説明

バックドア

【課題】デフォッガ端子をバックドアインナに配策したワイヤハーネスの端子と容易に結線させることができるバックドアを提供する。
【解決手段】樹脂製のインナーパネル10と樹脂製のアウターパネル20とを重ね合わせて構成し、バックドアガラス2にデフォッガの複数の熱線を備え、デフォッガの端子2Cを、インナーパネル10に配策したワイヤハーネス50の端子51に接続したバックドアであって、アウターパネル20がバックドアガラス2と対向する面に開口21を有し、ワイヤハーネス50の端子51を開口21の縁部21Aを挟持するクリップ型に形成し、バックドアガラス2は、ワイヤハーネス50の端子51を開口21の縁部21Aに取り付けた状態で、当該ワイヤハーネス50の端子51と接触する位置に、デフォッガの端子2Cを備えていて、デフォッガの端子2Cはワイヤハーネス50の端子51に当接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製バックドアにおけるデフォッガ(Defogger、Demisterとも呼ばれる。)のターミナル(以下、端子と呼ぶ場合もある。)をバックドアインナ(以下、インナーパネルという。)に配策したワイヤハーネスの端子と結線させるための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の軽量化を目的としてバックドアが樹脂で構成されているものが知られている。即ち、バックドアを構成するアウターパネルとインナーパネルとが樹脂で成る。このようなバックドアの樹脂化によって、鋼板製のバックドアに比べて重量を軽量化することができ、またアウターパネルを樹脂化することで、スポイラーやガーニッシュなどの外装部品を一体化することができる。外装部品がスポイラーと一体に製造されると製造コストを低減することができる。また、トリム等の内装部品もインナーパネルと一体化することができるため、部品点数を減らし、製造コストを低減することができるなどの利点がある。
【0003】
バックドアを樹脂で構成する場合、その剛性が低減しないように補強部品をバックドアに配設する必要がある。
【0004】
図5は、従来の樹脂製バックドア100の斜視図であり、このバックドア100は車両後部に配置されて、一般にハッチバックなどと呼ばれており、バックドアガラス102と、この樹脂製バックドア102の上縁部に沿って車幅方向に延出して配置された上部103と、この上部103の車幅方向の両端部から下方へ延出していてバックドアガラス102の左右の縁部に沿って車両上下方向へ延出して配置された側部104,105と、これらの左右の側部104,105の下端部及びバックドアガラス102の下縁部から下方へ延出して配置された裾部106とから成る。
【0005】
上部103,左右の側部104,105及び裾部106は、インナーパネル(図6参照)110とアウターパネル120とを重ね合わせて構成されている。これらのインナーパネル110及びアウターパネル120は樹脂材料から成り、特にインナーパネル材料には剛性の高い熱可塑性樹脂が用いられている。
【0006】
上部103,左右の側部104,105は内部を連続した中空領域Sとして構成されており、これらの中空領域Sにリインフォース(図示省略)が配設される。
また、このような中空領域Sを利用して、ワイヤハーネス150が収容されている。具体的には、この種のワイヤハーネス150は、バックドア100を構成するインナーパネルに図示省略する取付具によって固定されている。
【0007】
ワイヤハーネス150を介して給電が行われる電装品として、バックドア1(図1参照)にはデフォッガが搭載されることが従来知られている。以下にデフォッガの端子(以下、デフォッガ端子と言う場合がある)161をワイヤハーネス150の端子151と結線する作業工程について説明する。なお、図6は図5のD―D線に沿った断面図である。
結線作業は、例えば下記の項目の番号順に行われる。
(1)インナーパネル110にワイヤハーネス150を配策する。このとき、図6に矢印Aで示すように、ワイヤハーネス150の端子151をインナーパネル110に形成された開口111から外に出しておく。この開口111は、側部104を形成するインナーパネル110の部位に設けられている。
(2)アウターパネル120をインナーパネル110と接合する。
(3)バックドアガラス102にウレタン接着剤を塗布する。
(4)バックドアガラス102をアウターパネル120の表面側に組み付ける。このとき、図6に示すように、バックドアガラス102の複数の熱線102Aに繋がったデフォッガ端子161をアウターパネル120に形成した作業穴121から、インナーパネル110とアウターパネル120とを接合して構成される側部104の中空領域S内に入れる。
(5)ワイヤハーネス150の端子151をデフォッガ端子161と結線する。
(6)インナーパネル110に形成された開口111をカバー112で閉塞する。
【0008】
特許文献1,2には、車両後部の窓にデフォッガを備えた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−1197184号公報
【特許文献2】特開2002−19458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
デフォッガの端子161をワイヤハーネス150の端子151に結線する作業を、作業者はインナーパネル110に形成した開口111を利用して行わなければならない。しかし、バックドア100自体が樹脂で構成されているため、インナーパネル110自体に大きな開口111を設定すると、バックドア側部104の剛性を低下させるおそれがあるため、当該開口111の大きさには制約があり、開口を大きくすることができないことから作業性が悪かった。
また、インナーパネル110に形成した開口111を閉塞するカバー112をインナーパネル110とは別に製造する必要があるため部品点数が増加し、さらに当該カバー112をインナーパネル110に組み付ける作業を要するので、組立工数も増加し、コストが嵩む原因となっていた。
【0011】
本発明は以上の点に鑑みて創作されたもので、デフォッガ端子をバックドアインナに配策したワイヤハーネスの端子と容易に結線させることができるバックドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、樹脂製のインナーパネルと樹脂製のアウターパネルとを重ね合わせて構成され、バックドアガラスにデフォッガの複数の熱線を備え、デフォッガの端子が、インナーパネルに配策したワイヤハーネスの端子に接続されているバックドアであって、アウターパネルがバックドアガラスと対向する面に開口を有し、ワイヤハーネスの端子が開口の縁部を挟持するクリップ型に形成されており、バックドアガラスは、ワイヤハーネスの端子を開口の縁部に取り付けた状態で、ワイヤハーネスの端子と接触する位置に、デフォッガの端子を備えていて、デフォッガの端子をワイヤハーネスの端子に当接させるようにしたことを特徴としている。
本発明のバックドアにおいて、ワイヤハーネスの端子は、例えば、開口の縁部を挟持するクリップ本体部と、クリップ本体部から延設していて撓み可能な接点部と、を有し、接点部がワイヤハーネスの端子に接続されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バックドアガラスの組付けと同時に、デフォッガとの結線が完了するため、従来のカバー112(図6参照)を廃止することができる。これにより、従来のバックドア100に比べて組立工数を低減させることができる。さらに、カバー112を廃止することができることに伴い、バックドア1の室内側の見栄えが良くなるため、商品性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るバックドアの分解斜視図である。
【図2】図1のA部の拡大斜視図である。
【図3】図1のB−B線に沿った断面図である。
【図4】図1のC−C線に沿った断面図である。
【図5】従来のバックドアを示す分解斜視図である。
【図6】図5のD−D線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。なお、図中のFRは車両前方を、Upは車両上方を、LHは車両の横幅方向であって左方を示す。
図1は本発明の実施形態に係るバックドア1の斜視図である。なお、図1では、バックドアガラス2を外した状態を示している。
バックドア1は、車両後部の上縁に沿って車幅方向に配置された上部(以下、バックドア上部と言う場合がある。)3と、車両後部の側縁に沿って車両上下方向に配置された左右の側部(以下、バックドア側部と言う場合がある。)4,5と、これらの左右の側部4,5の下端部から下方に配置された裾部(以下、バックドア裾部と言う場合がある。)6と、バックドアガラス2と、から構成されている。
【0016】
バックドア1の上部3,左右の側部4,5及び裾部6は、インナーパネル10とアウターパネル20とを重ね合わせて構成されている。これらのインナーパネル10及びアウターパネル20は樹脂材料、特にガラス繊維を含まない樹脂材料、例えばポリプロピレン系樹脂材料で成る。
【0017】
バックドア上部3,左右のバックドア側部4,5及びバックドア裾部6は内部を連続した中空領域S(後述の図3参照)として構成されており、これらの中空領域に、リインフォース30(後述の図3参照)が配設される。具体的には、図示を省略するが、バックドア1の左半分の領域には、リインフォースが、上部3内から左の側部4を経て裾部6内迄の領域に配設される。これと同様に、右側のリインフォースが、上部3内から右の側部5を経て裾部6内迄の領域にも配設される。
【0018】
前述のバックドア上部3,左右の側部4,5及び裾部6で画成される開口部2A(図1参照)を閉塞するように、バックドアガラス2が設けられている。
このバックドアガラス2にはデフォッガの熱線2B(図1参照)が複数設けられており、これらの複数の熱線2Bに繋がったデフォッガ端子がバックドア1内に配策されたワイヤハーネスの端子に接続されている。
【0019】
このような構成は従来のバックドア100の構成と同様であるが、本発明の実施形態では、以下のように、デフォッガ端子をインナーパネルに配策したワイヤハーネスの端子と結線させる構造に特徴がある。
【0020】
図2は図1のA部、即ち右側のバックドア側部5を構成するアウターパネル20の表面を示す斜視図であり、図3は図1のB−B線に沿った断面図であり、図4は図1のC−C線に沿った断面図である。
これらの図に示すように、本実施形態では、右側のバックドア側部5を構成するアウターパネル20の表面、例えばバックドア側部5における高さ方向の中間部位の表面に、開口21が形成されている。
【0021】
この開口21を形成するリング状の縁部21Aのうち、裾部6側の部分は、図2に示すようにバックドアガラス2側に張り出した隆起部21Bとして形成されている。
【0022】
本実施形態では、このアウターパネル20の隆起部21Bにワイヤハーネス50の端子51が取り付けられている。
ワイヤハーネス50は、バックドア上部3内から右側のバックドア側部5内を経由して裾部6内まで延びて配策されている。ワイヤハーネス50はインナーパネル10の内面に取付具(図示省略)によって固定されている。
右側のバックドア側部5内に配策されたワイヤハーネス50において、その延出方向の途中の部位から、図4に示すようにデフォッガ用の配線(以下、デフォッガ配線と言う。)55が分岐している。
【0023】
本実施形態では、デフォッガ配線55の先端部に端子(以下、ワイヤハーネスの端子と言う。)51が取り付けられている。
このワイヤハーネスの端子51は、図2及び図4に示すように、開口21の縁部21A、即ち隆起部21Bを挟持するようクリップ型に形成されている。例えば、図に示すように、ワイヤハーネス50の端子51は、隆起部21Bを挟持する断面コ字状のクリップ本体部51Aと、クリップ本体部51Aから延設していて撓み可能な突片状の接点部51Bと、を有する。
【0024】
さらに本実施形態におけるバックドアガラス2は、ワイヤハーネス50の端子51が、上記開口21の縁部21Aに取り付けた状態で、当該ワイヤハーネス50の端子51と接触する位置に、デフォッガ端子2C(図1、図3及び図4参照)が設けられている。
図3及び図4に示すように、デフォッガ端子2Cは、バックドアガラス2の内面、即ちアウターパネル20の表面と対向する裏面に固定されている。このデフォッガ端子2Cは、開口21の縁部21Aに取り付けたワイヤハーネス50の端子51における当接部51Bに接触している。これにより、ワイヤハーネス50の端子51とデフォッガ端子2Cとが電気的に接続される。
【0025】
次に、本発明の実施形態に係るバックドア1におけるデフォッガ端子2Cをワイヤハーネス50の端子51と結線する作業工程について説明する。
結線作業は、例えば下記の項目の番号順に行われる。
(1)インナーパネル10にワイヤハーネス50を配策する。
(2)アウターパネル20をインナーパネル10と接合する。このとき、アウターパネル20の開口21からデフォッガ配線55を引き出しておく。
(3)デフォッガ配線55の先端に取り付けられている端子、即ちワイヤハーネス50の端子51をアウターパネル20の開口21の縁部21Aに取り付ける。このとき、端子51の当接部51Bが、外側に位置するように、クリップ本体部51Aで開口21の縁部21Aを挟持する。
(4)バックドアガラス2にウレタン接着剤を塗布する。このとき、バックドアガラス2の裏面において、その外周縁に沿ってウレタン接着剤を塗布する。
(5)バックドアガラス2をアウターパネル20の表面側に組み付ける。このとき、図3及び図4に示すように、バックドアガラス2の複数の熱線2Bに繋がったデフォッガ端子2Cをアウターパネル20の開口21の縁部21Aに取り付けたワイヤハーネス50の端子51に接触させる。
このようにして、結線作業が完了する。
【0026】
本実施形態に係るバックドア1によれば、バックドアガラスの組付けと同時にデフォッガとの結線が完了するため、従来のカバー112(図6参照)を廃止することができる。これにより、従来のバックドア100に比べて組立工数を低減させることができる。そして、カバー112の廃止に伴って、バックドア1の室内側の見栄えが良くなるため、商品性を向上させることができる。
【0027】
以上詳述したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。
アウターパネル20やインナーパネル10の材料はポリプロピレン系に限らず、ガラス繊維を混入した樹脂材料であってもよく、この場合、さらにバックドアの剛性を高くすることができる。
アウターパネル20とインナーパネル10との接合手段としてウレタン樹脂を利用することができるが、これに代えてその他のボルト・ナットなどの締結具を用いてもよく、或いはそれらを組み合わせて用いても良い。
また、リインフォースの断面構造として図3及び図4の構成は例示である。
上記実施形態では、デフォッガ端子2Cとデフォッガ配線55の端子(ワイヤハーネス50の端子51)とが、右側のバックドア側部5の高さ方向の中間部位で電気的に接続される場合を説明したが、結線位置はその位置に限定されるものではない。
また、デフォッガやワイヤハーネスのターミナルの形状は、図示例に限定されるものではない。
ワイヤハーネス50のターミナルの取付位置において、前述の隆起部は省略されてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 バックドア
2 バックドアガラス
2B デフォッガの熱線
2C デフォッガ端子
3 バックドア上部
4,5 バックドア側部
6 バックドア裾部
10 インナーパネル
20 アウターパネル
21 アウターパネルの開口
21A アウターパネルの開口の縁部
21B 隆起部
30 リインフォース
50 ワイヤハーネス
51 ワイヤハーネスの端子
51A クリップ本体部
51B 接点部
55 デフォッガ配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のインナーパネルと樹脂製のアウターパネルとを重ね合わせて構成され、
バックドアガラスにデフォッガの複数の熱線を備え、
上記デフォッガの端子が、上記インナーパネルに配策したワイヤハーネスの端子に接続されている、バックドアであって、
上記アウターパネルが上記バックドアガラスと対向する面に開口を有し、
上記ワイヤハーネスの端子が、上記開口の縁部を挟持するクリップ型に形成されており、
上記バックドアガラスは、上記ワイヤハーネスの端子が上記開口の縁部に取り付けた状態で、当該ワイヤハーネスの端子と接触する位置に、デフォッガの端子を備えていて、
上記デフォッガの端子は上記ワイヤハーネスの端子に当接していることを特徴とする、バックドア。
【請求項2】
前記ワイヤハーネスの端子は、前記開口の縁部を挟持するクリップ本体部と、上記クリップ本体部から延設していて撓み可能な接点部を有し、
上記接点部が前記ワイヤハーネスの端子に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載のバックドア。
【請求項3】
車両後部の上縁に沿って車幅方向に配置された上部と、車両後部の側縁に沿って車両上下方向に配置された左右の側部と、これらの左右の側部の下端部から下方に配置された裾部を備えていて、
前記開口部が、上記側部に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバックドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−247732(P2010−247732A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100675(P2009−100675)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】