バイオポリマーに基づいた活性物質含有連続繊維層、その使用、およびその生産のための方法
本発明は、バイオポリマーに基づいた活性物質含有連続繊維層であって、繊維状で、バイオポリマーの活性物質担体と、その担体と結合しその連続繊維層から放出できる少なくとも1種の活性物質とを含む連続繊維層;かかる連続繊維層を含む活性物質含有処方物;活性物質を含む処方物の生産のための活性物質含有連続繊維層の使用;および活性物質を含む連続繊維層の生産のための方法に関する。本発明はさらに、活性物質を含む対応する連続繊維層、ならびに創傷治療用品および衛生用品の生産のためのその使用、ならびに個々に生産された創傷治療用品および衛生用品にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオポリマーに基づいた有効成分含有シート状繊維構造体であって、繊維状で、バイオポリマーの有効成分担体と、その担体と結合し前記シート状繊維構造体より放出させることができる少なくとも1種の有効成分とを含むシート状繊維構造体;かかるシート状繊維構造体を含む有効成分含有処方物;有効成分含有処方物の生産のための発明有効成分含有シート状繊維構造体の使用;および発明シート状繊維構造体の生産のための方法に関する。本発明はさらに、対応する有効成分フリーシート状繊維構造体、ならびに創傷ケア物品および衛生物品の生産のためのその使用、ならびにそれに応じて生産された創傷ケア物品および衛生物品自体にも関する。
【背景技術】
【0002】
技術の現状:
WO−A−2007/082936には、難水溶性有効成分を、タンパク質含有保護コロイド中にその効果物質を分散させることにより処方するための両親媒性自己集合タンパク質の使用が記載されている。難水溶性有効成分と両親媒性自己集合タンパク質を複合分散相中で混合し、続いて高タンパク質高効果物質相と低タンパク質低効果物質相とに相分離した後に、難水溶性有効成分が封入されたタンパク質マイクロビーズが生じる。
【0003】
様々な刊行物には、化学合成されたポリマーおよびバイオポリマーと、さらにタンパク質とからの紡糸プロセスによる繊維の生産が記載されている。
【0004】
ナノファイバーおよびメソファイバーの生産に関しては、当業者は多数の方法を知っている。それらの方法の中でエレクトロスピニングは現在最も重要性が高い方法である。この方法(この方法は、例えば、D.H. Reneker, H.D. Chun in Nanotechn. 7 (1996), pages 216 ff.により記載されている)では、ポリマー溶融物またはポリマー溶液を、一般には、電極となるエッジで高電場に曝す。これは、例えば、低圧下電場中でポリマー溶融物またはポリマー溶液を、電源の一方の極に接続されたカニューレを通して押し出すことにより行うことができる。その結果、ポリマー溶融物またはポリマー溶液に静電気帯電が発生するため、材料流は対電極に向かいその対電極に向かう途中で凝固することになる。この方法は、電極形状に応じて、不織布または規則繊維の集合体を与える。
【0005】
DE−A1−10133393には、内径が1〜100nmの中空繊維を生産するための方法が開示されており、その方法では、水不溶性ポリマーの溶液−例えばジクロロメタン中のポリ−L−ラクチド溶液またはピリジン中のナイロン−46溶液−をエレクトロスピニングする。WO−A1−01/09414およびDE−A1−10355665より同様の方法も知られている。
【0006】
DE−A1−19600162には、ラウンモウアーワイヤー(lawnmower wire)または織物のシート状構造体を生産するための方法が開示されており、その方法では、糸を形成するポリマーとしてのポリアミド、ポリエステルまたはポリプロピレンと、無水マレイン酸変性ポリエチレン/ポリプロピレンゴムと、1以上の経時変化安定剤(aging stabilizers)とを合わせ、溶融し、一緒に混合した後、この溶融物を溶融紡糸する。
【0007】
DE−A1−10 2004 009 887は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーの溶融物の静電紡糸または噴霧により、直径が<50μmの繊維を生産するための方法に関するものである。
【0008】
ポリマー溶融物のエレクトロスピニングでは、直径が1μmを超える繊維しか作製することができない。しかしながら、多数の用途、例えば濾過用途では、直径が1μm未満のナノファイバーおよび/またはメソファイバーが必要であり、そのような繊維を公知のエレクトロスピニングプロセスによって作製することができるのはポリマー溶液を使用する場合のみである。
【0009】
繊維不織布を生産するためのさらなる好適な方法は、遠心紡糸(回転紡糸とも呼ばれる)である。EP−B1−0624665およびEP−A1−1088918(両方ともBASF社出願)には、紡糸プレートでの遠心紡糸プロセスによってメラミン−ホルムアルデヒド樹脂および熱可塑性ポリマーとのそのブレンドから繊維構造体を生産するための方法が開示されている。
【0010】
遠心力を用いて種々のポリマー材料の溶融物から繊維を生産するための方法および装置は、DE−A−102005048939に記載されている。
【0011】
エレクトロスピニングプロセスを用いナノファイバーを得るためのヘキサフルオロ−2−プロパノール溶液からのアメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)というクモ由来のクモ絹タンパク質の加工処理は、1998年にZarkoob and Renekerによって記載された(Polymer 45: 3973-3977, 2004)。
【0012】
ギ酸溶液からカイコ(Bombyx mori)絹を紡糸する試みは、Sukigara and Koにより開示されており(Polymer 44: 5721-572, 2003)、その試みでは、エレクトロスピニングパラメーターの変更は繊維形態に影響を及ぼした。Jin and Kaplanは、絹または絹/ポリエチレンオキシドの水ベースでのエレクトロスピニングを報告した(Biomacromolecules 3: 1233-1239, 2002)。
【0013】
WO−A−03/060099には、カイコ絹タンパク質およびクモ絹タンパク質を紡糸するための様々な方法(エレクトロスピニングを含む)および装置が記載されている。使用されたクモ絹タンパク質は、トランスジェニックヤギを用い組換えにより作製しその乳汁から精製して紡糸した。
【0014】
WO−A−01/54667には、有機ポリマー、例えば、とりわけポリエチレンオキシドのエレクトロスピニングにより作製された製薬上許容されるポリマー担体を含む医薬組成物の生産が記載されており、その場合、医薬は担体中に存在する。WO 04/014304には、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドレンまたはポリビニルピロリドンまたはポリビニルピロリドン−ポリビニルアセテートコポリマーのエレクトロスピニングにより得られた、ポリマー担体を含む対応する医薬組成物が記載されている。
【0015】
WO−A−2007/082936には、両親媒性自己集合タンパク質を用いた難水溶性効果物質の処方物が記載されている。この方法では、誘起相分離プロセスによりタンパク質マイクロビーズと呼ばれるものが形成される。しかしながら、この方法では水溶性有効成分の有効な処方物は得られない。
【0016】
これまでに分かっている、有効成分および効果物質を処方するための方法は、とりわけ医薬用途のために処方される有効成分に要求される全ての必要条件、例えば機械的安定性、無毒性、生体適合性、高有効成分バイオアベイラビリティを満たしていない。
【0017】
加えて、公知の方法によって処方された有効成分は、結晶の形で存在することが多く、それによりそのバイオアベイラビリティが低下することははっきりしている。とりわけ長期にわたっての有効成分の連続遅延制御放出は、好適な処方物の生産における努力目標である。
【0018】
さらに、先行技術ではこれまでに、ポリマー担体による多様な異なる有効成分種類の処方のための同等に好適な方法は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】WO−A−2007/082936
【特許文献2】DE−A1−10133393
【特許文献3】WO−A1−01/09414
【特許文献4】DE−A1−10355665
【特許文献5】DE−A1−19600162
【特許文献6】DE−A1−10 2004 009 887
【特許文献7】EP−B1−0624665
【特許文献8】EP−A1−1088918
【特許文献9】DE−A−102005048939
【特許文献10】WO−A−03/060099
【特許文献11】WO−A−01/54667
【特許文献12】WO 04/014304
【特許文献13】WO−A−2007/082936
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】D.H. Reneker, H.D. Chun in Nanotechn. 7 (1996), pages 216 ff.
【非特許文献2】Polymer 45: 3973-3977, 2004
【非特許文献3】Polymer 44: 5721-572, 2003
【非特許文献4】Biomacromolecules 3: 1233-1239, 2002
【発明の概要】
【0021】
よって、本発明の目的は、可能な限り先行技術から公知の方法よりも有利に上述の基準の1つ以上を満たしながら、好適な担体を処方助剤として使用し本質的に全ての有効成分種類の処方を可能にする方法を提供することであった。
【0022】
医薬品有効成分、とりわけグアヤコール誘導体の咳誘発物質および粘液溶解薬の分野では、例えば有効成分であるグアヤコールグリセリルエーテル(グアイフェネシンとしても知られる)の、連続遅延放出プロフィールを示す参照製品、例えばMucinex(登録商標)ブランドの錠剤がある。しかしながら、この場合、有効成分の放出は、胃の条件下ででのみ行われる。腸の条件では有効成分の放出には至らない。ほとんどの場合、化学合成された非生体適合性ポリマーは処方助剤として利用されるが、それにはさらなる利益(例えば吸収を高めることによる有効成分のバイオアベイラビリティの増大)はない。従って、本発明のさらなる目的は、有効成分の連続遅延放出を可能にする、咳誘発および粘液溶解有効成分(例えばグアヤコールグリセリルエーテル)の生体適合性処方物を提供することであり、その放出は胃腸管で生じるプロテアーゼによる胃腸管の条件下でのタンパク質分解によっても引き起こされた。
【0023】
上記目的は、驚くべきことに、繊維状でポリマーの有効成分担体と、その担体と結合し放出される有効成分を含み、その担体が少なくとも1種のバイオポリマーをポリマー成分として含む、有効成分含有シート状繊維構造体を提供することにより達成される。
【0024】
より具体的には、本発明によれば、本明細書に記載する新規処方物からの有効成分の連続遅延放出のための、目的の制御可能な引き金機構として、例えば、胃腸管内で、土壌中で(微生物による)または皮膚上で自然発生するプロテアーゼを利用することが可能である。加えて、本明細書に記載する方法によれば、有効成分が非晶形でまたは固溶体として存在する有効成分処方物を作製することが可能である。これらの処方物は、結晶形と比べて、有効成分バイオアベイラビリティの増大をもたらすことができ、これはバイオポリマーの処方助剤、例えば両親媒性自己集合タンパク質と組み合わせても高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】グアヤコールグリセリルエーテル(GGE)有効成分が組み込まれているシート状C16クモ絹タンパク質構造体(繊維)の電子顕微鏡(SEM)画像。
【図2】純物質(GGEまたはC16粉末)と比較した、エレクトロスピニングにより得られたC16クモ絹タンパク質処方物におけるGGE有効成分の結晶性研究(WAXS、透過率による)。
【図3】エレクトロスピニングにより得、錠剤に圧縮したC16クモ絹タンパク質処方物からのGGE有効成分の、リン酸カリウムバッファー(対照)ならびに人工胃液および腸液中への放出。100%値は対応する実施例に記載した総有効成分濃度に設定した。
【図4】Mucinex(登録商標)ブランド(Adams Respiratory Therapeutics社製)の市販の錠剤からのGGE有効成分の放出。
【図5】クロトリマゾール有効成分が組み込まれているシート状C16クモ絹タンパク質構造体(繊維)の電子顕微鏡(SEM)画像。
【図6】純粋クロトリマゾールと比較した、エレクトロスピニングにより得られたC16クモ絹タンパク質処方物におけるクロトリマゾール有効成分の結晶性研究(WAXS、透過率による)。
【図7】エレクトロスピニングにより得、錠剤に圧縮したC16クモ絹タンパク質処方物からのクロトリマゾール有効成分の、リン酸カリウムバッファー(対照)ならびに人工胃液および腸液中への放出。100%値は対応する実施例に記載した有効成分濃度に設定した。
【図8】メタザクロール有効成分が組み込まれているシート状C16クモ絹タンパク質構造体(繊維)の電子顕微鏡(SEM)画像。
【図9】純粋メタザクロールと比較した、エレクトロスピニングにより得られたC16クモ絹タンパク質処方物におけるメタザクロール有効成分の結晶性研究(WAXS、透過率による)。
【図10】エレクトロスピニングにより得られたC16クモ絹タンパク質処方物からのメタザクロール有効成分の、リン酸カリウムバッファー(対照)およびタンパク質分解活性プロテイナーゼK溶液中への放出。
【図11】ユビナールAプラス有効成分が組み込まれているシート状C16クモ絹タンパク質構造体(繊維)の電子顕微鏡(SEM)画像。
【図12】ユビナールAプラス純物質と比較した、エレクトロスピニングにより得られたC16クモ絹タンパク質処方物におけるユビナールAプラス有効成分の結晶性研究(WAXS、透過率による)。
【図13】エレクトロスピニングにより得られたC16クモ絹タンパク質処方物からのユビナールAプラス有効成分の、リン酸カリウムバッファー(対照)およびタンパク質分解活性プロテイナーゼK溶液中への放出。
【図14】(A)シート状R16タンパク質構造体(繊維)および(B)シート状S16タンパク質構造体(繊維)の光学顕微鏡画像および電子顕微鏡(SEM)画像。
【図15】ユビナールAプラス有効成分が組み込まれているシート状R16(参照、(A))およびS16(参照、(B))タンパク質構造体の電子顕微鏡(SEM)画像。
【図16】純粋ユビナールAプラスと比較した、エレクトロスピニングにより得られたR16タンパク質不織布(A)およびS16タンパク質不織布(B)におけるユビナールAプラス有効成分の結晶性研究(WAXS、透過率による)。
【図17】エレクトロスピニングにより得られたR16タンパク質不織布(A)およびS16タンパク質不織布(B)からのユビナールAプラス有効成分の、リン酸カリウムバッファー(対照)およびタンパク質分解活性プロテイナーゼK溶液中への放出。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明:
1.使用する用語の定義:
特に断りのない限り、本説明の文脈においては技術用語についての次の定義を用いる:
「担体ポリマー」とは、バイオポリマーまたはそのブレンド、あるいは少なくとも1種の合成ポリマーとバイオポリマーとのブレンドを意味すると理解され、その担体ポリマーは、処方される有効成分(群)/効果物質(群)と非共有相互作用するか、または微粒子有効成分を(分散形または結晶形で)取り囲むかもしくは吸着する(担持する)能力を有する。
【0027】
「非共有」相互作用とは、有効成分と担体ポリマーとの共有結合の形成とは関係のない当業者に公知のあらゆるタイプの結合を意味すると理解される。その限定されない例としては、次のものが挙げられる。:水素結合形成、錯体形成、イオン相互作用。
【0028】
「有効成分」または「効果物質」とは、農薬、薬学、化粧品または食品および動物飼料産業において用途を見い出すことができる、親水性、親油性または両親媒性を有する合成または天然の低分子量物質;同様に、発明のシート状繊維構造体中に埋め込むことができるしまたは発明のシート状繊維構造体上に吸着させることもできる生物学的に活性な高分子、例えばペプチド(例えば2〜10個のアミノ酸残基を有するオリゴペプチドおよび10個を超える、例えば11〜100個の、アミノ酸残基を有するポリペプチド)、ならびに酵素および一本鎖または二本鎖核酸分子(例えば2〜50個の核酸残基を有するオリゴヌクレオチドおよび50個を超える核酸残基を有するポリヌクレオチド)を意味すると理解される。
【0029】
「低分子量」とは、1モル当たり5000g未満、とりわけ2000g未満、例えば100〜1000gのモル質量を意味する。
【0030】
「高分子量」とは、1モル当たり5000gを超え、とりわけ10 000 000g未満、例えば10 000〜1 000 000gのモル質量を意味する。
【0031】
「有効成分」および「効果物質」という用語は、同義的に用いられる。
【0032】
本発明によれば、「シート状繊維構造体」という用語には、単一ポリマー繊維と、例えば繊維ウェブまたは不織布ウェブを提供するための、多数のかかる繊維の規則または不規則な単層または多層組合せの両方が含まれる。
【0033】
「有効成分担体」は、繊維形状で存在し、本発明により加工される有効成分(群)を、好ましくは、繊維表面上に吸着させ、非共有結合した形でおよび/または繊維材料中に組み込んで、担持する。有効成分は、繊維上に均一または不均一な分布で存在し得る。加えて、有効成分は、非晶形、半結晶形または結晶形で有効成分担体上/中に可逆的に吸着され得る。
【0034】
「可溶性」有効成分担体は、水性溶媒または有機溶媒、好ましくは水性溶媒、例えば水または水系溶媒に、pH範囲pH2〜13、例えば4〜11において部分的にまたは完全に溶解する。よって、水溶解度は、広い範囲内で変化し得、すなわち良好な、すなわち迅速がつ完全または本質的に完全な溶解から非常に遅くかつ完全または不完全な溶解まで変化する。
【0035】
本発明の有効成分処方物の好適な「合成」ポリマー構成成分は、原則として、温度範囲0〜240℃の間、圧力範囲1〜100バールの間、pH範囲0〜14またはイオン強度10mol/lまで範囲内において水または/および有機溶媒に溶解する全てのポリマーである。
【0036】
本発明の文脈における「水性ポリマー分散液」とは、一般専門知識とも一致して、少なくとも2つの互いに混和しないまたは本質的に混和しない相の混合物を指し、それらの少なくとも2つの相の一方の相は水であり、もう一方の相は少なくとも1種の本質的に水不溶性のポリマーを含み、とりわけそれからなる。本発明の文脈における「本質的に水不溶性のポリマー」とは、とりわけ、水溶解度が溶液の総重量に基づき0.1重量%未満であるポリマーである。
【0037】
「分解性」の有効成分担体は、繊維構造体が化学的、生物学的または物理的プロセスにより、例えば光または他の放射線の作用、溶媒、化学的または生化学的酸化、加水分解、タンパク質分解により部分的にまたは完全に破壊される場合に存在する。生化学的プロセスは、酵素または微生物により、例えば原核生物または真核生物、例えば細菌、酵母、真菌により媒介され得る。
【0038】
ポリマーの「混和性」とは、本発明によれば、少なくとも2種の異なる合成ポリマーまたはバイオポリマーの混合物の場合には、一方のポリマーがもう一方のポリマーに対する溶媒として作用することができることを意味すると理解される。これは、2種の異なるポリマーの間で単相系が生成することを意味する。非混和性成分の場合には、2つの異なる相が相応じて存在する。
【0039】
「複合ポリマー」とは、本発明によれば、少なくとも1種の、繊維を形成するポリマー成分と、少なくとも1種の低分子量または高分子量添加物、例えばとりわけ非重合性添加物、例えば以上に定義したとおりの有効成分または効果物質との均一または不均一な混合物を意味すると理解される。
【0040】
シート状繊維構造体の「加工した形態」とは、シート状繊維構造体の生産において最初に得られた製品をさらに加工することを意味すると理解され;例えば繊維を圧縮するかまたは錠剤にし、さらなる担体に適用しおよび/または繊維長を短くするために粉砕に付すということである。
【0041】
特に断りのない限り、ポリマーの分子量数はMn値またはMw値に関する。
【0042】
2.好ましい実施形態:
本発明は、第一に、有効成分含有シート状繊維構造体であって、繊維状で、ポリマーで、可溶性および/または分解性の有効成分担体と、その担体と結合し前記シート状繊維構造体より放出させることができる1種以上の、例えば2種、3種、4種または5種の、低分子量または高分子量の有効成分とを含むシート状繊維構造体であり、前記担体が、所望によりさらに化学的および/または酵素的に、例えばエステル化、アミド化、加水分解、カルボキシル化、アセチル化、アシル化、水酸化、グリコシル化およびファルネシル化により修飾されていてよい1種以上の、例えば2種、3種、4種または5種の、構造またはフレームワークを形成し容易に凝集するバイオポリマー(それらの一部は比較的高分子量である)をポリマー成分としてを含む、有効成分含有シート状繊維構造体に関する。
【0043】
そのシート状繊維構造体は、とりわけ、紡糸プロセスによって、とりわけ、少なくとも1種のバイオポリマーと少なくとも1種の有効成分を、とりわけ、溶解した形で含むエレクトロスピニング可能な溶液(an electrospinnable solution)のエレクトロスピニングによって得られる。
【0044】
そのシート状繊維構造体では、少なくとも1種の有効成分は非晶形、半結晶形または結晶形である。
【0045】
有効成分は前記担体中に組み込まれ(埋め込まれ)および/またはその上に吸着される。
【0046】
バイオポリマーは、好ましくはタンパク質、とりわけ両親媒性自己集合タンパク質である。
【0047】
両親媒性自己集合タンパク質は、好ましくはマイクロビーズを形成するタンパク質である。
【0048】
両親媒性自己集合タンパク質は、好ましくは、本質的に折りたたまれていないタンパク質である。
【0049】
より具体的には、両親媒性自己集合タンパク質は、絹タンパク質、例えばクモ絹タンパク質である。
【0050】
好適なクモ絹タンパク質の一例は、配列番号2のアミノ酸配列を含むC16クモ絹タンパク質または配列同一性が少なくとも約60%、例えば少なくとも約70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%であるこのタンパク質由来の紡糸可能なタンパク質である。
【0051】
他の本質的に折りたたまれていない両親媒性自己集合タンパク質の例は、配列番号4のアミノ酸配列を含むR16タンパク質または配列番号6のアミノ酸配列を含むS16タンパク質;あるいは配列同一性が少なくとも約60%、例えば少なくとも約70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%であるこれらのタンパク質由来の紡糸可能なタンパク質である。
【0052】
より具体的には、本発明は、少なくとも1種の医薬品有効成分、例えば咳誘発および粘液溶解有効成分(去痰薬);例えばとりわけ有効成分グアヤコールグリセリルエーテル(グアイフェネシン;CAS番号93−14−1)またはその誘導体、が存在するシート状繊維構造体を提供する。
【0053】
本発明はさらに、有効成分が作物保護有効成分、または皮膚化粧品および/もしくは毛髪化粧品有効成分であるシート状繊維構造体を提供する。
【0054】
本発明はさらに、担体が、合成ポリマー、例えば、とりわけ合成のホモポリマーまたはコポリマーから選択される少なくとも1種のさらなるポリマー成分を含むシート状繊維構造体を提供する。
【0055】
本発明はまた、ポリマー担体が、
a.少なくとも2種の混和性バイオポリマーの混合物;
b.少なくとも2種の非混和性バイオポリマーの混合物;
c.少なくとも1種の互いに混和する合成ホモポリマーまたはコポリマーと少なくとも1種のバイオポリマーとの混合物;
d.少なくとも1種の互いに混和しない合成ホモポリマーまたはコポリマーと少なくとも1種のバイオポリマーとの混合物
から選択される複合ポリマーであるシート状繊維構造体も提供する。
【0056】
本発明のシート状繊維構造体において、合成ポリマー成分は、約500〜10 000 000、例えば1000〜1 000 000、または10 000〜500 000または25 000〜250 000の範囲のモル質量(Mw)を有する。
【0057】
本発明の有効成分担体繊維の直径は、約10nm〜100μm、例えば50nm〜10μm、または100nm〜2μmである。その有効成分添加は、いずれの場合においてもシート状繊維構造体の固形分に基づき、約0.01〜80重量%、例えば約1〜70重量%または約10〜50重量%である。
【0058】
より具体的には、本発明のシート状繊維構造体は、ポリマー繊維、ポリマーフィルムおよびポリマー不織布から選択される。
【0059】
発明のシート状繊維構造体は、加えて、担体ポリマー成分と有効成分との非共有相互作用(すなわち、とりわけ分子溶液の形成)を特徴とし得る。
【0060】
本発明はさらに、以上で定義したとおりのシート状繊維構造体を加工した形態で、所望により少なくとも1種のさらなる処方助剤と組み合わせて、含む有効成分含有処方物にも関する。
【0061】
例えば、そのシート状繊維構造体は、粉砕または非粉砕形態でその中に存在してよい。
【0062】
さらに、その処方物は、シート状繊維構造体を、緻密な(圧縮した)形態で(例えば錠剤またはカプセル剤)、粉末形態でまたは担体基体に適用して含み得る。
【0063】
本発明の処方物は、とりわけ、化粧品(とりわけ皮膚化粧品および毛髪化粧品)処方物、ヒトおよび動物医薬処方物、農薬処方物、とりわけ殺真菌処方物、除草処方物、殺虫処方物および他の作物保護処方物、ならびに食品および動物飼料添加物、例えば食品および飼料補給物から選択される。
【0064】
本発明はさらに、発明の有効成分含有処方物の生産のための、以上に定義したとおりの有効成分含有シート状繊維構造体の使用;およびその中に存在する有効成分の制御放出のための、以上に定義したとおりの有効成分含有処方物の使用にも関する。
【0065】
最後に、本発明は、以上に定義したとおりのシート状繊維構造体を生産するための方法を提供し、その方法では、
a.少なくとも1種の有効成分を複合液相中で少なくとも1種のバイオポリマー成分と一緒に混合し、
b.その後、紡糸プロセスによってバイオポリマー繊維中へ(上へ)の有効成分の埋め込み(吸着)を行う。
【0066】
より具体的には、その方法における手順は、少なくとも1種の有効成分とポリマー成分を溶媒相中で混合することおよびこの混合物からそれらを紡糸すること;または少なくとも1種の有効成分とポリマー成分を少なくとも2種の互いに混和する溶媒の混合物中で混合すること(有効成分とポリマーは少なくともそれらの溶媒の一方に溶解する)、およびこの混合物からそれらを紡糸することである。
【0067】
より具体的には、本発明は、バイオポリマーが両親媒性自己集合タンパク質であるシート状繊維構造体を生産するための方法を提供し、その方法では、そのタンパク質を少なくとも1種の有効成分とギ酸中で混合した後、この混合物からそれらを紡糸する。
【0068】
使用する紡糸プロセスは、好ましくはエレクトロスピニングプロセスまたは遠心(回転)紡糸プロセスである。
【0069】
その使用温度は、とりわけ約5〜50℃の範囲内である。
【0070】
本発明はさらに、以上に示した担体材料を含むがその担体材料が有効成分、とりわけ低分子量の有効成分を本質的に含まないシート状繊維構造体にも関する。
【0071】
本発明はさらに、例えば、化粧品処方物、ヒトおよび動物医薬処方物、農薬処方物、食品および動物飼料添加物から、選択される有効成分含有処方物または有効成分フリー処方物の生産のためのかかるシート状繊維構造体の使用を提供する。
【0072】
本発明はさらに、繊維状で、ポリマーで、可溶性および/または分解性の担体を含む有効成分フリーシート状繊維構造体にも関し、そのシート状繊維構造体において、担体は、所望によりさらに化学的および/または酵素的に修飾されていてよい少なくとも1種のバイオポリマーをポリマー成分として含み、バイオポリマーは両親媒性自己集合タンパク質であり;バイオポリマーは、とりわけ配列番号4のアミノ酸配列を含むR16タンパク質、および配列番号6のアミノ酸配列を含むS16タンパク質;または配列同一性が少なくとも約60%であるこれらのタンパク質由来の紡糸可能なタンパク質から選択される絹タンパク質である。
【0073】
本発明はさらに、医療創傷治療用品および創傷ケア用品ならびに衛生物品の生産のためのかかる有効成分フリーシート状繊維構造体の使用を提供する。
【0074】
本発明はまた、発明のシート状繊維構造体を用いて生産された創傷治療用品および創傷ケア用品、例えば創傷包帯、硬膏、タンポナーデ(tamponades)、創傷接着剤(wound adhesives)、包帯、包帯材料も提供する。本発明の創傷材料は、例えば、小さな傷、例えば切傷、またはより大きな傷、例えば糖尿病性創傷、潰瘍、例えば褥瘡、外科的創傷、火傷、湿疹などの表面を被覆するために、使用することができる。例えば、発明の製品は、皮膚、眼、耳、鼻、口腔、歯の領域内の、および体内の、出血しているまたは出血していない創傷または損傷、例えば腸領域(腹部、腸管、肝臓、腎臓、尿路)、胸部(心臓、肺)、生殖器部、頭蓋骨、筋肉組織における手術の治療において;組織、血管または臓器の移植に関連した創傷の治療およびケアにおいて使用することができる。
【0075】
本発明はまた、発明のシート状繊維構造体を用いて生産された衛生物品、パーソナルケア分野で一般に使用されるような、例えばオムツ、失禁用製品、パンティーライナー、生理用ナプキン、タンポン、皮膚用およびフェイスケア用パッド、ワイプスなども提供する。
【0076】
3.本発明のさらなる構成:
(i)バイオポリマー
発明の担体構造体の形成のために好適なのは、原則として、フレームワーク構造を形成しおよび/または容易に凝集する能力を有するバイオポリマーである。通常、この目的では高分子量である必要があり、高分子量であることによりその後分子鎖の分子間干渉が起こる。しかしながら、分子内の非共有相互作用、例えば水素結合または疎水性相互作用も本発明の担体構造体の形成に関与し得る。
【0077】
限定されない例としては、セルロース、セルロースエーテル、例えばメチルセルロース(置換度3〜40%)、エチルセルロース、ブチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース;ヒドロキシプロピルセルロース、イソプロピルセルロース、セルロースエステル、例えばセルロースアセテート、細菌性セルロース、デンプン、加工デンプン、例えばメチルエーテルデンプン、アラビアガム、キチン、セラック、ゼラチン、キトサン、ペクチン、カゼイン、アルギン酸塩、ならびに上述の化合物のモノマーから形成されたコポリマーおよびブロックコポリマー;ならびに核酸分子:が挙げられる。
【0078】
特に挙げるべき好適なバイオポリマーは、両親媒性自己集合タンパク質である。両親媒性自己集合タンパク質は、アミノ酸、とりわけ20個の天然アミノ酸から構成されたポリペプチドからなる。アミノ酸はまた、修飾、例えばアセチル化、グリコシル化、ファルネシル化されていてもよい。
【0079】
本発明によれば使用できる特定のタンパク質はその自己集合特性によってより高分子量の構造をとることができそれゆえ有効成分を永久的に封入することができる。これらの両親媒性自己集合タンパク質は、主として難水溶性疎水性有効成分のための処方助剤として好適である。それらの両親媒性分子の特性によって、これらのタンパク質は活性疎水性成分と強く相互作用し水溶液中で活性疎水性成分を安定化することができる。活性疎水性成分をタンパク質マトリックス中に封入するために、続いて相分離プロセスを用いることができる。両親媒性自己集合タンパク質の相互作用は、相互作用する有効成分の水溶解度が高くなると大幅に弱くなる。水溶液からの、例えばリオトロピック塩の添加による誘起相分離プロセスによって、例えばマイクロビーズ中への、水溶性有効成分の効率的な封入が得られないのはこのためである。紡糸プロセスによれば、両親媒性自己集合タンパク質と水溶性有効成分が溶解または分散した形で存在する水溶液または有機溶媒から、より高分子量のタンパク質構造体、例えばシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)を作製することができる。よって、水不溶性または難水溶性有効成分を封入することも可能である。
【0080】
作製されたタンパク質リッチ有効成分リッチ相は、後に硬化させ機械的に安定な有効成分含有タンパク質構造体の形で取り出し所望により乾燥させることができ、錠剤またはカプセル剤に加工することができる。
【0081】
水溶性効果物質および難水溶性効果物質の両方の処方のために好適な両親媒性自己集合タンパク質は、タンパク質マイクロビーズ形成することができるタンパク質である。タンパク質マイクロビーズは、平均粒径が0.1〜100μm、とりわけ0.5〜20μm、好ましくは1〜5μm、より好ましくは2〜4μmの球形である。
【0082】
タンパク質マイクロビーズは、好ましくは、以下に記載する方法により調製することができる:
タンパク質を第1の溶媒に溶解する。使用する溶媒は、例えば、塩水溶液であり得る。とりわけ好適なのは、2モル濃度を超える、とりわけ4モル濃度を超える、より好ましくは5モル濃度を超える濃度を有し、そのイオンがナトリウムイオンおよび塩化物イオンより顕著なカオトロピック特性を有する高濃度塩溶液である。かかる塩溶液の一例は、6Mチオシアン酸グアニジンまたは9M臭化リチウムである。加えて、タンパク質を溶解するために有機溶媒を使用することが可能である。とりわけ好適なのは、フッ素化アルコールまたは環状炭化水素または有機酸である。その例は、ヘキサフルオロイソプロパノール、シクロヘキサンおよびギ酸である。タンパク質マイクロビーズは、記載した溶媒中で作製することができる。あるいは、この溶媒ををさらなる溶媒、例えば透析または希釈による低濃度(c<0.5M)の塩溶液に置き換えることができる。溶解したタンパク質の終濃度は、0.1〜100mg/mlの間とすることになる。この方法を実施する温度は、一般に0〜80℃、好ましくは5〜50℃、より好ましくは10〜40℃である。
【0083】
水溶液を用いる場合、バッファーも好ましくはpH4〜10、より好ましくは5〜9、最も好ましくは6〜8.5のの範囲で加え得る。
【0084】
添加物の添加により相分離が起こる。この場合には、溶媒と添加物の混合により乳化されたタンパク質リッチ相が形成される。表面効果により、乳化したタンパク質リッチ液滴は円形をとる。溶媒、添加物、およびタンパク質濃度を選択することによって、タンパク質マイクロビーズの平均径を0.1μm〜100μmの間の値に調整することが可能である。
【0085】
使用する添加物は、第一に第1の溶媒と混和性であり第二にタンパク質リッチ相の形成を誘導する全ての物質であり得る。マイクロビーズ形成を有機溶媒中で行う場合、この目的で好適な物質は、溶媒よりも低い極性を有する有機物質、例えばトルエンである。水溶液中では、使用する添加物は、そのイオンがナトリウムイオンおよび塩化物イオンより顕著なコスモトロピック特性(more pronounced cosmotropic properties)を有する塩(例えば硫酸アンモニウム;リン酸カリウム)塩であり得る。添加物の終濃度は、添加物の種類に応じて、タンパク質溶液に基づき1重量%〜50重量%の間とすることになる。
【0086】
タンパク質リッチ液滴は、円形を保持したまま硬化により固定される。固定は、強い分子間相互作用の発生に基づいている。相互作用の種類は、非共有結合(例えば分子間βシート結晶の形成によって生じる)、または共有結合(例えば化学的架橋によって生じる)であり得る。硬化は、添加物によりおよび/またはさらなる好適な物質の添加により行うことができる。硬化は、0〜80℃の間、好ましくは5〜60℃の間の温度で達成される。
【0087】
このさらなる物質は、化学架橋剤であり得る。化学架橋剤とは、少なくとも2つの化学反応性基がリンカーを介して互いに結合している分子を意味すると理解される。その例は、スルフヒドリル反応性基(例えばマレイミド、ピドリジルジスルフィド(pydridyl disulfide)、α−ハロアセチル、ビニルスルホン、スルファトアルキルスルホン(好ましくはスルファトエチルスルホン))、アミン反応性基(例えばスクシンイミジルエステル、カルボジイミド、ヒドロキシメチルホスフィン、イミドエステル、PFPエステル、アルデヒド、イソチオシアネートなど)、カルボキシル反応性基(例えばアミンなど)、ヒドロキシル反応性基(例えばイソシアネートなど)、任意の基(例えばアリールアジドなど)および光活性化基(例えばペルフルオロフェニルアジドなど)である。これらの反応性基は、タンパク質に存在するアミン、チオール、カルボキシルまたはヒドロキシル基と共有結合を形成することができる。
【0088】
安定化させたマイクロビーズは、好適なさらなる溶媒、例えば水で洗浄した後、当業者にはよく知られている方法により、例えば凍結乾燥、接触乾燥または噴霧乾燥により乾燥させる。走査電子顕微鏡を用いてビーズ形成が成功したことを確認する。
【0089】
タンパク質マイクロビーズの作製のために好適なタンパク質は、主に本質的に折りたたまれていない形で水溶液中に存在するタンパク質である。この状態は、例えば、プログラムIUpred(http://iupred.enzim.hu/index.html; The Pairwise Energy Content Estimated from Amino Acid Composition Discriminates between Folded and Intrinsically Unstructured Proteins; Zsuzsanna Dosztanyi, Veronika Csizmok, Peter Tompa and Istvan Simon; J. Mol. Biol. (2005) 347, 827-839)の基礎となるアルゴリズムによって計算することができる。主に本質的に折りたたまれていない状態は、50%を超えるアミノ酸残基に関してこのアルゴリズムによって>0.5の値が算出されるときと考えられる(予測方式:長い不規則)。
【0090】
(ii)絹タンパク質
紡糸プロセスによって有効成分を処方するためのさらなる好適なタンパク質は絹タンパク質である。これらは、以下、本発明によれば、高度反復アミノ酸配列を含み、動物において液体形態で保存され、その分泌時に剪断または紡糸の結果として繊維を形成するタンパク質を意味すると理解される(Craig, C. L. (1997) Evolution of arthropod silks. Annu. Rev. Entomol. 42: 231-67)。
【0091】
紡糸プロセスによって有効成分を処方するための特に好適なタンパク質は、クモ類からその原初の形態で単離されたクモ絹タンパク質である。
【0092】
極めて特に好適なタンパク質は、クモの大瓶状腺(the major ampullate gland)から単離された絹タンパク質である。
【0093】
好ましい絹タンパク質は、ニワオニグモ(Araneus diadematus)の大瓶状腺からのADF3およびADF4である(Guerette et al., Science 272, 5258:112-5 (1996))。
【0094】
紡糸プロセスによって有効成分を処方するための同等に好適なタンパク質は、天然絹タンパク質から誘導され遺伝子工学法を用いて原核生物または真核生物発現系において異種産生された天然または合成タンパク質である。発現原核生物の限定されない例は、とりわけ、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、巨大菌(Bacillus megaterium)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)である。発現真核生物の限定されない例は、酵母、例えば、とりわけサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、糸状菌、例えば、とりわけアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)、哺乳類細胞、例えば、とりわけhela細胞、COS細胞、CHO細胞、昆虫細胞、例えば、とりわけSf9細胞、MEL細胞である。
【0095】
紡糸プロセスによって有効成分を処方するためにさらに好適なのは、天然絹タンパク質の反復単位に基づいた合成タンパク質である。それらの合成タンパク質は、合成反復絹タンパク質配列に加えて、1以上の天然非反復絹タンパク質配列をさらに含んでよい(Winkler and Kaplan, J Biotechnol 74:85-93 (2000))。
【0096】
また、紡糸プロセスによって有効成分を処方するために使用できるのは、とりわけ、天然クモ絹タンパク質の反復単位に基づいた合成クモ絹タンパク質である。それらの合成クモ絹タンパク質は、合成反復クモ絹タンパク質配列に加えて、1以上の天然非反復クモ絹タンパク質配列をさらに含んでよい。
【0097】
合成クモ絹タンパク質の中では、好ましくは、C16タンパク質を挙げるべきである(Huemmerich et al. Biochemistry, 43(42):13604-13612 (2004))。このタンパク質は配列番号2に示されるポリペプチド配列を有する。
【0098】
配列番号2に示されるポリペプチド配列に加えて、この配列の機能的等価物、機能的誘導体および塩もまた特に好ましい。
【0099】
紡糸プロセスによって有効成分を処方するためにさらに好ましいのは、昆虫構造タンパク質、例えばレシリンの配列と組み合わせた、天然絹タンパク質の反復単位に基づいた合成タンパク質である(Elvin et al., 2005, Nature 437: 999-1002)。
【0100】
絹タンパク質とレシリンからなるこれらの組合せタンパク質の中では、とりわけ、R16タンパク質およびS16タンパク質を挙げるべきである。これらのタンパク質はそれぞれ、配列番号4および配列番号6に示されるポリペプチド配列を有する。
【0101】
配列番号4および配列番号6に示されるポリペプチド配列に加えて、これらの配列の機能的等価物、機能的誘導体および塩もまた特に好ましい。
【0102】
(iii)変性バイオポリマー
「機能的等価物」とは、本発明によれば、とりわけ、上述のアミノ酸配列の少なくとも1つの配列位置において明記されたものとは異なるアミノ酸を有するがそれにもかかわらず効果物質をパッケージングする特性を有する突然変異体を含むと理解される。よって、「機能的等価物」は、1以上のアミノ酸付加、置換、欠失および/または逆位によって得られる突然変異体を含み、その場合、記述した変化は、発明の特性プロフィールを有する突然変異体をもたらすという条件で、任意の配列位置で起こり得る。機能的等価性は、とりわけ、突然変異体と未変化ポリペプチドとの間で反応性パターンが質的に一致する場合にも存在する。
【0103】
また、上記の意味における「機能的等価物」は、記載したポリペプチドの「前駆体」、ならびにそのポリペプチドの「機能的誘導体」および「塩」でもある。
【0104】
「前駆体」は、所望の生物活性の有無にかかわらずそのポリペプチドの天然または合成前駆体である。
【0105】
好適なアミノ酸置換の例は次の表から引用することができる:
「塩」という表現は、本発明のタンパク質分子の、カルボキシル基の塩およびアミノ基の酸付加塩の両方を意味すると理解される。カルボキシル基の塩は、それ自体が公知の方法によって調製することができ、無機塩、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄および亜鉛の塩、ならびに有機塩基例えばアミン、例えばトリエタノールアミン、アルギニン、リシン、ピペリジンなどとの塩が挙げられる。酸付加塩、例えば無機酸(例えば塩酸または硫酸)との塩、および有機酸(例えば酢酸およびシュウ酸)との塩も同様に、本発明対象の一部をなす。
【0106】
本発明のポリペプチドの「機能的誘導体」も同様に、公知の技術を用いて機能性アミノ酸側鎖基またはそれらのN末端もしくはC末端で調製することができる。かかる誘導体には、例えば、アンモニアとまたは第一級もしくは第二級アミンとの反応によって得られるカルボン酸基の脂肪族エステル、カルボン酸基のアミド、;アシル基との反応によって調製される遊離アミノ基のN−アシル誘導体、;あるいはアシル基との反応によって調製される遊離ヒドロキシル基のO−アシル誘導体が含まれる。
【0107】
本発明によればさらに包含される「機能的等価物」は、本明細書において具体的に開示するタンパク質/ポリペプチドのホモログである。これらは、具体的に開示するアミノ酸配列の1つに対して少なくとも60%、例えば70%、80%または85%、例えば90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%、の同一性を有する。
【0108】
2配列間の「同一性」とは、とりわけ、いずれの場合においても全配列長にわたる基の同一性、とりわけ、the Vector NTI Suite 7.1 (Vector NTI Advance 10.3.0, Invitrogen Corp.)(すなわちInformax社(USA)のソフトウェア、clustal法(Higgins DG, Sharp PM. Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer. Comput Appl. Biosci. 1989 Apr;5(2):151-1)を用いる)を使用し、次のパラメーター設定を用い比較により計算された同一性を意味すると理解される:
(iv)有効成分の処方
有効成分の処方物は、例えば、バイオポリマー、例えば両親媒性自己集合タンパク質を用いて様々に作製することができる。有効成分は、紡糸プロセスによりシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中にパッケージングまたは封入することができる。
【0109】
タンパク質−有効成分組合せからなるシート状繊維構造体は、当業者に公知の全ての紡糸プロセスにより溶液または微細分散液(乾式紡糸、湿式紡糸)およびゲルから作製することができる。特に好適な紡糸プロセスは、溶液または微細分散液からのプロセスであり、より好ましくは遠心紡糸(回転紡糸)およびエレクトロスピニング(静電紡糸)が挙げられる。
【0110】
タンパク質を繊維へ紡糸する場合、好適な繊維径は、10nm〜100μm、好ましくは繊維径50nm〜10μm、より好ましくは100nm〜2μmである。
【0111】
エレクトロスピニング(静電紡糸)の場合、処方する溶液または微細分散液を0.01〜10kV/cmの間、より好ましくは1〜6kV/cmの間、最も好ましくは2〜4kV/cmの間の強度の電場に置く。電気力が処方物の表面張力を超えるとすぐに、大部分はジェットの形で対向電極へ移動する。溶媒は電極間の空間において蒸発し、そのため処方物中の固形物は対電極上に繊維の形で存在する。紡糸電極は、ダイまたはシリンジをベースとし得るしまたはローラー形状であり得る。紡糸は、垂直方向(下から上へおよび上から下へ)、および水平方向のいずれかにおいて行われ得る。
【0112】
さらに好適なプロセスは遠心紡糸(回転紡糸)である。このプロセスでは、処方物または微細分散液を重力場に置く。この目的で、繊維原料は容器に入れられ、その容器は回転するようになっており、その過程で流動化した繊維原料が求心力または遠心力により繊維の形で容器から排出される。繊維は、続いて、シート状構造体を形成するためにガス流により運び去り組み合わせることができる。
【0113】
有効成分は、本発明による方法により作製したシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中に封入することにより処方することができる。このプロセスは2つのステップを含む。第1のステップにおいて、有効成分およびバイオポリマー、例えば両親媒性自己集合タンパク質から、それらの成分を共通相中で混合することにより紡糸液を調製する。この目的で、溶媒または溶媒混合物を用いて有効成分およびタンパク質を直接溶液にすることができる。あるいは、有効成分およびタンパク質をまず異なる溶媒に溶解することができ、その後、それらの溶液を一緒に混合することができ、それによってこの場合も共通相が生成する。その共通相は分子分散相であり得るしまたはコロイド分散相でもあり得る。
【0114】
加えて、例えば、溶液の粘度を高めるためまたは他の点でその加工性を向上させるためまたは好ましい構造材料特性、例えば結晶性、または好ましい性能特性、例えば処方された有効成分の制御、遅延または連続放出プロフィールを得るために、紡糸液にさらなる物質を添加し得る。好ましい添加物は、水溶性ポリマーまたはとりわけ水性ポリマー分散液である。紡糸液中の添加物の好適な量は、>0.1重量%、好ましくは>0.5重量%、より好ましくは>1重量%、最も好ましくは>5重量%である。
【0115】
加えて、紡糸液またはそれから作製したシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)に、錠剤またはカプセル剤の崩壊を可能にしそれによって錠剤またはカプセル剤に圧縮されたシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)およびその中に存在する有効成分の分散の向上を可能にする物質を添加することが可能である。
【0116】
有効成分およびタンパク質の異なる溶媒への溶解と、それに続くそれらの2つの溶液の混合は、とりわけ、有効成分およびタンパク質が共通の溶媒または溶媒混合物に溶解することができない場合に有利である。このようにして、好適な溶媒に溶解した有効成分を、この有効成分が溶解しない別の溶媒で希釈することによって、疎水性有効成分のコロイド分散溶液を作製することも可能である。
【0117】
タンパク質は、一般的に良好な水溶解度を有するため、水溶液を用いて実施することが好ましい。しかしながら、水および水混和性有機溶媒の混合物または有機溶媒の単独使用も可能である。好適な水混和性溶媒の例は、アルコール、例えばメタノール、エタノールおよびイソプロパノール、フッ素化アルコール、例えばヘキサフルオロイソプロパノールおよびトリフルオロエタノール、アルカノン、例えばアセトン、あるいはスルホキシド、例えばジメチルスルホキシド、またはホルムアミド、例えばジメチルホルムアミド、または他の有機溶媒、例えばテトラヒドロフランおよびアセトニトリルまたはN−メチル−2−ピロリドンまたはギ酸エステルである。一般的には、タンパク質を溶解することができる全ての溶媒および溶媒混合物を用いて実施することが可能である。好適な溶媒の例は、水または水性緩衝系および塩溶液、フッ素化アルコール、例えばヘキサフルオロイソプロパノールまたはトリフルオロエタノール、イオン性液体、例えば酢酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMIM)、カオトロピック塩の水溶液、例えば尿素、塩酸グアニジンおよびチオシアン酸グアニジン、または有機酸、例えばギ酸、およびこれらの溶媒と他の有機溶媒との混合物である。タンパク質用の溶媒と混合することができる溶媒の例としては、水、アルコール、例えばメタノール、エタノールおよびイソプロパノール、アルカノン、例えばアセトン、スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド、ホルムアミド、例えばジメチルホルムアミド、ハロアルカン、例えば塩化メチレン、あるいはさらなる有機溶媒、例えばテトラヒドロフランが挙げられる。
【0118】
有効成分の処方の第2のステップは、タンパク質の集合であり、この集合は、複合固体または高粘度のゲル状相を生み出すために、例えば、溶媒の蒸発、電場により、剪断力または遠心力によりもたらされ、このゲル状相はその後硬化する。これにより有効成分が集合形態のタンパク質中に組み込まれる。集合タンパク質構造体は、有効成分を含有するシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)として作製することができ、基体、例えばマイクロファイバー不織布上への紡糸作業中に用意することができる。集合タンパク質構造体は、続いて、錠剤またはカプセル剤に圧縮することができる。
【0119】
有効成分は表面に結合させシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中に組み込むことができるし、あるいはシート状タンパク質構造体と結合させることもできる。本発明による方法により作製したシート状タンパク質構造体と有効成分との結合は、集合混合物中の溶解有効成分の枯渇により判定することができる。有効成分の濃度は、その特性の定量分析により測定することができる。例えば、光吸収有効成分の結合は、測光法により分析することができる。この目的で、例えば、シート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)の色または処方混合物の低タンパク質および低有効成分相の脱色を、有色または光吸収有効成分の吸収を測定することにより決定する。これらの方法を用いて、マイクロビーズ中の有効成分含量の高さを決定することも可能である。この目的で、シート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)を、封入する有効成分に好適な溶媒と混合し、この溶媒により有効成分を浸出させる。続いて、その溶媒における有効成分含量を、例えば吸光測光法により、決定する。あるいは、タンパク質分解活性酵素を用いてタンパク質集合構造体を分解することもでき、存在する有効成分が放出されその後それを定量する。
【0120】
(v)合成ポリマー成分
好適な合成ポリマーは、例えば、芳香族ビニル化合物のホモポリマーおよびコポリマー、アルキルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、アルキルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、α−オレフィンのホモポリマーおよびコポリマー、脂肪族ジエンのホモポリマーおよびコポリマー、ハロゲン化ビニルのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルアセテートのホモポリマーおよびコポリマー、アクリロニトリルのホモポリマーおよびコポリマー、ウレタンのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、ならびに上述のポリマーを構成するモノマー単位の2種以上から形成されたコポリマーからなる群から選択される。
【0121】
有用な担体ポリマーとしては、より具体的には、次のモノマーに基づいたポリマーが挙げられる:
アクリルアミド、アジピン酸、アリルメタクリレート、α−メチルスチレン、ブタジエン、ブタンジオール、ブタンジオールジメタクリレート、ブタンジオールジビニルエーテル、ブタンジオールジメタクリレート、ブタンジオールモノアクリレート、ブタンジオールモノメタクリレート、ブタンジオールモノビニルエーテル、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチルアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、エチレン、エチレングリコールブチルビニルエーテル、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジビニルエーテル、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルビニルエーテル、グリシジルメタクリレート、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールモノビニルエーテル、イソブテン、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、イソプレン、イソプロピルアクリルアミド、メチルアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、メチルメタクリレート、メチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピロリドン、オクタデシルビニルエーテル、フェノキシエチルアクリレート、ポリテトラヒドロフラン2ジビニルエーテル、プロピレン、スチレン、テレフタル酸、tert−ブチルアクリルアミド、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジメチルアクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルメチルエーテル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ビニル2−エチルヘキシルエーテル、4−tert−ブチル安息香酸ビニル、ビニルアセテート、塩化ビニル、ビニルドデシルエーテル、塩化ビニリデン、ビニルイソブチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルプロピルエーテルおよびビニルtert−ブチルエーテル。
【0122】
「合成ポリマー」という用語には、ホモポリマーおよびコポリマーの両方が含まれる。有用なコポリマーは、ランダム系だけでなく交互系、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーでもある。「コポリマー」という用語には、2種以上の異なるモノマーから形成されたポリマー、あるいは例えばステレオブロックコポリマーの場合と同様に、少なくとも1種のモノマーのポリマー鎖への組込みが様々な方法によって実現し得るポリマーが含まれる。
【0123】
ホモポリマーおよびコポリマーのブレンドを使用することも可能である。ホモポリマーおよびコポリマーは互いに混和する場合もあるしまたは互いに混和しない場合もある。
【0124】
好ましくは、次のポリマーを挙げるべきである:
ポリビニルエーテル、例えばポリベンジルオキシエチレン、ポリビニルアセタール、ポリビニルエステル、例えばポリビニルアセテート、ポリオキシテトラメチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、例えばポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリメタクリルアミド、ポリヒドロキシブチレート、ポリビニルアルコール、アセチル化ポリビニルアルコール、ポリビニルホルムアミド、ポリビニルアミン、ポリカルボン酸(ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸)、ポリアクリルアミド、ポリイタコン酸、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリスルホン酸(ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)すなわちPAMPS)、ポリメタクリルアミド、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシド;ポリ−N−ビニルピロリドン;マレイン酸、ポリ(エチレンイミン)、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリレート、例えばポリフェノキシエチルアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリドデシルアクリレート、ポリ(イボルニルアクリレート)、ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリ(t−ブチルアクリレート)、ポリシクロヘキシルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ポリヒドロキシプロピルアクリレート、ポリメタクリレート、例えばポリメチルメタクリレート、ポリ(n−アミルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリエチルメタクリレート、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリシクロヘキシルメタクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)、ポリラウリルメタクリレート、ポリ(t−ブチルメタクリレート)、ポリベンジルメタクリレート、ポリ(イボルニルメタクリレート)、ポリグリシジルメタクリレートおよびポリステアリルメタクリレート、ポリスチレン、さらに(例えば無水マレイン酸との)スチレン系コポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、メチルメタクリレート−スチレンコポリマー、N−ビニルピロリドンコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)。
【0125】
特に、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリメチルメタクリレート、アクリレート−スチレンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリアミドおよびポリエステルを挙げるべきである。
【0126】
さらに、生分解性合成ポリマーを使用することも可能である。
【0127】
「生分解性ポリマー」という用語は、DIN V 54900に示される生分解性の定義を満たす全てのポリマーを含むものであり、より具体的にはコンポスト化可能なポリエステルを意味する。
【0128】
一般的には、生分解性とは、ポリマー、例えばポリエステルが、例えば適当な検証可能な期間内に分解するということを意味する。分解とは、加水分解および/または酸化により、主に微生物、例えば細菌、酵母、真菌および藻類の作用によって起こりうるものである。生分解性は、例えば、ポリエステルをコンポストと混合し一定の期間それを保存することによって定量することができる。ASTM D 5338、ASTM D 6400およびDIN V 54900によれば、例えば、コンポスト化中に熟成させたコンポストにCO2を含まない空気を通し、熟成させたコンポストを規定の温度プログラム下におく。本明細書における生分解性は、サンプルからのCO2の正味の放出量(サンプルを含まないコンポストからのCO2放出量を引いた後のもの)とサンプルからのCO2の最大放出量(サンプルの炭素含量から算出したもの)との比率によって定義される。生分解性ポリエステルは、一般には、コンポスト化のわずか数日後に分解の明らかな様相、例えば真菌増殖、亀裂および穴傷を示す。生分解性ポリマーの例は、生分解性ポリエステル、例えばポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリアルキレンアジペートテレフタレート、ポリヒドロキシアルカノエート(ポリヒドロキシブチレート)およびポリラクチドグリコシドである。特に好ましいのは、生分解性ポリアルキレンアジペートテレフタレートであり、好ましくはポリブチレンアジペートテレフタレートである。好適なポリアルキレンアジペートテレフタレートは、例えばDE 4 440 858に記載されている(また、市販されている、例えば、BASF社のEcoflex(登録商標)である)。
【0129】
(vi)有効成分
「有効成分」および「効果物質」という用語は、以下、同義的に用いられる。これらの用語には、水溶性効果物質および難水溶性効果物質の両方が含まれる。「難水溶性」有効成分および「疎水性」有効成分または「難水溶性」効果物質および「疎水性」効果物質という用語は、同義的に用いられる。難水溶性有効成分とは、以下、20℃における水溶解度が<1重量%、好ましくは<0.5重量%、より好ましくは<0.25重量%、最も好ましくは<0.1重量%である化合物を指す。水溶性有効成分とは、以下、20℃における水溶解度が>1重量%、好ましくは>10重量%、より好ましくは>40重量%、最も好ましくは>70重量%である化合物を指す。
【0130】
好適な効果物質は、色素、とりわけ次の表に明記するものである:
特に有利な色素は、次のリストに明記する油溶性または油分散性化合物である。カラーインデックス番号(CIN)は、the Rowe Colour Index, 3rd edition, Society of Dyers and Colourists, Bradford, England, 1971から引用している。
【0131】
さらに好ましい効果物質は、脂肪酸、とりわけアルキル分岐を有する飽和脂肪酸、より好ましくは分岐エイコサン酸、例えば18−メチルエイコサン酸である。
【0132】
さらに好ましい効果物質は、カロテノイドである。カロテノイドは、本発明によれば、次の化合物、およびそのエステル化またはグリコシル化誘導体:β−カロテン、リコピン、ルテイン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、シトラナキサンチン、カンタキサンチン、ビキシン、β−アポ−4−カロテナール、β−アポ−8−カロテナール、β−アポ−8−カロチン酸エステル、ニューロスポレン、エチネノン、アドニルビン、ビオラキサンチン、トルレン、トルラロジンを個別にまたは混合物として意味すると理解される。好ましく使用されるカロテノイドは、β−カロテン、リコピン、ルテイン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、シトラナキサンチンおよびカンタキサンチンである。
【0133】
さらに好ましい効果物質は、ビタミン、とりわけレチノイドおよびそのエステルである。
【0134】
本発明の文脈において、レチノイドとは、ビタミンAアルコール(レチノール)およびその誘導体、例えばビタミンAアルデヒド(レチナール)、ビタミンA酸(レチノイン酸)およびビタミンAエステル(例えば酢酸レチニル、プロピオン酸レチニルおよびパルミチン酸レチニル)を意味する。「レチノイン酸」という用語には、オールトランスレチノイン酸だけでなく13−シスレチノイン酸も含まれる。「レチノール」および「レチナール」という用語には、好ましくは、オールトランス化合物が含まれる。本発明の処方物に使用される好ましいレチノイドは、オールトランスレチノール(以下、レチノールと呼ぶ)である。
【0135】
さらに好ましい効果物質は、A群、B群、C群、E群およびF群のビタミン、プロビタミンおよびビタミン前駆体、とりわけ3,4−ジデヒドロレチノール、β−カロテン(ビタミンAのプロビタミン)、アスコルビン酸のパルミチン酸エステル、トコフェロール、とりわけα−トコフェロールおよびそのエステル(例えば酢酸エステル、ニコチン酸エステル、リン酸エステルおよびコハク酸エステル);さらにビタミンFであり、これは、必須脂肪酸、特にリノール酸、リノレン酸およびアラキドン酸を意味すると理解される。
【0136】
さらに好ましい効果物質は、ビタミンE群の親油性油溶性抗酸化剤、すなわちトコフェロールおよびその誘導体、没食子酸エステル、フラボノイドおよびカロテノイド、並びにブチルヒドロキシトルエン/アニソールである。
【0137】
さらに好ましい効果物質は、リポ酸および好適な誘導体(塩、エステル、糖、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ペプチドおよび脂質)である。
【0138】
さらに好ましい効果物質は、紫外線防護フィルターである。これは、紫外線を吸収し吸収したエネルギーを再びより長い波長の放射線、例えば熱の形で放出することのできる有機物質を意味すると理解される。
【0139】
使用される油溶性UV−Bフィルターは、例えば、次の物質であり得る:
3−ベンジリデンカンファーおよびその誘導体、例えば3−(4−メチルベンジリデン)カンファー;4−アミノ安息香酸誘導体、好ましくは4−(ジメチルアミノ)安息香酸2−エチルヘキシル、4−(ジメチルアミノ)安息香酸2−オクチルおよび4−(ジメチルアミノ)安息香酸アミル;桂皮酸のエステル、好ましくは4−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、4−メトキシ桂皮酸プロピル、4−メトキシ桂皮酸イソアミル、4−メトキシ桂皮酸イソペンチル、2−シアノ−3−フェニル桂皮酸2−エチルヘキシル(オクトクリレン);
サリチル酸のエステル、好ましくはサリチル酸2−エチルヘキシル、サリチル酸4−イソプロピルベンジル、サリチル酸ホモメンチル;ベンゾフェノンの誘導体、好ましくは2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン;ベンザルマロン酸のエステル、好ましくは4−メトキシベンズマロン酸ジ−2−エチルヘキシル;トリアジン誘導体、例えば2,4,6−トリアニリノ−(p−カルボ−2’−エチル−1’−ヘキシルオキシ)−1,3,5−トリアジン(オクチルトリアゾン)およびジオクチルブタミドトリアゾン(Uvasorb(登録商標)HEB):
プロパン−1,3−ジオン、例えば1−(4−tert−ブチルフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオン。
【0140】
桂皮酸のエステル、好ましくは4−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、4−メトキシ桂皮酸イソペンチル、2−シアノ−3−フェニル桂皮酸2−エチルヘキシル(オクトクリレン)の使用が特に好ましい。
【0141】
ベンゾフェノンの誘導体、とりわけ2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンの使用、およびプロパン−1,3−ジオン、例えば1−(4−tert−ブチルフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオンの使用がさらに好ましい。
【0142】
有用な典型的UV−Aフィルターとしては、
ベンゾイルメタンの誘導体、例えば1−(4’−tert−ブチルフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオン、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンまたは1−フェニル−3−(4’−イソプロピルフェニル)プロパン−1,3−ジオン;
ベンゾフェノンのアミノ−ヒドロキシル置換誘導体、例えばn−ヘキシル安息香酸N,N−ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル:が挙げられる。
【0143】
UV−AおよびUV−Bフィルターは、当然ながら、混合しても使用し得る。
【0144】
好適なUVフィルター物質を次の表に明記する:
上述の2群の主要な光安定剤に加えて、紫外線が皮膚に透過すると誘発される光化学反応の連鎖を停止する抗酸化タイプの第2の光安定剤を使用することも可能である。その典型例は、トコフェロール(ビタミンE)および油溶性アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)である。
【0145】
本発明によれば、効果物質として記述した化合物の好適な誘導体(塩、エステル、糖、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ペプチドおよび脂質)を使用することが可能である。
【0146】
過酸化物分解剤と呼ばれるもの、すなわち、過酸化物、より好ましくは脂質過酸化物を分解することができる化合物がさらに好ましい。これらは有機物質、例えば5−ピリミジノール誘導体および3−ピリジノール誘導体ならびにプロブコールを意味すると理解される。
【0147】
加えて、記述した過酸化物分解剤は、好ましくは、特許出願WO−A−02/07698およびWO−A03/059312(これらの内容は参照により明示的に本明細書に組み入れられる)に記載されている物質、好ましくは、フリーラジカル変換環境を作ることなく過酸化物またはヒドロペルオキシドを対応するアルコールに還元することができる、それらの特許出願に記載されているホウ素含有または窒素含有化合物である。加えて、立体障害アミンもこの目的で使用することが可能である。
【0148】
さらなる群は、紫外線によってダメージを受けた皮膚に対する炎症抑制作用を有する抗刺激剤の群である。かかる物質は、例えばビサボロール、フィトールおよびフィタントリオールである。
【0149】
効果物質のさらなる群は、作物保護に使用することができる有効成分、例えば除草剤、殺虫剤および殺真菌剤の群である。
【0150】
次の殺虫剤リストに考えられる作物保護有効成分を示すが、それに限定されるものではない:
A.1.オルガノ(チオ)ホスフェート:アジンホス−メチル、クロルピリホス、クロルピリホス−メチル、クロルフェンビンフォス、ダイアジノン、ジスルホトン、エチオン、フェニトロチオン、フェンチオン、イソキサチオン、マラチオン、メチダチオン、メチル−パラチオン、オキシデメトン−メチル、パラオキソン、パラチオン、フェントエート、ホサロン、ホスメット、ホスファミドン、ホレート、ホキシム、ピリミホス−メチル、プロフェノホス、プロチオホス、スルプロホス、テトラクロルビンホス、テルブホス、トリアゾホス、トリクロルホン;
A.2.カルバメート:アラニカルブ、ベンジオカルブ、ベンフラカルブ、カルバリル、カルボフラン、カルボスルファン、フェノキシカルブ、フラチオカルブ、メチオカルブ、メトミル、オキサミル、ピリミカルブ、チオジカルブ、トリアザメート:
A.3.ピレスロイド:アレスリン、ビフェントリン、シフルトリン、シハロトリン、シフェノトリン、シペルメトリン、α−シペルメトリン、β−シペルメトリン、ζ−シペルメトリン、デルタメトリン、エスフェンバレレート、エトフェンプロクス、フェンプロパトリン、フェンバレレート、イミプロトリン、λ−シハロトリン、ペルメトリン、プラレトリン、ピレトリンIおよびII、レスメトリン、シラフルオフェン、タウ−フルバリネート、テフルトリン、テトラメトリン、トラロメトリン、トランスフルトリン;
A.4.成長調節剤:a)キチン合成阻害剤:ベンゾイル尿素:クロルフルアズロン、シラマジン、ジフルベンズロン、フルシクロクスロン、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、ルフェヌロン、ノバルロン、テフルベンズロン、トリフルムロン;ブプロフェジン、ジオフェノラン、ヘキシチアゾックス、エトキサゾール、クロフェンタジン;b)エクジソンアンタゴニスト:ハロフェノジド、メトキシフェノジド、テブフェノジド、アザジラクチン;c)ジュベノイド:ピリプロキシフェン、メトプレン、フェノキシカルブ;d)脂質生合成阻害剤:スピロジクロフェン、スピロメシフェン、式D1のテトロン酸誘導体
【化1】
【0151】
A.5.ニコチン受容体アゴニスト/アンタゴニスト:クロチアニジン、ジノテフラン、チアクロプリド;
A.6.GABAアンタゴニスト:アセトプロール、エンドスルファン、エチプロール、フィプロニル、バニリプロール;
A.7.マクロライド殺虫剤:アバメクチン、エマメクチン、ミルベメクチン、レピメクチン、スピノサド;
A.8.METI I殺ダニ剤:フェナザキン、ピリダベン、テブフェンピラド、トルフェンピラド;
A.9.METI IIおよびIII化合物:アセキノシル、フルアシプリム、ヒドラメチルノン;
A.10.脱共役剤化合物:クロルフェナピル;
A.11.酸化的リン酸化阻害剤:シヘキサチン、ジアフェンチウロン、酸化フェンブタスズ、プロパルギット;
A.12.エクジソンアンタゴニスト:クリオマジン;
A.13.混合機能オキシダーゼ阻害剤:ピペロニルブトキシド
A.14.ナトリウムチャネル遮断剤:インドキサカルブ、メタフルミゾン;
A.15.種々のもの:ベンクロチアズ、ビフェナゼート、フロニカミド、ピリダリル、ピメトロジン、硫黄、チオシクラム、および式D2のアミノイソチアゾール化合物
【化2】
【0152】
[式中、Riは−CH2OCH2CH3またはHであり、RiiはCF2CF2CF3またはCH2CH(CH3)3である]、式D3のアントラニルアミド化合物
【化3】
【0153】
[式中、B1は水素または塩素であり、B2は臭素またはCF3であり、RBはCH3またはCH(CH3)2である]、およびJP 2002 284608、WO 02/189579、WO 02/190320、WO 02/190321、WO 04/106677、WO 04/120399またはJP 2004 99597に記載されているようなマロノニトリル化合物、N−R’−2,2−ジハロ−1−R’’−シクロプロパンカルボキサミド−2−(2,6−ジクロロ−α,α,α,α−トリフルオロ−p−トリル)ヒドラゾンまたはN−R’−2,2−ジ(R’’’)プロピオンアミド−2−(2,6−ジクロロ−α,α,α,α−トリフルオロ−p−トリル)ヒドラゾン[式中、R’はメチルまたはエチルであり、ハロは塩素または臭素であり、R’’は水素またはメチルであり、R’’’はメチルまたはエチルである]。
【0154】
以下の殺真菌剤リストに考えられる有効成分を示すが、それに限定されるものではない:
1.ストロビルリン
アゾキシストロビン、ジモキシストロビン、エネストロブリン、フルオキサストロビン、クレソキシム−メチル、メトミノストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、トリフロキシストロビン、オリサストロビン、(2−クロロ−5−[1−(3−メチルベンジルオキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバミン酸メチル、(2−クロロ−5−[1−(6−メチルピリジン−2−イルメトキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバミン酸メチル、2−(オルト−(2,5−ジメチルフェニルオキシメチレン)フェニル)−3−メトキシアクリル酸メチル:
2.カルボキサミド
−カルボキシアニリド:ベナラキシル、ベノダニル、ボスカリド、カルボキシン、メプロニル、フェンフラム、フェンヘキサミド、フルトラニル、フラメトピル、メタラキシル、オフレース、オキサジキシル、オキシカルボキシン、ペンチオピラド、チフルザミド、チアジニル、N−(4’−ブロモビフェニル−2−イル)−4−ジフルオロメチル−2−メチルチアゾール−5−カルボキサミド、N−(4’−トリフルオロメチルビフェニル−2−イル)−4−ジフルオロ−2−メチルトリチアゾール−5−カルボキサミド、N−(4’−クロロ−3’−フルオロビフェニル−2−イル)−4−ジフルオロ−2−メチルトリアゾール−5−カルボキサミド、N−(3’,4’−ジクロロ−4−フルオロビフェニル−2−イル)−3−ジフルオロ−1−メチルピラゾール−4−カルボキサミド;
−カルボン酸モルホリド:ジメトモルフ、フルモルフ;
−ベンズアミド:フルメトベル、フルオピコリド(ピコベンズアミド)、ゾキサミド;
−他のカルボキサミド:カルプロパミド、ジクロシメット、マンジプロパミド、N−(2−(4−[3−(4−クロロフェニル)プロパ−2−イニルオキシ]−3−メトキシフェニル)エチル)−2−メタンスルホニルアミノ−3−メチルブチルアミド、N−(2−(4−3−(4−クロロフェニル)プロプ−2−イニルオキシ]−3−メトキシフェニル)エチル)−2−エタンスルホニルアミノ−3−メチルブチルアミド;
3.アゾール
−トリアゾール:ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、エニルコナゾール、エポキシコナゾール、フェンブコナゾール、フルシラゾール、フルキンコナゾール、フルトリアホール、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメノール、トリアジメホン、トリチコナゾール;
−イミダゾール:シアゾファミド、イマザリル、ペフラゾエート、プロクロラズ、トリフルミゾール;
−ベンゾイミダゾール:ベノミル、カルベンダジム、フベリダゾール、チアベンダゾール;
−その他:エタボキサム、エトリジアゾール、ヒメキサゾール;
4.窒素含有ヘテロシクリル化合物
−ピリジン:フルアジナム、ピリフェノックス、3−[5−(4−クロロフェニル)−2,3−ジメチルイソオキサゾリジン−3−イル]−ピリジン;
−ピリミジン:ブピリメート、シプロジニル、フェリムゾン、フェナリモール、メパニピリム、ヌアリモール、ピリメタニル;
−ピペラジン:トリホリン;
−ピロール:フルジオキソニル、フェンピクロニル;
−モルホリン:アルジモルフ、ドデモルフ、フェンプロピモルフ、トリデモルフ;
−ジカルボキシミド:イプロジオン、プロシミドン、ビンクロゾリン;
−その他:アシベンゾラル−S−メチル、アニラジン、カプタン、カプタホール、ダゾメット、ジクロメジン、フェノキサニル、ホルペット、フェンプロピジン、ファモキサドン、フェンアミドン、オクチリノン、プロベナゾール、プロキナジド、キノキシフェン、トリシクラゾール、5−クロロ−7−(4−メチルピペリジン−1−イル)−6−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン、2−ブトキシ−6−ヨード−3−プロピルクロメン−4−オン、N,N−ジメチル−3−(3−ブロモ−6−フルオロ−2−メチルインドール−1−スルホニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−スルホンアミド;
5.カルバメートおよびジチオカルバメート
−カルバメート:ジエトフェンカルブ、フルベンチアバリカルブ、イプロバリカルブ、プロパモカルブ、3−(4−クロロフェニル)−3−(2−イソプロポキシカルボニルアミノ−3−メチルブチリルアミノ)プロピオン酸メチル、N−(1−(1−(4−シアノフェニル)エタンスルホニル)ブタ−2−イル)カルバミン酸4−フルオロフェニル;
6.他の殺真菌剤
−有機金属化合物:フェンチン塩;
−硫黄含有ヘテロシクリル化合物:イソプロチオラン、ジチアノン;
−有機リン化合物:エジフェンホス、ホセチル、ホセチル−アルミニウム、イプロベンホス、ピラゾホス、トルクロホス−メチル、亜リン酸およびその塩;
−有機塩素化合物:チオファネート−メチル、クロロタロニル、ジクロフルアニド、トリルフルアニド、フルスルファミド、フタリド、ヘキサクロロベンゼン、ペンシクロン、キントゼン;
−ニトロフェニル誘導体:ビナパクリル、ジノカップ、ジノブトン;
−その他:スピロキサミン、シフルフェナミド、シモキサニル、メトラフェノン。
【0155】
以下の除草剤リストに考えられる有効成分を示すが、それに限定されるものではない:
脂質の生合成を阻害する化合物、例えばクロラジホップ、クロジナホップ、クロホップ、シハロホップ、シクロホップ、フェノキサプロプ、フェノキサプロプ−p、フェンチアプロプ、フルアジホップ、フルアジホップ−P、ハロキシホップ、ハロキシホップ−P、イソキサピリホップ、メタミホップ、プロパキザホップ、キザロホップ、キザロホップ−P、トリホップ、またはそのエステル、ブトロキシジム、シクロキシジム、プロホキシジム、セトキシジム、テプラロキシジム、トラルコキシジム、ブチレート、シクロエート、ジアレート、ジメピペレート、EPTC、エスプロカルブ、エチオレート、イソポリネート、メチオベンカルブ、モリネート、オルベンカルブ、ペブレート、プロスルホカルブ、スルファレート、チオベンカルブ、チオカルバジル、トリアレート、ベルノレート、ベンフレセート、エトフメセートおよびベンスリド;
ALS阻害剤、例えばアミドスルフロン、アジムスルフロン、ベンスルフロン、クロリムロン、クロルスルフロン、シノスルフロン、シクロスルファムロン、エタメトスルフロン、エトキシスルフロン、フラザスルフロン、フルピルスルフロン、ホラムスルフロン、ハロスルフロン、イマゾスルフロン、ヨードスルフロン、メソスルフロン、メトスルフロン、ニコスルフロン、オキサスルフロン、プリミスルフロン、プロスルフロン、ピラゾスルフロン、リムスルフロン、スルホメツロン、スルホスルフロン、チフェンスルフロン、トリアスルフロン、トリベヌロン、トリフロキシスルフロン、トリフルスルフロン、トリトスルフロン、イマザメタベンズ、イマザモキス、イマザピック、イマザピル、イマザキン、イマゼタピル、クロランスラム、ジクロスラム、フロラスラム、フルメツラム、メトスラム、ペノキスラム、ビスピリバク、ピリミノバク、プロポキシカルバゾン、フルカルバゾン、ピリベンゾキシム、ピリフタリドおよびピリチオバク;pHが<8の場合;
光合成を阻害する化合物、例えばアトラトン、アトラジン、アメトリン、アジプロトリン、シアナジン、シアナトリン、クロラジン、シプラジン、デスメトリン、ジメタメトリン、ジプロペトリン、エグリナジン、イパジン、メソプラジン、メトメトン、メトプロトリン、プロシアジン、プログリナジン、プロメトン、プロメトリン、プロパジン、セブチルラジン、セクブメトン、シマジン、シメトン、シメトリン、テルブメトン、テルブチラジンおよびテルブトリン;
プロトポルフィリノーゲン−IXオキシダーゼ阻害剤、例えばアシフルオルフェン、ビフェノックス、クロメトキシフェン、クロルニトロフェン、エトキシフェン、フルオロジフェン、フルオログリコフェン、フルオロニトロフェン、ホメサフェン、フリロキシフェン、ハロサフェン、ラクトフェン、ニトロフェン、ニトロフルオルフェン、オキシフルオルフェン、フルアゾレート、ピラフルフェン、シニドン−エチル、フルミクロラク、フルミオキサジン、フルミプロピン、フルチアセット、チジアジミン、オキサジアゾン、オキサジアルギル、アザフェニジン、カルフェントラゾン、スルフェントラゾン、ペントキサゾン、ベンズフェンジゾン、ブタフェナシル、ピラクロニル、プロフルアゾール、フルフェンピル、フルプロパシル、ニピラクロフェンおよびエトニプロミド;
除草剤、例えばメトフルラゾン、ノルフルラゾン、フルフェニカン、ジフルフェニカン、ピコリナフェン、ベフルブタミド、フルリドン、フルロクロリドン、フルルタモン、メソトリオン、スルコトリオン、イソキサクロルトール、イソキサフルトール、ベンゾフェナップ、ピラゾリネート、ピラゾキシフェン、ベンゾビシクロン、アミトロール、クロマゾン、アクロニフェン、4−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)ピリミジン、および下式の3−ヘテロシクリル置換ベンゾイル誘導体(参照、WO−A−96/26202、WO−A−97/41116、WO−A−97/41117およびWO−A−97/41118)
【化4】
【0156】
[式中、置換基R8〜R13は各々以下の通り定義される:
R8、R10は、水素、ハロゲン、C1−C5−アルキル、C1−C5−ハロアルキル、C1−C5−アルコキシ、ハロアルコキシ、C1−C5−アルキルチオ、C1−C5−アルキルスルフィニルまたはC1−C5−アルキルスルホニルであり;
R9は、チアゾール−2−イル、チアゾール−4−イル、チアゾール−5−イル、イソオキサゾール−3−イル、イソオキサゾール−4−イル、イソオキサゾール−5−イル、4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル、4,5−ジヒドロイソオキサゾール−4−イルおよび4,5−ジヒドロイソオキサゾール−5−イルからなる群の複素環式基であり、ここで、記述した基は1個以上の置換基を有していてもよく;例えば、それらの基は、ハロゲン、C1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシ、C1−C4−ハロアルキル、C1−C4−ハロアルコキシまたはC1−C4−アルキルチオによって一置換、二置換、三置換または四置換されていてもよく;
R11=水素、ハロゲンまたはC1−C5−アルキル;
R12=C1−C6−アルキル;
R13=水素またはpH<8の場合にはC1−C6−アルキル];
有糸分裂阻害剤、例えばベンフルラリン、ブトラリン、ジニトラミン、エタルフルラリン、フルクロラリン、イソプロパリン、メタルプロパリン、ニトラリン、オリザリン、ペンジメタリン、プロジアミン、プロフルラリン、トリフルラリン、アミプロホス−メチル、ブタミホス、ジチオピル、チアゾピル、プロピザミド、クロルタール、カルベタミド、クロルプロファムおよびプロファム;
VLCFA阻害剤、例えばアセトクロール、アラクロール、ブタクロール、ブテナクロール、デラクロール、ジエタチル、ジメタクロール、ジメテナミド、ジメテナミド−P、メタザクロール、メトラクロール、S−メトラクロール、プレチラクロール、プロピソクロール、プリナクロール、テルブクロール、テニルクロール、キシラクロール、CDEA、エプロナズ、ジフェナミド、ナプロパミド、ナプロアニリド、ペトキサミド、フルフェナセット、メフェナセット、フェントラザミド、アニロホス、ピペロホス、カフェンストロール、インダノファンおよびトリジファン;
セルロース生合成阻害剤、例えばジクロベニル、クロルチアミド、イソキサベンおよびフルポキサム;
除草剤、例えばジノフェネート、ジノプロップ、ジノサム、ジノセブ、ジノテルブ、DNOC、エチノフェン、およびメジノテルブ;
その他:ベンゾイルプロップ、フランプロップ、フランプロップ−M、ブロモブチド、クロルフルレノール、シンメチリン、メチルジムロン、エトベンザニド、ピリブチカルブ、オキサジクロメホン、トリアジフラムおよび臭化メチル。
【0157】
作物保護に使用される有効成分はまた、都市状況(例えば、とりわけ宅地造成、家庭分野および庭園分野、飲食店、駐車場、ホテル建築、工業地域)において害虫(例えば、とりわけゴキブリ、アリ、シロアリ)を駆除するためにも使用することができ、この有効成分は特にこれらの用途に好適な効果物質のさらなる群である。
【0158】
本発明による方法を用い脊椎動物(例えば、とりわけラット、マウス)の領域から害虫を駆除するために有効成分を処方することも可能であり、結果として得られた有効成分処方物を、農業および都市状況において対応する害虫駆除のために使用することも可能である。
【0159】
さらに好適なのは、医薬用途のための有効成分、とりわけ経口投与用の有効成分である。本発明による方法は、原則として、医学的適応に関係なく多数の有効成分に適用できる。
【0160】
特に、医薬用途のための水溶性有効成分、とりわけ経口投与用の有効成分を挙げるべきである。これは、処方薬および市販薬の有効成分の両方に関連する。本発明は、原則として、医学的適応に関係なく多数の治療有効成分、予防有効成分または診断有効成分に適用できる。使用できる有効成分の種類の限定されない例には、抗炎症薬、血管作用薬、感染阻害薬、麻酔薬、成長促進薬が含まれる。
【0161】
使用できる化合物の種類は、原則として、タンパク質、ペプチド、核酸、単糖、二糖、オリゴ糖および多糖、プロテオグリカン、脂質、低分子量の合成もしくは天然有機有効成分、または無機化合物もしくは元素、例えば銀である。
【0162】
好適な難水溶性医薬品有効成分の限定されない例を次の表に明記する:
【0163】
水溶性医薬品有効成分の例は、とりわけ咳誘発および粘液溶解有効成分、例えばグアヤコールグリコールエーテル(グアイフェネシンとしても知られる)およびその誘導体である。
【0164】
さらに好ましい医薬品有効成分は、薬学において使用する抗体および他のタンパク質、例えば酵素またはペプチド、または核酸である。
【0165】
(vii)処方物からの有効成分の放出
有効成分は、本発明による方法により作製した処方物から、好適な溶媒への脱着によって、プロテアーゼによる本発明のシート状バイオポリマー構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)の分解によって、または好適な溶媒による本発明のシート状バイオポリマー構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)の溶解によって放出させることができる。脱着に好適な溶媒は、有効成分を溶解することができる全ての溶媒または溶媒混合物である。好適なプロテアーゼは、制御された方法で実用プロテアーゼとして本発明のシート状バイオポリマー構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)の懸濁液に添加することができるし、あるいはエフェクター分子の所望の使用部位において自然に生じ得る(例えば消化管のプロテアーゼ、例えば胃または腸のプロテアーゼ、または微生物により放出されるプロテアーゼ)。本発明のシート状バイオポリマー構造体を溶解することができる溶媒は、例えば、フッ素化アルコール、例えばヘキサフルオロイソプロパノールまたはトリフルオロエタノール、イオン性液体、例えばEMIMアセテート、カオトロピック塩の水溶液、例えば尿素、塩酸グアニジンおよびチオシアン酸グアニジン、あるいは有機酸、例えばギ酸、ならびにこれら溶媒と他の有機溶媒との混合物である。エフェクター分子の放出の速度および動態は、例えば、有効成分の添加密度および本発明のシート状バイオポリマー構造体のサイズ、または容量と表面面積の比率によって制御することができる。
【0166】
本発明はさらに、医薬品、化粧品、作物保護製品、食品および動物飼料における有効成分の保存、輸送または放出のための、記載した両親媒性自己集合タンパク質を用いて作製されたタンパク質含有シート状構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)の使用を提供する。本発明のシート状構造体はさらに、パッケージングされた有効成分を、環境的影響、例えば酸化過程もしくは紫外線放射から、あるいは製品の他の構成成分との反応による分解からまたは特定のプロテアーゼによる分解から保護する役割を果たす。有効成分は、タンパク質含有シート状構造体から、脱着、タンパク質分解、制御放出もしくは持続放出、またはこれらの機構の組合せによって放出させることができる。
【0167】
医薬品における本発明のタンパク質含有シート状構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)およびそれを用いて処方される有効成分は、好ましくは、経口投与すべきである。この場合、それらが胃を通過する際の有効成分の安定性が増大し得る。これは、胃の条件下で本発明のシート状構造体のタンパク質分解が起こらないためである。その後、腸内で、経口投与された有効成分含有シート状タンパク質構造体(錠剤またはカプセル剤に圧縮されていてもよい)から有効成分が放出される。しかしながら、胃の条件下で脱着または拡散により有効成分が放出される場合もある。
【0168】
医薬品、食品および動物飼料または作物保護製品において、本発明による方法を用い記載したバイオポリマー、とりわけ両親媒性自己集合タンパク質を用いた有効成分の処方物はさらに、有効成分のバイオアベイラビリティの増大をもたらすことができる。シート状タンパク質構造体中への医薬品有効成分のパッケージングはまた、腸管粘膜を通じた吸収の向上をもたらすことができる。作物保護製品は、シート状タンパク質構造体中への封入または埋め込みにより洗浄プロセスから保護することができる。いっそう多く取り込まれまたは吸収されるあるいは良好なバイオアベイラビリティを有する特定の有効成分粒子サイズは、シート状タンパク質構造体中へのパッケージングによって確立することができる。
【0169】
記載した両親媒性自己集合タンパク質のアミノ酸配列を変更することにより、またはさらなるタンパク質またはペプチド配列との融合により、特定の表面、例えば皮膚、毛髪、葉、根または腸もしくは血管の表面を特異的に認識する構造、あるいはこれらの表面または存在する受容体によって認識され結合される構造を作製することが可能である。
【0170】
よって、記載した両親媒性自己集合タンパク質を用いて処方された有効成分を所望の作用部位に、より効果的にもたらすこと、または活性物質の吸収を改善することが可能である。食品および動物飼料中の医薬品有効成分または有効成分のバイオアベイラビリティは、それらがシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中にパッケージングされさらにそれらの構造体が胃腸管の細胞(例えば粘膜細胞)の特定の表面マーカー(例えば受容体)と結合するタンパク質と融合するかまたは結合して存在する場合に増大し得る。かかるタンパク質は、例えば、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)由来のMapAタンパク質もしくはコラーゲン結合タンパク質CnBP(Miyoshi et al., 2006, Biosci. Biotechnol. Biochem. 70:1622-1628)、または他の微生物、特に天然胃腸管微生物叢に由来する機能的に同等なタンパク質である。
【0171】
記載の結合タンパク質は、細胞表面への微生物の付着を媒介する。この結合タンパク質を記載した両親媒性自己集合タンパク質と結合または融合することで、それから得られる有効成分含有シート状タンパク質構造体はより制御された方法で適当な吸収部位に向けられ、またはそれらはこれらの部位に長く残留するようになり、その結果、有効成分の放出および吸収が延長され改善されることになる。
【0172】
加えて、例えば、特異性を高め、有効成分消費もしくは有効成分用量を低くし、または効果を迅速もしくは強力にすることを達成するために、有効成分処方物に関して記載した両親媒性自己集合タンパク質のアミノ酸配列を変更することにより、またはさらなるタンパク質またはペプチド配列との融合により、有効成分を制御された方法で所望の作用部位に直接向けることが可能である。
【0173】
加えて、例えば、シート状構造体中の有効成分の結晶化に後に影響を与えるため(例えば結晶化を阻害するため)、または好ましい使用特性、例えばバイオアベイラビリティの変化を得るために、紡糸液にさらなる物質を添加することが可能である。好ましい添加物は、例えば、イオン性(カチオン性またはアニオン性)界面活性剤および非イオン性界面活性剤である。紡糸液中の添加物の好適な量は、0.01重量%〜5重量%である。
【0174】
加えて、紡糸液またはそれから作製したシート状構造体に、錠剤またはカプセル剤の崩壊を可能にしそれによって錠剤またはカプセル剤に圧縮されたシート状バイオポリマー構造体の分散の向上を可能にする物質を添加することができる。
【0175】
(viii)創傷治療およびボディケア用のシート状繊維構造体(不織布)
本発明の不織布は、それ自体が公知の創傷治療用品またはボディケア用品と組み合わせる、すなわちそれらに組み込むまたはそれらに適用することができる。従来の創傷包帯、例えばガーゼもしくは不織布または吸収パッドは通常、綿、ビスコースまたは合成繊維、例えばポリアミド、ポリエチレンまたはポリプロピレンの織布または不織布である。これらは、疎水性脂肪性軟膏を含浸することができ高い吸収性を示し、そしてそのことが過剰な創傷からの滲出液、組織片および細菌の排出を促す。
【0176】
しかしながら、包帯を頻繁に取り替えることが必要であり、創傷の乾燥が観察されることもある。この場合には、創傷と乾燥した創傷分泌液とが癒着し、または若い上皮組織がパッド内へと成長することになる可能性がある。この場合、包帯を取り替えることにより新たな損傷が生じることとなり、これにより治癒過程が遅れることは明らかである。
【0177】
そのため、現代の創傷包帯は理想的に湿潤した創傷環境を確保するべきである。使用する材料は、例えば、ポリアクリレートおよびアルギン酸塩、またはカルボキシメチルセルロースに基づく親水コロイド製品の場合のように、多量の水分を吸収するためにゲルを形成することができるべきである。これらの製品は、その吸収能力が高いことから、主として中度〜重度の滲出性創傷の場合に使用される。乾燥している場合および壊死性創傷の場合には、これらの包帯がくっつくことがあり、収縮が大きいために、創傷は、その下にある組織が剥がれ去り再び傷つく危険性がある。
【0178】
広範囲にわたる創傷材料および創傷治癒管理の設計は記載されているが、これらは非常に具体的に特定の使用分野、実質的には臨床用途に合わせられている。一般的に、サンドイッチドレッシング(sandwich dressings)と呼ばれるものは、所望の特性プロフィールが備わっている;例えば、第1の層は通常、非接着層(例えばポリウレタン系フォームまたはパラフィンガーゼ)からおよび創傷分泌液に対する吸収能力が高い第2の層、例えばセルロースパッドからなる。
【0179】
本発明の不織布は、治癒を促進する織物の分離層(創傷からの分離)として使用することができる安価で容易に適合し得る製品であり、その分離層は、その多孔性により酸素および創傷分泌液の拡散を可能にするが、創傷を弾性的に密封し治癒中に吸収される。
【0180】
本発明の材料はまた、より簡単な創傷ケアにおいても使用することができ、多層の、費用のかかるドレッシングの使用が不要になる。
【0181】
発明のシート状繊維構造体の特定の利点、例えば生体適合性、伸展性、無毒性、生分解性(とりわけタンパク質分解性)、良好な水分含量調節により、それらは慢性または非慢性創傷の治療用およびボディケア用の製品の生産のための好適な候補となる。
【0182】
本発明により生産された有効成分フリーシート状繊維構造体または有効成分含有シート状繊維構造体は、創傷ケア用品および衛生物品の生産のために特に好適である。これらの場合、それらのシート状繊維構造体は、それ自体として使用することができるし、またはそれ自体が公知の好適な織物またはポリマーの担体材料に適用することもできる。
【0183】
この目的で、それ自体が公知の方法によって種々の材料を組み合わせること、および多層製品を提供するためにそれらをさらに処理することが可能である。最終用途によって、本発明のシート状繊維構造体と、材料、例えばPEフィルム、PETフィルムまたはPUフィルムおよびアルミニウム複合フィルム、不織布、基体、シリコーン紙、ラミネートフィルムなどを組み合わせることが可能である。
【0184】
本発明のシート状バイオポリマー構造体を含む医療用品(例えば創傷包帯または硬膏)または衛生用品(ワイプス、オムツ、ナプキンなど)を生産する場合、または対応する用途において本発明のバイオポリマー不織布を使用する場合、シート状構造体に使用する担体基体または担体材料は、それ自体被覆される医療または衛生用品、またはその一部もしくは個別の層であり得る。
【0185】
以下、次の限定されない実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【0186】
実験の項
一般原理の項:
a)エレクトロスピニングプロセス
本発明による方法の実施のために好適なエレクトロスピニング装置は、電源の一方の極に接続されるキャピラリーノズルを先端部に備えた、本発明の処方物を収容するシリンジを有する。キャピラリーノズルの出口に対して規定の距離で、電源のもう一方の極に接続される正方形の対電極が配置され、その対電極は形成される繊維の収集装置として機能する。
【0187】
本発明による方法の実施のためのさらなる考えられる装置は、紡糸液が入っている容器内で回転するローラーを有する。そのローラーは平滑であってよいしまたは物理的構造、例えば針または溝を有していてもよい。ローラーの各回転において、紡糸液は強い電場に入り、いくつかの材料流が生じる。対電極は紡糸電極の上にある。繊維は担体不織布、例えばポリプロピレン上に堆積する。
【0188】
例えば、Elmarco社製のNanospider装置を使用することが可能である。電圧は電極距離18cmにおいて約82kVである。温度は約23℃および相対空気湿度は35%である。紡糸には鋸歯状電極を使用する。最大厚さのシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)を得るために、担体不織布は固定する。別法として、担体不織布を進行速度で移動させ規定の方法により比較的薄いシート状タンパク質構造体層を得ることもできる。続いて、バッチから得られたシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)を減圧下40℃で一晩乾燥させる。シート状タンパク質構造体の層厚をMillitron層厚測定器(Mahr Feinpruef社(Germany)製)を使用して決定する。
【0189】
b)有効成分放出試験
シート状タンパク質構造体からの有効成分の放出を2つの異なる試験により検証した。消化管中のタンパク質分解活性条件下で有効成分放出の模擬実験をするために、経口投与すべき有効成分処方物、例えばグアヤコールグリセリルエーテルおよびクロトリマゾール(錠剤にプレスされたもの)を合成胃液(0.1gのNaCl;0.16gのペプシン;0.35mlのHClを補って50mlにする、pH1〜2)および合成腸液(3.4gのKH2PO4を12.5mlの水に溶解し+3.85mlの0.2N NaOHを補って25mlにし+0.5gのパンクレアチンを補って50mlにする、pH6.8)中で分析した。対照試験(プロテアーゼを加えない)は、5mMリン酸カリウムバッファー(pH8.0)中で行った。これらの条件下ではほんのわずかな有効成分放出しか見られないはずである。錠剤1個当たり20mlの特定の消化液またはバッファーを加え、それらの混合物を、37℃および80rpmで軽く攪拌しながらインキュベートした。異なる時点において、HPLCまたは測光器による有効成分の定量のために、いずれの場合においても500μlのサンプルを採取した。また、難水溶性有効成分、例えばクロトリマゾールの場合には放出後に形成された有効成分凝集体を検出するために、THFでの抽出後に吸光測光法による定量を行った(3mlの上清+3mlのTHF+スパチュラ先端量のNaCl、激しくボルテックスし(15000×gで1分)、上相を分析する(必要に応じて希釈する))。
【0190】
他の有効成分(経口投与しない医薬品有効成分または他の有効成分、例えば化粧品有効成分または作物保護有効成分)、例えばユビナールAプラスおよびメタザクロールの場合には、規定量のシート状のタンパク質−有効成分構造体を非特異的プロテイナーゼK溶液と混合することによって放出分析を行った。シート状のタンパク質−有効成分構造体を0.25〜0.5%[w/v]プロテイナーゼK(Roche, Germany;5mMリン酸カリウムバッファーに溶解したもの)中で120〜150rpmで攪拌しながらインキュベートした。異なる時点において、完全なままのシート状のタンパク質−有効成分構造体を遠心分離により除去し、それらの上清を4〜5倍過剰のTHFと混合し、続いて有効成分含量を吸光測光法により決定した。全ての実験において、有効成分の放出量は、有効成分固有のキャリブレーションシリーズとの比較後に決定した。
【実施例】
【0191】
実施例1−C16クモ絹タンパク質の作製
C16クモ絹タンパク質を、大腸菌発現株を含むプラスミドを用い生物工学的手段により作製した。C16クモ絹タンパク質(ADF4としても知られる)の設計およびクローニングは、Huemmerich et al. (Biochemistry 43, 2004, 13604-13012)に記載されている。その文書に記載されている方法とは対照的に、大腸菌BL21 Gold(DE3)(Stratagene)においてC16クモ絹タンパク質を作製した。大腸菌はTechfors発酵槽(Infors HAT, Switzerland)中で最少培地およびフェドバッチ法を用いて増殖させた。
【0192】
細胞を37℃でOD600100まで増殖させ、その後、0.1mMイソプロピルβ−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)でタンパク質発現の誘導を行った。発酵終了時(誘導の8〜12時間後)に、それらの培養物を回収した。タンパク質のほとんどは「封入体」中に存在した。
【0193】
細胞の回収後、ペレットを20mM 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、pH7.0(湿潤材料1kg当たり5lのバッファー)に再懸濁した。この後、細胞破壊をMicrofluidizer M−110EH(Microfluidics, US)を使用し圧力1200〜1300バールで行った。沈降後、破壊後のペレットには封入体だけでなく細胞片および膜構成成分も含まれており、細胞片および膜構成成分は2つの洗浄ステップにより除去した。第1の洗浄ステップでは、ペレットを2.5容量のTrisバッファー(50mM Tris/HCl、0.1%Triton X−100、pH8.0)に再懸濁した後、残留する固形物を遠心分離により沈降させた。第2の洗浄ステップは
Trisバッファー(50mM Tris/HCl、5mM EDTA、pH8.0)を用いて行った。沈降後に再度得られたペレットは膜および細胞片を実質的に含まなかった。
【0194】
洗浄した封入体をチオシアン酸グアニジン(Roth, Germany)に溶解し、その際1gのペレット(湿潤質量)当たり1.6gのチオシアン酸グアニジンを加えた。封入体は、ゆっくりと加熱しながら(50℃)攪拌する間に溶解した。
【0195】
存在する不溶性構成成分を除去するために、続いて遠心分離を行った。C16クモ絹タンパク質水溶液を得るために、次いで5mMリン酸カリウムバッファー(pH8.0)(透析の希釈係数:200)で16時間の透析を行った。
【0196】
大腸菌タンパク質の汚染により透析において凝集体が形成したが、それらは遠心分離により除去できた。得られたタンパク質溶液は約95%C16クモ絹タンパク質の純度を有していた。
【0197】
得られたタンパク質水溶液は、直接エレクトロスピニングに使用することができるし、またはより良好な保存性のために、タンパク質マイクロビーズにさらに加工することもできる。C16タンパク質マイクロビーズを作製するために、C16クモ絹タンパク質水溶液を0.25容量の4モル濃度の硫酸アンモニウム溶液と混合した。硫酸アンモニウムの作用下で、タンパク質分子は集合し球体構造を形成する(本明細書ではこれらをマイクロビーズと呼ぶ)。マイクロビーズを遠心分離により除去し、蒸留水で3回洗浄し、その後凍結乾燥させた。
【0198】
実施例2−エレクトロスピニングを用いた、効果物質としてのグアヤコールグリセリルエーテルの処方
製薬上活性な物質、とりわけ咳および呼吸器障害の治療のための物質の処方について記載した方法の有用性を立証するために、例として、有効成分グアヤコールグリセリルエーテル(グアイフェネシンとしても知られる)をシート状C16クモ絹タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中にエレクトロスピニングによって封入した。
【0199】
紡糸可能な溶液の作製のために、C16クモ絹タンパク質マイクロビーズ(14%[w/w])および有効成分グアヤコールグリセリルエーテル(10%[w/w])を一緒にギ酸(98〜100%p.a.)に溶解した。ビーカーには最初に200mlのギ酸を入れ、その後50.4gのC16クモ絹タンパク質と36gのグアヤコールグリセリルエーテル(Sigma社(Germany)製)を徐々に入れ攪拌した。一度それらの物質が完全に溶解したら、ギ酸(98〜100%)を用いてその溶液を360gにした。
【0200】
別法として、出発材料の基礎としてC16クモ絹タンパク質水溶液(実施例1参照)を使用することも可能である。その際には、有効成分をタンパク質水溶液に直接溶解しまたは、使用する有効成分の濃度が比較的高い場合には、代替溶媒(例えばギ酸)に予備溶解した後、タンパク質溶液と混合する。紡糸液の粘度を高めるために、その後、加えて、水溶性ポリマーまたは水性ポリマー分散液を加えることが可能である。
【0201】
C16クモ絹タンパク質およびグアヤコールグリセリルエーテルの溶液を、上記のとおりElmarco社Nanospider装置で3時間紡糸した。得られたシート状タンパク質構造体の層厚をMillitron層厚測定器(Mahr Feinpruef社(Germany)製)を使用して決定し、0.01〜0.2mmであった。
【0202】
そのようにして作製した、グアヤコールグリセリルエーテルが組み込まれているシート状C16クモ絹タンパク質構造体の電子顕微鏡分析により、その構造体が主として、直径が2μm以下の繊維であることが分かった(図1)。
【0203】
純粋グアヤコールグリセリルエーテルとは対照的に、C16クモ絹タンパク質/グアヤコールグリセリルエーテル処方物ではX線回折により結晶性ピークは認められない(図2)。従って、有効成分は非晶形でまたは固溶体として中に封入され、そしてそのことがそのバイオアベイラビリティに良い影響を与え得ると考えることができる。
【0204】
関連性の高い投与形からの有効成分放出を検証するために、シート状C16クモ絹タンパク質構造体を用い錠剤にプレスした。いずれの場合においても、KBrプレス(Paul-Otto-Weber(Germany)社製)において300mgの材料を減圧下および圧力100バールでおよそ10分間プレスした。錠剤は直径約13mmおよび厚さ約2mmであった。
【0205】
錠剤からのグアヤコールグリセリルエーテルの放出は、合成胃液および合成腸液での処理後、HPLC(カラム:Luna C8(2)、150*3.0mm[Phenomenex社(Germany)製];プレカラム:C18 ODS;検出:UV 210nm;溶出剤A:10mM KH2PO4、pH2.5;溶出剤B:アセトニトリル)によって決定した。
【0206】
対照実験(バッファー)では有効成分封入量の最大20%しか放出されないが、胃液および腸液では100%放出が24時間以内に達成され、存在する酵素活性(プロテアーゼ)によって制御される(図3)。胃液と腸液の両方において、グアヤコールグリセリルエーテル有効成分は連続的に放出される。腸液を用いた実験では最初の8時間で有効成分の約65%が放出されるのに対し、胃液ではこの時間内に有効成分の約80%がすでに放出されている(図3)。
【0207】
24時間後に処方物からまだ放出されていないグアヤコールグリセリルエーテルの割合を決定するために、残留C16クモ絹タンパク質凝集体を含む混合物をpH7.0に調整し、いずれの場合においても、100μlのプロテイナーゼK(435U/ml、Roche, Germany)を加え、それらの混合物を、全ての凝集体が完全に溶解するまでさらに37℃および120rpmでインキュベートした。続いて、溶液中の有効成分含量をHPLC分析によって定量した。結果として、最終値と事前に決定した中間値を用いグアヤコールグリセリルエーテル有効成分のC16クモ絹タンパク質処方物への添加密度を決定することができた。調べた全ての錠剤についての添加密度は31〜33%[w/w]の間であり、錠剤にプレスしたシート状C16クモ絹タンパク質構造体への平均添加密度は32.2%[w/w]グアヤコールグリセリルエーテルであった(表1)。
【表1】
【0208】
グアヤコールグリセリルエーテル有効成分の参照処方サンプル(Mucinex(登録商標)ブランドの錠剤、Adams Respiratory Therapeutics社製)を用いた対照実験では、胃の条件下でのみ有効成分の連続遅延放出を示す(図4)。有効成分処方物の平均胃滞留時間が2〜5時間であることを考えると、この時点において最大50%の有効成分が放出される。腸の条件下では、短時間(2〜3時間)でMucinex(登録商標)処方物から有効成分の約90%が放出される(図4)。
【0209】
図4に示した試験結果に基づき、Mucinex(登録商標)錠剤の場合におけるグアヤコールグリセリルエーテルの連続遅延放出、よってその吸収も胃の条件下では起こず、そのため有効成分の大部分は排泄プロセスを介して失われると結論づけられる。グアヤコールグリセリルエーテル有効成分の発明C16クモ絹タンパク質処方物は、対照的に、胃の条件下でも腸の条件下でも連続遅延放出を示し、そしてそれは有効成分のより長時間の吸収を促すであろう。従って、両親媒性自己集合タンパク質を含むグアヤコールグリセリルエーテル有効成分の処方物は、ずっと広く使用でき、胃の通過後でもまだ有効成分の連続遅延放出、続いての有効成分の吸収が可能であろう。
【0210】
実施例3−エレクトロスピニングを用いた、効果物質としてのクロトリマゾールの処方
さらなる製薬上活性な、とりわけ難水溶性の、物質の処方について記載した方法の有用性を示すために、例として、有効成分クロトリマゾールをシート状C16クモ絹タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中にエレクトロスピニングによって封入した。
【0211】
紡糸可能な溶液の作製のために、C16クモ絹タンパク質マイクロビーズ(14%[w/w])および有効成分クロトリマゾール(10%[w/w])を一緒にギ酸(98〜100%p.a.)に溶解した。ビーカーには最初に200mlのギ酸を入れ、その後50.4gのC16クモ絹タンパク質と36gのクロトリマゾール(Sigma社(Germany)製)を徐々に入れ攪拌した。一度それらの物質が完全に溶解したら、ギ酸を用いてその溶液を360gにした。
【0212】
別法として、出発材料の基礎として水溶性C16クモ絹タンパク質溶液(実施例1参照)を使用することも可能である。その際には、有効成分をタンパク質水溶液に直接溶解しまたは、使用する有効成分の濃度が比較的高い場合には、代替溶媒(例えばギ酸)に予備溶解した後、タンパク質溶液と混合する。紡糸液の粘度を高めるために、その後、加えて、水溶性ポリマーまたはポリマー分散液を加えることが可能である。
【0213】
C16クモ絹タンパク質およびクロトリマゾールの溶液を、上記のとおりElmarco社Nanospider装置で3時間紡糸した。
【0214】
そのようにして作製した、クロトリマゾールが組み込まれているシート状C16クモ絹タンパク質構造体の電子顕微鏡分析により、その構造体が主として、直径約50nm〜1μmの繊維であることが分かった(図5)。
【0215】
純粋クロトリマゾールとは対照的に、C16クモ絹タンパク質/クロトリマゾール処方物ではX線回折により結晶性ピークは認められない(図6)。従って、有効成分は非晶形でまたは固溶体として中に封入され、そしてそのことがそのバイオアベイラビリティに良い影響を与え得ると考えることができる。
【0216】
実施例2においてすでに記載したとおり、クロトリマゾール有効成分が封入されたシート状C16クモ絹タンパク質構造体をまた用い錠剤にプレスした。有効成分の放出動態を決定するために、実施例2に記載のとおり、それらの錠剤を合成胃液、合成腸液および5mMリン酸カリウムバッファー(対照)中でインキュベートした。放出されたクロトリマゾールは、THFでの上清の抽出後にその低水溶解度(従って水溶液系中で凝集体を形成する傾向)に基づいて262nmでの吸光測光法による測定により定量した。
【0217】
対照実験(プロテアーゼを含まないバッファー)では有効成分封入量の最大2%しか放出されないが、胃液では約50%放出が24時間以内に達成され、存在する酵素活性(プロテアーゼ)によって制御される(図7)。この間に、クロトリマゾール有効成分は連続的に放出される。腸液では、対照的に、24時間後に有効成分の約20%しか放出されない(図7)。C16クモ絹タンパク質/クロトリマゾール処方物は、弱い放出しか見られない問題の時間範囲において置かれる比較的中性のpH値ではとても安定しているようである。
【0218】
24時間後に処方物からまだ放出されていないクロトリマゾールの割合を決定するために、タンパク質分解していないシート状C16クモ絹タンパク質構造体を含む混合物を3mlのTHFと混合し、振盪しながらさらに最大48時間インキュベートした。続いて、有効成分含量を吸光測光法により262nmで定量した。結果、最終値と事前に決定した中間値を用いクロトリマゾール有効成分のC16クモ絹タンパク質処方物への添加密度を決定することができた。調べた全ての錠剤についての添加密度は27〜33%[w/w]の間であり、錠剤にプレスしたシート状C16クモ絹タンパク質構造体への平均添加密度は約30%[w/w]クロトリマゾールであった(表2)。
【表2】
【0219】
実施例4−エレクトロスピニングを用いた、効果物質としてのメタザクロールの処方
作物保護有効成分の処方について記載した方法の有用性を示すために、例として、有効成分メタザクロールをシート状C16クモ絹タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中にエレクトロスピニングによって封入した。
【0220】
紡糸可能な溶液の作製のために、C16クモ絹タンパク質マイクロビーズ(14%[w/w])および有効成分メタザクロール(10%[w/w])を一緒にギ酸(98〜100%p.a.)に溶解した。ビーカーには最初に200mlのギ酸を入れ、その後50.4gのC16クモ絹タンパク質と36gのメタザクロールを徐々に入れ攪拌した。一度それらの物質が完全に溶解したら、ギ酸(98〜100%)を用いてその溶液を360gにした。
【0221】
別法として、出発材料の基礎としてC16クモ絹タンパク質水溶液(実施例1参照)を使用することも可能である。その際には、有効成分をタンパク質水溶液に直接溶解しまたは、使用する有効成分の濃度が比較的高い場合には、代替溶媒(例えばギ酸)に予備溶解した後、タンパク質溶液と混合する。紡糸液の粘度を高めるために、その後、加えて、水溶性ポリマーまたはポリマー分散液を加えることが可能である。
【0222】
C16クモ絹タンパク質およびメタザクロールの溶液を、上記のとおりElmarco社Nanospider装置で3時間紡糸した。
【0223】
そのようにして作製した、メタザクロールが組み込まれているシート状C16クモ絹タンパク質構造体の電子顕微鏡分析により、その構造体が主として、直径約50nm〜1μmの繊維であることが分かった(図8)。
【0224】
X線回折により、純粋メタザクロールはかなりの結晶割合を示す(図9)。対照的に、C16クモ絹タンパク質/メタザクロール処方物はX線回折では、メタザクロール有効成分によるあまり目立たない半結晶領域を有する(図9)。
【0225】
2つの混合物(第1の混合物:25mg;第2の混合物:26mg)におけるメタザクロール有効成分の添加密度を決定するために、いずれの場合においても、作製したシート状クモ絹タンパク質構造体を2mlのTHFと混合し、1800rpmで攪拌しながら5時間インキュベートした。続いて、THF処理により定量的に浸出されたメタザクロール有効成分を吸光測光法により264nmで決定した。混合物1では添加密度は約40%[w/w]であり、第2の混合物では約45%[w/w]であることが分かった。
【0226】
有効成分の放出動態を決定するために、メタザクロールが封入されたシート状C16クモ絹タンパク質構造体を、0.5%[w/v]プロテイナーゼKと混合した5mMリン酸カリウムバッファー中でインキュベートした。放出されたメタザクロールは、完全なままのシート状C16クモ絹タンパク質構造体の除去後、THFでの上清の抽出続いて吸光測光法による264nmでの測定により定量した。
【0227】
対照実験(プロテアーゼKを含まないバッファー)では24時間後に有効成分封入量の約10%しか放出されなかったが、プロテイナーゼKを含めた実験では同じ期間内に約55%のメタザクロールの放出を達成することができた(図10)。7日後に、かかるC16クモ絹タンパク質/メタザクロール処方物からの約70%の有効成分連続放出を達成することができた(示していない)。
【0228】
実施例5−エレクトロスピニングを用いた、効果物質としてのユビナールAプラスの処方
化粧品有効成分の処方について記載した方法の有用性を示すために、例として、有効成分ユビナールAプラスをシート状C16クモ絹タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中にエレクトロスピニングによって封入した。
【0229】
紡糸可能な溶液の作製のために、C16クモ絹タンパク質マイクロビーズ(14%[w/w])および有効成分ユビナールAプラス(10%[w/w])を一緒にギ酸(98〜100%p.a.)に溶解した。ビーカーには最初に200mlのギ酸を入れ、その後50.4gのC16クモ絹タンパク質と36gのユビナールAプラスを徐々に入れ攪拌した。一度それらの物質が完全に溶解したら、ギ酸(98〜100%)を用いてその溶液を360gにした。
【0230】
別法として、出発材料の基礎としてC16クモ絹タンパク質水溶液(実施例1参照)を使用することも可能である。その際には、有効成分をタンパク質水溶液に直接溶解しまたは、使用する有効成分の濃度が比較的高い場合には、代替溶媒(例えばギ酸)に予備溶解した後、タンパク質溶液と混合する。紡糸液の粘度を高めるために、その後、加えて、水溶性ポリマーまたはポリマー分散液を加えることが可能である。
【0231】
C16クモ絹タンパク質およびユビナールAプラスの溶液を、上記のとおりElmarco社Nanospider装置で3時間紡糸した。
【0232】
そのようにして作製した、ユビナールAプラスが組み込まれているシート状C16クモ絹タンパク質構造体の電子顕微鏡分析により、その構造体が主として、直径約50nm〜400nmの繊維であることが分かった(図11)。
【0233】
純粋ユビナールAプラスとは対照的に、C16クモ絹タンパク質/ユビナールAプラス処方物ではX線回折において結晶性ピークはなかった(図12)。従って、有効成分は非晶形でまたは固溶体として中に封入され、そしてそのことがそのバイオアベイラビリティに良い影響を与え得ると考えることができる。
【0234】
2つの混合物(第1の混合物:7.9mg;第2の混合物:7.8mg)における有効成分の添加密度を決定するために、いずれの場合においても、作製したシート状C16クモ絹タンパク質構造体を2mlのTHFと混合し、1800rpmで攪拌しながら5時間インキュベートした。続いて、THF処理により定量的に浸出されたユビナールAプラス有効成分を吸光測光法により352nmで決定した。混合物1では添加密度は約25%[w/w]であり、第2の混合物では約26.2%[w/w]であることが分かった。
【0235】
有効成分の放出動態を決定するために、シート状C16クモ絹タンパク質/ユビナールAプラス構造体を、0.25%[w/v]プロテイナーゼKと混合した5mMリン酸カリウムバッファー中でインキュベートした。放出されたユビナールAプラスは、完全なままのシート状C16クモ絹タンパク質構造体の除去後、THFでの上清の抽出続いて吸光測光法による352nmでの測定により定量した。
【0236】
対照実験(プロテアーゼKを含まないバッファー)では24時間後でも有効成分は放出されなかったが、プロテイナーゼKを含めた実験では6〜7時間後に100%のユビナールAプラスの放出が達成された(図13)。
【0237】
実施例6−エレクトロスピニングを用いた、純粋R16タンパク質およびS16タンパク質からの繊維の作製
紡糸可能なR16またはS16タンパク質溶液の作製のために、R16またはS16タンパク質マイクロビーズを用いた。これらは、WO 2008/155304に記載のとおり作製することができる。あるいは、実施例1に記載のとおり調製を行うこともできる。R16またはS16タンパク質のコードDNA配列を含むプラスミドベクターまたは大腸菌生産株を使用した。
【0238】
紡糸可能な溶液の作製のために、R16タンパク質マイクロビーズをギ酸(98〜100%p.a.)に溶解した(18%[w/w]溶液)。R16タンパク質を少量で紡糸し繊維形成を検出した。この目的で、0.36gのR16タンパク質マイクロビーズを1.64gのギ酸に溶解し、これを用い紡糸システムのシリンジに充填した。
【0239】
R16タンパク質溶液は、ノズル型エレクトロスピニングシステムを用いて紡糸した。この目的で、低圧下電場中でタンパク質溶液を、電源の一方の極に接続されたカニューレを通して押し出した。電場によってタンパク質溶液の帯電が起こるため、材料流は、対電極に向かいその対電極に向かう途中で凝固することになり、細い繊維の形でガラス顕微鏡スライド上に堆積した。
【0240】
次のパラメーターを使用した:
相対空気湿度27%、
紡糸温度23℃、
電圧60kV、
電極距離15cm、
カニューレ直径0.9mm、
手動進行
そのようにして作製したシート状R16タンパク質構造体の電子顕微鏡分析により、前記溶液は繊維を形成するものであること、およびそれらの繊維が主として、直径約200nm〜500nmの繊維であることが分かった(図14A)。
【0241】
S16タンパク質溶液をElmarco社Nanospider装置で紡糸した。使用する溶液は容器内にあり、その容器では紡糸電極(ローラー)が永久回転した。この場合、紡糸電極は、金属線に基づく電極であった。金属線表面上には処方物の一部が常に存在した。ローラーと対電極(ローラーの上)の間の電場によって、最初は処方物からの液体ジェットの形成が起こり、そこでその処方物は含まれていた溶媒を失い対電極に向かう途中で凝固した。所望のナノファイバーウェブ(織物のシート状構造体)は、2つの電極間に沿って移動するポリプロピレン基体上に形成した。
【0242】
S16タンパク質のマイクロビーズをギ酸(98〜100%p.a.)に溶解した(12%溶液[w/w])。S16混合物を得るために、ビーカーには最初に、いずれの場合においても200mlのギ酸を入れ、その後40gのS16タンパク質を徐々に入れ攪拌した。一度S16タンパク質が完全に溶解したら、ギ酸(98〜100%)を用いてその溶液を340gにした。
【0243】
次のパラメーターを使用した:
温度:24℃
相対空気湿度:22%
電圧:70〜82kV
電極距離:25cm
紡糸時間:1.5時間
シート状S16タンパク質構造体は、直径約100nm〜300nmの繊維を含んでいだ(図14B)。
【0244】
シート状のR16またはS16タンパク質構造体を含む医療用品(例えば創傷包帯または硬膏)または衛生用品(ワイプス、オムツ、ナプキンなど)を生産する場合、または対応する用途においてR16またはS16タンパク質不織布を使用する場合、シート状構造体に使用する担体基体または担体物質は、それ自体被覆される医療または衛生用品、またはその一部もしくは個別の層であり得る。
【0245】
別法として、繊維/シート状繊維構造体の作製のための出発材料として、R16またはS16タンパク質水溶液を(C16クモ絹タンパク質と同様、作製については実施例1参照)使用することも可能である。紡糸液の粘度を高めるためにまたは前記溶液の粘弾性を得るために、その後、加えて、水溶性ポリマー、ポリマー分散液またはバイオポリマー(例えばタンパク質)を加えることが可能である。
【0246】
実施例7−エレクトロスピニングを用いた、R16およびS16タンパク質不織布における効果物質としてのユビナールAプラスの処方
有効成分の処方について記載した方法の有用性を示すために、例として、有効成分ユビナールAプラスをシート状のR16またはS16タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中にエレクトロスピニングによって封入した。
【0247】
紡糸可能な溶液の作製のために、R16タンパク質マイクロビーズ(18%[w/w])またはS16タンパク質マイクロビーズ(12%[w/w])および有効成分ユビナールAプラス(10%[w/w])を一緒にギ酸(98〜100%p.a.)に溶解した。ビーカーには最初に200mlのギ酸を入れ、その後61.2gのR16タンパク質または40.0gのS16タンパク質と34gのユビナールAプラスを徐々に入れ攪拌した。一度それらの物質が完全に溶解したら、ギ酸(98〜100%)を用いてその溶液を340gにした。
【0248】
この場合においても、別法として、出発材料の基礎としてR16またはS16タンパク質水溶液を(C16クモ絹タンパク質と同様、作製については実施例1参照)使用することも可能である。その際には、有効成分をタンパク質水溶液に直接溶解しまたは、使用する有効成分の濃度が比較的高い場合には、代替溶媒(例えばギ酸またはTHF)に予備溶解した後、タンパク質溶液と混合する。紡糸液の粘度を高めるために、その後、加えて、水溶性ポリマー、ポリマー分散液またはバイオポリマー(例えばタンパク質)を加えることが可能である。
【0249】
ローラー型のElmarco社Nanospider装置で次のパラメーターを用いて紡糸したR16タンパク質またはS16タンパク質およびユビナールAプラスの溶液:
【0250】
そのようにして作製した、ユビナールAプラスが組み込まれたシート状タンパク質構造体は、有効成分を含まない実験と同程度の繊維径を有していた(図15)。
【0251】
純粋ユビナールAプラスとは対照的に、R16タンパク質/ユビナールAプラス処方物ではX線回折スペクトルに結晶性ピークは認められなかった(図16)。従って、有効成分は非晶形で繊維中に組み込まれたと考えることができる。ユビナールAプラスを含むS16タンパク質では、非常に弱い結晶性シグナルを検出することができた。これは、効果物質が半結晶形で存在していることを示唆している。
【0252】
以上に詳述した手順を離れて、シート状のR16またはS16タンパク質/ユビナールAプラス構造体からの有効成分の放出動態を次のとおり決定した。いずれの場合においても10mgのシート状のR16タンパク質/ユビナールAプラス構造体または5mgのS16タンパク質/ユビナールAプラス構造体を、0.25%[w/v]プロテイナーゼKを含む5mMリン酸カリウムバッファー中でインキュベートした。いずれの場合においても計画した各サンプリング時間に混合物を作製した。混合物をサーモミキサー(Eppendorf社製)中で37℃および400rpmでインキュベートした。放出されたユビナールAプラスは、特定の時点において、完全なままのシート状のR16またはS16タンパク質構造体の除去後、THFでの上清の抽出続いて吸光測光法による352nmでの測定により定量した。
【0253】
有効成分の添加密度を決定するために、放出動態のために作製した全てのサンプルをTHFにより定量的に抽出した。シート状タンパク質構造体の分解が不完全であったサンプルでは、除去したシート状タンパク質構造体もTHFにより抽出した後、ユビナールAプラスを吸光測光法により定量した。2つの値(上清およびペレット)を合わせ総添加密度を決定した。続いて全ての時点における添加密度を用い平均添加密度を決定した。
【0254】
シート状R16タンパク質構造体でのユビナールAプラス添加密度は約33.5%[w/w]であり、シート状S16タンパク質構造体では約49.6%[w/w]であることが分かった。
【0255】
対照実験(プロテアーゼKを含まないバッファー)では、24時間後にシート状のR16構造体から7.5%ユビナールAプラスしか放出されなかった。対照実験においてシート状のS16構造体からは、この期間内に9.5%有効成分が放出された。しかしながら、両方の実験において、シート状タンパク質構造体は完全なままであった。プロテイナーゼKを加えない実験では、同じ期間内にシート状のS16構造体は完全に分解された。シート状のR16構造体のプロテイナーゼK制御分解は相対的にずっと遅かった。この場合には、24時間後、シート状のR16構造体の遊離残留物が混合物中にまだはっきりと認められた。
【0256】
プロテイナーゼKを含むR16タンパク質混合物では、24時間後に約63%[w/w]のユビナールAプラスが放出された(図17)。S16タンパク質混合物では、対照的に、わずか約3時間後にユビナールAプラス有効成分の全てが放出された(図17)。
【0257】
本明細書において引用する刊行物の開示を明示的に参照する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオポリマーに基づいた有効成分含有シート状繊維構造体であって、繊維状で、バイオポリマーの有効成分担体と、その担体と結合し前記シート状繊維構造体より放出させることができる少なくとも1種の有効成分とを含むシート状繊維構造体;かかるシート状繊維構造体を含む有効成分含有処方物;有効成分含有処方物の生産のための発明有効成分含有シート状繊維構造体の使用;および発明シート状繊維構造体の生産のための方法に関する。本発明はさらに、対応する有効成分フリーシート状繊維構造体、ならびに創傷ケア物品および衛生物品の生産のためのその使用、ならびにそれに応じて生産された創傷ケア物品および衛生物品自体にも関する。
【背景技術】
【0002】
技術の現状:
WO−A−2007/082936には、難水溶性有効成分を、タンパク質含有保護コロイド中にその効果物質を分散させることにより処方するための両親媒性自己集合タンパク質の使用が記載されている。難水溶性有効成分と両親媒性自己集合タンパク質を複合分散相中で混合し、続いて高タンパク質高効果物質相と低タンパク質低効果物質相とに相分離した後に、難水溶性有効成分が封入されたタンパク質マイクロビーズが生じる。
【0003】
様々な刊行物には、化学合成されたポリマーおよびバイオポリマーと、さらにタンパク質とからの紡糸プロセスによる繊維の生産が記載されている。
【0004】
ナノファイバーおよびメソファイバーの生産に関しては、当業者は多数の方法を知っている。それらの方法の中でエレクトロスピニングは現在最も重要性が高い方法である。この方法(この方法は、例えば、D.H. Reneker, H.D. Chun in Nanotechn. 7 (1996), pages 216 ff.により記載されている)では、ポリマー溶融物またはポリマー溶液を、一般には、電極となるエッジで高電場に曝す。これは、例えば、低圧下電場中でポリマー溶融物またはポリマー溶液を、電源の一方の極に接続されたカニューレを通して押し出すことにより行うことができる。その結果、ポリマー溶融物またはポリマー溶液に静電気帯電が発生するため、材料流は対電極に向かいその対電極に向かう途中で凝固することになる。この方法は、電極形状に応じて、不織布または規則繊維の集合体を与える。
【0005】
DE−A1−10133393には、内径が1〜100nmの中空繊維を生産するための方法が開示されており、その方法では、水不溶性ポリマーの溶液−例えばジクロロメタン中のポリ−L−ラクチド溶液またはピリジン中のナイロン−46溶液−をエレクトロスピニングする。WO−A1−01/09414およびDE−A1−10355665より同様の方法も知られている。
【0006】
DE−A1−19600162には、ラウンモウアーワイヤー(lawnmower wire)または織物のシート状構造体を生産するための方法が開示されており、その方法では、糸を形成するポリマーとしてのポリアミド、ポリエステルまたはポリプロピレンと、無水マレイン酸変性ポリエチレン/ポリプロピレンゴムと、1以上の経時変化安定剤(aging stabilizers)とを合わせ、溶融し、一緒に混合した後、この溶融物を溶融紡糸する。
【0007】
DE−A1−10 2004 009 887は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーの溶融物の静電紡糸または噴霧により、直径が<50μmの繊維を生産するための方法に関するものである。
【0008】
ポリマー溶融物のエレクトロスピニングでは、直径が1μmを超える繊維しか作製することができない。しかしながら、多数の用途、例えば濾過用途では、直径が1μm未満のナノファイバーおよび/またはメソファイバーが必要であり、そのような繊維を公知のエレクトロスピニングプロセスによって作製することができるのはポリマー溶液を使用する場合のみである。
【0009】
繊維不織布を生産するためのさらなる好適な方法は、遠心紡糸(回転紡糸とも呼ばれる)である。EP−B1−0624665およびEP−A1−1088918(両方ともBASF社出願)には、紡糸プレートでの遠心紡糸プロセスによってメラミン−ホルムアルデヒド樹脂および熱可塑性ポリマーとのそのブレンドから繊維構造体を生産するための方法が開示されている。
【0010】
遠心力を用いて種々のポリマー材料の溶融物から繊維を生産するための方法および装置は、DE−A−102005048939に記載されている。
【0011】
エレクトロスピニングプロセスを用いナノファイバーを得るためのヘキサフルオロ−2−プロパノール溶液からのアメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)というクモ由来のクモ絹タンパク質の加工処理は、1998年にZarkoob and Renekerによって記載された(Polymer 45: 3973-3977, 2004)。
【0012】
ギ酸溶液からカイコ(Bombyx mori)絹を紡糸する試みは、Sukigara and Koにより開示されており(Polymer 44: 5721-572, 2003)、その試みでは、エレクトロスピニングパラメーターの変更は繊維形態に影響を及ぼした。Jin and Kaplanは、絹または絹/ポリエチレンオキシドの水ベースでのエレクトロスピニングを報告した(Biomacromolecules 3: 1233-1239, 2002)。
【0013】
WO−A−03/060099には、カイコ絹タンパク質およびクモ絹タンパク質を紡糸するための様々な方法(エレクトロスピニングを含む)および装置が記載されている。使用されたクモ絹タンパク質は、トランスジェニックヤギを用い組換えにより作製しその乳汁から精製して紡糸した。
【0014】
WO−A−01/54667には、有機ポリマー、例えば、とりわけポリエチレンオキシドのエレクトロスピニングにより作製された製薬上許容されるポリマー担体を含む医薬組成物の生産が記載されており、その場合、医薬は担体中に存在する。WO 04/014304には、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドレンまたはポリビニルピロリドンまたはポリビニルピロリドン−ポリビニルアセテートコポリマーのエレクトロスピニングにより得られた、ポリマー担体を含む対応する医薬組成物が記載されている。
【0015】
WO−A−2007/082936には、両親媒性自己集合タンパク質を用いた難水溶性効果物質の処方物が記載されている。この方法では、誘起相分離プロセスによりタンパク質マイクロビーズと呼ばれるものが形成される。しかしながら、この方法では水溶性有効成分の有効な処方物は得られない。
【0016】
これまでに分かっている、有効成分および効果物質を処方するための方法は、とりわけ医薬用途のために処方される有効成分に要求される全ての必要条件、例えば機械的安定性、無毒性、生体適合性、高有効成分バイオアベイラビリティを満たしていない。
【0017】
加えて、公知の方法によって処方された有効成分は、結晶の形で存在することが多く、それによりそのバイオアベイラビリティが低下することははっきりしている。とりわけ長期にわたっての有効成分の連続遅延制御放出は、好適な処方物の生産における努力目標である。
【0018】
さらに、先行技術ではこれまでに、ポリマー担体による多様な異なる有効成分種類の処方のための同等に好適な方法は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】WO−A−2007/082936
【特許文献2】DE−A1−10133393
【特許文献3】WO−A1−01/09414
【特許文献4】DE−A1−10355665
【特許文献5】DE−A1−19600162
【特許文献6】DE−A1−10 2004 009 887
【特許文献7】EP−B1−0624665
【特許文献8】EP−A1−1088918
【特許文献9】DE−A−102005048939
【特許文献10】WO−A−03/060099
【特許文献11】WO−A−01/54667
【特許文献12】WO 04/014304
【特許文献13】WO−A−2007/082936
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】D.H. Reneker, H.D. Chun in Nanotechn. 7 (1996), pages 216 ff.
【非特許文献2】Polymer 45: 3973-3977, 2004
【非特許文献3】Polymer 44: 5721-572, 2003
【非特許文献4】Biomacromolecules 3: 1233-1239, 2002
【発明の概要】
【0021】
よって、本発明の目的は、可能な限り先行技術から公知の方法よりも有利に上述の基準の1つ以上を満たしながら、好適な担体を処方助剤として使用し本質的に全ての有効成分種類の処方を可能にする方法を提供することであった。
【0022】
医薬品有効成分、とりわけグアヤコール誘導体の咳誘発物質および粘液溶解薬の分野では、例えば有効成分であるグアヤコールグリセリルエーテル(グアイフェネシンとしても知られる)の、連続遅延放出プロフィールを示す参照製品、例えばMucinex(登録商標)ブランドの錠剤がある。しかしながら、この場合、有効成分の放出は、胃の条件下ででのみ行われる。腸の条件では有効成分の放出には至らない。ほとんどの場合、化学合成された非生体適合性ポリマーは処方助剤として利用されるが、それにはさらなる利益(例えば吸収を高めることによる有効成分のバイオアベイラビリティの増大)はない。従って、本発明のさらなる目的は、有効成分の連続遅延放出を可能にする、咳誘発および粘液溶解有効成分(例えばグアヤコールグリセリルエーテル)の生体適合性処方物を提供することであり、その放出は胃腸管で生じるプロテアーゼによる胃腸管の条件下でのタンパク質分解によっても引き起こされた。
【0023】
上記目的は、驚くべきことに、繊維状でポリマーの有効成分担体と、その担体と結合し放出される有効成分を含み、その担体が少なくとも1種のバイオポリマーをポリマー成分として含む、有効成分含有シート状繊維構造体を提供することにより達成される。
【0024】
より具体的には、本発明によれば、本明細書に記載する新規処方物からの有効成分の連続遅延放出のための、目的の制御可能な引き金機構として、例えば、胃腸管内で、土壌中で(微生物による)または皮膚上で自然発生するプロテアーゼを利用することが可能である。加えて、本明細書に記載する方法によれば、有効成分が非晶形でまたは固溶体として存在する有効成分処方物を作製することが可能である。これらの処方物は、結晶形と比べて、有効成分バイオアベイラビリティの増大をもたらすことができ、これはバイオポリマーの処方助剤、例えば両親媒性自己集合タンパク質と組み合わせても高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】グアヤコールグリセリルエーテル(GGE)有効成分が組み込まれているシート状C16クモ絹タンパク質構造体(繊維)の電子顕微鏡(SEM)画像。
【図2】純物質(GGEまたはC16粉末)と比較した、エレクトロスピニングにより得られたC16クモ絹タンパク質処方物におけるGGE有効成分の結晶性研究(WAXS、透過率による)。
【図3】エレクトロスピニングにより得、錠剤に圧縮したC16クモ絹タンパク質処方物からのGGE有効成分の、リン酸カリウムバッファー(対照)ならびに人工胃液および腸液中への放出。100%値は対応する実施例に記載した総有効成分濃度に設定した。
【図4】Mucinex(登録商標)ブランド(Adams Respiratory Therapeutics社製)の市販の錠剤からのGGE有効成分の放出。
【図5】クロトリマゾール有効成分が組み込まれているシート状C16クモ絹タンパク質構造体(繊維)の電子顕微鏡(SEM)画像。
【図6】純粋クロトリマゾールと比較した、エレクトロスピニングにより得られたC16クモ絹タンパク質処方物におけるクロトリマゾール有効成分の結晶性研究(WAXS、透過率による)。
【図7】エレクトロスピニングにより得、錠剤に圧縮したC16クモ絹タンパク質処方物からのクロトリマゾール有効成分の、リン酸カリウムバッファー(対照)ならびに人工胃液および腸液中への放出。100%値は対応する実施例に記載した有効成分濃度に設定した。
【図8】メタザクロール有効成分が組み込まれているシート状C16クモ絹タンパク質構造体(繊維)の電子顕微鏡(SEM)画像。
【図9】純粋メタザクロールと比較した、エレクトロスピニングにより得られたC16クモ絹タンパク質処方物におけるメタザクロール有効成分の結晶性研究(WAXS、透過率による)。
【図10】エレクトロスピニングにより得られたC16クモ絹タンパク質処方物からのメタザクロール有効成分の、リン酸カリウムバッファー(対照)およびタンパク質分解活性プロテイナーゼK溶液中への放出。
【図11】ユビナールAプラス有効成分が組み込まれているシート状C16クモ絹タンパク質構造体(繊維)の電子顕微鏡(SEM)画像。
【図12】ユビナールAプラス純物質と比較した、エレクトロスピニングにより得られたC16クモ絹タンパク質処方物におけるユビナールAプラス有効成分の結晶性研究(WAXS、透過率による)。
【図13】エレクトロスピニングにより得られたC16クモ絹タンパク質処方物からのユビナールAプラス有効成分の、リン酸カリウムバッファー(対照)およびタンパク質分解活性プロテイナーゼK溶液中への放出。
【図14】(A)シート状R16タンパク質構造体(繊維)および(B)シート状S16タンパク質構造体(繊維)の光学顕微鏡画像および電子顕微鏡(SEM)画像。
【図15】ユビナールAプラス有効成分が組み込まれているシート状R16(参照、(A))およびS16(参照、(B))タンパク質構造体の電子顕微鏡(SEM)画像。
【図16】純粋ユビナールAプラスと比較した、エレクトロスピニングにより得られたR16タンパク質不織布(A)およびS16タンパク質不織布(B)におけるユビナールAプラス有効成分の結晶性研究(WAXS、透過率による)。
【図17】エレクトロスピニングにより得られたR16タンパク質不織布(A)およびS16タンパク質不織布(B)からのユビナールAプラス有効成分の、リン酸カリウムバッファー(対照)およびタンパク質分解活性プロテイナーゼK溶液中への放出。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明:
1.使用する用語の定義:
特に断りのない限り、本説明の文脈においては技術用語についての次の定義を用いる:
「担体ポリマー」とは、バイオポリマーまたはそのブレンド、あるいは少なくとも1種の合成ポリマーとバイオポリマーとのブレンドを意味すると理解され、その担体ポリマーは、処方される有効成分(群)/効果物質(群)と非共有相互作用するか、または微粒子有効成分を(分散形または結晶形で)取り囲むかもしくは吸着する(担持する)能力を有する。
【0027】
「非共有」相互作用とは、有効成分と担体ポリマーとの共有結合の形成とは関係のない当業者に公知のあらゆるタイプの結合を意味すると理解される。その限定されない例としては、次のものが挙げられる。:水素結合形成、錯体形成、イオン相互作用。
【0028】
「有効成分」または「効果物質」とは、農薬、薬学、化粧品または食品および動物飼料産業において用途を見い出すことができる、親水性、親油性または両親媒性を有する合成または天然の低分子量物質;同様に、発明のシート状繊維構造体中に埋め込むことができるしまたは発明のシート状繊維構造体上に吸着させることもできる生物学的に活性な高分子、例えばペプチド(例えば2〜10個のアミノ酸残基を有するオリゴペプチドおよび10個を超える、例えば11〜100個の、アミノ酸残基を有するポリペプチド)、ならびに酵素および一本鎖または二本鎖核酸分子(例えば2〜50個の核酸残基を有するオリゴヌクレオチドおよび50個を超える核酸残基を有するポリヌクレオチド)を意味すると理解される。
【0029】
「低分子量」とは、1モル当たり5000g未満、とりわけ2000g未満、例えば100〜1000gのモル質量を意味する。
【0030】
「高分子量」とは、1モル当たり5000gを超え、とりわけ10 000 000g未満、例えば10 000〜1 000 000gのモル質量を意味する。
【0031】
「有効成分」および「効果物質」という用語は、同義的に用いられる。
【0032】
本発明によれば、「シート状繊維構造体」という用語には、単一ポリマー繊維と、例えば繊維ウェブまたは不織布ウェブを提供するための、多数のかかる繊維の規則または不規則な単層または多層組合せの両方が含まれる。
【0033】
「有効成分担体」は、繊維形状で存在し、本発明により加工される有効成分(群)を、好ましくは、繊維表面上に吸着させ、非共有結合した形でおよび/または繊維材料中に組み込んで、担持する。有効成分は、繊維上に均一または不均一な分布で存在し得る。加えて、有効成分は、非晶形、半結晶形または結晶形で有効成分担体上/中に可逆的に吸着され得る。
【0034】
「可溶性」有効成分担体は、水性溶媒または有機溶媒、好ましくは水性溶媒、例えば水または水系溶媒に、pH範囲pH2〜13、例えば4〜11において部分的にまたは完全に溶解する。よって、水溶解度は、広い範囲内で変化し得、すなわち良好な、すなわち迅速がつ完全または本質的に完全な溶解から非常に遅くかつ完全または不完全な溶解まで変化する。
【0035】
本発明の有効成分処方物の好適な「合成」ポリマー構成成分は、原則として、温度範囲0〜240℃の間、圧力範囲1〜100バールの間、pH範囲0〜14またはイオン強度10mol/lまで範囲内において水または/および有機溶媒に溶解する全てのポリマーである。
【0036】
本発明の文脈における「水性ポリマー分散液」とは、一般専門知識とも一致して、少なくとも2つの互いに混和しないまたは本質的に混和しない相の混合物を指し、それらの少なくとも2つの相の一方の相は水であり、もう一方の相は少なくとも1種の本質的に水不溶性のポリマーを含み、とりわけそれからなる。本発明の文脈における「本質的に水不溶性のポリマー」とは、とりわけ、水溶解度が溶液の総重量に基づき0.1重量%未満であるポリマーである。
【0037】
「分解性」の有効成分担体は、繊維構造体が化学的、生物学的または物理的プロセスにより、例えば光または他の放射線の作用、溶媒、化学的または生化学的酸化、加水分解、タンパク質分解により部分的にまたは完全に破壊される場合に存在する。生化学的プロセスは、酵素または微生物により、例えば原核生物または真核生物、例えば細菌、酵母、真菌により媒介され得る。
【0038】
ポリマーの「混和性」とは、本発明によれば、少なくとも2種の異なる合成ポリマーまたはバイオポリマーの混合物の場合には、一方のポリマーがもう一方のポリマーに対する溶媒として作用することができることを意味すると理解される。これは、2種の異なるポリマーの間で単相系が生成することを意味する。非混和性成分の場合には、2つの異なる相が相応じて存在する。
【0039】
「複合ポリマー」とは、本発明によれば、少なくとも1種の、繊維を形成するポリマー成分と、少なくとも1種の低分子量または高分子量添加物、例えばとりわけ非重合性添加物、例えば以上に定義したとおりの有効成分または効果物質との均一または不均一な混合物を意味すると理解される。
【0040】
シート状繊維構造体の「加工した形態」とは、シート状繊維構造体の生産において最初に得られた製品をさらに加工することを意味すると理解され;例えば繊維を圧縮するかまたは錠剤にし、さらなる担体に適用しおよび/または繊維長を短くするために粉砕に付すということである。
【0041】
特に断りのない限り、ポリマーの分子量数はMn値またはMw値に関する。
【0042】
2.好ましい実施形態:
本発明は、第一に、有効成分含有シート状繊維構造体であって、繊維状で、ポリマーで、可溶性および/または分解性の有効成分担体と、その担体と結合し前記シート状繊維構造体より放出させることができる1種以上の、例えば2種、3種、4種または5種の、低分子量または高分子量の有効成分とを含むシート状繊維構造体であり、前記担体が、所望によりさらに化学的および/または酵素的に、例えばエステル化、アミド化、加水分解、カルボキシル化、アセチル化、アシル化、水酸化、グリコシル化およびファルネシル化により修飾されていてよい1種以上の、例えば2種、3種、4種または5種の、構造またはフレームワークを形成し容易に凝集するバイオポリマー(それらの一部は比較的高分子量である)をポリマー成分としてを含む、有効成分含有シート状繊維構造体に関する。
【0043】
そのシート状繊維構造体は、とりわけ、紡糸プロセスによって、とりわけ、少なくとも1種のバイオポリマーと少なくとも1種の有効成分を、とりわけ、溶解した形で含むエレクトロスピニング可能な溶液(an electrospinnable solution)のエレクトロスピニングによって得られる。
【0044】
そのシート状繊維構造体では、少なくとも1種の有効成分は非晶形、半結晶形または結晶形である。
【0045】
有効成分は前記担体中に組み込まれ(埋め込まれ)および/またはその上に吸着される。
【0046】
バイオポリマーは、好ましくはタンパク質、とりわけ両親媒性自己集合タンパク質である。
【0047】
両親媒性自己集合タンパク質は、好ましくはマイクロビーズを形成するタンパク質である。
【0048】
両親媒性自己集合タンパク質は、好ましくは、本質的に折りたたまれていないタンパク質である。
【0049】
より具体的には、両親媒性自己集合タンパク質は、絹タンパク質、例えばクモ絹タンパク質である。
【0050】
好適なクモ絹タンパク質の一例は、配列番号2のアミノ酸配列を含むC16クモ絹タンパク質または配列同一性が少なくとも約60%、例えば少なくとも約70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%であるこのタンパク質由来の紡糸可能なタンパク質である。
【0051】
他の本質的に折りたたまれていない両親媒性自己集合タンパク質の例は、配列番号4のアミノ酸配列を含むR16タンパク質または配列番号6のアミノ酸配列を含むS16タンパク質;あるいは配列同一性が少なくとも約60%、例えば少なくとも約70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%であるこれらのタンパク質由来の紡糸可能なタンパク質である。
【0052】
より具体的には、本発明は、少なくとも1種の医薬品有効成分、例えば咳誘発および粘液溶解有効成分(去痰薬);例えばとりわけ有効成分グアヤコールグリセリルエーテル(グアイフェネシン;CAS番号93−14−1)またはその誘導体、が存在するシート状繊維構造体を提供する。
【0053】
本発明はさらに、有効成分が作物保護有効成分、または皮膚化粧品および/もしくは毛髪化粧品有効成分であるシート状繊維構造体を提供する。
【0054】
本発明はさらに、担体が、合成ポリマー、例えば、とりわけ合成のホモポリマーまたはコポリマーから選択される少なくとも1種のさらなるポリマー成分を含むシート状繊維構造体を提供する。
【0055】
本発明はまた、ポリマー担体が、
a.少なくとも2種の混和性バイオポリマーの混合物;
b.少なくとも2種の非混和性バイオポリマーの混合物;
c.少なくとも1種の互いに混和する合成ホモポリマーまたはコポリマーと少なくとも1種のバイオポリマーとの混合物;
d.少なくとも1種の互いに混和しない合成ホモポリマーまたはコポリマーと少なくとも1種のバイオポリマーとの混合物
から選択される複合ポリマーであるシート状繊維構造体も提供する。
【0056】
本発明のシート状繊維構造体において、合成ポリマー成分は、約500〜10 000 000、例えば1000〜1 000 000、または10 000〜500 000または25 000〜250 000の範囲のモル質量(Mw)を有する。
【0057】
本発明の有効成分担体繊維の直径は、約10nm〜100μm、例えば50nm〜10μm、または100nm〜2μmである。その有効成分添加は、いずれの場合においてもシート状繊維構造体の固形分に基づき、約0.01〜80重量%、例えば約1〜70重量%または約10〜50重量%である。
【0058】
より具体的には、本発明のシート状繊維構造体は、ポリマー繊維、ポリマーフィルムおよびポリマー不織布から選択される。
【0059】
発明のシート状繊維構造体は、加えて、担体ポリマー成分と有効成分との非共有相互作用(すなわち、とりわけ分子溶液の形成)を特徴とし得る。
【0060】
本発明はさらに、以上で定義したとおりのシート状繊維構造体を加工した形態で、所望により少なくとも1種のさらなる処方助剤と組み合わせて、含む有効成分含有処方物にも関する。
【0061】
例えば、そのシート状繊維構造体は、粉砕または非粉砕形態でその中に存在してよい。
【0062】
さらに、その処方物は、シート状繊維構造体を、緻密な(圧縮した)形態で(例えば錠剤またはカプセル剤)、粉末形態でまたは担体基体に適用して含み得る。
【0063】
本発明の処方物は、とりわけ、化粧品(とりわけ皮膚化粧品および毛髪化粧品)処方物、ヒトおよび動物医薬処方物、農薬処方物、とりわけ殺真菌処方物、除草処方物、殺虫処方物および他の作物保護処方物、ならびに食品および動物飼料添加物、例えば食品および飼料補給物から選択される。
【0064】
本発明はさらに、発明の有効成分含有処方物の生産のための、以上に定義したとおりの有効成分含有シート状繊維構造体の使用;およびその中に存在する有効成分の制御放出のための、以上に定義したとおりの有効成分含有処方物の使用にも関する。
【0065】
最後に、本発明は、以上に定義したとおりのシート状繊維構造体を生産するための方法を提供し、その方法では、
a.少なくとも1種の有効成分を複合液相中で少なくとも1種のバイオポリマー成分と一緒に混合し、
b.その後、紡糸プロセスによってバイオポリマー繊維中へ(上へ)の有効成分の埋め込み(吸着)を行う。
【0066】
より具体的には、その方法における手順は、少なくとも1種の有効成分とポリマー成分を溶媒相中で混合することおよびこの混合物からそれらを紡糸すること;または少なくとも1種の有効成分とポリマー成分を少なくとも2種の互いに混和する溶媒の混合物中で混合すること(有効成分とポリマーは少なくともそれらの溶媒の一方に溶解する)、およびこの混合物からそれらを紡糸することである。
【0067】
より具体的には、本発明は、バイオポリマーが両親媒性自己集合タンパク質であるシート状繊維構造体を生産するための方法を提供し、その方法では、そのタンパク質を少なくとも1種の有効成分とギ酸中で混合した後、この混合物からそれらを紡糸する。
【0068】
使用する紡糸プロセスは、好ましくはエレクトロスピニングプロセスまたは遠心(回転)紡糸プロセスである。
【0069】
その使用温度は、とりわけ約5〜50℃の範囲内である。
【0070】
本発明はさらに、以上に示した担体材料を含むがその担体材料が有効成分、とりわけ低分子量の有効成分を本質的に含まないシート状繊維構造体にも関する。
【0071】
本発明はさらに、例えば、化粧品処方物、ヒトおよび動物医薬処方物、農薬処方物、食品および動物飼料添加物から、選択される有効成分含有処方物または有効成分フリー処方物の生産のためのかかるシート状繊維構造体の使用を提供する。
【0072】
本発明はさらに、繊維状で、ポリマーで、可溶性および/または分解性の担体を含む有効成分フリーシート状繊維構造体にも関し、そのシート状繊維構造体において、担体は、所望によりさらに化学的および/または酵素的に修飾されていてよい少なくとも1種のバイオポリマーをポリマー成分として含み、バイオポリマーは両親媒性自己集合タンパク質であり;バイオポリマーは、とりわけ配列番号4のアミノ酸配列を含むR16タンパク質、および配列番号6のアミノ酸配列を含むS16タンパク質;または配列同一性が少なくとも約60%であるこれらのタンパク質由来の紡糸可能なタンパク質から選択される絹タンパク質である。
【0073】
本発明はさらに、医療創傷治療用品および創傷ケア用品ならびに衛生物品の生産のためのかかる有効成分フリーシート状繊維構造体の使用を提供する。
【0074】
本発明はまた、発明のシート状繊維構造体を用いて生産された創傷治療用品および創傷ケア用品、例えば創傷包帯、硬膏、タンポナーデ(tamponades)、創傷接着剤(wound adhesives)、包帯、包帯材料も提供する。本発明の創傷材料は、例えば、小さな傷、例えば切傷、またはより大きな傷、例えば糖尿病性創傷、潰瘍、例えば褥瘡、外科的創傷、火傷、湿疹などの表面を被覆するために、使用することができる。例えば、発明の製品は、皮膚、眼、耳、鼻、口腔、歯の領域内の、および体内の、出血しているまたは出血していない創傷または損傷、例えば腸領域(腹部、腸管、肝臓、腎臓、尿路)、胸部(心臓、肺)、生殖器部、頭蓋骨、筋肉組織における手術の治療において;組織、血管または臓器の移植に関連した創傷の治療およびケアにおいて使用することができる。
【0075】
本発明はまた、発明のシート状繊維構造体を用いて生産された衛生物品、パーソナルケア分野で一般に使用されるような、例えばオムツ、失禁用製品、パンティーライナー、生理用ナプキン、タンポン、皮膚用およびフェイスケア用パッド、ワイプスなども提供する。
【0076】
3.本発明のさらなる構成:
(i)バイオポリマー
発明の担体構造体の形成のために好適なのは、原則として、フレームワーク構造を形成しおよび/または容易に凝集する能力を有するバイオポリマーである。通常、この目的では高分子量である必要があり、高分子量であることによりその後分子鎖の分子間干渉が起こる。しかしながら、分子内の非共有相互作用、例えば水素結合または疎水性相互作用も本発明の担体構造体の形成に関与し得る。
【0077】
限定されない例としては、セルロース、セルロースエーテル、例えばメチルセルロース(置換度3〜40%)、エチルセルロース、ブチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース;ヒドロキシプロピルセルロース、イソプロピルセルロース、セルロースエステル、例えばセルロースアセテート、細菌性セルロース、デンプン、加工デンプン、例えばメチルエーテルデンプン、アラビアガム、キチン、セラック、ゼラチン、キトサン、ペクチン、カゼイン、アルギン酸塩、ならびに上述の化合物のモノマーから形成されたコポリマーおよびブロックコポリマー;ならびに核酸分子:が挙げられる。
【0078】
特に挙げるべき好適なバイオポリマーは、両親媒性自己集合タンパク質である。両親媒性自己集合タンパク質は、アミノ酸、とりわけ20個の天然アミノ酸から構成されたポリペプチドからなる。アミノ酸はまた、修飾、例えばアセチル化、グリコシル化、ファルネシル化されていてもよい。
【0079】
本発明によれば使用できる特定のタンパク質はその自己集合特性によってより高分子量の構造をとることができそれゆえ有効成分を永久的に封入することができる。これらの両親媒性自己集合タンパク質は、主として難水溶性疎水性有効成分のための処方助剤として好適である。それらの両親媒性分子の特性によって、これらのタンパク質は活性疎水性成分と強く相互作用し水溶液中で活性疎水性成分を安定化することができる。活性疎水性成分をタンパク質マトリックス中に封入するために、続いて相分離プロセスを用いることができる。両親媒性自己集合タンパク質の相互作用は、相互作用する有効成分の水溶解度が高くなると大幅に弱くなる。水溶液からの、例えばリオトロピック塩の添加による誘起相分離プロセスによって、例えばマイクロビーズ中への、水溶性有効成分の効率的な封入が得られないのはこのためである。紡糸プロセスによれば、両親媒性自己集合タンパク質と水溶性有効成分が溶解または分散した形で存在する水溶液または有機溶媒から、より高分子量のタンパク質構造体、例えばシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)を作製することができる。よって、水不溶性または難水溶性有効成分を封入することも可能である。
【0080】
作製されたタンパク質リッチ有効成分リッチ相は、後に硬化させ機械的に安定な有効成分含有タンパク質構造体の形で取り出し所望により乾燥させることができ、錠剤またはカプセル剤に加工することができる。
【0081】
水溶性効果物質および難水溶性効果物質の両方の処方のために好適な両親媒性自己集合タンパク質は、タンパク質マイクロビーズ形成することができるタンパク質である。タンパク質マイクロビーズは、平均粒径が0.1〜100μm、とりわけ0.5〜20μm、好ましくは1〜5μm、より好ましくは2〜4μmの球形である。
【0082】
タンパク質マイクロビーズは、好ましくは、以下に記載する方法により調製することができる:
タンパク質を第1の溶媒に溶解する。使用する溶媒は、例えば、塩水溶液であり得る。とりわけ好適なのは、2モル濃度を超える、とりわけ4モル濃度を超える、より好ましくは5モル濃度を超える濃度を有し、そのイオンがナトリウムイオンおよび塩化物イオンより顕著なカオトロピック特性を有する高濃度塩溶液である。かかる塩溶液の一例は、6Mチオシアン酸グアニジンまたは9M臭化リチウムである。加えて、タンパク質を溶解するために有機溶媒を使用することが可能である。とりわけ好適なのは、フッ素化アルコールまたは環状炭化水素または有機酸である。その例は、ヘキサフルオロイソプロパノール、シクロヘキサンおよびギ酸である。タンパク質マイクロビーズは、記載した溶媒中で作製することができる。あるいは、この溶媒ををさらなる溶媒、例えば透析または希釈による低濃度(c<0.5M)の塩溶液に置き換えることができる。溶解したタンパク質の終濃度は、0.1〜100mg/mlの間とすることになる。この方法を実施する温度は、一般に0〜80℃、好ましくは5〜50℃、より好ましくは10〜40℃である。
【0083】
水溶液を用いる場合、バッファーも好ましくはpH4〜10、より好ましくは5〜9、最も好ましくは6〜8.5のの範囲で加え得る。
【0084】
添加物の添加により相分離が起こる。この場合には、溶媒と添加物の混合により乳化されたタンパク質リッチ相が形成される。表面効果により、乳化したタンパク質リッチ液滴は円形をとる。溶媒、添加物、およびタンパク質濃度を選択することによって、タンパク質マイクロビーズの平均径を0.1μm〜100μmの間の値に調整することが可能である。
【0085】
使用する添加物は、第一に第1の溶媒と混和性であり第二にタンパク質リッチ相の形成を誘導する全ての物質であり得る。マイクロビーズ形成を有機溶媒中で行う場合、この目的で好適な物質は、溶媒よりも低い極性を有する有機物質、例えばトルエンである。水溶液中では、使用する添加物は、そのイオンがナトリウムイオンおよび塩化物イオンより顕著なコスモトロピック特性(more pronounced cosmotropic properties)を有する塩(例えば硫酸アンモニウム;リン酸カリウム)塩であり得る。添加物の終濃度は、添加物の種類に応じて、タンパク質溶液に基づき1重量%〜50重量%の間とすることになる。
【0086】
タンパク質リッチ液滴は、円形を保持したまま硬化により固定される。固定は、強い分子間相互作用の発生に基づいている。相互作用の種類は、非共有結合(例えば分子間βシート結晶の形成によって生じる)、または共有結合(例えば化学的架橋によって生じる)であり得る。硬化は、添加物によりおよび/またはさらなる好適な物質の添加により行うことができる。硬化は、0〜80℃の間、好ましくは5〜60℃の間の温度で達成される。
【0087】
このさらなる物質は、化学架橋剤であり得る。化学架橋剤とは、少なくとも2つの化学反応性基がリンカーを介して互いに結合している分子を意味すると理解される。その例は、スルフヒドリル反応性基(例えばマレイミド、ピドリジルジスルフィド(pydridyl disulfide)、α−ハロアセチル、ビニルスルホン、スルファトアルキルスルホン(好ましくはスルファトエチルスルホン))、アミン反応性基(例えばスクシンイミジルエステル、カルボジイミド、ヒドロキシメチルホスフィン、イミドエステル、PFPエステル、アルデヒド、イソチオシアネートなど)、カルボキシル反応性基(例えばアミンなど)、ヒドロキシル反応性基(例えばイソシアネートなど)、任意の基(例えばアリールアジドなど)および光活性化基(例えばペルフルオロフェニルアジドなど)である。これらの反応性基は、タンパク質に存在するアミン、チオール、カルボキシルまたはヒドロキシル基と共有結合を形成することができる。
【0088】
安定化させたマイクロビーズは、好適なさらなる溶媒、例えば水で洗浄した後、当業者にはよく知られている方法により、例えば凍結乾燥、接触乾燥または噴霧乾燥により乾燥させる。走査電子顕微鏡を用いてビーズ形成が成功したことを確認する。
【0089】
タンパク質マイクロビーズの作製のために好適なタンパク質は、主に本質的に折りたたまれていない形で水溶液中に存在するタンパク質である。この状態は、例えば、プログラムIUpred(http://iupred.enzim.hu/index.html; The Pairwise Energy Content Estimated from Amino Acid Composition Discriminates between Folded and Intrinsically Unstructured Proteins; Zsuzsanna Dosztanyi, Veronika Csizmok, Peter Tompa and Istvan Simon; J. Mol. Biol. (2005) 347, 827-839)の基礎となるアルゴリズムによって計算することができる。主に本質的に折りたたまれていない状態は、50%を超えるアミノ酸残基に関してこのアルゴリズムによって>0.5の値が算出されるときと考えられる(予測方式:長い不規則)。
【0090】
(ii)絹タンパク質
紡糸プロセスによって有効成分を処方するためのさらなる好適なタンパク質は絹タンパク質である。これらは、以下、本発明によれば、高度反復アミノ酸配列を含み、動物において液体形態で保存され、その分泌時に剪断または紡糸の結果として繊維を形成するタンパク質を意味すると理解される(Craig, C. L. (1997) Evolution of arthropod silks. Annu. Rev. Entomol. 42: 231-67)。
【0091】
紡糸プロセスによって有効成分を処方するための特に好適なタンパク質は、クモ類からその原初の形態で単離されたクモ絹タンパク質である。
【0092】
極めて特に好適なタンパク質は、クモの大瓶状腺(the major ampullate gland)から単離された絹タンパク質である。
【0093】
好ましい絹タンパク質は、ニワオニグモ(Araneus diadematus)の大瓶状腺からのADF3およびADF4である(Guerette et al., Science 272, 5258:112-5 (1996))。
【0094】
紡糸プロセスによって有効成分を処方するための同等に好適なタンパク質は、天然絹タンパク質から誘導され遺伝子工学法を用いて原核生物または真核生物発現系において異種産生された天然または合成タンパク質である。発現原核生物の限定されない例は、とりわけ、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、巨大菌(Bacillus megaterium)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)である。発現真核生物の限定されない例は、酵母、例えば、とりわけサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、糸状菌、例えば、とりわけアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)、哺乳類細胞、例えば、とりわけhela細胞、COS細胞、CHO細胞、昆虫細胞、例えば、とりわけSf9細胞、MEL細胞である。
【0095】
紡糸プロセスによって有効成分を処方するためにさらに好適なのは、天然絹タンパク質の反復単位に基づいた合成タンパク質である。それらの合成タンパク質は、合成反復絹タンパク質配列に加えて、1以上の天然非反復絹タンパク質配列をさらに含んでよい(Winkler and Kaplan, J Biotechnol 74:85-93 (2000))。
【0096】
また、紡糸プロセスによって有効成分を処方するために使用できるのは、とりわけ、天然クモ絹タンパク質の反復単位に基づいた合成クモ絹タンパク質である。それらの合成クモ絹タンパク質は、合成反復クモ絹タンパク質配列に加えて、1以上の天然非反復クモ絹タンパク質配列をさらに含んでよい。
【0097】
合成クモ絹タンパク質の中では、好ましくは、C16タンパク質を挙げるべきである(Huemmerich et al. Biochemistry, 43(42):13604-13612 (2004))。このタンパク質は配列番号2に示されるポリペプチド配列を有する。
【0098】
配列番号2に示されるポリペプチド配列に加えて、この配列の機能的等価物、機能的誘導体および塩もまた特に好ましい。
【0099】
紡糸プロセスによって有効成分を処方するためにさらに好ましいのは、昆虫構造タンパク質、例えばレシリンの配列と組み合わせた、天然絹タンパク質の反復単位に基づいた合成タンパク質である(Elvin et al., 2005, Nature 437: 999-1002)。
【0100】
絹タンパク質とレシリンからなるこれらの組合せタンパク質の中では、とりわけ、R16タンパク質およびS16タンパク質を挙げるべきである。これらのタンパク質はそれぞれ、配列番号4および配列番号6に示されるポリペプチド配列を有する。
【0101】
配列番号4および配列番号6に示されるポリペプチド配列に加えて、これらの配列の機能的等価物、機能的誘導体および塩もまた特に好ましい。
【0102】
(iii)変性バイオポリマー
「機能的等価物」とは、本発明によれば、とりわけ、上述のアミノ酸配列の少なくとも1つの配列位置において明記されたものとは異なるアミノ酸を有するがそれにもかかわらず効果物質をパッケージングする特性を有する突然変異体を含むと理解される。よって、「機能的等価物」は、1以上のアミノ酸付加、置換、欠失および/または逆位によって得られる突然変異体を含み、その場合、記述した変化は、発明の特性プロフィールを有する突然変異体をもたらすという条件で、任意の配列位置で起こり得る。機能的等価性は、とりわけ、突然変異体と未変化ポリペプチドとの間で反応性パターンが質的に一致する場合にも存在する。
【0103】
また、上記の意味における「機能的等価物」は、記載したポリペプチドの「前駆体」、ならびにそのポリペプチドの「機能的誘導体」および「塩」でもある。
【0104】
「前駆体」は、所望の生物活性の有無にかかわらずそのポリペプチドの天然または合成前駆体である。
【0105】
好適なアミノ酸置換の例は次の表から引用することができる:
「塩」という表現は、本発明のタンパク質分子の、カルボキシル基の塩およびアミノ基の酸付加塩の両方を意味すると理解される。カルボキシル基の塩は、それ自体が公知の方法によって調製することができ、無機塩、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄および亜鉛の塩、ならびに有機塩基例えばアミン、例えばトリエタノールアミン、アルギニン、リシン、ピペリジンなどとの塩が挙げられる。酸付加塩、例えば無機酸(例えば塩酸または硫酸)との塩、および有機酸(例えば酢酸およびシュウ酸)との塩も同様に、本発明対象の一部をなす。
【0106】
本発明のポリペプチドの「機能的誘導体」も同様に、公知の技術を用いて機能性アミノ酸側鎖基またはそれらのN末端もしくはC末端で調製することができる。かかる誘導体には、例えば、アンモニアとまたは第一級もしくは第二級アミンとの反応によって得られるカルボン酸基の脂肪族エステル、カルボン酸基のアミド、;アシル基との反応によって調製される遊離アミノ基のN−アシル誘導体、;あるいはアシル基との反応によって調製される遊離ヒドロキシル基のO−アシル誘導体が含まれる。
【0107】
本発明によればさらに包含される「機能的等価物」は、本明細書において具体的に開示するタンパク質/ポリペプチドのホモログである。これらは、具体的に開示するアミノ酸配列の1つに対して少なくとも60%、例えば70%、80%または85%、例えば90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%、の同一性を有する。
【0108】
2配列間の「同一性」とは、とりわけ、いずれの場合においても全配列長にわたる基の同一性、とりわけ、the Vector NTI Suite 7.1 (Vector NTI Advance 10.3.0, Invitrogen Corp.)(すなわちInformax社(USA)のソフトウェア、clustal法(Higgins DG, Sharp PM. Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer. Comput Appl. Biosci. 1989 Apr;5(2):151-1)を用いる)を使用し、次のパラメーター設定を用い比較により計算された同一性を意味すると理解される:
(iv)有効成分の処方
有効成分の処方物は、例えば、バイオポリマー、例えば両親媒性自己集合タンパク質を用いて様々に作製することができる。有効成分は、紡糸プロセスによりシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中にパッケージングまたは封入することができる。
【0109】
タンパク質−有効成分組合せからなるシート状繊維構造体は、当業者に公知の全ての紡糸プロセスにより溶液または微細分散液(乾式紡糸、湿式紡糸)およびゲルから作製することができる。特に好適な紡糸プロセスは、溶液または微細分散液からのプロセスであり、より好ましくは遠心紡糸(回転紡糸)およびエレクトロスピニング(静電紡糸)が挙げられる。
【0110】
タンパク質を繊維へ紡糸する場合、好適な繊維径は、10nm〜100μm、好ましくは繊維径50nm〜10μm、より好ましくは100nm〜2μmである。
【0111】
エレクトロスピニング(静電紡糸)の場合、処方する溶液または微細分散液を0.01〜10kV/cmの間、より好ましくは1〜6kV/cmの間、最も好ましくは2〜4kV/cmの間の強度の電場に置く。電気力が処方物の表面張力を超えるとすぐに、大部分はジェットの形で対向電極へ移動する。溶媒は電極間の空間において蒸発し、そのため処方物中の固形物は対電極上に繊維の形で存在する。紡糸電極は、ダイまたはシリンジをベースとし得るしまたはローラー形状であり得る。紡糸は、垂直方向(下から上へおよび上から下へ)、および水平方向のいずれかにおいて行われ得る。
【0112】
さらに好適なプロセスは遠心紡糸(回転紡糸)である。このプロセスでは、処方物または微細分散液を重力場に置く。この目的で、繊維原料は容器に入れられ、その容器は回転するようになっており、その過程で流動化した繊維原料が求心力または遠心力により繊維の形で容器から排出される。繊維は、続いて、シート状構造体を形成するためにガス流により運び去り組み合わせることができる。
【0113】
有効成分は、本発明による方法により作製したシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中に封入することにより処方することができる。このプロセスは2つのステップを含む。第1のステップにおいて、有効成分およびバイオポリマー、例えば両親媒性自己集合タンパク質から、それらの成分を共通相中で混合することにより紡糸液を調製する。この目的で、溶媒または溶媒混合物を用いて有効成分およびタンパク質を直接溶液にすることができる。あるいは、有効成分およびタンパク質をまず異なる溶媒に溶解することができ、その後、それらの溶液を一緒に混合することができ、それによってこの場合も共通相が生成する。その共通相は分子分散相であり得るしまたはコロイド分散相でもあり得る。
【0114】
加えて、例えば、溶液の粘度を高めるためまたは他の点でその加工性を向上させるためまたは好ましい構造材料特性、例えば結晶性、または好ましい性能特性、例えば処方された有効成分の制御、遅延または連続放出プロフィールを得るために、紡糸液にさらなる物質を添加し得る。好ましい添加物は、水溶性ポリマーまたはとりわけ水性ポリマー分散液である。紡糸液中の添加物の好適な量は、>0.1重量%、好ましくは>0.5重量%、より好ましくは>1重量%、最も好ましくは>5重量%である。
【0115】
加えて、紡糸液またはそれから作製したシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)に、錠剤またはカプセル剤の崩壊を可能にしそれによって錠剤またはカプセル剤に圧縮されたシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)およびその中に存在する有効成分の分散の向上を可能にする物質を添加することが可能である。
【0116】
有効成分およびタンパク質の異なる溶媒への溶解と、それに続くそれらの2つの溶液の混合は、とりわけ、有効成分およびタンパク質が共通の溶媒または溶媒混合物に溶解することができない場合に有利である。このようにして、好適な溶媒に溶解した有効成分を、この有効成分が溶解しない別の溶媒で希釈することによって、疎水性有効成分のコロイド分散溶液を作製することも可能である。
【0117】
タンパク質は、一般的に良好な水溶解度を有するため、水溶液を用いて実施することが好ましい。しかしながら、水および水混和性有機溶媒の混合物または有機溶媒の単独使用も可能である。好適な水混和性溶媒の例は、アルコール、例えばメタノール、エタノールおよびイソプロパノール、フッ素化アルコール、例えばヘキサフルオロイソプロパノールおよびトリフルオロエタノール、アルカノン、例えばアセトン、あるいはスルホキシド、例えばジメチルスルホキシド、またはホルムアミド、例えばジメチルホルムアミド、または他の有機溶媒、例えばテトラヒドロフランおよびアセトニトリルまたはN−メチル−2−ピロリドンまたはギ酸エステルである。一般的には、タンパク質を溶解することができる全ての溶媒および溶媒混合物を用いて実施することが可能である。好適な溶媒の例は、水または水性緩衝系および塩溶液、フッ素化アルコール、例えばヘキサフルオロイソプロパノールまたはトリフルオロエタノール、イオン性液体、例えば酢酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMIM)、カオトロピック塩の水溶液、例えば尿素、塩酸グアニジンおよびチオシアン酸グアニジン、または有機酸、例えばギ酸、およびこれらの溶媒と他の有機溶媒との混合物である。タンパク質用の溶媒と混合することができる溶媒の例としては、水、アルコール、例えばメタノール、エタノールおよびイソプロパノール、アルカノン、例えばアセトン、スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド、ホルムアミド、例えばジメチルホルムアミド、ハロアルカン、例えば塩化メチレン、あるいはさらなる有機溶媒、例えばテトラヒドロフランが挙げられる。
【0118】
有効成分の処方の第2のステップは、タンパク質の集合であり、この集合は、複合固体または高粘度のゲル状相を生み出すために、例えば、溶媒の蒸発、電場により、剪断力または遠心力によりもたらされ、このゲル状相はその後硬化する。これにより有効成分が集合形態のタンパク質中に組み込まれる。集合タンパク質構造体は、有効成分を含有するシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)として作製することができ、基体、例えばマイクロファイバー不織布上への紡糸作業中に用意することができる。集合タンパク質構造体は、続いて、錠剤またはカプセル剤に圧縮することができる。
【0119】
有効成分は表面に結合させシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中に組み込むことができるし、あるいはシート状タンパク質構造体と結合させることもできる。本発明による方法により作製したシート状タンパク質構造体と有効成分との結合は、集合混合物中の溶解有効成分の枯渇により判定することができる。有効成分の濃度は、その特性の定量分析により測定することができる。例えば、光吸収有効成分の結合は、測光法により分析することができる。この目的で、例えば、シート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)の色または処方混合物の低タンパク質および低有効成分相の脱色を、有色または光吸収有効成分の吸収を測定することにより決定する。これらの方法を用いて、マイクロビーズ中の有効成分含量の高さを決定することも可能である。この目的で、シート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)を、封入する有効成分に好適な溶媒と混合し、この溶媒により有効成分を浸出させる。続いて、その溶媒における有効成分含量を、例えば吸光測光法により、決定する。あるいは、タンパク質分解活性酵素を用いてタンパク質集合構造体を分解することもでき、存在する有効成分が放出されその後それを定量する。
【0120】
(v)合成ポリマー成分
好適な合成ポリマーは、例えば、芳香族ビニル化合物のホモポリマーおよびコポリマー、アルキルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、アルキルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、α−オレフィンのホモポリマーおよびコポリマー、脂肪族ジエンのホモポリマーおよびコポリマー、ハロゲン化ビニルのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルアセテートのホモポリマーおよびコポリマー、アクリロニトリルのホモポリマーおよびコポリマー、ウレタンのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、ならびに上述のポリマーを構成するモノマー単位の2種以上から形成されたコポリマーからなる群から選択される。
【0121】
有用な担体ポリマーとしては、より具体的には、次のモノマーに基づいたポリマーが挙げられる:
アクリルアミド、アジピン酸、アリルメタクリレート、α−メチルスチレン、ブタジエン、ブタンジオール、ブタンジオールジメタクリレート、ブタンジオールジビニルエーテル、ブタンジオールジメタクリレート、ブタンジオールモノアクリレート、ブタンジオールモノメタクリレート、ブタンジオールモノビニルエーテル、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチルアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、エチレン、エチレングリコールブチルビニルエーテル、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジビニルエーテル、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルビニルエーテル、グリシジルメタクリレート、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールモノビニルエーテル、イソブテン、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、イソプレン、イソプロピルアクリルアミド、メチルアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、メチルメタクリレート、メチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピロリドン、オクタデシルビニルエーテル、フェノキシエチルアクリレート、ポリテトラヒドロフラン2ジビニルエーテル、プロピレン、スチレン、テレフタル酸、tert−ブチルアクリルアミド、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジメチルアクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルメチルエーテル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ビニル2−エチルヘキシルエーテル、4−tert−ブチル安息香酸ビニル、ビニルアセテート、塩化ビニル、ビニルドデシルエーテル、塩化ビニリデン、ビニルイソブチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルプロピルエーテルおよびビニルtert−ブチルエーテル。
【0122】
「合成ポリマー」という用語には、ホモポリマーおよびコポリマーの両方が含まれる。有用なコポリマーは、ランダム系だけでなく交互系、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーでもある。「コポリマー」という用語には、2種以上の異なるモノマーから形成されたポリマー、あるいは例えばステレオブロックコポリマーの場合と同様に、少なくとも1種のモノマーのポリマー鎖への組込みが様々な方法によって実現し得るポリマーが含まれる。
【0123】
ホモポリマーおよびコポリマーのブレンドを使用することも可能である。ホモポリマーおよびコポリマーは互いに混和する場合もあるしまたは互いに混和しない場合もある。
【0124】
好ましくは、次のポリマーを挙げるべきである:
ポリビニルエーテル、例えばポリベンジルオキシエチレン、ポリビニルアセタール、ポリビニルエステル、例えばポリビニルアセテート、ポリオキシテトラメチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、例えばポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリメタクリルアミド、ポリヒドロキシブチレート、ポリビニルアルコール、アセチル化ポリビニルアルコール、ポリビニルホルムアミド、ポリビニルアミン、ポリカルボン酸(ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸)、ポリアクリルアミド、ポリイタコン酸、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリスルホン酸(ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)すなわちPAMPS)、ポリメタクリルアミド、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシド;ポリ−N−ビニルピロリドン;マレイン酸、ポリ(エチレンイミン)、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリレート、例えばポリフェノキシエチルアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリドデシルアクリレート、ポリ(イボルニルアクリレート)、ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリ(t−ブチルアクリレート)、ポリシクロヘキシルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ポリヒドロキシプロピルアクリレート、ポリメタクリレート、例えばポリメチルメタクリレート、ポリ(n−アミルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリエチルメタクリレート、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリシクロヘキシルメタクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)、ポリラウリルメタクリレート、ポリ(t−ブチルメタクリレート)、ポリベンジルメタクリレート、ポリ(イボルニルメタクリレート)、ポリグリシジルメタクリレートおよびポリステアリルメタクリレート、ポリスチレン、さらに(例えば無水マレイン酸との)スチレン系コポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、メチルメタクリレート−スチレンコポリマー、N−ビニルピロリドンコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)。
【0125】
特に、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリメチルメタクリレート、アクリレート−スチレンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリアミドおよびポリエステルを挙げるべきである。
【0126】
さらに、生分解性合成ポリマーを使用することも可能である。
【0127】
「生分解性ポリマー」という用語は、DIN V 54900に示される生分解性の定義を満たす全てのポリマーを含むものであり、より具体的にはコンポスト化可能なポリエステルを意味する。
【0128】
一般的には、生分解性とは、ポリマー、例えばポリエステルが、例えば適当な検証可能な期間内に分解するということを意味する。分解とは、加水分解および/または酸化により、主に微生物、例えば細菌、酵母、真菌および藻類の作用によって起こりうるものである。生分解性は、例えば、ポリエステルをコンポストと混合し一定の期間それを保存することによって定量することができる。ASTM D 5338、ASTM D 6400およびDIN V 54900によれば、例えば、コンポスト化中に熟成させたコンポストにCO2を含まない空気を通し、熟成させたコンポストを規定の温度プログラム下におく。本明細書における生分解性は、サンプルからのCO2の正味の放出量(サンプルを含まないコンポストからのCO2放出量を引いた後のもの)とサンプルからのCO2の最大放出量(サンプルの炭素含量から算出したもの)との比率によって定義される。生分解性ポリエステルは、一般には、コンポスト化のわずか数日後に分解の明らかな様相、例えば真菌増殖、亀裂および穴傷を示す。生分解性ポリマーの例は、生分解性ポリエステル、例えばポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリアルキレンアジペートテレフタレート、ポリヒドロキシアルカノエート(ポリヒドロキシブチレート)およびポリラクチドグリコシドである。特に好ましいのは、生分解性ポリアルキレンアジペートテレフタレートであり、好ましくはポリブチレンアジペートテレフタレートである。好適なポリアルキレンアジペートテレフタレートは、例えばDE 4 440 858に記載されている(また、市販されている、例えば、BASF社のEcoflex(登録商標)である)。
【0129】
(vi)有効成分
「有効成分」および「効果物質」という用語は、以下、同義的に用いられる。これらの用語には、水溶性効果物質および難水溶性効果物質の両方が含まれる。「難水溶性」有効成分および「疎水性」有効成分または「難水溶性」効果物質および「疎水性」効果物質という用語は、同義的に用いられる。難水溶性有効成分とは、以下、20℃における水溶解度が<1重量%、好ましくは<0.5重量%、より好ましくは<0.25重量%、最も好ましくは<0.1重量%である化合物を指す。水溶性有効成分とは、以下、20℃における水溶解度が>1重量%、好ましくは>10重量%、より好ましくは>40重量%、最も好ましくは>70重量%である化合物を指す。
【0130】
好適な効果物質は、色素、とりわけ次の表に明記するものである:
特に有利な色素は、次のリストに明記する油溶性または油分散性化合物である。カラーインデックス番号(CIN)は、the Rowe Colour Index, 3rd edition, Society of Dyers and Colourists, Bradford, England, 1971から引用している。
【0131】
さらに好ましい効果物質は、脂肪酸、とりわけアルキル分岐を有する飽和脂肪酸、より好ましくは分岐エイコサン酸、例えば18−メチルエイコサン酸である。
【0132】
さらに好ましい効果物質は、カロテノイドである。カロテノイドは、本発明によれば、次の化合物、およびそのエステル化またはグリコシル化誘導体:β−カロテン、リコピン、ルテイン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、シトラナキサンチン、カンタキサンチン、ビキシン、β−アポ−4−カロテナール、β−アポ−8−カロテナール、β−アポ−8−カロチン酸エステル、ニューロスポレン、エチネノン、アドニルビン、ビオラキサンチン、トルレン、トルラロジンを個別にまたは混合物として意味すると理解される。好ましく使用されるカロテノイドは、β−カロテン、リコピン、ルテイン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、シトラナキサンチンおよびカンタキサンチンである。
【0133】
さらに好ましい効果物質は、ビタミン、とりわけレチノイドおよびそのエステルである。
【0134】
本発明の文脈において、レチノイドとは、ビタミンAアルコール(レチノール)およびその誘導体、例えばビタミンAアルデヒド(レチナール)、ビタミンA酸(レチノイン酸)およびビタミンAエステル(例えば酢酸レチニル、プロピオン酸レチニルおよびパルミチン酸レチニル)を意味する。「レチノイン酸」という用語には、オールトランスレチノイン酸だけでなく13−シスレチノイン酸も含まれる。「レチノール」および「レチナール」という用語には、好ましくは、オールトランス化合物が含まれる。本発明の処方物に使用される好ましいレチノイドは、オールトランスレチノール(以下、レチノールと呼ぶ)である。
【0135】
さらに好ましい効果物質は、A群、B群、C群、E群およびF群のビタミン、プロビタミンおよびビタミン前駆体、とりわけ3,4−ジデヒドロレチノール、β−カロテン(ビタミンAのプロビタミン)、アスコルビン酸のパルミチン酸エステル、トコフェロール、とりわけα−トコフェロールおよびそのエステル(例えば酢酸エステル、ニコチン酸エステル、リン酸エステルおよびコハク酸エステル);さらにビタミンFであり、これは、必須脂肪酸、特にリノール酸、リノレン酸およびアラキドン酸を意味すると理解される。
【0136】
さらに好ましい効果物質は、ビタミンE群の親油性油溶性抗酸化剤、すなわちトコフェロールおよびその誘導体、没食子酸エステル、フラボノイドおよびカロテノイド、並びにブチルヒドロキシトルエン/アニソールである。
【0137】
さらに好ましい効果物質は、リポ酸および好適な誘導体(塩、エステル、糖、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ペプチドおよび脂質)である。
【0138】
さらに好ましい効果物質は、紫外線防護フィルターである。これは、紫外線を吸収し吸収したエネルギーを再びより長い波長の放射線、例えば熱の形で放出することのできる有機物質を意味すると理解される。
【0139】
使用される油溶性UV−Bフィルターは、例えば、次の物質であり得る:
3−ベンジリデンカンファーおよびその誘導体、例えば3−(4−メチルベンジリデン)カンファー;4−アミノ安息香酸誘導体、好ましくは4−(ジメチルアミノ)安息香酸2−エチルヘキシル、4−(ジメチルアミノ)安息香酸2−オクチルおよび4−(ジメチルアミノ)安息香酸アミル;桂皮酸のエステル、好ましくは4−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、4−メトキシ桂皮酸プロピル、4−メトキシ桂皮酸イソアミル、4−メトキシ桂皮酸イソペンチル、2−シアノ−3−フェニル桂皮酸2−エチルヘキシル(オクトクリレン);
サリチル酸のエステル、好ましくはサリチル酸2−エチルヘキシル、サリチル酸4−イソプロピルベンジル、サリチル酸ホモメンチル;ベンゾフェノンの誘導体、好ましくは2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン;ベンザルマロン酸のエステル、好ましくは4−メトキシベンズマロン酸ジ−2−エチルヘキシル;トリアジン誘導体、例えば2,4,6−トリアニリノ−(p−カルボ−2’−エチル−1’−ヘキシルオキシ)−1,3,5−トリアジン(オクチルトリアゾン)およびジオクチルブタミドトリアゾン(Uvasorb(登録商標)HEB):
プロパン−1,3−ジオン、例えば1−(4−tert−ブチルフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオン。
【0140】
桂皮酸のエステル、好ましくは4−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、4−メトキシ桂皮酸イソペンチル、2−シアノ−3−フェニル桂皮酸2−エチルヘキシル(オクトクリレン)の使用が特に好ましい。
【0141】
ベンゾフェノンの誘導体、とりわけ2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンの使用、およびプロパン−1,3−ジオン、例えば1−(4−tert−ブチルフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオンの使用がさらに好ましい。
【0142】
有用な典型的UV−Aフィルターとしては、
ベンゾイルメタンの誘導体、例えば1−(4’−tert−ブチルフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオン、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンまたは1−フェニル−3−(4’−イソプロピルフェニル)プロパン−1,3−ジオン;
ベンゾフェノンのアミノ−ヒドロキシル置換誘導体、例えばn−ヘキシル安息香酸N,N−ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル:が挙げられる。
【0143】
UV−AおよびUV−Bフィルターは、当然ながら、混合しても使用し得る。
【0144】
好適なUVフィルター物質を次の表に明記する:
上述の2群の主要な光安定剤に加えて、紫外線が皮膚に透過すると誘発される光化学反応の連鎖を停止する抗酸化タイプの第2の光安定剤を使用することも可能である。その典型例は、トコフェロール(ビタミンE)および油溶性アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)である。
【0145】
本発明によれば、効果物質として記述した化合物の好適な誘導体(塩、エステル、糖、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ペプチドおよび脂質)を使用することが可能である。
【0146】
過酸化物分解剤と呼ばれるもの、すなわち、過酸化物、より好ましくは脂質過酸化物を分解することができる化合物がさらに好ましい。これらは有機物質、例えば5−ピリミジノール誘導体および3−ピリジノール誘導体ならびにプロブコールを意味すると理解される。
【0147】
加えて、記述した過酸化物分解剤は、好ましくは、特許出願WO−A−02/07698およびWO−A03/059312(これらの内容は参照により明示的に本明細書に組み入れられる)に記載されている物質、好ましくは、フリーラジカル変換環境を作ることなく過酸化物またはヒドロペルオキシドを対応するアルコールに還元することができる、それらの特許出願に記載されているホウ素含有または窒素含有化合物である。加えて、立体障害アミンもこの目的で使用することが可能である。
【0148】
さらなる群は、紫外線によってダメージを受けた皮膚に対する炎症抑制作用を有する抗刺激剤の群である。かかる物質は、例えばビサボロール、フィトールおよびフィタントリオールである。
【0149】
効果物質のさらなる群は、作物保護に使用することができる有効成分、例えば除草剤、殺虫剤および殺真菌剤の群である。
【0150】
次の殺虫剤リストに考えられる作物保護有効成分を示すが、それに限定されるものではない:
A.1.オルガノ(チオ)ホスフェート:アジンホス−メチル、クロルピリホス、クロルピリホス−メチル、クロルフェンビンフォス、ダイアジノン、ジスルホトン、エチオン、フェニトロチオン、フェンチオン、イソキサチオン、マラチオン、メチダチオン、メチル−パラチオン、オキシデメトン−メチル、パラオキソン、パラチオン、フェントエート、ホサロン、ホスメット、ホスファミドン、ホレート、ホキシム、ピリミホス−メチル、プロフェノホス、プロチオホス、スルプロホス、テトラクロルビンホス、テルブホス、トリアゾホス、トリクロルホン;
A.2.カルバメート:アラニカルブ、ベンジオカルブ、ベンフラカルブ、カルバリル、カルボフラン、カルボスルファン、フェノキシカルブ、フラチオカルブ、メチオカルブ、メトミル、オキサミル、ピリミカルブ、チオジカルブ、トリアザメート:
A.3.ピレスロイド:アレスリン、ビフェントリン、シフルトリン、シハロトリン、シフェノトリン、シペルメトリン、α−シペルメトリン、β−シペルメトリン、ζ−シペルメトリン、デルタメトリン、エスフェンバレレート、エトフェンプロクス、フェンプロパトリン、フェンバレレート、イミプロトリン、λ−シハロトリン、ペルメトリン、プラレトリン、ピレトリンIおよびII、レスメトリン、シラフルオフェン、タウ−フルバリネート、テフルトリン、テトラメトリン、トラロメトリン、トランスフルトリン;
A.4.成長調節剤:a)キチン合成阻害剤:ベンゾイル尿素:クロルフルアズロン、シラマジン、ジフルベンズロン、フルシクロクスロン、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、ルフェヌロン、ノバルロン、テフルベンズロン、トリフルムロン;ブプロフェジン、ジオフェノラン、ヘキシチアゾックス、エトキサゾール、クロフェンタジン;b)エクジソンアンタゴニスト:ハロフェノジド、メトキシフェノジド、テブフェノジド、アザジラクチン;c)ジュベノイド:ピリプロキシフェン、メトプレン、フェノキシカルブ;d)脂質生合成阻害剤:スピロジクロフェン、スピロメシフェン、式D1のテトロン酸誘導体
【化1】
【0151】
A.5.ニコチン受容体アゴニスト/アンタゴニスト:クロチアニジン、ジノテフラン、チアクロプリド;
A.6.GABAアンタゴニスト:アセトプロール、エンドスルファン、エチプロール、フィプロニル、バニリプロール;
A.7.マクロライド殺虫剤:アバメクチン、エマメクチン、ミルベメクチン、レピメクチン、スピノサド;
A.8.METI I殺ダニ剤:フェナザキン、ピリダベン、テブフェンピラド、トルフェンピラド;
A.9.METI IIおよびIII化合物:アセキノシル、フルアシプリム、ヒドラメチルノン;
A.10.脱共役剤化合物:クロルフェナピル;
A.11.酸化的リン酸化阻害剤:シヘキサチン、ジアフェンチウロン、酸化フェンブタスズ、プロパルギット;
A.12.エクジソンアンタゴニスト:クリオマジン;
A.13.混合機能オキシダーゼ阻害剤:ピペロニルブトキシド
A.14.ナトリウムチャネル遮断剤:インドキサカルブ、メタフルミゾン;
A.15.種々のもの:ベンクロチアズ、ビフェナゼート、フロニカミド、ピリダリル、ピメトロジン、硫黄、チオシクラム、および式D2のアミノイソチアゾール化合物
【化2】
【0152】
[式中、Riは−CH2OCH2CH3またはHであり、RiiはCF2CF2CF3またはCH2CH(CH3)3である]、式D3のアントラニルアミド化合物
【化3】
【0153】
[式中、B1は水素または塩素であり、B2は臭素またはCF3であり、RBはCH3またはCH(CH3)2である]、およびJP 2002 284608、WO 02/189579、WO 02/190320、WO 02/190321、WO 04/106677、WO 04/120399またはJP 2004 99597に記載されているようなマロノニトリル化合物、N−R’−2,2−ジハロ−1−R’’−シクロプロパンカルボキサミド−2−(2,6−ジクロロ−α,α,α,α−トリフルオロ−p−トリル)ヒドラゾンまたはN−R’−2,2−ジ(R’’’)プロピオンアミド−2−(2,6−ジクロロ−α,α,α,α−トリフルオロ−p−トリル)ヒドラゾン[式中、R’はメチルまたはエチルであり、ハロは塩素または臭素であり、R’’は水素またはメチルであり、R’’’はメチルまたはエチルである]。
【0154】
以下の殺真菌剤リストに考えられる有効成分を示すが、それに限定されるものではない:
1.ストロビルリン
アゾキシストロビン、ジモキシストロビン、エネストロブリン、フルオキサストロビン、クレソキシム−メチル、メトミノストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、トリフロキシストロビン、オリサストロビン、(2−クロロ−5−[1−(3−メチルベンジルオキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバミン酸メチル、(2−クロロ−5−[1−(6−メチルピリジン−2−イルメトキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバミン酸メチル、2−(オルト−(2,5−ジメチルフェニルオキシメチレン)フェニル)−3−メトキシアクリル酸メチル:
2.カルボキサミド
−カルボキシアニリド:ベナラキシル、ベノダニル、ボスカリド、カルボキシン、メプロニル、フェンフラム、フェンヘキサミド、フルトラニル、フラメトピル、メタラキシル、オフレース、オキサジキシル、オキシカルボキシン、ペンチオピラド、チフルザミド、チアジニル、N−(4’−ブロモビフェニル−2−イル)−4−ジフルオロメチル−2−メチルチアゾール−5−カルボキサミド、N−(4’−トリフルオロメチルビフェニル−2−イル)−4−ジフルオロ−2−メチルトリチアゾール−5−カルボキサミド、N−(4’−クロロ−3’−フルオロビフェニル−2−イル)−4−ジフルオロ−2−メチルトリアゾール−5−カルボキサミド、N−(3’,4’−ジクロロ−4−フルオロビフェニル−2−イル)−3−ジフルオロ−1−メチルピラゾール−4−カルボキサミド;
−カルボン酸モルホリド:ジメトモルフ、フルモルフ;
−ベンズアミド:フルメトベル、フルオピコリド(ピコベンズアミド)、ゾキサミド;
−他のカルボキサミド:カルプロパミド、ジクロシメット、マンジプロパミド、N−(2−(4−[3−(4−クロロフェニル)プロパ−2−イニルオキシ]−3−メトキシフェニル)エチル)−2−メタンスルホニルアミノ−3−メチルブチルアミド、N−(2−(4−3−(4−クロロフェニル)プロプ−2−イニルオキシ]−3−メトキシフェニル)エチル)−2−エタンスルホニルアミノ−3−メチルブチルアミド;
3.アゾール
−トリアゾール:ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、エニルコナゾール、エポキシコナゾール、フェンブコナゾール、フルシラゾール、フルキンコナゾール、フルトリアホール、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメノール、トリアジメホン、トリチコナゾール;
−イミダゾール:シアゾファミド、イマザリル、ペフラゾエート、プロクロラズ、トリフルミゾール;
−ベンゾイミダゾール:ベノミル、カルベンダジム、フベリダゾール、チアベンダゾール;
−その他:エタボキサム、エトリジアゾール、ヒメキサゾール;
4.窒素含有ヘテロシクリル化合物
−ピリジン:フルアジナム、ピリフェノックス、3−[5−(4−クロロフェニル)−2,3−ジメチルイソオキサゾリジン−3−イル]−ピリジン;
−ピリミジン:ブピリメート、シプロジニル、フェリムゾン、フェナリモール、メパニピリム、ヌアリモール、ピリメタニル;
−ピペラジン:トリホリン;
−ピロール:フルジオキソニル、フェンピクロニル;
−モルホリン:アルジモルフ、ドデモルフ、フェンプロピモルフ、トリデモルフ;
−ジカルボキシミド:イプロジオン、プロシミドン、ビンクロゾリン;
−その他:アシベンゾラル−S−メチル、アニラジン、カプタン、カプタホール、ダゾメット、ジクロメジン、フェノキサニル、ホルペット、フェンプロピジン、ファモキサドン、フェンアミドン、オクチリノン、プロベナゾール、プロキナジド、キノキシフェン、トリシクラゾール、5−クロロ−7−(4−メチルピペリジン−1−イル)−6−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン、2−ブトキシ−6−ヨード−3−プロピルクロメン−4−オン、N,N−ジメチル−3−(3−ブロモ−6−フルオロ−2−メチルインドール−1−スルホニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−スルホンアミド;
5.カルバメートおよびジチオカルバメート
−カルバメート:ジエトフェンカルブ、フルベンチアバリカルブ、イプロバリカルブ、プロパモカルブ、3−(4−クロロフェニル)−3−(2−イソプロポキシカルボニルアミノ−3−メチルブチリルアミノ)プロピオン酸メチル、N−(1−(1−(4−シアノフェニル)エタンスルホニル)ブタ−2−イル)カルバミン酸4−フルオロフェニル;
6.他の殺真菌剤
−有機金属化合物:フェンチン塩;
−硫黄含有ヘテロシクリル化合物:イソプロチオラン、ジチアノン;
−有機リン化合物:エジフェンホス、ホセチル、ホセチル−アルミニウム、イプロベンホス、ピラゾホス、トルクロホス−メチル、亜リン酸およびその塩;
−有機塩素化合物:チオファネート−メチル、クロロタロニル、ジクロフルアニド、トリルフルアニド、フルスルファミド、フタリド、ヘキサクロロベンゼン、ペンシクロン、キントゼン;
−ニトロフェニル誘導体:ビナパクリル、ジノカップ、ジノブトン;
−その他:スピロキサミン、シフルフェナミド、シモキサニル、メトラフェノン。
【0155】
以下の除草剤リストに考えられる有効成分を示すが、それに限定されるものではない:
脂質の生合成を阻害する化合物、例えばクロラジホップ、クロジナホップ、クロホップ、シハロホップ、シクロホップ、フェノキサプロプ、フェノキサプロプ−p、フェンチアプロプ、フルアジホップ、フルアジホップ−P、ハロキシホップ、ハロキシホップ−P、イソキサピリホップ、メタミホップ、プロパキザホップ、キザロホップ、キザロホップ−P、トリホップ、またはそのエステル、ブトロキシジム、シクロキシジム、プロホキシジム、セトキシジム、テプラロキシジム、トラルコキシジム、ブチレート、シクロエート、ジアレート、ジメピペレート、EPTC、エスプロカルブ、エチオレート、イソポリネート、メチオベンカルブ、モリネート、オルベンカルブ、ペブレート、プロスルホカルブ、スルファレート、チオベンカルブ、チオカルバジル、トリアレート、ベルノレート、ベンフレセート、エトフメセートおよびベンスリド;
ALS阻害剤、例えばアミドスルフロン、アジムスルフロン、ベンスルフロン、クロリムロン、クロルスルフロン、シノスルフロン、シクロスルファムロン、エタメトスルフロン、エトキシスルフロン、フラザスルフロン、フルピルスルフロン、ホラムスルフロン、ハロスルフロン、イマゾスルフロン、ヨードスルフロン、メソスルフロン、メトスルフロン、ニコスルフロン、オキサスルフロン、プリミスルフロン、プロスルフロン、ピラゾスルフロン、リムスルフロン、スルホメツロン、スルホスルフロン、チフェンスルフロン、トリアスルフロン、トリベヌロン、トリフロキシスルフロン、トリフルスルフロン、トリトスルフロン、イマザメタベンズ、イマザモキス、イマザピック、イマザピル、イマザキン、イマゼタピル、クロランスラム、ジクロスラム、フロラスラム、フルメツラム、メトスラム、ペノキスラム、ビスピリバク、ピリミノバク、プロポキシカルバゾン、フルカルバゾン、ピリベンゾキシム、ピリフタリドおよびピリチオバク;pHが<8の場合;
光合成を阻害する化合物、例えばアトラトン、アトラジン、アメトリン、アジプロトリン、シアナジン、シアナトリン、クロラジン、シプラジン、デスメトリン、ジメタメトリン、ジプロペトリン、エグリナジン、イパジン、メソプラジン、メトメトン、メトプロトリン、プロシアジン、プログリナジン、プロメトン、プロメトリン、プロパジン、セブチルラジン、セクブメトン、シマジン、シメトン、シメトリン、テルブメトン、テルブチラジンおよびテルブトリン;
プロトポルフィリノーゲン−IXオキシダーゼ阻害剤、例えばアシフルオルフェン、ビフェノックス、クロメトキシフェン、クロルニトロフェン、エトキシフェン、フルオロジフェン、フルオログリコフェン、フルオロニトロフェン、ホメサフェン、フリロキシフェン、ハロサフェン、ラクトフェン、ニトロフェン、ニトロフルオルフェン、オキシフルオルフェン、フルアゾレート、ピラフルフェン、シニドン−エチル、フルミクロラク、フルミオキサジン、フルミプロピン、フルチアセット、チジアジミン、オキサジアゾン、オキサジアルギル、アザフェニジン、カルフェントラゾン、スルフェントラゾン、ペントキサゾン、ベンズフェンジゾン、ブタフェナシル、ピラクロニル、プロフルアゾール、フルフェンピル、フルプロパシル、ニピラクロフェンおよびエトニプロミド;
除草剤、例えばメトフルラゾン、ノルフルラゾン、フルフェニカン、ジフルフェニカン、ピコリナフェン、ベフルブタミド、フルリドン、フルロクロリドン、フルルタモン、メソトリオン、スルコトリオン、イソキサクロルトール、イソキサフルトール、ベンゾフェナップ、ピラゾリネート、ピラゾキシフェン、ベンゾビシクロン、アミトロール、クロマゾン、アクロニフェン、4−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)ピリミジン、および下式の3−ヘテロシクリル置換ベンゾイル誘導体(参照、WO−A−96/26202、WO−A−97/41116、WO−A−97/41117およびWO−A−97/41118)
【化4】
【0156】
[式中、置換基R8〜R13は各々以下の通り定義される:
R8、R10は、水素、ハロゲン、C1−C5−アルキル、C1−C5−ハロアルキル、C1−C5−アルコキシ、ハロアルコキシ、C1−C5−アルキルチオ、C1−C5−アルキルスルフィニルまたはC1−C5−アルキルスルホニルであり;
R9は、チアゾール−2−イル、チアゾール−4−イル、チアゾール−5−イル、イソオキサゾール−3−イル、イソオキサゾール−4−イル、イソオキサゾール−5−イル、4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル、4,5−ジヒドロイソオキサゾール−4−イルおよび4,5−ジヒドロイソオキサゾール−5−イルからなる群の複素環式基であり、ここで、記述した基は1個以上の置換基を有していてもよく;例えば、それらの基は、ハロゲン、C1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシ、C1−C4−ハロアルキル、C1−C4−ハロアルコキシまたはC1−C4−アルキルチオによって一置換、二置換、三置換または四置換されていてもよく;
R11=水素、ハロゲンまたはC1−C5−アルキル;
R12=C1−C6−アルキル;
R13=水素またはpH<8の場合にはC1−C6−アルキル];
有糸分裂阻害剤、例えばベンフルラリン、ブトラリン、ジニトラミン、エタルフルラリン、フルクロラリン、イソプロパリン、メタルプロパリン、ニトラリン、オリザリン、ペンジメタリン、プロジアミン、プロフルラリン、トリフルラリン、アミプロホス−メチル、ブタミホス、ジチオピル、チアゾピル、プロピザミド、クロルタール、カルベタミド、クロルプロファムおよびプロファム;
VLCFA阻害剤、例えばアセトクロール、アラクロール、ブタクロール、ブテナクロール、デラクロール、ジエタチル、ジメタクロール、ジメテナミド、ジメテナミド−P、メタザクロール、メトラクロール、S−メトラクロール、プレチラクロール、プロピソクロール、プリナクロール、テルブクロール、テニルクロール、キシラクロール、CDEA、エプロナズ、ジフェナミド、ナプロパミド、ナプロアニリド、ペトキサミド、フルフェナセット、メフェナセット、フェントラザミド、アニロホス、ピペロホス、カフェンストロール、インダノファンおよびトリジファン;
セルロース生合成阻害剤、例えばジクロベニル、クロルチアミド、イソキサベンおよびフルポキサム;
除草剤、例えばジノフェネート、ジノプロップ、ジノサム、ジノセブ、ジノテルブ、DNOC、エチノフェン、およびメジノテルブ;
その他:ベンゾイルプロップ、フランプロップ、フランプロップ−M、ブロモブチド、クロルフルレノール、シンメチリン、メチルジムロン、エトベンザニド、ピリブチカルブ、オキサジクロメホン、トリアジフラムおよび臭化メチル。
【0157】
作物保護に使用される有効成分はまた、都市状況(例えば、とりわけ宅地造成、家庭分野および庭園分野、飲食店、駐車場、ホテル建築、工業地域)において害虫(例えば、とりわけゴキブリ、アリ、シロアリ)を駆除するためにも使用することができ、この有効成分は特にこれらの用途に好適な効果物質のさらなる群である。
【0158】
本発明による方法を用い脊椎動物(例えば、とりわけラット、マウス)の領域から害虫を駆除するために有効成分を処方することも可能であり、結果として得られた有効成分処方物を、農業および都市状況において対応する害虫駆除のために使用することも可能である。
【0159】
さらに好適なのは、医薬用途のための有効成分、とりわけ経口投与用の有効成分である。本発明による方法は、原則として、医学的適応に関係なく多数の有効成分に適用できる。
【0160】
特に、医薬用途のための水溶性有効成分、とりわけ経口投与用の有効成分を挙げるべきである。これは、処方薬および市販薬の有効成分の両方に関連する。本発明は、原則として、医学的適応に関係なく多数の治療有効成分、予防有効成分または診断有効成分に適用できる。使用できる有効成分の種類の限定されない例には、抗炎症薬、血管作用薬、感染阻害薬、麻酔薬、成長促進薬が含まれる。
【0161】
使用できる化合物の種類は、原則として、タンパク質、ペプチド、核酸、単糖、二糖、オリゴ糖および多糖、プロテオグリカン、脂質、低分子量の合成もしくは天然有機有効成分、または無機化合物もしくは元素、例えば銀である。
【0162】
好適な難水溶性医薬品有効成分の限定されない例を次の表に明記する:
【0163】
水溶性医薬品有効成分の例は、とりわけ咳誘発および粘液溶解有効成分、例えばグアヤコールグリコールエーテル(グアイフェネシンとしても知られる)およびその誘導体である。
【0164】
さらに好ましい医薬品有効成分は、薬学において使用する抗体および他のタンパク質、例えば酵素またはペプチド、または核酸である。
【0165】
(vii)処方物からの有効成分の放出
有効成分は、本発明による方法により作製した処方物から、好適な溶媒への脱着によって、プロテアーゼによる本発明のシート状バイオポリマー構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)の分解によって、または好適な溶媒による本発明のシート状バイオポリマー構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)の溶解によって放出させることができる。脱着に好適な溶媒は、有効成分を溶解することができる全ての溶媒または溶媒混合物である。好適なプロテアーゼは、制御された方法で実用プロテアーゼとして本発明のシート状バイオポリマー構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)の懸濁液に添加することができるし、あるいはエフェクター分子の所望の使用部位において自然に生じ得る(例えば消化管のプロテアーゼ、例えば胃または腸のプロテアーゼ、または微生物により放出されるプロテアーゼ)。本発明のシート状バイオポリマー構造体を溶解することができる溶媒は、例えば、フッ素化アルコール、例えばヘキサフルオロイソプロパノールまたはトリフルオロエタノール、イオン性液体、例えばEMIMアセテート、カオトロピック塩の水溶液、例えば尿素、塩酸グアニジンおよびチオシアン酸グアニジン、あるいは有機酸、例えばギ酸、ならびにこれら溶媒と他の有機溶媒との混合物である。エフェクター分子の放出の速度および動態は、例えば、有効成分の添加密度および本発明のシート状バイオポリマー構造体のサイズ、または容量と表面面積の比率によって制御することができる。
【0166】
本発明はさらに、医薬品、化粧品、作物保護製品、食品および動物飼料における有効成分の保存、輸送または放出のための、記載した両親媒性自己集合タンパク質を用いて作製されたタンパク質含有シート状構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)の使用を提供する。本発明のシート状構造体はさらに、パッケージングされた有効成分を、環境的影響、例えば酸化過程もしくは紫外線放射から、あるいは製品の他の構成成分との反応による分解からまたは特定のプロテアーゼによる分解から保護する役割を果たす。有効成分は、タンパク質含有シート状構造体から、脱着、タンパク質分解、制御放出もしくは持続放出、またはこれらの機構の組合せによって放出させることができる。
【0167】
医薬品における本発明のタンパク質含有シート状構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)およびそれを用いて処方される有効成分は、好ましくは、経口投与すべきである。この場合、それらが胃を通過する際の有効成分の安定性が増大し得る。これは、胃の条件下で本発明のシート状構造体のタンパク質分解が起こらないためである。その後、腸内で、経口投与された有効成分含有シート状タンパク質構造体(錠剤またはカプセル剤に圧縮されていてもよい)から有効成分が放出される。しかしながら、胃の条件下で脱着または拡散により有効成分が放出される場合もある。
【0168】
医薬品、食品および動物飼料または作物保護製品において、本発明による方法を用い記載したバイオポリマー、とりわけ両親媒性自己集合タンパク質を用いた有効成分の処方物はさらに、有効成分のバイオアベイラビリティの増大をもたらすことができる。シート状タンパク質構造体中への医薬品有効成分のパッケージングはまた、腸管粘膜を通じた吸収の向上をもたらすことができる。作物保護製品は、シート状タンパク質構造体中への封入または埋め込みにより洗浄プロセスから保護することができる。いっそう多く取り込まれまたは吸収されるあるいは良好なバイオアベイラビリティを有する特定の有効成分粒子サイズは、シート状タンパク質構造体中へのパッケージングによって確立することができる。
【0169】
記載した両親媒性自己集合タンパク質のアミノ酸配列を変更することにより、またはさらなるタンパク質またはペプチド配列との融合により、特定の表面、例えば皮膚、毛髪、葉、根または腸もしくは血管の表面を特異的に認識する構造、あるいはこれらの表面または存在する受容体によって認識され結合される構造を作製することが可能である。
【0170】
よって、記載した両親媒性自己集合タンパク質を用いて処方された有効成分を所望の作用部位に、より効果的にもたらすこと、または活性物質の吸収を改善することが可能である。食品および動物飼料中の医薬品有効成分または有効成分のバイオアベイラビリティは、それらがシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中にパッケージングされさらにそれらの構造体が胃腸管の細胞(例えば粘膜細胞)の特定の表面マーカー(例えば受容体)と結合するタンパク質と融合するかまたは結合して存在する場合に増大し得る。かかるタンパク質は、例えば、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)由来のMapAタンパク質もしくはコラーゲン結合タンパク質CnBP(Miyoshi et al., 2006, Biosci. Biotechnol. Biochem. 70:1622-1628)、または他の微生物、特に天然胃腸管微生物叢に由来する機能的に同等なタンパク質である。
【0171】
記載の結合タンパク質は、細胞表面への微生物の付着を媒介する。この結合タンパク質を記載した両親媒性自己集合タンパク質と結合または融合することで、それから得られる有効成分含有シート状タンパク質構造体はより制御された方法で適当な吸収部位に向けられ、またはそれらはこれらの部位に長く残留するようになり、その結果、有効成分の放出および吸収が延長され改善されることになる。
【0172】
加えて、例えば、特異性を高め、有効成分消費もしくは有効成分用量を低くし、または効果を迅速もしくは強力にすることを達成するために、有効成分処方物に関して記載した両親媒性自己集合タンパク質のアミノ酸配列を変更することにより、またはさらなるタンパク質またはペプチド配列との融合により、有効成分を制御された方法で所望の作用部位に直接向けることが可能である。
【0173】
加えて、例えば、シート状構造体中の有効成分の結晶化に後に影響を与えるため(例えば結晶化を阻害するため)、または好ましい使用特性、例えばバイオアベイラビリティの変化を得るために、紡糸液にさらなる物質を添加することが可能である。好ましい添加物は、例えば、イオン性(カチオン性またはアニオン性)界面活性剤および非イオン性界面活性剤である。紡糸液中の添加物の好適な量は、0.01重量%〜5重量%である。
【0174】
加えて、紡糸液またはそれから作製したシート状構造体に、錠剤またはカプセル剤の崩壊を可能にしそれによって錠剤またはカプセル剤に圧縮されたシート状バイオポリマー構造体の分散の向上を可能にする物質を添加することができる。
【0175】
(viii)創傷治療およびボディケア用のシート状繊維構造体(不織布)
本発明の不織布は、それ自体が公知の創傷治療用品またはボディケア用品と組み合わせる、すなわちそれらに組み込むまたはそれらに適用することができる。従来の創傷包帯、例えばガーゼもしくは不織布または吸収パッドは通常、綿、ビスコースまたは合成繊維、例えばポリアミド、ポリエチレンまたはポリプロピレンの織布または不織布である。これらは、疎水性脂肪性軟膏を含浸することができ高い吸収性を示し、そしてそのことが過剰な創傷からの滲出液、組織片および細菌の排出を促す。
【0176】
しかしながら、包帯を頻繁に取り替えることが必要であり、創傷の乾燥が観察されることもある。この場合には、創傷と乾燥した創傷分泌液とが癒着し、または若い上皮組織がパッド内へと成長することになる可能性がある。この場合、包帯を取り替えることにより新たな損傷が生じることとなり、これにより治癒過程が遅れることは明らかである。
【0177】
そのため、現代の創傷包帯は理想的に湿潤した創傷環境を確保するべきである。使用する材料は、例えば、ポリアクリレートおよびアルギン酸塩、またはカルボキシメチルセルロースに基づく親水コロイド製品の場合のように、多量の水分を吸収するためにゲルを形成することができるべきである。これらの製品は、その吸収能力が高いことから、主として中度〜重度の滲出性創傷の場合に使用される。乾燥している場合および壊死性創傷の場合には、これらの包帯がくっつくことがあり、収縮が大きいために、創傷は、その下にある組織が剥がれ去り再び傷つく危険性がある。
【0178】
広範囲にわたる創傷材料および創傷治癒管理の設計は記載されているが、これらは非常に具体的に特定の使用分野、実質的には臨床用途に合わせられている。一般的に、サンドイッチドレッシング(sandwich dressings)と呼ばれるものは、所望の特性プロフィールが備わっている;例えば、第1の層は通常、非接着層(例えばポリウレタン系フォームまたはパラフィンガーゼ)からおよび創傷分泌液に対する吸収能力が高い第2の層、例えばセルロースパッドからなる。
【0179】
本発明の不織布は、治癒を促進する織物の分離層(創傷からの分離)として使用することができる安価で容易に適合し得る製品であり、その分離層は、その多孔性により酸素および創傷分泌液の拡散を可能にするが、創傷を弾性的に密封し治癒中に吸収される。
【0180】
本発明の材料はまた、より簡単な創傷ケアにおいても使用することができ、多層の、費用のかかるドレッシングの使用が不要になる。
【0181】
発明のシート状繊維構造体の特定の利点、例えば生体適合性、伸展性、無毒性、生分解性(とりわけタンパク質分解性)、良好な水分含量調節により、それらは慢性または非慢性創傷の治療用およびボディケア用の製品の生産のための好適な候補となる。
【0182】
本発明により生産された有効成分フリーシート状繊維構造体または有効成分含有シート状繊維構造体は、創傷ケア用品および衛生物品の生産のために特に好適である。これらの場合、それらのシート状繊維構造体は、それ自体として使用することができるし、またはそれ自体が公知の好適な織物またはポリマーの担体材料に適用することもできる。
【0183】
この目的で、それ自体が公知の方法によって種々の材料を組み合わせること、および多層製品を提供するためにそれらをさらに処理することが可能である。最終用途によって、本発明のシート状繊維構造体と、材料、例えばPEフィルム、PETフィルムまたはPUフィルムおよびアルミニウム複合フィルム、不織布、基体、シリコーン紙、ラミネートフィルムなどを組み合わせることが可能である。
【0184】
本発明のシート状バイオポリマー構造体を含む医療用品(例えば創傷包帯または硬膏)または衛生用品(ワイプス、オムツ、ナプキンなど)を生産する場合、または対応する用途において本発明のバイオポリマー不織布を使用する場合、シート状構造体に使用する担体基体または担体材料は、それ自体被覆される医療または衛生用品、またはその一部もしくは個別の層であり得る。
【0185】
以下、次の限定されない実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【0186】
実験の項
一般原理の項:
a)エレクトロスピニングプロセス
本発明による方法の実施のために好適なエレクトロスピニング装置は、電源の一方の極に接続されるキャピラリーノズルを先端部に備えた、本発明の処方物を収容するシリンジを有する。キャピラリーノズルの出口に対して規定の距離で、電源のもう一方の極に接続される正方形の対電極が配置され、その対電極は形成される繊維の収集装置として機能する。
【0187】
本発明による方法の実施のためのさらなる考えられる装置は、紡糸液が入っている容器内で回転するローラーを有する。そのローラーは平滑であってよいしまたは物理的構造、例えば針または溝を有していてもよい。ローラーの各回転において、紡糸液は強い電場に入り、いくつかの材料流が生じる。対電極は紡糸電極の上にある。繊維は担体不織布、例えばポリプロピレン上に堆積する。
【0188】
例えば、Elmarco社製のNanospider装置を使用することが可能である。電圧は電極距離18cmにおいて約82kVである。温度は約23℃および相対空気湿度は35%である。紡糸には鋸歯状電極を使用する。最大厚さのシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)を得るために、担体不織布は固定する。別法として、担体不織布を進行速度で移動させ規定の方法により比較的薄いシート状タンパク質構造体層を得ることもできる。続いて、バッチから得られたシート状タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)を減圧下40℃で一晩乾燥させる。シート状タンパク質構造体の層厚をMillitron層厚測定器(Mahr Feinpruef社(Germany)製)を使用して決定する。
【0189】
b)有効成分放出試験
シート状タンパク質構造体からの有効成分の放出を2つの異なる試験により検証した。消化管中のタンパク質分解活性条件下で有効成分放出の模擬実験をするために、経口投与すべき有効成分処方物、例えばグアヤコールグリセリルエーテルおよびクロトリマゾール(錠剤にプレスされたもの)を合成胃液(0.1gのNaCl;0.16gのペプシン;0.35mlのHClを補って50mlにする、pH1〜2)および合成腸液(3.4gのKH2PO4を12.5mlの水に溶解し+3.85mlの0.2N NaOHを補って25mlにし+0.5gのパンクレアチンを補って50mlにする、pH6.8)中で分析した。対照試験(プロテアーゼを加えない)は、5mMリン酸カリウムバッファー(pH8.0)中で行った。これらの条件下ではほんのわずかな有効成分放出しか見られないはずである。錠剤1個当たり20mlの特定の消化液またはバッファーを加え、それらの混合物を、37℃および80rpmで軽く攪拌しながらインキュベートした。異なる時点において、HPLCまたは測光器による有効成分の定量のために、いずれの場合においても500μlのサンプルを採取した。また、難水溶性有効成分、例えばクロトリマゾールの場合には放出後に形成された有効成分凝集体を検出するために、THFでの抽出後に吸光測光法による定量を行った(3mlの上清+3mlのTHF+スパチュラ先端量のNaCl、激しくボルテックスし(15000×gで1分)、上相を分析する(必要に応じて希釈する))。
【0190】
他の有効成分(経口投与しない医薬品有効成分または他の有効成分、例えば化粧品有効成分または作物保護有効成分)、例えばユビナールAプラスおよびメタザクロールの場合には、規定量のシート状のタンパク質−有効成分構造体を非特異的プロテイナーゼK溶液と混合することによって放出分析を行った。シート状のタンパク質−有効成分構造体を0.25〜0.5%[w/v]プロテイナーゼK(Roche, Germany;5mMリン酸カリウムバッファーに溶解したもの)中で120〜150rpmで攪拌しながらインキュベートした。異なる時点において、完全なままのシート状のタンパク質−有効成分構造体を遠心分離により除去し、それらの上清を4〜5倍過剰のTHFと混合し、続いて有効成分含量を吸光測光法により決定した。全ての実験において、有効成分の放出量は、有効成分固有のキャリブレーションシリーズとの比較後に決定した。
【実施例】
【0191】
実施例1−C16クモ絹タンパク質の作製
C16クモ絹タンパク質を、大腸菌発現株を含むプラスミドを用い生物工学的手段により作製した。C16クモ絹タンパク質(ADF4としても知られる)の設計およびクローニングは、Huemmerich et al. (Biochemistry 43, 2004, 13604-13012)に記載されている。その文書に記載されている方法とは対照的に、大腸菌BL21 Gold(DE3)(Stratagene)においてC16クモ絹タンパク質を作製した。大腸菌はTechfors発酵槽(Infors HAT, Switzerland)中で最少培地およびフェドバッチ法を用いて増殖させた。
【0192】
細胞を37℃でOD600100まで増殖させ、その後、0.1mMイソプロピルβ−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)でタンパク質発現の誘導を行った。発酵終了時(誘導の8〜12時間後)に、それらの培養物を回収した。タンパク質のほとんどは「封入体」中に存在した。
【0193】
細胞の回収後、ペレットを20mM 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、pH7.0(湿潤材料1kg当たり5lのバッファー)に再懸濁した。この後、細胞破壊をMicrofluidizer M−110EH(Microfluidics, US)を使用し圧力1200〜1300バールで行った。沈降後、破壊後のペレットには封入体だけでなく細胞片および膜構成成分も含まれており、細胞片および膜構成成分は2つの洗浄ステップにより除去した。第1の洗浄ステップでは、ペレットを2.5容量のTrisバッファー(50mM Tris/HCl、0.1%Triton X−100、pH8.0)に再懸濁した後、残留する固形物を遠心分離により沈降させた。第2の洗浄ステップは
Trisバッファー(50mM Tris/HCl、5mM EDTA、pH8.0)を用いて行った。沈降後に再度得られたペレットは膜および細胞片を実質的に含まなかった。
【0194】
洗浄した封入体をチオシアン酸グアニジン(Roth, Germany)に溶解し、その際1gのペレット(湿潤質量)当たり1.6gのチオシアン酸グアニジンを加えた。封入体は、ゆっくりと加熱しながら(50℃)攪拌する間に溶解した。
【0195】
存在する不溶性構成成分を除去するために、続いて遠心分離を行った。C16クモ絹タンパク質水溶液を得るために、次いで5mMリン酸カリウムバッファー(pH8.0)(透析の希釈係数:200)で16時間の透析を行った。
【0196】
大腸菌タンパク質の汚染により透析において凝集体が形成したが、それらは遠心分離により除去できた。得られたタンパク質溶液は約95%C16クモ絹タンパク質の純度を有していた。
【0197】
得られたタンパク質水溶液は、直接エレクトロスピニングに使用することができるし、またはより良好な保存性のために、タンパク質マイクロビーズにさらに加工することもできる。C16タンパク質マイクロビーズを作製するために、C16クモ絹タンパク質水溶液を0.25容量の4モル濃度の硫酸アンモニウム溶液と混合した。硫酸アンモニウムの作用下で、タンパク質分子は集合し球体構造を形成する(本明細書ではこれらをマイクロビーズと呼ぶ)。マイクロビーズを遠心分離により除去し、蒸留水で3回洗浄し、その後凍結乾燥させた。
【0198】
実施例2−エレクトロスピニングを用いた、効果物質としてのグアヤコールグリセリルエーテルの処方
製薬上活性な物質、とりわけ咳および呼吸器障害の治療のための物質の処方について記載した方法の有用性を立証するために、例として、有効成分グアヤコールグリセリルエーテル(グアイフェネシンとしても知られる)をシート状C16クモ絹タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中にエレクトロスピニングによって封入した。
【0199】
紡糸可能な溶液の作製のために、C16クモ絹タンパク質マイクロビーズ(14%[w/w])および有効成分グアヤコールグリセリルエーテル(10%[w/w])を一緒にギ酸(98〜100%p.a.)に溶解した。ビーカーには最初に200mlのギ酸を入れ、その後50.4gのC16クモ絹タンパク質と36gのグアヤコールグリセリルエーテル(Sigma社(Germany)製)を徐々に入れ攪拌した。一度それらの物質が完全に溶解したら、ギ酸(98〜100%)を用いてその溶液を360gにした。
【0200】
別法として、出発材料の基礎としてC16クモ絹タンパク質水溶液(実施例1参照)を使用することも可能である。その際には、有効成分をタンパク質水溶液に直接溶解しまたは、使用する有効成分の濃度が比較的高い場合には、代替溶媒(例えばギ酸)に予備溶解した後、タンパク質溶液と混合する。紡糸液の粘度を高めるために、その後、加えて、水溶性ポリマーまたは水性ポリマー分散液を加えることが可能である。
【0201】
C16クモ絹タンパク質およびグアヤコールグリセリルエーテルの溶液を、上記のとおりElmarco社Nanospider装置で3時間紡糸した。得られたシート状タンパク質構造体の層厚をMillitron層厚測定器(Mahr Feinpruef社(Germany)製)を使用して決定し、0.01〜0.2mmであった。
【0202】
そのようにして作製した、グアヤコールグリセリルエーテルが組み込まれているシート状C16クモ絹タンパク質構造体の電子顕微鏡分析により、その構造体が主として、直径が2μm以下の繊維であることが分かった(図1)。
【0203】
純粋グアヤコールグリセリルエーテルとは対照的に、C16クモ絹タンパク質/グアヤコールグリセリルエーテル処方物ではX線回折により結晶性ピークは認められない(図2)。従って、有効成分は非晶形でまたは固溶体として中に封入され、そしてそのことがそのバイオアベイラビリティに良い影響を与え得ると考えることができる。
【0204】
関連性の高い投与形からの有効成分放出を検証するために、シート状C16クモ絹タンパク質構造体を用い錠剤にプレスした。いずれの場合においても、KBrプレス(Paul-Otto-Weber(Germany)社製)において300mgの材料を減圧下および圧力100バールでおよそ10分間プレスした。錠剤は直径約13mmおよび厚さ約2mmであった。
【0205】
錠剤からのグアヤコールグリセリルエーテルの放出は、合成胃液および合成腸液での処理後、HPLC(カラム:Luna C8(2)、150*3.0mm[Phenomenex社(Germany)製];プレカラム:C18 ODS;検出:UV 210nm;溶出剤A:10mM KH2PO4、pH2.5;溶出剤B:アセトニトリル)によって決定した。
【0206】
対照実験(バッファー)では有効成分封入量の最大20%しか放出されないが、胃液および腸液では100%放出が24時間以内に達成され、存在する酵素活性(プロテアーゼ)によって制御される(図3)。胃液と腸液の両方において、グアヤコールグリセリルエーテル有効成分は連続的に放出される。腸液を用いた実験では最初の8時間で有効成分の約65%が放出されるのに対し、胃液ではこの時間内に有効成分の約80%がすでに放出されている(図3)。
【0207】
24時間後に処方物からまだ放出されていないグアヤコールグリセリルエーテルの割合を決定するために、残留C16クモ絹タンパク質凝集体を含む混合物をpH7.0に調整し、いずれの場合においても、100μlのプロテイナーゼK(435U/ml、Roche, Germany)を加え、それらの混合物を、全ての凝集体が完全に溶解するまでさらに37℃および120rpmでインキュベートした。続いて、溶液中の有効成分含量をHPLC分析によって定量した。結果として、最終値と事前に決定した中間値を用いグアヤコールグリセリルエーテル有効成分のC16クモ絹タンパク質処方物への添加密度を決定することができた。調べた全ての錠剤についての添加密度は31〜33%[w/w]の間であり、錠剤にプレスしたシート状C16クモ絹タンパク質構造体への平均添加密度は32.2%[w/w]グアヤコールグリセリルエーテルであった(表1)。
【表1】
【0208】
グアヤコールグリセリルエーテル有効成分の参照処方サンプル(Mucinex(登録商標)ブランドの錠剤、Adams Respiratory Therapeutics社製)を用いた対照実験では、胃の条件下でのみ有効成分の連続遅延放出を示す(図4)。有効成分処方物の平均胃滞留時間が2〜5時間であることを考えると、この時点において最大50%の有効成分が放出される。腸の条件下では、短時間(2〜3時間)でMucinex(登録商標)処方物から有効成分の約90%が放出される(図4)。
【0209】
図4に示した試験結果に基づき、Mucinex(登録商標)錠剤の場合におけるグアヤコールグリセリルエーテルの連続遅延放出、よってその吸収も胃の条件下では起こず、そのため有効成分の大部分は排泄プロセスを介して失われると結論づけられる。グアヤコールグリセリルエーテル有効成分の発明C16クモ絹タンパク質処方物は、対照的に、胃の条件下でも腸の条件下でも連続遅延放出を示し、そしてそれは有効成分のより長時間の吸収を促すであろう。従って、両親媒性自己集合タンパク質を含むグアヤコールグリセリルエーテル有効成分の処方物は、ずっと広く使用でき、胃の通過後でもまだ有効成分の連続遅延放出、続いての有効成分の吸収が可能であろう。
【0210】
実施例3−エレクトロスピニングを用いた、効果物質としてのクロトリマゾールの処方
さらなる製薬上活性な、とりわけ難水溶性の、物質の処方について記載した方法の有用性を示すために、例として、有効成分クロトリマゾールをシート状C16クモ絹タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中にエレクトロスピニングによって封入した。
【0211】
紡糸可能な溶液の作製のために、C16クモ絹タンパク質マイクロビーズ(14%[w/w])および有効成分クロトリマゾール(10%[w/w])を一緒にギ酸(98〜100%p.a.)に溶解した。ビーカーには最初に200mlのギ酸を入れ、その後50.4gのC16クモ絹タンパク質と36gのクロトリマゾール(Sigma社(Germany)製)を徐々に入れ攪拌した。一度それらの物質が完全に溶解したら、ギ酸を用いてその溶液を360gにした。
【0212】
別法として、出発材料の基礎として水溶性C16クモ絹タンパク質溶液(実施例1参照)を使用することも可能である。その際には、有効成分をタンパク質水溶液に直接溶解しまたは、使用する有効成分の濃度が比較的高い場合には、代替溶媒(例えばギ酸)に予備溶解した後、タンパク質溶液と混合する。紡糸液の粘度を高めるために、その後、加えて、水溶性ポリマーまたはポリマー分散液を加えることが可能である。
【0213】
C16クモ絹タンパク質およびクロトリマゾールの溶液を、上記のとおりElmarco社Nanospider装置で3時間紡糸した。
【0214】
そのようにして作製した、クロトリマゾールが組み込まれているシート状C16クモ絹タンパク質構造体の電子顕微鏡分析により、その構造体が主として、直径約50nm〜1μmの繊維であることが分かった(図5)。
【0215】
純粋クロトリマゾールとは対照的に、C16クモ絹タンパク質/クロトリマゾール処方物ではX線回折により結晶性ピークは認められない(図6)。従って、有効成分は非晶形でまたは固溶体として中に封入され、そしてそのことがそのバイオアベイラビリティに良い影響を与え得ると考えることができる。
【0216】
実施例2においてすでに記載したとおり、クロトリマゾール有効成分が封入されたシート状C16クモ絹タンパク質構造体をまた用い錠剤にプレスした。有効成分の放出動態を決定するために、実施例2に記載のとおり、それらの錠剤を合成胃液、合成腸液および5mMリン酸カリウムバッファー(対照)中でインキュベートした。放出されたクロトリマゾールは、THFでの上清の抽出後にその低水溶解度(従って水溶液系中で凝集体を形成する傾向)に基づいて262nmでの吸光測光法による測定により定量した。
【0217】
対照実験(プロテアーゼを含まないバッファー)では有効成分封入量の最大2%しか放出されないが、胃液では約50%放出が24時間以内に達成され、存在する酵素活性(プロテアーゼ)によって制御される(図7)。この間に、クロトリマゾール有効成分は連続的に放出される。腸液では、対照的に、24時間後に有効成分の約20%しか放出されない(図7)。C16クモ絹タンパク質/クロトリマゾール処方物は、弱い放出しか見られない問題の時間範囲において置かれる比較的中性のpH値ではとても安定しているようである。
【0218】
24時間後に処方物からまだ放出されていないクロトリマゾールの割合を決定するために、タンパク質分解していないシート状C16クモ絹タンパク質構造体を含む混合物を3mlのTHFと混合し、振盪しながらさらに最大48時間インキュベートした。続いて、有効成分含量を吸光測光法により262nmで定量した。結果、最終値と事前に決定した中間値を用いクロトリマゾール有効成分のC16クモ絹タンパク質処方物への添加密度を決定することができた。調べた全ての錠剤についての添加密度は27〜33%[w/w]の間であり、錠剤にプレスしたシート状C16クモ絹タンパク質構造体への平均添加密度は約30%[w/w]クロトリマゾールであった(表2)。
【表2】
【0219】
実施例4−エレクトロスピニングを用いた、効果物質としてのメタザクロールの処方
作物保護有効成分の処方について記載した方法の有用性を示すために、例として、有効成分メタザクロールをシート状C16クモ絹タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中にエレクトロスピニングによって封入した。
【0220】
紡糸可能な溶液の作製のために、C16クモ絹タンパク質マイクロビーズ(14%[w/w])および有効成分メタザクロール(10%[w/w])を一緒にギ酸(98〜100%p.a.)に溶解した。ビーカーには最初に200mlのギ酸を入れ、その後50.4gのC16クモ絹タンパク質と36gのメタザクロールを徐々に入れ攪拌した。一度それらの物質が完全に溶解したら、ギ酸(98〜100%)を用いてその溶液を360gにした。
【0221】
別法として、出発材料の基礎としてC16クモ絹タンパク質水溶液(実施例1参照)を使用することも可能である。その際には、有効成分をタンパク質水溶液に直接溶解しまたは、使用する有効成分の濃度が比較的高い場合には、代替溶媒(例えばギ酸)に予備溶解した後、タンパク質溶液と混合する。紡糸液の粘度を高めるために、その後、加えて、水溶性ポリマーまたはポリマー分散液を加えることが可能である。
【0222】
C16クモ絹タンパク質およびメタザクロールの溶液を、上記のとおりElmarco社Nanospider装置で3時間紡糸した。
【0223】
そのようにして作製した、メタザクロールが組み込まれているシート状C16クモ絹タンパク質構造体の電子顕微鏡分析により、その構造体が主として、直径約50nm〜1μmの繊維であることが分かった(図8)。
【0224】
X線回折により、純粋メタザクロールはかなりの結晶割合を示す(図9)。対照的に、C16クモ絹タンパク質/メタザクロール処方物はX線回折では、メタザクロール有効成分によるあまり目立たない半結晶領域を有する(図9)。
【0225】
2つの混合物(第1の混合物:25mg;第2の混合物:26mg)におけるメタザクロール有効成分の添加密度を決定するために、いずれの場合においても、作製したシート状クモ絹タンパク質構造体を2mlのTHFと混合し、1800rpmで攪拌しながら5時間インキュベートした。続いて、THF処理により定量的に浸出されたメタザクロール有効成分を吸光測光法により264nmで決定した。混合物1では添加密度は約40%[w/w]であり、第2の混合物では約45%[w/w]であることが分かった。
【0226】
有効成分の放出動態を決定するために、メタザクロールが封入されたシート状C16クモ絹タンパク質構造体を、0.5%[w/v]プロテイナーゼKと混合した5mMリン酸カリウムバッファー中でインキュベートした。放出されたメタザクロールは、完全なままのシート状C16クモ絹タンパク質構造体の除去後、THFでの上清の抽出続いて吸光測光法による264nmでの測定により定量した。
【0227】
対照実験(プロテアーゼKを含まないバッファー)では24時間後に有効成分封入量の約10%しか放出されなかったが、プロテイナーゼKを含めた実験では同じ期間内に約55%のメタザクロールの放出を達成することができた(図10)。7日後に、かかるC16クモ絹タンパク質/メタザクロール処方物からの約70%の有効成分連続放出を達成することができた(示していない)。
【0228】
実施例5−エレクトロスピニングを用いた、効果物質としてのユビナールAプラスの処方
化粧品有効成分の処方について記載した方法の有用性を示すために、例として、有効成分ユビナールAプラスをシート状C16クモ絹タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中にエレクトロスピニングによって封入した。
【0229】
紡糸可能な溶液の作製のために、C16クモ絹タンパク質マイクロビーズ(14%[w/w])および有効成分ユビナールAプラス(10%[w/w])を一緒にギ酸(98〜100%p.a.)に溶解した。ビーカーには最初に200mlのギ酸を入れ、その後50.4gのC16クモ絹タンパク質と36gのユビナールAプラスを徐々に入れ攪拌した。一度それらの物質が完全に溶解したら、ギ酸(98〜100%)を用いてその溶液を360gにした。
【0230】
別法として、出発材料の基礎としてC16クモ絹タンパク質水溶液(実施例1参照)を使用することも可能である。その際には、有効成分をタンパク質水溶液に直接溶解しまたは、使用する有効成分の濃度が比較的高い場合には、代替溶媒(例えばギ酸)に予備溶解した後、タンパク質溶液と混合する。紡糸液の粘度を高めるために、その後、加えて、水溶性ポリマーまたはポリマー分散液を加えることが可能である。
【0231】
C16クモ絹タンパク質およびユビナールAプラスの溶液を、上記のとおりElmarco社Nanospider装置で3時間紡糸した。
【0232】
そのようにして作製した、ユビナールAプラスが組み込まれているシート状C16クモ絹タンパク質構造体の電子顕微鏡分析により、その構造体が主として、直径約50nm〜400nmの繊維であることが分かった(図11)。
【0233】
純粋ユビナールAプラスとは対照的に、C16クモ絹タンパク質/ユビナールAプラス処方物ではX線回折において結晶性ピークはなかった(図12)。従って、有効成分は非晶形でまたは固溶体として中に封入され、そしてそのことがそのバイオアベイラビリティに良い影響を与え得ると考えることができる。
【0234】
2つの混合物(第1の混合物:7.9mg;第2の混合物:7.8mg)における有効成分の添加密度を決定するために、いずれの場合においても、作製したシート状C16クモ絹タンパク質構造体を2mlのTHFと混合し、1800rpmで攪拌しながら5時間インキュベートした。続いて、THF処理により定量的に浸出されたユビナールAプラス有効成分を吸光測光法により352nmで決定した。混合物1では添加密度は約25%[w/w]であり、第2の混合物では約26.2%[w/w]であることが分かった。
【0235】
有効成分の放出動態を決定するために、シート状C16クモ絹タンパク質/ユビナールAプラス構造体を、0.25%[w/v]プロテイナーゼKと混合した5mMリン酸カリウムバッファー中でインキュベートした。放出されたユビナールAプラスは、完全なままのシート状C16クモ絹タンパク質構造体の除去後、THFでの上清の抽出続いて吸光測光法による352nmでの測定により定量した。
【0236】
対照実験(プロテアーゼKを含まないバッファー)では24時間後でも有効成分は放出されなかったが、プロテイナーゼKを含めた実験では6〜7時間後に100%のユビナールAプラスの放出が達成された(図13)。
【0237】
実施例6−エレクトロスピニングを用いた、純粋R16タンパク質およびS16タンパク質からの繊維の作製
紡糸可能なR16またはS16タンパク質溶液の作製のために、R16またはS16タンパク質マイクロビーズを用いた。これらは、WO 2008/155304に記載のとおり作製することができる。あるいは、実施例1に記載のとおり調製を行うこともできる。R16またはS16タンパク質のコードDNA配列を含むプラスミドベクターまたは大腸菌生産株を使用した。
【0238】
紡糸可能な溶液の作製のために、R16タンパク質マイクロビーズをギ酸(98〜100%p.a.)に溶解した(18%[w/w]溶液)。R16タンパク質を少量で紡糸し繊維形成を検出した。この目的で、0.36gのR16タンパク質マイクロビーズを1.64gのギ酸に溶解し、これを用い紡糸システムのシリンジに充填した。
【0239】
R16タンパク質溶液は、ノズル型エレクトロスピニングシステムを用いて紡糸した。この目的で、低圧下電場中でタンパク質溶液を、電源の一方の極に接続されたカニューレを通して押し出した。電場によってタンパク質溶液の帯電が起こるため、材料流は、対電極に向かいその対電極に向かう途中で凝固することになり、細い繊維の形でガラス顕微鏡スライド上に堆積した。
【0240】
次のパラメーターを使用した:
相対空気湿度27%、
紡糸温度23℃、
電圧60kV、
電極距離15cm、
カニューレ直径0.9mm、
手動進行
そのようにして作製したシート状R16タンパク質構造体の電子顕微鏡分析により、前記溶液は繊維を形成するものであること、およびそれらの繊維が主として、直径約200nm〜500nmの繊維であることが分かった(図14A)。
【0241】
S16タンパク質溶液をElmarco社Nanospider装置で紡糸した。使用する溶液は容器内にあり、その容器では紡糸電極(ローラー)が永久回転した。この場合、紡糸電極は、金属線に基づく電極であった。金属線表面上には処方物の一部が常に存在した。ローラーと対電極(ローラーの上)の間の電場によって、最初は処方物からの液体ジェットの形成が起こり、そこでその処方物は含まれていた溶媒を失い対電極に向かう途中で凝固した。所望のナノファイバーウェブ(織物のシート状構造体)は、2つの電極間に沿って移動するポリプロピレン基体上に形成した。
【0242】
S16タンパク質のマイクロビーズをギ酸(98〜100%p.a.)に溶解した(12%溶液[w/w])。S16混合物を得るために、ビーカーには最初に、いずれの場合においても200mlのギ酸を入れ、その後40gのS16タンパク質を徐々に入れ攪拌した。一度S16タンパク質が完全に溶解したら、ギ酸(98〜100%)を用いてその溶液を340gにした。
【0243】
次のパラメーターを使用した:
温度:24℃
相対空気湿度:22%
電圧:70〜82kV
電極距離:25cm
紡糸時間:1.5時間
シート状S16タンパク質構造体は、直径約100nm〜300nmの繊維を含んでいだ(図14B)。
【0244】
シート状のR16またはS16タンパク質構造体を含む医療用品(例えば創傷包帯または硬膏)または衛生用品(ワイプス、オムツ、ナプキンなど)を生産する場合、または対応する用途においてR16またはS16タンパク質不織布を使用する場合、シート状構造体に使用する担体基体または担体物質は、それ自体被覆される医療または衛生用品、またはその一部もしくは個別の層であり得る。
【0245】
別法として、繊維/シート状繊維構造体の作製のための出発材料として、R16またはS16タンパク質水溶液を(C16クモ絹タンパク質と同様、作製については実施例1参照)使用することも可能である。紡糸液の粘度を高めるためにまたは前記溶液の粘弾性を得るために、その後、加えて、水溶性ポリマー、ポリマー分散液またはバイオポリマー(例えばタンパク質)を加えることが可能である。
【0246】
実施例7−エレクトロスピニングを用いた、R16およびS16タンパク質不織布における効果物質としてのユビナールAプラスの処方
有効成分の処方について記載した方法の有用性を示すために、例として、有効成分ユビナールAプラスをシート状のR16またはS16タンパク質構造体(例えばタンパク質フィルム、タンパク質繊維、タンパク質不織布)中にエレクトロスピニングによって封入した。
【0247】
紡糸可能な溶液の作製のために、R16タンパク質マイクロビーズ(18%[w/w])またはS16タンパク質マイクロビーズ(12%[w/w])および有効成分ユビナールAプラス(10%[w/w])を一緒にギ酸(98〜100%p.a.)に溶解した。ビーカーには最初に200mlのギ酸を入れ、その後61.2gのR16タンパク質または40.0gのS16タンパク質と34gのユビナールAプラスを徐々に入れ攪拌した。一度それらの物質が完全に溶解したら、ギ酸(98〜100%)を用いてその溶液を340gにした。
【0248】
この場合においても、別法として、出発材料の基礎としてR16またはS16タンパク質水溶液を(C16クモ絹タンパク質と同様、作製については実施例1参照)使用することも可能である。その際には、有効成分をタンパク質水溶液に直接溶解しまたは、使用する有効成分の濃度が比較的高い場合には、代替溶媒(例えばギ酸またはTHF)に予備溶解した後、タンパク質溶液と混合する。紡糸液の粘度を高めるために、その後、加えて、水溶性ポリマー、ポリマー分散液またはバイオポリマー(例えばタンパク質)を加えることが可能である。
【0249】
ローラー型のElmarco社Nanospider装置で次のパラメーターを用いて紡糸したR16タンパク質またはS16タンパク質およびユビナールAプラスの溶液:
【0250】
そのようにして作製した、ユビナールAプラスが組み込まれたシート状タンパク質構造体は、有効成分を含まない実験と同程度の繊維径を有していた(図15)。
【0251】
純粋ユビナールAプラスとは対照的に、R16タンパク質/ユビナールAプラス処方物ではX線回折スペクトルに結晶性ピークは認められなかった(図16)。従って、有効成分は非晶形で繊維中に組み込まれたと考えることができる。ユビナールAプラスを含むS16タンパク質では、非常に弱い結晶性シグナルを検出することができた。これは、効果物質が半結晶形で存在していることを示唆している。
【0252】
以上に詳述した手順を離れて、シート状のR16またはS16タンパク質/ユビナールAプラス構造体からの有効成分の放出動態を次のとおり決定した。いずれの場合においても10mgのシート状のR16タンパク質/ユビナールAプラス構造体または5mgのS16タンパク質/ユビナールAプラス構造体を、0.25%[w/v]プロテイナーゼKを含む5mMリン酸カリウムバッファー中でインキュベートした。いずれの場合においても計画した各サンプリング時間に混合物を作製した。混合物をサーモミキサー(Eppendorf社製)中で37℃および400rpmでインキュベートした。放出されたユビナールAプラスは、特定の時点において、完全なままのシート状のR16またはS16タンパク質構造体の除去後、THFでの上清の抽出続いて吸光測光法による352nmでの測定により定量した。
【0253】
有効成分の添加密度を決定するために、放出動態のために作製した全てのサンプルをTHFにより定量的に抽出した。シート状タンパク質構造体の分解が不完全であったサンプルでは、除去したシート状タンパク質構造体もTHFにより抽出した後、ユビナールAプラスを吸光測光法により定量した。2つの値(上清およびペレット)を合わせ総添加密度を決定した。続いて全ての時点における添加密度を用い平均添加密度を決定した。
【0254】
シート状R16タンパク質構造体でのユビナールAプラス添加密度は約33.5%[w/w]であり、シート状S16タンパク質構造体では約49.6%[w/w]であることが分かった。
【0255】
対照実験(プロテアーゼKを含まないバッファー)では、24時間後にシート状のR16構造体から7.5%ユビナールAプラスしか放出されなかった。対照実験においてシート状のS16構造体からは、この期間内に9.5%有効成分が放出された。しかしながら、両方の実験において、シート状タンパク質構造体は完全なままであった。プロテイナーゼKを加えない実験では、同じ期間内にシート状のS16構造体は完全に分解された。シート状のR16構造体のプロテイナーゼK制御分解は相対的にずっと遅かった。この場合には、24時間後、シート状のR16構造体の遊離残留物が混合物中にまだはっきりと認められた。
【0256】
プロテイナーゼKを含むR16タンパク質混合物では、24時間後に約63%[w/w]のユビナールAプラスが放出された(図17)。S16タンパク質混合物では、対照的に、わずか約3時間後にユビナールAプラス有効成分の全てが放出された(図17)。
【0257】
本明細書において引用する刊行物の開示を明示的に参照する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分含有シート状繊維構造体であって、繊維状で、ポリマーで、可溶性および/または分解性の有効成分担体と、前記担体と結合し前記シート状繊維構造体より放出させることができる少なくとも1種の有効成分とを含むシート状繊維構造体であり、
前記担体が、さらに化学的および/または酵素的に修飾されていてもよい少なくとも1種のバイオポリマーをポリマー成分として含むことを特徴とする、シート状繊維構造体。
【請求項2】
紡糸プロセスによって、とりわけ、少なくとも1種のバイオポリマーおよび少なくとも1種の有効成分を含むエレクトロスピニング可能な溶液のエレクトロスピニングによって得られることを特徴とする、請求項1に記載のシート状繊維構造体。
【請求項3】
前記少なくとも1種の有効成分が非晶形、半結晶形または結晶形であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項4】
前記有効成分が前記担体に組み込まれかつ/またはその上に吸着されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項5】
前記バイオポリマーがタンパク質、とりわけ両親媒性自己集合タンパク質であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項6】
前記両親媒性自己集合タンパク質がマイクロビーズを形成するタンパク質であることを特徴とする、請求項5に記載のシート状繊維構造体。
【請求項7】
前記両親媒性自己集合タンパク質が本質的に折りたたまれていないタンパク質であることを特徴とする、請求項5に記載のシート状繊維構造体。
【請求項8】
前記両親媒性自己集合タンパク質が絹タンパク質であることを特徴とする、請求項5に記載のシート状繊維構造体。
【請求項9】
前記両親媒性自己集合タンパク質がクモ絹タンパク質であることを特徴とする、請求項8に記載のシート状繊維構造体。
【請求項10】
前記クモ絹タンパク質が、配列番号2のアミノ酸配列を含むC16クモ絹タンパク質または配列同一性が少なくとも約60%であるこのタンパク質由来の紡糸可能なタンパク質であることを特徴とする、請求項9に記載のシート状繊維構造体。
【請求項11】
前記絹タンパク質が、配列番号4のアミノ酸配列を含むR16タンパク質および配列番号6のアミノ酸配列を含むS16タンパク質;または配列同一性が少なくとも約60%であるこれらのタンパク質由来の紡糸可能なタンパク質から選択されることを特徴とする、請求項8に記載のシート状繊維構造体。
【請求項12】
少なくとも1種の医薬品有効成分が存在することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項13】
前記有効成分が咳誘発および粘液溶解有効成分であることを特徴とする、請求項12に記載のシート状繊維構造体。
【請求項14】
前記有効成分がグアヤコールグリセリルエーテルまたはその誘導体であることを特徴とする、請求項13に記載のシート状繊維構造体。
【請求項15】
前記有効成分が作物保護有効成分であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項16】
前記有効成分が皮膚化粧品および/もしくは毛髪化粧品有効成分であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項17】
前記担体が、合成ポリマーから選択される少なくとも1種のさらなるポリマー成分を含むことを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項18】
前記合成ポリマーがホモポリマーまたはコポリマーであることを特徴とする、請求項17に記載のシート状繊維構造体。
【請求項19】
前記ポリマー担体が、
a.少なくとも2種の混和性バイオポリマーの混合物;
b.少なくとも2種の非混和性バイオポリマーの混合物;
c.互いに混和する、少なくとも1種の合成ホモポリマーまたはコポリマーと少なくとも1種のバイオポリマーとの混合物;
d.少なくとも1種の互いに混和しない合成ホモポリマーまたはコポリマーと少なくとも1種のバイオポリマーとの混合物
から選択される複合ポリマーであることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項20】
前記合成ポリマー成分が約500〜10000000の範囲のモル質量を有することを特徴とする、請求項17〜19のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項21】
前記有効成分担体繊維の直径が、10nm〜100μm、例えば50nm〜10μm、または100nm〜2μmであることを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項22】
前記有効成分の添加が前記シート状繊維構造体の固形分に基づき、約0.01〜80重量%であることを特徴とする、請求項1〜21のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項23】
ポリマー繊維、ポリマーフィルムおよびポリマー不織布から選択されることを特徴とする、請求項1〜22のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項24】
担体ポリマー成分と有効成分が非共有結合により相互作用することを特徴とする、請求項1〜23のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体を加工した形態で、所望により少なくとも1種のさらなる処方助剤と組み合わせて、含むことを特徴とする、有効成分含有処方物
【請求項26】
粉砕形態または未粉砕形態の前記シート状繊維構造体を含むことを特徴とする、請求項25に記載の処方物。
【請求項27】
緻密形態の、粉末形態のまたは担体基体に適用された前記シート状繊維構造体を含むことを特徴とする、請求項25または請求項26に記載の処方物。
【請求項28】
化粧品、ヒトおよび動物医薬処方物、農薬処方物、食品および動物飼料添加物から選択されることを特徴とする、請求項25〜27のいずれか一項に記載の処方物。
【請求項29】
請求項25〜28のいずれか一項に記載の有効成分含有処方物の生産のための、請求項1〜24のいずれか一項に記載の有効成分含有シート状繊維構造体の使用。
【請求項30】
その中に存在する有効成分の制御放出のための、請求項25〜28のいずれか一項に記載の有効成分含有処方物の使用。
【請求項31】
a.少なくとも1種の有効成分を複合液相中で少なくとも1種のバイオポリマー成分と一緒に混合し、
b.その後、紡糸プロセスによってバイオポリマー繊維中への有効成分の埋め込みを行う、
請求項1〜24のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体を生産するための方法。
【請求項32】
少なくとも1種の有効成分と前記バイオポリマー成分が溶媒相中で混合され、この混合物から紡糸されることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1種の有効成分と前記バイオポリマー成分が少なくとも2種の互いに混和する溶媒の混合物中で混合され、有効成分およびポリマーが少なくとも前記溶媒の一方に溶解でき、この混合物から紡糸されることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記バイオポリマーが、少なくとも1種の有効成分とギ酸中で混合した後、この混合物から紡糸される両親媒性自己集合タンパク質であることを特徴とする、請求項31〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記紡糸プロセスがエレクトロスピニングプロセスまたは遠心(回転)紡糸プロセスであることを特徴とする、請求項31〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記使用温度が約5〜50℃の範囲内であることを特徴とする、請求項31〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
低分子量の有効成分を本質的に含まないことを特徴とする、請求項1〜24のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項38】
有効成分含有処方物または有効成分フリー処方物の生産のための、請求項37に記載のシート状繊維構造体の使用。
【請求項39】
前記処方物が化粧品処方物、ヒトおよび動物医薬処方物、農薬処方物、食品および動物飼料添加物から選択されることを特徴とする、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
前記担体が、所望によりさらに化学的および/または酵素的に修飾されていてもよい少なくとも1種のバイオポリマーをポリマー成分として含み、前記バイオポリマーが両親媒性自己集合タンパク質であることを特徴とする、繊維状で、ポリマーで、可溶性および/または分解性の担体を含む、請求項37に記載のシート状繊維構造体。
【請求項41】
前記バイオポリマーが、配列番号4のアミノ酸配列を含むR16タンパク質、および配列番号6のアミノ酸配列を含むS16タンパク質;または配列同一性が少なくとも約60%であるこれらのタンパク質由来の紡糸可能なタンパク質から選択されることを特徴とする、請求項37または請求項40に記載のシート状繊維構造体。
【請求項42】
(医療)創傷ケア用品および衛生物品の生産のための、請求項41に記載のシート状繊維構造体の使用。
【請求項43】
請求項41に記載のシート状繊維構造体を用いて生産された創傷ケア用品。
【請求項44】
請求項41に記載のシート状繊維構造体を用いて生産された衛生物品。
【請求項1】
有効成分含有シート状繊維構造体であって、繊維状で、ポリマーで、可溶性および/または分解性の有効成分担体と、前記担体と結合し前記シート状繊維構造体より放出させることができる少なくとも1種の有効成分とを含むシート状繊維構造体であり、
前記担体が、さらに化学的および/または酵素的に修飾されていてもよい少なくとも1種のバイオポリマーをポリマー成分として含むことを特徴とする、シート状繊維構造体。
【請求項2】
紡糸プロセスによって、とりわけ、少なくとも1種のバイオポリマーおよび少なくとも1種の有効成分を含むエレクトロスピニング可能な溶液のエレクトロスピニングによって得られることを特徴とする、請求項1に記載のシート状繊維構造体。
【請求項3】
前記少なくとも1種の有効成分が非晶形、半結晶形または結晶形であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項4】
前記有効成分が前記担体に組み込まれかつ/またはその上に吸着されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項5】
前記バイオポリマーがタンパク質、とりわけ両親媒性自己集合タンパク質であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項6】
前記両親媒性自己集合タンパク質がマイクロビーズを形成するタンパク質であることを特徴とする、請求項5に記載のシート状繊維構造体。
【請求項7】
前記両親媒性自己集合タンパク質が本質的に折りたたまれていないタンパク質であることを特徴とする、請求項5に記載のシート状繊維構造体。
【請求項8】
前記両親媒性自己集合タンパク質が絹タンパク質であることを特徴とする、請求項5に記載のシート状繊維構造体。
【請求項9】
前記両親媒性自己集合タンパク質がクモ絹タンパク質であることを特徴とする、請求項8に記載のシート状繊維構造体。
【請求項10】
前記クモ絹タンパク質が、配列番号2のアミノ酸配列を含むC16クモ絹タンパク質または配列同一性が少なくとも約60%であるこのタンパク質由来の紡糸可能なタンパク質であることを特徴とする、請求項9に記載のシート状繊維構造体。
【請求項11】
前記絹タンパク質が、配列番号4のアミノ酸配列を含むR16タンパク質および配列番号6のアミノ酸配列を含むS16タンパク質;または配列同一性が少なくとも約60%であるこれらのタンパク質由来の紡糸可能なタンパク質から選択されることを特徴とする、請求項8に記載のシート状繊維構造体。
【請求項12】
少なくとも1種の医薬品有効成分が存在することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項13】
前記有効成分が咳誘発および粘液溶解有効成分であることを特徴とする、請求項12に記載のシート状繊維構造体。
【請求項14】
前記有効成分がグアヤコールグリセリルエーテルまたはその誘導体であることを特徴とする、請求項13に記載のシート状繊維構造体。
【請求項15】
前記有効成分が作物保護有効成分であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項16】
前記有効成分が皮膚化粧品および/もしくは毛髪化粧品有効成分であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項17】
前記担体が、合成ポリマーから選択される少なくとも1種のさらなるポリマー成分を含むことを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項18】
前記合成ポリマーがホモポリマーまたはコポリマーであることを特徴とする、請求項17に記載のシート状繊維構造体。
【請求項19】
前記ポリマー担体が、
a.少なくとも2種の混和性バイオポリマーの混合物;
b.少なくとも2種の非混和性バイオポリマーの混合物;
c.互いに混和する、少なくとも1種の合成ホモポリマーまたはコポリマーと少なくとも1種のバイオポリマーとの混合物;
d.少なくとも1種の互いに混和しない合成ホモポリマーまたはコポリマーと少なくとも1種のバイオポリマーとの混合物
から選択される複合ポリマーであることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項20】
前記合成ポリマー成分が約500〜10000000の範囲のモル質量を有することを特徴とする、請求項17〜19のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項21】
前記有効成分担体繊維の直径が、10nm〜100μm、例えば50nm〜10μm、または100nm〜2μmであることを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項22】
前記有効成分の添加が前記シート状繊維構造体の固形分に基づき、約0.01〜80重量%であることを特徴とする、請求項1〜21のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項23】
ポリマー繊維、ポリマーフィルムおよびポリマー不織布から選択されることを特徴とする、請求項1〜22のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項24】
担体ポリマー成分と有効成分が非共有結合により相互作用することを特徴とする、請求項1〜23のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体を加工した形態で、所望により少なくとも1種のさらなる処方助剤と組み合わせて、含むことを特徴とする、有効成分含有処方物
【請求項26】
粉砕形態または未粉砕形態の前記シート状繊維構造体を含むことを特徴とする、請求項25に記載の処方物。
【請求項27】
緻密形態の、粉末形態のまたは担体基体に適用された前記シート状繊維構造体を含むことを特徴とする、請求項25または請求項26に記載の処方物。
【請求項28】
化粧品、ヒトおよび動物医薬処方物、農薬処方物、食品および動物飼料添加物から選択されることを特徴とする、請求項25〜27のいずれか一項に記載の処方物。
【請求項29】
請求項25〜28のいずれか一項に記載の有効成分含有処方物の生産のための、請求項1〜24のいずれか一項に記載の有効成分含有シート状繊維構造体の使用。
【請求項30】
その中に存在する有効成分の制御放出のための、請求項25〜28のいずれか一項に記載の有効成分含有処方物の使用。
【請求項31】
a.少なくとも1種の有効成分を複合液相中で少なくとも1種のバイオポリマー成分と一緒に混合し、
b.その後、紡糸プロセスによってバイオポリマー繊維中への有効成分の埋め込みを行う、
請求項1〜24のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体を生産するための方法。
【請求項32】
少なくとも1種の有効成分と前記バイオポリマー成分が溶媒相中で混合され、この混合物から紡糸されることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1種の有効成分と前記バイオポリマー成分が少なくとも2種の互いに混和する溶媒の混合物中で混合され、有効成分およびポリマーが少なくとも前記溶媒の一方に溶解でき、この混合物から紡糸されることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記バイオポリマーが、少なくとも1種の有効成分とギ酸中で混合した後、この混合物から紡糸される両親媒性自己集合タンパク質であることを特徴とする、請求項31〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記紡糸プロセスがエレクトロスピニングプロセスまたは遠心(回転)紡糸プロセスであることを特徴とする、請求項31〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記使用温度が約5〜50℃の範囲内であることを特徴とする、請求項31〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
低分子量の有効成分を本質的に含まないことを特徴とする、請求項1〜24のいずれか一項に記載のシート状繊維構造体。
【請求項38】
有効成分含有処方物または有効成分フリー処方物の生産のための、請求項37に記載のシート状繊維構造体の使用。
【請求項39】
前記処方物が化粧品処方物、ヒトおよび動物医薬処方物、農薬処方物、食品および動物飼料添加物から選択されることを特徴とする、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
前記担体が、所望によりさらに化学的および/または酵素的に修飾されていてもよい少なくとも1種のバイオポリマーをポリマー成分として含み、前記バイオポリマーが両親媒性自己集合タンパク質であることを特徴とする、繊維状で、ポリマーで、可溶性および/または分解性の担体を含む、請求項37に記載のシート状繊維構造体。
【請求項41】
前記バイオポリマーが、配列番号4のアミノ酸配列を含むR16タンパク質、および配列番号6のアミノ酸配列を含むS16タンパク質;または配列同一性が少なくとも約60%であるこれらのタンパク質由来の紡糸可能なタンパク質から選択されることを特徴とする、請求項37または請求項40に記載のシート状繊維構造体。
【請求項42】
(医療)創傷ケア用品および衛生物品の生産のための、請求項41に記載のシート状繊維構造体の使用。
【請求項43】
請求項41に記載のシート状繊維構造体を用いて生産された創傷ケア用品。
【請求項44】
請求項41に記載のシート状繊維構造体を用いて生産された衛生物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図11】
【図12】
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【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2011−530491(P2011−530491A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521489(P2011−521489)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005756
【国際公開番号】WO2010/015419
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005756
【国際公開番号】WO2010/015419
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】
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