説明

バイポーラトランジスタおよびその製造方法

【課題】HBT(ヘテロジャンクション・バイポーラトランジスタ)による段差を低減し、接合面積をより小さくできる製造方法を提供する。
【解決手段】半絶縁性のInPからなる基板101の上に形成されたアンドープInPからなる第1半導体層102と、第1半導体層102の上に接して形成された第1導電型のInPからなるエミッタ層103と、第1半導体層102の上に接して形成されたInGaAsからなるコレクタ層108と、第1半導体層102の上に接して形成され、エミッタ層103およびコレクタ層108に挟まれて配置された第2導電型のInGaAsからなるベース層105とを備える。また、半絶縁性のInPからなる第1分離層106aおよび第2分離層106bを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、InPからなる基板の上に形成されるヘテロ接合型のバイポーラトランジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超高速動作が可能なバイポーラトランジスタとして、HBT(Heterojunction Bipolar Transistor)が知られている。HBTは、エミッタにベースよりも広いバンドギャップを有する半導体材料を用いて構成されている。このため、HBTは、ホモ接合バイポーラトランジスタに比較し、エミッタに対してベースの不純物濃度を高めても高い電流増幅率を維持でき、ベース層の薄層化とベース抵抗低減を同時に実現できるため超高速動作が可能になる。
【0003】
このようなHBTにおいて、さらに、III−V族化合物半導体を用いると、材料の選択によりヘテロ接合の組み合わせ自由度が広がり、また、電子デバイスのみならず光デバイスとの融合も可能になるなど、利点が増加する。
【0004】
III−V族化合物半導体を用いたHBT、特に、InPからエミッタを構成し、InGaAsからベースを構成したn−p−n型InP/InGaAsHBTでは、InGaAsの優れた電子輸送特性により、高速性能の指標である電流利得遮断周波数fTが700GHzを越え、トランジスタの中での最高性能が得られている。加えて、InP/InGaAsHBTは、エミッタ/ベース接合のターンオン電圧が低いため、集積回路の低消費電力化に有利である。
【0005】
また、プロセス上では、特にエッチング加工において、InGaAsとInPに対して各々完全な選択ウエットエッチング溶液を用いることができるため、エッチングのウエハ面内均一性に優れる。このように、閾値に相当するエミッタ/ベース接合間ターンオン電圧のウエハ面内均一性が優れていることと合わせて、InP/InGaAsHBTは、大規模集積回路を構成するデバイスとして有利である。
【0006】
上述したようなIII−V族化合物半導体を用いたHBTは、図3に示すように構成されている(特許文献1参照)。このHBTは、半絶縁性InPからなる基板301上に、InGaAsからなるコレクタ層302、p+−InGaAsからなるベース層303、およびn−InPからなるエミッタ層304が積層され、ベース層303の側方のコレクタ層302の上にコレクタ電極305が形成され、エミッタ層304の側方のベース層303の上にベース電極306が形成され、エミッタ層304の上にエミッタ電極307が形成されている。また、各層および各電極を覆うように、有機樹脂かなる層間絶縁層308が形成されている。
【0007】
上述したHBTは、コレクタ/ベース/エミッタの各層は、通常エピタキシャル成長による積層して形成している。この構造は、いわゆるメサ型を有する縦型トランジスタである。また、最上層をエミッタとしたエミッタアップ構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平07−142507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した縦型トランジスタでは、エミッタ層上のエミッタ電極から最下部の基板まで1μm以上の段差が生じる。このため、例えば、層間絶縁層の上から、コレクタ電極,ベース電極,エミッタ電極までの距離が各々異なり、各電極へのコンタクト配線を同時に形成することができないなど、配線を形成するための工程数が増加する。このように、上述したHBTでは、基板の平面方向(横方向)にチャネルが形成され、各電極に大きな段差が生じない電界効果トランジスタに比較し、配線プロセスや層間絶縁膜形成プロセスの工程数が増加するという問題を生じている。また、上述した段差のため、集積回路を構成する複数のトランジスタの疎密により、配線,層間絶縁膜内スルーホール形成の再現性、およびウエハ面内均一性に問題を生じていた。
【0010】
また、コレクタ,ベース,エミッタの各層が基板の上に積層されている縦型のHBTでは、各層の間の接合面は基板に平行に形成される。ここで、各層は、公知のリソグラフィー技術およびエッチング技術により形成されるため、例えば、エミッタ/ベースの接合面積は、リソグラフィー技術で形成できる最小パターンの寸法で制限されることになる。
【0011】
例えば、露光光源としてi線(波長365nm)を用いた縮小投影露光装置によるフォトリソグラフィーでは、形成可能なパターン寸法の最小値は0.4μmが限界である。また、電子ビーム露光技術を用いた場合でも、形成可能なパターン寸法の最小値は0.1μmが限界である。また、電子ビーム露光では、露光から現像に要する時間が長く、短いスループットが要求される大規模集積回路の作製には適していない。
【0012】
これらのように、上述したHBTでは、大きな段差を有するために製造工程の増大を招き、また、接合面積の微細化が容易ではないという問題がある。大きな段差は、製造工程数の増大を招くとともに、接続される配線やパッシブ素子の作製を困難にしている。また、HBTにおける接合面積は、低消費電力のためには重要であり、上述したHBTでは、低消費電力化のための接合面積の微細化が容易ではない。
【0013】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、HBTによる段差を低減し、接合面積をより小さくできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るバイポーラトランジスタは、半絶縁性のInPからなる基板の上に形成されたアンドープInPからなる第1半導体層と、この第1半導体層の上に接して形成された第1導電型のInPからなるエミッタ層と、第1半導体層の上に接して形成されたInGaAsからなるコレクタ層と、第1半導体層の上に接して形成され、エミッタ層およびコレクタ層に挟まれて配置された第2導電型のInGaAsからなるベース層と、このベース層の形成位置より離間してエミッタ層の上に接して形成された第1導電型のInGaAsからなるエミッタコンタクト層と、ベース層の形成位置より離間してコレクタ層の上に接して形成された第1導電型のInGaAsからなるコレクタコンタクト層と、エミッタコンタクト層とベース層の形成位置との間のエミッタ層の上に接して形成された半絶縁性のInPからなる第1分離層と、コレクタコンタクト層とベース層の形成位置との間のコレクタ層の上に接して形成された半絶縁性のInPからなる第2分離層と、第1分離層および第2分離層に挟まれた領域を介してベース層に接し、第1分離層および第2分離層の上に形成された第2導電型のInGaAsからなるベースコンタクト層と、エミッタコンタクト層に接続するエミッタ電極と、コレクタコンタクト層に接続するコレクタ電極と、ベースコンタクト層に接続するベース電極とを少なくとも備え、エミッタ層,ベース層,およびコレクタ層は、この順に第1半導体層の平面上で配列して接続されている。
【0015】
また、本発明に係るバイポーラトランジスタの製造方法は、半絶縁性のInPからなる基板の上に、アンドープInPからなる第1半導体層を形成する第1工程と、第1半導体層の上に接して第1導電型のInPからなる第2半導体層を形成し、引き続いて第2半導体層の上に接して第1導電型のInGaAsからなる第3半導体層を形成する第2工程と、第2半導体層および第3半導体層をパターニングしてエミッタ層およびエミッタコンタクト層を形成する第3工程と、エミッタ層以外の領域の第1半導体層の上に接し、基板の平面方向にエミッタ層に連続して第2導電型のInGaAsからなる第4半導体層を形成する第4工程と、エミッタコンタクト層の上および第4半導体層の一部領域の上部にかけて連続して形成したマスクパターンをマスクとして第4半導体層を選択的にエッチングして第1半導体層の表面を露出させ、基板の平面方向にエミッタ層に接続するベース層を、第1半導体層の上に接して形成する第5工程と、マスクパターン以外の第1半導体層が露出している領域に接し、InGaAsからなるコレクタ層をベース層に連続して形成する第6工程と、コレクタ層の上に第1導電型のInGaAsからなるコレクタコンタクト層を形成する第7工程と、ベース層側の一部のエミッタコンタクト層および一部のコレクタコンタクト層を除去する第8工程と、エミッタコンタクト層とベース層の形成位置との間のエミッタ層の上に接して配置される半絶縁性のInPからなる第1分離層、およびコレクタコンタクト層とベース層の形成位置との間のコレクタ層の上に接して配置される半絶縁性のInPからなる第2分離層を形成する第9工程と、第1分離層および第2分離層に挟まれた領域を介してベース層に接し、第1分離層および第2分離層の上に配置される第2導電型のInGaAsからなるベースコンタクト層を形成する第10工程と、エミッタコンタクト層に接続するエミッタ電極,コレクタコンタクト層に接続するコレクタ電極,およびベースコンタクト層に接続するベース電極を形成する第11工程とを少なくとも備える。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、エミッタ層,ベース層,およびコレクタ層は、この順に第1半導体層の平面上で配列して接続され、半絶縁性のInPからなる第1分離層および第2分離層を備えるようにしたので、HBTによる段差を低減し、接合面積をより小さくできるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】図1Aは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの構成を示す断面図である。
【図1B】図1Bは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの構成を示す平面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための各工程の状態を示す断面図である。
【図2B】図2Bは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための各工程の状態を示す断面図である。
【図2C】図2Cは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための各工程の状態を示す断面図である。
【図2D】図2Dは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための各工程の状態を示す断面図である。
【図2E】図2Eは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための各工程の状態を示す断面図である。
【図2F】図2Fは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための各工程の状態を示す断面図である。
【図2G】図2Gは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための各工程の状態を示す断面図である。
【図2H】図2Hは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための各工程の状態を示す断面図である。
【図2I】図2Iは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための各工程の状態を示す断面図である。
【図2J】図2Jは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための各工程の状態を示す断面図である。
【図2K】図2Kは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための各工程の状態を示す断面図である。
【図2L】図2Lは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための各工程の状態を示す断面図である。
【図2M】図2Mは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための各工程の状態を示す断面図である。
【図2N】図2Nは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための各工程の状態を示す断面図である。
【図2O】図2Oは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための各工程の状態を示す断面図である。
【図3】図3は、ヘテロ接合バイポーラトランジスタの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1Aは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの構成を示す断面図である。図1Aでは、断面を模式的に示している。また、図1Bは、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの構成を示す平面図である。
【0019】
このバイポーラトランジスタは、まず、半絶縁性のInPからなる基板101の上に形成されたアンドープInPからなる第1半導体層102と、第1半導体層102の上に接して形成された第1導電型のInPからなるエミッタ層103と、第1半導体層102の上に接して形成されたInGaAsからなるコレクタ層108と、第1半導体層102の上に接して形成され、エミッタ層103およびコレクタ層108に挟まれて配置された第2導電型のInGaAsからなるベース層105とを備える。
【0020】
また、本実施の形態におけるバイポーラトランジスタは、ベース層105の形成位置より離間してエミッタ層103の上に接して形成された第1導電型のInGaAsからなるエミッタコンタクト層104と、ベース層105の形成位置より離間してコレクタ層108の上に接して形成された第1導電型のInGaAsからなるコレクタコンタクト層109と、エミッタコンタクト層104とベース層105の形成位置との間のエミッタ層103の上に接して形成された半絶縁性のInPからなる第1分離層106aと、コレクタコンタクト層109とベース層105の形成位置との間のコレクタ層108の上に接して形成された半絶縁性のInPからなる第2分離層106bとを備える。
【0021】
また、本実施の形態におけるバイポーラトランジスタは、第1分離層106aおよび第2分離層106bに挟まれた領域を介してベース層105に接し、第1分離層106aおよび第2分離層106bの上に形成された第2導電型のInGaAsからなるベースコンタクト層107と、エミッタコンタクト層104に接続するエミッタ電極110と、コレクタコンタクト層109に接続するコレクタ電極111と、ベースコンタクト層107に接続するベース電極112と備える。加えて、エミッタ層103,ベース層105,およびコレクタ層108は、順に第1半導体層102の平面上で配列して接続されている
【0022】
基板101は、Feをドープすることで半絶縁性とされている。また、エミッタコンタクト層104は、高濃度に第1導電型の不純物が導入されたInPから構成されていればよい。コレクタコンタクト層109は、高濃度に第1導電型の不純物が導入されたInGaAsから構成されていればよい。また、ベースコンタクト層107は、高濃度に第2導電型の不純物が導入されたInGaAsから構成されていればよい。エミッタコンタクト層104は、エミッタ電極110をオーミック接続させるために用い、コレクタコンタクト層109は、コレクタ電極111をオーミック接続させるために用いる。同様に、ベースコンタクト層107は、ベース電極112をオーミック接続させるために用いる。
【0023】
なお、ベースコンタクト層107は、図1Bに示すように、ベースコンタクト層107に連続して一体に形成されている第2導電型のInGaAsからなる引き出しベースコンタクト層107aを備える。また、ベース電極112も、これに連続して一体に形成されているベース電極パッド112aが、引き出しベースコンタクト層107aの上に形成されている。このようにすることで、より広いベース電極パッド112aを形成することができ、電極とのコンタクトが容易になる。なお、各電極は、Ti/Pt/Auの積層構造から構成することができる。
【0024】
上述した本実施の形態によれば、まず、エミッタ,ベース,コレクタの各層が、基板平面方向(横方向)に配列されるので、特許文献1に示されている縦型の構造によるエミッタ,ベース,コレクタの段差がない状態となる。このように、本実施の形態では、素子の平坦性に優れ、縦型のHBTでは問題となっていたトランジスタと配線およびパッシブ素子との接続が容易となる。
【0025】
また、本実施の形態によれば、エミッタ,ベース,コレクタの各接合界面の大きさが、各層の層厚で規定されるようになるので、接合面積の縮小が容易である。例えば、各層は、よく知られた有機金属気相成長法によりエピタキシャル成長させることで形成できるが、層厚を0.1μm以下にすることが容易であり、リソグラフィー技術の寸法制限にかかわらず、接合面積をより小さくすることが容易である。
【0026】
また、本実施の形態では、アンドープInPからなる第1半導体層102を設け、この上にエミッタ,ベース,コレクタの各層を配列した。この構成により、基板101とこの上の層との界面に流れる表面再結合リーク電流による問題から、エミッタ層103,ベース層105,コレクタ層108からなるHBTを分離させることができる。本実施の形態におけるバイポーラトランジスタは、第1半導体層102を設けることで、基板平面方向にエミッタ,ベース,コレクタの各層を配列させることを可能としている。
【0027】
また、本実施の形態によれば、エミッタコンタクト層104およびコレクタコンタクト層109をベース層105より離間させているので、HBTのブレークダウン電圧を上げることができる。加えて、これらの隙間に露出するエミッタ層103およびコレクタ層108の表面は、第1分離層106aおよび第2分離層106bに接触して覆われているので、これらの表面における表面再結合リーク電流が抑制できるようになる。この結果、特に、素子寸法が微細化された場合においても、信頼性に優れたHBTが実現できる。
【0028】
次に、本実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法について説明する。まず図2Aに示すように、半絶縁性のInPからなる基板101上に、アンドープのInPからなる第1半導体層102,第1導電型としてn型のドーパント(不純物)をドーピングしたn−InPからなる半導体層(第2半導体層)201,およびn型のドーパントを高濃度にドーピングしたn+−InGaAsからなる半導体層(第3半導体層)202を、順次にエピタキシャル成長する。これらの半導体層は、MOCVD(有機金属気相成長法)またはMBE(分子ビームエピタキシー法)などにより形成できる。なお、InGaAsは、InPよりバンドギャップが狭い半導体である。
【0029】
次に、図2Bに示すように、窒化シリコンよりなるマスクパターン203を用いた選択的なエッチングにより、マスクパターン203の下に、エミッタ層103およびエミッタコンタクト層104を形成し、マスクパターン203以外の領域の第1半導体層102の表面を露出させる。例えば、半導体層202の上にプラズマCVD法により窒化シリコン層を形成し、この窒化シリコン層を公知のフォトリソグラフィー技術および反応性イオンエッチング技術によりパターニングすることで、マスクパターン203が形成できる。
【0030】
次に、図2Cに示すように、露出した第1半導体層102の上に、第2導電型としてp形のドーパントを高濃度ドーピングしたp+−InGaAsからなる半導体層(第4半導体層)204をエピタキシャル成長により形成する。半導体層204は、エミッタ層103の上面と同じ高さになるまで形成する。このエピタキシャル成長では、窒化シリコンの上にはInGaAsが成長しないので、露出している第1半導体層102の上に選択的に半導体層204の形成ができる。
【0031】
次に、フォトレジストによるレジストパターンをマスクとして半導体層204を選択的にエッチング除去し、ベースベース電極パッド112aを形成するためのベースコンタクト層107aとなる領域を形成する(図1B参照)。
【0032】
次に、上記レジストパターンを除去した後、基板101の上の全域に窒化シリコンを堆積して窒化シリコン膜を形成し、さらに、形成した窒化シリコン膜の全域をエッチバックする。このエッチバックのエッチングにおいて、処理時間を制御することで、図2Dに示すように、エミッタコンタクト層104(エミッタ層103)の上に形成されているマスクパターン203に連続し、半導体層204aの一部領域の上部にかけて配置されるマスクパターン205を形成する。マスクパターン203およびマスクパターン205により、エミッタ層103(エミッタコンタクト層104)の上および半導体層204の一部領域の上部にかけて連続して形成したマスクパターンが構成されていることになる。
【0033】
マスクパターン205は、エミッタコンタクト層104およびマスクパターン203からなる積層構造のパターンに対し、いわゆる側壁(サイドウォール)となる。よく知られているように、上述した窒化シリコン膜の成膜時の膜厚やエッチバックするときの処理時間の制御により、図2Dに示す断面方向(基板平面方向)のマスクパターン205の幅を制御できる。
【0034】
次に、マスクパターン203およびマスクパターン205をマスクとして半導体層204をエッチングすることで、図2Eに示すように、マスクパターン205の直下にベース層105を形成する。このエッチングでは、第1半導体層102を露出させる。ベース層105の幅は、マスクパターン205の幅により規定される。従って、エミッタとコレクタとの間のベース幅は、サイドウォールとして形成しているマスクパターン205の幅の制御により制御できる。
【0035】
なお、上述したベース層105形成のためのエッチングにおいては、マスクパターン205を形成した後に、図示していないベースコンタクト層107(図1B参照)が形成される領域に対応するマスクパターンを形成しておく。この状態で上述した半導体層204の一部領域のエッチングを行うことで、引き出しベースコンタクト層107aが形成される領域のベース層105のエッチングが防げ、引き出しベースコンタクト層107aが、エミッタコンタクト層104の上層と同じ高さに形成できるようになる。また、ベース層105形成のための半導体層204のエッチング量を考慮し、半導体層204をより厚く形成しておいてもよい。
【0036】
次に、ベース層105の形成により露出した第1半導体層102の上に、まず、InGaAsからなる半導体層を、ベース層105と同じ高さ(層厚)にエピタキシャル成長し、引き続いて、n型ドーパントを高濃度にドーピングしたn+−InGaAsからなる半導体層を、エミッタコンタクト層104の上面と同じ高さになるまでエピタキシャル成長することで、図2Fに示すように、コレクタ層108およびコレクタコンタクト層109を形成する。コレクタ層108とする半導体層は、アンドープInGaAsから構成してもよく、また、n型ドーパントをドーピングしたInGaAsから構成してもよい。
【0037】
次に、マスクパターン203およびマスクパターン205を除去し、図2Gに示すように、エミッタコンタクト層104,ベース層105,およびコレクタコンタクト層109の上面を露出させる。マスクパターン203およびマスクパターン205は、公知のドライエッチングおよびウエットエッチングにより除去すればよい。次に、図2Hに示すように、エミッタコンタクト層104,ベース層105,およびコレクタコンタクト層109の上に、窒化シリコンからなる絶縁層206を形成する。例えば、スパッタ法により窒化シリコンを堆積することで、絶縁層206を形成すればよい。
【0038】
次に、図2Iに示すように、ベース層105を中心とした領域の絶縁層206に開口206aを形成する。例えば、フォトレジストのパターン(不図示)を用いた絶縁層206の選択的なエッチングにより、開口206aを形成することができる。また、開口206aの形成では、エミッタコンタクト層104とコレクタコンタクト層109との間のベース層105の上部領域の絶縁層206を残すようにすることで、ベース層105の上面を覆う被覆パターン206bを形成する。
【0039】
次に、開口206aを備える絶縁層206および−パターン205bをマスクパターンとし、エミッタコンタクト層104およびコレクタコンタクト層109を選択的にウエットエッチングする。このエッチングにより、ベース層105の側の一部のエミッタコンタクト層104および一部のコレクタコンタクト層109を除去することで、図2Jに示すように、ベース層105の両脇に隙間部109aを形成する。隙間部109aにおいては、この下部のエミッタ層103およびコレクタ層108の上面を露出させる。このように隙間を形成することで、前述したように、HBTのブレークダウン電圧を上げることができる。この隙間の量は、所望とする特性に合わせて適宜に設定すればよい。
【0040】
次に、開口206aの形成に用いたフォトレジストのパターン(不図示)を除去した後、図2Kに示すように、隙間部109aに露出させたエミッタ層103およびコレクタ層108の上面に、Feをドープすることで半絶縁性とされたInPをエピタキシャル成長させ、第1分離層106aおよび第2分離層106bを形成する。
【0041】
このエピタキシャル成長では、窒化シリコンからなる絶縁層206および被覆パターン206bの上にはInPが成長しないので、露出しているエミッタ層103およびコレクタ層108の上面に選択的に第1分離層106aおよび第2分離層106bが形成できる。第1分離層106aは、エミッタコンタクト層104とベース層105の形成位置との間のエミッタ層103の上に接して配置される。また、第2分離層106bは、コレクタコンタクト層109とベース層105の形成位置との間のコレクタ層108の上に接して配置される。
【0042】
次に、開口206aに対応する開口を備えたフォトレジストのパターン(不図示)を形成し、このパターンマスクとした窒化シリコンのエッチングを行うことで、被覆パターン206bを除去し、図2Lに示すように、ベース層105の上面を露出させる。次に、図示しないフォトレジストのパターンを除去した後、ベース層105の上にp型のドーパントを高濃度にドーピングしたp+−InGaAsをエピタキシャル成長し、図2Mに示すように、ベースコンタクト層107を形成する。ベースコンタクト層107は、第1分離層106aおよび第2分離層106bに挟まれた領域を介してベース層105に接し、第1分離層106aおよび第2分離層106bの上に配置される。
【0043】
次に、図2Nに示すように、一部のエミッタコンタクト層104および一部のコレクタコンタクト層109の表面が露出するように絶縁層206に開口部を形成し、ここに、エミッタ電極110およびコレクタ電極111を形成する。例えば、フォトレジストパターンを用いた選択的なエッチングにより絶縁層206に開口部を形成し、この開口部に電極用の金属を堆積することで、エミッタ電極110が形成できる。同様に、コレクタ電極111を形成しようとする箇所に開口を有するレジストパターンを形成し、この開口に電極用の金属を堆積することで、コレクタ電極111が形成できる。また、ベースコンタクト層107の上に上述同様に電極用の金属を堆積することで、ベース電極112が形成できる。
【0044】
次に、エミッタ、ベース,およびコレクタとする領域以外の領域(素子領域)が開放(開口)したフォトレジストパターンを用いた選択的なエッチングにより、図2Nに示すように、素子領域以外の基板101の表面を露出させて素子間分離を行う。この後、図2Oに示すように、全域にパシベーション膜207を形成する。パシベーション膜207は、例えば、有機樹脂からなる絶縁材料であるBCB(Benzo Cyclo Butene:ベンゾシクロブテン)をスピンコーティングで塗布することで形成すればよい。
【0045】
以上に説明したように、本発明では、エミッタ,ベース,コレクタの各領域を、基板平面方向の横方向に配置したので、縦型のHBTが有していた課題を解決し、トランジスタと配線およびパッシブ素子との接続が容易となり、歩留まりと再現性に優れた集積回路の製造ができるようになる。
【0046】
また、本発明によれば、HBTの接合部の寸法は、各層の層厚により規定されるので、容易に0.1μm以下にすることができる。例えば、接合部の平面方向の長さをフォトリソグラフィー技術で形成して0.5μmとすることができるので、エミッタ層厚を0.05μmとすれば、この場合、エミッタ接合面積を0.025μm2以下まで微細化することができる。
【0047】
また、本発明では、エミッタ領域を構成するInP半導体層,ベース領域を構成するInGaAs層,およびコレクタ領域を構成するInGaAs層の全てが、基板上にエピタキシャル成長したアンドープInP層の上に形成されているので、基板と不純物ドーピングされたInP,InGaAs半導体層界面近傍に発生する表面再結合リーク電流を抑制することが可能になり、特に素子寸法が微細化されたも信頼性に優れたHBTを実現できる。これにより高い電流増幅率を有し、高周波特性および素子寿命に優れたHBTから構成される低消費電力大規模集積回路を提供することができる。
【0048】
また、本発明では、エミッタコンタクト層およびコレクタコンタクト層をベース層より離間させているので、HBTのブレークダウン電圧を上げることができる。加えて、これらの隙間に露出するエミッタ層およびコレクタ層の表面は、半絶縁性のInPからなる第1分離層および第2分離層に接触して覆われているので、アンドープInP層(第1半導体層)の場合と同様に、エミッタ層およびコレクタ層の表面における表面再結合リーク電流が抑制できるようになる。
【0049】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。例えば、上述では、エミッタおよびコレクタとn型とし、ベースをp形としたが、これら導電型を入れ替えてもよいことはいうまでもない。また、各層の層厚は、所望とする特性に合わせて適宜に設定すればよい。
【符号の説明】
【0050】
101…基板、102…第1半導体層、103…エミッタ層、104…エミッタコンタクト層、105…ベース層、106a…第1分離層、106b…第2分離層、107…ベースコンタクト層、107a…引き出しベースコンタクト層、108…コレクタ層、109…コレクタコンタクト層、110…エミッタ電極、111…コレクタ電極、112…ベース電極、112a…ベース電極パッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半絶縁性のInPからなる基板の上に形成されたアンドープInPからなる第1半導体層と、
この第1半導体層の上に接して形成された第1導電型のInPからなるエミッタ層と、
前記第1半導体層の上に接して形成されたInGaAsからなるコレクタ層と、
前記第1半導体層の上に接して形成され、前記エミッタ層および前記コレクタ層に挟まれて配置された第2導電型のInGaAsからなるベース層と、
このベース層の形成位置より離間して前記エミッタ層の上に接して形成された第1導電型のInGaAsからなるエミッタコンタクト層と、
前記ベース層の形成位置より離間して前記コレクタ層の上に接して形成された第1導電型のInGaAsからなるコレクタコンタクト層と、
前記エミッタコンタクト層と前記ベース層の形成位置との間の前記エミッタ層の上に接して形成された半絶縁性のInPからなる第1分離層と、
前記コレクタコンタクト層と前記ベース層の形成位置との間の前記コレクタ層の上に接して形成された半絶縁性のInPからなる第2分離層と、
前記第1分離層および前記第2分離層に挟まれた領域を介して前記ベース層に接し、前記第1分離層および前記第2分離層の上に形成された第2導電型のInGaAsからなるベースコンタクト層と、
前記エミッタコンタクト層に接続するエミッタ電極と、
前記コレクタコンタクト層に接続するコレクタ電極と、
前記ベースコンタクト層に接続するベース電極と
を少なくとも備え、
前記エミッタ層,前記ベース層,および前記コレクタ層は、この順に前記第1半導体層の平面上で配列して接続されている
ことを特徴とするバイポーラトランジスタ。
【請求項2】
半絶縁性のInPからなる基板の上に、アンドープInPからなる第1半導体層を形成する第1工程と、
前記第1半導体層の上に接して第1導電型のInPからなる第2半導体層を形成し、引き続いて前記第2半導体層の上に接して第1導電型のInGaAsからなる第3半導体層を形成する第2工程と、
前記第2半導体層および前記第3半導体層をパターニングしてエミッタ層およびエミッタコンタクト層を形成する第3工程と、
前記エミッタ層以外の領域の前記第1半導体層の上に接し、前記基板の平面方向に前記エミッタ層に連続して第2導電型のInGaAsからなる第4半導体層を形成する第4工程と、
前記エミッタコンタクト層の上および前記第4半導体層の一部領域の上部にかけて連続して形成したマスクパターンをマスクとして前記第4半導体層を選択的にエッチングして前記第1半導体層の表面を露出させ、前記基板の平面方向に前記エミッタ層に接続するベース層を、前記第1半導体層の上に接して形成する第5工程と、
前記マスクパターン以外の前記第1半導体層が露出している領域に接し、InGaAsからなるコレクタ層を前記ベース層に連続して形成する第6工程と、
前記コレクタ層の上に第1導電型のInGaAsからなるコレクタコンタクト層を形成する第7工程と、
前記ベース層側の一部の前記エミッタコンタクト層および一部の前記コレクタコンタクト層を除去する第8工程と、
前記エミッタコンタクト層と前記ベース層の形成位置との間の前記エミッタ層の上に接して配置される半絶縁性のInPからなる第1分離層、および前記コレクタコンタクト層と前記ベース層の形成位置との間の前記コレクタ層の上に接して配置される半絶縁性のInPからなる第2分離層を形成する第9工程と、
前記第1分離層および前記第2分離層に挟まれた領域を介して前記ベース層に接し、前記第1分離層および前記第2分離層の上に配置される第2導電型のInGaAsからなるベースコンタクト層を形成する第10工程と、
前記エミッタコンタクト層に接続するエミッタ電極,前記コレクタコンタクト層に接続するコレクタ電極,および前記ベースコンタクト層に接続するベース電極を形成する第11工程と
を少なくとも備えることを特徴とするバイポーラトランジスタの製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図2J】
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【図2K】
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【図2L】
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【図2M】
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【図2N】
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【図2O】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−176214(P2011−176214A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40335(P2010−40335)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】