説明

バッテリ冷却装置

【課題】雨天時等であっても可能な限り低湿度な空気を供給可能であり、かつ雨水等がバッテリが配置された領域等に浸入することを阻止可能であると共に、十分な冷却性能を発揮可能であり、他部材との干渉等が生じることなく設置可能なバッテリ冷却装置の提供を目的とした。
【解決手段】バッテリ冷却装置1は、バッテリ20により供給された電力により発生する動力を用いて走行可能な車両10に用いられる。バッテリ冷却装置1は、車両10に搭載されたシート50の背もたれ52aに空気を取り込む空気導入口56が設けられており、空気導入口56において取り込まれた空気をバッテリ配置領域40に向けて供給し、バッテリ20を冷却することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるハイブリッド車あるいは電気自動車のように、バッテリにより供給された電力により発生する動力を用いて走行可能な車両に搭載されたバッテリを冷却するために好適なバッテリ冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に普及しつつあるハイブリッド車あるいは電気自動車においては、例えばリチウムイオン二次電池あるいはニッケル水素二次電池のように、高容量であって高出力のバッテリが搭載されており、このバッテリにより供給された電力によって発生する動力を用いて走行することが可能な構成とされている。この種の車両においては、バッテリにおいて発生する熱をいかにして効率よく放出させるかが問題視されている。
【0003】
そこで、かかる知見に基づき、従来技術においては、下記特許文献1あるいは特許文献2に開示されているような方策が講じられている。具体的には、下記特許文献1に開示されている電気自動車用バッテリの強制冷却装置においては、車両の床下部に設けられたバッテリを冷却すべく、バッテリ設置スペースに対して車両前方側にファンを設けた構成とし、このファンを駆動させることにより発生する気流をバッテリに向けて供給する構成を採用している。
【0004】
また、下記特許文献2に開示されている電気自動車のバッテリ冷却装置においては、バッテリの設置スペースに対して後方側にファンを設けることにより、バッテリの設置スペース内の空気を強制的に排気させることにより空気流を形成し、バッテリを冷却することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−130268号公報
【特許文献2】特開平9−99745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述したように、ハイブリッド車や電気自動車に搭載されるバッテリは高容量かつ高出力のものが用いられるため、電池性能の維持、安全性確保等の観点から可能な限り乾燥した雰囲気下に配置されることが好ましい。
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1あるいは特許文献2に開示されている従来技術においては、バッテリを冷却するための空気流を形成することについて配慮がなされているものの、バッテリを乾燥した雰囲気下に配置するという観点においては十分な配慮がなされていない。すなわち、上述した従来技術のものにおいては、車両の床面近傍に空気の導入口あるいは排出口を設けた構成としている。そのため、従来技術においては、バッテリが配置されている領域、あるいはバッテリ冷却用の空気が流れる空気流通経路内に雨水等の水分が浸入してしまうことや、湿度の高い空気が導入されることがある。そのため、従来技術においては、バッテリが高湿度雰囲気下にさらされてしまう可能性がある。
【0008】
上述した課題に鑑み、本発明者らは、図2(a)に示すように車両のカウル部に吸気口100を設け、インパネの奥側に設置したブロア102によりバッテリ設置領域に冷却用の空気を導入してバッテリ104を冷却する構成を検討した。また、図2(b)に示すように、車両に搭載されるシート106の下方にバッテリ設置領域108を設け、この領域内に配置されたブロア110を作動させることにより空気を循環させ、バッテリ112を冷却する構成を検討した。
【0009】
しかしながら、図2(a)に示す構成を採用した場合には、インパネ内に空気導入用のブロア102やダクト103を設けるためのスペースが必要になる。これにより、インパネ内等に設けられた他部材との干渉を回避せざるを得ず、車両内の居室のスペースが小さくなる、あるいは車両の大きさが大きくなるといった問題が生じてしまう。また、図2(b)に示すようにシート106の下に設けたバッテリ設置領域108内において空気を循環させる構成とした場合、新たな空気が導入されず、十分な冷却性能が得られないという問題が発生することになる。
【0010】
そこで、本発明は、雨天時等であっても可能な限り低湿度な空気を供給可能であり、かつ雨水等がバッテリが配置された領域等に浸入することを阻止可能であると共に、十分な冷却性能を発揮可能であり、他部材との干渉等が生じることなく設置可能なバッテリ冷却装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決すべく提供される本発明のバッテリ冷却装置は、バッテリにより供給された電力により発生する動力を用いて走行可能な車両に用いられるものであり、前記車両に搭載されたシートの一部に、空気を取り込む空気導入口が設けられており、前記空気導入口において取り込まれた空気を前記バッテリが配置されたバッテリ配置領域に向けて供給可能であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のバッテリ冷却装置においては、シートの一部に設けられた空気導入口から取り込んだ空気をバッテリ配置領域に供給可能とされている。そのため、本発明のバッテリ冷却装置においては、雨天時であってもバッテリ配置領域に雨水等が浸入することを防止し、乾燥した空気を安定して供給することができる。従って、本発明のバッテリ冷却装置によれば、電池性能の維持及び安全性を確保しつつ、十分な冷却性能を発揮させることが可能である。
【0013】
また、本発明のバッテリ冷却装置は、図2(a)に示す構成のようにインパネ内に空気導入用のブロアやダクトを設ける必要がない。そのため、本発明のバッテリ冷却装置は、他部材との干渉について最小限の考慮により設置することができる。また、他部材との干渉についての考慮が最小限で済むため、部品サイズ等の制約も小さく、製造コストを最小限に抑制することができる。さらに、他部材と干渉するような入り組んだ場所に部品を設置する必要がないため、メンテナンス等も容易に実施することができる。
【0014】
上述した本発明のバッテリ冷却装置は、前記バッテリ配置領域に導入された空気を導出させるための空気排出経路が設けられており、前記空気排出経路における空気流入側の端部が前記バッテリ配置領域に連通し、空気排出側の端部が前記バッテリ配置領域に対して車両上方側に位置していることを特徴とするものであることが好ましい。
【0015】
本発明のバッテリ冷却装置においては、バッテリ配置領域に連通した空気排出経路が設けられており、この空気排出経路の空気排出側の端部がバッテリ配置領域に対して車両上方側に位置している。そのため、本発明のバッテリ冷却装置においては、空気排出経路内に雨水等が浸入することを確実に防止できる。また、本発明のバッテリ冷却装置によれば、雨水等の浸入に伴う副次的な不具合、すなわち電池性能の低下等の問題が発生することを回避できる。
【0016】
ここで、一般的に温度上昇した空気は上昇しやすい傾向にある。本発明のバッテリ冷却装置において、バッテリ配置領域に導入された空気は、バッテリの冷却に伴い温度上昇する。また、本発明尾バッテリ冷却装置においては、空気排出経路の末端部分(空気排出側の端部)を車両上方側に設けるべく、空気導入経路が上方に向けて延びるように形成される。そのため、本発明のバッテリ冷却装置においては、バッテリ配置領域内においてバッテリの冷却により温度上昇した空気がスムーズに空気排出経路を介して外部に放出されることになる。またその結果、低温である外気をバッテリ配置領域に対してスムーズに導入することが可能となる。すなわち、バッテリ配置領域における吸排気が効率よく行われる。従って、本発明のバッテリ冷却装置によれば、バッテリの冷却効率を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、雨天時等であっても可能な限り低湿度な空気を供給可能であり、かつ雨水等がバッテリが配置された領域等に浸入することを阻止可能であると共に、十分な冷却性能を発揮可能であり、他部材との干渉等が生じることなく設置可能なバッテリ冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るバッテリ冷却装置を搭載した車両の構成を示す説明図であり、(a)は車両を側方から見た状態を示し、(b)は(a)の車両を一部の構成を省略しつつ上方から見た状態を示す。
【図2】(a),(b)は本発明者らが検討したバッテリ冷却装置を搭載した車両の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
続いて、本発明の一実施形態に係るバッテリ冷却装置1について、これを搭載した車両10を例に挙げて説明する。車両10は、バッテリ20により供給された電力により発生する動力を用いて走行可能であり、いわゆるハイブリッド車、あるいは電気自動車に分類されるものである。また、車両10は、左右のドアを備えていない、いわゆるコミュータタイプのものでもある。車両10は、屋根12を備えており降雨時にも居室14には雨水等は浸入しない構成とされているものの、居室14は完全に閉空間となる訳ではない。そのため、居室14には、車両10の走行中においても外気が自由に出入りできる状態にある。
【0020】
バッテリ20は、例えばリチウムイオン二次電池あるいはニッケル水素二次電池等の高容量かつ高出力の電池によって構成されている。バッテリ20は、車両10を構成するフレーム30のうち、床部16を構成するフロアフレーム32によって形成されたバッテリ配置領域40内に収容されている。具体的には、バッテリ配置領域40は、床部16内の空間18を6つの区画18a〜18fに分割した状態において、車両前方側の中央部分の区画18fを除く残りの5つの区画18a〜18gに相当し、これらの区画18a〜18g内にバッテリ20が嵌め込まれている。区画18fには、バッテリ20に対して電気的に接続された機器類等が収容されている。
【0021】
バッテリ冷却装置1は、上述したバッテリ20を冷却するための空冷式の冷却装置である。バッテリ冷却装置1は、車両10を構成するフレーム30、シート50等を構成部材として利用することにより構築された通気経路60を有する。また、バッテリ冷却装置1は、通気経路60に空気を流通させるための送風機70を備えている。
【0022】
さらに詳細に説明すると、通気経路60は、バッテリ配置領域40に対して空気の流れ方向上流側の空気導入経路62と、下流側の空気排出経路64とを有する。通気経路60は、これらの経路62,64と、バッテリ配置領域40との組み合わせによって構成される一連の空気流路である。
【0023】
空気導入経路62は、バッテリ配置領域40に対して空気を導入させるための経路であり、シート50を利用して構成されている。具体的には、シート50は、車両10の居室14内において床部16の略中央部に設置されている。シート50は、運転者が着座するためのシート本体部52と、シート本体部52の台座として機能する脚部54とを有する。シート本体部52は、クッション材等を内蔵したものであり、内部を空気が通過可能とされている。シート本体部52には、空気を取り込むための空気導入口56が設けられている。
【0024】
空気導入口56は、シート50のいかなる場所に設置されていても良いが、本実施形態においては、シート本体部52を構成する背もたれ52aにおいて背面側の位置に開口するように設けられている。また、空気導入口56は、いかなる形状、あるいは大きさのものであっても良いが、デザイン等を考慮しつつ、十分な吸気性能を発揮可能な形状、位置に設置することが望ましい。具体的には、空気導入口56は、シート本体部52の座面部52b、あるいは脚部54に設けることが可能である。なお、空気導入口56を座面部52bに設ける場合には、着座することにより空気導入口56が閉塞される等して空気の吸入が阻害されることのないよう、位置等に配慮することが望ましい。
【0025】
脚部54は、上述したシート本体部52との間で通気可能なように設けられている。また、脚部54内は、中空の空間となっている。そのため、シート本体部52の空気導入口56から取り込まれた空気を脚部54内に導入することが可能である。また、車両10の床部16において、脚部54の直下に設けられた床部開口16aを介し、脚部54の内部空間とバッテリ配置領域40とが連通している。
【0026】
ここで、床部開口16aは、上述したバッテリ配置領域40の略中央部に位置している。また、脚部54内において、床部開口16aには送風機70が取り付けられている。そのため、送風機70を作動させることにより、図1に矢印で示すように、上述した空気導入口56からシート50を介して脚部54内に空気を導入すると共に、脚部54内に導入された空気をバッテリ配置領域40内の各区画18a〜18fに向けて略均等に分散させつつ導入させることができる。これにより、各区画18a〜18gに設置されたバッテリ20を空冷することができる。
【0027】
また、空気排出経路64は、バッテリ配置領域40においてバッテリ20を冷却することにより温度上昇した空気をバッテリ配置領域40の外部に排出するための経路である。空気排出経路64は、車両10を構成するフレーム30のうち、バッテリ配置領域40に対して車両10の前方側及び後方側に位置するフロント側フレーム34及びリア側フレーム36によって構成されている。フロント側フレーム34は、車両10のAピラー(フロントピラー)を構成するものである。また、リア側フレーム36は、車両10のCピラー(リアピラー)を構成するものである。
【0028】
フロント側フレーム34及びリア側フレーム36は、いずれも中空であり、バッテリ配置領域40よりも上方に立ち上がっている。また、フロント側フレーム34及びリア側フレーム36の下端部、すなわち空気流入側となるバッテリ配置領域40側の端部は、バッテリ配置領域40に連通している。フロント側フレーム34及びリア側フレーム36の上端部、すなわち空気排出側となる部分がバッテリ配置領域40に対して上方側の位置において開口している。従って、バッテリ配置領域40内においてバッテリ20の冷却により温度上昇した空気は、図1において矢印で示すように、フロント側フレーム34あるいはリア側フレーム36内を通って、これらのフレーム34,36の上端側の開口から排出される。
【0029】
本実施形態のバッテリ冷却装置1においては、シート50の一部をなす背もたれ52aの背面に設けられた空気導入口56から取り込んだ空気をバッテリ配置領域40に供給可能とされている。また、車両10において、居室14は密閉空間とはならないものの屋根12が存在することから降雨時であってもシート50には雨水が付着しない。そのため、本実施形態のバッテリ冷却装置1においては、バッテリ配置領域40に雨水等が浸入することがなく、バッテリ20の冷却用として乾燥した空気を安定して供給することができる。従って、バッテリ冷却装置1によれば、バッテリ20の性能維持及び安全性を確保しつつ、十分な冷却性能を発揮させることが可能である。
【0030】
また、バッテリ冷却装置1においては、車両10の構成部材であるフレーム30やシート50を構成部材として活用している。また、送風機70については、シート50の脚部54内の空間を利用して設置している。そのため、バッテリ冷却装置1は、車両10を構成する他部材との干渉について最小限の考慮により設置することができる。また、車両10を構成する他部材との干渉についての考慮が最小限で済み、送風機70等の部品のサイズ等についての制約が少ない。そのため、バッテリ冷却装置1の製造コストを最小限に抑制することができる。また、バッテリ冷却装置1は、メンテナンス等も容易に実施することができる。
【0031】
本実施形態のバッテリ冷却装置1においては、バッテリ配置領域40に連通した空気排出経路64の下流端がバッテリ配置領域40に対して上方側に位置している。そのため、バッテリ冷却装置1においては、空気排出経路64内に雨水等が浸入することを確実に防止できる。また、バッテリ冷却装置1によれば、雨水等の浸入に伴う電池性能の低下等の不具合が発生することを防止できる。
【0032】
本実施形態のバッテリ冷却装置1においては、空気排出経路64の末端部分(空気排出側の端部)を車両上方側に設けるべく、空気導入経路が上方に向けて延びるように形成される。そのため、バッテリ配置領域40においてバッテリ20の冷却に伴って温度上昇した空気をスムーズに空気排出経路64に流入させ、外部に放出させることができる。また、高温の空気がバッテリ配置領域40から次々と排出されるため、空気導入経路62を介して低温である外気がバッテリ配置領域40に対してスムーズに導入される。従って、バッテリ冷却装置1によれば、バッテリ20を効率よく冷却することができる。
【0033】
また、本実施形態においては、床部16aの略中央部に床部開口16aが形成され、その上にシート50の脚部54が配置されていることから、脚部54内に導入された空気を送風機70によって各区画18a〜18fに略均等に分散させることができる。そのため、各区画18a〜18gに収容されている各バッテリ20をムラ無く均等に冷却することができる。
【0034】
なお、本実施形態においては、床部16aの略中央に床部開口16aを設け、これに送風機70を設置した構成を例示したが、シート50の配置次第によって床部開口16a及び送風機70の位置を適宜変更することも可能である。このように床部開口16a等を各バッテリ20の配置に対して偏在させる場合には、冷却用の空気を各バッテリ20に対してムラ無く供給可能なように、偏向板等を設ける等の方策を講じることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のバッテリ冷却装置は、ハイブリッド車あるいは電気自動車のように、バッテリにより供給された電力により発生する動力を用いて走行可能な車両において利用可能である。また特に、リチウムイオン二次電池あるいはニッケル水素二次電池のように、高容量であって高出力のバッテリを駆動力の供給源として搭載した車両において好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 バッテリ冷却装置
10 車両
20 バッテリ
30 フレーム
40 バッテリ配置領域
50 シート
56 空気導入口
60 通気経路
62 空気導入経路
64 空気排出経路
70 送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリにより供給された電力により発生する動力を用いて走行可能な車両におけるバッテリ冷却装置であって、
前記車両に搭載されたシートの一部に、空気を取り込む空気導入口が設けられており、
前記空気導入口において取り込まれた空気を前記バッテリが配置されたバッテリ配置領域に向けて供給可能であることを特徴とするバッテリ冷却装置。
【請求項2】
前記バッテリ配置領域に導入された空気を導出させるための空気排出経路が設けられており、
前記空気排出経路における空気流入側の端部が前記バッテリ配置領域に連通し、空気排出側の端部が前記バッテリ配置領域に対して車両上方側に位置していることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−71517(P2013−71517A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210636(P2011−210636)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】