バイポーラ電池
【課題】電解質層に高分子ゲル電解質や液体電解質を用いてなるバイポーラ電池において、電解質部分からの電解液の染み出しによる液絡(短絡)を防止し、信頼性の高いバイポーラ電池を提供する。
【解決手段】集電体1の一方の面に正極が形成され、他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極5を、電解質層4を挟んで複数枚直列に積層したバイポーラ電池において、前記電解質層4を保持するセパレータ4aと、前記セパレータ4aの電解質を保持させた部分の外周部に成型配置されたシール用の樹脂4bと、を備えるバイポーラ電池。
【解決手段】集電体1の一方の面に正極が形成され、他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極5を、電解質層4を挟んで複数枚直列に積層したバイポーラ電池において、前記電解質層4を保持するセパレータ4aと、前記セパレータ4aの電解質を保持させた部分の外周部に成型配置されたシール用の樹脂4bと、を備えるバイポーラ電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極と負極とが集電体の両側に配置されてなるバイポーラ電池に関し、より詳しくは、高分子固体電解質に比してイオン伝導度に優れた高分子ゲル電解質を用いてなるバイポーラ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護のため二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車などの導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が鋭意行われている。二次電池としては、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウムイオン二次電池に注目が集まっている。ただし、上記したような各種自動車のモータ駆動用電源に適用するためには、大出力を確保するために、複数の二次電池を直列に接続して用いる必要がある。
【0003】
しかしながら、接続部を介して電池を接続した場合、接続部の電気抵抗によって出力が低下してしまう。また、接続部を有する電池は空間的にも不利益を有する。即ち、接続部によって、電池の出力密度やエネルギー密度の低下がもたらされる。
【0004】
この問題を解決するものとして、集電体の両側に正極と負極とを配置したバイポーラ電池が開発されている。
【0005】
このうち、電解質層に溶液を含まない高分子固体電解質を用いてなるバイポーラ電池が提案されている(例えば、日本特開2000−100471号公報を参照)。これによれば、電池内に溶液(電解液)を含まないため、液漏れやガス発生の心配がなく、信頼性が高く、また構造的にも密閉シールが不要なバイポーラ電池を提供できるものである。しかしながら、高分子固体電解質のイオン伝導度は、高分子ゲル電解質と比べると低く、通常の使用環境では、電池の出力密度やエネルギー密度が十分でなく、実用化段階に至っていないのが現状であり、更なるイオン伝導度の向上が待たれている。
【0006】
一方、電解質層に電解液を含む高分子電解質を用いてなるバイポーラ電池が提案されている(例えば、日本特開2002−75455号公報及び日本特開平11−204136号公報を参照)。電解液を含む高分子電解質、即ち、高分子ゲル電解質を用いれば、イオン伝導度に優れ、電池の出力密度やエネルギー密度も十分に得られるため、実用化段階に最も近いバイポーラ電池として期待されている。
【発明の概要】
【0007】
しかしながら、電解質層に高分子ゲル電解質を用いてバイポーラ電池を構成しようとすると、電解質部分から電解液が染み出し、他の単電池層の電極や電解質層と接触し、液絡(短絡)するおそれがあった。
【0008】
したがって本発明が目的とするところは、電解質層に電解質を用いてなるバイポーラ電池において、該電解質部分からの電解液の染み出しによる液絡(短絡)を防止し、信頼性の高いバイポーラ電池を提供することである。
【0009】
本発明は、集電体の一方の面に正極が形成され、他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極を、電解質層を挟んで複数枚直列に積層したバイポーラ電池において、前記電解質層を保持するセパレータと、前記セパレータの電解質を保持させた部分の外周部に成型配置されたシール用の樹脂と、を備えることを特徴とするバイポーラ電池である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のバイポーラ電池を構成するバイポーラ電極の基本構造を模式的に表わした断面概略図である。
【図2】図2は、本発明のバイポーラ電池を構成する単電池層(単セル)の基本構造を模式的に表わした断面概略図である。
【図3】図3は、本発明のバイポーラ電池の基本構造を模式的に表わした断面概略図である。
【図4】図4は、本発明のバイポーラ電池の基本構成を模式的に表わしてなる概略図である。
【図5】図5は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータにシール部材を配置した電解質層の製造過程の様子を段階的に表わした平面概略図ないし断面概略図である。図5(A)は、製造前の電解質層の基材にあたる微多孔膜セパレータまたは不織布セパレータを表す平面概略図である。図5(B)は、セパレータの外周部にシール部を形成した段階の電解質層の製造過程の様子を模式的に表わした平面概略図である。図5(C)は、セパレータのシール部の内側にあたる中央部近傍にゲル電解質部を形成して電解質層を完成した様子を模式的に表わした平面概略図である。図5(D)は、図5(C)のD−D線に沿った断面概略図である。図5(E)は、図5(D)のシール部と異なるシール部を用いた場合の他の実施形態を表した断面概略図である。
【図6】図6は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータにゴム系シール部材を配置した電解質層の製造過程の様子を段階的に表わした平面概略図ないし断面概略図である。図6(A)は、製造前の電解質層の基材にあたる微多孔膜セパレータまたは不織布セパレータを表す平面概略図である。図6(B)は、セパレータの外周部に断面矩形のゴム系シール部を形成した段階の電解質層の製造過程の様子を模式的に表わした平面概略図である。図6(C)は、図6(B)で形成した断面矩形のゴム系シール部の内側にあたる中央部近傍にゲル電解質部を形成して電解質層を完成した様子を模式的に表わした平面概略図である。図6(D)は、図6(C)のD−D線に沿った断面概略図である。図6(E)は、セパレータの外周部に断面半円形ないし楕円形のゴム系シール部を形成した段階の電解質層の製造過程の様子を模式的に表わした平面概略図である。図6(F)は、図6(E)で形成した断面半円形ないし楕円形のゴム系シール部の内側にあたる中央部近傍にゲル電解質部を形成して電解質層を完成した様子を模式的に表わした平面概略図である。図6(G)は、図6(F)のG−G線に沿った断面概略図である。
【図7】図7は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータのゴム系シール部の代表的な実施形態による加圧シールの過程を模式的に表わした平面概略図および断面概略図である。図7(A)は、セパレータに断面矩形のゴム系シール部を配置した電解質層とバイポーラ電極を積層した様子を模式的に表した断面概略図である。図7(B)は、セパレータに矩形断面のゴム系シール部を配置した電解質層とバイポーラ電極とを積層して電池積層体を形成後、該電池積層体の上下から該積層体全面を加圧し、該シール部を加圧変形して集電体と密着シールした様子を表した断面概略図である。図7(C)は、セパレータに断面半円形ないし楕円形のゴム系シール部を配置した電解質層とバイポーラ電極を積層した様子を模式的に表した断面概略図である。図7(D)は、セパレータに半円形ないし楕円形断面のゴム系シール部を配置した電解質層とバイポーラ電極とを積層して電池積層体を形成後、該電池積層体の上下から該積層体全面を加圧し、該シール部を加圧変形して集電体と密着シールした様子を表した断面概略図である。
【図8】図8は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータのゴム系シール部の代表的な他の実施形態による加圧シールの過程を模式的に表わした断面概略図である。図8(A)は、セパレータに矩形断面のゴム系シール部を配置した電解質層とバイポーラ電極とを積層し外装材に封入して電池を形成後、該電池を上下から押さえる部材を用いて電池の上下から電池を加圧し、該シール部を加圧変形して集電体と密着シールした様子を表す断面概略図である。図8(B)は、セパレータに半円形・楕円形断面のゴム系シール部を配置した電解質層とバイポーラ電極とを積層し外装材に封入して電池を形成後、電池を上下から押さえる部材を用いて電池の上下から電池を加圧し、該シール部を加圧変形して集電体と密着シールした様子を表す断面概略図である。
【図9】図9は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータに熱融着樹脂系シール部材を配置した電解質層の製造過程の様子を段階的に表わした平面概略図ないし断面概略図である。図9(A)は、製造前の電解質層の基材にあたる微多孔膜セパレータまたは不織布セパレータを表す平面概略図である。図9(B)は、セパレータの外周部に断面矩形の熱融着樹脂系シール部を形成した段階の電解質層の製造過程の様子を模式的に表わした平面概略図である。図9(C)は、図9(B)で形成した断面矩形の熱融着樹脂系シール部の内側にあたる中央部近傍にゲル電解質部を形成して電解質層を完成した様子を模式的に表わした平面概略図である。図9(D)は、図9(C)のD−D線に沿った断面概略図である。
【図10】図10は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータの熱融着樹脂系シール部の熱融着シールの過程を模式的に表わした断面概略図である。図10(A)は、セパレータに断面矩形の熱融着樹脂系シール部を配置した電解質層とバイポーラ電極を積層した様子を模式的に表した断面概略図である。図10(B)は、セパレータに矩形断面の熱融着樹脂系シール部を配置した電解質層とバイポーラ電極とを積層して電池積層体を形成後、該積層体の上下から該シール部を加熱加圧し、該シール部材を熱融着して集電体と密着シールした様子を表した断面概略図である。
【図11】図11は、本発明のバイポーラ電池に用いられる電解質層の基材に当たるセパレータを集電体よりも大きくしたものを用いて形成した電池積層体の様子を模式的に表した断面概略図である。図11(A)は、集電体よりも大きなセパレータを用いた電解質層とバイポーラ電極を積層し、該電解質層のゴム系シール部を加圧変形して密着シールさせた電極積層体の様子を模式的に表した断面概略図である。図11(B)は、集電体よりも大きなセパレータを用いた電解質層とバイポーラ電極を積層し、該電解質層の熱融着樹脂系シール部を熱融着して密着シールさせた電極積層体の様子を模式的に表した断面概略図である。
【図12】図12は、本発明のバイポーラ電池に用いられる電流取り出し用の電極を、シール部材を配置したセパレータのシール部よりも大きくしたものを用いて形成した電池積層体の様子を模式的に表した断面概略図である。図12(A)は、電流取り出し用の電極に強電タブを用いて、シール部材を配置したセパレータのシール部よりも大きくした電解質層とバイポーラ電極とを積層し、該シール部を加圧変形して集電体に密着シールしてなる電極積層体の様子を表した断面概略図である。図12(B)は、図12(A)の平面概略図である。
【図13】図13は、本発明に係るバイポーラ電池および/または組電池を駆動用電源として搭載した車両を模式的に表した概略図である。
【図14】図14は、従来の高分子ゲル電解質層を用いたバイポーラ電池の基本構造を模式的に表わしてなる断面概略図である。
【図15】図15は、高分子ゲル電解質層とバイポーラ電極を積層し、上記熱融着樹脂系シール部材を加熱加圧(熱融着)し密着(シール)してなる、電極積層体の他の実施形態の様子を模式的に表した断面概略図である。
【図16】図16は、図15に示す電極積層体を一層ずつシールして作製してなる電極−電解質層シール体の一実施形態の様子を模式的に表した断面概略図である。図16(A)は、電極積層体の中間層に用いる、バイポーラ電極を用いてなる電極−電解質層シール体の一実施形態の様子を模式的に表した断面概略図である。図16(B)は、電極積層体の正極側最外層に用いる、集電体の必要な片面のみに正極を配置した電極を用いてなる電極−電解質層シール体の一実施形態の様子を模式的に表した断面概略図である。図16(C)は、電極積層体の負極側最外層に用いる、集電体の必要な片面のみに負極を配置した電極を用いてなる電極−電解質層シール体の一実施形態の様子を模式的に表した断面概略図である。
【図17】図17は、高分子ゲル電解質層とバイポーラ電極を積層し、さらにバイポーラ電極の外周部に絶縁層をセパレータと一部重なるように別々に配置してなる電極積層体の様子を模式的に表した断面概略図である。
【図18】図18は、セパレータに高分子ゲル電解質が保持された高分子ゲル電解質層とシール部材を別々に設置してなる電極積層体の様子を模式的に表した断面概略図である(参考例)。
【図19】図19は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータに熱硬化樹脂系シール部材を配置した電解質層の製造過程の様子を段階的に表わした平面概略図ないし断面概略図である。図19(A)は、製造前の電解質層の基材にあたる微多孔膜セパレータまたは不織布セパレータを表す平面概略図である。図19(B)は、セパレータの外周部に断面矩形の熱硬化樹脂系シール部を形成した段階の電解質層の製造過程の様子を模式的に表わした平面概略図である。図19(C)は、図19(B)で形成した断面矩形の熱硬化樹脂系シール部の内側にあたる中央部近傍にゲル電解質部を形成して電解質層を完成した様子を模式的に表わした平面概略図である。図19(D)は、図19(C)のD−D線に沿った断面概略図である。図19(E)は、セパレータの外周部に断面半円形ないし楕円形の熱硬化樹脂系シール部を形成した段階の電解質層の製造過程の様子を模式的に表わした平面概略図である。図19(F)は、図19(E)で形成した断面半円形ないし楕円形の熱硬化樹脂系シール部の内側にあたる中央部近傍にゲル電解質部を形成して電解質層を完成した様子を模式的に表わした平面概略図である。図19(G)は、図19(F)のG−G線に沿った断面概略図である。
【図20】図20は、本発明のバイポーラ電池に用いられる電解質層に熱硬化樹脂系シール部を配置する際の製造過程の様子を表わした平面概略図ないし断面概略図である。図20(A)は、集電体の一方の面の中央部近傍に正極が形成され他方の面の中央部近傍に負極が形成されてなるバイポーラ電極の正極側ないし負極側の外周部の四辺に熱硬化可能なシール用樹脂が成型配置されてなる様子を模式的に表わした平面概略図である。図20(B)は、図20(A)のB−B線に沿った断面概略図である。
【図21】図21は、本発明のバイポーラ電池に用いられる集電体の一方の面の中央部近傍に正極が形成され他方の面の中央部近傍に負極が形成されてなるバイポーラ電極の正極側ないし負極側の外周部の四辺に熱硬化可能なシール樹脂を配置するとともに、集電体の正極側ないし負極側にゲル電解質を配置し、外周部の四辺に熱硬化可能なシール樹脂を配置したセパレータを積層する様子を模式的に表わした断面概略図である。
【図22】図22は、本発明のバイポーラ電池に用いられる電解質層に熱硬化樹脂系シール部を配置する際の製造過程の様子を表わした平面概略図ないし断面概略図である。図22(A)は、集電体の一方の面の中央部近傍に正極が形成され他方の面の中央部近傍に負極が形成されてなるバイポーラ電極の正極側ないし負極側の外周部の四辺に熱硬化可能なシール用樹脂が成型配置されてなる様子を模式的に表わした平面概略図である。図22(B)は、図22(A)のB−B線に沿った断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態につき、説明する。
【0012】
本発明に係るバイポーラ電池は、集電体の一方の面に正極が形成され、他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極を、電解質層を挟んで複数枚直列に積層したバイポーラ電池において、前記電解質層を保持するセパレータの電解質(例えば、高分子ゲル電解質や液体電解質(電解液)など)を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明では、電池製造時(電極積層時)に簡易に電解質シール部(電解質シール用の樹脂が成型配置されてなる部分)を形成することができ、電解質の漏れ出しによる液絡(短絡)を防ぐことができる。また、電解質層として、シール部を電解質(例えば、高分子ゲル電解質や液体電解質(電解液)など)を保持させた部分と一体で構成することにより、該電解質を保持させた部分とシール部の積層を同時に行うことができ、電池製造工程が大幅に簡略化される。その結果、製品のコスト低減を図ることもできる。すなわち、単電池層間の液絡(短絡)による自己放電を防止するために、単電池層間の外周囲に新たに絶縁層を形成して電解液に対するシール性を持たせることも考えられる。しかしながら、バイポーラ電池の構成及び製造工程が複雑化ないし煩雑化する。これに対し、本発明のバイポーラ電池は、特別な部材(絶縁層等)を設けなくとも、単電池層間の液絡を防止することができ、イオン伝導度に優れ、充放電特性などの電池特性に優れたコンパクトなバイポーラ電池を提供できる。また、セパレータの外周部にシール材としての機能を兼ね備えることにより、積層時の重なりがなくなり、いっそうの薄層化が可能となる。そのため、信頼性が高く、優れたエネルギー密度および出力密度を保持できており各種産業において有用な電力源となる。
【0014】
図1〜4に本発明のバイポーラ電池の基本構成の概略を説明する。図1には、バイポーラ電池を構成するバイポーラ電極の構造を模式的に表わした概略断面図を示し、図2には、バイポーラ電池を構成する単電池層の構造を模式的に表わした概略断面図を示し、図3には、バイポーラ電池の全体構造を模式的に表わした概略断面図を示し、図4には、バイポーラ電池内に複数積層された単電池層が直列に接続されてなることを(記号化して)概念的に表わした概略図を示す。
【0015】
図1に示したように、本発明のバイポーラ電池では、図1〜4に示したように、1枚の集電体1の片面に正極2を設け、もう一方の面に負極3を設けたバイポーラ電極5を、シール部4bを配置した電解質層4を挟み隣り合うバイポーラ電極5の電極2、3が対向するようになっている。すなわち、バイポーラ電池11では、集電体1の片方の面上に正極2を有し、他方の面上に負極3を有するバイポーラ電極5を、電解質層4を介して複数枚積層した構造の電極積層体(電池要素部)7からなるものである。また、電極積層体7の最上層と最下層の電極(電流取り出し用の電極)5a、5bは、集電体1に必要な片面のみの電極(正極2または負極3)を形成した構造としてもよい(図3参照のこと)。該電流取り出し用の電極5a、5bも、バイポーラ電極の1種とみることもできる。また、バイポーラ電池11では、最上層と最下層の電極の集電体1ないし強電タブ(図12参照)にそれぞれ正極および負極リード8、9が接合されている。
【0016】
バイポーラ電極の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。シート状電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できるのであれば、バイポーラ電極の積層回数を少なくしてもよい。
【0017】
また、バイポーラ電池11では、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電極積層体7部分を電池外装材10に減圧封入し、電極リード8、9を電池外装材10の外部に取り出した構造とするのがよい(図3、4参照のこと)。軽量化の観点からは、該外装材10に高分子−金属複合ラミネートフィルムを用い、その周辺部の一部または全部を熱融着にて接合することにより、電極積層体7を収納し減圧封入(密封)し、電極リード8、9を外装材10の外部に取り出した構成とするのが好ましい。このバイポーラ電池11の基本構成は、図4に示すように、複数積層した単電池層(単セル)6が直列に接続された構成ともいえるものである。なお、本発明のバイポーラ電池は、リチウムイオンの移動によって充放電が媒介されるバイポーラリチウムイオン二次電池に用いられる。ただし、電池特性の向上等の効果が得られるのであれば、他の種類の電池に適用することを妨げるものではない。
【0018】
従来の高分子ゲル電解質層を用いたバイポーラ電池では、図14に示すように、集電体1の片面に正極2を形成し、反対側の面に負極3を形成してバイポーラ電極5を形成し、それらを電解質層4を挟んで積層している。したがって、電解質層4を構成する高分子ゲル電解質中に含まれる電解液が染み出して、他の単電池層6の電解液と接触することで、短絡(液絡)をするおそれがあった。本発明のバイポーラ電池では、以下に図面を用いて説明するように、セパレータにシール部材を配置した電解質層を形成することにより、従来の問題点を解決し得たものである。即ち、電解質層の電解質(例えば、高分子ゲル電解質や液体電解質(電解液)など)を保持させた部分(更には、電極にも高分子ゲル電解質や液体電解質を保持させた場合には、当該高分子ゲル電解質や液体電解質を含む)に含まれる電解液は、その外周部のシール部4により移動が制限され、外部にまで染み出すのを効果的に防止できる。そのため、他の単電池層の電極や電解質層などと接触して内部ショート(液絡)することのない高い安全性を有する高品質のバイポーラ電池を提供することができるものである。ここで、図5(A)〜(E)は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータにシール部材を配置した電解質層(高分子ゲル電解質層を用いた例を示す)の製造過程の様子を段階的に表わした平面概略図ないし断面概略図である。さらに、以下に説明する図5以外の図面において、電解質層として図5と同様に高分子ゲル電解質層を用いた例を示す。しかしながら、本発明では、上記したように、セパレータに保持させる電解質は必ずしも高分子ゲル電解質である必要はなく、低コスト、高出力を考慮して液体電解質(電解液)を用いてもよい。さらには固体電解質であってもよい。
【0019】
図5に示すように、本発明のセパレータにシール部材を配置した高分子ゲル電解質層4では、まず、基材として、電解質層に用いるサイズに相当する不織布セパレータまたは微多孔膜セパレータ4aを用意する(図5(A)参照)。次に、このセパレータ4aの外周部にシール用の樹脂(溶液)を、例えば、矩形や半円形等の適当な型枠を用いて充填・注液したり、塗布や含浸するなどして所望の形状に成型配置する方法等の適当な方法にてシール部4bを成型配置する(図5(B)参照)。セパレータ4aの両面に形成されるシール部4bの厚さ(高さ)は、正極ないし負極厚さよりも厚くなるように成型しておく必要がある。これにより、バイポーラ電極5と電解質層4を積層した後、圧力ないし熱をかけて電解質層4のシール部4bを加圧変形ないし熱融着させてバイポーラ電極5の集電体1に密着(シール)させることで、各単電池層6間のシールを行うことができる(図7等参照)。
【0020】
次に、基材としてのセパレータ4aのシール部4bで囲われた内部(中心部近傍)に、ゲル電解質用原料スラリー(プレゲル溶液)を塗布、含浸等して物理架橋したり、更に重合して化学架橋する方法等、適当な方法にて高分子ゲル電解質を保持させた部分を形成する(図5(C)〜(E)参照)。これにより、セパレータ4aの中心部近傍に高分子ゲル電解質が保持され、該セパレータ4aの該ゲル電解質を保持させた部分(ゲル電解質部4c)の外周部にシール部4bとしてシール用樹脂が成型配置されてなる構造を有する電解質層4を製造することができる。
【0021】
セパレータ両面へのシール用の樹脂の成型配置の形態(シール部の配置形態)としては、バイポーラ電池内の単電池層間のシール効果を有効に発現することができるものであればよく、特に制限されるものではない。例えば、図5(D)に示す矩形断面、図5(E)に示す半円形断面ないし楕円形断面などが例示できるが、これらに制限されるものではない。
【0022】
また、上記シール用樹脂の成型配置により得られるシール部材(シール部)は、上記セパレータを貫通または前記セパレータの側面全周を覆っていることが望ましい。セパレータのゲル電解質部4cからの電解液の染み出しをより確実に防ぐことができるためである。特にセパレータに不織布セパレータを用いた場合、(1)シール用の樹脂をセパレータ内部に染み込ませて隙間をなくして成型し、シール部材(シール部4b2)がセパレータを貫通するように配置する必要がある(図5(D)、(E)参照)。あるいは(2)セパレータの側面全周(外側)まで覆うようにシール部材(シール部4b2)を配置する必要がある(図5(D)参照)。電解質層4のゲル電解質部4cからセパレータ内部を通ってセパレータの側面からの電解液の染みだしを防止する必要があるためである。不織布セパレータでは、微多孔膜セパレータに比べてセパレータ内部を通じて電解液がセパレータの側面から外部に染み出しやすいためである。なお、微多孔膜セパレータでは、孔が積層方向のみに形成されているので、セパレータ内部を通じて積層方向と直角つまり側面方向に電解液が移動し難いため、セパレータの上下両面にシール部4b1を配置するだけでもよいが、不織布セパレータと同様に、シール部4b2やシール部4b3を配置してもよい。いずれを採用するかは電池の使用目的や全体の構成により決定すればよい。例えば、電池内部にガスが発生するおそれがあるような場合には、シール部4b1を配置し、単電池層内部で発生したガスを該セパレータ内部を通じて外部に排出させることで、ガスによる電極剥離や電池性能の低下を防止することもできる。一方、予めガス発生防止処理された電極等を採用するような場合には、シール部4b1のほか、シール部4b2やシール部4b3を配置してシール効果をより一層強化してもよい。
【0023】
上記電解質層のゲル電解質を保持させた部分(ゲル電解質部4c)の厚さは、特に限定するものではない。コンパクトなバイポーラ電池を得るためには、電解質層としての機能が確保できる範囲で極力薄くすることが好ましい。かかる観点から、本発明の高分子ゲル電解質層の厚さは5〜200μm程度である。
【0024】
このゲル電解質部4cの厚さは、セパレータ4aの厚みと同等であってもよいし(図5(D)、(E)参照)、セパレータ4aの厚みよりも厚くなるように形成してもよい。セパレータ4aの厚みよりも厚くする場合には、プレゲル溶液を塗布・含浸し、重合硬化する操作を何回か繰り返して厚さを増やすようにすることができる。あるいは適当な厚み調整治具を用いて一度の操作で所定の厚みを得るようにしてもよいなど、特に制限されるべきものではない。
【0025】
上記シール用樹脂としては、加圧変形させることで集電体と密着(シール)を行うのに適したゴム系樹脂、または加熱加圧して熱融着させることで集電体と密着を行うのに適したオレフィン系樹脂などの熱融着可能な樹脂を好適に利用することができる。この他にも、本発明の作用効果を有効に発現できるものであれば、耐アルカリ性及びシール性を有する各種樹脂を用いることができる。
【0026】
本発明では、上記シール用の樹脂の一実施形態として、ゴム系樹脂を用いることが望ましい。ゴム系樹脂をセパレータの周辺外周部に成型して得られたゴム部品(ゴム系シール部材)を加圧変形させることで電解質のシール(電解液の染み出しを防止すること)ができるからである。特にゴム系樹脂を用いる実施形態では、電解質の漏れ出しによる液絡(短絡)をゴム系シール部材の弾性を利用して防ぐことができる。また、熱融着処理を行なう必要が無く電池製造工程が簡略化される点でも有利である。更に、ゴム系シール部材の弾性を利用しているので、振動・衝撃などにより反復的に電池が細かく捩じれたり変形を繰返すような環境下でも、当該電池の捩じれや変形に追従してゴム系シール部材も容易に捩じれや変形してシール効果を保持することもできる。
【0027】
上記ゴム系樹脂としては、バイポーラ電池の上記シール部材として、バイポーラ電池のあらゆる使用環境下にあっても、優れた電解質のシール(液の染み出しを防止)効果を発揮することができるものであれば特に制限されるものではない。好ましくは、シリコン系ゴム、フッ素系ゴム、オレフィン系ゴム、ニトリル系ゴムよりなる群から選択されるゴム系樹脂である。これらのゴム系樹脂では、特に優れた上記作用効果を奏することができるためである。更に、これらのゴム系樹脂は、シール性(液密性)、耐アルカリ性、耐薬品性、耐久性・耐候性、耐熱性などに優れ、使用環境下でもこれらの優れた性能、品質を劣化させずに長期間維持することができる。そのため高分子ゲル電解質から電解液が染み出すのを効果的に防止することができ、電解液の漏れ出しによる液絡(短絡)を長期にわたり防ぐことができるからである。ただし、これらに制限されるものではない。
【0028】
図6(A)〜(G)は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータにゴム系シール部材を配置した高分子ゲル電解質層の製造過程の様子を段階的に表わした平面概略図ないし断面概略図である。図6では、図5で説明した上記シール用の樹脂として、上記ゴム系樹脂を用いてシール部4bを形成した以外は、図5で説明したと同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、セパレータ両面へのシール用の樹脂の成型配置の形態(シール部の配置形態)として、図5(E)と同じ半円形断面ないし楕円形断面を有する高分子ゲル電解質層の製造過程の様子を図6(E)〜(G)に示している。これらについても、セパレータ4aの外周部にゴム系樹脂(シール用樹脂)の溶液を、半円形や半楕円形断面の型枠などを用いて充填・注液したり、塗布、含浸するなどして所望の形状に成型する方法等、適当な方法にてシール部4bを成型配置する(図6(E)参照)。セパレータ4aの両側に形成されるシール部4bの厚さ(高さ)は、電極(正極ないし負極)厚さよりも厚くなるように成型しておく必要がある。これにより、バイポーラ電極5と電解質層4を積層した後、圧力をかけて電解質層4のシール部4bを加圧変形させてバイポーラ電極5の集電体1に密着(シール)させることで、各単電池層6間のシールを行うことができる(図7、8参照)。
【0029】
次に、セパレータ4aのシール部4bで囲われた内部(中心部近傍)に、プレゲル溶液を塗布、含浸等して物理架橋したり、更に重合して化学架橋する方法等、適当な方法にて電解質部4cを形成する(図6(F)、(G)参照)。これにより、セパレータ4aの中心部近傍に高分子ゲル電解質が保持され、同一のセパレータ4aのゲル電解質部4cの外周部にシール部4bとしてシール用のゴム系樹脂が成型配置されてなる構造を有する電解質層4を製造することができる。
【0030】
図7(A)〜(D)は、高分子ゲル電解質層とバイポーラ電極を積層し、上記ゴム系シール部材を加圧しシールする様子を模式的に表した断面概略図である。
【0031】
図7(A)、(C)に示すように、高分子ゲル電解質層4とバイポーラ電極5を積層する。この際、セパレータ4aの両面に成型された矩形断面ないし半円形断面のシール部4bの厚さ(高さ)は、正極ないし負極厚さよりも厚くなるように成型されている。そこで、図7(B)、(D)に示すように、バイポーラ電極5と電解質層4を積層後に、電極積層体7の上下から該電極積層体7に圧力をかけて、電解質層4のシール部4bを加圧変形させてバイポーラ電極5の集電体1に密着(シール)させる必要がある。本実施形態では、加圧の際に更に熱を加えて、該シール部材を加圧変形させた状態で熱融着させて集電体1に強固に結合(接着ないし融着)させる。これにより、電極積層体7を外部から常に加圧された状態に置く必要がなく、加圧のための部材などが不要になる点で優れている。
【0032】
また、バイポーラ電極5と電解質層4を複数積層して電極積層体7を組み上げ、これを外装材に封入した後の電池1を、該電池の上下から電池に圧力をかけて、電解質層4のシール部4bを加圧変形させてバイポーラ電極5の集電体1に密着させてもよい。例えば、図8(A)、(B)に示すように、電池を上下から押さえるための部材、例えば、電池を上下から厚さ3mm程度の鉄板(挟持板)12で挟み、該鉄板12をボルト13a、ナット13bで締め付けて押さえるようにしてもよい。これによっても、該電池1の上下から電池を加圧し、電解質層4のシール部4bを加圧変形させてバイポーラ電極5の集電体1に密着(シール)させることができ、各単電池層6間のシールを行うことができる。
【0033】
図7、8のいずれの形態にせよ、加圧個所は、シール部材が配置されているところだけ、またはシール部材が配置されている部分を含む電極積層体7または電池全体でもよい。
【0034】
本発明では、上記シール用樹脂の他の一実施形態として、ゴム系樹脂以外にも、熱融着可能な樹脂を用いることもできる。こうした熱融着可能なシール用樹脂をセパレータの周辺外周部に成型して得られた熱融着樹脂部品(熱融着樹脂系シール部材)を集電体と熱融着することで電解質のシール(液の染み出しを防止すること)ができるからである。特に、電解液の漏れ出しによる液絡(短絡)を集電体との熱融着シールにより防ぐことができるので、熱融着時の加圧が不十分な場合でも、熱融着による接着さえ十分に行われていれば液絡を防止できる。
【0035】
上記ゴム系樹脂以外の熱融着可能な樹脂としては、上記シール部材としてバイポーラ電池のあらゆる使用環境下にて、優れたシール(電解液の染み出しを防止)効果を発揮することができるものであれば特に制限されるものではない。好ましくは、シリコン、エポキシ、ウレタン、ポリブタジエン、オレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレンなど)、パラフィンワックスよりなる群から選択される樹脂である。これらの樹脂では、特に優れた上記作用効果を奏することができるためである。更に、これらの樹脂は、シール性(液密性)、耐アルカリ性、耐薬品性、耐久性・耐候性、耐熱性などに優れ、使用環境下でもこれらの優れた性能、品質を劣化させずに長期間維持することができる。そのため高分子ゲル電解質から電解液が染み出すのを効果的に防止することができ、電解液の漏れ出しによる液絡(短絡)を長期にわたり防ぐことができるからである。ただし、これらに制限されるものではない。より好ましくは、集電体との接着性を向上させた樹脂が好ましく、例えば、変性ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0036】
図9(A)〜(D)は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータに熱融着樹脂系シール部材を配置した高分子ゲル電解質層の製造過程の様子を段階的に表わした平面概略図ないし断面概略図である。図9では、図5で説明したシール用の樹脂として、上記熱融着可能な樹脂を用いてシール部4bを形成した以外は、図5で説明したと同様である。
【0037】
図9に示すように、セパレータに熱融着樹脂系シール部材を配置した高分子ゲル電解質層4では、まず、該電解質層に用いるサイズに相当する不織布セパレータまたは微多孔膜セパレータ4aを用意する(図9(A)参照)。次に、このセパレータ4aの外周部にシール用の樹脂として熱融着可能な樹脂(溶液)を、矩形等の適当な型枠を用いて充填・注液したり、塗布、含浸するなどして所望の形状に成型配置する方法等、適当な方法にてシール部4bを成型配置する(図5(B)参照)。本実施形態でも、図6(E)〜(G)と同様にして、半円形ないし半楕円形断面のシール部4bも適用可能である。熱融着による集電体との接着面積をより広く確保し、シール効果を高める観点からは、図9に示す矩形断面のシール部4bの方が望ましい。なお、上記熱融着可能な樹脂を用いてシール部4bを成型する段階では、該熱融着可能な樹脂が熱融着を起こさない条件で成型してもよいし、熱融着させて成型してもよい。セパレータ4aの両側に形成されるシール部4bの厚さ(高さ)は、電極(正極ないし負極)厚さよりも厚くなるように成型しておく必要がある。これにより、バイポーラ電極5と電解質層4を積層した後、加熱及び加圧して電解質層4のシール部4bを熱融着させてバイポーラ電極5の集電体1に密着させることで、各単電池層6間のシールを行うことができる(図10(A)、(B)参照)。あるいはバイポーラ電極5と電解質層4を1層(ないし2〜3層)ずつ積層するごとに、加熱及び加圧して電解質層4のシール部4bを熱融着させてバイポーラ電極5の集電体1に密着させる操作を繰り返すことで電池の各単電池層6間のシールをより確実に行うこともできる。
【0038】
次に、セパレータ4aのシール部4bで囲われた内部(中心部近傍)に、プレゲル溶液を塗布、含浸等して物理架橋したり、更に重合して化学架橋する方法等、適当な方法にてゲル電解質部4cを形成する(図9(C)、(D)参照)。これにより、セパレータ4aの中心部近傍に高分子ゲル電解質が保持され、同一のセパレータ4aのゲル電解質部4cの外周部にシール部4bとしてシール用の熱融着可能な樹脂が成型配置されてなる構造を有する電解質層4を製造することができる。
【0039】
図10(A)、(B)は、高分子ゲル電解質層とバイポーラ電極を積層し、上記熱融着樹脂系シール部材を加熱加圧(熱融着)しシールする様子を模式的に表した断面概略図である。
【0040】
図10(A)に示すように、高分子ゲル電解質層4とバイポーラ電極5を積層する。この際、セパレータ4aの両面に成型されたシール部4bの厚さ(高さ)は、電極(正極2ないし負極3)厚さよりも厚くなるように成型されている。そこで、図10(B)に示すように、バイポーラ電極5と電解質層4を積層後に、電極積層体7の上下から該電極積層体7に熱及び圧力をかけて、電解質層4のシール部4bを加熱加圧して熱融着させてバイポーラ電極5の集電体1に密着させる必要がある。加熱加圧の際には、該シール部材を加圧しながら熱を加えて熱融着させ、集電体1に強固に結合(接着ないし融着)させるのが望ましい。これにより、図8のように電池を加圧し、シール部を常に加圧変形した状態に置く必要がなく、加圧のための部材12、13等が不要になる点で優れている。なお、加熱する際の温度条件としては、熱融着可能な樹脂の熱融着温度よりも高い温度であって他の電池部品に影響を及ぼさない範囲の温度であればよく、熱融着可能な樹脂の種類に応じて適宜決定すればよい。例えば、変性ポリプロピレン等では、200℃程度が好適であるが、これに制限されるものではない。
【0041】
熱融着樹脂系シール部材を用いた上記実施形態でも、加熱加圧する個所は、図10(B)に示すようにシール部材が配置されているところだけでもよいし、シール部材が配置されている部分を含む電極積層体7または電池全体でもよい。更に、加熱によるシール部材以外の電池部品への影響を考慮すれば、加熱加圧する個所は、シール部材が配置されているところだけとし、シール部材が配置されている部分以外の電極積層体7または電池部分については、加圧のみ行うようにするのが望ましい。これは、図7に示すゴム系シール部の加圧シール形態でも同様である。
【0042】
シール部材にはシリカなどのセラミック、無機酸化物が分散されていることが望ましい。これらの材料が分散されていると樹脂に進入した水分を吸着することができ長期間に渡っての水分の浸入の防止が期待できる。
【0043】
上記セパレータの大きさは、セパレータ機能を有効に発現し得る大きさであれば特に制限されるものではない。例えば、図7(B)、図8(A)、(B)、図10(B)に示すように、正極および負極が形成された集電体の大きさとほぼ同等の大きさのものを利用できる。
【0044】
更に、セパレータの大きさの好適な実施形態を図面を用いて説明する。図11(A)は、高分子ゲル電解質層とバイポーラ電極を積層し、上記ゴム系シール部材を加圧し密着(シール)してなる電極積層体の様子を模式的に表した断面概略図である。図11(B)には、高分子ゲル電解質層とバイポーラ電極を積層し、上記熱融着樹脂系シール部材を加熱加圧(熱融着)し密着(シール)してなる電極積層体の一実施形態の様子を模式的に表した断面概略図である。
【0045】
図11(A)、(B)に示すように、上記高分子ゲル電解質が保持され、同一のセパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されたセパレータは、正極2および負極3が形成された集電体1よりも大きいことが望ましい。ゴム系シール部材によりシールを行う際の加圧や熱融着樹脂系シール部材による熱融着の際の加圧により隣接する集電体同士が接触する可能性がある場合には、適当な絶縁部材を追加する必要がある。しかしながら、セパレータを集電体よりも大きくすることで他の絶縁部材を追加することなく接触による内部ショートを防止することが可能となる。
【0046】
セパレータを集電体よりも大きくする場合、該セパレータの大きさ(図11(A)、(B)に示す長さ「X」)を集電体1の外周縁部(周辺部)よりも1mm〜10mm程度、好ましくは3mm〜5mmの大きくするのが望ましい。隣接する集電体同士が接触するのを効果的に防止することができるためである。上記に規定するセパレータの大きさ(長さX)は、図11(A)、(B)に示すように、積層方向に隣接したセパレータ同士を接着させない実施形態において有効である。
【0047】
図11Aでは、ゴム系シール部材の弾性によるシール効果が有効に機能するように、正極2および負極3が形成された部分の外周部の集電体1間に密着してゴム系シール部4b’が配置されている。さらにゴム系シール部4b’の外周部には、高分子ゲル電解質を保持せず、尚且つ絶縁性を有するセパレータ4aが、集電体1よりも大きいため該集電体1の外側にはみ出す構造となっている。これにより、電池積層体7を外装材10で減圧しながら封止する際に、隣接する集電体1の外周縁部同士が密着するような負荷(外力)が加わっても、隣接する集電体1同士の接触による内部ショートを防止できる。
【0048】
同様に、図11(B)でも、熱融着樹脂系シール部材の熱融着によるシール効果が有効に機能するように、正極2および負極3が形成された部分の外周部の集電体1間に密着して熱融着樹脂系シール部4b”が配置されている。さらに熱融着樹脂系シール部4b”は、集電体1よりも大きいため、該熱融着樹脂系シール部4b”が、集電体1の外側まではみ出した構造となっている。これによっても、隣接する集電体1同士の接触による内部ショートを防止できる。
【0049】
更に、セパレータの大きさの好適な他の実施形態を図面を用いて説明する。図15は、高分子ゲル電解質層とバイポーラ電極を積層し、シール用の樹脂を形成したシール部材を加熱加圧(熱融着)し密着(シール)してなる、電極積層体の他の実施形態の様子を模式的に表した断面概略図である。図16(A)〜(C)は、バイポーラ電極(ないし最外層電極)と電解質層とを一層ずつ積層しシールして形成した電極−電解質層シール体の実施形態の様子を模式的に表した断面概略図である。図18は、高分子ゲル電解質層とシール材料を別々に設置してなる電極積層体の様子を模式的に表した断面概略図(参考図面)である。
【0050】
本発明では、セパレータを集電体よりも大きくする場合、さらに、図15に示すように、該セパレータ(電解質層4)の集電体1よりも大きい部分において積層方向に隣接した別のセパレータ(に形成したシール用の樹脂部分;シール部4b)と接着(シール)されているものであってもよい。かかる構成では、セパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分4cの外周部に形成したシール部4bが、下記(A)のシール部分と(B)のシール部分とを備えているものである。こうして、セパレータの外周部にシール材としての機能を兼ね備えることにより、他の実施形態と同様に積層時の重なりがなくなり、一層の薄層化が可能となる点において優れている。
【0051】
ここで、(A)のシール部分とは、正極2(ないし負極3)が形成された部分の外周部の集電体1と接着してシールされている部分(図15、16中のシール箇所;×印参照)である。当該(A)のシール部分である集電体1と接着してシールされている部分の長さ(図16(A)〜(C)に示す長さ「Y」)は、上記(A)のシール部分に適切なシール機能を備えさせることができるように、適宜決定するのが望ましい。上記(A)のシール部分に適切なシール機能を備えさせることで、隣接する集電体同士が接触するのを効果的に防止することができる。かかる要件については、本発明の他の実施形態においても上記範囲を満足するように設定するのが望ましい。上記要件を満足するように、集電体としては、必要な正極2(ないし負極3)面積を確保できる大きさであって、尚且つ正極2(ないし負極3)が形成された外周部の幅が、上記長さYを確保できるものとする必要がある。同様に、セパレータとしては、上記正極2(ないし負極3)面積に対応する電解質が保持された部分4cを確保し、その外周部にシール部4を形成すればよい。なお、セパレータの大きさは、下記(B)のシール部分に規定する長さZの要件を満足するように設定すればよい。
【0052】
上記(B)のシール部分は、セパレータ(電解質層4)の集電体1よりも大きい部分において積層方向に隣接した別のセパレータに形成したシール部4bを接着してシールされている部分(図15中のシール箇所;●印参照)である。該セパレータの大きさ(図16(A)〜(C)に示す長さ「Z」)は、上記(B)のシール部分に適切なシール機能を備えさせることができるように、集電体1の外周縁部(周辺部)よりも所定量大きくするのが望ましい。セパレータの大きさ(図16(A)〜(C)に示す長さ「Z」)を集電体1の外周縁部(周辺部)よりも大きくすることで、隣接する集電体同士が接触するのを効果的に防止し、尚且つ集電体1よりも大きい部分において積層方向に隣接した別のセパレータに成型配置したシール部4bをより確実に接着(シール)することができる。なお、かかる(B)のシール部分は、一層ごと接着(シール)していってもよいし、一度にこれらシール部分4bを上下から接着(シール)しても良いなど特に制限されるものではない。
【0053】
さらに、図18に示すように、高分子ゲル電解質層4と矩形枠型のシール材料18を別々に設置しようとすると、積層時の重なり部分(図18の丸で囲った部分参照)が薄層化の妨げになるという問題がある。また、セルの平面度を下げる要因にもなる。一方、本発明では、本実施形態に限らず、セパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分4cの外周部にシール用の樹脂(シール部4b)が一体となって形成された構成であることから、セパレータの外周部がシール部材として有効かつ効果的に機能することができる。そのため、図18のような電解質層4c(ないしセパレータ)とシール材料との重なりもなく、セルの平面度を損なうことなく、薄層化が可能である点でも優れている。
【0054】
かかる構成は、図16(A)に示すように、バイポーラ電極5を、セパレータに高分子ゲル電解質が保持された電解質層4を介して複数枚積層した構造の電極積層体(電池要素部)を作製する段階において、一層ずつ行うのが望ましい。詳しくは、1つのバイポーラ電極5の正極2側(または負極3側)に1つの電解質層4を積層する。次に、バイポーラ電極5の正極2(または負極3)が形成されていない周縁部の集電体1部分に、電解質層4の外周部に形成したシール部4bの一部を、上下から図の矢印の方向に一層ずつ加熱シールして(図16(A)のシール個所(×印)参照)、電極−電解質層シール体17を形成する。続いて、図15に示すように、得られた電極−電解質層シール体17を複数積層して、最後に最外周にて上下から図の矢印の方向にシール部4b同士を加熱シールすることにより(図15のシール個所(●印)参照)、電極積層体7が得られる。
【0055】
この際、電極積層体7の最外層には、図16(B)、(C)に示すように、集電体1に必要な片面のみの電極を形成した最外層電極5a、5bに、電解質層4外周部のシール部4bをシールした電極−電解質層シール体17a、17bを用いるのが好ましい。このうち、図16(B)に示す正極側最外層に用いる電極−電解質層シール体17aでは、集電体1の片面に正極2を配置した電極5aの当該正極側に電解質層4を積層する。次に、該電極5aの正極2が形成されていない正極側周縁部の集電体1部分に、電解質層4外周部のシール部4bの一部を、図中の矢印で示すように上下から加熱加圧してシール(密着)することで電極−電解質層シール体17aを得ることができる。一方、図16(C)に示す負極側最外層に用いる電極−電解質層シール体17bでは、集電体1の片面のみに負極3を配置した電極5bの負極を形成してないもう一方の面に、シール部材4bを積層する。次に、該電極5bの負極を形成してないもう一方の面の周縁部集電体1部分に、シール部材4bを、図中の矢印で示すように上下から加熱加圧してシール(密着)することで電極−電解質層シール体17bを得ることができる。このシール部材4bには、電解質層4のうち、中央部分の高分子ゲル電解質が保持された部分4cを持たないもの(取り除いたもの)を用いることができる。このシール部材4bは、例えば、矩形枠型のセパレータ全体にシール用の樹脂を成型配置するなどして作製することができるが、かかる方法に何ら制限されるものではない。
【0056】
また、図15のセパレータ(電解質層4)の外周部のシール部4bでは、当該外周部にシール用の樹脂(熱融着樹脂や接着剤等)を染み込ませ、セパレータの孔を塞ぐと共に、接着性(熱融着性)を付与し、セパレータの厚さとほとんど同じ厚さに形成してもよい。あるいは、シール部4bの厚さを、複数積層した際に、隣接する電極外周部の間に隙間が無くなる程度に厚く形成してもよい。
【0057】
なお、本実施形態でも、上述した図10(B)などに示す実施形態のように、複数積層した後に一度にこれら複数層の各シール部4bの上記(A)のシール部分を、上下より加熱・加圧して接着(シール)を行ってもよい。そして、その後に最外周にて各シール部4bの上記(B)のシール部分同士を一度に上下より加熱・加圧して接着(シール)してもよいなど、特に制限されるものではない。
【0058】
上記(A)のシール部分を一層ずつシールを行う場合には、複数積層した後に一度にこれら複数層の加熱シールを行う場合に比べてシール回数(加熱回数)は増えるものの、一層ずつ確実に集電体とセパレータのシール部材を接着できる点で優れている。即ち、一層ずつシールを行う方法では全ての層がより均一且つ確実にシールできる点で優れている。
【0059】
一方、上記(A)のシール部分を、複数積層した後に一度にこれら複数層の加熱シールを行う場合でも、複数層の中央部分のシール部材が十分に溶融して集電体に接着シールしたのを確認して加熱操作を終えるようにすればよい。さらに、複数積層した後で全ての層をより均一且つ確実にシールするには、セパレータのシール部材を以下のような構成とすることがより望ましい。即ち、図10(B)に示すように、複数積層した両側の最外層から加熱・加圧してシールを行う場合には、最外層側から中央部分に向けた温度勾配が形成される。そのため、最外層部分のシール部材が溶融しても、中央部分のシール部材は十分に溶融されていないおそれがある。そこで、最外層側から中央部分に向けて融点が低くなるように異なるシール用の樹脂を用いて、最外層側から中央部分まで略同じタイミングで一様に溶融されるように設計するのが望ましい。この際には、充放電時の電池温度の上昇などを勘案して、こうした高温環境下でシール用の樹脂が軟化、溶融してシール性を損なわないように、シール用の樹脂を適宜選択する必要がある。
【0060】
なお、図15に示す本実施形態でも、電解質層4の構造及び製造方法に関しては、先に図5、図6、図9等を用いて説明したと同様である。但し、本実施形態では、電解質層4のシール部4bが、上記(A)のシール部分と、上記(B)のシール部分を備えていることから、該シール部4bをセパレータの上下両面に一定の厚さを持って成型配置する必要は必ずしもない。例えば、(1)該シール部4bをセパレータの上下面のいずれか一方にのみ一定の厚さを持って成型配置してもよい。あるいは、(2)セパレータの外周部にシール用の樹脂(例えば、熱融着樹脂や接着剤等)を染み込ませ、セパレータの厚さとほとんど同じ厚さのままで、セパレータの孔を塞ぐと共に、接着性を付与するようにシール用の樹脂を成型配置することもできる。このようにしてセパレータの外周部にシール材料としての機能を兼ね備えることにより、積層時の重なりがなくなり、一層の薄層化が可能となる。
【0061】
セパレータの大きさの好適な更に他の実施形態を図面を用いて説明する。図17は、高分子ゲル電解質層とバイポーラ電極を積層し、さらにバイポーラ電極の外周部に絶縁層をセパレータと一部重なるように別々に配置してなる電極積層体の様子を模式的に表した断面概略図である。なお、図17のセパレータ(電解質層4)の外周部のシール部4bでは、当該外周部にシール用の樹脂(例えば、熱融着樹脂や接着剤等)を染み込ませ、セパレータの孔を塞ぐと共に、接着性(熱融着性)を付与し、セパレータの厚さとほとんど同じ厚さに形成した例を示している。
【0062】
本発明では、図17に示すように、セパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分4cの面積が、少なくともいずれか一方の電極(正極2または負極3)面積、好ましくは正極2の面積より小さくなるようにシール用の樹脂が成型配置されていてもよい。
【0063】
かかる構成では、構造上、図17に示すように、シール部4bが正極2(または負極3)の上まで掛かっており、上記したような本発明の作用効果に加えて、電極活物質のない部分の副反応(集電体1の溶解など)が抑制されるというメリットがある。なお、シール部4bが正極2(または負極3)上に一部かかる事で、若干の容量低下というデメリットもあるが、下記に規定する長さWの要件を満足する範囲であれば、多くの用途で問題なく許容できる。特に自動車用途(例えば、駆動用電源)の場合、若干の容量低下は何ら問題なく許容できるものであり、こうした用途において特に有用な技術となり得る。
【0064】
該セパレータ(電解質層4)のシール部4bが、正極2(または負極3)上に掛かっている幅(図17に示す長さ「W」)は、上記副反応(集電体の溶解など)の抑制効果を有効に発現させることができるように適宜決定するのが望ましい。かかる長さWを設けることで、上記した若干の容量低下のデメリットを必要最小限に抑えた上で、副反応(集電体の溶解など)抑制効果を最大限に発揮させることができる。なお、本実施形態においても、上記(A)及び(B)のシール部分を備えることにより適切なシール機能が得られるように、図16(A)〜(C)に示す長さY及びZが上記に規定する範囲を満足するように設定するのが望ましい。
【0065】
即ち、従来のバイポーラ電池では、図14に示すように、隣接するバイポーラ電極5の、電極(正極2ないし負極3)が形成されていない部分の集電体1同士が対向して配置されている(セパレータを介していない部分もある)。そのため、電池の充放電の際に当該集電体1部分で副反応が生じ、集電体1が溶解するなどの問題があった。そこで、こうした問題の大きい、即ち副反応が生じやすい負極3側の集電体1上に、正極2側の集電体1上に形成する正極2よりも広めに負極3を形成することで、その問題を解消している。よって、正極2が形成されていない部分の正極側集電体1は、広めに形成された負極(負極活物質層)3と対向する構造となっている。上記問題を解消するための構成は、本発明においても有効であり、例えば、図15〜17に示すように、同様の構成をとり得るものである。なお、これらの図面以外は、こうした構成を特に図示していないが、本発明の他の実施形態においても必要に応じて適宜採用し得るものである。
【0066】
しかしながら、正極2が形成されていない部分の正極側集電体1は、上記のように対向する集電体1上に負極3を広めに形成していても、全く副反応が無いわけではない。そこで、本実施形態では、イオンを通さないシール層(セパレータのシール部4b)を正極2(ないし負極3)にかぶるようにすることにより、電極(正極2、負極3)が形成されていない部分の集電体1同士、あるいは正極2が形成されていない部分の集電体1と広めに形成された負極3とが対向するのを防止することができるものである。これにより、正極側及び負極側集電体1双方の副反応を効果的に防止することができる。特に、正極側集電体1での僅かな副反応についても効果的に防止することができるので、より一層の長寿命化が図れ、長期使用が強く切望されている自動車用途(例えば、駆動用電源)に用いるような場合に特に有用な技術となり得る。
【0067】
なお、本実施形態では、既に説明したとおりであるが、セパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分の面積は、正極面積より小さくなるようにシール用の樹脂が成型配置されているのが望ましい。
【0068】
一方、負極面積は、むしろ、セパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分の面積よりも大きくてもよい。図17などに示すように、集電体面積と同じにしてもよい。ただし、他の実施形態のように、隣接する集電体同士をシール部4bにより接着シールさせる場合には、これに必要な部分、例えば、図17に示す長さW分だけ負極が形成されていない外周部が形成されるようにするのが望ましい。
【0069】
また、図15、図17に示す実施形態では、シール部4として、熱融着樹脂系シール部4”を用いるのが望ましいといえる。
【0070】
また、図3、図7(B)、(D)、図8(A)、(B)、図10(B)、図11(A)、(B)、に示すように、電流取り出し用の電極、即ち電極積層体7の最上層と最下層の電極5a、5bの集電体1の上層ないし下層には、更に必要に応じて、電流取り出しに適した強電タブを設けてもよい。電流取り出しに適した強電タブとは、大電流を取り出すことができるように、集電体に比して十分な厚さがあるものなどが用いられている。さらに、電流取り出し用の電極の集電体または強電タブの大きさは、集電及び電流取り出し効果を有効に発現し得るものであれば特に制限されるものではない。例えば、図3、図7(B)、図8(B)、図10(B)に示すように、シール部材を配置したセパレータのシール部の外周縁部とほぼ同じ大きいものを用いてもよい。また図11(B)に示すように、シール部材を配置したセパレータのシール部の外周縁部よりも小さいものを用いてもよい。さらに、図7(D)、図8(A)、図11(A)に示すように、シール部材を配置したセパレータのシール部よりも大きいものを用いてもよい。
【0071】
特に、シール部に上記ゴム系シール部材を配置する場合での、電流取り出し用の電極の強電タブの大きさの好適な実施形態を図面を用いて説明する。図12(A)は、電流取り出し用の電極に電流取り出しに適した強電タブを設けたものを用いて、電解質層とバイポーラ電極(最上層と最下層の電極を含む)を積層し、ゴム系シール部材を加圧変形し集電体に密着してなる電極積層体の様子を模式的に表した断面概略図である。図12(B)は、図12(A)の平面概略図である。
【0072】
図12では、電流取り出し用の電極の強電タブ14が、シール部材を配置したセパレータのシール部4d’よりも大きいものを用いた構造となっている。このように、強電タブ14をゴム系シール部材を配置した電解質層(セパレータ)の当該ゴム系シール部4d’よりも大きく設定することで、より確実にゴム系シール部材を加圧できるようになる。即ち、圧力をかけてゴム系シール部を加圧変形させて集電体と密着させる場合、集電体1が薄いため剛性がなく、ゴム系シール部4’に十分な加圧が出来ないことがある。そこで、十分な剛性を持った強電タブ(大電流を取り出すため厚さがある)を、シール部材を配置したセパレータのシール部が配置されてある部分よりも大きく設定することで、より確実にゴムシール部材を加圧できるようになる。その結果、電解質膜の高分子ゲル電解質を保持させた部分(更に電極にも高分子ゲル電解質を保持させている場合には当該部分を含む)からの電解液の漏れ出しによる液絡(短絡)をより確実に防ぐことができる。
【0073】
電流取り出し用の電極(強電タブ14)として、シール部材を配置したセパレータのシール部4dよりも大きいものを用いる場合、該強電タブ14の大きさ(図12(A)に示す長さ「Y」)をシール部4dの外周縁部よりも1〜5mm大きくするのが望ましい。シール部4b全体を均等に加圧することができるためである。
【0074】
また、本発明の電解質層4を構成するセパレータ4aとしては、特に制限されるべきものではない。微多孔膜セパレータおよび不織布(ノンウーブンファブリック)セパレータのいずれも利用することができる。
【0075】
上記微多孔膜セパレータとしては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーからなる多孔性シート(例えば、ポリオレフィン系微多孔質セパレータなど)などを用いることができる。有機溶媒に対して化学的に安定であるという性質を持つ上記ポリオレフィン系微多孔質セパレータは、電解質(電解液)との反応性を低く抑えることができるという優れた効果を有するものである。
【0076】
該微多孔膜セパレータの材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PP/PE/PPの3層構造をした積層体、ポリイミドなどが挙げられる。
【0077】
上記微多孔膜セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできない。電気自動車(EV)や燃料電池自動車やこれらのハイブリッド車などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、電池の薄膜化の観点から、単層あるいは多層で1〜60μmであることが望ましい。微多孔膜セパレータの厚さが、かかる範囲にあることでセパレータに微粒が食い込むことによって発生する短絡の防止と、高出力のために電極間を狭くすることが望ましいという理由から、厚さ方向の機械的強度と高出力性の確保という効果がある。また電池を複数接続する場合には、電極面積が増大することから、電池の信頼性を高めるために上記範囲のなかでも厚形のセパレータを用いることが望ましい。
【0078】
上記微多孔膜セパレータの微細孔の径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。微多孔膜セパレータの微細孔の平均径が、上記範囲にあることで熱によって微多孔膜セパレータが溶融して微細孔が閉じる「シャットダウン現象」が速やかに起きるという理由から、異常時信頼性が上がり、その結果として耐熱性が向上するという効果がある。すなわち、過充電で電池温度が上昇していったとき(異常時)に、セパレータが溶融して微細孔が閉じる「シャットダウン現象」が速やかに起きることで、電池(電極)の正極(+)から負極(−)側にLiイオンが通れなくなり、それ以上は充電できなくなる。そのため過充電できなくなり、過充電が解消する。その結果、電池の耐熱性(安全性)が向上するほか、ガスがでて電池外装材の熱融着部(シール部)が開くのを防止できる。ここでセパレータの微細孔の平均径は、セパレータを走査電子顕微鏡等で観察し、その写真をイメージアナライザ等で統計的に処理した平均径として算出される。
【0079】
上記微多孔膜セパレータの空孔率は20〜50%であることが望ましい。微多孔膜セパレータの空孔率が、上記範囲にあることで電解質(電解液)の抵抗による出力低下の防止と、微粒がセパレータの空孔(微細孔)を貫くことによる短絡の防止という理由から出力と信頼性の両方を確保するという効果がある。ここで微多孔膜セパレータの空孔率とは、原材料レジンの密度と最終製品の微多孔膜セパレータの密度から体積比として求められる値である。
【0080】
上記微多孔膜セパレータへの電解質の含浸量は、微多孔膜セパレータの保持能力範囲まで含浸させればよいが、当該保持能力範囲を超えて含浸させてもよい。これは、電解質にシール部を設け、電解質層からの電解液の染み出しを防止できるため、該電解質層に保持できる範囲であれば含浸可能である。
【0081】
また、上記不織布セパレータとしても、セパレータ機能を有し、高分子ゲル電解質を保持させることができるものであれば特に制限されるべきものではなく、繊維を絡めてシート化することにより製造することができる。また、加熱によって繊維同士を融着することにより得られるスパンボンド等も用いることができる。すなわち、繊維を適当な方法でウェブ(薄綿)状またはマット状に配列させ、適当な接着剤あるいは繊維自身の融着力により接合して作ったシート状のものであればよい。上記接着剤としては、製造及び使用時の温度下で十分な耐熱性を有し、高分子ゲル電解質に対しても反応性や溶解性等がなく安定したものであれば、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用できる。また、使用繊維としては、特に制限されるものではなく、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを用いることができる。これらは、使用目的(電解質層に要求される機械強度など)に応じて、単独または混合して用いる。
【0082】
また、不織布セパレータのかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性を得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。すなわち、あまり不織布セパレータのかさ密度が大きすぎると、電解質層中の非電解質材料が占める割合が大きくなりすぎ、電解質層におけるイオン伝導度などを損なうおそれがあるためである。
【0083】
不織布セパレータの空孔率は30〜70%であることが好ましい。空孔率が30%未満では、電解質の保持性が悪化し、70%超では強度が不足する。
【0084】
さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層の高分子ゲル電解質を保持させた部分と同じであればよく、好ましくは5〜20μmであり、特に好ましくは5〜10μmである。厚さが5μm未満ではショート不良が増加電解質の保持性が悪化し、20μmを超える場合には抵抗が増大することになる。
【0085】
また、図5〜12では、説明の都合上、電解質層と同じサイズのセパレータを用いて説明している。しかしながら、実際の製造では、各種の印刷・塗布技術ないし薄膜形成技術を利用して、ロール状のセパレータを利用して、該セパレータ上に連続的にシール部を有する電解質層を形成するようにしてもよい。また、より大きなセパレータを用いて、一度に大量のシール部を有する電解質層を形成するようにしてもよい。このように、実際の製造では、各種量産化技術を適用することができる。
【0086】
また、電解質層4を構成するゲル電解質部4cに用いる高分子ゲル電解質としては、特に制限されるべきものではなく、従来の高分子ゲル電解質層に用いられているものを適宜利用することができる。ここで、高分子ゲル電解質とは、ポリマーマトリックス中に電解液を保持させたものをいう。具体的には、イオン伝導性を有する高分子(いわば、固体高分子電解質)に、通常リチウムイオン二次電池で用いられる電解液を含んだもの、さらにリチウムイオン伝導性を持たない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも含まれる。
【0087】
なお、本発明において、全固体高分子電解質(単に、高分子固体電解質ともいう)と、高分子ゲル電解質との違いは、以下のとおりである。
【0088】
1)ポリエチレンオキシド(PEO)などの全固体高分子電解質に、通常のリチウムイオン電池で用いられる電解液を含んだものが高分子ゲル電解質である。
【0089】
2)ポリふっ化ビニリデン(PVDF)など、リチウムイオン伝導性をもたない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも高分子ゲル電解質にあたる。
【0090】
3)高分子ゲル電解質を構成するポリマー(ホストポリマーないしポリマーマトリックス)と電解液の比率は幅広く、ポリマー100質量%を全固体高分子電解質、電解液100質量%を液体電解質とすると、その中間体はすべて高分子ゲル電解質にあたる。
【0091】
上記高分子ゲル電解質のポリマーマトリックスとしては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用することができる。好ましくは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリふっ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびそれらの共重合体が望ましく、溶媒には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびそれらの混合物が望ましい。
【0092】
このうち、イオン導伝性を有する高分子としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体のようなポリアルキレンオキシド系高分子などの公知の固体高分子電解質が挙げられる。PEO、PPOのようなポリアルキレンオキシド系高分子は、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2などのリチウム塩をよく溶解しうる。また、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度が発現する。
【0093】
上記リチウムイオン伝導性を持たない高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。なお、PAN、PMMAなどは、どちらかと言うとイオン伝導性がほとんどない部類に入るものであるため、上記イオン伝導性を有する高分子とすることもできる。ここでは高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン伝導性を持たない高分子として例示したものである。
【0094】
上記高分子ゲル電解質に含まれる電解液としては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用することができる。通常リチウムイオン電池で用いられるものであればよく、リチウム塩(電解質塩)と有機溶媒(可塑剤)とを含むものなどを用いることができる。具体的には、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiAlCl4、Li2B10Cl10、LiTFSI、LiFSI、LiBETI、LiBOB等の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種類のリチウム塩(電解質塩)を含み、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる少なくともから1種類または2種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の有機溶媒(可塑剤)を用いたものなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0095】
本発明における高分子ゲル電解質中の電解液の割合は、使用目的などに応じて決定すればよく、特に制限されるべきものではない。イオン伝導度などの観点から、数質量%〜98質量%の範囲で好適に利用可能である。ただし、かかる範囲に制限されるものではない。本発明では、電解液の割合が70質量%以上の、電解液が多い高分子ゲル電解質について、特に効果がある。かかる割合では、液体電解質タイプのリチウムイオン二次電池に近いイオン伝導性を有するなど優れた電池特性を発揮でき、電解液が多くてもセパレータにシール用の樹脂を成型配置することで高いシール性能を維持し、電解液の染み出しを効果的に防止できるためである。
【0096】
また、本発明では、高分子ゲル電解質に含まれる電解液の量は、ゲル電解質部で略均一になるようにしてもよいし、中心部から外周部に向けて傾斜的に少なくしていってもよい。前者は、より広範囲で反応性を得ることができるため好ましい。後者は、外周部のシール部のうち、セパレータを貫通したり、貫通または前記セパレータの側面全周を覆っているシール部4b2や4b3を設けていないような場合でも、電解液に対するシール性をより一層高めることができる点で好ましい。中心部から外周部に向けて傾斜的に少なくしていく場合には、上記ホストポリマーないしポリマーマトリックスには、リチウムイオン伝導性のあるポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびそれらの共重合体を用いることが望ましい。
【0097】
上記電解質層の中央近傍のゲル電解質部とその外周部のシール部との割合は、シール部の材料によっても異なるため一義的に決定することはできない。更にシール部では、隣接する集電体同士が接触して内部ショートするのを防止する効果をも持たせる場合などでは、該シール部を大きくする必要があり、こうした観点からも一義的に決定することはできない。したがって、シール部の幅は、上述した集電体との密着(シール)性や集電体同士の接触防止効果など、その使用目的に応じて、1mm〜10mmの範囲で適宜決定すればよい。
【0098】
また、本発明では、上記したように、セパレータに保持させる電解質は必ずしも高分子ゲル電解質である必要はなく、低コスト、高出力を考慮して液体電解質(電解液)を用いてもよい。さらには固体電解質であってもよい。該液体電解質(電解液)としては、上記高分子ゲル電解質で説明した電解液と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。同様に、固体電解質としては、高分子ゲル電解質で説明した全固体高分子電解質と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
【0099】
以上、本発明に係るバイポーラ電池の特徴部分の構成要素である、セパレータの電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されている電解質層を中心に説明したものである。本発明のバイポーラ電池の他の構成要素については、特に制限されるべきものではなく、従来公知のバイポーラ電池に幅広く適用可能である。
【0100】
以下、本発明のバイポーラ電池の構成要素ごとに簡単に説明するが、本発明がこれらに何ら制限されるべきものでないことは言うまでもない。
【0101】
[集電体]
本発明で用いることのできる集電体としては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを利用することができる。例えば、アルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく使える。また、金属表面に、アルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。また、場合によっては、2つ以上の金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、ステンレス箔を集電体として用いることが好ましい。
【0102】
さらに、本発明で用いることのできる集電体としては、製法上、スプレーコートなどの薄膜製造技術により、所望の形状に製膜して形成したものを利用することもできる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などの金属粉末を主成分として、これにバインダ(樹脂)、溶剤を含む集電体金属ペーストを加熱して成形してなるものである。これら金属粉末は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよいし、さらに、製法上の特徴を生かして金属粉末の種類の異なるものを多層に積層したものであってもよい。また、バイポーラ電池における集電体は積層方向のみに電流を流すため、集電体の抵抗値が金属に比べて高いものでも用いることができる。例えば導電性高分子を主成分とする導電性高分子膜もしくは高分子材料に導電性粒子を分散させた導電性高分子膜も利用することができ、シール材との密着性の観点からは好適である。
【0103】
上記バインダとしては、特に制限されるべきものではなく、たとえば、エポキシ樹脂など、従来公知の樹脂バインダ材料を用いることができるほか、導電性高分子材料を用いても良い。
【0104】
集電体の厚さは、特に限定されないが、通常は1〜100μm程度である。
【0105】
[正極(正極活物質層)]
正極は、正極活物質を含む。この他にも、電子伝導性を高めるための導電助剤、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩、バインダ、高分子ゲル電解質などが含まれ得る。
【0106】
このうち、正極活物質としては、特に制限されるものではなく、溶液タイプのリチウムイオン二次電池に使用可能なものを適宜利用することができる。好ましくは、容量、出力特性に優れた電池を構成できることから、遷移金属とリチウムとの複合酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物)である。具体的には、LiCoO2などのLi・Co系複合酸化物、LiNiO2などのLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMn2O4などのLi・Mn系複合酸化物、LiFeO2などのLi・Fe系複合酸化物などが挙げられる。この他、LiFePO4などの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V2O5、MnO2、TiS2、MoS2、MoO3などの遷移金属酸化物や硫化物;PbO2、AgO、NiOOHなどを用いることもできる。
【0107】
正極活物質の粒径は、バイポーラ電池の電極抵抗を低減するために、バイポーラタイプでない溶液(電解液)系のリチウムイオン二次電池で用いられる一般に用いられる粒径よも小さいものを使用するとよい。具体的には、正極活物質微粒子の平均粒径が0.1〜10μm、好ましくは0.1〜5μmであるとよい。
【0108】
上記電子伝導性を高めるための導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0109】
上記イオン伝導性を高めるためのリチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiAlCl4、Li2B10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N等の有機酸陰イオン塩、またはこれらの混合物などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0110】
上記バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0111】
上記高分子ゲル電解質については、高分子ゲル電解質層のゲル電解質部4cに用いられる高分子ゲル電解質として説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0112】
正極に含まれるゲル電解質中の電解液の割合は、使用目的などに応じて決定すればよく、数質量%〜98質量%の範囲で好適に利用可能である。ただし、かかる範囲に制限されるものではない。本発明は、電解液の割合が70質量%以上の電解液が多いゲル電解質について、特に効果がある。かかる割合では、液体電解質タイプのリチウムイオン二次電池に近いイオン伝導性を有するなど優れた電池特性を発揮でき、電解液が多くてもセパレータにシール用の樹脂を成型配置することで高いシール性能を維持し、電解液の染み出しを効果的に防止できるためである。
【0113】
正極における、正極活物質、導電助剤、バインダ、高分子ゲル電解質(ポリマーマトリックス、電解液など)等の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮して決定すべきである。例えば、正極内における高分子ゲル電解質の配合量が少なすぎると、正極内でのイオン伝導抵抗やイオン拡散抵抗が大きくなり、電池性能が低下してしまう。一方、正極内における高分子ゲル電解質の配合量が多すぎると、電池のエネルギー密度が低下してしまう。従って、これらの要因を考慮して、目的に合致した高分子ゲル電解質量を決定する。
【0114】
正極の厚さは、特に限定するものではなく、配合量について述べたように、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮して決定すべきである。一般的な正極層の厚さは10〜500μm程度である。
【0115】
[負極(負極活物質層)]
負極は、負極活物質活物質を含む。この他にも、電子伝導性を高めるための導電助剤、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩、バインダ、高分子ゲル電解質(ポリマーマトリックス、電解液など)などが含まれ得る。
【0116】
負極活物質の種類以外は、基本的に「正極(正極活物質層)」の項で記載した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0117】
負極活物質としては、特に制限されるものではなく、溶液タイプのリチウムイオン二次電池に使用可能なものを適宜利用することができる。具体的には、カーボン、金属酸化物、リチウム−金属複合酸化物などを用いることができるが、好ましくはカーボンもしくはリチウム−遷移金属複合酸化物である。これらを用いることで、容量、出力特性(例えば、電池電圧が高くできるなど)に優れた電池を構成できるからである。なお、リチウム−遷移金属複合酸化物としては、例えば、リチウム−チタン複合酸化物などを用いることができる。また、カーボンとしては、例えば、黒鉛、グラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラックなどを用いることができる。また、金属酸化物としては、例えば、チタン酸化物などの遷移金属酸化物などを用いることができる。
【0118】
[電解質層]
本発明の電解質層は、セパレータに電解質が保持され、該セパレータの電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されてなるものである。これらに関しては、既に説明した通りである。
【0119】
また、電解質は、電池を構成する電解質層のほか、上記したように正極および/または負極にも含まれ得る。電池を構成する電解質層、正極、負極によって異なる電解質を用いてもよいし、同一の電解質を使用してもよい。また各単電池層(の各構成部材)によって異なる電解質を用いてもよい。
【0120】
電解質層の電解質を保持させた部分の厚さは、所望の電解質性能を有効に発現できるものであればよく、特に限定するものではない。しかしながら、コンパクトなバイポーラ電池を得るためには、電解質層としての機能が確保できる範囲で極力薄くすることが好ましい。当該電解質を保持させた部分の厚さとしては、10〜100μm程度である。
【0121】
電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されてなる部分(シール部4b)の厚さに関しては、既に説明した通りである。即ち、該シール部を成型配置した状態(未シール状態)では、セパレータの両面に形成されたシール部は、電極(正極ないし負極)よりも厚く形成しておく。その後、シール部を加圧変形ないし加熱加圧による熱融着変形させて、電極(正極ないし負極)と同じ厚さにし、電極と電解質層との界面を隙間なく密着させるようにするものである。なお、シール部を成型配置した状態(未シール状態)では、セパレータの両面に形成されたシール部は、電極(正極ないし負極)の厚さよりも0〜1mmの範囲でより厚く形成すればよい。詳しくは、シールフィルムでは熱融着しても厚みがほとんど変化しない。したがって熱融着タイプの場合はほとんど厚くする必要はなく、0〜10μm程度厚くすればよい。ゴム系のシール(加圧タイプ)はゴムの変形によりシール性を確保するため、電極よりも50μm〜1mm程度の高さが必要である。ただし、かかる範囲に制限されるものではない。
【0122】
電解質層の電解質を保持させた部分の形状は、機能、性能面からも部位によらず常にほぼ一定の厚さにする必要はない。また、シール用の樹脂が成型配置されてなる部分(シール部4b)の形状については、既に説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
【0123】
ところで、電解質層の電解質として高分子ゲル電解質を用いる場合、現在好ましく使用される高分子ゲル電解質用のポリマーマトリックスは、イオン導伝性を有する高分子であるPEO、PPOのようなポリエーテル系高分子である。このため、高温条件下における正極側での耐酸化性が弱い。従って、溶液系のリチウムイオン二次電池で一般に使用される、酸化還元電位の高い正極剤を使用する場合には、負極の容量が、高分子ゲル電解質層を介して対向する正極の容量より少ないことが好ましい。負極の容量が対向する正極の容量より少ないと、充電末期に正極電位が上がり過ぎることを防止できる。なお、正極および負極の容量は、正極および負極を製造する際の理論容量として、製造条件から求めることができる。完成品の容量を測定装置で直接測定してもよい。
【0124】
ただし、負極の容量を対向する正極の容量と比べて少ないと、負極電位が下がりすぎて電池の耐久性が損なわれる恐れがあるので充放電電圧に注意する必要がある。例えば、一のセル(単電池層)の平均充電電圧を使用する正極活物質の酸化還元電位に対して適切な値に設定して、耐久性が低下しないように注意する。
【0125】
[絶縁層]
絶縁層は、集電体同士が接触したり、電解液が漏れ出したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こるのを防止する目的で、各電極の周囲に形成されてなるものである。本発明では、セパレータの外周部のシール用の樹脂が成型配置されている部分に同様の機能を付与することができるため(図5〜図12参照)、特に絶縁層を設ける必要はないが、補助的に該絶縁層を設けてもよい。
【0126】
該絶縁層としては、絶縁性、電解液の漏出や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよく、例えば、エポキシ樹脂、ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが使用できるが、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
【0127】
[強電タブ]
強電タブは、図12で説明した通りであり、必要に応じて最外層の電極を構成する集電体に取り付けられる。用いる場合には、端子としての機能を有するほか、薄型化の観点からは極力薄い方がよい。しかしながら、積層されてなる正極、負極、電解質層および集電体はいずれも機械的強度が弱いため、これらを両側から挟示し支持し、更にはより確実にゴムシール部材を加圧できるようにするだけの強度を持たせることが望ましい。さらに、強電タブでの内部抵抗を抑える観点からも、強電タブの厚さは、通常0.1〜2mm程度が望ましいといえる。
【0128】
強電タブの材質は、通常のリチウムイオン二次電池で用いられる材質を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などを利用することができる。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウムを用いることが好ましい。
【0129】
電流取り出し用の正極側の強電タブと負極用の強電タブとの材質は、同一の材質を用いてもよいし、異なる材質のものを用いてもよい。さらに、これら正極側および負極側の強電タブは、材質の異なるものを多層に積層したものであってもよい。
【0130】
正極および負極側の強電タブは、集電体と同じサイズであればよいが、図12A、Bを用いて説明したように、シール部材を配置したセパレータのシール部4dよりも大きいものを用いるのが望ましい。
【0131】
[正極および負極リード]
図12(B)に示すように、正極リード8および負極リード9に関しては、通常リチウムイオン二次電池で用いられる公知のリードを用いることができる。該正極および負極リードの材質も、通常のリチウムイオン二次電池で用いられる材質を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などを利用することができる。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウムを用いることが好ましい。
【0132】
[電池外装材(電池ケース)]
バイポーラ電池は、外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、図8(A)、(B)に示すように、電池積層体全体を電池外装材(電池ケース)10に収容するとよい。電池外装材としては、軽量化の観点から、金属を高分子絶縁体で被覆したアルミラミネートパックなどの高分子−金属を複合したラミネートフィルム(単に、高分子−金属複合ラミネートフィルムとも称する)のような従来公知の電池外装材が好ましい。
【0133】
上記高分子−金属複合ラミネートフィルムとしては、特に制限されるべきものではなく、高分子フィルム間に金属フィルムを配置し全体を積層一体化してなる従来公知のものを使用することができる。具体例としては、例えば、高分子フィルムからなる外装保護層(ラミネート最外層)、金属フィルム層、高分子フィルムからなる熱融着層(ラミネート最内層)のように配置し全体を積層一体化してなるものが挙げられる。詳しくは、外装材に用いられる高分子−金属複合ラミネートフィルムは、上記金属フィルムの両面に、高分子フィルムとして、まず耐熱絶縁樹脂フィルムを形成し、少なくとも片面側の耐熱絶縁樹脂フィルム上に熱融着絶縁性フィルムが積層されたものである。かかるラミネートフィルムは、適当な方法にて熱融着させることにより、熱融着絶縁性フィルム部分が融着して接合し熱融着部が形成される。上記金属フィルムとしては、アルミニウムフィルム等が例示できる。また、上記絶縁性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテトラフタレートフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ナイロンフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ポリエチレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)、ポリプロピレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)等が例示できる。ただし、本発明の外装材は、これらに制限されるべきものではない。
【0134】
こうした高分子−金属複合ラミネートフィルムでは、超音波溶着等により熱融着絶縁性フィルムを利用して1対ないし1枚(袋状)のラミネートフィルムの熱融着による接合を、容易かつ確実に行うことができる。よって、本発明では、こうした高分子−金属複合ラミネートフィルムを用いて、その周辺部の一部または全部を熱融着にて接合することにより、電池積層体を収納し密封した構成とするのが好ましい。なお、電池の長期信頼性を最大限高めるためには、高分子−金属複合ラミネートシートの構成要素である金属フィルム同士を直接接合してもよい。金属フィルム間にある熱融着性樹脂を除去もしくは破壊して金属フィルム同士を接合するには超音波溶着を用いることができる。
【0135】
電池外装材に高分子−金属複合ラミネートフィルムを用いる場合、上記正極および負極リードは、上記熱融着部に挟まれて該電池外装材の外部に露出される構造とすればよい。また、熱伝導性に優れた高分子−金属複合ラミネートフィルムを用いることが、自動車の熱源から効率よく熱を伝え、電池内部を電池動作温度まですばやく加熱することができる点で好ましい。
【0136】
次に、本発明では、上記のバイポーラ電池を複数個接続して構成した組電池とすることができる。すなわち、本発明のバイポーラ電池を少なくとも2個以上を用いて直列および/または並列に接続して構成した組電池とすることで、使用目的ごとの電池容量や出力に対する要求に、比較的安価に対応することが可能になる。
【0137】
具体的には、例えば、上記のバイポーラ電池をN個並列に接続し、N個並列にしたバイポーラ電池をさらにM個直列にして金属製ないし樹脂製の組電池ケースに収納し、組電池とする(N、Mは2以上の整数)。この際、バイポーラ電池の直列/並列接続数は、使用目的に応じて決定する。例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車など大容量電源として、高エネルギー密度、高出力密度が求められる車両の駆動用電源に適用し得るように組み合わせればよい。また、組電池用の正極端子および負極端子と、各バイポーラ電池の電極リードとは、リード線等を用いて電気的に接続すればよい。また、バイポーラ電池同士を直列/並列に接続する際には、スペーサやバスバーのような適当な接続部材を用いて電気的に接続すればよい。これにより、種々の車両用ごとの容量・電圧の要望を基本のバイポーラ電池の組み合わせで対応が可能になる。その結果、必要エネルギー、出力の設計選択性を容易にすることが可能になる。そのため種々の車両用ごとに異なるバイポーラ電池を設計、生産する必要がなく、基本となるバイポーラ電池の大量生産が可能となり、量産化によるコスト削減が可能となる。
【0138】
また、本発明の組電池は、上記に説明したものに制限されるべきものではなく、従来公知のものを適宜採用することができる。例えば、本発明の組電池では、本発明のバイポーラ電池と、該バイポーラ電池と正負極電極材料を同一とし該バイポーラ電池の構成単位数を直列することにより電圧を同一にした電池と、を並列に接続したものであってもよい。
【0139】
上記バイポーラ電池と正負極電極材料を同一とし該バイポーラ電池の構成単位数を直列することにより電圧を同一にした電池としては、好ましくはバイポーラ型でないリチウムイオン二次電池(通常リチウムイオン二次電池)が挙げられる。すなわち、組電池を形成する電池は、本発明のバイポーラ電池とバイポーラ型ではないリチウムイオン二次電池等とを混在させても良い。これにより、出力重視のバイポーラ電池と、エネルギー重視の一般リチウムイオン二次電池の組み合わせでお互いの弱点を補う組電池ができ、組電池の重量・サイズを小さくすることができる。それぞれのバイポーラ電池とバイポーラ型でないリチウムイオン二次電池をどの程度の割合で混在させるかは、組電池として要求される安全性能、出力性能に応じて決める。
【0140】
本発明の組電池には、使用用途に応じて、各種計測機器や制御機器類を設けてもよく、例えば、電池電圧を監視するために電圧計測用コネクタなどを設けておいてもよいなど、特に制限されるものではない。
【0141】
また本発明では、上記組電池を少なくとも2以上直列、並列、または直列と並列の複合接続した複合組電池とすることで、使用目的ごとの電池容量や出力に対する要求に、新たに組電池を作製することなく、比較的安価に対応することが可能になる。すなわち、こうした複合組電池は、組電池を少なくとも2以上直列、並列、または直列と並列の複合接続したものであり、基準の組電池を製造し、それを組み合わせて複合組電池とすることで、組電池の仕様をチューニングできる。これにより、仕様の異なる沢山の組電池種を製造しなくてよいため、複合組電池コストを減少することができる。このように、組電池を複数直並列接続されてなる複合組電池は、一部の電池、組電池が故障しても、その故障部分を交換するだけで修理が可能である。なお、上記組電池には、本発明のバイポーラ電池だけで構成したものの他、本発明のバイポーラ電池と他のバイポーラ型でない電池とで構成したものを含んでいてもよい。
【0142】
本発明では、上記のバイポーラ電池および/または組電池(複合組電池を含む)を駆動用電源として搭載した車両とすることができる。本発明のバイポーラ電池および/または組電池は、上述のように各種特性を有し、特に、コンパクトな電池である。このため、エネルギー密度および出力密度に関して、とりわけ厳しい要求がなされる車両、例えば、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車等の駆動用電源として好適である。例えば、図13に示したように、電気自動車ないしハイブリッド電気自動車16の車体中央部の座席下に組電池15を駆動用電源として搭載するのが、車内空間およびトランクルームを広く取れるため便利である。本発明では、これらに何ら制限されるべきものではなく、後部トランクルームの下部に搭載してもよいし、あるいは電気自動車や燃料電池自動車のようにエンジンを搭載しないのであれば、車体前方のエンジンを搭載していた部分などに搭載することもできる。なお、本発明では、組電池15だけではなく、使用用途によっては、バイポーラ電池を搭載するようにしてもよいし、これら組電池15とバイポーラ電池を組み合わせて搭載するようにしてもよい。また、本発明のバイポーラ電池および/または組電池を駆動用電源として搭載することのできる車両としては、上記の電気自動車、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車が好ましいが、これらに制限されるものではない。
【0143】
本発明のバイポーラ電池の製造方法としては、特に制限されるべきものではなく、従来公知の各種の方法を適宜利用することができる。以下に、簡単に説明する。なお、以下の製造方法の説明においても、電解質層の電解質として高分子ゲル電解質を用いた製造例を示すが、本発明ではこれらに制限されるものでない。また、セパレータに高分子ゲル電解質が保持され、該セパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されてなる高分子ゲル電解質層の製造方法に関しては、既に図5〜図12、図15〜18を用いて説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
【0144】
(1)正極用組成物の塗布
まず、適当な集電体を準備する。正極用組成物は、通常はスラリー(正極用スラリー)として得られ、集電体の一方の面に塗布される。塗布方法には、バーコーティング、スプレーコーティングのほか、スクリーン印刷、インクジェット方式で印刷する塗布方法なども含まれる。
【0145】
正極用スラリーは、正極活物質を含む溶液である。他成分として、導電助剤、バインダ、重合開始剤、高分子ゲル電解質の原料(高分子原料、電解液など)、リチウム塩などが任意で含まれる。高分子電解質層に高分子ゲル電解質を用いることから、正極活物質微粒子同士を結びつける従来公知のバインダ、電子伝導性を高めるための導電助剤、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのスラリー粘度調整溶媒などが含まれていればよく、高分子ゲル電解質の原料やリチウム塩などは含まれていなくても良い。
【0146】
高分子ゲル電解質の高分子原料は、PEO、PPO、これらの共重合体などが挙げられ、分子内に架橋性の官能基(炭素−炭素二重結合など)を有することが好ましい。この架橋性の官能基を用いて高分子原料を架橋することによって、機械的強度が向上する。
【0147】
正極活物質、導電助剤、バインダ、リチウム塩、電解液に関しては、前述した化合物を用いることができる。
【0148】
重合開始剤は、重合させる化合物に応じて選択する必要がある。例えば、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。
【0149】
NMPなどの溶媒は、正極用スラリーの種類に応じて選択する。
【0150】
正極活物質、リチウム塩、導電助剤等の添加量は、バイポーラ電池の目的等に応じて調節すればよく、通常用いられる量を添加すればよい。重合開始剤の添加量は、高分子原料に含まれる架橋性官能基の数に応じて決定される。通常は高分子原料に対して0.01〜1質量%程度である。
【0151】
(2)正極の形成
正極用スラリーが塗布された集電体を乾燥して、含まれる溶媒を除去し、正極を形成する。それと同時に、正極用スラリーによっては、架橋反応を進行させて、高分子固体電解質の機械的強度を高めてもよい。乾燥は真空乾燥機などを用いることができる。乾燥の条件は塗布された正極用スラリーに応じて決定され、一義的に規定できないが、通常は40〜150℃で5分〜20時間である。
【0152】
(3)負極用組成物の塗布
正極が形成された面と反対側の面に、負極活物質を含む負極用組成物(負極用スラリー)を塗布する。
【0153】
負極用スラリーは、負極活物質を含む溶液である。他成分として、導電助剤、バインダ、重合開始剤、高分子ゲル電解質の原料(高分子原料、電解液など)およびリチウム塩などが任意で含まれる。使用される原料や添加量については、「(1)正極用組成物の塗布」の項での説明と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0154】
(4)負極の形成
負極用スラリーが塗布された集電体を乾燥して、含まれる溶媒を除去し、負極を形成する。それと同時に、負極用スラリーによっては、架橋反応を進行させて、高分子ゲル電解質の機械的強度を高めてもよい。この作業により、バイポーラ電極が完成する。乾燥は真空乾燥機などを用いることができる。乾燥の条件は塗布された負極用スラリーに応じて決定され、一義的に規定できないが、通常は40〜150℃で5分〜20時間である。
【0155】
(5)バイポーラ電極と電解質層との積層
別途、電極間に積層される電解質層として、セパレータに高分子ゲル電解質が保持され、該セパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されてなる電解質層を準備する。該電解質層は、図5(あわせて図6〜図12も参照)を用いて説明した手順で作製すればよい。
【0156】
以上のように作製したバイポーラ電極を高真空下で十分加熱乾燥してから、バイポーラ電極と電解質層をそれぞれを適当なサイズに複数個切りだす。電解質層は、バイポーラ電極の集電体サイズよりも若干大きくすることが望ましい(図11参照のこと)。切りだされたバイポーラ電極と電解質層とを所定数張り合わせて、電池積層体を作製する。積層数は、バイポーラ電池に求める電池特性を考慮して決定される。電解質層が一面または両面に形成されたバイポーラ電極を、直接貼り合わせてもよい。最外層の電解質層上には、それぞれ電流取り出し用の電極を配置する。正極側の最外層には、集電体上に正極のみを形成した電流取り出し用の電極を配置する。負極側の最外層には、集電体上に負極のみを形成した電流取り出し用の電極を配置する。バイポーラ電極と電解質層とを積層させてバイポーラ電池を得る段階は、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。例えば、アルゴン雰囲気下や窒素雰囲気下でバイポーラ電池を作製するとよい。
【0157】
なお、セパレータに液体電解質が保持され、該セパレータの液体電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されてなる電解質層を用いる場合には、例えば、以下の手順でバイポーラ電池を作製することができる。ただし、これらに制限されるものではない。まず、セパレータの液体電解質を保持させる部分の外周部にシール用の樹脂を成型配置されてなる電解質層を準備する。この段階では、液体電解液はセパレータに保持させないでいる。各電解質層の内部(液体電解質を保持させる部分)に電解液を注入することができるように、外周部の一部にシール用の樹脂が成型配置されていない部分を残しておく。次に、バイポーラ電極と電解質層とを所定数張り合わせて、電池積層体を作製する。その後、電池積層体のシール用の樹脂を成型配置した部分を上下から挟んで加熱加圧してシール用の樹脂を熱融着させてシール性を高めておく。次に、各電解質層に残しておいたシール用の樹脂が成型配置されていない部分から、従来と同様に、真空注入法等により電解液を注入する。その後、外周部の一部に残しておいたシール用の樹脂が成型配置されていない部分を、シール用の樹脂を成型配置して塞ぐ(好ましくは、該当部分のみ加熱加圧してシール用の樹脂を熱融着させてシール性を高める)ことでバイポーラ電池を得ることができる。あるいは、外周部の一部にシール用の樹脂が成型配置されていない部分を残すことなく、バイポーラ電極と電解質層を積層していく過程で、一層ごとに、セパレータの液体電解質を保持させる部分に所定量の電解液を保持させるようにしていってもよい。次に、バイポーラ電極を載せて、隣接する上下のバイポーラ電極同士を加熱加圧してシール用の樹脂を熱融着させてシール性を高めるようにして、バイポーラ電池を作製してもよい。
【0158】
(6)パッキング(電池の完成)
最後に電池積層体の両最外層の電流取り出し用の電極の集電体上にそれぞれ、正極強電タブ、負極強電タブを設置し、該正極強電タブ、負極強電タブに、さらに正極リード、負極リードを接合(電気的に接続)して取り出す。この際、電流取り出し用の電極、特に強電タブは、シール部材を配置したセパレータのシール部よりも大きくすることが望ましい(図12(A)参照)。正極リードおよび負極リードの接合方法としては特に制限されるべきものではないが、接合温度の低い超音波溶接等が好適に利用し得るものであるが、これに限定されるべきものではなく、従来公知の接合方法を適宜利用することができる。
【0159】
電池積層体全体を、外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電池外装材ないし電池ケースで封止し、バイポーラ電池を完成させる。電池外装材(電池ケース)の材質は、内面がポリプロピレンフィルム等の絶縁体で被覆された金属(アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅など)が好適である。
【実施例】
【0160】
以下の実施例および比較例を用いて本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例に限定されるものではない。
【0161】
実施例1(ポリプロピレン製の微多孔膜セパレータ+ゴム系シール部の例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0162】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0163】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの正極を形成した。
【0164】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0165】
まず、負極活物質としてLi4Ti5O12[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。尚、負極活物質に用いたLi4Ti5O12の二次粒子の平均粒径は10μmで、0.2〜0.5μmの一次粒子がある程度ネッキングした構造になっていた。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0166】
正極を形成したSUS箔の反対面に、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの負極を形成した。
【0167】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1参照のこと)。
【0168】
B.シール部の形成
厚さ20μmのポリプロピレン製の微多孔膜セパレータを用意した(図6(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に、外辺から4.5mmの位置(=シールのセンターの位置とする。また、シールのセンターからセパレータの端までが6mmでシール材の幅は3mmとした。)に高さ60μmのシリコンゴム(シール用のゴム系樹脂)を該セパレータの両面に成型配置し、ゴム系シール部を形成した(図6(E)、(G)のシール部4b1参照)。
【0169】
なお、上記ゴム系シール部(図6(G)の符号4b1、4b2参照)のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程の外装材で封入して電池を形成した後に行ったため、バイポーラ電池の形成工程にて説明する。
【0170】
C.電解質層の形成
外周部にゴム系シール部を形成した微多孔膜セパレータの、該シール部の内側にプレゲル溶液を浸漬させ、不活性雰囲気下で90℃で1時間熱重合させて、該セパレータの中心部近傍にゲル電解質部を形成し、電解質層を完成させた(図6(F)、(G)の符号4c参照)。得られた電解質層のゲル電解質部の厚さは20μmであり、微多孔膜セパレータと同じ厚さであった。
【0171】
なお、上記プレゲル溶液には、ポリマー[5質量%]と、電解液+リチウム塩[95質量%]と、重合開始剤[ポリマーに対して0.1質量%]とからなるものを用いた。ここで、上記ポリマーには、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体(共重合比が5:1、重量平均分子量が8000のものを用いた。上記電解液には、EC+DMC(EC:DMC(体積比)=1:3)を用いた。上記リチウム塩には1.0M Li(C2F5SO2)2Nを用いた。また、リチウム塩の量は、電解液に対して1.0Mとした。重合開始剤にはAIBNを用いた。
【0172】
D.バイポーラ電池の形成
上記バイポーラ電極と、微多孔膜セパレータに高分子ゲル電解質が保持され、該セパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分の外周部にシール用のゴム系樹脂が成型配置されてなる電解質層とを、電極の正極と負極が電解質層を挟むように積層した。
【0173】
5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池(ゴム系シール部が未シール状態の中間品)を形成した。
【0174】
その後、ゴム系シール部(図6(G)の符号4b1、4b2参照)のシールは、バイポーラ電池の上下面に厚さ3mmの鉄板を配置し、該鉄板を四隅に設けたボルトナットによる締め付けにより、該電池全面に1kg/cm2の圧力をかけてシール部を加圧変形させて集電体に密着させることにより行った。かかるシールを行うことによりバイポーラ電池を完成した(図8(A)参照)。
【0175】
実施例2(ポリプロピレン製の微多孔膜セパレータ+熱融着樹脂系シール部の例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0176】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0177】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの正極を形成した。
【0178】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0179】
まず、負極活物質としてLi4Ti5O12[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。尚、負極活物質に用いたLi4Ti5O12の二次粒子の平均粒径は10μmで、0.2〜0.5μmの一次粒子がある程度ネッキングした構造になっていた。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0180】
正極を形成したSUS箔の反対面に、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの負極を形成した。
【0181】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1参照のこと)。
【0182】
B.シール部の形成
厚さ20μmのポリプロピレン製の微多孔膜セパレータを用意した(図9(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に、高さ(厚さ)60μmの熱融着可能なシール用樹脂を外辺から10mmの幅で該セパレータの両面に成型配置し、熱融着樹脂系シール部を形成した(図9(B)のシール部4b及び図9(D)のシール部4b1参照)。なお、上記熱融着可能なシール用樹脂にはポリプロピレンを用いた。
【0183】
これ以後のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に行ったが、便宜上、本工程にて説明する。
【0184】
後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に、集電体とセパレータの熱融着樹脂系シール部とを、電池積層体の上下から該シール部に200℃で加熱加圧しながら該シール部を熱融着し、集電体に密着(シール)させて該シール部のシールを行った(図10(A)、(B)の矢印及び符号4b参照)。
【0185】
C.電解質層の形成
外周部に熱融着樹脂系シール部を形成した微多孔膜セパレータの、該シール部の内側にプレゲル溶液を浸漬させ、不活性雰囲気下で90℃で1時間熱重合させて、該セパレータの中心部近傍にゲル電解質部を形成し、電解質層を形成した(図9(C)、(D)の4c参照)。得られた電解質層の高分子ゲル電解質を保持させた部分の厚さは20μmであり、微多孔膜セパレータと同じ厚さであった。
【0186】
なお、上記プレゲル溶液には、ポリマー[5質量%]と、電解液+リチウム塩[95質量%]と、重合開始剤[ポリマーに対して0.1質量%]とからなるものを用いた。ここで、上記ポリマーには、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体(共重合比が5:1、重量平均分子量が8000のものを用いた。上記電解液には、EC+DMC(EC:DMC(体積比)=1:3)を用いた。上記リチウム塩には1.0M Li(C2F5SO2)2Nを用いた。また、リチウム塩の量は、電解液に対して1.0Mとした。重合開始剤にはAIBNを用いた。
【0187】
D.バイポーラ電池の形成
上記バイポーラ電極と、微多孔膜セパレータに高分子ゲル電解質が保持され、該セパレータのゲル電解質部の外周部に上記熱融着可能なシール用樹脂が成型配置されてなる電解質層とを、電極の正極と負極が該電解質層を挟むように積層した(図10(A)参照)。
【0188】
5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0189】
実施例3(不織布セパレータ+ゴム系シール部の例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0190】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0191】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの正極を形成した。
【0192】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0193】
まず、負極活物質としてLi4Ti5O12[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。尚、負極活物質に用いたLi4Ti5O12の二次粒子の平均粒径は10μmで、0.2〜0.5μmの一次粒子がある程度ネッキングした構造になっていた。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0194】
正極を形成したSUS箔の反対面に、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの負極を形成した。
【0195】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1参照のこと)。
【0196】
B.シール部の形成
厚さ20μmの不織布セパレータを用意した(図6(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に、外辺から4.5mmの位置(=シールのセンターの位置とする。また、シールのセンターからセパレータの端までが6mmでシール材の幅は3mmとした。)に高さ60μmのシリコンゴム(シール用のゴム系樹脂)を該セパレータを貫通させるように両面に成型配置し、シール部を形成した(図6(E)、(G)のシール部4b1、4b2参照)。即ち、上記シール部の形成の際には、上記シリコンゴム(シール用のゴム系樹脂)がセパレータを貫通するように、シリコンゴム(シール用のゴム系樹脂)をセパレータに含浸させて、セパレータ内部にもゴム系シール部を形成した(図6(G)のシール部4b2参照)。
【0197】
なお、上記シール部(図6(G)の符号4b1、4b2参照)のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程のバイポーラ電池を形成後に行ったため、バイポーラ電池の形成工程にて説明する。
【0198】
C.電解質層の形成
外周部にゴム系シール部を形成した不織布セパレータの、該ゴム系シール部の内側にプレゲル溶液を浸漬させ、不活性雰囲気下で90℃で1時間熱重合させて、該セパレータの中心部近傍にゲル電解質部を形成し、電解質層を完成させた(図6(F)、(G)のゲル電解質部4c参照)。得られた電解質層の高分子ゲル電解質を保持させた部分の厚さは20μmであり、不織布セパレータと同じ厚さであった。
【0199】
なお、上記プレゲル溶液には、ポリマー[5質量%]と、電解液+リチウム塩[95質量%]と、重合開始剤[ポリマーに対して0.1質量%]とからなるものを用いた。ここで、上記ポリマーには、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体(共重合比が5:1、重量平均分子量が8000のものを用いた。上記電解液には、EC+DMC(EC:DMC(体積比)=1:3)を用いた。上記リチウム塩には1.0M Li(C2F5SO2)2Nを用いた。また、リチウム塩の量は、電解液に対して1.0Mとした。重合開始剤にはAIBNを用いた。
【0200】
D.バイポーラ電池の形成
上記バイポーラ電極と、不織布セパレータに高分子ゲル電解質が保持され、該セパレータのゲル電解質部の外周部にシール用のゴム系樹脂が成型配置されてなる電解質層を、電極の正極と負極が電解質層を挟むように積層した。
【0201】
5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池(ゴム系シール部が未シール状態の中間品)を形成した。
【0202】
その後、ゴム系シール部(図6(G)の符号4b1、4b2参照)のシールは、バイポーラ電池の上下面に厚さ3mmの鉄板を配置し、該鉄板を四隅に設けたボルトナットによる締め付けにより、該電池全面に1kg/cm2の圧力をかけてシール部を加圧変形させて集電体に密着させることにより行った。かかるシールを行うことによりバイポーラ電池を完成した(図8(A)参照)。
【0203】
実施例4(不織布セパレータ+熱融着樹脂系シール部の例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0204】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0205】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの正極を形成した。
【0206】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0207】
まず、負極活物質としてLi4Ti5O12[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。尚、負極活物質に用いたLi4Ti5O12の二次粒子の平均粒径は10μmで、0.2〜0.5μmの一次粒子がある程度ネッキングした構造になっていた。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0208】
正極を形成したSUS箔の反対面に、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの負極を形成した。
【0209】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1参照のこと)。
【0210】
B.シール部の形成
厚さ20μmの不織布セパレータを用意した(図9(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に高さ60μmの熱融着可能なシール用樹脂を、外辺から10mmの幅で該セパレータの両面に(図9(D)の4b1参照)及び外辺より外側に約0.3cmの幅(=約3mm)でセパレータ側面に(図9(D)の4b3参照)成型配置し熱融着樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱融着可能なシール用樹脂にはポリプロピレンを用いた。
【0211】
これ以後のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に行ったが、便宜上、本工程にて説明する。
【0212】
後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に、集電体とセパレータの熱融着樹脂系シール部とを、電池積層体の上下から該シール部に200℃で加熱加圧しながら該シール部を熱融着して集電体に密着(シール)させて該シール部のシールを行った(図10(A)、(B)の矢印及び符号4b参照)。
【0213】
C.電解質層の形成
外周部に熱融着樹脂系シール部を形成した不織布セパレータの、該シール部の内側にプレゲル溶液を浸漬させ、不活性雰囲気下で90℃で1時間熱重合させて、該セパレータの中心部近傍にゲル電解質部を形成し、電解質層を形成した(図9(C)、(D)の4c参照)。得られた電解質層の高分子ゲル電解質を保持させた部分の厚さは20μmであり、不織布セパレータと同じ厚さであった。
【0214】
なお、上記プレゲル溶液には、ポリマー[5質量%]と、電解液+リチウム塩[95質量%]と、重合開始剤[ポリマーに対して0.1質量%]とからなるものを用いた。ここで、上記ポリマーには、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体(共重合比が5:1、重量平均分子量が8000のものを用いた。上記電解液には、EC+DMC(EC:DMC(体積比)=1:3)を用いた。上記リチウム塩には1.0M Li(C2F5SO2)2Nを用いた。また、リチウム塩の量は、電解液に対して1.0Mとした。重合開始剤にはAIBNを用いた。
【0215】
D.バイポーラ電池の形成
上記バイポーラ電極と、不織布セパレータに高分子ゲル電解質が保持され、該セパレータのゲル電解質部の外周部に上記熱融着可能なシール用樹脂が成型配置されてなる電解質層とを、電極の正極と負極が電解質層を挟むように積層した(図10(A)参照)。
【0216】
5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0217】
実施例5(ポリエチレン製の微多孔膜セパレータ+熱硬化樹脂系シール部の例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0218】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0219】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ30μmの正極を形成した。
【0220】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0221】
まず、負極活物質としてハードカーボン[90質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0222】
正極を形成したSUS箔の反対面に、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ30μmの負極を形成した。
【0223】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1参照のこと)。
【0224】
B.シール部の形成
厚さ12μmのポリエチレン製の微多孔膜セパレータを用意した(図19(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に、外辺から4.5mmの位置(=シールのセンターの位置とする。また、シールのセンターからセパレータの端までが6mmでシール材の幅は3mmとした。)に高さ60μmの熱硬化可能なシール用樹脂を、該セパレータの片面に(図19(E)参照)成型配置し熱硬化樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂を用いた。
【0225】
さらに、前述のバイポーラ電極に対して外周部の四辺に、外辺から4.5mmの位置(=シールのセンターの位置とする。また、シールのセンターから電極の端までが6mmでシール材の幅は3mmとした。)に高さ60μmの熱硬化可能なシール用樹脂を、該電極の片面に(図20参照)成型配置し熱硬化樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂を用いた。
【0226】
これ以後のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に行ったが、便宜上、本工程にて説明する。
【0227】
後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に、集電体とセパレータの熱硬化樹脂系シール部とを、電池積層体の上下から該シール部に80℃で熱プレス機により面圧1kg/cm2で一時間加熱加圧しながら該シール部を熱硬化させて集電体に密着(シール)させて該シール部のシールを行った(図10(A)、(B)の矢印及び符号4b参照)。
【0228】
C.電解質層の形成
前述のバイポーラ電極の正極、負極の電極部に塗布し乾燥させることでゲル電解質を染み込ませ電解質層を形成した(図21に示す4c参照)。
【0229】
なお、上記ゲル電解質は、ホストポリマーとしてHPFコポリマーを10質量%含むPVdf−HPF[10質量%]と、電解液PC−EC 1MLiPF6[90質量%]と、粘度調整溶媒としてDMCを最適な粘度になるまで添加しゲル電解質を作製した。
【0230】
D.バイポーラ電池の形成
上記熱硬化樹脂系シール部4b及び電解質層4cを配置したバイポーラ電極と、上記熱硬化シール部4bを配置したポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータ4aとを、バイポーラ電極の正極と負極とが電解質層4c及びセパレータ4aを挟むように積層した。(図21及び図10(B)参照)
積層によりバイポーラ電極上の電解質は、セパレータ4aに染み込んでセパレータ4aに電解質層を形成するとともに、セパレータ4a上の熱硬化樹脂系シール部4b及びバイポーラ電極上の熱硬化樹脂系シール部によりシール部を形成している。
【0231】
5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0232】
実施例6(ポリエチレン製の微多孔膜セパレータ+熱硬化樹脂系シール部+シリカ粒子の例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0233】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0234】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ30μmの正極を形成した。
【0235】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0236】
まず、負極活物質としてハードカーボン[90質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0237】
正極を形成したSUS箔の反対面に、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ30μmの負極を形成した。
【0238】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1参照のこと)。
【0239】
B.シール部の形成
厚さ12μmのポリエチレン製の微多孔膜セパレータを用意した(図19(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に、外辺から4.5mmの位置(=シールのセンターの位置とする。また、シールのセンターからセパレータの端までが6mmでシール材の幅は3mmとした。)に高さ60μmの熱硬化可能なシール用樹脂を、該セパレータの片面に(図19(E)参照)成型配置し熱硬化樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂を用いた。ここで、エポキシ樹脂にはシリカ粒子(10質量%)を分散させた。
【0240】
さらに、前述のバイポーラ電極に対して外周部の四辺に、外辺から4.5mmの位置(=シールのセンターの位置とする。また、シールのセンターから電極の端までが6mmでシール材の幅は3mmとした。)に高さ60μmの熱硬化可能なシール用樹脂を、該電極の片面に(図20参照)成型配置し熱硬化樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂を用いた。ここで、エポキシ樹脂にはシリカ粒子(10質量%)を分散させた。
【0241】
これ以後のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に行ったが、便宜上、本工程にて説明する。
【0242】
後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に、集電体とセパレータの熱硬化樹脂系シール部とを、電池積層体の上下から該シール部に80℃で熱プレス機により面圧1kg/cm2で一時間加熱加圧しながら該シール部を熱硬化させて集電体に密着(シール)させて該シール部のシールを行った(図10(A)、(B)の矢印及び符号4b参照)。
【0243】
C.電解質層の形成
前述のバイポーラ電極の正極、負極の電極部に塗布し乾燥させることでゲル電解質を染み込ませ電解質層を形成した(図21に示す4c参照)。
【0244】
なお、上記ゲル電解質は、ホストポリマーとしてHPFコポリマーを10質量%含むPVdf−HPF[10質量%]と、電解液PC−EC 1MLiPF6[90質量%]と、粘度調整溶媒としてDMCを最適な粘度になるまで添加しゲル電解質を作製した。
【0245】
D.バイポーラ電池の形成
上記熱硬化樹脂系シール部4b及び電解質層4cを配置したバイポーラ電極と、上記熱硬化シール部4bを配置したポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータ4aとを、バイポーラ電極の正極と負極とが電解質層4c及びセパレータ4aを挟むように積層した。(図21及び図10(B)参照)
積層によりバイポーラ電極上の電解質は、セパレータ4aに染み込んでセパレータ4aに電解質層を形成するとともに、セパレータ4a上の熱硬化樹脂系シール部4b及びバイポーラ電極上の熱硬化樹脂系シール部によりシール部を形成している。
【0246】
5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0247】
実施例7(不織布セパレータ+熱硬化樹脂系シール部の例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0248】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0249】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ30μmの正極を形成した。
【0250】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0251】
まず、負極活物質としてハードカーボン[90質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0252】
正極を形成したSUS箔の反対面に、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ30μmの負極を形成した。
【0253】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1参照のこと)。
【0254】
B.シール部の形成
厚さ12μmのアラミド繊維からなる不織布セパレータを用意した(図19(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に、外辺から4.5mmの位置(=シールのセンターの位置とする。また、シールのセンターからセパレータの端までが6mmでシール材の幅は3mmとした。)に高さ60μmの熱硬化可能なシール用樹脂を、該セパレータの片面に(図19(E)参照)成型配置し熱硬化樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂を用いた。また、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂はセパレータ内部まで浸透させた。
【0255】
さらに、前述のバイポーラ電極に対して外周部の四辺に、外辺から4.5mmの位置(=シールのセンターの位置とする。また、シールのセンターからセパレータの端までが6mmでシール材の幅は3mmとした。)に高さ60μmの熱硬化可能なシール用樹脂を、該電極の片面に(図20参照)成型配置し熱硬化樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂を用いた。
【0256】
これ以後のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に行ったが、便宜上、本工程にて説明する。
【0257】
後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に、集電体とセパレータの熱硬化樹脂系シール部とを、電池積層体の上下から該シール部に80℃で熱プレス機により面圧1kg/cm2で一時間加熱加圧しながら該シール部を熱硬化させて集電体に密着(シール)させて該シール部のシールを行った(図10(A)、(B)の矢印及び符号4b参照)。
【0258】
C.電解質層の形成
前述のバイポーラ電極の正極、負極の電極部に塗布し乾燥させることでゲル電解質を染み込ませ電解質層を形成した(図21に示す4c参照)。
【0259】
なお、上記ゲル電解質は、ホストポリマーとしてHPFコポリマーを10質量%含むPVdf−HPF[10質量%]と、電解液PC−EC 1MLiPF6[90質量%]と、粘度調整溶媒としてDMCを最適な粘度になるまで添加しゲル電解質を作製した。
【0260】
D.バイポーラ電池の形成
上記熱硬化樹脂系シール部4b及び電解質層4cを配置したバイポーラ電極と、上記熱硬化シール部4bを配置したポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータ4aとを、バイポーラ電極の正極と負極とが電解質層4c及びセパレータ4aを挟むように積層した。(図21及び図10(B)参照)
積層によりバイポーラ電極上の電解質は、セパレータ4aに染み込んでセパレータ4aに電解質層を形成するとともに、セパレータ4a上の熱硬化樹脂系シール部4b及びバイポーラ電極上の熱硬化樹脂系シール部によりシール部を形成している。
【0261】
5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0262】
実施例8(ポリエチレン製の微多孔膜セパレータ+熱硬化樹脂系シール部の例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0263】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0264】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ30μmの正極を形成した。
【0265】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0266】
まず、負極活物質としてハードカーボン[90質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0267】
正極を形成したSUS箔の反対面に、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ30μmの負極を形成した。
【0268】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1参照のこと)。
【0269】
B.シール部の形成
厚さ12μmのポリエチレン製の微多孔膜セパレータを用意した(図19(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に高さ60μmの熱硬化可能なシール用樹脂を、外辺から10mmの幅で該セパレータの片面に(図19(C)参照)成型配置し熱硬化樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂を用いた。
【0270】
さらに、前述のバイポーラ電極に対して外周部の四辺に高さ60μmの熱硬化可能なシール用樹脂を、外辺から10mmの幅で該電極の片面に(図22参照)成型配置し熱硬化樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂を用いた。
【0271】
これ以後のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に行ったが、便宜上、本工程にて説明する。
【0272】
後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に、集電体とセパレータの熱硬化樹脂系シール部とを、電池積層体の上下から該シール部に80℃で熱プレス機により面圧1kg/cm2で一時間加熱加圧しながら該シール部を熱硬化させて集電体に密着(シール)させて該シール部のシールを行った(図10(A)、(B)の矢印及び符号4b参照)。
【0273】
C.電解質層の形成
前述のバイポーラ電極の正極、負極の電極部に塗布し乾燥させることでゲル電解質を染み込ませ電解質層を形成した(図21に示す4c参照)。
【0274】
なお、上記ゲル電解質は、ホストポリマーとしてHPFコポリマーを10質量%含むPVdf−HPF[10質量%]と、電解液PC−EC 1MLiPF6[90質量%]と、粘度調整溶媒としてDMCを最適な粘度になるまで添加しゲル電解質を作製した。
【0275】
D.バイポーラ電池の形成
上記熱硬化樹脂系シール部4b及び電解質層4cを配置したバイポーラ電極と、上記熱硬化シール部4bを配置したポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータ4aとを、バイポーラ電極の正極と負極とが電解質層4c及びセパレータ4aを挟むように積層した。(図21及び図10(B)参照)
積層によりバイポーラ電極上の電解質は、セパレータ4aに染み込んでセパレータ4aに電解質層を形成するとともに、セパレータ4a上の熱硬化樹脂系シール部4b及びバイポーラ電極上の熱硬化樹脂系シール部によりシール部を形成している。
【0276】
5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0277】
実施例9(ポリプロピレン製の微多孔膜セパレータ+熱融着樹脂系シール部の例であって、該セパレータが、正極および負極が形成された集電体よりも大きく、且つ、該セパレータの集電体よりも大きい部分において積層方向に隣接した別のセパレータと接着されている例)
A.電極の形成
1.正極の形成
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0278】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0279】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの正極を形成した。
【0280】
2.負極の形成
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0281】
まず、負極活物質としてLi4Ti5O12[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。尚、負極活物質に用いたLi4Ti5O12の二次粒子の平均粒径は10μmで、0.2〜0.5μmの一次粒子がある程度ネッキングした構造になっていた。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0282】
正極を形成したSUS箔の反対面に、正極面積に比して負極面積を広めに形成すべく、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの負極を形成した。
【0283】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1、16(A)参照のこと)。
【0284】
B.シール部の形成
正極および負極が形成された集電体よりも大きいセパレータとして、厚さ20μmのポリプロピレン製の微多孔膜セパレータを用意した(図9(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に、熱融着可能なシール用樹脂を染み込ませ(セパレータの厚さとほとんど同じ厚さのままで)、セパレータの細孔を塞ぐと共に、接着性を付与するように成型配置し、熱融着樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱融着可能なシール用樹脂にはポリプロピレンを用いた。
【0285】
C.電解質層の形成
上記B工程で外周部に熱融着樹脂系シール部を形成した微多孔膜セパレータの、該シール部の内側にプレゲル溶液を浸漬させ、不活性雰囲気下で90℃で1時間熱重合させて、該セパレータの中心部近傍にゲル電解質部を形成し、電解質層を形成した(図9(C)、(D)、図15の4c等参照)。得られた電解質層の高分子ゲル電解質を保持させた部分の厚さは20μmであり、微多孔膜セパレータと同じ厚さであった。
【0286】
なお、上記プレゲル溶液には、ポリマー[5質量%]と、電解液+リチウム塩[95質量%]と、重合開始剤[ポリマーに対して0.1質量%]とからなるものを用いた。ここで、上記ポリマーには、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体(共重合比が5:1、重量平均分子量が8000のものを用いた。上記電解液には、EC+DMC(EC:DMC(体積比)=1:3)を用いた。上記リチウム塩には1.0M Li(C2F5SO2)2Nを用いた。また、リチウム塩の量は、電解液に対して1.0Mとした。重合開始剤にはAIBNを用いた。
【0287】
D.電極−電解質層シール体の形成(前期シール工程)
本実施例のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成する前に、まず電極−電解質層シール体(図16(A)〜(C)参照)を形成する工程と、電極−電解質層シール体を複数積層して電池積層体を形成した後、最後に最外周にてシール部材同士を加熱シールする工程とに分けて行った。
【0288】
このうち、電極−電解質層シール体の形成工程では、バイポーラ電極の正極形成部分に電解質層の高分子ゲル電解質を保持させた部分が合わさるように、上記(A)工程で形成されたバイポーラ電極の正極側に上記(C)工程で形成された電解質層を積層した。積層後、これらの上下から正極が形成されていない集電体の部分(集電体をシールする部分)を加熱加圧しながらシール部(の一部)を熱融着し、該集電体に密着(シール)させて、該シール部のシールを行った(図16(A)のシール箇所(×印)参照)。こうして、バイポーラ電極の正極周縁部の集電体部分に、セパレータ外周部に成型配置されているシール部を一層ずつ別々に密着(シール)させて、電極−電解質層シール体を形成した(図16(A)参照)。なお、電極積層体の最外層に用いる電極も、図16(B)、(C)に示すように、集電体に必要な片面のみの電極(正極または負極)を形成した構造とし、上記と同様にして最外層用の電極−電解質層シール体を形成した。
【0289】
E.バイポーラ電池の形成(後期シール工程を含む)
1.電池積層体の形成
上記電極−電解質層シール体(最外層用の電極−電解質層シール体を含む)を、電極の正極と負極が電解質層を挟むように5層積層して、電池積層体を形成した(図15参照)。
【0290】
2.後期シール工程
次に、電池積層体を形成した後、熱融着樹脂系シール部の最外周に、上下から加熱加圧しながら該シール部最外周のシール部材同士を熱融着し、全てのシール部材同士を密着(シール)させて、該シール部のシールを行った(図15のシール箇所(●印)参照)。
【0291】
3.バイポーラ電池の形成
上記シール部同士のシール(後期シール工程)を終えた後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0292】
実施例10(実施例9の電池構成において、更にセパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分の面積が、正極形成面積より小さくなるようにシール用の熱融着樹脂を成型配置した例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0293】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0294】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの正極を形成した。
【0295】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0296】
まず、負極活物質としてLi4Ti5O12[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。尚、負極活物質に用いたLi4Ti5O12の二次粒子の平均粒径は10μmで、0.2〜0.5μmの一次粒子がある程度ネッキングした構造になっていた。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0297】
正極を形成したSUS箔の反対面に、正極面積に比して負極面積を広めに形成すべく、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの負極を形成した。
【0298】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1、図17参照のこと)。
【0299】
B.シール部の形成
正極および負極が形成された集電体よりも大きいセパレータとして、厚さ20μmのポリプロピレン製の微多孔膜セパレータを用意した(図9(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に、熱融着可能なシール用樹脂を染み込ませ(セパレータの厚さとほとんど同じ厚さのままで)、セパレータの細孔を塞ぐと共に、接着性を付与するように成型配置し、熱融着樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱融着可能なシール用樹脂にはポリプロピレンを用いた。
【0300】
C.電解質層の形成
外周部に熱融着樹脂系シール部を形成した微多孔膜セパレータの、該シール部の内側にプレゲル溶液を浸漬させ、不活性雰囲気下で90℃で1時間熱重合させて、該セパレータの中心部近傍にゲル電解質部を形成し、電解質層を形成した(図9(C)、(D)、図17の4c等参照)。得られた電解質層の高分子ゲル電解質を保持させた部分の厚さは20μmであり、微多孔膜セパレータと同じ厚さであった。
【0301】
なお、上記プレゲル溶液には、ポリマー[5質量%]と、電解液+リチウム塩[95質量%]と、重合開始剤[ポリマーに対して0.1質量%]とからなるものを用いた。ここで、上記ポリマーには、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体(共重合比が5:1、重量平均分子量が8000のものを用いた。上記電解液には、EC+DMC(EC:DMC(体積比)=1:3)を用いた。上記リチウム塩には1.0M Li(C2F5SO2)2Nを用いた。また、リチウム塩の量は、電解液に対して1.0Mとした。重合開始剤にはAIBNを用いた。
【0302】
D.電極−電解質層シール体の形成(前期シール工程)
本実施例のシール工程でも、後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成する前に、まず電極−電解質層シール体(図16(A)〜(C)参照)を形成する工程と、電極−電解質層シール体を複数積層して電池積層体を形成した後、最後に最外周にてシール部材同士を加熱シールする工程とに分けて行った。
【0303】
このうち、電極−電解質層シール体の形成工程では、バイポーラ電極の正極形成部分に電解質層の高分子ゲル電解質を保持させた部分及びその外周部に形成されたシール部の一部が合わさるように、上記A工程で形成されたバイポーラ電極の正極側に上記C工程で形成された電解質層を積層した。積層後、これらの上下から正極が形成されていない集電体の部分(集電体をシールする部分)を加熱加圧しながらシール部(の一部)を熱融着し、該集電体に密着(シール)させて、該シール部のシールを行った(図16(A)、図17のシール箇所(×印)参照)。こうして、バイポーラ電極の正極周縁部の集電体部分に、セパレータ外周部に成型配置されているシール部を一層ずつ別々に密着(シール)させて、電極−電解質層シール体を形成した(図16A参照)。なお、電極積層体の最外層に用いる電極も、図16(B)、(C)に示すように、集電体に必要な片面のみの電極(正極または負極)を形成した構造とし、上記と同様にして最外層用の電極−電解質層シール体を形成した。
【0304】
E.バイポーラ電池の形成(後期シール工程を含む)
1.電池積層体の形成
上記電極−電解質層シール体(最外層用の電極−電解質層シール体を含む)を、電極の正極と負極が電解質層を挟むように5層積層して、電池積層体を形成した(図17参照)。
【0305】
2.後期シール工程
次に、電池積層体を形成した後、熱融着樹脂系シール部の最外周に、上下から加熱加圧しながら該シール部最外周のシール部材同士を熱融着し、全てのシール部材同士を密着(シール)させて、該シール部のシールを行った(図17のシール箇所(●印)参照)。
【0306】
3.バイポーラ電池の形成
上記シール部同士のシール(後期シール工程)を終えた後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0307】
比較例1(シール部を持たない例)
比較例1として、微多孔膜セパレータのゲル電解質部の外周部にシール用樹脂が成型されていない電解質層を用いた以外は実施例1と同様にして5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体を電池外装材で封止してバイポーラ電池を形成した(図14参照)。
【0308】
<電池の評価>
上記実施例1〜10および比較例1の各バイポーラ電池に充放電サイクル試験を行った。充放電サイクル試験のサイクル条件は、1C定電流で4.2Vまで充電し、10分間休止をして1C定電流で2.5Vまで放電し、10分間休止までを1サイクルとした。試験中は、温度管理はせず、室温(約25℃)環境下で行った。
【0309】
シール用の樹脂が成型配置されていない比較例1のバイポーラ電池は、初回の充電を行っている途中に、電圧が低下する単電池層が確認されたため、解体調査(電池外装材のラミネートパックの熱融着部の一辺をはさみで切り取った)を行った。その結果、電池外装材のラミネートパックに電解液が付着しているのが確認され、電解液が単電池層外に染み出し、他の単電池層の電解質層と接触して液絡が起こっていた。
【0310】
他のシール部を有する実施例1〜10のバイポーラ電池は、50サイクルを超えても各単電池層の電圧が維持され、液絡が生じていないことが確認された。解体調査(電池外装材のラミネートパックの熱融着部の一辺をはさみで切り取った)を行った結果、ラミネートパックに電解液が付着していることはなく、電解液の染み出しは確認されなかった。
【0311】
上記した実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明が上記実施例に限定されることはない。
【0312】
本出願は、2004年12月10日に出願された日本国特許出願第2004−358550号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極と負極とが集電体の両側に配置されてなるバイポーラ電池に関し、より詳しくは、高分子固体電解質に比してイオン伝導度に優れた高分子ゲル電解質を用いてなるバイポーラ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護のため二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車などの導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が鋭意行われている。二次電池としては、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウムイオン二次電池に注目が集まっている。ただし、上記したような各種自動車のモータ駆動用電源に適用するためには、大出力を確保するために、複数の二次電池を直列に接続して用いる必要がある。
【0003】
しかしながら、接続部を介して電池を接続した場合、接続部の電気抵抗によって出力が低下してしまう。また、接続部を有する電池は空間的にも不利益を有する。即ち、接続部によって、電池の出力密度やエネルギー密度の低下がもたらされる。
【0004】
この問題を解決するものとして、集電体の両側に正極と負極とを配置したバイポーラ電池が開発されている。
【0005】
このうち、電解質層に溶液を含まない高分子固体電解質を用いてなるバイポーラ電池が提案されている(例えば、日本特開2000−100471号公報を参照)。これによれば、電池内に溶液(電解液)を含まないため、液漏れやガス発生の心配がなく、信頼性が高く、また構造的にも密閉シールが不要なバイポーラ電池を提供できるものである。しかしながら、高分子固体電解質のイオン伝導度は、高分子ゲル電解質と比べると低く、通常の使用環境では、電池の出力密度やエネルギー密度が十分でなく、実用化段階に至っていないのが現状であり、更なるイオン伝導度の向上が待たれている。
【0006】
一方、電解質層に電解液を含む高分子電解質を用いてなるバイポーラ電池が提案されている(例えば、日本特開2002−75455号公報及び日本特開平11−204136号公報を参照)。電解液を含む高分子電解質、即ち、高分子ゲル電解質を用いれば、イオン伝導度に優れ、電池の出力密度やエネルギー密度も十分に得られるため、実用化段階に最も近いバイポーラ電池として期待されている。
【発明の概要】
【0007】
しかしながら、電解質層に高分子ゲル電解質を用いてバイポーラ電池を構成しようとすると、電解質部分から電解液が染み出し、他の単電池層の電極や電解質層と接触し、液絡(短絡)するおそれがあった。
【0008】
したがって本発明が目的とするところは、電解質層に電解質を用いてなるバイポーラ電池において、該電解質部分からの電解液の染み出しによる液絡(短絡)を防止し、信頼性の高いバイポーラ電池を提供することである。
【0009】
本発明は、集電体の一方の面に正極が形成され、他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極を、電解質層を挟んで複数枚直列に積層したバイポーラ電池において、前記電解質層を保持するセパレータと、前記セパレータの電解質を保持させた部分の外周部に成型配置されたシール用の樹脂と、を備えることを特徴とするバイポーラ電池である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のバイポーラ電池を構成するバイポーラ電極の基本構造を模式的に表わした断面概略図である。
【図2】図2は、本発明のバイポーラ電池を構成する単電池層(単セル)の基本構造を模式的に表わした断面概略図である。
【図3】図3は、本発明のバイポーラ電池の基本構造を模式的に表わした断面概略図である。
【図4】図4は、本発明のバイポーラ電池の基本構成を模式的に表わしてなる概略図である。
【図5】図5は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータにシール部材を配置した電解質層の製造過程の様子を段階的に表わした平面概略図ないし断面概略図である。図5(A)は、製造前の電解質層の基材にあたる微多孔膜セパレータまたは不織布セパレータを表す平面概略図である。図5(B)は、セパレータの外周部にシール部を形成した段階の電解質層の製造過程の様子を模式的に表わした平面概略図である。図5(C)は、セパレータのシール部の内側にあたる中央部近傍にゲル電解質部を形成して電解質層を完成した様子を模式的に表わした平面概略図である。図5(D)は、図5(C)のD−D線に沿った断面概略図である。図5(E)は、図5(D)のシール部と異なるシール部を用いた場合の他の実施形態を表した断面概略図である。
【図6】図6は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータにゴム系シール部材を配置した電解質層の製造過程の様子を段階的に表わした平面概略図ないし断面概略図である。図6(A)は、製造前の電解質層の基材にあたる微多孔膜セパレータまたは不織布セパレータを表す平面概略図である。図6(B)は、セパレータの外周部に断面矩形のゴム系シール部を形成した段階の電解質層の製造過程の様子を模式的に表わした平面概略図である。図6(C)は、図6(B)で形成した断面矩形のゴム系シール部の内側にあたる中央部近傍にゲル電解質部を形成して電解質層を完成した様子を模式的に表わした平面概略図である。図6(D)は、図6(C)のD−D線に沿った断面概略図である。図6(E)は、セパレータの外周部に断面半円形ないし楕円形のゴム系シール部を形成した段階の電解質層の製造過程の様子を模式的に表わした平面概略図である。図6(F)は、図6(E)で形成した断面半円形ないし楕円形のゴム系シール部の内側にあたる中央部近傍にゲル電解質部を形成して電解質層を完成した様子を模式的に表わした平面概略図である。図6(G)は、図6(F)のG−G線に沿った断面概略図である。
【図7】図7は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータのゴム系シール部の代表的な実施形態による加圧シールの過程を模式的に表わした平面概略図および断面概略図である。図7(A)は、セパレータに断面矩形のゴム系シール部を配置した電解質層とバイポーラ電極を積層した様子を模式的に表した断面概略図である。図7(B)は、セパレータに矩形断面のゴム系シール部を配置した電解質層とバイポーラ電極とを積層して電池積層体を形成後、該電池積層体の上下から該積層体全面を加圧し、該シール部を加圧変形して集電体と密着シールした様子を表した断面概略図である。図7(C)は、セパレータに断面半円形ないし楕円形のゴム系シール部を配置した電解質層とバイポーラ電極を積層した様子を模式的に表した断面概略図である。図7(D)は、セパレータに半円形ないし楕円形断面のゴム系シール部を配置した電解質層とバイポーラ電極とを積層して電池積層体を形成後、該電池積層体の上下から該積層体全面を加圧し、該シール部を加圧変形して集電体と密着シールした様子を表した断面概略図である。
【図8】図8は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータのゴム系シール部の代表的な他の実施形態による加圧シールの過程を模式的に表わした断面概略図である。図8(A)は、セパレータに矩形断面のゴム系シール部を配置した電解質層とバイポーラ電極とを積層し外装材に封入して電池を形成後、該電池を上下から押さえる部材を用いて電池の上下から電池を加圧し、該シール部を加圧変形して集電体と密着シールした様子を表す断面概略図である。図8(B)は、セパレータに半円形・楕円形断面のゴム系シール部を配置した電解質層とバイポーラ電極とを積層し外装材に封入して電池を形成後、電池を上下から押さえる部材を用いて電池の上下から電池を加圧し、該シール部を加圧変形して集電体と密着シールした様子を表す断面概略図である。
【図9】図9は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータに熱融着樹脂系シール部材を配置した電解質層の製造過程の様子を段階的に表わした平面概略図ないし断面概略図である。図9(A)は、製造前の電解質層の基材にあたる微多孔膜セパレータまたは不織布セパレータを表す平面概略図である。図9(B)は、セパレータの外周部に断面矩形の熱融着樹脂系シール部を形成した段階の電解質層の製造過程の様子を模式的に表わした平面概略図である。図9(C)は、図9(B)で形成した断面矩形の熱融着樹脂系シール部の内側にあたる中央部近傍にゲル電解質部を形成して電解質層を完成した様子を模式的に表わした平面概略図である。図9(D)は、図9(C)のD−D線に沿った断面概略図である。
【図10】図10は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータの熱融着樹脂系シール部の熱融着シールの過程を模式的に表わした断面概略図である。図10(A)は、セパレータに断面矩形の熱融着樹脂系シール部を配置した電解質層とバイポーラ電極を積層した様子を模式的に表した断面概略図である。図10(B)は、セパレータに矩形断面の熱融着樹脂系シール部を配置した電解質層とバイポーラ電極とを積層して電池積層体を形成後、該積層体の上下から該シール部を加熱加圧し、該シール部材を熱融着して集電体と密着シールした様子を表した断面概略図である。
【図11】図11は、本発明のバイポーラ電池に用いられる電解質層の基材に当たるセパレータを集電体よりも大きくしたものを用いて形成した電池積層体の様子を模式的に表した断面概略図である。図11(A)は、集電体よりも大きなセパレータを用いた電解質層とバイポーラ電極を積層し、該電解質層のゴム系シール部を加圧変形して密着シールさせた電極積層体の様子を模式的に表した断面概略図である。図11(B)は、集電体よりも大きなセパレータを用いた電解質層とバイポーラ電極を積層し、該電解質層の熱融着樹脂系シール部を熱融着して密着シールさせた電極積層体の様子を模式的に表した断面概略図である。
【図12】図12は、本発明のバイポーラ電池に用いられる電流取り出し用の電極を、シール部材を配置したセパレータのシール部よりも大きくしたものを用いて形成した電池積層体の様子を模式的に表した断面概略図である。図12(A)は、電流取り出し用の電極に強電タブを用いて、シール部材を配置したセパレータのシール部よりも大きくした電解質層とバイポーラ電極とを積層し、該シール部を加圧変形して集電体に密着シールしてなる電極積層体の様子を表した断面概略図である。図12(B)は、図12(A)の平面概略図である。
【図13】図13は、本発明に係るバイポーラ電池および/または組電池を駆動用電源として搭載した車両を模式的に表した概略図である。
【図14】図14は、従来の高分子ゲル電解質層を用いたバイポーラ電池の基本構造を模式的に表わしてなる断面概略図である。
【図15】図15は、高分子ゲル電解質層とバイポーラ電極を積層し、上記熱融着樹脂系シール部材を加熱加圧(熱融着)し密着(シール)してなる、電極積層体の他の実施形態の様子を模式的に表した断面概略図である。
【図16】図16は、図15に示す電極積層体を一層ずつシールして作製してなる電極−電解質層シール体の一実施形態の様子を模式的に表した断面概略図である。図16(A)は、電極積層体の中間層に用いる、バイポーラ電極を用いてなる電極−電解質層シール体の一実施形態の様子を模式的に表した断面概略図である。図16(B)は、電極積層体の正極側最外層に用いる、集電体の必要な片面のみに正極を配置した電極を用いてなる電極−電解質層シール体の一実施形態の様子を模式的に表した断面概略図である。図16(C)は、電極積層体の負極側最外層に用いる、集電体の必要な片面のみに負極を配置した電極を用いてなる電極−電解質層シール体の一実施形態の様子を模式的に表した断面概略図である。
【図17】図17は、高分子ゲル電解質層とバイポーラ電極を積層し、さらにバイポーラ電極の外周部に絶縁層をセパレータと一部重なるように別々に配置してなる電極積層体の様子を模式的に表した断面概略図である。
【図18】図18は、セパレータに高分子ゲル電解質が保持された高分子ゲル電解質層とシール部材を別々に設置してなる電極積層体の様子を模式的に表した断面概略図である(参考例)。
【図19】図19は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータに熱硬化樹脂系シール部材を配置した電解質層の製造過程の様子を段階的に表わした平面概略図ないし断面概略図である。図19(A)は、製造前の電解質層の基材にあたる微多孔膜セパレータまたは不織布セパレータを表す平面概略図である。図19(B)は、セパレータの外周部に断面矩形の熱硬化樹脂系シール部を形成した段階の電解質層の製造過程の様子を模式的に表わした平面概略図である。図19(C)は、図19(B)で形成した断面矩形の熱硬化樹脂系シール部の内側にあたる中央部近傍にゲル電解質部を形成して電解質層を完成した様子を模式的に表わした平面概略図である。図19(D)は、図19(C)のD−D線に沿った断面概略図である。図19(E)は、セパレータの外周部に断面半円形ないし楕円形の熱硬化樹脂系シール部を形成した段階の電解質層の製造過程の様子を模式的に表わした平面概略図である。図19(F)は、図19(E)で形成した断面半円形ないし楕円形の熱硬化樹脂系シール部の内側にあたる中央部近傍にゲル電解質部を形成して電解質層を完成した様子を模式的に表わした平面概略図である。図19(G)は、図19(F)のG−G線に沿った断面概略図である。
【図20】図20は、本発明のバイポーラ電池に用いられる電解質層に熱硬化樹脂系シール部を配置する際の製造過程の様子を表わした平面概略図ないし断面概略図である。図20(A)は、集電体の一方の面の中央部近傍に正極が形成され他方の面の中央部近傍に負極が形成されてなるバイポーラ電極の正極側ないし負極側の外周部の四辺に熱硬化可能なシール用樹脂が成型配置されてなる様子を模式的に表わした平面概略図である。図20(B)は、図20(A)のB−B線に沿った断面概略図である。
【図21】図21は、本発明のバイポーラ電池に用いられる集電体の一方の面の中央部近傍に正極が形成され他方の面の中央部近傍に負極が形成されてなるバイポーラ電極の正極側ないし負極側の外周部の四辺に熱硬化可能なシール樹脂を配置するとともに、集電体の正極側ないし負極側にゲル電解質を配置し、外周部の四辺に熱硬化可能なシール樹脂を配置したセパレータを積層する様子を模式的に表わした断面概略図である。
【図22】図22は、本発明のバイポーラ電池に用いられる電解質層に熱硬化樹脂系シール部を配置する際の製造過程の様子を表わした平面概略図ないし断面概略図である。図22(A)は、集電体の一方の面の中央部近傍に正極が形成され他方の面の中央部近傍に負極が形成されてなるバイポーラ電極の正極側ないし負極側の外周部の四辺に熱硬化可能なシール用樹脂が成型配置されてなる様子を模式的に表わした平面概略図である。図22(B)は、図22(A)のB−B線に沿った断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態につき、説明する。
【0012】
本発明に係るバイポーラ電池は、集電体の一方の面に正極が形成され、他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極を、電解質層を挟んで複数枚直列に積層したバイポーラ電池において、前記電解質層を保持するセパレータの電解質(例えば、高分子ゲル電解質や液体電解質(電解液)など)を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明では、電池製造時(電極積層時)に簡易に電解質シール部(電解質シール用の樹脂が成型配置されてなる部分)を形成することができ、電解質の漏れ出しによる液絡(短絡)を防ぐことができる。また、電解質層として、シール部を電解質(例えば、高分子ゲル電解質や液体電解質(電解液)など)を保持させた部分と一体で構成することにより、該電解質を保持させた部分とシール部の積層を同時に行うことができ、電池製造工程が大幅に簡略化される。その結果、製品のコスト低減を図ることもできる。すなわち、単電池層間の液絡(短絡)による自己放電を防止するために、単電池層間の外周囲に新たに絶縁層を形成して電解液に対するシール性を持たせることも考えられる。しかしながら、バイポーラ電池の構成及び製造工程が複雑化ないし煩雑化する。これに対し、本発明のバイポーラ電池は、特別な部材(絶縁層等)を設けなくとも、単電池層間の液絡を防止することができ、イオン伝導度に優れ、充放電特性などの電池特性に優れたコンパクトなバイポーラ電池を提供できる。また、セパレータの外周部にシール材としての機能を兼ね備えることにより、積層時の重なりがなくなり、いっそうの薄層化が可能となる。そのため、信頼性が高く、優れたエネルギー密度および出力密度を保持できており各種産業において有用な電力源となる。
【0014】
図1〜4に本発明のバイポーラ電池の基本構成の概略を説明する。図1には、バイポーラ電池を構成するバイポーラ電極の構造を模式的に表わした概略断面図を示し、図2には、バイポーラ電池を構成する単電池層の構造を模式的に表わした概略断面図を示し、図3には、バイポーラ電池の全体構造を模式的に表わした概略断面図を示し、図4には、バイポーラ電池内に複数積層された単電池層が直列に接続されてなることを(記号化して)概念的に表わした概略図を示す。
【0015】
図1に示したように、本発明のバイポーラ電池では、図1〜4に示したように、1枚の集電体1の片面に正極2を設け、もう一方の面に負極3を設けたバイポーラ電極5を、シール部4bを配置した電解質層4を挟み隣り合うバイポーラ電極5の電極2、3が対向するようになっている。すなわち、バイポーラ電池11では、集電体1の片方の面上に正極2を有し、他方の面上に負極3を有するバイポーラ電極5を、電解質層4を介して複数枚積層した構造の電極積層体(電池要素部)7からなるものである。また、電極積層体7の最上層と最下層の電極(電流取り出し用の電極)5a、5bは、集電体1に必要な片面のみの電極(正極2または負極3)を形成した構造としてもよい(図3参照のこと)。該電流取り出し用の電極5a、5bも、バイポーラ電極の1種とみることもできる。また、バイポーラ電池11では、最上層と最下層の電極の集電体1ないし強電タブ(図12参照)にそれぞれ正極および負極リード8、9が接合されている。
【0016】
バイポーラ電極の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。シート状電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できるのであれば、バイポーラ電極の積層回数を少なくしてもよい。
【0017】
また、バイポーラ電池11では、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電極積層体7部分を電池外装材10に減圧封入し、電極リード8、9を電池外装材10の外部に取り出した構造とするのがよい(図3、4参照のこと)。軽量化の観点からは、該外装材10に高分子−金属複合ラミネートフィルムを用い、その周辺部の一部または全部を熱融着にて接合することにより、電極積層体7を収納し減圧封入(密封)し、電極リード8、9を外装材10の外部に取り出した構成とするのが好ましい。このバイポーラ電池11の基本構成は、図4に示すように、複数積層した単電池層(単セル)6が直列に接続された構成ともいえるものである。なお、本発明のバイポーラ電池は、リチウムイオンの移動によって充放電が媒介されるバイポーラリチウムイオン二次電池に用いられる。ただし、電池特性の向上等の効果が得られるのであれば、他の種類の電池に適用することを妨げるものではない。
【0018】
従来の高分子ゲル電解質層を用いたバイポーラ電池では、図14に示すように、集電体1の片面に正極2を形成し、反対側の面に負極3を形成してバイポーラ電極5を形成し、それらを電解質層4を挟んで積層している。したがって、電解質層4を構成する高分子ゲル電解質中に含まれる電解液が染み出して、他の単電池層6の電解液と接触することで、短絡(液絡)をするおそれがあった。本発明のバイポーラ電池では、以下に図面を用いて説明するように、セパレータにシール部材を配置した電解質層を形成することにより、従来の問題点を解決し得たものである。即ち、電解質層の電解質(例えば、高分子ゲル電解質や液体電解質(電解液)など)を保持させた部分(更には、電極にも高分子ゲル電解質や液体電解質を保持させた場合には、当該高分子ゲル電解質や液体電解質を含む)に含まれる電解液は、その外周部のシール部4により移動が制限され、外部にまで染み出すのを効果的に防止できる。そのため、他の単電池層の電極や電解質層などと接触して内部ショート(液絡)することのない高い安全性を有する高品質のバイポーラ電池を提供することができるものである。ここで、図5(A)〜(E)は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータにシール部材を配置した電解質層(高分子ゲル電解質層を用いた例を示す)の製造過程の様子を段階的に表わした平面概略図ないし断面概略図である。さらに、以下に説明する図5以外の図面において、電解質層として図5と同様に高分子ゲル電解質層を用いた例を示す。しかしながら、本発明では、上記したように、セパレータに保持させる電解質は必ずしも高分子ゲル電解質である必要はなく、低コスト、高出力を考慮して液体電解質(電解液)を用いてもよい。さらには固体電解質であってもよい。
【0019】
図5に示すように、本発明のセパレータにシール部材を配置した高分子ゲル電解質層4では、まず、基材として、電解質層に用いるサイズに相当する不織布セパレータまたは微多孔膜セパレータ4aを用意する(図5(A)参照)。次に、このセパレータ4aの外周部にシール用の樹脂(溶液)を、例えば、矩形や半円形等の適当な型枠を用いて充填・注液したり、塗布や含浸するなどして所望の形状に成型配置する方法等の適当な方法にてシール部4bを成型配置する(図5(B)参照)。セパレータ4aの両面に形成されるシール部4bの厚さ(高さ)は、正極ないし負極厚さよりも厚くなるように成型しておく必要がある。これにより、バイポーラ電極5と電解質層4を積層した後、圧力ないし熱をかけて電解質層4のシール部4bを加圧変形ないし熱融着させてバイポーラ電極5の集電体1に密着(シール)させることで、各単電池層6間のシールを行うことができる(図7等参照)。
【0020】
次に、基材としてのセパレータ4aのシール部4bで囲われた内部(中心部近傍)に、ゲル電解質用原料スラリー(プレゲル溶液)を塗布、含浸等して物理架橋したり、更に重合して化学架橋する方法等、適当な方法にて高分子ゲル電解質を保持させた部分を形成する(図5(C)〜(E)参照)。これにより、セパレータ4aの中心部近傍に高分子ゲル電解質が保持され、該セパレータ4aの該ゲル電解質を保持させた部分(ゲル電解質部4c)の外周部にシール部4bとしてシール用樹脂が成型配置されてなる構造を有する電解質層4を製造することができる。
【0021】
セパレータ両面へのシール用の樹脂の成型配置の形態(シール部の配置形態)としては、バイポーラ電池内の単電池層間のシール効果を有効に発現することができるものであればよく、特に制限されるものではない。例えば、図5(D)に示す矩形断面、図5(E)に示す半円形断面ないし楕円形断面などが例示できるが、これらに制限されるものではない。
【0022】
また、上記シール用樹脂の成型配置により得られるシール部材(シール部)は、上記セパレータを貫通または前記セパレータの側面全周を覆っていることが望ましい。セパレータのゲル電解質部4cからの電解液の染み出しをより確実に防ぐことができるためである。特にセパレータに不織布セパレータを用いた場合、(1)シール用の樹脂をセパレータ内部に染み込ませて隙間をなくして成型し、シール部材(シール部4b2)がセパレータを貫通するように配置する必要がある(図5(D)、(E)参照)。あるいは(2)セパレータの側面全周(外側)まで覆うようにシール部材(シール部4b2)を配置する必要がある(図5(D)参照)。電解質層4のゲル電解質部4cからセパレータ内部を通ってセパレータの側面からの電解液の染みだしを防止する必要があるためである。不織布セパレータでは、微多孔膜セパレータに比べてセパレータ内部を通じて電解液がセパレータの側面から外部に染み出しやすいためである。なお、微多孔膜セパレータでは、孔が積層方向のみに形成されているので、セパレータ内部を通じて積層方向と直角つまり側面方向に電解液が移動し難いため、セパレータの上下両面にシール部4b1を配置するだけでもよいが、不織布セパレータと同様に、シール部4b2やシール部4b3を配置してもよい。いずれを採用するかは電池の使用目的や全体の構成により決定すればよい。例えば、電池内部にガスが発生するおそれがあるような場合には、シール部4b1を配置し、単電池層内部で発生したガスを該セパレータ内部を通じて外部に排出させることで、ガスによる電極剥離や電池性能の低下を防止することもできる。一方、予めガス発生防止処理された電極等を採用するような場合には、シール部4b1のほか、シール部4b2やシール部4b3を配置してシール効果をより一層強化してもよい。
【0023】
上記電解質層のゲル電解質を保持させた部分(ゲル電解質部4c)の厚さは、特に限定するものではない。コンパクトなバイポーラ電池を得るためには、電解質層としての機能が確保できる範囲で極力薄くすることが好ましい。かかる観点から、本発明の高分子ゲル電解質層の厚さは5〜200μm程度である。
【0024】
このゲル電解質部4cの厚さは、セパレータ4aの厚みと同等であってもよいし(図5(D)、(E)参照)、セパレータ4aの厚みよりも厚くなるように形成してもよい。セパレータ4aの厚みよりも厚くする場合には、プレゲル溶液を塗布・含浸し、重合硬化する操作を何回か繰り返して厚さを増やすようにすることができる。あるいは適当な厚み調整治具を用いて一度の操作で所定の厚みを得るようにしてもよいなど、特に制限されるべきものではない。
【0025】
上記シール用樹脂としては、加圧変形させることで集電体と密着(シール)を行うのに適したゴム系樹脂、または加熱加圧して熱融着させることで集電体と密着を行うのに適したオレフィン系樹脂などの熱融着可能な樹脂を好適に利用することができる。この他にも、本発明の作用効果を有効に発現できるものであれば、耐アルカリ性及びシール性を有する各種樹脂を用いることができる。
【0026】
本発明では、上記シール用の樹脂の一実施形態として、ゴム系樹脂を用いることが望ましい。ゴム系樹脂をセパレータの周辺外周部に成型して得られたゴム部品(ゴム系シール部材)を加圧変形させることで電解質のシール(電解液の染み出しを防止すること)ができるからである。特にゴム系樹脂を用いる実施形態では、電解質の漏れ出しによる液絡(短絡)をゴム系シール部材の弾性を利用して防ぐことができる。また、熱融着処理を行なう必要が無く電池製造工程が簡略化される点でも有利である。更に、ゴム系シール部材の弾性を利用しているので、振動・衝撃などにより反復的に電池が細かく捩じれたり変形を繰返すような環境下でも、当該電池の捩じれや変形に追従してゴム系シール部材も容易に捩じれや変形してシール効果を保持することもできる。
【0027】
上記ゴム系樹脂としては、バイポーラ電池の上記シール部材として、バイポーラ電池のあらゆる使用環境下にあっても、優れた電解質のシール(液の染み出しを防止)効果を発揮することができるものであれば特に制限されるものではない。好ましくは、シリコン系ゴム、フッ素系ゴム、オレフィン系ゴム、ニトリル系ゴムよりなる群から選択されるゴム系樹脂である。これらのゴム系樹脂では、特に優れた上記作用効果を奏することができるためである。更に、これらのゴム系樹脂は、シール性(液密性)、耐アルカリ性、耐薬品性、耐久性・耐候性、耐熱性などに優れ、使用環境下でもこれらの優れた性能、品質を劣化させずに長期間維持することができる。そのため高分子ゲル電解質から電解液が染み出すのを効果的に防止することができ、電解液の漏れ出しによる液絡(短絡)を長期にわたり防ぐことができるからである。ただし、これらに制限されるものではない。
【0028】
図6(A)〜(G)は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータにゴム系シール部材を配置した高分子ゲル電解質層の製造過程の様子を段階的に表わした平面概略図ないし断面概略図である。図6では、図5で説明した上記シール用の樹脂として、上記ゴム系樹脂を用いてシール部4bを形成した以外は、図5で説明したと同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、セパレータ両面へのシール用の樹脂の成型配置の形態(シール部の配置形態)として、図5(E)と同じ半円形断面ないし楕円形断面を有する高分子ゲル電解質層の製造過程の様子を図6(E)〜(G)に示している。これらについても、セパレータ4aの外周部にゴム系樹脂(シール用樹脂)の溶液を、半円形や半楕円形断面の型枠などを用いて充填・注液したり、塗布、含浸するなどして所望の形状に成型する方法等、適当な方法にてシール部4bを成型配置する(図6(E)参照)。セパレータ4aの両側に形成されるシール部4bの厚さ(高さ)は、電極(正極ないし負極)厚さよりも厚くなるように成型しておく必要がある。これにより、バイポーラ電極5と電解質層4を積層した後、圧力をかけて電解質層4のシール部4bを加圧変形させてバイポーラ電極5の集電体1に密着(シール)させることで、各単電池層6間のシールを行うことができる(図7、8参照)。
【0029】
次に、セパレータ4aのシール部4bで囲われた内部(中心部近傍)に、プレゲル溶液を塗布、含浸等して物理架橋したり、更に重合して化学架橋する方法等、適当な方法にて電解質部4cを形成する(図6(F)、(G)参照)。これにより、セパレータ4aの中心部近傍に高分子ゲル電解質が保持され、同一のセパレータ4aのゲル電解質部4cの外周部にシール部4bとしてシール用のゴム系樹脂が成型配置されてなる構造を有する電解質層4を製造することができる。
【0030】
図7(A)〜(D)は、高分子ゲル電解質層とバイポーラ電極を積層し、上記ゴム系シール部材を加圧しシールする様子を模式的に表した断面概略図である。
【0031】
図7(A)、(C)に示すように、高分子ゲル電解質層4とバイポーラ電極5を積層する。この際、セパレータ4aの両面に成型された矩形断面ないし半円形断面のシール部4bの厚さ(高さ)は、正極ないし負極厚さよりも厚くなるように成型されている。そこで、図7(B)、(D)に示すように、バイポーラ電極5と電解質層4を積層後に、電極積層体7の上下から該電極積層体7に圧力をかけて、電解質層4のシール部4bを加圧変形させてバイポーラ電極5の集電体1に密着(シール)させる必要がある。本実施形態では、加圧の際に更に熱を加えて、該シール部材を加圧変形させた状態で熱融着させて集電体1に強固に結合(接着ないし融着)させる。これにより、電極積層体7を外部から常に加圧された状態に置く必要がなく、加圧のための部材などが不要になる点で優れている。
【0032】
また、バイポーラ電極5と電解質層4を複数積層して電極積層体7を組み上げ、これを外装材に封入した後の電池1を、該電池の上下から電池に圧力をかけて、電解質層4のシール部4bを加圧変形させてバイポーラ電極5の集電体1に密着させてもよい。例えば、図8(A)、(B)に示すように、電池を上下から押さえるための部材、例えば、電池を上下から厚さ3mm程度の鉄板(挟持板)12で挟み、該鉄板12をボルト13a、ナット13bで締め付けて押さえるようにしてもよい。これによっても、該電池1の上下から電池を加圧し、電解質層4のシール部4bを加圧変形させてバイポーラ電極5の集電体1に密着(シール)させることができ、各単電池層6間のシールを行うことができる。
【0033】
図7、8のいずれの形態にせよ、加圧個所は、シール部材が配置されているところだけ、またはシール部材が配置されている部分を含む電極積層体7または電池全体でもよい。
【0034】
本発明では、上記シール用樹脂の他の一実施形態として、ゴム系樹脂以外にも、熱融着可能な樹脂を用いることもできる。こうした熱融着可能なシール用樹脂をセパレータの周辺外周部に成型して得られた熱融着樹脂部品(熱融着樹脂系シール部材)を集電体と熱融着することで電解質のシール(液の染み出しを防止すること)ができるからである。特に、電解液の漏れ出しによる液絡(短絡)を集電体との熱融着シールにより防ぐことができるので、熱融着時の加圧が不十分な場合でも、熱融着による接着さえ十分に行われていれば液絡を防止できる。
【0035】
上記ゴム系樹脂以外の熱融着可能な樹脂としては、上記シール部材としてバイポーラ電池のあらゆる使用環境下にて、優れたシール(電解液の染み出しを防止)効果を発揮することができるものであれば特に制限されるものではない。好ましくは、シリコン、エポキシ、ウレタン、ポリブタジエン、オレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレンなど)、パラフィンワックスよりなる群から選択される樹脂である。これらの樹脂では、特に優れた上記作用効果を奏することができるためである。更に、これらの樹脂は、シール性(液密性)、耐アルカリ性、耐薬品性、耐久性・耐候性、耐熱性などに優れ、使用環境下でもこれらの優れた性能、品質を劣化させずに長期間維持することができる。そのため高分子ゲル電解質から電解液が染み出すのを効果的に防止することができ、電解液の漏れ出しによる液絡(短絡)を長期にわたり防ぐことができるからである。ただし、これらに制限されるものではない。より好ましくは、集電体との接着性を向上させた樹脂が好ましく、例えば、変性ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0036】
図9(A)〜(D)は、本発明のバイポーラ電池に用いられる、セパレータに熱融着樹脂系シール部材を配置した高分子ゲル電解質層の製造過程の様子を段階的に表わした平面概略図ないし断面概略図である。図9では、図5で説明したシール用の樹脂として、上記熱融着可能な樹脂を用いてシール部4bを形成した以外は、図5で説明したと同様である。
【0037】
図9に示すように、セパレータに熱融着樹脂系シール部材を配置した高分子ゲル電解質層4では、まず、該電解質層に用いるサイズに相当する不織布セパレータまたは微多孔膜セパレータ4aを用意する(図9(A)参照)。次に、このセパレータ4aの外周部にシール用の樹脂として熱融着可能な樹脂(溶液)を、矩形等の適当な型枠を用いて充填・注液したり、塗布、含浸するなどして所望の形状に成型配置する方法等、適当な方法にてシール部4bを成型配置する(図5(B)参照)。本実施形態でも、図6(E)〜(G)と同様にして、半円形ないし半楕円形断面のシール部4bも適用可能である。熱融着による集電体との接着面積をより広く確保し、シール効果を高める観点からは、図9に示す矩形断面のシール部4bの方が望ましい。なお、上記熱融着可能な樹脂を用いてシール部4bを成型する段階では、該熱融着可能な樹脂が熱融着を起こさない条件で成型してもよいし、熱融着させて成型してもよい。セパレータ4aの両側に形成されるシール部4bの厚さ(高さ)は、電極(正極ないし負極)厚さよりも厚くなるように成型しておく必要がある。これにより、バイポーラ電極5と電解質層4を積層した後、加熱及び加圧して電解質層4のシール部4bを熱融着させてバイポーラ電極5の集電体1に密着させることで、各単電池層6間のシールを行うことができる(図10(A)、(B)参照)。あるいはバイポーラ電極5と電解質層4を1層(ないし2〜3層)ずつ積層するごとに、加熱及び加圧して電解質層4のシール部4bを熱融着させてバイポーラ電極5の集電体1に密着させる操作を繰り返すことで電池の各単電池層6間のシールをより確実に行うこともできる。
【0038】
次に、セパレータ4aのシール部4bで囲われた内部(中心部近傍)に、プレゲル溶液を塗布、含浸等して物理架橋したり、更に重合して化学架橋する方法等、適当な方法にてゲル電解質部4cを形成する(図9(C)、(D)参照)。これにより、セパレータ4aの中心部近傍に高分子ゲル電解質が保持され、同一のセパレータ4aのゲル電解質部4cの外周部にシール部4bとしてシール用の熱融着可能な樹脂が成型配置されてなる構造を有する電解質層4を製造することができる。
【0039】
図10(A)、(B)は、高分子ゲル電解質層とバイポーラ電極を積層し、上記熱融着樹脂系シール部材を加熱加圧(熱融着)しシールする様子を模式的に表した断面概略図である。
【0040】
図10(A)に示すように、高分子ゲル電解質層4とバイポーラ電極5を積層する。この際、セパレータ4aの両面に成型されたシール部4bの厚さ(高さ)は、電極(正極2ないし負極3)厚さよりも厚くなるように成型されている。そこで、図10(B)に示すように、バイポーラ電極5と電解質層4を積層後に、電極積層体7の上下から該電極積層体7に熱及び圧力をかけて、電解質層4のシール部4bを加熱加圧して熱融着させてバイポーラ電極5の集電体1に密着させる必要がある。加熱加圧の際には、該シール部材を加圧しながら熱を加えて熱融着させ、集電体1に強固に結合(接着ないし融着)させるのが望ましい。これにより、図8のように電池を加圧し、シール部を常に加圧変形した状態に置く必要がなく、加圧のための部材12、13等が不要になる点で優れている。なお、加熱する際の温度条件としては、熱融着可能な樹脂の熱融着温度よりも高い温度であって他の電池部品に影響を及ぼさない範囲の温度であればよく、熱融着可能な樹脂の種類に応じて適宜決定すればよい。例えば、変性ポリプロピレン等では、200℃程度が好適であるが、これに制限されるものではない。
【0041】
熱融着樹脂系シール部材を用いた上記実施形態でも、加熱加圧する個所は、図10(B)に示すようにシール部材が配置されているところだけでもよいし、シール部材が配置されている部分を含む電極積層体7または電池全体でもよい。更に、加熱によるシール部材以外の電池部品への影響を考慮すれば、加熱加圧する個所は、シール部材が配置されているところだけとし、シール部材が配置されている部分以外の電極積層体7または電池部分については、加圧のみ行うようにするのが望ましい。これは、図7に示すゴム系シール部の加圧シール形態でも同様である。
【0042】
シール部材にはシリカなどのセラミック、無機酸化物が分散されていることが望ましい。これらの材料が分散されていると樹脂に進入した水分を吸着することができ長期間に渡っての水分の浸入の防止が期待できる。
【0043】
上記セパレータの大きさは、セパレータ機能を有効に発現し得る大きさであれば特に制限されるものではない。例えば、図7(B)、図8(A)、(B)、図10(B)に示すように、正極および負極が形成された集電体の大きさとほぼ同等の大きさのものを利用できる。
【0044】
更に、セパレータの大きさの好適な実施形態を図面を用いて説明する。図11(A)は、高分子ゲル電解質層とバイポーラ電極を積層し、上記ゴム系シール部材を加圧し密着(シール)してなる電極積層体の様子を模式的に表した断面概略図である。図11(B)には、高分子ゲル電解質層とバイポーラ電極を積層し、上記熱融着樹脂系シール部材を加熱加圧(熱融着)し密着(シール)してなる電極積層体の一実施形態の様子を模式的に表した断面概略図である。
【0045】
図11(A)、(B)に示すように、上記高分子ゲル電解質が保持され、同一のセパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されたセパレータは、正極2および負極3が形成された集電体1よりも大きいことが望ましい。ゴム系シール部材によりシールを行う際の加圧や熱融着樹脂系シール部材による熱融着の際の加圧により隣接する集電体同士が接触する可能性がある場合には、適当な絶縁部材を追加する必要がある。しかしながら、セパレータを集電体よりも大きくすることで他の絶縁部材を追加することなく接触による内部ショートを防止することが可能となる。
【0046】
セパレータを集電体よりも大きくする場合、該セパレータの大きさ(図11(A)、(B)に示す長さ「X」)を集電体1の外周縁部(周辺部)よりも1mm〜10mm程度、好ましくは3mm〜5mmの大きくするのが望ましい。隣接する集電体同士が接触するのを効果的に防止することができるためである。上記に規定するセパレータの大きさ(長さX)は、図11(A)、(B)に示すように、積層方向に隣接したセパレータ同士を接着させない実施形態において有効である。
【0047】
図11Aでは、ゴム系シール部材の弾性によるシール効果が有効に機能するように、正極2および負極3が形成された部分の外周部の集電体1間に密着してゴム系シール部4b’が配置されている。さらにゴム系シール部4b’の外周部には、高分子ゲル電解質を保持せず、尚且つ絶縁性を有するセパレータ4aが、集電体1よりも大きいため該集電体1の外側にはみ出す構造となっている。これにより、電池積層体7を外装材10で減圧しながら封止する際に、隣接する集電体1の外周縁部同士が密着するような負荷(外力)が加わっても、隣接する集電体1同士の接触による内部ショートを防止できる。
【0048】
同様に、図11(B)でも、熱融着樹脂系シール部材の熱融着によるシール効果が有効に機能するように、正極2および負極3が形成された部分の外周部の集電体1間に密着して熱融着樹脂系シール部4b”が配置されている。さらに熱融着樹脂系シール部4b”は、集電体1よりも大きいため、該熱融着樹脂系シール部4b”が、集電体1の外側まではみ出した構造となっている。これによっても、隣接する集電体1同士の接触による内部ショートを防止できる。
【0049】
更に、セパレータの大きさの好適な他の実施形態を図面を用いて説明する。図15は、高分子ゲル電解質層とバイポーラ電極を積層し、シール用の樹脂を形成したシール部材を加熱加圧(熱融着)し密着(シール)してなる、電極積層体の他の実施形態の様子を模式的に表した断面概略図である。図16(A)〜(C)は、バイポーラ電極(ないし最外層電極)と電解質層とを一層ずつ積層しシールして形成した電極−電解質層シール体の実施形態の様子を模式的に表した断面概略図である。図18は、高分子ゲル電解質層とシール材料を別々に設置してなる電極積層体の様子を模式的に表した断面概略図(参考図面)である。
【0050】
本発明では、セパレータを集電体よりも大きくする場合、さらに、図15に示すように、該セパレータ(電解質層4)の集電体1よりも大きい部分において積層方向に隣接した別のセパレータ(に形成したシール用の樹脂部分;シール部4b)と接着(シール)されているものであってもよい。かかる構成では、セパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分4cの外周部に形成したシール部4bが、下記(A)のシール部分と(B)のシール部分とを備えているものである。こうして、セパレータの外周部にシール材としての機能を兼ね備えることにより、他の実施形態と同様に積層時の重なりがなくなり、一層の薄層化が可能となる点において優れている。
【0051】
ここで、(A)のシール部分とは、正極2(ないし負極3)が形成された部分の外周部の集電体1と接着してシールされている部分(図15、16中のシール箇所;×印参照)である。当該(A)のシール部分である集電体1と接着してシールされている部分の長さ(図16(A)〜(C)に示す長さ「Y」)は、上記(A)のシール部分に適切なシール機能を備えさせることができるように、適宜決定するのが望ましい。上記(A)のシール部分に適切なシール機能を備えさせることで、隣接する集電体同士が接触するのを効果的に防止することができる。かかる要件については、本発明の他の実施形態においても上記範囲を満足するように設定するのが望ましい。上記要件を満足するように、集電体としては、必要な正極2(ないし負極3)面積を確保できる大きさであって、尚且つ正極2(ないし負極3)が形成された外周部の幅が、上記長さYを確保できるものとする必要がある。同様に、セパレータとしては、上記正極2(ないし負極3)面積に対応する電解質が保持された部分4cを確保し、その外周部にシール部4を形成すればよい。なお、セパレータの大きさは、下記(B)のシール部分に規定する長さZの要件を満足するように設定すればよい。
【0052】
上記(B)のシール部分は、セパレータ(電解質層4)の集電体1よりも大きい部分において積層方向に隣接した別のセパレータに形成したシール部4bを接着してシールされている部分(図15中のシール箇所;●印参照)である。該セパレータの大きさ(図16(A)〜(C)に示す長さ「Z」)は、上記(B)のシール部分に適切なシール機能を備えさせることができるように、集電体1の外周縁部(周辺部)よりも所定量大きくするのが望ましい。セパレータの大きさ(図16(A)〜(C)に示す長さ「Z」)を集電体1の外周縁部(周辺部)よりも大きくすることで、隣接する集電体同士が接触するのを効果的に防止し、尚且つ集電体1よりも大きい部分において積層方向に隣接した別のセパレータに成型配置したシール部4bをより確実に接着(シール)することができる。なお、かかる(B)のシール部分は、一層ごと接着(シール)していってもよいし、一度にこれらシール部分4bを上下から接着(シール)しても良いなど特に制限されるものではない。
【0053】
さらに、図18に示すように、高分子ゲル電解質層4と矩形枠型のシール材料18を別々に設置しようとすると、積層時の重なり部分(図18の丸で囲った部分参照)が薄層化の妨げになるという問題がある。また、セルの平面度を下げる要因にもなる。一方、本発明では、本実施形態に限らず、セパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分4cの外周部にシール用の樹脂(シール部4b)が一体となって形成された構成であることから、セパレータの外周部がシール部材として有効かつ効果的に機能することができる。そのため、図18のような電解質層4c(ないしセパレータ)とシール材料との重なりもなく、セルの平面度を損なうことなく、薄層化が可能である点でも優れている。
【0054】
かかる構成は、図16(A)に示すように、バイポーラ電極5を、セパレータに高分子ゲル電解質が保持された電解質層4を介して複数枚積層した構造の電極積層体(電池要素部)を作製する段階において、一層ずつ行うのが望ましい。詳しくは、1つのバイポーラ電極5の正極2側(または負極3側)に1つの電解質層4を積層する。次に、バイポーラ電極5の正極2(または負極3)が形成されていない周縁部の集電体1部分に、電解質層4の外周部に形成したシール部4bの一部を、上下から図の矢印の方向に一層ずつ加熱シールして(図16(A)のシール個所(×印)参照)、電極−電解質層シール体17を形成する。続いて、図15に示すように、得られた電極−電解質層シール体17を複数積層して、最後に最外周にて上下から図の矢印の方向にシール部4b同士を加熱シールすることにより(図15のシール個所(●印)参照)、電極積層体7が得られる。
【0055】
この際、電極積層体7の最外層には、図16(B)、(C)に示すように、集電体1に必要な片面のみの電極を形成した最外層電極5a、5bに、電解質層4外周部のシール部4bをシールした電極−電解質層シール体17a、17bを用いるのが好ましい。このうち、図16(B)に示す正極側最外層に用いる電極−電解質層シール体17aでは、集電体1の片面に正極2を配置した電極5aの当該正極側に電解質層4を積層する。次に、該電極5aの正極2が形成されていない正極側周縁部の集電体1部分に、電解質層4外周部のシール部4bの一部を、図中の矢印で示すように上下から加熱加圧してシール(密着)することで電極−電解質層シール体17aを得ることができる。一方、図16(C)に示す負極側最外層に用いる電極−電解質層シール体17bでは、集電体1の片面のみに負極3を配置した電極5bの負極を形成してないもう一方の面に、シール部材4bを積層する。次に、該電極5bの負極を形成してないもう一方の面の周縁部集電体1部分に、シール部材4bを、図中の矢印で示すように上下から加熱加圧してシール(密着)することで電極−電解質層シール体17bを得ることができる。このシール部材4bには、電解質層4のうち、中央部分の高分子ゲル電解質が保持された部分4cを持たないもの(取り除いたもの)を用いることができる。このシール部材4bは、例えば、矩形枠型のセパレータ全体にシール用の樹脂を成型配置するなどして作製することができるが、かかる方法に何ら制限されるものではない。
【0056】
また、図15のセパレータ(電解質層4)の外周部のシール部4bでは、当該外周部にシール用の樹脂(熱融着樹脂や接着剤等)を染み込ませ、セパレータの孔を塞ぐと共に、接着性(熱融着性)を付与し、セパレータの厚さとほとんど同じ厚さに形成してもよい。あるいは、シール部4bの厚さを、複数積層した際に、隣接する電極外周部の間に隙間が無くなる程度に厚く形成してもよい。
【0057】
なお、本実施形態でも、上述した図10(B)などに示す実施形態のように、複数積層した後に一度にこれら複数層の各シール部4bの上記(A)のシール部分を、上下より加熱・加圧して接着(シール)を行ってもよい。そして、その後に最外周にて各シール部4bの上記(B)のシール部分同士を一度に上下より加熱・加圧して接着(シール)してもよいなど、特に制限されるものではない。
【0058】
上記(A)のシール部分を一層ずつシールを行う場合には、複数積層した後に一度にこれら複数層の加熱シールを行う場合に比べてシール回数(加熱回数)は増えるものの、一層ずつ確実に集電体とセパレータのシール部材を接着できる点で優れている。即ち、一層ずつシールを行う方法では全ての層がより均一且つ確実にシールできる点で優れている。
【0059】
一方、上記(A)のシール部分を、複数積層した後に一度にこれら複数層の加熱シールを行う場合でも、複数層の中央部分のシール部材が十分に溶融して集電体に接着シールしたのを確認して加熱操作を終えるようにすればよい。さらに、複数積層した後で全ての層をより均一且つ確実にシールするには、セパレータのシール部材を以下のような構成とすることがより望ましい。即ち、図10(B)に示すように、複数積層した両側の最外層から加熱・加圧してシールを行う場合には、最外層側から中央部分に向けた温度勾配が形成される。そのため、最外層部分のシール部材が溶融しても、中央部分のシール部材は十分に溶融されていないおそれがある。そこで、最外層側から中央部分に向けて融点が低くなるように異なるシール用の樹脂を用いて、最外層側から中央部分まで略同じタイミングで一様に溶融されるように設計するのが望ましい。この際には、充放電時の電池温度の上昇などを勘案して、こうした高温環境下でシール用の樹脂が軟化、溶融してシール性を損なわないように、シール用の樹脂を適宜選択する必要がある。
【0060】
なお、図15に示す本実施形態でも、電解質層4の構造及び製造方法に関しては、先に図5、図6、図9等を用いて説明したと同様である。但し、本実施形態では、電解質層4のシール部4bが、上記(A)のシール部分と、上記(B)のシール部分を備えていることから、該シール部4bをセパレータの上下両面に一定の厚さを持って成型配置する必要は必ずしもない。例えば、(1)該シール部4bをセパレータの上下面のいずれか一方にのみ一定の厚さを持って成型配置してもよい。あるいは、(2)セパレータの外周部にシール用の樹脂(例えば、熱融着樹脂や接着剤等)を染み込ませ、セパレータの厚さとほとんど同じ厚さのままで、セパレータの孔を塞ぐと共に、接着性を付与するようにシール用の樹脂を成型配置することもできる。このようにしてセパレータの外周部にシール材料としての機能を兼ね備えることにより、積層時の重なりがなくなり、一層の薄層化が可能となる。
【0061】
セパレータの大きさの好適な更に他の実施形態を図面を用いて説明する。図17は、高分子ゲル電解質層とバイポーラ電極を積層し、さらにバイポーラ電極の外周部に絶縁層をセパレータと一部重なるように別々に配置してなる電極積層体の様子を模式的に表した断面概略図である。なお、図17のセパレータ(電解質層4)の外周部のシール部4bでは、当該外周部にシール用の樹脂(例えば、熱融着樹脂や接着剤等)を染み込ませ、セパレータの孔を塞ぐと共に、接着性(熱融着性)を付与し、セパレータの厚さとほとんど同じ厚さに形成した例を示している。
【0062】
本発明では、図17に示すように、セパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分4cの面積が、少なくともいずれか一方の電極(正極2または負極3)面積、好ましくは正極2の面積より小さくなるようにシール用の樹脂が成型配置されていてもよい。
【0063】
かかる構成では、構造上、図17に示すように、シール部4bが正極2(または負極3)の上まで掛かっており、上記したような本発明の作用効果に加えて、電極活物質のない部分の副反応(集電体1の溶解など)が抑制されるというメリットがある。なお、シール部4bが正極2(または負極3)上に一部かかる事で、若干の容量低下というデメリットもあるが、下記に規定する長さWの要件を満足する範囲であれば、多くの用途で問題なく許容できる。特に自動車用途(例えば、駆動用電源)の場合、若干の容量低下は何ら問題なく許容できるものであり、こうした用途において特に有用な技術となり得る。
【0064】
該セパレータ(電解質層4)のシール部4bが、正極2(または負極3)上に掛かっている幅(図17に示す長さ「W」)は、上記副反応(集電体の溶解など)の抑制効果を有効に発現させることができるように適宜決定するのが望ましい。かかる長さWを設けることで、上記した若干の容量低下のデメリットを必要最小限に抑えた上で、副反応(集電体の溶解など)抑制効果を最大限に発揮させることができる。なお、本実施形態においても、上記(A)及び(B)のシール部分を備えることにより適切なシール機能が得られるように、図16(A)〜(C)に示す長さY及びZが上記に規定する範囲を満足するように設定するのが望ましい。
【0065】
即ち、従来のバイポーラ電池では、図14に示すように、隣接するバイポーラ電極5の、電極(正極2ないし負極3)が形成されていない部分の集電体1同士が対向して配置されている(セパレータを介していない部分もある)。そのため、電池の充放電の際に当該集電体1部分で副反応が生じ、集電体1が溶解するなどの問題があった。そこで、こうした問題の大きい、即ち副反応が生じやすい負極3側の集電体1上に、正極2側の集電体1上に形成する正極2よりも広めに負極3を形成することで、その問題を解消している。よって、正極2が形成されていない部分の正極側集電体1は、広めに形成された負極(負極活物質層)3と対向する構造となっている。上記問題を解消するための構成は、本発明においても有効であり、例えば、図15〜17に示すように、同様の構成をとり得るものである。なお、これらの図面以外は、こうした構成を特に図示していないが、本発明の他の実施形態においても必要に応じて適宜採用し得るものである。
【0066】
しかしながら、正極2が形成されていない部分の正極側集電体1は、上記のように対向する集電体1上に負極3を広めに形成していても、全く副反応が無いわけではない。そこで、本実施形態では、イオンを通さないシール層(セパレータのシール部4b)を正極2(ないし負極3)にかぶるようにすることにより、電極(正極2、負極3)が形成されていない部分の集電体1同士、あるいは正極2が形成されていない部分の集電体1と広めに形成された負極3とが対向するのを防止することができるものである。これにより、正極側及び負極側集電体1双方の副反応を効果的に防止することができる。特に、正極側集電体1での僅かな副反応についても効果的に防止することができるので、より一層の長寿命化が図れ、長期使用が強く切望されている自動車用途(例えば、駆動用電源)に用いるような場合に特に有用な技術となり得る。
【0067】
なお、本実施形態では、既に説明したとおりであるが、セパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分の面積は、正極面積より小さくなるようにシール用の樹脂が成型配置されているのが望ましい。
【0068】
一方、負極面積は、むしろ、セパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分の面積よりも大きくてもよい。図17などに示すように、集電体面積と同じにしてもよい。ただし、他の実施形態のように、隣接する集電体同士をシール部4bにより接着シールさせる場合には、これに必要な部分、例えば、図17に示す長さW分だけ負極が形成されていない外周部が形成されるようにするのが望ましい。
【0069】
また、図15、図17に示す実施形態では、シール部4として、熱融着樹脂系シール部4”を用いるのが望ましいといえる。
【0070】
また、図3、図7(B)、(D)、図8(A)、(B)、図10(B)、図11(A)、(B)、に示すように、電流取り出し用の電極、即ち電極積層体7の最上層と最下層の電極5a、5bの集電体1の上層ないし下層には、更に必要に応じて、電流取り出しに適した強電タブを設けてもよい。電流取り出しに適した強電タブとは、大電流を取り出すことができるように、集電体に比して十分な厚さがあるものなどが用いられている。さらに、電流取り出し用の電極の集電体または強電タブの大きさは、集電及び電流取り出し効果を有効に発現し得るものであれば特に制限されるものではない。例えば、図3、図7(B)、図8(B)、図10(B)に示すように、シール部材を配置したセパレータのシール部の外周縁部とほぼ同じ大きいものを用いてもよい。また図11(B)に示すように、シール部材を配置したセパレータのシール部の外周縁部よりも小さいものを用いてもよい。さらに、図7(D)、図8(A)、図11(A)に示すように、シール部材を配置したセパレータのシール部よりも大きいものを用いてもよい。
【0071】
特に、シール部に上記ゴム系シール部材を配置する場合での、電流取り出し用の電極の強電タブの大きさの好適な実施形態を図面を用いて説明する。図12(A)は、電流取り出し用の電極に電流取り出しに適した強電タブを設けたものを用いて、電解質層とバイポーラ電極(最上層と最下層の電極を含む)を積層し、ゴム系シール部材を加圧変形し集電体に密着してなる電極積層体の様子を模式的に表した断面概略図である。図12(B)は、図12(A)の平面概略図である。
【0072】
図12では、電流取り出し用の電極の強電タブ14が、シール部材を配置したセパレータのシール部4d’よりも大きいものを用いた構造となっている。このように、強電タブ14をゴム系シール部材を配置した電解質層(セパレータ)の当該ゴム系シール部4d’よりも大きく設定することで、より確実にゴム系シール部材を加圧できるようになる。即ち、圧力をかけてゴム系シール部を加圧変形させて集電体と密着させる場合、集電体1が薄いため剛性がなく、ゴム系シール部4’に十分な加圧が出来ないことがある。そこで、十分な剛性を持った強電タブ(大電流を取り出すため厚さがある)を、シール部材を配置したセパレータのシール部が配置されてある部分よりも大きく設定することで、より確実にゴムシール部材を加圧できるようになる。その結果、電解質膜の高分子ゲル電解質を保持させた部分(更に電極にも高分子ゲル電解質を保持させている場合には当該部分を含む)からの電解液の漏れ出しによる液絡(短絡)をより確実に防ぐことができる。
【0073】
電流取り出し用の電極(強電タブ14)として、シール部材を配置したセパレータのシール部4dよりも大きいものを用いる場合、該強電タブ14の大きさ(図12(A)に示す長さ「Y」)をシール部4dの外周縁部よりも1〜5mm大きくするのが望ましい。シール部4b全体を均等に加圧することができるためである。
【0074】
また、本発明の電解質層4を構成するセパレータ4aとしては、特に制限されるべきものではない。微多孔膜セパレータおよび不織布(ノンウーブンファブリック)セパレータのいずれも利用することができる。
【0075】
上記微多孔膜セパレータとしては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーからなる多孔性シート(例えば、ポリオレフィン系微多孔質セパレータなど)などを用いることができる。有機溶媒に対して化学的に安定であるという性質を持つ上記ポリオレフィン系微多孔質セパレータは、電解質(電解液)との反応性を低く抑えることができるという優れた効果を有するものである。
【0076】
該微多孔膜セパレータの材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PP/PE/PPの3層構造をした積層体、ポリイミドなどが挙げられる。
【0077】
上記微多孔膜セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできない。電気自動車(EV)や燃料電池自動車やこれらのハイブリッド車などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、電池の薄膜化の観点から、単層あるいは多層で1〜60μmであることが望ましい。微多孔膜セパレータの厚さが、かかる範囲にあることでセパレータに微粒が食い込むことによって発生する短絡の防止と、高出力のために電極間を狭くすることが望ましいという理由から、厚さ方向の機械的強度と高出力性の確保という効果がある。また電池を複数接続する場合には、電極面積が増大することから、電池の信頼性を高めるために上記範囲のなかでも厚形のセパレータを用いることが望ましい。
【0078】
上記微多孔膜セパレータの微細孔の径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。微多孔膜セパレータの微細孔の平均径が、上記範囲にあることで熱によって微多孔膜セパレータが溶融して微細孔が閉じる「シャットダウン現象」が速やかに起きるという理由から、異常時信頼性が上がり、その結果として耐熱性が向上するという効果がある。すなわち、過充電で電池温度が上昇していったとき(異常時)に、セパレータが溶融して微細孔が閉じる「シャットダウン現象」が速やかに起きることで、電池(電極)の正極(+)から負極(−)側にLiイオンが通れなくなり、それ以上は充電できなくなる。そのため過充電できなくなり、過充電が解消する。その結果、電池の耐熱性(安全性)が向上するほか、ガスがでて電池外装材の熱融着部(シール部)が開くのを防止できる。ここでセパレータの微細孔の平均径は、セパレータを走査電子顕微鏡等で観察し、その写真をイメージアナライザ等で統計的に処理した平均径として算出される。
【0079】
上記微多孔膜セパレータの空孔率は20〜50%であることが望ましい。微多孔膜セパレータの空孔率が、上記範囲にあることで電解質(電解液)の抵抗による出力低下の防止と、微粒がセパレータの空孔(微細孔)を貫くことによる短絡の防止という理由から出力と信頼性の両方を確保するという効果がある。ここで微多孔膜セパレータの空孔率とは、原材料レジンの密度と最終製品の微多孔膜セパレータの密度から体積比として求められる値である。
【0080】
上記微多孔膜セパレータへの電解質の含浸量は、微多孔膜セパレータの保持能力範囲まで含浸させればよいが、当該保持能力範囲を超えて含浸させてもよい。これは、電解質にシール部を設け、電解質層からの電解液の染み出しを防止できるため、該電解質層に保持できる範囲であれば含浸可能である。
【0081】
また、上記不織布セパレータとしても、セパレータ機能を有し、高分子ゲル電解質を保持させることができるものであれば特に制限されるべきものではなく、繊維を絡めてシート化することにより製造することができる。また、加熱によって繊維同士を融着することにより得られるスパンボンド等も用いることができる。すなわち、繊維を適当な方法でウェブ(薄綿)状またはマット状に配列させ、適当な接着剤あるいは繊維自身の融着力により接合して作ったシート状のものであればよい。上記接着剤としては、製造及び使用時の温度下で十分な耐熱性を有し、高分子ゲル電解質に対しても反応性や溶解性等がなく安定したものであれば、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用できる。また、使用繊維としては、特に制限されるものではなく、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを用いることができる。これらは、使用目的(電解質層に要求される機械強度など)に応じて、単独または混合して用いる。
【0082】
また、不織布セパレータのかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性を得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。すなわち、あまり不織布セパレータのかさ密度が大きすぎると、電解質層中の非電解質材料が占める割合が大きくなりすぎ、電解質層におけるイオン伝導度などを損なうおそれがあるためである。
【0083】
不織布セパレータの空孔率は30〜70%であることが好ましい。空孔率が30%未満では、電解質の保持性が悪化し、70%超では強度が不足する。
【0084】
さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層の高分子ゲル電解質を保持させた部分と同じであればよく、好ましくは5〜20μmであり、特に好ましくは5〜10μmである。厚さが5μm未満ではショート不良が増加電解質の保持性が悪化し、20μmを超える場合には抵抗が増大することになる。
【0085】
また、図5〜12では、説明の都合上、電解質層と同じサイズのセパレータを用いて説明している。しかしながら、実際の製造では、各種の印刷・塗布技術ないし薄膜形成技術を利用して、ロール状のセパレータを利用して、該セパレータ上に連続的にシール部を有する電解質層を形成するようにしてもよい。また、より大きなセパレータを用いて、一度に大量のシール部を有する電解質層を形成するようにしてもよい。このように、実際の製造では、各種量産化技術を適用することができる。
【0086】
また、電解質層4を構成するゲル電解質部4cに用いる高分子ゲル電解質としては、特に制限されるべきものではなく、従来の高分子ゲル電解質層に用いられているものを適宜利用することができる。ここで、高分子ゲル電解質とは、ポリマーマトリックス中に電解液を保持させたものをいう。具体的には、イオン伝導性を有する高分子(いわば、固体高分子電解質)に、通常リチウムイオン二次電池で用いられる電解液を含んだもの、さらにリチウムイオン伝導性を持たない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも含まれる。
【0087】
なお、本発明において、全固体高分子電解質(単に、高分子固体電解質ともいう)と、高分子ゲル電解質との違いは、以下のとおりである。
【0088】
1)ポリエチレンオキシド(PEO)などの全固体高分子電解質に、通常のリチウムイオン電池で用いられる電解液を含んだものが高分子ゲル電解質である。
【0089】
2)ポリふっ化ビニリデン(PVDF)など、リチウムイオン伝導性をもたない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも高分子ゲル電解質にあたる。
【0090】
3)高分子ゲル電解質を構成するポリマー(ホストポリマーないしポリマーマトリックス)と電解液の比率は幅広く、ポリマー100質量%を全固体高分子電解質、電解液100質量%を液体電解質とすると、その中間体はすべて高分子ゲル電解質にあたる。
【0091】
上記高分子ゲル電解質のポリマーマトリックスとしては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用することができる。好ましくは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリふっ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびそれらの共重合体が望ましく、溶媒には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびそれらの混合物が望ましい。
【0092】
このうち、イオン導伝性を有する高分子としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体のようなポリアルキレンオキシド系高分子などの公知の固体高分子電解質が挙げられる。PEO、PPOのようなポリアルキレンオキシド系高分子は、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2などのリチウム塩をよく溶解しうる。また、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度が発現する。
【0093】
上記リチウムイオン伝導性を持たない高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。なお、PAN、PMMAなどは、どちらかと言うとイオン伝導性がほとんどない部類に入るものであるため、上記イオン伝導性を有する高分子とすることもできる。ここでは高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン伝導性を持たない高分子として例示したものである。
【0094】
上記高分子ゲル電解質に含まれる電解液としては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用することができる。通常リチウムイオン電池で用いられるものであればよく、リチウム塩(電解質塩)と有機溶媒(可塑剤)とを含むものなどを用いることができる。具体的には、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiAlCl4、Li2B10Cl10、LiTFSI、LiFSI、LiBETI、LiBOB等の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種類のリチウム塩(電解質塩)を含み、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる少なくともから1種類または2種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の有機溶媒(可塑剤)を用いたものなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0095】
本発明における高分子ゲル電解質中の電解液の割合は、使用目的などに応じて決定すればよく、特に制限されるべきものではない。イオン伝導度などの観点から、数質量%〜98質量%の範囲で好適に利用可能である。ただし、かかる範囲に制限されるものではない。本発明では、電解液の割合が70質量%以上の、電解液が多い高分子ゲル電解質について、特に効果がある。かかる割合では、液体電解質タイプのリチウムイオン二次電池に近いイオン伝導性を有するなど優れた電池特性を発揮でき、電解液が多くてもセパレータにシール用の樹脂を成型配置することで高いシール性能を維持し、電解液の染み出しを効果的に防止できるためである。
【0096】
また、本発明では、高分子ゲル電解質に含まれる電解液の量は、ゲル電解質部で略均一になるようにしてもよいし、中心部から外周部に向けて傾斜的に少なくしていってもよい。前者は、より広範囲で反応性を得ることができるため好ましい。後者は、外周部のシール部のうち、セパレータを貫通したり、貫通または前記セパレータの側面全周を覆っているシール部4b2や4b3を設けていないような場合でも、電解液に対するシール性をより一層高めることができる点で好ましい。中心部から外周部に向けて傾斜的に少なくしていく場合には、上記ホストポリマーないしポリマーマトリックスには、リチウムイオン伝導性のあるポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびそれらの共重合体を用いることが望ましい。
【0097】
上記電解質層の中央近傍のゲル電解質部とその外周部のシール部との割合は、シール部の材料によっても異なるため一義的に決定することはできない。更にシール部では、隣接する集電体同士が接触して内部ショートするのを防止する効果をも持たせる場合などでは、該シール部を大きくする必要があり、こうした観点からも一義的に決定することはできない。したがって、シール部の幅は、上述した集電体との密着(シール)性や集電体同士の接触防止効果など、その使用目的に応じて、1mm〜10mmの範囲で適宜決定すればよい。
【0098】
また、本発明では、上記したように、セパレータに保持させる電解質は必ずしも高分子ゲル電解質である必要はなく、低コスト、高出力を考慮して液体電解質(電解液)を用いてもよい。さらには固体電解質であってもよい。該液体電解質(電解液)としては、上記高分子ゲル電解質で説明した電解液と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。同様に、固体電解質としては、高分子ゲル電解質で説明した全固体高分子電解質と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
【0099】
以上、本発明に係るバイポーラ電池の特徴部分の構成要素である、セパレータの電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されている電解質層を中心に説明したものである。本発明のバイポーラ電池の他の構成要素については、特に制限されるべきものではなく、従来公知のバイポーラ電池に幅広く適用可能である。
【0100】
以下、本発明のバイポーラ電池の構成要素ごとに簡単に説明するが、本発明がこれらに何ら制限されるべきものでないことは言うまでもない。
【0101】
[集電体]
本発明で用いることのできる集電体としては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを利用することができる。例えば、アルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく使える。また、金属表面に、アルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。また、場合によっては、2つ以上の金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、ステンレス箔を集電体として用いることが好ましい。
【0102】
さらに、本発明で用いることのできる集電体としては、製法上、スプレーコートなどの薄膜製造技術により、所望の形状に製膜して形成したものを利用することもできる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などの金属粉末を主成分として、これにバインダ(樹脂)、溶剤を含む集電体金属ペーストを加熱して成形してなるものである。これら金属粉末は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよいし、さらに、製法上の特徴を生かして金属粉末の種類の異なるものを多層に積層したものであってもよい。また、バイポーラ電池における集電体は積層方向のみに電流を流すため、集電体の抵抗値が金属に比べて高いものでも用いることができる。例えば導電性高分子を主成分とする導電性高分子膜もしくは高分子材料に導電性粒子を分散させた導電性高分子膜も利用することができ、シール材との密着性の観点からは好適である。
【0103】
上記バインダとしては、特に制限されるべきものではなく、たとえば、エポキシ樹脂など、従来公知の樹脂バインダ材料を用いることができるほか、導電性高分子材料を用いても良い。
【0104】
集電体の厚さは、特に限定されないが、通常は1〜100μm程度である。
【0105】
[正極(正極活物質層)]
正極は、正極活物質を含む。この他にも、電子伝導性を高めるための導電助剤、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩、バインダ、高分子ゲル電解質などが含まれ得る。
【0106】
このうち、正極活物質としては、特に制限されるものではなく、溶液タイプのリチウムイオン二次電池に使用可能なものを適宜利用することができる。好ましくは、容量、出力特性に優れた電池を構成できることから、遷移金属とリチウムとの複合酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物)である。具体的には、LiCoO2などのLi・Co系複合酸化物、LiNiO2などのLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMn2O4などのLi・Mn系複合酸化物、LiFeO2などのLi・Fe系複合酸化物などが挙げられる。この他、LiFePO4などの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V2O5、MnO2、TiS2、MoS2、MoO3などの遷移金属酸化物や硫化物;PbO2、AgO、NiOOHなどを用いることもできる。
【0107】
正極活物質の粒径は、バイポーラ電池の電極抵抗を低減するために、バイポーラタイプでない溶液(電解液)系のリチウムイオン二次電池で用いられる一般に用いられる粒径よも小さいものを使用するとよい。具体的には、正極活物質微粒子の平均粒径が0.1〜10μm、好ましくは0.1〜5μmであるとよい。
【0108】
上記電子伝導性を高めるための導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0109】
上記イオン伝導性を高めるためのリチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiAlCl4、Li2B10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N等の有機酸陰イオン塩、またはこれらの混合物などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0110】
上記バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0111】
上記高分子ゲル電解質については、高分子ゲル電解質層のゲル電解質部4cに用いられる高分子ゲル電解質として説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0112】
正極に含まれるゲル電解質中の電解液の割合は、使用目的などに応じて決定すればよく、数質量%〜98質量%の範囲で好適に利用可能である。ただし、かかる範囲に制限されるものではない。本発明は、電解液の割合が70質量%以上の電解液が多いゲル電解質について、特に効果がある。かかる割合では、液体電解質タイプのリチウムイオン二次電池に近いイオン伝導性を有するなど優れた電池特性を発揮でき、電解液が多くてもセパレータにシール用の樹脂を成型配置することで高いシール性能を維持し、電解液の染み出しを効果的に防止できるためである。
【0113】
正極における、正極活物質、導電助剤、バインダ、高分子ゲル電解質(ポリマーマトリックス、電解液など)等の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮して決定すべきである。例えば、正極内における高分子ゲル電解質の配合量が少なすぎると、正極内でのイオン伝導抵抗やイオン拡散抵抗が大きくなり、電池性能が低下してしまう。一方、正極内における高分子ゲル電解質の配合量が多すぎると、電池のエネルギー密度が低下してしまう。従って、これらの要因を考慮して、目的に合致した高分子ゲル電解質量を決定する。
【0114】
正極の厚さは、特に限定するものではなく、配合量について述べたように、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮して決定すべきである。一般的な正極層の厚さは10〜500μm程度である。
【0115】
[負極(負極活物質層)]
負極は、負極活物質活物質を含む。この他にも、電子伝導性を高めるための導電助剤、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩、バインダ、高分子ゲル電解質(ポリマーマトリックス、電解液など)などが含まれ得る。
【0116】
負極活物質の種類以外は、基本的に「正極(正極活物質層)」の項で記載した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0117】
負極活物質としては、特に制限されるものではなく、溶液タイプのリチウムイオン二次電池に使用可能なものを適宜利用することができる。具体的には、カーボン、金属酸化物、リチウム−金属複合酸化物などを用いることができるが、好ましくはカーボンもしくはリチウム−遷移金属複合酸化物である。これらを用いることで、容量、出力特性(例えば、電池電圧が高くできるなど)に優れた電池を構成できるからである。なお、リチウム−遷移金属複合酸化物としては、例えば、リチウム−チタン複合酸化物などを用いることができる。また、カーボンとしては、例えば、黒鉛、グラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラックなどを用いることができる。また、金属酸化物としては、例えば、チタン酸化物などの遷移金属酸化物などを用いることができる。
【0118】
[電解質層]
本発明の電解質層は、セパレータに電解質が保持され、該セパレータの電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されてなるものである。これらに関しては、既に説明した通りである。
【0119】
また、電解質は、電池を構成する電解質層のほか、上記したように正極および/または負極にも含まれ得る。電池を構成する電解質層、正極、負極によって異なる電解質を用いてもよいし、同一の電解質を使用してもよい。また各単電池層(の各構成部材)によって異なる電解質を用いてもよい。
【0120】
電解質層の電解質を保持させた部分の厚さは、所望の電解質性能を有効に発現できるものであればよく、特に限定するものではない。しかしながら、コンパクトなバイポーラ電池を得るためには、電解質層としての機能が確保できる範囲で極力薄くすることが好ましい。当該電解質を保持させた部分の厚さとしては、10〜100μm程度である。
【0121】
電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されてなる部分(シール部4b)の厚さに関しては、既に説明した通りである。即ち、該シール部を成型配置した状態(未シール状態)では、セパレータの両面に形成されたシール部は、電極(正極ないし負極)よりも厚く形成しておく。その後、シール部を加圧変形ないし加熱加圧による熱融着変形させて、電極(正極ないし負極)と同じ厚さにし、電極と電解質層との界面を隙間なく密着させるようにするものである。なお、シール部を成型配置した状態(未シール状態)では、セパレータの両面に形成されたシール部は、電極(正極ないし負極)の厚さよりも0〜1mmの範囲でより厚く形成すればよい。詳しくは、シールフィルムでは熱融着しても厚みがほとんど変化しない。したがって熱融着タイプの場合はほとんど厚くする必要はなく、0〜10μm程度厚くすればよい。ゴム系のシール(加圧タイプ)はゴムの変形によりシール性を確保するため、電極よりも50μm〜1mm程度の高さが必要である。ただし、かかる範囲に制限されるものではない。
【0122】
電解質層の電解質を保持させた部分の形状は、機能、性能面からも部位によらず常にほぼ一定の厚さにする必要はない。また、シール用の樹脂が成型配置されてなる部分(シール部4b)の形状については、既に説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
【0123】
ところで、電解質層の電解質として高分子ゲル電解質を用いる場合、現在好ましく使用される高分子ゲル電解質用のポリマーマトリックスは、イオン導伝性を有する高分子であるPEO、PPOのようなポリエーテル系高分子である。このため、高温条件下における正極側での耐酸化性が弱い。従って、溶液系のリチウムイオン二次電池で一般に使用される、酸化還元電位の高い正極剤を使用する場合には、負極の容量が、高分子ゲル電解質層を介して対向する正極の容量より少ないことが好ましい。負極の容量が対向する正極の容量より少ないと、充電末期に正極電位が上がり過ぎることを防止できる。なお、正極および負極の容量は、正極および負極を製造する際の理論容量として、製造条件から求めることができる。完成品の容量を測定装置で直接測定してもよい。
【0124】
ただし、負極の容量を対向する正極の容量と比べて少ないと、負極電位が下がりすぎて電池の耐久性が損なわれる恐れがあるので充放電電圧に注意する必要がある。例えば、一のセル(単電池層)の平均充電電圧を使用する正極活物質の酸化還元電位に対して適切な値に設定して、耐久性が低下しないように注意する。
【0125】
[絶縁層]
絶縁層は、集電体同士が接触したり、電解液が漏れ出したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こるのを防止する目的で、各電極の周囲に形成されてなるものである。本発明では、セパレータの外周部のシール用の樹脂が成型配置されている部分に同様の機能を付与することができるため(図5〜図12参照)、特に絶縁層を設ける必要はないが、補助的に該絶縁層を設けてもよい。
【0126】
該絶縁層としては、絶縁性、電解液の漏出や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよく、例えば、エポキシ樹脂、ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが使用できるが、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
【0127】
[強電タブ]
強電タブは、図12で説明した通りであり、必要に応じて最外層の電極を構成する集電体に取り付けられる。用いる場合には、端子としての機能を有するほか、薄型化の観点からは極力薄い方がよい。しかしながら、積層されてなる正極、負極、電解質層および集電体はいずれも機械的強度が弱いため、これらを両側から挟示し支持し、更にはより確実にゴムシール部材を加圧できるようにするだけの強度を持たせることが望ましい。さらに、強電タブでの内部抵抗を抑える観点からも、強電タブの厚さは、通常0.1〜2mm程度が望ましいといえる。
【0128】
強電タブの材質は、通常のリチウムイオン二次電池で用いられる材質を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などを利用することができる。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウムを用いることが好ましい。
【0129】
電流取り出し用の正極側の強電タブと負極用の強電タブとの材質は、同一の材質を用いてもよいし、異なる材質のものを用いてもよい。さらに、これら正極側および負極側の強電タブは、材質の異なるものを多層に積層したものであってもよい。
【0130】
正極および負極側の強電タブは、集電体と同じサイズであればよいが、図12A、Bを用いて説明したように、シール部材を配置したセパレータのシール部4dよりも大きいものを用いるのが望ましい。
【0131】
[正極および負極リード]
図12(B)に示すように、正極リード8および負極リード9に関しては、通常リチウムイオン二次電池で用いられる公知のリードを用いることができる。該正極および負極リードの材質も、通常のリチウムイオン二次電池で用いられる材質を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などを利用することができる。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウムを用いることが好ましい。
【0132】
[電池外装材(電池ケース)]
バイポーラ電池は、外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、図8(A)、(B)に示すように、電池積層体全体を電池外装材(電池ケース)10に収容するとよい。電池外装材としては、軽量化の観点から、金属を高分子絶縁体で被覆したアルミラミネートパックなどの高分子−金属を複合したラミネートフィルム(単に、高分子−金属複合ラミネートフィルムとも称する)のような従来公知の電池外装材が好ましい。
【0133】
上記高分子−金属複合ラミネートフィルムとしては、特に制限されるべきものではなく、高分子フィルム間に金属フィルムを配置し全体を積層一体化してなる従来公知のものを使用することができる。具体例としては、例えば、高分子フィルムからなる外装保護層(ラミネート最外層)、金属フィルム層、高分子フィルムからなる熱融着層(ラミネート最内層)のように配置し全体を積層一体化してなるものが挙げられる。詳しくは、外装材に用いられる高分子−金属複合ラミネートフィルムは、上記金属フィルムの両面に、高分子フィルムとして、まず耐熱絶縁樹脂フィルムを形成し、少なくとも片面側の耐熱絶縁樹脂フィルム上に熱融着絶縁性フィルムが積層されたものである。かかるラミネートフィルムは、適当な方法にて熱融着させることにより、熱融着絶縁性フィルム部分が融着して接合し熱融着部が形成される。上記金属フィルムとしては、アルミニウムフィルム等が例示できる。また、上記絶縁性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテトラフタレートフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ナイロンフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ポリエチレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)、ポリプロピレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)等が例示できる。ただし、本発明の外装材は、これらに制限されるべきものではない。
【0134】
こうした高分子−金属複合ラミネートフィルムでは、超音波溶着等により熱融着絶縁性フィルムを利用して1対ないし1枚(袋状)のラミネートフィルムの熱融着による接合を、容易かつ確実に行うことができる。よって、本発明では、こうした高分子−金属複合ラミネートフィルムを用いて、その周辺部の一部または全部を熱融着にて接合することにより、電池積層体を収納し密封した構成とするのが好ましい。なお、電池の長期信頼性を最大限高めるためには、高分子−金属複合ラミネートシートの構成要素である金属フィルム同士を直接接合してもよい。金属フィルム間にある熱融着性樹脂を除去もしくは破壊して金属フィルム同士を接合するには超音波溶着を用いることができる。
【0135】
電池外装材に高分子−金属複合ラミネートフィルムを用いる場合、上記正極および負極リードは、上記熱融着部に挟まれて該電池外装材の外部に露出される構造とすればよい。また、熱伝導性に優れた高分子−金属複合ラミネートフィルムを用いることが、自動車の熱源から効率よく熱を伝え、電池内部を電池動作温度まですばやく加熱することができる点で好ましい。
【0136】
次に、本発明では、上記のバイポーラ電池を複数個接続して構成した組電池とすることができる。すなわち、本発明のバイポーラ電池を少なくとも2個以上を用いて直列および/または並列に接続して構成した組電池とすることで、使用目的ごとの電池容量や出力に対する要求に、比較的安価に対応することが可能になる。
【0137】
具体的には、例えば、上記のバイポーラ電池をN個並列に接続し、N個並列にしたバイポーラ電池をさらにM個直列にして金属製ないし樹脂製の組電池ケースに収納し、組電池とする(N、Mは2以上の整数)。この際、バイポーラ電池の直列/並列接続数は、使用目的に応じて決定する。例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車など大容量電源として、高エネルギー密度、高出力密度が求められる車両の駆動用電源に適用し得るように組み合わせればよい。また、組電池用の正極端子および負極端子と、各バイポーラ電池の電極リードとは、リード線等を用いて電気的に接続すればよい。また、バイポーラ電池同士を直列/並列に接続する際には、スペーサやバスバーのような適当な接続部材を用いて電気的に接続すればよい。これにより、種々の車両用ごとの容量・電圧の要望を基本のバイポーラ電池の組み合わせで対応が可能になる。その結果、必要エネルギー、出力の設計選択性を容易にすることが可能になる。そのため種々の車両用ごとに異なるバイポーラ電池を設計、生産する必要がなく、基本となるバイポーラ電池の大量生産が可能となり、量産化によるコスト削減が可能となる。
【0138】
また、本発明の組電池は、上記に説明したものに制限されるべきものではなく、従来公知のものを適宜採用することができる。例えば、本発明の組電池では、本発明のバイポーラ電池と、該バイポーラ電池と正負極電極材料を同一とし該バイポーラ電池の構成単位数を直列することにより電圧を同一にした電池と、を並列に接続したものであってもよい。
【0139】
上記バイポーラ電池と正負極電極材料を同一とし該バイポーラ電池の構成単位数を直列することにより電圧を同一にした電池としては、好ましくはバイポーラ型でないリチウムイオン二次電池(通常リチウムイオン二次電池)が挙げられる。すなわち、組電池を形成する電池は、本発明のバイポーラ電池とバイポーラ型ではないリチウムイオン二次電池等とを混在させても良い。これにより、出力重視のバイポーラ電池と、エネルギー重視の一般リチウムイオン二次電池の組み合わせでお互いの弱点を補う組電池ができ、組電池の重量・サイズを小さくすることができる。それぞれのバイポーラ電池とバイポーラ型でないリチウムイオン二次電池をどの程度の割合で混在させるかは、組電池として要求される安全性能、出力性能に応じて決める。
【0140】
本発明の組電池には、使用用途に応じて、各種計測機器や制御機器類を設けてもよく、例えば、電池電圧を監視するために電圧計測用コネクタなどを設けておいてもよいなど、特に制限されるものではない。
【0141】
また本発明では、上記組電池を少なくとも2以上直列、並列、または直列と並列の複合接続した複合組電池とすることで、使用目的ごとの電池容量や出力に対する要求に、新たに組電池を作製することなく、比較的安価に対応することが可能になる。すなわち、こうした複合組電池は、組電池を少なくとも2以上直列、並列、または直列と並列の複合接続したものであり、基準の組電池を製造し、それを組み合わせて複合組電池とすることで、組電池の仕様をチューニングできる。これにより、仕様の異なる沢山の組電池種を製造しなくてよいため、複合組電池コストを減少することができる。このように、組電池を複数直並列接続されてなる複合組電池は、一部の電池、組電池が故障しても、その故障部分を交換するだけで修理が可能である。なお、上記組電池には、本発明のバイポーラ電池だけで構成したものの他、本発明のバイポーラ電池と他のバイポーラ型でない電池とで構成したものを含んでいてもよい。
【0142】
本発明では、上記のバイポーラ電池および/または組電池(複合組電池を含む)を駆動用電源として搭載した車両とすることができる。本発明のバイポーラ電池および/または組電池は、上述のように各種特性を有し、特に、コンパクトな電池である。このため、エネルギー密度および出力密度に関して、とりわけ厳しい要求がなされる車両、例えば、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車等の駆動用電源として好適である。例えば、図13に示したように、電気自動車ないしハイブリッド電気自動車16の車体中央部の座席下に組電池15を駆動用電源として搭載するのが、車内空間およびトランクルームを広く取れるため便利である。本発明では、これらに何ら制限されるべきものではなく、後部トランクルームの下部に搭載してもよいし、あるいは電気自動車や燃料電池自動車のようにエンジンを搭載しないのであれば、車体前方のエンジンを搭載していた部分などに搭載することもできる。なお、本発明では、組電池15だけではなく、使用用途によっては、バイポーラ電池を搭載するようにしてもよいし、これら組電池15とバイポーラ電池を組み合わせて搭載するようにしてもよい。また、本発明のバイポーラ電池および/または組電池を駆動用電源として搭載することのできる車両としては、上記の電気自動車、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車が好ましいが、これらに制限されるものではない。
【0143】
本発明のバイポーラ電池の製造方法としては、特に制限されるべきものではなく、従来公知の各種の方法を適宜利用することができる。以下に、簡単に説明する。なお、以下の製造方法の説明においても、電解質層の電解質として高分子ゲル電解質を用いた製造例を示すが、本発明ではこれらに制限されるものでない。また、セパレータに高分子ゲル電解質が保持され、該セパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されてなる高分子ゲル電解質層の製造方法に関しては、既に図5〜図12、図15〜18を用いて説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
【0144】
(1)正極用組成物の塗布
まず、適当な集電体を準備する。正極用組成物は、通常はスラリー(正極用スラリー)として得られ、集電体の一方の面に塗布される。塗布方法には、バーコーティング、スプレーコーティングのほか、スクリーン印刷、インクジェット方式で印刷する塗布方法なども含まれる。
【0145】
正極用スラリーは、正極活物質を含む溶液である。他成分として、導電助剤、バインダ、重合開始剤、高分子ゲル電解質の原料(高分子原料、電解液など)、リチウム塩などが任意で含まれる。高分子電解質層に高分子ゲル電解質を用いることから、正極活物質微粒子同士を結びつける従来公知のバインダ、電子伝導性を高めるための導電助剤、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのスラリー粘度調整溶媒などが含まれていればよく、高分子ゲル電解質の原料やリチウム塩などは含まれていなくても良い。
【0146】
高分子ゲル電解質の高分子原料は、PEO、PPO、これらの共重合体などが挙げられ、分子内に架橋性の官能基(炭素−炭素二重結合など)を有することが好ましい。この架橋性の官能基を用いて高分子原料を架橋することによって、機械的強度が向上する。
【0147】
正極活物質、導電助剤、バインダ、リチウム塩、電解液に関しては、前述した化合物を用いることができる。
【0148】
重合開始剤は、重合させる化合物に応じて選択する必要がある。例えば、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。
【0149】
NMPなどの溶媒は、正極用スラリーの種類に応じて選択する。
【0150】
正極活物質、リチウム塩、導電助剤等の添加量は、バイポーラ電池の目的等に応じて調節すればよく、通常用いられる量を添加すればよい。重合開始剤の添加量は、高分子原料に含まれる架橋性官能基の数に応じて決定される。通常は高分子原料に対して0.01〜1質量%程度である。
【0151】
(2)正極の形成
正極用スラリーが塗布された集電体を乾燥して、含まれる溶媒を除去し、正極を形成する。それと同時に、正極用スラリーによっては、架橋反応を進行させて、高分子固体電解質の機械的強度を高めてもよい。乾燥は真空乾燥機などを用いることができる。乾燥の条件は塗布された正極用スラリーに応じて決定され、一義的に規定できないが、通常は40〜150℃で5分〜20時間である。
【0152】
(3)負極用組成物の塗布
正極が形成された面と反対側の面に、負極活物質を含む負極用組成物(負極用スラリー)を塗布する。
【0153】
負極用スラリーは、負極活物質を含む溶液である。他成分として、導電助剤、バインダ、重合開始剤、高分子ゲル電解質の原料(高分子原料、電解液など)およびリチウム塩などが任意で含まれる。使用される原料や添加量については、「(1)正極用組成物の塗布」の項での説明と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0154】
(4)負極の形成
負極用スラリーが塗布された集電体を乾燥して、含まれる溶媒を除去し、負極を形成する。それと同時に、負極用スラリーによっては、架橋反応を進行させて、高分子ゲル電解質の機械的強度を高めてもよい。この作業により、バイポーラ電極が完成する。乾燥は真空乾燥機などを用いることができる。乾燥の条件は塗布された負極用スラリーに応じて決定され、一義的に規定できないが、通常は40〜150℃で5分〜20時間である。
【0155】
(5)バイポーラ電極と電解質層との積層
別途、電極間に積層される電解質層として、セパレータに高分子ゲル電解質が保持され、該セパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されてなる電解質層を準備する。該電解質層は、図5(あわせて図6〜図12も参照)を用いて説明した手順で作製すればよい。
【0156】
以上のように作製したバイポーラ電極を高真空下で十分加熱乾燥してから、バイポーラ電極と電解質層をそれぞれを適当なサイズに複数個切りだす。電解質層は、バイポーラ電極の集電体サイズよりも若干大きくすることが望ましい(図11参照のこと)。切りだされたバイポーラ電極と電解質層とを所定数張り合わせて、電池積層体を作製する。積層数は、バイポーラ電池に求める電池特性を考慮して決定される。電解質層が一面または両面に形成されたバイポーラ電極を、直接貼り合わせてもよい。最外層の電解質層上には、それぞれ電流取り出し用の電極を配置する。正極側の最外層には、集電体上に正極のみを形成した電流取り出し用の電極を配置する。負極側の最外層には、集電体上に負極のみを形成した電流取り出し用の電極を配置する。バイポーラ電極と電解質層とを積層させてバイポーラ電池を得る段階は、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。例えば、アルゴン雰囲気下や窒素雰囲気下でバイポーラ電池を作製するとよい。
【0157】
なお、セパレータに液体電解質が保持され、該セパレータの液体電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されてなる電解質層を用いる場合には、例えば、以下の手順でバイポーラ電池を作製することができる。ただし、これらに制限されるものではない。まず、セパレータの液体電解質を保持させる部分の外周部にシール用の樹脂を成型配置されてなる電解質層を準備する。この段階では、液体電解液はセパレータに保持させないでいる。各電解質層の内部(液体電解質を保持させる部分)に電解液を注入することができるように、外周部の一部にシール用の樹脂が成型配置されていない部分を残しておく。次に、バイポーラ電極と電解質層とを所定数張り合わせて、電池積層体を作製する。その後、電池積層体のシール用の樹脂を成型配置した部分を上下から挟んで加熱加圧してシール用の樹脂を熱融着させてシール性を高めておく。次に、各電解質層に残しておいたシール用の樹脂が成型配置されていない部分から、従来と同様に、真空注入法等により電解液を注入する。その後、外周部の一部に残しておいたシール用の樹脂が成型配置されていない部分を、シール用の樹脂を成型配置して塞ぐ(好ましくは、該当部分のみ加熱加圧してシール用の樹脂を熱融着させてシール性を高める)ことでバイポーラ電池を得ることができる。あるいは、外周部の一部にシール用の樹脂が成型配置されていない部分を残すことなく、バイポーラ電極と電解質層を積層していく過程で、一層ごとに、セパレータの液体電解質を保持させる部分に所定量の電解液を保持させるようにしていってもよい。次に、バイポーラ電極を載せて、隣接する上下のバイポーラ電極同士を加熱加圧してシール用の樹脂を熱融着させてシール性を高めるようにして、バイポーラ電池を作製してもよい。
【0158】
(6)パッキング(電池の完成)
最後に電池積層体の両最外層の電流取り出し用の電極の集電体上にそれぞれ、正極強電タブ、負極強電タブを設置し、該正極強電タブ、負極強電タブに、さらに正極リード、負極リードを接合(電気的に接続)して取り出す。この際、電流取り出し用の電極、特に強電タブは、シール部材を配置したセパレータのシール部よりも大きくすることが望ましい(図12(A)参照)。正極リードおよび負極リードの接合方法としては特に制限されるべきものではないが、接合温度の低い超音波溶接等が好適に利用し得るものであるが、これに限定されるべきものではなく、従来公知の接合方法を適宜利用することができる。
【0159】
電池積層体全体を、外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電池外装材ないし電池ケースで封止し、バイポーラ電池を完成させる。電池外装材(電池ケース)の材質は、内面がポリプロピレンフィルム等の絶縁体で被覆された金属(アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅など)が好適である。
【実施例】
【0160】
以下の実施例および比較例を用いて本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例に限定されるものではない。
【0161】
実施例1(ポリプロピレン製の微多孔膜セパレータ+ゴム系シール部の例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0162】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0163】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの正極を形成した。
【0164】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0165】
まず、負極活物質としてLi4Ti5O12[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。尚、負極活物質に用いたLi4Ti5O12の二次粒子の平均粒径は10μmで、0.2〜0.5μmの一次粒子がある程度ネッキングした構造になっていた。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0166】
正極を形成したSUS箔の反対面に、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの負極を形成した。
【0167】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1参照のこと)。
【0168】
B.シール部の形成
厚さ20μmのポリプロピレン製の微多孔膜セパレータを用意した(図6(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に、外辺から4.5mmの位置(=シールのセンターの位置とする。また、シールのセンターからセパレータの端までが6mmでシール材の幅は3mmとした。)に高さ60μmのシリコンゴム(シール用のゴム系樹脂)を該セパレータの両面に成型配置し、ゴム系シール部を形成した(図6(E)、(G)のシール部4b1参照)。
【0169】
なお、上記ゴム系シール部(図6(G)の符号4b1、4b2参照)のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程の外装材で封入して電池を形成した後に行ったため、バイポーラ電池の形成工程にて説明する。
【0170】
C.電解質層の形成
外周部にゴム系シール部を形成した微多孔膜セパレータの、該シール部の内側にプレゲル溶液を浸漬させ、不活性雰囲気下で90℃で1時間熱重合させて、該セパレータの中心部近傍にゲル電解質部を形成し、電解質層を完成させた(図6(F)、(G)の符号4c参照)。得られた電解質層のゲル電解質部の厚さは20μmであり、微多孔膜セパレータと同じ厚さであった。
【0171】
なお、上記プレゲル溶液には、ポリマー[5質量%]と、電解液+リチウム塩[95質量%]と、重合開始剤[ポリマーに対して0.1質量%]とからなるものを用いた。ここで、上記ポリマーには、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体(共重合比が5:1、重量平均分子量が8000のものを用いた。上記電解液には、EC+DMC(EC:DMC(体積比)=1:3)を用いた。上記リチウム塩には1.0M Li(C2F5SO2)2Nを用いた。また、リチウム塩の量は、電解液に対して1.0Mとした。重合開始剤にはAIBNを用いた。
【0172】
D.バイポーラ電池の形成
上記バイポーラ電極と、微多孔膜セパレータに高分子ゲル電解質が保持され、該セパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分の外周部にシール用のゴム系樹脂が成型配置されてなる電解質層とを、電極の正極と負極が電解質層を挟むように積層した。
【0173】
5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池(ゴム系シール部が未シール状態の中間品)を形成した。
【0174】
その後、ゴム系シール部(図6(G)の符号4b1、4b2参照)のシールは、バイポーラ電池の上下面に厚さ3mmの鉄板を配置し、該鉄板を四隅に設けたボルトナットによる締め付けにより、該電池全面に1kg/cm2の圧力をかけてシール部を加圧変形させて集電体に密着させることにより行った。かかるシールを行うことによりバイポーラ電池を完成した(図8(A)参照)。
【0175】
実施例2(ポリプロピレン製の微多孔膜セパレータ+熱融着樹脂系シール部の例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0176】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0177】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの正極を形成した。
【0178】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0179】
まず、負極活物質としてLi4Ti5O12[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。尚、負極活物質に用いたLi4Ti5O12の二次粒子の平均粒径は10μmで、0.2〜0.5μmの一次粒子がある程度ネッキングした構造になっていた。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0180】
正極を形成したSUS箔の反対面に、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの負極を形成した。
【0181】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1参照のこと)。
【0182】
B.シール部の形成
厚さ20μmのポリプロピレン製の微多孔膜セパレータを用意した(図9(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に、高さ(厚さ)60μmの熱融着可能なシール用樹脂を外辺から10mmの幅で該セパレータの両面に成型配置し、熱融着樹脂系シール部を形成した(図9(B)のシール部4b及び図9(D)のシール部4b1参照)。なお、上記熱融着可能なシール用樹脂にはポリプロピレンを用いた。
【0183】
これ以後のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に行ったが、便宜上、本工程にて説明する。
【0184】
後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に、集電体とセパレータの熱融着樹脂系シール部とを、電池積層体の上下から該シール部に200℃で加熱加圧しながら該シール部を熱融着し、集電体に密着(シール)させて該シール部のシールを行った(図10(A)、(B)の矢印及び符号4b参照)。
【0185】
C.電解質層の形成
外周部に熱融着樹脂系シール部を形成した微多孔膜セパレータの、該シール部の内側にプレゲル溶液を浸漬させ、不活性雰囲気下で90℃で1時間熱重合させて、該セパレータの中心部近傍にゲル電解質部を形成し、電解質層を形成した(図9(C)、(D)の4c参照)。得られた電解質層の高分子ゲル電解質を保持させた部分の厚さは20μmであり、微多孔膜セパレータと同じ厚さであった。
【0186】
なお、上記プレゲル溶液には、ポリマー[5質量%]と、電解液+リチウム塩[95質量%]と、重合開始剤[ポリマーに対して0.1質量%]とからなるものを用いた。ここで、上記ポリマーには、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体(共重合比が5:1、重量平均分子量が8000のものを用いた。上記電解液には、EC+DMC(EC:DMC(体積比)=1:3)を用いた。上記リチウム塩には1.0M Li(C2F5SO2)2Nを用いた。また、リチウム塩の量は、電解液に対して1.0Mとした。重合開始剤にはAIBNを用いた。
【0187】
D.バイポーラ電池の形成
上記バイポーラ電極と、微多孔膜セパレータに高分子ゲル電解質が保持され、該セパレータのゲル電解質部の外周部に上記熱融着可能なシール用樹脂が成型配置されてなる電解質層とを、電極の正極と負極が該電解質層を挟むように積層した(図10(A)参照)。
【0188】
5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0189】
実施例3(不織布セパレータ+ゴム系シール部の例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0190】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0191】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの正極を形成した。
【0192】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0193】
まず、負極活物質としてLi4Ti5O12[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。尚、負極活物質に用いたLi4Ti5O12の二次粒子の平均粒径は10μmで、0.2〜0.5μmの一次粒子がある程度ネッキングした構造になっていた。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0194】
正極を形成したSUS箔の反対面に、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの負極を形成した。
【0195】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1参照のこと)。
【0196】
B.シール部の形成
厚さ20μmの不織布セパレータを用意した(図6(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に、外辺から4.5mmの位置(=シールのセンターの位置とする。また、シールのセンターからセパレータの端までが6mmでシール材の幅は3mmとした。)に高さ60μmのシリコンゴム(シール用のゴム系樹脂)を該セパレータを貫通させるように両面に成型配置し、シール部を形成した(図6(E)、(G)のシール部4b1、4b2参照)。即ち、上記シール部の形成の際には、上記シリコンゴム(シール用のゴム系樹脂)がセパレータを貫通するように、シリコンゴム(シール用のゴム系樹脂)をセパレータに含浸させて、セパレータ内部にもゴム系シール部を形成した(図6(G)のシール部4b2参照)。
【0197】
なお、上記シール部(図6(G)の符号4b1、4b2参照)のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程のバイポーラ電池を形成後に行ったため、バイポーラ電池の形成工程にて説明する。
【0198】
C.電解質層の形成
外周部にゴム系シール部を形成した不織布セパレータの、該ゴム系シール部の内側にプレゲル溶液を浸漬させ、不活性雰囲気下で90℃で1時間熱重合させて、該セパレータの中心部近傍にゲル電解質部を形成し、電解質層を完成させた(図6(F)、(G)のゲル電解質部4c参照)。得られた電解質層の高分子ゲル電解質を保持させた部分の厚さは20μmであり、不織布セパレータと同じ厚さであった。
【0199】
なお、上記プレゲル溶液には、ポリマー[5質量%]と、電解液+リチウム塩[95質量%]と、重合開始剤[ポリマーに対して0.1質量%]とからなるものを用いた。ここで、上記ポリマーには、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体(共重合比が5:1、重量平均分子量が8000のものを用いた。上記電解液には、EC+DMC(EC:DMC(体積比)=1:3)を用いた。上記リチウム塩には1.0M Li(C2F5SO2)2Nを用いた。また、リチウム塩の量は、電解液に対して1.0Mとした。重合開始剤にはAIBNを用いた。
【0200】
D.バイポーラ電池の形成
上記バイポーラ電極と、不織布セパレータに高分子ゲル電解質が保持され、該セパレータのゲル電解質部の外周部にシール用のゴム系樹脂が成型配置されてなる電解質層を、電極の正極と負極が電解質層を挟むように積層した。
【0201】
5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池(ゴム系シール部が未シール状態の中間品)を形成した。
【0202】
その後、ゴム系シール部(図6(G)の符号4b1、4b2参照)のシールは、バイポーラ電池の上下面に厚さ3mmの鉄板を配置し、該鉄板を四隅に設けたボルトナットによる締め付けにより、該電池全面に1kg/cm2の圧力をかけてシール部を加圧変形させて集電体に密着させることにより行った。かかるシールを行うことによりバイポーラ電池を完成した(図8(A)参照)。
【0203】
実施例4(不織布セパレータ+熱融着樹脂系シール部の例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0204】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0205】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの正極を形成した。
【0206】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0207】
まず、負極活物質としてLi4Ti5O12[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。尚、負極活物質に用いたLi4Ti5O12の二次粒子の平均粒径は10μmで、0.2〜0.5μmの一次粒子がある程度ネッキングした構造になっていた。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0208】
正極を形成したSUS箔の反対面に、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの負極を形成した。
【0209】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1参照のこと)。
【0210】
B.シール部の形成
厚さ20μmの不織布セパレータを用意した(図9(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に高さ60μmの熱融着可能なシール用樹脂を、外辺から10mmの幅で該セパレータの両面に(図9(D)の4b1参照)及び外辺より外側に約0.3cmの幅(=約3mm)でセパレータ側面に(図9(D)の4b3参照)成型配置し熱融着樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱融着可能なシール用樹脂にはポリプロピレンを用いた。
【0211】
これ以後のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に行ったが、便宜上、本工程にて説明する。
【0212】
後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に、集電体とセパレータの熱融着樹脂系シール部とを、電池積層体の上下から該シール部に200℃で加熱加圧しながら該シール部を熱融着して集電体に密着(シール)させて該シール部のシールを行った(図10(A)、(B)の矢印及び符号4b参照)。
【0213】
C.電解質層の形成
外周部に熱融着樹脂系シール部を形成した不織布セパレータの、該シール部の内側にプレゲル溶液を浸漬させ、不活性雰囲気下で90℃で1時間熱重合させて、該セパレータの中心部近傍にゲル電解質部を形成し、電解質層を形成した(図9(C)、(D)の4c参照)。得られた電解質層の高分子ゲル電解質を保持させた部分の厚さは20μmであり、不織布セパレータと同じ厚さであった。
【0214】
なお、上記プレゲル溶液には、ポリマー[5質量%]と、電解液+リチウム塩[95質量%]と、重合開始剤[ポリマーに対して0.1質量%]とからなるものを用いた。ここで、上記ポリマーには、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体(共重合比が5:1、重量平均分子量が8000のものを用いた。上記電解液には、EC+DMC(EC:DMC(体積比)=1:3)を用いた。上記リチウム塩には1.0M Li(C2F5SO2)2Nを用いた。また、リチウム塩の量は、電解液に対して1.0Mとした。重合開始剤にはAIBNを用いた。
【0215】
D.バイポーラ電池の形成
上記バイポーラ電極と、不織布セパレータに高分子ゲル電解質が保持され、該セパレータのゲル電解質部の外周部に上記熱融着可能なシール用樹脂が成型配置されてなる電解質層とを、電極の正極と負極が電解質層を挟むように積層した(図10(A)参照)。
【0216】
5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0217】
実施例5(ポリエチレン製の微多孔膜セパレータ+熱硬化樹脂系シール部の例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0218】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0219】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ30μmの正極を形成した。
【0220】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0221】
まず、負極活物質としてハードカーボン[90質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0222】
正極を形成したSUS箔の反対面に、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ30μmの負極を形成した。
【0223】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1参照のこと)。
【0224】
B.シール部の形成
厚さ12μmのポリエチレン製の微多孔膜セパレータを用意した(図19(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に、外辺から4.5mmの位置(=シールのセンターの位置とする。また、シールのセンターからセパレータの端までが6mmでシール材の幅は3mmとした。)に高さ60μmの熱硬化可能なシール用樹脂を、該セパレータの片面に(図19(E)参照)成型配置し熱硬化樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂を用いた。
【0225】
さらに、前述のバイポーラ電極に対して外周部の四辺に、外辺から4.5mmの位置(=シールのセンターの位置とする。また、シールのセンターから電極の端までが6mmでシール材の幅は3mmとした。)に高さ60μmの熱硬化可能なシール用樹脂を、該電極の片面に(図20参照)成型配置し熱硬化樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂を用いた。
【0226】
これ以後のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に行ったが、便宜上、本工程にて説明する。
【0227】
後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に、集電体とセパレータの熱硬化樹脂系シール部とを、電池積層体の上下から該シール部に80℃で熱プレス機により面圧1kg/cm2で一時間加熱加圧しながら該シール部を熱硬化させて集電体に密着(シール)させて該シール部のシールを行った(図10(A)、(B)の矢印及び符号4b参照)。
【0228】
C.電解質層の形成
前述のバイポーラ電極の正極、負極の電極部に塗布し乾燥させることでゲル電解質を染み込ませ電解質層を形成した(図21に示す4c参照)。
【0229】
なお、上記ゲル電解質は、ホストポリマーとしてHPFコポリマーを10質量%含むPVdf−HPF[10質量%]と、電解液PC−EC 1MLiPF6[90質量%]と、粘度調整溶媒としてDMCを最適な粘度になるまで添加しゲル電解質を作製した。
【0230】
D.バイポーラ電池の形成
上記熱硬化樹脂系シール部4b及び電解質層4cを配置したバイポーラ電極と、上記熱硬化シール部4bを配置したポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータ4aとを、バイポーラ電極の正極と負極とが電解質層4c及びセパレータ4aを挟むように積層した。(図21及び図10(B)参照)
積層によりバイポーラ電極上の電解質は、セパレータ4aに染み込んでセパレータ4aに電解質層を形成するとともに、セパレータ4a上の熱硬化樹脂系シール部4b及びバイポーラ電極上の熱硬化樹脂系シール部によりシール部を形成している。
【0231】
5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0232】
実施例6(ポリエチレン製の微多孔膜セパレータ+熱硬化樹脂系シール部+シリカ粒子の例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0233】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0234】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ30μmの正極を形成した。
【0235】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0236】
まず、負極活物質としてハードカーボン[90質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0237】
正極を形成したSUS箔の反対面に、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ30μmの負極を形成した。
【0238】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1参照のこと)。
【0239】
B.シール部の形成
厚さ12μmのポリエチレン製の微多孔膜セパレータを用意した(図19(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に、外辺から4.5mmの位置(=シールのセンターの位置とする。また、シールのセンターからセパレータの端までが6mmでシール材の幅は3mmとした。)に高さ60μmの熱硬化可能なシール用樹脂を、該セパレータの片面に(図19(E)参照)成型配置し熱硬化樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂を用いた。ここで、エポキシ樹脂にはシリカ粒子(10質量%)を分散させた。
【0240】
さらに、前述のバイポーラ電極に対して外周部の四辺に、外辺から4.5mmの位置(=シールのセンターの位置とする。また、シールのセンターから電極の端までが6mmでシール材の幅は3mmとした。)に高さ60μmの熱硬化可能なシール用樹脂を、該電極の片面に(図20参照)成型配置し熱硬化樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂を用いた。ここで、エポキシ樹脂にはシリカ粒子(10質量%)を分散させた。
【0241】
これ以後のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に行ったが、便宜上、本工程にて説明する。
【0242】
後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に、集電体とセパレータの熱硬化樹脂系シール部とを、電池積層体の上下から該シール部に80℃で熱プレス機により面圧1kg/cm2で一時間加熱加圧しながら該シール部を熱硬化させて集電体に密着(シール)させて該シール部のシールを行った(図10(A)、(B)の矢印及び符号4b参照)。
【0243】
C.電解質層の形成
前述のバイポーラ電極の正極、負極の電極部に塗布し乾燥させることでゲル電解質を染み込ませ電解質層を形成した(図21に示す4c参照)。
【0244】
なお、上記ゲル電解質は、ホストポリマーとしてHPFコポリマーを10質量%含むPVdf−HPF[10質量%]と、電解液PC−EC 1MLiPF6[90質量%]と、粘度調整溶媒としてDMCを最適な粘度になるまで添加しゲル電解質を作製した。
【0245】
D.バイポーラ電池の形成
上記熱硬化樹脂系シール部4b及び電解質層4cを配置したバイポーラ電極と、上記熱硬化シール部4bを配置したポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータ4aとを、バイポーラ電極の正極と負極とが電解質層4c及びセパレータ4aを挟むように積層した。(図21及び図10(B)参照)
積層によりバイポーラ電極上の電解質は、セパレータ4aに染み込んでセパレータ4aに電解質層を形成するとともに、セパレータ4a上の熱硬化樹脂系シール部4b及びバイポーラ電極上の熱硬化樹脂系シール部によりシール部を形成している。
【0246】
5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0247】
実施例7(不織布セパレータ+熱硬化樹脂系シール部の例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0248】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0249】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ30μmの正極を形成した。
【0250】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0251】
まず、負極活物質としてハードカーボン[90質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0252】
正極を形成したSUS箔の反対面に、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ30μmの負極を形成した。
【0253】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1参照のこと)。
【0254】
B.シール部の形成
厚さ12μmのアラミド繊維からなる不織布セパレータを用意した(図19(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に、外辺から4.5mmの位置(=シールのセンターの位置とする。また、シールのセンターからセパレータの端までが6mmでシール材の幅は3mmとした。)に高さ60μmの熱硬化可能なシール用樹脂を、該セパレータの片面に(図19(E)参照)成型配置し熱硬化樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂を用いた。また、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂はセパレータ内部まで浸透させた。
【0255】
さらに、前述のバイポーラ電極に対して外周部の四辺に、外辺から4.5mmの位置(=シールのセンターの位置とする。また、シールのセンターからセパレータの端までが6mmでシール材の幅は3mmとした。)に高さ60μmの熱硬化可能なシール用樹脂を、該電極の片面に(図20参照)成型配置し熱硬化樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂を用いた。
【0256】
これ以後のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に行ったが、便宜上、本工程にて説明する。
【0257】
後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に、集電体とセパレータの熱硬化樹脂系シール部とを、電池積層体の上下から該シール部に80℃で熱プレス機により面圧1kg/cm2で一時間加熱加圧しながら該シール部を熱硬化させて集電体に密着(シール)させて該シール部のシールを行った(図10(A)、(B)の矢印及び符号4b参照)。
【0258】
C.電解質層の形成
前述のバイポーラ電極の正極、負極の電極部に塗布し乾燥させることでゲル電解質を染み込ませ電解質層を形成した(図21に示す4c参照)。
【0259】
なお、上記ゲル電解質は、ホストポリマーとしてHPFコポリマーを10質量%含むPVdf−HPF[10質量%]と、電解液PC−EC 1MLiPF6[90質量%]と、粘度調整溶媒としてDMCを最適な粘度になるまで添加しゲル電解質を作製した。
【0260】
D.バイポーラ電池の形成
上記熱硬化樹脂系シール部4b及び電解質層4cを配置したバイポーラ電極と、上記熱硬化シール部4bを配置したポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータ4aとを、バイポーラ電極の正極と負極とが電解質層4c及びセパレータ4aを挟むように積層した。(図21及び図10(B)参照)
積層によりバイポーラ電極上の電解質は、セパレータ4aに染み込んでセパレータ4aに電解質層を形成するとともに、セパレータ4a上の熱硬化樹脂系シール部4b及びバイポーラ電極上の熱硬化樹脂系シール部によりシール部を形成している。
【0261】
5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0262】
実施例8(ポリエチレン製の微多孔膜セパレータ+熱硬化樹脂系シール部の例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0263】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0264】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ30μmの正極を形成した。
【0265】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0266】
まず、負極活物質としてハードカーボン[90質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0267】
正極を形成したSUS箔の反対面に、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ30μmの負極を形成した。
【0268】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1参照のこと)。
【0269】
B.シール部の形成
厚さ12μmのポリエチレン製の微多孔膜セパレータを用意した(図19(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に高さ60μmの熱硬化可能なシール用樹脂を、外辺から10mmの幅で該セパレータの片面に(図19(C)参照)成型配置し熱硬化樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂を用いた。
【0270】
さらに、前述のバイポーラ電極に対して外周部の四辺に高さ60μmの熱硬化可能なシール用樹脂を、外辺から10mmの幅で該電極の片面に(図22参照)成型配置し熱硬化樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱硬化型の液性未硬化エポキシ樹脂を用いた。
【0271】
これ以後のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に行ったが、便宜上、本工程にて説明する。
【0272】
後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成後に、集電体とセパレータの熱硬化樹脂系シール部とを、電池積層体の上下から該シール部に80℃で熱プレス機により面圧1kg/cm2で一時間加熱加圧しながら該シール部を熱硬化させて集電体に密着(シール)させて該シール部のシールを行った(図10(A)、(B)の矢印及び符号4b参照)。
【0273】
C.電解質層の形成
前述のバイポーラ電極の正極、負極の電極部に塗布し乾燥させることでゲル電解質を染み込ませ電解質層を形成した(図21に示す4c参照)。
【0274】
なお、上記ゲル電解質は、ホストポリマーとしてHPFコポリマーを10質量%含むPVdf−HPF[10質量%]と、電解液PC−EC 1MLiPF6[90質量%]と、粘度調整溶媒としてDMCを最適な粘度になるまで添加しゲル電解質を作製した。
【0275】
D.バイポーラ電池の形成
上記熱硬化樹脂系シール部4b及び電解質層4cを配置したバイポーラ電極と、上記熱硬化シール部4bを配置したポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータ4aとを、バイポーラ電極の正極と負極とが電解質層4c及びセパレータ4aを挟むように積層した。(図21及び図10(B)参照)
積層によりバイポーラ電極上の電解質は、セパレータ4aに染み込んでセパレータ4aに電解質層を形成するとともに、セパレータ4a上の熱硬化樹脂系シール部4b及びバイポーラ電極上の熱硬化樹脂系シール部によりシール部を形成している。
【0276】
5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0277】
実施例9(ポリプロピレン製の微多孔膜セパレータ+熱融着樹脂系シール部の例であって、該セパレータが、正極および負極が形成された集電体よりも大きく、且つ、該セパレータの集電体よりも大きい部分において積層方向に隣接した別のセパレータと接着されている例)
A.電極の形成
1.正極の形成
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0278】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0279】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの正極を形成した。
【0280】
2.負極の形成
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0281】
まず、負極活物質としてLi4Ti5O12[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。尚、負極活物質に用いたLi4Ti5O12の二次粒子の平均粒径は10μmで、0.2〜0.5μmの一次粒子がある程度ネッキングした構造になっていた。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0282】
正極を形成したSUS箔の反対面に、正極面積に比して負極面積を広めに形成すべく、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの負極を形成した。
【0283】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1、16(A)参照のこと)。
【0284】
B.シール部の形成
正極および負極が形成された集電体よりも大きいセパレータとして、厚さ20μmのポリプロピレン製の微多孔膜セパレータを用意した(図9(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に、熱融着可能なシール用樹脂を染み込ませ(セパレータの厚さとほとんど同じ厚さのままで)、セパレータの細孔を塞ぐと共に、接着性を付与するように成型配置し、熱融着樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱融着可能なシール用樹脂にはポリプロピレンを用いた。
【0285】
C.電解質層の形成
上記B工程で外周部に熱融着樹脂系シール部を形成した微多孔膜セパレータの、該シール部の内側にプレゲル溶液を浸漬させ、不活性雰囲気下で90℃で1時間熱重合させて、該セパレータの中心部近傍にゲル電解質部を形成し、電解質層を形成した(図9(C)、(D)、図15の4c等参照)。得られた電解質層の高分子ゲル電解質を保持させた部分の厚さは20μmであり、微多孔膜セパレータと同じ厚さであった。
【0286】
なお、上記プレゲル溶液には、ポリマー[5質量%]と、電解液+リチウム塩[95質量%]と、重合開始剤[ポリマーに対して0.1質量%]とからなるものを用いた。ここで、上記ポリマーには、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体(共重合比が5:1、重量平均分子量が8000のものを用いた。上記電解液には、EC+DMC(EC:DMC(体積比)=1:3)を用いた。上記リチウム塩には1.0M Li(C2F5SO2)2Nを用いた。また、リチウム塩の量は、電解液に対して1.0Mとした。重合開始剤にはAIBNを用いた。
【0287】
D.電極−電解質層シール体の形成(前期シール工程)
本実施例のシール工程は、後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成する前に、まず電極−電解質層シール体(図16(A)〜(C)参照)を形成する工程と、電極−電解質層シール体を複数積層して電池積層体を形成した後、最後に最外周にてシール部材同士を加熱シールする工程とに分けて行った。
【0288】
このうち、電極−電解質層シール体の形成工程では、バイポーラ電極の正極形成部分に電解質層の高分子ゲル電解質を保持させた部分が合わさるように、上記(A)工程で形成されたバイポーラ電極の正極側に上記(C)工程で形成された電解質層を積層した。積層後、これらの上下から正極が形成されていない集電体の部分(集電体をシールする部分)を加熱加圧しながらシール部(の一部)を熱融着し、該集電体に密着(シール)させて、該シール部のシールを行った(図16(A)のシール箇所(×印)参照)。こうして、バイポーラ電極の正極周縁部の集電体部分に、セパレータ外周部に成型配置されているシール部を一層ずつ別々に密着(シール)させて、電極−電解質層シール体を形成した(図16(A)参照)。なお、電極積層体の最外層に用いる電極も、図16(B)、(C)に示すように、集電体に必要な片面のみの電極(正極または負極)を形成した構造とし、上記と同様にして最外層用の電極−電解質層シール体を形成した。
【0289】
E.バイポーラ電池の形成(後期シール工程を含む)
1.電池積層体の形成
上記電極−電解質層シール体(最外層用の電極−電解質層シール体を含む)を、電極の正極と負極が電解質層を挟むように5層積層して、電池積層体を形成した(図15参照)。
【0290】
2.後期シール工程
次に、電池積層体を形成した後、熱融着樹脂系シール部の最外周に、上下から加熱加圧しながら該シール部最外周のシール部材同士を熱融着し、全てのシール部材同士を密着(シール)させて、該シール部のシールを行った(図15のシール箇所(●印)参照)。
【0291】
3.バイポーラ電池の形成
上記シール部同士のシール(後期シール工程)を終えた後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0292】
実施例10(実施例9の電池構成において、更にセパレータの高分子ゲル電解質を保持させた部分の面積が、正極形成面積より小さくなるようにシール用の熱融着樹脂を成型配置した例)
A.電極の形成
1.正極
以下の材料を所定の比率で混合して正極スラリーを作製した。
【0293】
まず、正極活物質として平均粒子径2μmのスピネルLiMn2O4[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して正極スラリーを作製した。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0294】
集電体であるSUS箔(厚さ20μm)の片面に上記正極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの正極を形成した。
【0295】
2.負極
以下の材料を所定の比率で混合して負極スラリーを作製した。
【0296】
まず、負極活物質としてLi4Ti5O12[85質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[5質量%]、バインダとしてPVDF[10質量%]およびスラリー粘度調整溶媒としてNMPからなる材料を上記比率にて混合して負極スラリーを作製した。尚、負極活物質に用いたLi4Ti5O12の二次粒子の平均粒径は10μmで、0.2〜0.5μmの一次粒子がある程度ネッキングした構造になっていた。上記NMPは、電極乾燥時にすべて揮発させて除去するので、電極の構成材料ではなく、適当なスラリー粘度になるように適量を加えた。また、上記比率は、スラリー粘度調整溶媒を除く成分で換算した比率を示す。
【0297】
正極を形成したSUS箔の反対面に、正極面積に比して負極面積を広めに形成すべく、上記負極スラリーを塗布し、真空オーブンに入れ、120℃で10分間乾燥させて乾燥厚さ50μmの負極を形成した。
【0298】
集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、バイポーラ電極が形成された(図1、図17参照のこと)。
【0299】
B.シール部の形成
正極および負極が形成された集電体よりも大きいセパレータとして、厚さ20μmのポリプロピレン製の微多孔膜セパレータを用意した(図9(A)参照)。次に、該セパレータの外周部の四辺に、熱融着可能なシール用樹脂を染み込ませ(セパレータの厚さとほとんど同じ厚さのままで)、セパレータの細孔を塞ぐと共に、接着性を付与するように成型配置し、熱融着樹脂系シール部を形成した。なお、上記熱融着可能なシール用樹脂にはポリプロピレンを用いた。
【0300】
C.電解質層の形成
外周部に熱融着樹脂系シール部を形成した微多孔膜セパレータの、該シール部の内側にプレゲル溶液を浸漬させ、不活性雰囲気下で90℃で1時間熱重合させて、該セパレータの中心部近傍にゲル電解質部を形成し、電解質層を形成した(図9(C)、(D)、図17の4c等参照)。得られた電解質層の高分子ゲル電解質を保持させた部分の厚さは20μmであり、微多孔膜セパレータと同じ厚さであった。
【0301】
なお、上記プレゲル溶液には、ポリマー[5質量%]と、電解液+リチウム塩[95質量%]と、重合開始剤[ポリマーに対して0.1質量%]とからなるものを用いた。ここで、上記ポリマーには、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体(共重合比が5:1、重量平均分子量が8000のものを用いた。上記電解液には、EC+DMC(EC:DMC(体積比)=1:3)を用いた。上記リチウム塩には1.0M Li(C2F5SO2)2Nを用いた。また、リチウム塩の量は、電解液に対して1.0Mとした。重合開始剤にはAIBNを用いた。
【0302】
D.電極−電解質層シール体の形成(前期シール工程)
本実施例のシール工程でも、後述するバイポーラ電池の形成工程の電池積層体を形成する前に、まず電極−電解質層シール体(図16(A)〜(C)参照)を形成する工程と、電極−電解質層シール体を複数積層して電池積層体を形成した後、最後に最外周にてシール部材同士を加熱シールする工程とに分けて行った。
【0303】
このうち、電極−電解質層シール体の形成工程では、バイポーラ電極の正極形成部分に電解質層の高分子ゲル電解質を保持させた部分及びその外周部に形成されたシール部の一部が合わさるように、上記A工程で形成されたバイポーラ電極の正極側に上記C工程で形成された電解質層を積層した。積層後、これらの上下から正極が形成されていない集電体の部分(集電体をシールする部分)を加熱加圧しながらシール部(の一部)を熱融着し、該集電体に密着(シール)させて、該シール部のシールを行った(図16(A)、図17のシール箇所(×印)参照)。こうして、バイポーラ電極の正極周縁部の集電体部分に、セパレータ外周部に成型配置されているシール部を一層ずつ別々に密着(シール)させて、電極−電解質層シール体を形成した(図16A参照)。なお、電極積層体の最外層に用いる電極も、図16(B)、(C)に示すように、集電体に必要な片面のみの電極(正極または負極)を形成した構造とし、上記と同様にして最外層用の電極−電解質層シール体を形成した。
【0304】
E.バイポーラ電池の形成(後期シール工程を含む)
1.電池積層体の形成
上記電極−電解質層シール体(最外層用の電極−電解質層シール体を含む)を、電極の正極と負極が電解質層を挟むように5層積層して、電池積層体を形成した(図17参照)。
【0305】
2.後期シール工程
次に、電池積層体を形成した後、熱融着樹脂系シール部の最外周に、上下から加熱加圧しながら該シール部最外周のシール部材同士を熱融着し、全てのシール部材同士を密着(シール)させて、該シール部のシールを行った(図17のシール箇所(●印)参照)。
【0306】
3.バイポーラ電池の形成
上記シール部同士のシール(後期シール工程)を終えた後、電池積層体をラミネートパック(アルミニウムをポリプロピレンフィルムでラミネートしたもの;電池外装材)で封止し、バイポーラ電池を形成した。
【0307】
比較例1(シール部を持たない例)
比較例1として、微多孔膜セパレータのゲル電解質部の外周部にシール用樹脂が成型されていない電解質層を用いた以外は実施例1と同様にして5層(単電池層5セル分)積層した後、電池積層体を電池外装材で封止してバイポーラ電池を形成した(図14参照)。
【0308】
<電池の評価>
上記実施例1〜10および比較例1の各バイポーラ電池に充放電サイクル試験を行った。充放電サイクル試験のサイクル条件は、1C定電流で4.2Vまで充電し、10分間休止をして1C定電流で2.5Vまで放電し、10分間休止までを1サイクルとした。試験中は、温度管理はせず、室温(約25℃)環境下で行った。
【0309】
シール用の樹脂が成型配置されていない比較例1のバイポーラ電池は、初回の充電を行っている途中に、電圧が低下する単電池層が確認されたため、解体調査(電池外装材のラミネートパックの熱融着部の一辺をはさみで切り取った)を行った。その結果、電池外装材のラミネートパックに電解液が付着しているのが確認され、電解液が単電池層外に染み出し、他の単電池層の電解質層と接触して液絡が起こっていた。
【0310】
他のシール部を有する実施例1〜10のバイポーラ電池は、50サイクルを超えても各単電池層の電圧が維持され、液絡が生じていないことが確認された。解体調査(電池外装材のラミネートパックの熱融着部の一辺をはさみで切り取った)を行った結果、ラミネートパックに電解液が付着していることはなく、電解液の染み出しは確認されなかった。
【0311】
上記した実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明が上記実施例に限定されることはない。
【0312】
本出願は、2004年12月10日に出願された日本国特許出願第2004−358550号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の一方の面に正極が形成され、他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極を、電解質層を挟んで複数枚直列に積層したバイポーラ電池において、
前記電解質層を保持するセパレータと、
前記セパレータの電解質を保持させた部分の外周部に成型配置されたシール用の樹脂と、を備えることを特徴とするバイポーラ電池。
【請求項2】
前記シール用の樹脂は前記セパレータの正極側面及び負極側面の各々に成形配置されていることを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ電池。
【請求項3】
前記シール用の樹脂は前記セパレータを積層方向に貫通していることを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ電池。
【請求項4】
前記シール用の樹脂は前記セパレータの側面全周を覆うように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ電池。
【請求項5】
前記シール用の樹脂に、シリコン系ゴム、フッ素系ゴム、オレフィン系ゴム、二トリル系ゴムよりなる群から選択されるゴム系樹脂を用いてなることを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ電池。
【請求項6】
前記シール用の樹脂に、シリコン、エポキシ、ウレタン、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、パラフィンワックスよりなる群から選択される樹脂を用いてなることを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ電池。
【請求項7】
前記シール用の樹脂に水分吸着材料を分散させたことを特徴とする請求項6に記載のバイポーラ電池。
【請求項8】
電解質が保持され、同一のセパレータの電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されたセパレータが、正極および負極が形成された集電体よりも大きいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のバイポーラ電池。
【請求項9】
電流取り出し用の電極が、シール部材を配置したセパレータのシール部よりも大きいことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のバイポーラ電池。
【請求項10】
電解質が保持され、同一のセパレータの電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されたセパレータが、正極および負極が形成された集電体よりも大きく、且つ、
該セパレータの集電体よりも大きい部分において積層方向に隣接した別のセパレータと接着されていることを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ電池。
【請求項11】
前記セパレータの電解質を保持させた部分の面積が正極または負極面積より小さくなるように、前記シール用の樹脂が成型配置されていることを特徴とする請求項10に記載のバイポーラ電池。
【請求項12】
正極に用いられる正極活物質としてリチウム−遷移金属複合酸化物を用い、
負極に用いられる負極活物質としてカーボンもしくはリチウム−遷移金属複合酸化物を用いてなることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のバイポーラ電池。
【請求項13】
請求項1〜2に記載のバイポーラ電池を複数個接続して構成したことを特徴とする組電池。
【請求項14】
請求項1〜12に記載のバイポーラ電池および/または請求項13に記載の組電池を駆動用電源として搭載してなることを特徴とする車両。
【請求項1】
集電体の一方の面に正極が形成され、他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極を、電解質層を挟んで複数枚直列に積層したバイポーラ電池において、
前記電解質層を保持するセパレータと、
前記セパレータの電解質を保持させた部分の外周部に成型配置されたシール用の樹脂と、を備えることを特徴とするバイポーラ電池。
【請求項2】
前記シール用の樹脂は前記セパレータの正極側面及び負極側面の各々に成形配置されていることを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ電池。
【請求項3】
前記シール用の樹脂は前記セパレータを積層方向に貫通していることを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ電池。
【請求項4】
前記シール用の樹脂は前記セパレータの側面全周を覆うように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ電池。
【請求項5】
前記シール用の樹脂に、シリコン系ゴム、フッ素系ゴム、オレフィン系ゴム、二トリル系ゴムよりなる群から選択されるゴム系樹脂を用いてなることを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ電池。
【請求項6】
前記シール用の樹脂に、シリコン、エポキシ、ウレタン、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、パラフィンワックスよりなる群から選択される樹脂を用いてなることを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ電池。
【請求項7】
前記シール用の樹脂に水分吸着材料を分散させたことを特徴とする請求項6に記載のバイポーラ電池。
【請求項8】
電解質が保持され、同一のセパレータの電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されたセパレータが、正極および負極が形成された集電体よりも大きいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のバイポーラ電池。
【請求項9】
電流取り出し用の電極が、シール部材を配置したセパレータのシール部よりも大きいことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のバイポーラ電池。
【請求項10】
電解質が保持され、同一のセパレータの電解質を保持させた部分の外周部にシール用の樹脂が成型配置されたセパレータが、正極および負極が形成された集電体よりも大きく、且つ、
該セパレータの集電体よりも大きい部分において積層方向に隣接した別のセパレータと接着されていることを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ電池。
【請求項11】
前記セパレータの電解質を保持させた部分の面積が正極または負極面積より小さくなるように、前記シール用の樹脂が成型配置されていることを特徴とする請求項10に記載のバイポーラ電池。
【請求項12】
正極に用いられる正極活物質としてリチウム−遷移金属複合酸化物を用い、
負極に用いられる負極活物質としてカーボンもしくはリチウム−遷移金属複合酸化物を用いてなることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のバイポーラ電池。
【請求項13】
請求項1〜2に記載のバイポーラ電池を複数個接続して構成したことを特徴とする組電池。
【請求項14】
請求項1〜12に記載のバイポーラ電池および/または請求項13に記載の組電池を駆動用電源として搭載してなることを特徴とする車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−151016(P2011−151016A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293936(P2010−293936)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【分割の表示】特願2006−546779(P2006−546779)の分割
【原出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【分割の表示】特願2006−546779(P2006−546779)の分割
【原出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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