説明

バイオインプランテーションに適した電気化学エネルギー源及び電子装置

本発明は、バイオインプランテーション(bioimplantation)に適した、充電可能なバッテリ及びバイオ燃料電池を含んだ電気化学エネルギー源に関する。本発明は、バイオインプランテーションに適した電子装置にも関し、当該装置は、少なくとも1つの本発明による電気化学エネルギー源、及び、本発明による電気化学エネルギー源に電気的に接続される電子部品を少なくとも1つ含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオインプランテーション(bioimplantation)に適した電気化学エネルギー源に関する。本発明は、バイオインプランテーションに適した電子装置にも関し、当該装置は、本発明による電気化学エネルギー源を少なくとも1つ、及び、該電気化学エネルギー源に電気的に接続される電子部品を少なくとも1つ含む。
【背景技術】
【0002】
20世紀中、エネルギー消費量は劇的に増加し、不安定なエネルギー管理が存在している。(特に発展途上国の間で)この需要の増加が和らぐというサインはないけれども、非再生資源がはかないものであること、及び、環境に及した不可逆的損害を現在自覚している。さらに、コンピュータ装置及び通信装置の小型化並びに携帯化の傾向がある。これらのエネルギーを要する用途には、特に宇宙及び探査地等の遠隔地において長期間の運転に耐えることができる小さくて軽い動力源が必要とされる。さらに、医学における進歩により、埋め込み型電動装置(例えばペースメーカー)の数が増加している。これらのアイテムは、メンテナンスに手術が必要とされるので、極めて長い間作動する動力源を必要とする。理想を言えば、埋め込み型装置は体内に存在する天然の燃料物質を利用し、従って、そのヒト又は動物が生存する限り動力を引き続ける。バイオ燃料電池は、おそらくこれらの問題を部分的に克服する解決策を提供するように思われる。バイオ燃料電池を生存しているヒト又は動物の体内に埋め込むことによって、バイオ燃料電池は、例えば血流からグルコース等、再生可能資源から利用可能なバイオ燃料を容易にひき、電気を生じてその燃料を害のない副産物に変えるであろう。バイオ燃料電池は濃縮された再生可能資源の化学エネルギーを使用するため、バイオ燃料電池は一般的に比較的高いエネルギー密度及び比較的長い存続時間を有しており、その結果として、バイオ燃料電池は比較的小さく且つ軽く作製することができ、従って理論的に言えば、生存しているヒト又は動物の体内に埋め込むのに適している。既知の埋め込み型バイオ燃料電池は多数の重要な利点を有しているけれども、既知のバイオ燃料電池の適用はいくつか欠点も有している。既知の小型化されたバイオ燃料電池の主な欠点は、バイオ燃料電池に結合された電子装置に動力を供給するのに必要とされる(ピーク)動力を送達することができない場合が多いことである。一般的にマイクロワットからミリワットという大きさである、既知のバイオ燃料電池の比較的小さい出力のため、現在の適用数は制限されている。
【0003】
国際特許出願第WO2003/106966 A2号には、動物等の生物学的システム内に存在している動力源として使用することができる小型の生物学的燃料電池が記載されている。この特定の燃料電池は膜無しで作動する。従って、その電池の大きさを他の燃料電池まで減らすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
改善された埋め込み型電気化学エネルギー源を提供し、改善された出力を得ることができるということが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、基板、該基板上に堆積されるバッテリスタックを少なくとも1つ、及び、前記基板上に堆積されるバイオ燃料電池を少なくとも1つ含んだ本発明による電気化学エネルギー源を提供することにより達成することができ、前記バッテリスタックは、第1のバッテリ電極、第2のバッテリ電極、並びに、前記第1のバッテリ電極と前記第2のバッテリ電極を隔てる固体状態の中間電解質を含み、前記バイオ燃料電池は、バイオ燃料電池の負極及びバイオ燃料電池の正極を含み、前記バイオ燃料電池の負極及び前記バイオ燃料電池の正極は、外部から供給されるバイオ燃料/電解質を受けるためのバイオ燃料/電解質チャンバにより隔てられる。当該電気化学エネルギー源は、バイオ燃料電池を使用して化学エネルギーを電気エネルギーに変える小型化されたバイオインプランタブルな(bioimplantable)ハイブリッドエネルギー源とみなすことができ、前記電気エネルギーは、後に、必要とされるピーク動力を送達することができる充電可能なバッテリスタックに貯蔵される。バッテリスタックもバイオ燃料電池も同じ支持基板上に統合して堆積され、その結果として、本発明による統合された電気化学エネルギー源の設計は、一般的に容易に最適化することができる。全固体状態のバッテリスタックの出力密度は比較的高いため、比較的小さいバッテリスタックが、所要動力を満たすのに一般的にすでに適している。バッテリスタックは固体状態の電解質を含んでいるため、(液体状態の電解質を利用する場合に発生することが多い)電解質の漏出は排除することができる。さらに、バッテリスタックの分解は一般的に反応物と液体状態の電解質との寄生反応の結果であるため、バッテリスタック内に固体状態の電解質を利用することにより、バッテリスタックの分解を阻止することができる。バイオ燃料電池のバイオ燃料/電解質チャンバは体液の流通に順応されており、その結果、バイオ燃料/電解質の内容物は絶えず補充(新たに)される。従って、実質的に無尽蔵のバイオ燃料及び電解質の貯蔵所は、連続的な電気エネルギーの発生、従って、バッテリスタック内への電気エネルギーの永久貯蔵を可能にするようバイオ燃料電池に対して利用可能である。バイオ燃料電池に対するエネルギーは、バイオ燃料として作用するグルコース、及び、酸化剤として作用する酸素により供給することができ、どちらの化合物も体液内で豊富である。前記電解質は、例えば血漿等の前記体液のうちの他の部分により形成される。しかし、バイオ燃料電池は、エタノール、さらには廃物等、各種の(他の)利用可能な燃料で作動することができるということが判る。さらに、使用される特定の(バイオ)触媒の適用のため、バイオ燃料電池の負極とバイオ燃料電池の正極を隔てる必要がないので、バイオ燃料電池の適用によってプロトン交換膜(PEM)を除去することができる。任意選択で、例えばPEM等の別の固体状態の電解質を、燃料電池の負極と燃料電池の正極との間のバイオ燃料/電解質チャンバ内に堆積することができる。しかし、活性種は、(一般的に比較的高い抵抗の)電解質を通るのではなく、(比較的低い抵抗の)体液を通って運ばれることが予期される。従って、液体状態の電解質、より好ましくは体液を適用することが好ましい。本発明による電気化学エネルギー源は、例えば、微小電気機械システム(MEMS)等のバイオインプランタブルなマイクロ装置、及び、心臓ペースメーカー、センサー、除細動器、鎮痛用刺激装置、微小な無線通信装置等の埋め込み型医用装置に動力を供給するのに使用することができる。
【0006】
前記第1のバッテリ電極は、好ましくはバッテリの負極を含み、前記第2のバッテリ電極は、好ましくはバッテリの正極を含む。前記スタックを前記基板上に堆積する間に、バッテリの負極もバッテリの正極も堆積されるということは一般的である。好ましくは、少なくとも1つの、本発明によるエネルギー源のバッテリ電極は、以下の要素:水素(H)、リチウム(Li)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、ナトリウム(Na)、及び、カリウム(K)、又は、周期表の1族又は2族に割り当てられたいかなる他の適した要素のうち少なくとも1つの活性種を貯蔵するようされる。従って、本発明によるエネルギーシステムの電気化学エネルギー源は、種々の層間挿入機構に基づくことができ、従って、例えばリチウムイオンバッテリ、ニッケル水素バッテリ等、異なる種類のバッテリを形成するのに適している。好ましい実施形態において、少なくとも1つのバッテリ電極、より好ましくは、前記バッテリの負極は、以下の物質:C、Sn、Ge、Pb、Zn、Bi、Sb、Li、及び、好ましくはドープされたSiのうち少なくとも1つを含む。これらの物質の組合せを使用して、1又は複数のバッテリ電極を形成することもできる。好ましくは、n型若しくはp型のドープされたSi、又は、SiGe若しくはSiGeCのようなドープされたSi関連の化合物がバッテリ電極として使用される。さらに、バッテリ電極の物質が層間挿入及び前述の反応種の貯蔵に適応される場合は、他の適した物質、好ましくは、周期表の12〜16族のうち1つに割り当てられたいかなる他の適した要素もバッテリの負極として適用することができる。前述の物質は、特に、リチウムイオンバッテリに適用するのに適している。水素ベースのエネルギー源が適用される場合に、バッテリの負極は、特にLaNiのAB型物質等、及び、特にMgTi1−xのマグネシウムベースの合金等、水素化物形成物質を含むことが好ましい。
【0007】
リチウムイオンベースのエネルギー源に対するバッテリの正極は、少なくとも1つの、例えばLiCoO、LiNiO、LiMnO、又は、例えばLi(NiCoMn)O等これらの組合せ等の金属酸化ベースの物質を含むことが好ましい。水素ベースのエネルギー源の場合、バッテリの正極はNi(OH)及び/又はNiM(OH)を含み、Mは、例えばCd、Co、若しくはBiの群から選択される1又は複数の要素により形成されることが好ましい。
【0008】
本発明による電気化学エネルギー源の好ましい実施形態において、前記バイオ燃料電池の負極及び前記バイオ燃料電池の正極のうち少なくとも1つは、少なくとも1つの触媒、好ましくは少なくとも1つのバイオ触媒を含む。触媒は、一般的に、電気エネルギーを生じるために前記燃料電池内又は前記燃料電池上での特異的(電気)化学反応を可能にするよう要求される。使用される触媒は、例えば白金、ルテニウム、ロジウム、又は、いかなる他の適した物質等の非生物学的化合物であり得る。しかし、選択的なバイオ触媒を適用して所望の化学反応を可能にすることは当業者が考えられることでもある。一般に、バイオ触媒に基づくバイオ燃料電池は、生細胞の化学経路を利用するもの(微生物燃料電池)、及び、単離された酵素を利用するものという2つの異なる種類に分類される。微生物燃料電池は、電気エネルギーへの化学エネルギーの変換という点で高い効率を得ることができる。しかし、この方法に関連する問題に、生物全体における低容量の触媒活性、及び、細胞壁を横切る燃料の遅い大量輸送による低い出力密度が含まれる。単離された酵素は、その高い触媒活性及び選択性のため、燃料電池にとって魅力的な触媒である。103Umg−1の活性を有する酵素的触媒により生じ得る理論上の電流は1.6ampであり、触媒の比率は白金よりも高い。特に好ましい実施形態において、前記バイオ燃料電池の負極及び前記バイオ燃料電池の正極のうち少なくとも1つは、自己組織化単分子膜(SAM)を含み、前記少なくとも1つの選択的(バイオ)触媒が前記膜上に堆積される。自己組織化単分子膜(SAM)は、基板上に存在する分子の単一層から成る表面である。(分子層上での制御が乏しい場合が多い)化学蒸着又は分子線エピタキシー等の技術を使用して分子を表面に加えるのではなく、所望の分子の溶液を基板表面上に添加し、余分なものを洗い流すことによって、比較的簡単且つ敏速にSAMを調製することができる。比較的簡単且つ敏速なSAMの堆積処理に加えて、SAMの適用により、本発明による電気化学エネルギー源に使用される物質が最小限に抑えられ、このことは、小型の寸法のエネルギー源を支持することになる。さらに、SAMは、一般的に、恒久的な様式で(バイオ)触媒を基板に付着させる(固定する)のに理論上適している。
【0009】
好ましくは、前記バイオ燃料電池の負極及び前記バイオ燃料電池の正極は、バイオ燃料電池の集電板をそれぞれ含む。前記第1のバッテリ電極及び前記第2のバッテリ電極がバッテリの集電板をそれぞれ含むことも好ましい。前記集電板により、前記バイオ燃料電池及び前記バッテリスタックは一般的に互いに接続される。一般的に、バイオ燃料電池及びバッテリスタックの集電板はそれぞれ、バイオ燃料電池からバッテリスタックまでの電気エネルギーの移動を制御することができるように1又は複数の電子部品を介して互いに接続される。好ましくは、前記少なくとも1つの集電板は、以下の物質:Al、Ni、Pt、Au、Ag、Cu、Ta、Ti、TaN、及びTiNのうち少なくとも1つから作製される。例えばSi、GaAs、InP等の好ましくはドープされた半導体物質等、他の種類の集電板も集電板として作用するよう適用することができる。バッテリスタックのバッテリの負極と基板との間に堆積されている電子導電性のバリヤ層を使用して、バッテリの負極に対するバッテリの集電板として機能させることができる。
【0010】
好ましい実施形態において、前記バッテリスタック及び前記バイオ燃料電池は前記基板の異なる面上に堆積され、前記基板によりバッテリスタックとバイオ燃料電池は物理的に隔てられる。前記バッテリスタック及び前記バイオ燃料電池を前記基板の異なる面上に堆積させる(又は、同じ面上で離して堆積させる)ことにより、前記バッテリスタック及び前記バイオ燃料電池のうちの少なくとも1つの堆積処理を容易にすることができる。別の好ましい実施形態では、前記バイオ燃料電池及び前記バッテリスタックは互いの上面において互いに積み重ねられ、前記バイオ燃料電池を前記バッテリスタックの上面に積み重ねることができ、逆もまた同様である。この実施形態によると、前記燃料電池と前記バッテリスタックの間に堆積された電気的に絶縁して隔てる層の適用は、一般的に、双方の動力源のショートを防ぐのに必要とされる。より好ましくは、前記隔てる層は、双方の動力源を化学的に隔てるためにも適用される。
【0011】
前述されたように、前記バッテリスタックは、拡散バリヤ層により基板から分離される。前記バイオ燃料電池のショートを阻止するために、前記基板と前記バイオ燃料電池を隔てる電気絶縁層が少なくとも1つ前記基板に設けられることが好ましい。この電気絶縁層は、酸化物、より好ましくは酸化ハフニウム、酸化シリコン、及び/又は、酸化ジルコニウムから作製されるのが好ましい。
【0012】
当該電気化学エネルギー源は、好ましくは、前記バッテリスタック及び/又は前記バイオ燃料電池を少なくとも部分的に覆う保護用パッケージを含む。前記保護用パッケージは、主として前記バッテリスタック及び/又は前記バイオ燃料電池を保護するようされている。前記バッテリスタックが前記保護用パッケージにより遮蔽されている場合、本発明による電気化学エネルギー源の長期性能を確保するよう前記スタックを保護するために、前記パッケージはさらに前記スタック内に活性種を貯蔵するようされることが好ましい、並びに/又は、酸素及び窒素等、前記パッケージを取り囲む大気中の化合物が前記スタックに入るのを防ぐようにすることができる。大気という表現は、この状況においては広い意味で考慮されなければならず、地球の大気(気体雰囲気)としても、(生)体内の局所的な大気としても解釈することができる。特に好ましい実施形態において、前記バイオ燃料電池は前記保護用パッケージにより実質的に覆われており、前記保護用パッケージには、前記バイオ燃料/電解質に対する少なくとも1つの注入口及び少なくとも1つの排出口が設けられる。この様式で、前記バイオ燃料電池を取り囲む大気から、前記バイオ燃料電池、特に前記燃料電池の負極及び前記燃料電池の正極を保護することができる。好ましくは、前記保護用パッケージの少なくとも一部は電気絶縁材料から作製され、前記保護用パッケージを介して当該電気化学エネルギー源のショートを阻止する。
【0013】
好ましくは、当該電気化学エネルギー源は、前記基板と前記バッテリスタックとの間に堆積される少なくとも1つのバリヤ層を含み、該バリヤ層は、前記基板への前記バッテリスタックの活性種の拡散を少なくとも実質的に防止するようされている。前記バリヤ層は、電子導電性材料から作製されるのが好ましい。前記バリヤ層は、以下の化合物:タンタル、窒化タンタル、チタン、及び窒化チタンのうちの少なくとも1つから少なくとも実質的に作製されるのが好ましい。前記バリヤ層の材料は、しかし、これらの化合物に限定されない。これらの化合物は、リチウム(イオン)の他にも挿入する種に対して不浸透性である比較的密な構造を共通の特性として有している。
【0014】
好ましい実施形態において、1又は複数の前記基板は、以下の物質:C、Si、Sn、Ti、Ge、Al、Cu、Ta、及びPbのうちの少なくとも1つから作製される。これらの物質の組合せを使用して、前記1又は複数の基板を形成することもできる。好ましくは、n型若しくはp型のドープされたSi又はGeが基板として使用されるか、又は、SiGe若しくはSiGeCのようなドープされたSi関連及び/又はGe関連の化合物が基板として使用される。前記スタックが堆積される前記基板の表面は、実質的に平らなスタックを得るために実質的に平坦であり得るか、又は、三次元で向きをつけられたバッテリスタック及び/又はバイオ燃料電池を得るために(前記基板を曲げる、並びに/又は、前記基板に溝、穴、及び/若しくは支柱を設けることによって)パターン形成することができる。三次元で向きをつけられたスタックを適用する利点は、バッテリ電極とバッテリスタックの固体状態の電解質との容積あたりの接触面、及び/又は、燃料電池の電極と燃料電池のバイオ燃料/電解質チャンバにより含まれるバイオ燃料/電解質との容積あたりの接触面が増加することである。一般的に、本発明によるエネルギー源の構成要素間の1又は複数の接触面におけるこの増加は、エネルギー源の率容量を改善し、(エネルギー源の層うち接触面の領域を最適に利用するため)バッテリ性能をさらに良くする。この方法で、エネルギー源における出力密度及びエネルギー密度(フットプリント/cm)を最大にすることができ、従って、最適化することができる。好ましくは、少なくとも1つのパターン形成された基板の表面には多数の空洞が設けられ、前記バッテリスタックの少なくとも一部及び/又は前記バイオ燃料電池の少なくとも一部が前記空洞内に堆積される。パターンの性質、形状、及び寸法は、好ましくは一様であり、より好ましくは比較的正確な様式で適用することができる支柱、溝、細長い穴、又は穴によって形成されるけれども、任意であり得る。この様式で、増加した性能の電気化学エネルギー源も、比較的正確な様式で予め決定することができる。
【0015】
本発明は、本発明による電気化学エネルギー源が少なくとも1つ、及び、前記電気化学エネルギー源に接続される電子部品が少なくとも1つ設けられたバイオインプランタブルな電子装置にも関する。小型化された電子装置は、例えば微小電気機械システム(MEMS)、心臓ペースメーカー、センサー、除細動器、鎮痛用刺激装置、及び、微小な無線通信装置により形成することができる。この列挙が限定的であると考慮できないことは明らかである。前記少なくとも1つの電子部品は、前記電気化学エネルギー源の前記基板内に少なくとも部分的に埋め込まれていることが好ましい。この様式で、システムインパッケージ(Sip)を実現することができる。Sipでは、集積回路(IC)、アクチュエーター、センサー、受信機、送信機等の1又は多数の電子部品及び/又は装置が、本発明による電気化学エネルギー源の基板内に少なくとも部分的に埋め込まれる。前記少なくとも1つの電子部品は、検出手段、鎮痛用刺激手段、(無線)通信手段、及び作動手段からなる群から選ばれるのが好ましい。必要の際は、出力を上げるために1又は複数のコンデンサーを加えることも可能である。
【0016】
本発明は、以下の非制限的な例により例証される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による電気化学エネルギー源における第1の実施形態の概略的な断面図を示している。
【図2】本発明による電気化学エネルギー源における第2の実施形態の概略的な断面図を示している。
【図3】本発明による電気化学エネルギー源における第3の実施形態の斜視図を示している。
【図4】本発明による電気化学エネルギー源における第4の実施形態の透視図を示している。
【図5】本発明による電気化学エネルギー源における第5の実施形態の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明によるモノリシックのバイオインプランタブルな電気化学エネルギー源1における第1の実施形態の概略的な断面図を示している。小型化されたエネルギー源1は、バッテリの負極3、固体状態の電解質4、及びバッテリの正極5からなるリチウムイオンバッテリスタック2を含み、バッテリスタック2は、1又は複数の電子部品7が埋め込まれている導電性基板6上に堆積されている。この例において、バッテリの負極3はアモルファスシリコン(a−Si)から作製され、基板6はドープされたシリコンから作製されている。正極5はLiCoOから作製されており、固体状態の電解質はLiPONから作製されている。バッテリスタック2と基板6の間で、リチウムバリヤ層8が基板6上に堆積されている。この例において、リチウム拡散バリヤ層8はタンタルから作製されている。導電性のタンタル層8は、初めにバッテリスタック2により含まれているリチウムイオン(又は他の活性種)の基板6への拡散を阻止するため、化学バリヤとして作用する。リチウムイオンがバッテリスタック2を離れ、基板6に入る場合、スタック2の性能は影響を受けることになる。さらに、この拡散により、基板6内に埋め込まれた1又は複数の電子部品7は深刻な影響を受ける。この例において、リチウム拡散バリヤ層8は、電気化学エネルギー源1のバッテリの負極3に対するバッテリの集電板としても作用する。エネルギー源1は、バッテリスタック2の上面、特にバッテリの正極5の上面に堆積されるアルミニウムから作製された追加のバッテリの集電板9をさらに含む。埋め込み型エネルギー源1は、基板6上に堆積された燃料電池10も含む。燃料電池10は、負極触媒層12が設けられた燃料電池の負極11、及び、正極触媒層14が設けられた燃料電池の正極13を含み、燃料電池の負極11と燃料電池の正極13との間に存在する空間は、燃料電池/電解質チャンバ15を形成している。燃料電池/電解質チャンバ15は、血液等の体液16を受けるようされている。触媒層12及び14は、特異的な反応物を特異的な生成物に変え、その結果、化学エネルギーを電気エネルギーに変えるようされている。この例証的な実施形態において、燃料電池10はオキシグルコース電池(oxyglucose cell)を表している。オキシグルコース電池は、以下の化学式:
【0019】
【化1】

による作用中に、燃料電池の負極11にてグルコースが酸化され、燃料電池の正極13にて酸素分子が還元される電気化学処理に依拠することができる。
【0020】
燃料電池10及び基板6は、燃料電池10のショートを防ぐために酸化物から作製されていることが好ましい電気的に絶縁して隔てる層17により隔てられている。燃料電池の負極11も燃料電池の正極13も燃料電池の集電板として作用する。全ての集電板8、9、11、及び13は、基板6に埋め込まれた1又は複数の電子部品7に結合される(概略的に示されている)。図1において、バッテリスタック2及び燃料電池10は、反対側に、従って基板6の異なる面上に堆積されているがことが明白に示されている。本発明による埋め込み型電気化学エネルギー源1の操作中、体液16内に貯蔵された化学エネルギーは燃料電池10によって電気エネルギーに変えられ、比較的高い(ピーク)出力を送達することができるよう、1又は複数の電子部品7を介してバッテリスタック2内に実質的に貯蔵される。電気化学エネルギー源1は、ヒト又は動物の体内に埋め込むことができる。一般的に、エネルギー源1は、特定の生物学的過程をモニター又は刺激するために生体内に埋め込まれる。しかし、死亡した体内に電気化学エネルギー源1を埋め込むことも考えられる場合がある。
【0021】
図2は、本発明による電気化学エネルギー源18における第2の実施形態の概略的な断面図を示している。図2に示されている電気化学エネルギー源18は、図1による電気化学エネルギー源1に実質的に類似している。埋め込み型エネルギー源18は、バッテリの負極20、固体状態の電解質21、及びバッテリの正極22からなる薄膜のバッテリスタック19を含み、バッテリスタック19は、1又は複数の電子部品24が埋め込まれている導電性基板23上に堆積されている。バッテリスタック19と基板23の間で、活性種に対するバリヤ層25が基板23上に堆積されている。この例において、拡散バリヤ層25は、電気化学エネルギー源18のバッテリの負極20に対するバッテリの集電板としても作用する。追加のバッテリの集電板26が、バッテリスタック19の上面、特にバッテリの正極22の上面に堆積される。埋め込み型エネルギー源18は、バッテリスタック19の上面に堆積、実際には積み重ねられた燃料電池27をさらに含む。燃料電池27及びバッテリスタック19は、隔てる層28によって互いに隔てられている。燃料電池27は、負極触媒層30が設けられた燃料電池の負極29、及び、正極触媒層32が設けられた燃料電池の正極31を含み、燃料電池の負極29と燃料電池の正極31との間に存在する空間は、体液34を受ける燃料電池/電解質チャンバ33を形成している。
【0022】
図3は、本発明による電気化学エネルギー源35における第3の実施形態の斜視図を示している。図1及び図2にそれぞれ示されている電気化学エネルギー源1及び18とは反対に、図3に示されている電気化学エネルギー源35は片面がパターン形成された基板36を含み、バッテリスタック37が基板36のうちパターン形成された面36a上に堆積され、燃料電池38が基板36のうち実質的に平らな面36b上に堆積されている。バッテリスタック37及び基板36は、活性種に対するバリヤ層39によって互いに隔てられている。バリヤ層39は、この例において負極の集電板としても作用する。バッテリスタック37は、負極40、固体状態の電解質41、及び正極42を含む。正極42は、正極の集電板43に接続されている。基板36のうちパターン形成された面36aは、前記層40、41、42間(内)の接触面を増やすため、従って、バッテリスタック37の性能を上げるためにバッテリスタック37が堆積されている多数の細長い穴44を含む。燃料電池38は、触媒的に活性な燃料電池の負極45、及び、該燃料電池の負極45から距離をおいて置かれた触媒的に活性な燃料電池の正極46を含む。燃料電池の負極45と燃料電池の正極46の間に存在する空間は、バイオ燃料としても電解質としても作用する体液(図示されていない)を受けるための受けチャンバとして役立つ。埋め込み型ハイブリッド電気化学エネルギー源を適用することの利点は、広範囲な様式ですでに説明されている。
【0023】
図4は、本発明によるバイオインプランタブルな電気化学エネルギー源47における第4の実施形態の透視図を示している。エネルギー源47は、両面がパターン形成された基板48を含む。基板48のうち第1のパターン形成された面48aは、活性種を遮断するためのバリヤ層49により、続いてバッテリスタック50(概略的に示されている)により覆われている。基板48のうち第2のパターン形成された面48bは、電気絶縁層51により、続いて燃料電池52により覆われている。バッテリスタック50及び燃料電池52は、図1に示されているバッテリスタック2及び燃料電池10に、それぞれ構造上類似していることが好ましい。バッテリスタック50も燃料電池52も基板のパターン形成された面48a及び48b上に堆積させることによって、バッテリスタック50の性能も燃料電池52の性能も有意に改善することができる。
【0024】
図5は、本発明による電気化学エネルギー源53における第5の実施形態の概略図を示している。電気化学エネルギー源53は、バイオインプランテーションに適しており、基板54を含む。基板54の上面には、電子装置を形成する電子部品55が適用されている。そのような構造は、システムインパッケージ(SiP)とも呼ばれる。電子装置55には、マイクロバッテリスタック56、及び、該マイクロバッテリスタック56に間接的に接続された燃料電池57をさらに含む電気化学エネルギー源53により動力が供給される。マイクロバッテリスタック56も燃料電池57も基板54上に堆積され、保護用パッケージ58によって遮蔽される。保護用パッケージ58は、少なくとも1つの絶縁材料から作製されるのが好ましく、交互層のラミネートを含むことができる。前記交互層の各層は、以下の物質:金属、ポリマー、及びシリカ質化合物の群から選ばれた少なくとも1つの物質から作製される。保護用パッケージ58のラミネートに適用することができる交互層の例は、交互の様式で互いの上面に堆積された窒化珪素(N)層及びシリカ(O)層から成る、いわゆるNONON層構造である。ラミネートは、一般的に大気中の化合物にもマイクロバッテリスタック56により含まれた移動する活性種にも実質的に不浸透性である金属層もさらに含むことが一般的である。保護用パッケージ58には注入口59及び排出口60が設けられ、バイオ燃料としても電解質としても作用する体液が、燃料電池57に燃料を供給するために前記燃料電池57を継続的に流れるのを可能にしている。
【0025】
上記の実施形態は本発明を限定しているのではなく例証しており、当業者は付随の特許請求の範囲から逸脱することなく別の実施形態を多数設計することができるということに注目されたい。特許請求の範囲において、括弧内に置かれたいかなる参照番号も特許請求の範囲を限定するとして解釈するべきではない。「含む」という動詞及びその変化形の使用は、請求項に述べられたもの以外の要素又はステップの存在を除外しない。単数名詞を言及する際に不定冠詞又は定冠詞が使用されている場合は、その名詞の複数形の存在を除外しない。特定の手段が互いに異なる従属項において列挙されるという単なる事実は、これらの手段の組合せを使用して利することができないと示しているのではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、
該基板上に堆積されるバッテリスタックを少なくとも1つ、及び
前記基板上に堆積されるバイオ燃料電池を少なくとも1つ含む、バイオインプランテーションに適した電気化学エネルギー源であって、
前記バッテリスタックが、
第1のバッテリ電極、
第2のバッテリ電極、並びに、
前記第1のバッテリ電極と前記第2のバッテリ電極を隔てる固体状態の中間電解質を含み、
前記バイオ燃料電池が、
バイオ燃料電池の負極、及び
バイオ燃料電池の正極を含み、
前記バイオ燃料電池の負極及び前記バイオ燃料電池の正極が、外部から供給されるバイオ燃料/電解質を受けるためのバイオ燃料/電解質チャンバにより隔てられる、電気化学エネルギー源。
【請求項2】
前記第1のバッテリ電極がバッテリの負極を含むこと、及び/又は、前記第2のバッテリ電極がバッテリの正極を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項3】
前記バッテリの負極も前記バッテリの正極も以下の要素:H、Li、Be、Mg、Cu、Ag、Na、及び、Kのうち少なくとも1つの活性種を貯蔵するようされることを特徴とする、請求項2に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項4】
前記バッテリの負極及び前記バッテリの正極のうち少なくとも1つが、以下の物質:C、Sn、Ge、Pb、Zn、Bi、Li、Sb、及び、好ましくはドープされたSiのうち少なくとも1つから作製されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項5】
前記バイオ燃料電池の負極及び前記バイオ燃料電池の正極のうち少なくとも1つが、少なくとも1つの触媒、好ましくは少なくとも1つのバイオ触媒を含むことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項6】
前記バイオ燃料電池の負極及び前記バイオ燃料電池の正極のうち少なくとも1つが、前記少なくとも1つの触媒が堆積される自己組織化単分子膜(SAM)を含むことを特徴とする、請求項7に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項7】
前記バイオ燃料電池の負極及び前記バイオ燃料電池の正極が、バイオ燃料電池の集電板をそれぞれ含むことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項8】
前記第1のバッテリ電極及び前記第2のバッテリ電極がバッテリの集電板をそれぞれ含むことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項9】
前記少なくとも1つの集電板が、以下の物質:Al、Ni、Pt、Au、Ag、Cu、Ta、Ti、TaN、及びTiNのうち少なくとも1つから作製されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項10】
前記バッテリスタック及び前記バイオ燃料電池が前記基板の異なる面上に堆積されることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項11】
前記バイオ燃料電池及び前記バッテリスタックが互いの上面において互いに積み重ねられることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項12】
前記基板には、該基板と前記バイオ燃料電池を隔てる電気絶縁層が少なくとも1つ設けられることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項13】
前記バッテリスタック及び/又は前記バイオ燃料電池を少なくとも部分的に覆う保護用パッケージを含むことを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項14】
前記バイオ燃料電池が前記保護用パッケージにより実質的に覆われ、前記保護用パッケージには、前記バイオ燃料/電解質に対する少なくとも1つの注入口及び少なくとも1つの排出口が設けられることを特徴とする、請求項13に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項15】
前記保護用パッケージの少なくとも一部が電気絶縁材料から作製されることを特徴とする、請求項13又は14に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項16】
前記基板と前記バッテリスタックとの間に堆積される少なくとも1つの電子導電性バリヤ層をさらに含む電気化学エネルギー源であって、前記バリヤ層が、前記基板への前記バッテリスタックの活性種の拡散を少なくとも実質的に防止するようされることを特徴とする、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項17】
前記少なくとも1つのバリヤ層が、以下の物質:Ta、TaN、Ti、及びTiNのうちの少なくとも1つから作製されることを特徴とする、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項18】
前記基板が、C、Si、Sn、Ti、Ge、Al、Cu、Ta、及びPbからなる群から選択される少なくとも1つの物質から少なくとも部分的に作製されることを特徴とする、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項19】
前記基板には、前記バッテリスタック及び/又は前記バイオ燃料電池が堆積されるパターン形成された表面が少なくとも1つ設けられることを特徴とする、請求項1乃至18のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項20】
前記基板の少なくとも1つのパターン形成された表面には多数の空洞が設けられ、前記バッテリスタックの少なくとも一部及び/又は前記バイオ燃料電池の少なくとも一部が前記空洞内に堆積されることを特徴とする、請求項19に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項21】
前記空洞のうち少なくとも一部が、支柱、溝、細長い穴、又は穴を形成することを特徴とする、請求項20に記載の電気化学エネルギー源。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれか1項に記載の電気化学エネルギー源を少なくとも1つ、及び
該電気化学エネルギー源に接続される少なくとも1つの電子部品
を含むバイオインプランテーションに適した電子装置。
【請求項23】
前記少なくとも1つの電子部品が、前記電気化学エネルギー源の前記基板内に少なくとも部分的に埋め込まれることを特徴とする、請求項22に記載の電子装置。
【請求項24】
前記少なくとも1つの電子部品が、検出手段、鎮痛用刺激手段、通信手段、及び作動手段からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項22又は23に記載の電子装置。
【請求項25】
当該電子装置及び前記電気化学エネルギー源がシステムインパッケージ(SiP)を形成することを特徴とする、請求項22乃至24のいずれか1項に記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−504609(P2010−504609A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528821(P2009−528821)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053710
【国際公開番号】WO2008/035258
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】