12内に第1脚片17及び第2脚片18を挿入させた状態で、ワイヤーハーネス4を曲げてワイヤーハーネス4の外周面を第2舌片20に当接させると、天井壁部21が撓んで嵩上げ部材3の孔部12内で第1脚片17及び第2脚片18が拡開される(図11参照)。そして、それら拡開された第1脚片17及び第2脚片18は、孔部12を形成する壁面12a,12bに当接される(図4参照)。これら壁面12a,12bのなす角度θ3は約60度とされている。
【0035】
(3)ワイヤーハーネス組付体の製造方法
次に、上記構成のワイヤーハーネス組付体1の製造方法について説明する。図10に示すように、ハーネス固定用部材5の第1脚片17及び第2脚片18の挿通部17a,18aにワイヤーハーネス4を挿通するとともに、テープ23で第1舌片19にワイヤーハーネス4の外周面を取り付ける。その後、図12に示すように、ワイヤーハーネス4を嵩上げ部材3の第1溝部14及び第2溝部15内に挿入するとともに、ハーネス固定用部材5を嵩上げ部材3の孔部12内に装着する。
【0036】
上記ハーネス固定用部材5の孔部12への装着の際には、先ず、狭閉状態の第1脚片19及び第2脚片20が孔部12内に挿入され、次に、図13に示すように、作業者により曲げられるワイヤーハーネス4の外周面が第2舌片20に接触してこれを押圧し、第2舌片20と一体の第2脚片18が第1脚片17に対して拡開される。その拡開された第1脚片17及び第2脚片18は、図4に示すように、孔部12を形成する壁面12a,12bに当接され、嵩上げ部材3の孔部12に対してワイヤーハーネス4が位置決めされる。また、第1舌片19は第1溝部14の孔部14b内に位置して開口部14aに係止され、第2舌片20は第2溝部15内の孔部15b内に位置して開口部15aに係止される。さらに、嵩上げ部材3の孔部12はハーネス固定用部材5の天井壁部21により塞がれる。このように得られたワイヤーハーネス組付体1は、車両のフロアパネル2上に配置され適宜固定手段(例えば、接着材、クリップ等)で固定されて車両に組付けられる。また、このワイヤーハーネス組付体1から延びるワイヤーハーネス4は、車両の電装系やピラー内の各種センサ等に接続される。
【0037】
(4)実施例の効果
以上より、本実施例のワイヤーハーネス組付体1によると、ハーネス固定用部材5において、第1脚片17及び第2脚片18の挿通部17a,18aにワイヤーハーネス4が挿通され、第1舌片19にワイヤーハーネス4の外周面が取り付けられる。この状態より、嵩上げ部材3の孔部12内に第1脚片17及び第2脚片18を挿入させると、これら第1脚片17及び第2脚片18は拡開して孔部12を形成する壁面12a,12bに当接する。この第1脚片17及び第2脚片18の孔部12への当接によって、嵩上げ部材3の第1溝部14及び第2溝部15に挿入されたワイヤーハーネス4は嵩上げ部材3に対して位置決め状態で固定される。そのため、嵩上げ部材3の第1溝部14及び第2溝部15からワイヤーハーネス4が浮き上がったり、外れたりしてしまうことが防止されるとともに、ワイヤーハーネス4を長手方向に引っ張ってもワイヤーハーネス4が抜けてしまうことが防止される。
【0038】
また、従来のように嵩上げ部材の溝部開口を樹脂材で閉塞するものに比べて、嵩上げ部材3に対してワイヤーハーネス4を保持するための専用設備(例えば、ミキシングヘッド等)を必要とせず、組付け工数を低減できる。その結果、ワイヤーハーネス組付体1の生産性を高めることができる。さらに、第1溝部14及び第2溝部15の開口は閉塞されていないため、第1溝部14及び第2溝部15からワイヤーハーネス4を容易に取り外すことができ、嵩上げ部材3に対するワイヤーハーネス4の配索性及び車両に対するワイヤーハーネス組付体1の組付性を高めることができる。
【0039】
また、本実施例では、ハーネス固定用部材5を、第2舌片20を更に備えて構成したので、ワイヤーハーネス4の曲げに伴って、ワイヤーハーネス4の外周面が第2舌片20に接触してこれを押圧し、第2舌片20と一体の第2脚片18が第1脚片17に対して拡開される。これにより、ワイヤーハーネス4の曲げにより第1脚片17及び第2脚片18をより確実に拡開させることができる。
【0040】
また、本実施例では、第1脚片17と第1舌片19とのなす角度を側面視で略直角とし、第2脚片18と第2舌片20とのなす角度を側面視で鈍角としたので、第1脚片17及び第2脚片18の挿通部17a,18aに挿通されたワイヤーハーネス4をある程度曲げた状態で、嵩上げ部材3の孔部12に第1脚片17及び第2脚片18を挿入させることができる。そのため、嵩上げ部材3の孔部12に第1脚片17及び第2脚片18をより円滑に挿入させ得るとともに、ワイヤーハーネス4を曲げ易くその曲げにより第1脚片17及び第2脚片18をより確実に拡開させることができる。
【0041】
また、本実施例では、ハーネス固定用部材5を、天井壁部21を更に備えて構成したので、天井壁部21により嵩上げ部材3の孔部12が閉塞されるため、嵩上げ部材3による防音機能をより効果的に発揮させることができる。
【0042】
さらに、本実施例では、第1舌片19の長手方向の長さL1を第2舌片20の長手方向の長さL2より長くしたので、第1舌片19をワイヤーハーネス3の外周面により確実に取り付けることができるとともに、第2舌片20の材料使用量を抑えることができる。
【0043】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、第1脚片17及び第2脚片18をワイヤーハーネス4の曲げにより拡開させるハーネス固定用部材5を例示したが、これに限定されず、例えば、図14に示すように、天井壁部21’の弾性変形により第1脚片17’及び第2脚片18’を拡開させるハーネス固定用部材5’としてもよい。すなわち、拡開状態(図14中に実線で示す。)の第1脚片17’及び第2脚片18’を、天井壁部21を弾性変形させて狭閉状態(図14中に仮想線で示す。)とし、その状態のまま嵩上げ部材3の孔部12に挿入してから、弾性荷重を解除して第1脚片17’及び第2脚片18’を拡開させて孔部12を形成する壁面12a,12bに当接させるようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施例では、脚片17の自由端側から切り欠かれた挿通部17aを例示したが、これに限定されず、例えば、図14中に仮想線で示すように、脚片17(18)の側縁側から切り欠かれた挿通部17a’としてもよい。また、脚片17(18)の表裏面側に貫通する穴状の挿通部としてもよい。
【0045】
また、上記実施例では、一様な厚さの天井壁部21を例示したが、これに限定されず、例えば、図15に示すように、天井壁部21の表面中央側に凹部25を形成するようにしてもよい。この凹部25により、天井壁部21を更に容易に撓ませて第1脚片17及び第2脚片18をより確実に拡開させることができる。
【0046】
また、上記実施例では、嵩上げ部材3の表裏面側に貫通する孔部12を例示したが、これに限定されず、例えば、嵩上げ部材3の表裏面側に貫通し且つ嵩上げ部材3の側縁側から切り欠かれた切り欠き状の孔部としてもよい。
【0047】
また、上記実施例では、嵩上げ部材3の敷設部7の車室内側の表面側7aに第1溝部14を設け、立壁部8,9の車室内側の表面側8a,9aに第2溝部15を設ける形態を例示したが、これに限定されず、例えば、(1)嵩上げ部材3の敷設部7の車室外側の表面側7bに第1溝部14を設け、立壁部8,9の車室外側の表面側8b,9bに第2溝部15を設ける形態、(2)嵩上げ部材3の敷設部7の車室内側の表面側7aに第1溝部14を設け、立壁部8,9の車室外側の表面側8b,9bに第2溝部15を設ける形態、(3)嵩上げ部材3の敷設部7の車室外側の表面側7bに第1溝部14を設け、立壁部8,9の車室内側の表面側8a,9aに第2溝部15を設ける形態等を採用するようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施例では、車両の車室内に配置されるワイヤーハーネス組付体1を例示したが、これに限定されず、例えば、車両のトランクルーム内やエンジンルーム内に配置されるワイヤーハーネス組付体としてもよい。
【0049】
さらに、上記実施例では、車両のフロアパネル2上に複数のワイヤーハーネス組付体1を配置する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、車両のフロアパネル2上に1つのワイヤーハーネス組付体を配置する形態としてもよい。
【0050】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0051】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
車両用のワイヤーハーネスを配索する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0053】
1;ワイヤーハーネス組付体、2;フロアパネル、3;嵩上げ部材、4;ワイヤーハーネス、5,5’;ハーネス固定用部材、7;敷設部、8,9;立壁部、12;孔部、14;第1溝部、15;第2溝部、17;第1脚片、17a;挿通部、18;第2脚片、18a;挿通部、19;第1舌片、20;第2舌片、21;天井壁部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の嵩上げ部材に形成された溝部に挿入されるワイヤーハーネスを固定するためのハーネス固定用部材であって、
前記ワイヤーハーネスが挿通される挿通部を有し、前記嵩上げ部材に前記溝部に連なるように形成された孔部内に挿入可能であり、該孔部内で拡開可能である第1脚片及び第2脚片と、
前記第1脚片から外側方に延びるように設けられ、前記ワイヤーハーネスの外周面が取付けられる第1舌片と、を備えることを特徴とするハーネス固定用部材。
【請求項2】
前記第2脚片から外側方に延びるように設けられ、ワイヤーハーネスの外周面が接触可能な第2舌片を更に備える請求項1記載のハーネス固定用部材。
【請求項3】
前記第1脚片と前記第1舌片とのなす角度は側面視で略直角であり、前記第2脚片と前記第2舌片とのなす角度は側面視で鈍角である請求項2記載のハーネス固定用部材。
【請求項4】
前記第1脚片及び前記第2脚片のそれぞれの一端側に連なり、前記嵩上げ部材の前記孔部を閉塞可能な天井壁部を更に備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載のハーネス固定用部材。
【請求項5】
前記第1舌片の長手方向の長さは前記第2舌片の長手方向の長さより長い請求項2又は3に記載のハーネス固定用部材。
【請求項6】
車両の床面上に敷設される敷設部及び該敷設部から立ち上がる立壁部を備える嵩上げ部材と、
前記嵩上げ部材に形成された溝部に挿入されるワイヤーハーネスと、
前記嵩上げ部材の前記敷設部と前記立壁部との連絡部位において前記溝部に連なるように形成された孔部に装着される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のハーネス固定用部材と、を備えることを特徴とするワイヤーハーネス組付体。
【請求項1】
車両用の嵩上げ部材に形成された溝部に挿入されるワイヤーハーネスを固定するためのハーネス固定用部材であって、
前記ワイヤーハーネスが挿通される挿通部を有し、前記嵩上げ部材に前記溝部に連なるように形成された孔部内に挿入可能であり、該孔部内で拡開可能である第1脚片及び第2脚片と、
前記第1脚片から外側方に延びるように設けられ、前記ワイヤーハーネスの外周面が取付けられる第1舌片と、を備えることを特徴とするハーネス固定用部材。
【請求項2】
前記第2脚片から外側方に延びるように設けられ、ワイヤーハーネスの外周面が接触可能な第2舌片を更に備える請求項1記載のハーネス固定用部材。
【請求項3】
前記第1脚片と前記第1舌片とのなす角度は側面視で略直角であり、前記第2脚片と前記第2舌片とのなす角度は側面視で鈍角である請求項2記載のハーネス固定用部材。
【請求項4】
前記第1脚片及び前記第2脚片のそれぞれの一端側に連なり、前記嵩上げ部材の前記孔部を閉塞可能な天井壁部を更に備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載のハーネス固定用部材。
【請求項5】
前記第1舌片の長手方向の長さは前記第2舌片の長手方向の長さより長い請求項2又は3に記載のハーネス固定用部材。
【請求項6】
車両の床面上に敷設される敷設部及び該敷設部から立ち上がる立壁部を備える嵩上げ部材と、
前記嵩上げ部材に形成された溝部に挿入されるワイヤーハーネスと、
前記嵩上げ部材の前記敷設部と前記立壁部との連絡部位において前記溝部に連なるように形成された孔部に装着される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のハーネス固定用部材と、を備えることを特徴とするワイヤーハーネス組付体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−182590(P2011−182590A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45922(P2010−45922)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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