説明

バウンドストッパ

【課題】ストッパ作用時の初期にある程度硬いばね特性を示し、引き続いてゴム弾性体の変形に伴ってばね定数を直線的に増大させ、そのままなだらかに最終のばね特性の立上りに移行し且つそのばね特性の立上りによって、上下動部材の変位を許容最大変位以下に良好に抑制することのできるバウンドストッパを提供する。
【解決手段】カップ状をなす剛性の取付部材12と、ゴム弾性体14とを有するバウンドストッパ10において、基部30と取付部材12の周壁部18との間に、周壁部18の内周面に沿って周方向に延びる溝42を設けるとともに、溝42として少なくとも第1の溝44と、第1の溝44よりも溝深さの深い第2の溝46とを、それぞれが周方向に均等に分散して位置する状態に設け、ストッパ作用時にそれら第1の溝44,第2の溝46を埋めるようにゴム弾性体14を弾性変形させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のサスペンション装置におけるサスペンションアームやリーフスプリング等、車輪とともに上下動する上下動部材の車体側への過度の変位を規制する緩衝部材としてのバウンドストッパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両においては走行中路面の凹凸等による車輪の大きな上下動によりサスペンションアームやリーフスプリング等のサスペンション装置の一部、即ち車輪とともに上下動する車輪側の上下動部材が車体側に過度に変位し、車体に当って衝撃を直接車体に伝えてしまうのを防ぐために、緩衝部材としてのバウンドストッパをサスペンション装置側或いは車体側に取り付けることが行われている。
このバウンドストッパはゴム弾性体を主要素として有しており、車輪側の上記の上下動部材が車体側に大きく変位したときに、ゴム弾性体が弾性変形することで衝撃を緩和し、また上下動部材の過度の車体側への変位を規制する。
【0003】
ところで、例えばピックアップトラック等のトラックにおいては、近年乗り心地性能の向上のためにリーフスプリングに用いる板ばねとして、ばねの軟らかいものを用いるようになってきており、この場合板ばねを軟らかくした分、路面の凹凸等を乗り越える際のリーフスプリングの変位が大きくなり、バウンドストッパがストッパ作用する回数もまた多くなる。
【0004】
リーフスプリングが常時大きく変位すると、リーフスプリングの耐久性が悪化することとなり、そこでこれを防ぐべくリーフスプリングがある程度変位したところで、バウンドストッパにてストッパ作用させ、その変位を規制することが必要となる。そしてそのことによってバウンドストッパのストッパ作用の回数が多くなる。
この場合、バウンドストッパのストッパ作用時の初期ばねをある程度硬くしておくことが望ましい。
そのためのバウンドストッパ形状として、図6に示すような形状が考えられる。
【0005】
同図において200はバウンドストッパを、202は金属製の剛性の取付部材を、204はストッパ作用の主体をなすゴム弾性体を示している。ゴム弾性体204は加硫接着にて取付部材202に一体に固着されている。
取付部材202は平板状をなしており、その中心部に締結ボルト206が固設され、この締結ボルト206にて車輪側の上下動部材と車体側との一方に取付固定されるようになっている。
【0006】
図5のAはこのバウンドストッパ200のばね特性曲線(荷重−撓み特性曲線)を表している。
図に示しているようにこのバウンドストッパ200の場合、ゴム弾性体204の全体が特に拘束されていないために、ストッパ作用の後半でばね特性曲線が立上り難いものとなっている。
【0007】
そこで図7に示すバウンドストッパ200のように、取付部材202を、底部208とその外周端部から立ち上る環状の周壁部210とを有するカップ状のものとなすこと、即ちバウンドストッパ200をこのようなカップ状の取付部材202付きのものとして構成することが考えられる。
【0008】
図5のBはこの図7のバウンドストッパ200のばね特性曲線を表している。
図7に示すバウンドストッパ200の場合、ゴム弾性体204の基部212が、カップ状をなす取付部材202にて拘束されていることから、ゴム弾性体204の図中上下方向即ち軸線方向の自由長が短くなり、そのため図5のばね特性曲線Bにて示しているようにストッパ作用の比較的早い段階からばね特性曲線が急激に立ち上り且つその立上り角度が急角度のものとなってしまい、その際に乗員に対しショック感を与えてしまい、乗り心地性能を悪化させてしまう。
【0009】
以上のように、図6に示すバウンドストッパ200ではばね特性曲線が立上り難く、その結果ストッパ作用時の常用変位域の途中からばねの立上げを開始させることが必要となって(最大変位規制確保のため)、常用変位域におけるばね特性が非直線形状となり、常用変位域における乗り心地性能を悪化させてしまう。
また図7に示すバウンドストッパ200の場合、ストッパ作用の早い段階からばね特性曲線が急角度の急激な立上りとなって、乗員にショック感を与えてしまう。
【0010】
サスペンション装置におけるリーフスプリング等の上下動部材の変位を小さく抑制しつつ、急激なストッパ作用の反力によってショック感を与えないようにするためには、ストッパ作用時の初期当りをある程度硬くする一方で、その後のストッパ作用の中期から後期にかけての常用変位域におけるばね特性の急激な立上りを抑制して、変形とともに直線的にばね特性が増大するようにし、そして上下動部材の限界変位近傍でのばね特性の立上りに滑らかにばね特性曲線が移行するように、バウンドストッパのばね特性を設定しておくことが望ましい。
しかしながらそうしたばね特性を有するバウンドストッパは、従来提供されていないのが実情である。
【0011】
ところで、図7に示すカップ状の取付部材202付きのバウンドストッパ200の場合、車輪とともに上下動する上下動部材が車体側に大きく変位した場合であっても、最悪それらが干渉するのを防止できるセーフティ設計となっており、この意味で図7のバウンドストッパ200は望ましいものである。即ちバウンドストッパ200としては、このようなカップ状の取付部材付きのものとなしておくことが望ましい。
【0012】
しかしながら図7に示すようにこのようなカップ状の取付部材202付きのバウンドストッパ200の場合、取付部材202による拘束によって、ばね特性曲線が必要以上に硬くなり易く、これを防ぐためにゴム弾性体204の取付部材202からの突出高さを高くする必要が生ずる。
【0013】
しかしながらバウンドストッパ200の上下方向の取付スペースを十分確保することが難しい場合があり、そうした場合ゴム弾性体204の取付部材202からの突出高さを高くすることができず、その突出高さを高くすることでバウンドストッパのばね特性を調整することができない。
【0014】
尚、下記特許文献1にはこのようなカップ状の取付部材付きのバンプスプリングが開示されているが、このものは本発明とは課題を異にするもので本発明と異なり、本発明の目的を達成できないものである。
【0015】
また下記特許文献2には、同じくカップ状の取付部材付きのバウンドストッパが開示され、そこには取付部材の周壁部と弾性体であるバンパー部材との間に隙間を形成し、その隙間を利用してバンパー部材を弾性変形させるとともに、隙間が消失し、バンパー部材が周壁部に当ったところで、ばね特性を硬くする点が開示されているが、このものもまた本発明と課題を異にするもので、本発明の課題を解決できないものである。
【0016】
更に下記特許文献3には、同じく周壁部を有する取付部材を備えたバウンドストッパが開示されているが、このものもまた本発明とは構成が異なり、本発明の目的を達成することができない。
【0017】
【特許文献1】特開2000−161419号公報
【特許文献2】特開2002−106621号公報
【特許文献3】特開2005−69302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は以上のような事情を背景とし、ストッパ作用時の初期にある程度硬いばね特性を示し、引き続いてゴム弾性体の変形に伴ってばねを直線的に増大させ、そのままなだらかに最終のばね特性の立上りに移行し、且つそのばね特性の立上りによって上下動部材の変位を許容最大変位以下に良好に抑制することのできるバウンドストッパを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
而して請求項1のものは、(イ)底部と、該底部の外周端部から立ち上る環状の周壁部とを備えたカップ状をなし、該底部において車輪側の上下動部材と車体側との一方に取り付けられる剛性の取付部材と、(ロ)該取付部材の内部に収められた基部及び前記周壁部から該取付部材の軸線方向の外方に突出する状態に該基部に続いて設けられた突出部を有するブロック状のゴム弾性体と、を有し、前記上下動部材の前記車体側への過度の変位を規制する緩衝部材としてのバウンドストッパにおいて、前記基部と前記取付部材の周壁部との間に、該周壁部の内周面に沿って周方向に延びる溝を設けるとともに、該溝として少なくとも第1の溝と、該第1の溝よりも溝深さの深い第2の溝とを、それら第1の溝及び第2の溝のそれぞれが周方向に均等に分散して位置する状態に設け、ストッパ作用時にそれら第1の溝,第2の溝を埋めるように前記ゴム弾性体を弾性変形させるようになしてあることを特徴とする。
【0020】
請求項2のものは、請求項1において、前記溝は全周に亘り連続して環状に設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0021】
以上のように本発明は、カップ状の取付部材付きのバウンドストッパにおいて、取付部材の内部に収められるゴム弾性体の基部と取付部材の周壁部との間に、周壁部の内周面に沿って周方向に延びる溝を設けるとともに、その溝として少なくとも第1の溝と、これよりも溝深さの深い第2の溝とを、それぞれが周方向に均等に分散して位置する状態に設け、ストッパ作用時にそれら第1の溝,第2の溝を埋めるように、ゴム弾性体を弾性変形させるようになしたものである。
ここでバウンドストッパは、ゴム弾性体と取付部材とを加硫接着にて一体に固着したものとなしておくことができる。
【0022】
本発明のバウンドストッパでは、カップ状をなす取付部材がゴム弾性体の基部を拘束する。従ってゴム弾性体の突出部の高さを低く設定することにより、バウンドストッパにおけるストッパ作用の初期硬さをある程度硬く、適正硬さに容易に設定することができる。
本発明のバウンドストッパは、ストッパ作用時にゴム弾性体が相手部材に押されたときに、基部と取付部材の周壁部との間に設けられた溝を次第に埋めるようにしてゴム弾性体が変形することができる。
このときゴム弾性体は、相対的に溝深さの浅い第1の溝と、溝深さの深い第2の溝とを漸次埋めるようにしながら変形し、最終的に第1の溝を埋めるに到る。
【0023】
しかしながらこのとき、溝深さの深い第2の溝は完全にゴム弾性体にて埋められておらず、未だ隙間が部分的に残った状態にある。
従ってこの後においてもゴム弾性体は更に溝を埋めながら、詳しくは溝深さの深い第2の溝の残った空隙部分を埋めながら弾性変形することができる。
【0024】
これによりバウンドストッパ具体的にはゴム弾性体は、ストッパ作用時の初期当りに続いて、ゴム弾性体の変形とともに荷重が比例して増大する直線的な連続したばね特性を示す。
そして第2の溝もまた完全に埋るあたりから、ゴム弾性体の変形抵抗即ち反力の増大の比率が連続的に高くなって行き、最終のばね特性の立上りを示すようになる。即ち直線的なばね特性域に続いて、ばね特性の立上り域へとなだらかにばね特性が移行する。
【0025】
このような作用によって本発明のバウンドストッパは、リーフスプリング等のストッパ作用の初期の変位を小さく抑制し得て、その耐久性を高めることができるとともに、これに続くストッパ作用の中期から後期にかけての常用変位域で直線的なばね特性を示すために、常用変位域で乗員に対しショック感を与えるのを防止できる。
【0026】
更にその常用変位域での直線的なばね特性によりばねが十分に増大した上で、その後の最終のばねの立上りへと移行するため、ばねの立上り自体を緩やかなものとすることができ且つその立上りへの移行をなだらかなものとすることができばねの立上りへの移行の際にも乗員にショック感を与えない。
即ちストッパ作用の初期から最終の立上りに到るまで、本発明のバウンドストッパは連続的で滑らかなストッパ特性を示し、乗り心地性能を良好とすることができる。
【0027】
尚上記のような溝を設ける代わりに、ゴム弾性体自体にすぐり部(空隙部)を設けるといったことも考えられるが、その場合ストッパ作用時にすぐり部周辺の局所に応力が集中して、そこに大きな歪みが発生し、そのことによって耐久性が低下してしまう問題を生ずる。
【0028】
しかるに本発明ではゴム弾性体自体にそうした空隙を設けるのでなく、ゴム弾性体の基部とカップ状の取付部材の周壁部との間に溝を設けて、これを空隙部となしているため、そうした不具合を生じず、ゴム弾性体の耐久性を高く維持することができる。
【0029】
また本発明ではストッパ作用時にゴム弾性体の変形を溝によって吸収することができるため、ストッパ作用時において突出部が取付部材から径方向外方に大きくはみ出してしまうような変形を抑制でき、そのことによってもまたゴム弾性体の耐久性を高めることができる。
【0030】
しかも本発明ではその空隙即ち溝が、ゴム弾性体の基部と取付部材の周壁部との間に設けてあるため、ゴム弾性体と取付部材とを一体に加硫成形するに際して、成形金型を軸線方向に支障なく容易に成形品から分離脱型することができる。
【0031】
本発明においては、上記溝を周方向に部分的に設けておくといったことも可能であるが、請求項2に従ってかかる溝を全周に亘り連続して環状に設けておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1及び図2において、10は例えばピックアップトラックのサスペンション装置の変位規制用に用いて好適なバウンドストッパである。
ここでバウンドストッパ10は、ピックアップトラックにおけるサスペンション装置の変位規制用として用いる場合、サスペンション装置のリーフスプリング又は車体フレームの何れか一方に取り付けて使用する。
【0033】
同図に示しているように、バウンドストッパ10は金属製の剛性の取付部材12と、取付部材12に一体に加硫接着された、ストッパ作用の主体をなすブロック状のゴム弾性体14とを有している。
取付部材12は、平面形状が円形の底部16と、底部16の外周端部から図中上向きに直角に立ち上る円環状の周壁部18とを有するカップ状を成している。
【0034】
周壁部18は、上端部が径方向外向きに湾曲形状で開く形状のフランジ部20とされ、また底部16の中央には締結ボルト22が図中下向きに固設されている。
バウンドストッパ10は、この締結ボルト22により取付部材12がリーフスプリング又は車体フレームの何れか一方に締結固定される。
このときゴム弾性体14は、他方(図4の相手部材50)に対して図中上下方向に対向した状態となる。
【0035】
底部16には貫通の固定孔24が設けられており、締結ボルト22はセレーション部26を固定孔24の内面に食い込ませる状態に図中下向きに圧入され、底部16に固定されている。
締結ボルト22は、底部16の図中上側に大径の頭部28を有しており、その頭部28がゴム弾性体14の内部に埋込状態とされている。
【0036】
ゴム弾性体14は、取付部材12の内部を充填するように取付部材12内部に収められた基部30と、周壁部18から図中上方即ち軸線方向外方に突出する状態に基部30に続いて設けられた突出部32とを有している。
ここでゴム弾性体14は径方向即ち軸線と直角方向の横断面の形状が円形状をなしている。
【0037】
本実施形態において、突出部32は、周壁部18の高さHに比べて周壁部18からの突出高さHが低い形状となしてあるが逆にHをHよりも高く設定しても良い。
更に突出部32は、その外径が基部30の外径に比べて小径となしてある。
【0038】
突出部32の外周面34は、基部30から図中上向きに即ち軸線方向に沿って起立する縦面とされており、またその上面36は図中左右方向のほぼ平坦な面となしてある。詳しくはその中心部から径方向外方に進むにつれて僅かに図中下向きに移行する、上向きに僅かに凸をなす略平坦な面となしてある。
そしてその中央部には下向きに湾曲して凹陥する凹陥部38が設けられており、また縦面をなす外周面34から上面36との境界部が肩部40とされている。
【0039】
本実施形態では、ゴム弾性体14における上記基部30と取付部材12の周壁部18との間に、周壁部18の内周面に沿って周方向に延びる溝42が設けてある。
ここで溝42は、全周に亘って連続した円環状に設けてある。
また溝42は、周壁部18の上端で図中上向きに開口し、そして取付部材12の底部16側に向って図中下向きに所定の溝深さを有している。
尚この溝42を形成する周壁部18の内周面及び基部30の外周面は、何れも図中上下方向即ち軸線と平行な面となしてある。
【0040】
この実施形態において、溝42は溝深さの浅い溝(第1の溝)44と、これよりも溝深さの深い溝(第2の溝)46との2種類の溝から成っている。
図1(B)中hは溝44の溝深さを表し、またhは溝46の溝深さを表している。
またLは溝44の位置における基部30の図中上下方向の肉厚を表し、またLは溝46の位置における基部30の上下方向の肉厚をそれぞれ表している。
【0041】
図1(A)に示しているように、溝44は周方向に沿って90°ごとに4個所に設けられており、また溝46は、溝44と44との間の位置において周方向に90°ごと異なった4個所に設けてある。
即ち溝44と46とは、それぞれが周方向に均等に分散配置され、また溝44と46とが周方向に交互に配置されている。
【0042】
尚図3に示しているように、溝46は溝44に対して段差を生じるように、即ち溝44から46に溝深さが不連続となるようにそれら溝44,46が形成されているが、場合によって溝44から46にかけて、更に溝46から溝44にかけて溝深さが連続して変化するように、それら溝44,46を設けておくこともできる。
【0043】
図4は、バウンドストッパ10におけるゴム弾性体14のストッパ作用時の変形の様子を模式的に表している。
また図5の曲線Cは本実施形態のバウンドストッパ10のばね特性曲線(荷重−撓み特性曲線)を表している。
【0044】
図4(I)はストッパ作用を行っていない状態を表しており、この状態でサスペンション装置の一部(例えば上記のリーフスプリング)が車体側に大きく変位すると、そこでバウンドストッパ10がストッパ作用する。
このときゴム弾性体14は、先ず図中上端の当り部48が相手部材50に当って変形開始する。
【0045】
このときゴム弾性体14は、当り部48の上面がほぼ平坦面をなし、且つ突出部32が図中上下方向即ち軸線方向にほぼ同じ外径で形成されているため、図5のばね特性曲線Cで示しているようにストッパ作用の初期当りのばね特性が比較的硬いものとなる。
【0046】
ゴム弾性体14は引き続く相手部材50による押込みにより図中下向きに圧縮変形せしめられ、その際に溝46の底部よりも上側の部分が径方向外方に変形せしめられて、その変形により溝46,44が少しずつ埋められて行く。図4(II)はこのときの状態を表している。
【0047】
このとき、ゴム弾性体14は溝44の底部よりも図中上側の部分が取付部材12によって特に拘束されておらず、またその変形の途中で周壁部18に当ることもないので、図5のばね特性曲線Cで示しているようにばね特性はほぼ直線的に連続的に硬くなって行く。即ちその変形域におけるばね特性曲線がほぼリニアな直線形状となる。
【0048】
図4(III)は、図4(II)の状態から更にゴム弾性体14が変形し、溝深さの浅い溝44が埋った状態を表している。
これ以後ゴム弾性体14の変形に対する周壁部18からの反力が大きくなり、従ってゴム弾性体14のばね特性は図4(III)に示す状態以後増大の程度を増す。
【0049】
そしてゴム弾性体14の引き続く変形によって、未だ空隙の残っていた他方の溝46が次第に埋められて行き、そして最終的にこの溝46もまたゴム弾性体14の変形によって埋った状態となる。図4(IV)はそのときの状態を表している。
【0050】
図4(III)の状態から(IV)への状態に到る過程では、ゴム弾性体14は変形による反力が大きく増大し、最終的に図5に示す限界変位即ち最大変位規制量に達する。そしてこの時点でリーフスプリング等上下動部材の更なる変位が阻止される。
【0051】
以上の説明から明らかなように、また図5の曲線Cのばね特性曲線で示すように、本実施形態のバウンドストッパ10の場合、ストッパ作用時における初期当りがある程度硬く、その後常用変位域においてはばね特性がほぼ直線的にリニアに増大し、そしてストッパ作用の後期から最終にかけてばね特性がなだらかな立上りを示し、最終の限界変位に達する。
【0052】
以上から明らかなように本実施形態のバウンドストッパ10は、リーフスプリング等のストッパ作用の初期の変位を小さく抑制し得て、その耐久性を高めることができるとともに、これに続くストッパ作用の中期から後期にかけての常用変位域で、直線的なばね特性を示すために、常用変位域で乗員に対しショック感を与えるのを防止できる。
【0053】
更にその常用変位域での直線的なばね特性によりばねが十分に増大した上で、その後の最終のばねの立上りへと移行するため、ばねの立上り自体を緩やかなものとすることができ且つその立上りへの移行をなだらかなものとすることができ、ばねの立上りへの移行の際にも乗員にショック感を与えない。
即ちストッパ作用の初期から最終の立上りに到るまで、本実施形態のバウンドストッパ10は連続的で滑らかなストッパ特性を示し、乗り心地性能を良好とすることができる。
【0054】
また本実施形態ではゴム弾性体14自体に空隙を設けるのでなく、ゴム弾性体14の基部30とカップ状の取付部材12の周壁部18との間に溝42を設けて、これを空隙部となしているため、ゴム弾性体14の耐久性を高く維持することができる。
【0055】
また本実施形態ではストッパ作用時にゴム弾性体14の変形を溝42によって吸収することができるため、ストッパ作用時において突出部32が取付部材12から径方向外方に大きくはみ出してしまうような変形を抑制でき、そのことによってもまたゴム弾性体14の耐久性を高めることができる。
【0056】
しかも本実施形態ではその空隙即ち溝42が、ゴム弾性体14の基部30と取付部材12の周壁部18との間に設けてあるため、ゴム弾性体14と取付部材12とを一体に加硫成形するに際して、成形金型を軸線方向に支障なく容易に成形品から分離脱型することができる。
【0057】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上例では溝深さの異なる2種の溝44,46を周方向に均等に分散状態に設けているが、場合によって溝深さの互いに異なる3種以上の溝を周方向に均等に分散状態で設けることも可能である。
また溝深さの異なった溝と溝との間を、溝深さが段差状に不連続に変化するようになしておいても良いし、また溝深さが連続的に変化するようになすことも可能である。
更に上記突出部32の形状その他の形状は他の様々な形状となすことも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態であるバウンドストッパの平面図及び断面図である。
【図2】図1のバウンドストッパの一部切欠斜視図である。
【図3】同実施形態における溝を展開して示した模式図である。
【図4】同実施形態における作用説明図である。
【図5】バウンドストッパにおけるばね特性曲線を示した図である。
【図6】比較例としてのバウンドストッパを示した図である。
【図7】図6とは異なる比較例のバウンドストッパを示した図である。
【符号の説明】
【0059】
10 バウンドストッパ
12 取付部材
14 ゴム弾性体
16 底部
18 周壁部
30 基部
32 突出部
42 溝
44 溝(第1の溝)
46 溝(第2の溝)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)底部と、該底部の外周端部から立ち上る環状の周壁部とを備えたカップ状をなし、該底部において車輪側の上下動部材と車体側との一方に取り付けられる剛性の取付部材と、(ロ)該取付部材の内部に収められた基部及び前記周壁部から該取付部材の軸線方向の外方に突出する状態に該基部に続いて設けられた突出部を有するブロック状のゴム弾性体と、を有し、前記上下動部材の前記車体側への過度の変位を規制する緩衝部材としてのバウンドストッパにおいて
前記基部と前記取付部材の周壁部との間に、該周壁部の内周面に沿って周方向に延びる溝を設けるとともに、該溝として少なくとも第1の溝と、該第1の溝よりも溝深さの深い第2の溝とを、それら第1の溝及び第2の溝のそれぞれが周方向に均等に分散して位置する状態に設け、ストッパ作用時にそれら第1の溝,第2の溝を埋めるように前記ゴム弾性体を弾性変形させるようになしてあることを特徴とするバウンドストッパ。
【請求項2】
請求項1において、前記溝は全周に亘り連続して環状に設けてあることを特徴とするバウンドストッパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−228717(P2009−228717A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72683(P2008−72683)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】