説明

バランスフィルタ

【課題】平衡度の悪化、通過特性の劣化を抑制しつつ、小型化を図ることが可能なバランスフィルタを提供すること。
【解決手段】本発明は、1つの不平衡入力端子22と2つの平衡出力端子18a、18bとの間にそれぞれ接続された2つの弾性表面波フィルタ14a、14bと、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bの両方に接続された接地端子26と、を具備し、接地端子26は、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bの両方に接続された第1配線部24と、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bの間であって、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bが配置された方向に直交する方向に延在する領域Xで第1配線部24に接続する第2配線部32と、を介して2つの弾性表面波フィルタ14a、14bに接続されているバランスフィルタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に不平衡−平衡変換機能を有するバランスフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信機器の小型化、軽量化、高周波化に伴い、移動体通信機器に搭載されるフィルタとして、小型で軽量な弾性表面波フィルタが使用されている。また、更なる移動体通信機器の小型化、軽量化を図るため、使用部品の削減が進められ、弾性表面波フィルタに新たな機能を付加することが要求されている。その1つとして、不平衡−平衡変換機能(いわゆるバラン(balun)機能)を有するバランスフィルタが提案されている。ここで、平衡信号とは、データ転送に1対の信号線を使い、信号線間の電位差で信号を表すものをいい、各信号線の信号は振幅量が等しく、位相が逆位相になっている。これに対して、不平衡信号とは、信号がグランド電位に対する1本の信号線の電位として表されるものをいう。
【0003】
不平衡−平衡変換機能を有するバランスフィルタが、特許文献1および特許文献2に記載されている。例えば特許文献1に記載のバランスフィルタは、少なくとも2つの平衡端子、1つの不平衡端子、2つの接地端子を備えている。例えば特許文献2に記載のバランスフィルタは、縦結合共振子型の弾性表面波フィルタが2段縦続接続された構成をしていて、6個のパッケージ側電極パッドを備えている。
【特許文献1】特表2003−528523号公報
【特許文献2】特開2003−124777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のバランスフィルタには、複数の接地端子が設けられている。特許文献2に記載のバランスフィルタには、6個のパッケージ側電極パッドが設けられている。このため、更なるバランスフィルタの小型化を図ることが困難である。また、接地端子の個数を単純に1端子としただけでは、平衡度が悪化し、通過特性が劣化するという現象が生じる場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、平衡度の悪化、通過特性の劣化を抑制しつつ、小型化を図ることが可能なバランスフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、1つの不平衡端子と2つの平衡端子との間にそれぞれ接続された2つの弾性波フィルタと、前記2つの弾性波フィルタの両方に接続された接地端子と、を具備し、前記接地端子は、前記2つの弾性波フィルタの両方に接続された第1配線部と、前記2つの弾性波フィルタの間であって前記2つの弾性波フィルタが配置された方向に直交する方向に延在する領域で前記第1配線部に接続する第2配線部と、を介して前記2つの弾性波フィルタに接続されていることを特徴とするバランスフィルタである。本発明によれば、2つの平衡端子それぞれに入る寄生容量、寄生インダクタンスを等しくすることができ、バランスフィルタの平衡度の悪化、通過特性の劣化を抑制することができる。また、バランスフィルタの小型化を図ることができる。
【0007】
上記構成において、前記第1配線部は前記2つの弾性波フィルタ間の中心線に対して線対称に設けられている構成とすることができる。この構成によれば、バランスフィルタの平衡度の悪化、通過特性の劣化をより抑制できる。
【0008】
上記構成において、前記2つの平衡端子は前記2つの弾性波フィルタ間の中心線に対して線対称に設けられている構成とすることができる。この構成によれば、バランスフィルタの平衡度の悪化、通過特性の劣化をより抑制することができる。
【0009】
上記構成において、前記2つの弾性波フィルタと前記不平衡端子との間に、前記2つの弾性波フィルタの直列に接続された第1弾性波共振器を具備する構成とすることができる。この構成によれば、バランスフィルタの通過帯域外の減衰量を大きくすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1弾性波共振器は前記2つの弾性波フィルタそれぞれに接続されている構成とすることができる。この構成によれば、バランスフィルタの通過帯域外の減衰量を大きくすることができる。
【0011】
上記構成において、前記2つの弾性波フィルタと前記2つの平衡端子とのそれぞれの間に、前記2つの弾性波フィルタに直列に接続された第2弾性波共振器を具備する構成とすることができる。この構成によれば、バランスフィルタの通過帯域外の減衰量を大きくすることができる。
【0012】
上記構成において、前記接地端子は1つである構成とすることができる。この構成によれば、バランスフィルタの小型化を図ることができる。
【0013】
上記構成において、前記2つの弾性波フィルタは多重モード弾性波フィルタであり、前記第1配線部は、前記2つの弾性波フィルタの両側で、前記2つの弾性波フィルタの両方に接続されていて、前記2つの弾性波フィルタの間で、前記2つの弾性波フィルタの両側に形成された前記第1配線部は互いに接続している構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記2つの弾性波フィルタが形成された圧電基板上に、フリップチップ実装に用いるバンプが形成されている構成とすることができる。この構成によれば、バランスフィルタをベース基板に実装した後においても、小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バランスフィルタの平衡度の悪化、通過特性の劣化を抑制することができ、バランスフィルタの小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず初めに、従来の課題について、比較例1に係るバランスフィルタを用いて説明する。図1は比較例1に係るバランスフィルタの上面模式図である。なお、以下で説明する比較例1、比較例2、実施例1から実施例5において、櫛型電極IDT(Interdigital Transducer)と反射電極との電極指の数を数本で図示しているが、実際の電極指は多数設けられている。図1を参照に、比較例1に係るバランスフィルタ10は、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bと、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bに直列に接続された第1弾性表面波共振器16とを有している。2つの弾性表面波フィルタ14a、14bと第1弾性表面波共振器16とは、圧電基板12上に形成された、櫛型電極IDTと反射電極とで構成されている。2つの弾性表面波フィルタ14a、14bにはそれぞれ平衡出力端子18a、18bが接続されている。第1弾性表面波共振器16には不平衡入力端子22が1つ接続されている。
【0017】
2つの弾性表面波フィルタ14a、14bの両方に接続される第1配線部24が形成されている。第1配線部24には2つの接地端子26a、26bが接続されていて、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bを構成する櫛型電極IDTをグランドに接地させている。
【0018】
比較例1によれば、図1のように、2つの接地端子26a、26bが設けられている。接地端子の個数が多くなるほど、接地端子を形成するために必要な領域が大きくなる。このため、バランスフィルタ10を小型化させることが難しくなる。そこで、バランスフィルタ10の平衡度の悪化、通過特性の劣化を抑制しつつ、小型化を図ることが可能な実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0019】
図2は実施例1に係るバランスフィルタの上面模式図である。図2を参照に、実施例1に係るバランスフィルタ10は、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bと、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bに直列に接続された第1弾性表面波共振器16とを有している。2つの弾性表面波フィルタ14a、14bはダブルモード弾性表面波フィルタである。2つの弾性表面波フィルタ14a、14bと第1弾性表面波共振器16とは、例えばLiTaO(タンタル酸リチウム)からなる圧電基板12上に形成された櫛型電極IDT群28と反射電極30とで構成されている。櫛型電極IDT郡28と反射電極30とは、例えばAl(アルミニウム)で形成されている。2つの弾性表面波フィルタ14a、14bにはそれぞれ第3配線部20を介して平衡出力端子18a、18bが接続されている。第1弾性表面波共振器16には第3配線部20を介して不平衡入力端子22が1つ接続されている。
【0020】
弾性表面波フィルタ14aは、2つの反射電極30の間に3つのIDT11、IDT12、IDT13が形成されている。IDT11の一方の電極とIDT13の一方の電極は平衡出力端子18aに接続されていて、それぞれの他方の電極は第1配線部24に接続されている。IDT12の一方の電極は第1弾性表面波共振器16に接続されていて、他方の電極は第1配線部24に接続されている。同様に、弾性表面波フィルタ14bは、2つの反射電極30の間に3つのIDT21、IDT22、IDT23が形成されている。IDT21の一方の電極とIDT23の一方の電極は平衡出力端子18bに接続されていて、それぞれの他方の電極は第1配線部24に接続されている。IDT22の一方の電極は第1弾性表面波共振器16に接続されていて、他方の電極は第1配線部24に接続されている。つまり、第1配線部24は2つの弾性表面波フィルタ14a、14bの両方に接続されている。
【0021】
第1配線部24は、弾性表面波フィルタ14a、14bの間であって2つの弾性表面波フィルタ14a、14bが配置された方向に直交する方向に延在する領域Xで第2配線部32に接続されている。第2配線部32には接地端子26が1つ接続されている。つまり、接地端子26は第1配線部24と第2配線部32とを介して弾性表面波フィルタ14a、14bの両方に接続されている。これにより、弾性表面波フィルタ14aを構成するIDT11、IDT12、IDT13の電極の一方はグランドに接地されている。同様に、弾性表面波フィルタ14bを構成するIDT21、IDT22、IDT23の電極の一方もグランドに接地されている。また、第1配線部24は弾性表面波フィルタ14a、14b間の中心線A−Aに対して線対称になるように形成されている。さらに、平衡出力端子18a、18bも中心線A−Aに対して線対称になるように形成されている。
【0022】
第1弾性表面波共振器16は、2つの反射電極30の間に1つのIDT31が設けられている。IDT31の一方の電極は弾性表面波フィルタ14a、14bに接続されていて、IDT31の他方の電極は不平衡入力端子22に接続されている。
【0023】
次に、弾性表面波フィルタ14a、14bと第1弾性表面波共振器16との構成について詳しく説明する。なお、以下の説明で述べる対数とは、IDTの一方の電極の電極指と他方の電極の電極指のペアを1対とする電極指の数をいう。開口長とは、IDTの一方の電極の電極指と他方の電極の電極指との重なる部分の長さをいう。図2を参照に、弾性表面波フィルタ14aの開口長L1は85μmである。また、IDT11、IDT12、IDT13の対数はそれぞれ12.5対、24対、12.5対である。弾性表面波フィルタ14bも弾性表面波フィルタ14aと同じであり、開口長L2は85μmで、IDT21、IDT22、IDT23の対数はそれぞれ12.5対、24対、12.5対である。第1弾性表面波共振器16の開口長L3、IDT31の対数はそれぞれ50μm、120対である。
【0024】
図3は比較例2に係るバランスフィルタの上面模式図である。図3を参照に、比較例2に係るバランスフィルタ10は、第1配線部24と第2配線部32とは、弾性表面波フィルタ14b側で接続されている。言い換えると、第1配線部24と第2配線部32とは、弾性表面波フィルタ14bを挟んで弾性表面波フィルタ14aに相対する側で接続されている。その他の構成については実施例1と同じであり、図2に示しているので説明を省略する。
【0025】
図4(a)および図4(b)は実施例1および比較例2に係るバランスフィルタの通過特性を示す図である。図4(a)は通過帯域付近を表した図であり、図4(b)は高周波域まで表した図である。図4(a)および図4(b)の横軸は周波数(MHz)であり、縦軸は減衰量(dB)である。太線は実施例1に係るバランスフィルタの測定結果であり、破線は比較例2に係るバランスフィルタの測定結果である。図4(a)を参照に、実施例1(太線)と比較例2(破線)とでは通過帯域における挿入損失は同程度となっている。一方、図4(b)を参照に、通過帯域外において実施例1の減衰量は比較例2の減衰量に比べて大きくなっている。特に、高周波側の通過帯域外においては、実施例1は比較例2に比べて減衰量がより顕著に大きくなっている。
【0026】
図5(a)および図5(b)は実施例1および比較例2に係るバランスフィルタの周波数に対する振幅バランスを示す図である。図5(a)は通過帯域付近を、図5(b)は高周波域までを表した図である。図5(a)および図5(b)の横軸は周波数(MHz)であり、縦軸は振幅バランス(dB)である。なお、振幅バランスが0(dB)の状態とは、平衡出力端子18aと平衡出力端子18bとからの出力が互いに等しい大きさの振幅量を有している状態をいう。図5(a)を参照に、実施例1(太線)と比較例2(破線)とでは通過帯域内において大きな差異は見られない。一方、図5(b)を参照に、高周波側の通過帯域外において実施例1の振幅バランスは比較例2の振幅バランスに比べて大幅に改善している。
【0027】
図6(a)および図6(b)は実施例1および比較例2に係るバランスフィルタの周波数に対する位相バランスを示す図である。図6(a)は通過帯域付近を、図6(b)は高周波域までを表した図である。図6(a)および図6(b)の横軸は周波数(MHz)であり、縦軸は位相バランス(°)である。なお、位相バランスが0(°)の状態とは、平衡出力端子18aと平衡出力端子18bとからの出力が互いに逆位相になっている状態をいう。図6(a)を参照に、実施例1(太線)と比較例2(破線)とでは、通過帯域における位相バランスは同程度に逆位相(0(°))になっている。一方、図6(b)を参照に、通過帯域外において実施例1の位相バランスは比較例2の位相バランスに比べて同位相(180(°))に近づいている。
【0028】
比較例2に係るバランスフィルタは、図3のように、第1配線部24と第2配線部32とは弾性表面波フィルタ14b側で接続している。このため、接地端子26から弾性表面波フィルタ14aまでの距離と接地端子26から弾性表面波フィルタ14bまでの距離とが異なってしまう。
【0029】
一方、実施例1に係るバランスフィルタは、図2のように、1つの不平衡入力端子22と2つの平衡出力端子18a、18bとの間にそれぞれ2つの弾性表面波フィルタ14a、14bが接続されている。2つの弾性表面波フィルタ14a、14bの両方に第1配線部24と第2配線部32とを介して接地端子26が1つ接続されている。第1配線部24は2つの弾性表面波フィルタ14a、14bの両方に接続されていて、第2配線部32は2つの弾性表面波フィルタ14a、14bの間であって弾性表面波フィルタ14a、14bが配置された方向に直交する方向に延在する領域Xで第1配線部24に接続されている。このような構成にすることで、接地端子26から弾性表面波フィルタ14aまでの距離と接地端子26から弾性表面波フィルタ14bまでの距離とを等しくすることができる。接地端子26から弾性表面波フィルタ14a、14bまでの距離がそれぞれ等しくなると、平衡出力端子18a、18bそれぞれに入る寄生容量、寄生インダクタンスを等しくすることができる。これにより、図4(a)から図6(b)のように、実施例1は比較例2に比べて、周波数に対する振幅バランスと位相バランスとを向上させることが可能となり、通過特性の改善を図ることが可能となる。特に、通過帯域外において、周波数に対する振幅バランスに起因する減衰量の増大を図ることが可能となる。
【0030】
また、図2のように、第1配線部24は2つの弾性表面波フィルタ14a、14b間の中心線A−Aに対して線対称に設けられている。このように、第1配線部24を対称構造とすることで、平衡出力端子18a、18bそれぞれに入る寄生容量、寄生インダクタンスをより等しくすることができる。このため、周波数に対する振幅バランス、位相バランスの向上、通過特性の改善をより図ることが可能となる。特に、通過帯域外において、周波数に対する振幅バランスに起因する減衰量の増大をより図ることが可能となる。
【0031】
さらに、図2のように、2つの平衡出力端子18a、18bは、2つの弾性表面波フィルタ14a、14b間の中心線A−Aに対して線対称に設けられている。このように、平衡出力端子18a、18bを対称構造とすることで、平衡出力端子18a、18bそれぞれに入る寄生容量、寄生インダクタンスを更に等しくすることができる。このため、周波数に対する振幅バランス、位相バランスの向上、通過特性の改善を更に図ることが可能となる。特に、通過帯域外において、周波数に対する振幅バランスに起因する減衰量の増大を更に図ることが可能となる。
【0032】
さらに、図2のように、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bと不平衡入力端子22との間に、第1弾性表面波共振器16が2つの弾性表面波フィルタ14a、14bに直列に接続されている。このように、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bと不平衡入力端子22との間に第1弾性表面波共振器16を直列に接続させ、第1弾性表面波共振器16の反共振周波数を通過帯域近傍の通過帯域外に合わせることで、通過帯域近傍の通過帯域外に減衰極を生じさせることができる。これにより、通過帯域の挿入損失は劣化させずに通過帯域外の減衰量を大きくすることができる。
【0033】
さらに、図2のように、実施例1に係るバランスフィルタは、2つの平衡出力端子18a、18b、1つの不平衡入力端子22、1つの接地端子26が設けられている。つまり、4つの外部端子が設けられている。比較例1に係るバランスフィルタは、2つの平衡出力端子18a、18bと1つの不平衡入力端子22と2つの接地端子26a、26bとが設けられている。つまり、5つの外部端子が設けられている。このように、実施例1は比較例1に比べて外部端子の個数が少ないため、外部端子を形成するために必要な領域を小さくすることができる。これにより、実施例1は比較例1に比べてバランスフィルタ10の小型化を図ることが可能となる。
【0034】
さらに、実施例1によれば、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bはそれぞれダブルモード弾性表面波フィルタである。このため、図2のように、弾性表面波フィルタ14a、14bに接続する入力側の第3配線部20と出力側の第3配線部20とはそれぞれ、弾性表面波の伝搬方向を挟むように弾性表面波フィルタ14a、14bの反対側に接続されている。つまり、第1配線部24は弾性表面波の伝搬方向の両側で弾性表面波フィルタ14a、14bに接続される。したがって、第1配線部24は、弾性表面波の伝搬方向の両側に当たる弾性表面波フィルタ14a、14bの両側で、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bの両方に接続され、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bの間で弾性表面波フィルタ14a、14bの両側に形成された第1配線部24が互いに接続している場合が好ましい。この場合は、弾性表面波フィルタ14a、14bのグランドへの接地をより確実に行うことができる。そして、前述したように、第1配線部24は中心線A−Aに対して対称構造をしている場合が好ましいため、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bの間に形成された第1配線部24は中心線A−A上に形成されている場合が好ましい。さらに、第1配線部24は、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bの周りを可能な範囲で囲むように形成される場合が好ましい。
【0035】
さらに、実施例1に係るバランスフィルタは、図7に示すように、WLP(ウエハ・レベル・パッケージ)構造とすることができる。なお、図7は櫛型電極IDT群28と外部端子とを通る断面線で切断した断面を示している。図7を参照に、WLP構造をしたバランスフィルタ10は、圧電基板12の表面に櫛型電極IDT群28、反射電極30、第3配線部20、第1配線部(不図示)および第2配線部(不図示)が設けられている。櫛型電極IDT群28上に空洞部36が形成されるように、圧電基板12上に例えばエポキシ樹脂からなる樹脂部38が設けられている。第3配線部20上には、樹脂部38を貫通する例えばCu(銅)からなる柱状電極40が設けられている。柱状電極40上には半田バンプ42が設けられている。半田バンプ42と柱状電極40とは、バランスフィルタ10をフリップチップ実装する際に、櫛型電極IDT群28を外部に接続する外部端子の機能を有し、平衡出力端子18a、18b、不平衡入力端子22および接地端子26が外部端子に相当する。また、圧電基板12の裏面には、例えばAl(アルミナ)からなる絶縁膜44が設けられている。圧電基板12の裏面に、圧電基板12の厚さより厚く、弾性表面波の伝搬方向における圧電基板12の線膨張係数より小さい線膨張係数の絶縁膜44を設けることで、バランスフィルタ10の温度特性を改善することができる。
【0036】
図7のように、WLP構造をしたバランスフィルタは、圧電基板12上にフリップチップ実装に用いる半田バンプ42が設けられている。このため、フリップチップ実装によりベース基板に搭載することができるため、ベース基板に搭載後においても小型化を図ることが可能となる。
【0037】
実施例1において、図2のように、第1配線部24と第2配線部32とは、第3配線部20の上方で、第3配線部20に立体的に交差している場合を図示しているがこれに限られない。第3配線部20が、第1配線部24と第2配線部32との上方で第1配線部24と第2配線部32とに立体的に交差している場合でもよい。また、第1配線部24と第3配線部20との間および第2配線部32と第3配線部20との間に絶縁体を介在させることにより、第1配線部24と第3配線部20および第2配線部32と第3配線部20を電気的に接続しないようにしてもよい。
【実施例2】
【0038】
図8は実施例2に係るバランスフィルタの上面模式図である。図8を参照に、弾性表面波フィルタ14a、14bと不平衡入力端子22との間に、第1弾性表面波共振器16が設けられていない。その他の構成については実施例1と同じであり、図2に示しているので説明を省略する。
【0039】
実施例2によれば、図8のように、実施例1と同様に、第1配線部24と第2配線部32とは弾性表面波フィルタ14a、14bの間であって、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bが配置された方向に直交する方向に延在する領域Xで接続されている。したがって、実施例2のように、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bと不平衡入力端子22との間に、第1弾性表面波共振器16が形成されていない場合でも、実施例1と同様に、平衡出力端子18a、18bそれぞれに入る寄生容量、寄生インダクタンスを等しくすることができ、周波数に対する振幅バランスと位相バランスとの向上、通過特性の改善を図ることが可能となる。特に、通過帯域外での、周波数に対する振幅バランスに起因する減衰量の増大を図ることが可能となる。
【0040】
また、実施例2に係るバランスフィルタは接地端子26が1つしか設けられていないため、実施例1と同様に、バランスフィルタ10の小型化を図ることができる。
【実施例3】
【0041】
図9は実施例3に係るバランスフィルタの上面模式図である。図9を参照に、弾性表面波フィルタ14aと平衡出力端子18aとの間に第2弾性表面波共振器46aが弾性表面波フィルタ14aに直列に接続されている。同様に、弾性表面波フィルタ14bと平衡出力端子18bとの間に第2弾性表面波共振器46bが弾性表面波フィルタ14bに直列に接続されている。その他の構成については実施例1と同じであり、図2に示しているので説明を省略する。
【0042】
実施例3によれば、図9のように、実施例1と同様に、第1配線部24と第2配線部32とは弾性表面波フィルタ14a、14bの間であって、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bが配置された方向に直交する方向に延在する領域Xで接続されている。したがって、実施例3のように、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bと2つの平衡出力端子18a、18bとのそれぞれの間に、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bに直列に接続された第2弾性表面波共振器46a、46bが設けられている場合でも、実施例1と同様に、平衡出力端子18a、18bそれぞれに入る寄生容量、寄生インダクタンスを等しくすることができる。このため、周波数に対する振幅バランスと位相バランスとの向上、通過特性の改善を図ることが可能となる。特に、通過帯域外での、周波数に対する振幅バランスに起因する減衰量の増大を図ることが可能となる。
【0043】
また、第2弾性表面波共振器46a、46bの反共振周波数を通過帯域近傍の通過帯域外に合わせることで、通過帯域近傍の通過帯域外に減衰極を生じさせることができる。これにより、通過帯域の挿入損失は劣化させずに通過帯域外の減衰量を大きくすることができる。
【0044】
さらに、実施例3に係るバランスフィルタは接地端子26が1つしか設けられていないため、実施例1と同様に、バランスフィルタ10の小型化を図ることができる。
【実施例4】
【0045】
図10は実施例4に係るバランスフィルタの上面模式図である。図10を参照に、弾性表面波フィルタ14aと不平衡入力端子22との間に、第1弾性表面波共振器16aが弾性表面波フィルタ14aに直列に接続されている。弾性表面波フィルタ14bと不平衡入力端子22との間に、第1弾性表面波共振器16bが弾性表面波フィルタ14bに直列に接続されている。その他の構成については実施例1と同じであり、図2に示しているので説明を省略する。
【0046】
実施例4によれば、図10のように、実施例1と同様に、第1配線部24と第2配線部32とは弾性表面波フィルタ14a、14bの間であって、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bが配置された方向に直交する方向に延在する領域Xで接続されている。したがって、実施例4のように、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bと不平衡入力端子22とのそれぞれの間に、第1弾性表面波共振器16a、16bが2つの弾性表面波フィルタ14a、14bに直列に接続されている場合でも、実施例1と同様に、平衡出力端子18a、18bそれぞれに入る寄生容量、寄生インダクタンスを等しくすることができる。このため、周波数に対する振幅バランスと位相バランスとの向上、通過特性の改善を図ることが可能となる。特に、通過帯域外での、周波数に対する振幅バランスに起因する減衰量の増大を図ることが可能となる。
【0047】
また、第1弾性表面波共振器16a、16bの反共振周波数を通過帯域近傍の通過帯域外に合わせることで、通過帯域近傍の通過帯域外に減衰極を生じさせることができる。これにより、通過帯域の挿入損失は劣化させずに通過帯域外の減衰量を大きくすることができる。
【0048】
さらに、実施例4に係るバランスフィルタは接地端子26が1つしか設けられていないため、実施例1と同様に、バランスフィルタ10の小型化を図ることができる。
【実施例5】
【0049】
図11は実施例5に係るバランスフィルタの上面模式図である。図11を参照に、弾性表面波フィルタ14aと平衡出力端子18aとの間に第2弾性表面波共振器46aが弾性表面波フィルタ14aに直列に接続されている。同様に、弾性表面波フィルタ14bと平衡出力端子18bとの間に第2弾性表面波共振器46bが弾性表面波フィルタ14bに直列に接続されている。そして、弾性表面波フィルタ14aと不平衡入力端子22との間に、第1弾性表面波共振器16aが弾性表面波フィルタ14aに直列に接続されている。同様に、弾性表面波フィルタ14bと不平衡入力端子22との間に、第1弾性表面波共振器16bが弾性表面波フィルタ14bに直列に接続されている。その他の構成については実施例1と同じであり、図2に示しているので説明を省略する。
【0050】
実施例5によれば、図11のように、実施例1と同様に、第1配線部24と第2配線部32とは弾性表面波フィルタ14a、14bの間であって、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bが配置された方向に直交する方向に延在する領域Xで接続されている。したがって、実施例5のように、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bと2つの平衡出力端子18a、18bとのそれぞれの間に、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bに直列に接続された第2弾性表面波共振器46a、46bが設けられている。そして、2つの弾性表面波フィルタ14a、14bと不平衡入力端子22とのそれぞれの間に、第1弾性表面波共振器16a、16bが2つの弾性表面波フィルタ14a、14bに直列に接続されている。この場合でも、実施例1と同様に、平衡出力端子18a、18bそれぞれに入る寄生容量、寄生インダクタンスを等しくすることができる。このため、周波数に対する振幅バランスと位相バランスとの向上、通過特性の改善を図ることが可能となる。特に、通過帯域外での、周波数に対する振幅バランスに起因する減衰量の増大を図ることが可能となる。
【0051】
また、第2弾性表面波共振器46a、46bと第1弾性表面波共振器16a、16bとの反共振周波数を通過帯域近傍の通過帯域外に合わせることで、通過帯域近傍の通過帯域外に減衰極を生じさせることができる。これにより、通過帯域の挿入損失は劣化させずに通過帯域外の減衰量を更に大きくすることができる。
【0052】
さらに、実施例5に係るバランスフィルタは接地端子26が1つしか設けられていないため、実施例1と同様に、バランスフィルタ10の小型化を図ることができる。
【0053】
実施例1から実施例5において、弾性表面波フィルタ14a、14bはダブルモード弾性表面波フィルタの例を示したが、ダブルモード弾性表面波フィルタに限られず、複数の櫛型電極IDT群28が弾性表面波の伝搬方向に配置された多重モード弾性表面波フィルタである場合でもよい。また、弾性表面波フィルタ14a、14bの代わりに弾性境界波フィルタやその他の弾性波フィルタを用いてもよい。これらの場合でも、バランスフィルタの小型化と、周波数に対する振幅バランス、位相バランスの向上、通過特性の改善との効果を得ることができる。また、平衡端子は出力端子で不平衡端子は入力端子である場合を例に示したが、平衡端子が入力端子で不平衡端子が出力端子の場合でもよい。また、圧電基板12には、LiTaOの他にもLiNbO(ニオブ酸リチウム)等の圧電基板として通常用いることのできる材料を用いてもよい。
【0054】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は比較例1に係るバランスフィルタの上面模式図である。
【図2】図2は実施例1に係るバランスフィルタの上面模式図である。
【図3】図3は比較例2に係るバランスフィルタの上面模式図である。
【図4】図4(a)および図4(b)は実施例1および比較例2に係るバランスフィルタの周波数に対する通過特性を示す図である。
【図5】図5(a)および図5(b)は実施例1および比較例2に係るバランスフィルタの周波数に対する振幅バランスを示す図である。
【図6】図6(a)および図6(b)は実施例1および比較例2に係るバランスフィルタの周波数に対する位相バランスを示す図である。
【図7】図7はWLP構造をしたバランスフィルタの断面模式図である。
【図8】図8は実施例2に係るバランスフィルタの上面模式図である。
【図9】図9は実施例3に係るバランスフィルタの上面模式図である。
【図10】図10は実施例4に係るバランスフィルタの上面模式図である。
【図11】図11は実施例5に係るバランスフィルタの上面模式図である。
【符号の説明】
【0056】
10 バランスフィルタ
12 圧電基板
14a 弾性表面波フィルタ
14b 弾性表面波フィルタ
16 第1弾性表面波共振器
16a 第1弾性表面波共振器
16b 第1弾性表面波共振器
18a 平衡出力端子
18b 平衡出力端子
20 第3配線部
22 不平衡入力端子
24 第1配線部
26 接地端子
26a 接地端子
26b 接地端子
28 櫛型電極IDT群
30 反射電極
32 第2配線部
36 空洞部
38 樹脂部
40 柱状電極
42 半田バンプ
44 絶縁膜
46a 第2弾性表面波共振器
46b 第2弾性表面波共振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの不平衡端子と2つの平衡端子との間にそれぞれ接続された2つの弾性波フィルタと、
前記2つの弾性波フィルタの両方に接続された接地端子と、を具備し、
前記接地端子は、前記2つの弾性波フィルタの両方に接続された第1配線部と、前記2つの弾性波フィルタの間であって前記2つの弾性波フィルタが配置された方向に直交する方向に延在する領域で前記第1配線部に接続する第2配線部と、を介して前記2つの弾性波フィルタに接続されていることを特徴とするバランスフィルタ。
【請求項2】
前記第1配線部は前記2つの弾性波フィルタ間の中心線に対して線対称に設けられていることを特徴とする請求項1記載のバランスフィルタ。
【請求項3】
前記2つの平衡端子は前記2つの弾性波フィルタ間の中心線に対して線対称に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のバランスフィルタ。
【請求項4】
前記2つの弾性波フィルタと前記不平衡端子との間に、前記2つの弾性波フィルタに直列に接続された第1弾性波共振器を具備することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載のバランスフィルタ。
【請求項5】
前記第1弾性波共振器は前記2つの弾性波フィルタそれぞれに接続されていることを特徴とする請求項4記載のバランスフィルタ。
【請求項6】
前記2つの弾性波フィルタと前記2つの平衡端子とのそれぞれの間に、前記2つの弾性波フィルタに直列に接続された第2弾性波共振器を具備することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載のバランスフィルタ。
【請求項7】
前記接地端子は1つであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載のバランスフィルタ。
【請求項8】
前記2つの弾性波フィルタは多重モード弾性波フィルタであり、
前記第1配線部は、前記2つの弾性波フィルタの両側で、前記2つの弾性波フィルタの両方に接続されていて、
前記2つの弾性波フィルタの間で、前記2つの弾性波フィルタの両側に形成された前記第1配線部は互いに接続していることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載のバランスフィルタ。
【請求項9】
前記2つの弾性波フィルタが形成された圧電基板上に、フリップチップ実装に用いるバンプが形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載のバランスフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−206688(P2009−206688A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45583(P2008−45583)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(398067270)富士通メディアデバイス株式会社 (198)
【Fターム(参考)】