説明

バリ検出用照明装置及びバリ検出用の画像の作成方法

【課題】成形品の外面と内部とに連続するように形成された孔と孔との境界縁に生じたバリの画像を容易に得る。
【解決手段】成形品の外面と内部とに連続するように形成された孔と孔との境界縁に生じたバリの画像を得るために境界縁及びその近傍領域に光を照射するバリ検出用照明装置1であって、境界縁及びその近傍領域の全体に照明可能な照明具2と、照明具2を孔内に挿入するために照明具2を先端に有した棒体と、照明具2の駆動電源16とを備え、照明具2が発光体(LEDチップ5)と発光体を覆う覆部6とを備え、覆部6が光拡散部7を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品の外面と内部とに連続するように形成された孔と孔との境界縁に生じたバリの画像を容易に得るためのバリ検出用照明装置及びバリ検出用の画像の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成形品に開口された小径孔内のバリを検出するために、小径孔内に光を導くための導光筒を備えた側視鏡が知られている。導光筒の先端には、光ファイバーにより外部から導かれた光を孔の内面に照射するための照明照射口と、光を照射した孔の内面からの反射光を導光筒に導く反射鏡とを備え、反射鏡の反射像を孔の外に設けられたCCDカメラで撮像し、この撮像画像によりバリを検出する。
【特許文献1】特開平10−307012号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来技術では、照明を照射できる範囲及び反射像の得られる範囲が狭いので、小径孔内においてバリの発生している可能性がある部分を照明できるように照明照射口の位置を逐一調整したり、照明した部分の画像を逐一撮像しなければならないので、バリの発生している可能性がある部分の撮像画像を得るための操作や手間が煩雑であるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1のバリ検出用照明装置は、成形品の外面と内部とに連続するように形成された孔と孔との境界縁に生じたバリの画像を得るために境界縁及びその近傍領域に光を照射するバリ検出用照明装置であって、境界縁及びその近傍領域の全体に照明可能な照明具と、照明具を孔内に挿入するために照明具を先端に有した棒体と、照明具の駆動電源とを備え、照明具が発光体と発光体を覆う覆部とを備え、覆部が光拡散部を備えたことを特徴とする。
請求項2のバリ検出用の画像の作成方法は、成形品の外面と内部とに連続するように形成された孔と孔のうちの一方の孔の入口よりバリ検出用照明装置を孔内に挿入して、他方の孔の入口から他方の孔内を見た場合に照明装置の照明具が孔と孔との境界縁の後方に位置するように照明装置を位置決めして照明具を点灯させた状態で、他方の孔の入口側から他方の孔内を撮像手段で撮像することにより、孔と孔との境界縁に生じたバリの画像を作成したことを特徴とする。
請求項3のバリ検出用照明装置は、成形品の外面と内部とに連続するように形成された孔と孔との境界縁に生じたバリの画像を得るために境界縁及びその近傍領域に光を照射するバリ検出用照明装置であって、境界縁及びその近傍領域の全体に照明可能な2つの照明具と、支持体と、照明具の駆動電源と、2つの照明具を孔内に入れるための棒体とを備え、照明具が発光体と発光体を覆う覆部とを備え、覆部が光拡散部を備え、2つの照明具が互いに間隔を隔てて一直線上に位置するように支持体によって支持されたことを特徴とする。
請求項4のバリ検出用の画像の作成方法は、成形品の外面と内部とに連続するように形成された互いに交差する孔と孔のうちの一方の孔の入口よりバリ検出用照明装置を孔内に挿入して、他方の孔の入口から他方の孔内を見た場合に2つの照明具の間の部分が見えて2つの照明具が見えないように照明装置を位置決めして2つの照明具のうちの少なくとも1つを点灯させた状態で、他方の孔の入口側から他方の孔内を撮像手段で撮像することにより、互いに交差する孔と孔との境界縁に生じたバリの画像を作成したことを特徴とする。
請求項5のバリ検出用照明装置は、電源供給選択スイッチを備え、電源供給選択スイッチが、2つの照明具のうちの1つに選択的に電源を供給する状態を維持するか、あるいは、2つの照明具にそれぞれ電源を供給する状態を維持することも特徴とする。
請求項6のバリ検出用の画像の作成方法は、成形品の外面と内部とに連続するように形成された互いに交差する孔と孔のうちの一方の孔の入口よりバリ検出用照明装置を孔内に挿入して、他方の孔の入口から他方の孔内を見た場合に2つの照明具の間の部分が見えて2つの照明具が見えないように照明装置を位置決めして2つの照明具のうちの少なくとも1つを点灯させた状態と2つの照明具の両方を点灯させた状態とにおいて他方の孔の入口側から他方の孔内を撮像手段で撮像して得られた互いに交差する孔と孔との境界縁に生じたバリの画像をコンピュータに出力することによって、2つの照明具のうちの少なくとも1つを点灯させた状態で撮像された画像と2つの照明具の両方を点灯させた状態で撮像された画像との差の絶対値を示す画像をコンピュータに作成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
請求項1のバリ検出用照明装置によれば、孔と孔との境界縁及びその近傍領域の全体に照明可能な照明具を備えるので、境界縁及びその近傍領域の全体を、照明具で一度に確実かつ明瞭に照明でき、撮像手段で一度に撮像できるので、バリの発生している可能性がある部分の撮像画像を容易に得ることができ、バリの有無を容易に検出できるようになる。また、照明具の覆部が光拡散部を備えるので、孔と孔との境界縁及びその近傍領域に光を照射している部分を照明具による照射側とは反対側より撮像した場合において、撮像画像に照明具の裏側に位置するバリの検出検査に邪魔な背景部分が撮像されなくなり、撮像画像におけるバリの背景部分が光拡散部の画像となるため、バリの有無を容易に検出できる画像を得ることができる。
請求項2のバリ検出用の画像の作成方法によれば、撮像画像に照明具の裏側に位置するバリの検出検査に邪魔な背景部分が撮像されなくなり、撮像画像におけるバリの背景部分が光拡散部の画像となるため、バリの有無を容易に検出できるバリ検出用の画像を作成できる。
請求項3のバリ検出用照明装置によれば、2つの照明具が互いに間隔を隔てて一直線上に位置するように支持体によって支持された構成としたので、互いに交差する孔と孔との境界縁及びその近傍領域の全体を確実かつ明瞭に照明でき、バリの発生している可能性がある部分の撮像画像を容易に得ることができ、バリの有無を容易に検出できるようになる。
請求項4のバリ検出用の画像の作成方法によれば、他方の孔の入口から他方の孔内を見た場合に2つの照明具の間の部分が見えて2つの照明具が見えないように照明装置を位置決めしたので、2つの照明具で他方の孔の底が覆われることなく、2つの照明具が映っていない他方の孔の底全体の画像を撮像できるので、互いに交差する孔と孔との境界縁及びその近傍領域全体を撮像でき、互いに交差する孔と孔との境界縁に生じているすべてのバリの検出が容易となる。つまり、互いに交差する孔と孔との境界縁に発生している可能性があるバリの画像を得ることができ、バリの有無を容易に検出できるようになる。
請求項5のバリ検出用照明装置によれば、電源供給選択スイッチを備えたので、一方の照明具のみを点灯させた状態で互いに交差する孔と孔との境界縁及びその近傍領域を撮像した画像と2つの照明具を共に点灯させた状態で互いに交差する孔と孔との境界縁及びその近傍領域を撮像した画像との差の絶対値を示す画像をコンピュータに作成させることによって、バリを浮かび上がらせるような画像を得ることができ、バリの有無を容易に検出できるようになる。
請求項6のバリ検出用の画像の作成方法によれば、2つの照明具のうちの少なくとも1つを点灯させた状態で撮像された画像と2つの照明具の両方を点灯させた状態で撮像された画像との差の絶対値を示す画像を作成でき、バリを浮かび上がらせるような画像を得ることができるので、バリの有無を容易に検出できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1及び図2は本発明の最良の形態を示し、図1はバリ検出用照明装置(以下、単に「照明装置」と略す)を示し、図2は照明装置の使用方法を示す。
【0007】
図1を参照し、バリ検出用照明装置(以下、単に「照明装置」と略す)の構造を説明する。
照明装置1は、2つの照明具2;2と、支持体3と、照明具2の駆動電源16と、電源供給選択スイッチ17とを備える。
照明具2は、発光体としてのLEDチップ5と、LEDチップ5を覆う覆部6とを備える。覆部6は、光拡散部7を備える。光拡散部7は、例えば、乳白色の樹脂で覆部6を形成したり、市販のLEDの覆部(カバー)の外面に乳白色の光拡散剤を塗布したり、市販のLEDの覆部の外面に乳白色の光拡散シートを貼り付けたりすることで形成される。
2つの照明具2;2は、互いに間隔Hを隔てて一直線上に位置するように支持体3によって支持される。支持体3は、例えば2本の金属細棒3a;3aにより形成される。
2つの照明具2;2のうちの一方は先端側照明具8として用いられ、他方は後続照明具9として用いられる。
【0008】
先頭側照明具8は、例えば、円筒部分11の両端が半球面状12に形成された覆部6を備えた構成である。
後続照明具9は、例えば、円筒部分11の一端が半球面状12に形成された覆部6を備えた構成である。
先頭側照明具8の覆部6の半球面状12の一端と後続照明具9の覆部6の半球面状12の一端とが所定の間隔Hを隔てて互いに向き合わされた状態で、2つの金属細棒3aを先頭側照明具8の覆部6と後続照明具9の覆部6との外面に図外の接着剤などで固定することにより、先頭側照明具8と後続照明具9とが、互いに間隔Hを隔てて一直線上に位置するように支持される。
支持体3としての2つの金属細棒3a;3aは、先頭側照明具8及び後続照明具9の覆部6の円筒外周面上において互いに180°隔てた位置に固定される。
本形態では、後続照明具9は、覆部6の円筒部分11の筒の長さが、先頭側照明具8の覆部6の円筒部分11の筒の長さより長く形成され、この後続照明具9の覆部6の円筒部分11が、先頭側照明具8と後続照明具9とを後述する横孔28内に入れるための棒体として機能する。
【0009】
先頭側照明具8のLEDチップ5に接続された図外のリード線と制御装置15とが電気的に接続され、後続照明具9のLEDチップ5に接続された図外のリード線と制御装置15とが図外の導線により電気的に接続されたことによって、制御装置15内に設けられた駆動電源から先頭側照明具8及び後続照明具9に駆動電力が供給される。
制御装置15は、駆動電源16と、電源供給選択スイッチ17とを備え、電源供給選択スイッチ17が、先頭側照明具8及び後続照明具9のうちの1つに選択的に電力を供給する状態を維持するか、あるいは、先頭側照明具8及び後続照明具9のそれぞれに電力を供給する状態を維持する。すなわち、電源供給選択スイッチ17を操作することによって、先頭側照明具8と後続照明具9とを共に点灯させたり、先頭側照明具8と後続照明具9のうちのいずれか1つのみを点灯させることが可能である。尚、図示しないが、電源供給選択スイッチ17の操作レバーは制御装置15の筐体の外に突出しており、この操作レバーを操作して電源供給選択スイッチ17の接点を切り替えることができる。
【0010】
照明装置1を用いたバリ検出用の画像の作成方法について説明する。
図2に示すように、縦孔21が成形品20となるワーク22の上面23からワーク22の内部に向けて図外のドリルで形成された後に、一方の横孔24がワーク22の一方の側面25から縦孔21に到達するようにドリルで形成され、他方の横孔26がワーク22の他方の側面27から縦孔21に到達するようにドリルで形成されることによって、一方の側面25と他方の側面27とに跨って貫通する横孔28と上面23から横孔28を貫通して横孔28の下方に突出する縦孔21とが形成された成形品20においては、互いに交差する縦孔21と横孔28との境界縁29にバリ30が発生する場合がある。
【0011】
そこで、照明装置1を先頭側照明具8側より一方の側面25の横孔入口24aから挿入し、一方の横孔24と縦孔21との境界縁29a及びその近傍領域を横孔26側から二点鎖線の矢印で示すような光で照明可能な位置に先頭側照明具8の後部31を位置させ、かつ、他方の横孔26と縦孔21との境界縁29b及びその近傍領域を横孔24側から二点鎖線の矢印で示すような光で照明可能な位置に後続照明具9の前部32を位置させる。
つまり、先頭側照明具8及び後続照明具9は、縦孔入口34から縦孔21内を見た場合に、見えないように位置される。即ち、縦孔入口34から縦孔21内を見た場合に、先頭側照明具8と後続照明具9との間の部分が見えて先頭側照明具8と後続照明具9とが見えないように照明装置1を位置決めする。
よって、照明装置1における先頭側照明具8と後続照明具9との間隔Hは、縦孔21の開口径寸法より大きい寸法に設定される。
【0012】
そして、電源供給選択スイッチ17を操作して、先頭側照明具8のみを点灯させた状態A、先頭側照明具8と後続照明具9とを共に点灯させた状態B、後続照明具9のみを点灯させた状態Cとし、撮像装置としての例えばエリアカメラ33を用いて縦孔入口34から各状態A;B;C時における縦孔21内をそれぞれ撮像することによって互いに交差する横孔28と縦孔21との境界縁29及びその近傍領域の撮像画像を取得する。ここでは、先頭側照明具8と後続照明具9が、縦孔入口34から縦孔21内を見た場合に見えないように位置決めされているので、縦孔入口34から縦孔21内を撮像した場合、先頭側照明具8や後続照明具9で縦孔21の底が覆われることなく、先頭側照明具8及び後続照明具9の映っていない縦孔21の底全体の画像を撮像できるので、互いに交差する横孔28と縦孔21との境界縁29及びその近傍領域全体を撮像でき、互いに交差する横孔28と縦孔21との境界縁29に生じているすべてのバリの検出が容易となる。尚、縦孔入口34から撮像する場合、図2に示すように、支持体3が邪魔になって支持体3の下に位置する境界縁29及びその近傍領域を撮像できないので、図2に示す状態で各状態A;B;C時を撮像するとともに、照明装置1を棒体の中心を回転中心として例えば90°回転させた状態においても各状態A;B;C時の縦孔21内を撮像することにより、図2の状態において支持体3の下に位置していた境界縁29及びその近傍領域全体を撮像できる。つまり、合計6パターンの撮像画像を検査用画像としてコンピュータ35に取り込んで図外の画像表示装置の画面に表示させる。検査員は画面に表示された検査用画像を見てバリの有無を検査する。
【0013】
最良の形態によれば、成形品20の外面としての上面23から内部に向けて形成された縦孔21と成形品20の外面としての側面25;27から内部に向けて形成された横孔28とが互いに交差して貫通し合うように形成された孔構成を備えた成形品20において、先頭側照明具8と後続照明具9とにより互いに交差する縦孔21と横孔28との境界縁29及びその近傍領域の全体を先頭側照明具8と後続照明具9とで確実かつ明瞭に照明できるので、互いに交差する縦孔21と横孔28との境界縁29及びその近傍領域の全体を撮像する回数を少なくでき、少ない撮像画像により境界縁29に残っているバリ30の有無を容易に検出できるようになる。つまり、バリの発生している可能性がある部分の撮像画像を容易に得ることができる。
また、上述した状態Aの画像と状態Bの画像との差の絶対値を示す画像や、状態Cの画像と状態Bの画像との差の絶対値を示す画像をコンピュータ35に作成させることによって、バリ30を浮かび上がらせるような画像を得ることができ、バリ30の有無を容易に検出できるようになる。
【0014】
他の形態1
照明装置1を用いたバリ検出用の画像の作成方法の他の形態1について説明する。図3に示すように、縦孔21がワーク22の上面23からワーク22の内部に向けて図外のドリルで形成された後に、一方の横孔24がワーク22の一方の側面25から縦孔21に到達するようにドリルで形成され、他方の横孔26がワーク22の他方の側面27から縦孔21に到達するようにドリルで形成されることによって、一方の側面25と他方の側面27とに跨って貫通する横孔28と上面23から横孔28に到達する縦孔21とが形成された成形品20においても、縦孔21と横孔28との境界縁29及びその近傍領域にバリ30が発生する場合がある。
【0015】
この場合、照明装置1を先頭側照明具8側より一方の側面25の横孔入口24aから挿入し、照明装置1の先頭側照明具8が縦孔入口34の真下で境界縁29の後方に位置するように照明装置1を位置決めし、電源供給選択スイッチ17を操作して、先頭側照明具8のみを点灯させた状態Aとして、エリアカメラ33を用いて縦孔入口34から縦孔21内を撮像することによって横孔28と縦孔21との境界縁29及びその近傍領域の撮像画像を取得する。この場合、先頭側照明具8の覆部6の表面には光拡散部7が形成されているので、先頭側照明具8の下方(裏側)に位置する横孔28の内面は撮像されない。即ち、先頭側照明具8の上方及び横に位置する横孔28と縦孔21との境界縁29及びその近傍領域の全体が、先頭側照明具8による拡散照明によって一度に確実かつ明瞭に照明された状態で撮像される。
【0016】
他の形態1によれば、成形品20の外面としての側面25と側面27とに跨って貫通する横孔28と成形品20の外面としての上面23から横孔28に到達する縦孔21とからなる孔構成を備えた成形品20において、先頭側照明具8の上方及び横に位置する横孔28と縦孔21との境界縁29及びその近傍領域の全体を、先頭側照明具8で一度に確実かつ明瞭に照明でき、かつ、エリアカメラ33で一度に撮像できるので、1回の照明操作、1枚の撮像画像により、境界縁29に残っているバリ30の有無を容易に検出できるようになる。つまり、バリの発生している可能性がある部分の撮像画像を容易に得ることができる。
また、先頭側照明具8の覆部6が光拡散部7を備えない場合、横孔28と縦孔21との境界縁29及びその近傍領域に光を照射している部分を先頭側照明具8による照射側とは反対側、即ち、縦孔入口34からエリアカメラ33で撮像した場合は、先頭側照明具8の裏側である下方に位置する横孔28の内壁が撮像画像の背景部分として映ってしまうので、この撮像画像の背景部分がバリの検出検査の邪魔になる。
しかしながら、本発明の照明装置1の先頭側照明具8は、覆部6の表面に光拡散部7を備えるため、撮像画像におけるバリの背景部分が光拡散部7による乳白色の画像となるので、バリを容易に検出できる撮像画像を得ることができる。
【0017】
他の形態2
照明装置1を用いたバリ検出用の画像の作成方法の他の形態2について説明する。図4に示すように、縦孔21がワーク22の上面23からワーク22の内部に向けて図外のドリルで形成された後に、一方の横孔24がワーク22の一方の側面25から縦孔21に到達するようにドリルで横孔28が形成されることによって、一方の側面25から縦孔21に到達する上面23から横孔28の位置より下方まで延長する縦孔21とが形成された成形品20においても、縦孔21と横孔28との境界縁29にバリ30が発生する場合がある。
【0018】
この場合、照明装置1を先頭側照明具8側より一方の側面25の横孔入口24aから挿入して、先頭側照明具8の先端部分を横孔28と縦孔21との境界付近に位置させる。そして、電源供給選択スイッチ17を操作して、先頭側照明具8のみを点灯させた状態Aとして、エリアカメラ33を用いて縦孔入口34から縦孔21内を撮像することによって横孔28と縦孔21との境界縁29の部分の撮像画像を取得する。この場合、先頭側照明具8の照明光が先頭側照明具8と対向する縦孔21の内壁面36で反射した反射光が横孔28と縦孔21との境界縁29及びその近傍領域の全体を照明する。
【0019】
他の形態2によれば、成形品20の外面としての上面23から内部に向けて形成された縦孔21と成形品20の外面としての一方の側面25から内部に向けて形成されて縦孔21に到達する横孔28とからなる孔構成を備えた成形品20において、横孔28と縦孔21との境界縁29及びその近傍領域の全体を、先頭側照明具8で一度に確実かつ明瞭に照明でき、かつ、エリアカメラ33で一度に撮像できるので、1回の照明操作、1枚の撮像画像により、境界縁29に残っているバリ30の有無を容易に検出できるようになる。つまり、バリ30の発生している可能性がある部分の撮像画像を容易に得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
他の形態1で使用する照明装置1は、先頭側照明具8の横孔入口24aから撮像される部分のみの覆部6の表面に光拡散部7が形成された構成であればよい。このように構成しても、先頭側照明具8の下方に位置する横孔28の内面は撮像されないので、このような先頭側照明具8を用いた場合でも、先頭側照明具8の上方及び横に位置する横孔28と縦孔21との境界縁29及びその近傍領域の全体を、一度に確実かつ明瞭に照明でき、一度に撮像できるので、1回の照明操作、1枚の撮像画像により、境界縁29に残っているバリ30の有無を容易に検出できるようになる。つまり、バリの発生している可能性がある部分の撮像画像を容易に得ることができる。
【0021】
他の形態2の方法の場合、反射光が横孔28と縦孔21との境界縁29及びその近傍領域の全体を照明するので、先頭側照明具8としては覆部6の表面に光拡散部7を備えない先頭側照明具8を用いてよい。
【0022】
他の形態1や2で使用する照明装置としては、棒体の先端側に1つの照明具2を備えた構成であればよく、支持体3と後続照明具9を備えない照明装置でもよい。すなわち、照明具を孔内に挿入するために照明具を先端に有した棒体を備えた構成の照明装置を用いても他の形態1や2の方法を実現できる。
【0023】
尚、本発明のバリ検査の対象とする孔を備えた成形品20としては、金属成形品や樹脂成形品がある。本発明のバリ検出用照明装置及びバリ検出用の画像の作成方法は、例えば、自動車のオイルボディ、キャブレターのような高精度成形品の孔と孔との境界縁に生じるバリの検出検査に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】照明装置を示す側面図(最良の形態)。
【図2】バリ検出用の画像の作成方法を示す図(最良の形態)。
【図3】バリ検出用の画像の作成方法を示す図(他の形態1)。
【図4】バリ検出用の画像の作成方法を示す図(他の形態2)。
【符号の説明】
【0025】
1 バリ検出用照明装置、2 照明具、3 支持体、5 LEDチップ(発光体)、
6 覆部、7 光拡散部、8 先頭側照明具(照明具)、
9 後続照明具(照明具)、16 駆動電源、17 電源供給選択スイッチ、
20 成形品、21 縦孔、23 上面(成形品の外面)、24 横孔入口、
25 側面(成形品の外面)、28 横孔、29 境界縁、30 バリ、
33 エリアカメラ(撮像手段)、34 縦孔入口、35 コンピュータ、
H 間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品の外面と内部とに連続するように形成された孔と孔との境界縁に生じたバリの画像を得るために境界縁及びその近傍領域に光を照射するバリ検出用照明装置であって、境界縁及びその近傍領域の全体に照明可能な照明具と、照明具を孔内に挿入するために照明具を先端に有した棒体と、照明具の駆動電源とを備え、照明具が発光体と発光体を覆う覆部とを備え、覆部が光拡散部を備えたことを特徴とするバリ検出用照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバリ検出用照明装置を用いたバリ検出用の画像の作成方法であって、成形品の外面と内部とに連続するように形成された孔と孔のうちの一方の孔の入口よりバリ検出用照明装置を孔内に挿入して、他方の孔の入口から他方の孔内を見た場合に照明装置の照明具が孔と孔との境界縁の後方に位置するように照明装置を位置決めして照明具を点灯させた状態で、他方の孔の入口側から他方の孔内を撮像手段で撮像することにより、孔と孔との境界縁に生じたバリの画像を作成したことを特徴とするバリ検出用の画像の作成方法。
【請求項3】
成形品の外面と内部とに連続するように形成された互いに交差する孔と孔との境界縁に生じたバリの画像を得るために境界縁及びその近傍領域に光を照射するバリ検出用照明装置であって、境界縁及びその近傍領域の全体に照明可能な2つの照明具と、支持体と、照明具の駆動電源と、2つの照明具を孔内に入れるための棒体とを備え、照明具が発光体と発光体を覆う覆部とを備え、覆部が光拡散部を備え、2つの照明具が互いに間隔を隔てて一直線上に位置するように支持体によって支持されたことを特徴とするバリ検出用照明装置。
【請求項4】
請求項3に記載のバリ検出用照明装置を用いたバリ検出用の画像の作成方法であって、成形品の外面と内部とに連続するように形成された互いに交差する孔と孔のうちの一方の孔の入口よりバリ検出用照明装置を孔内に挿入して、他方の孔の入口から他方の孔内を見た場合に2つの照明具の間の部分が見えて2つの照明具が見えないように照明装置を位置決めして2つの照明具のうちの少なくとも1つを点灯させた状態で、他方の孔の入口側から他方の孔内を撮像手段で撮像することにより、互いに交差する孔と孔との境界縁に生じたバリの画像を作成したことを特徴とするバリ検出用の画像の作成方法。
【請求項5】
電源供給選択スイッチを備え、電源供給選択スイッチが、2つの照明具のうちの1つに選択的に電源を供給する状態を維持するか、あるいは、2つの照明具にそれぞれ電源を供給する状態を維持することを特徴とする請求項3に記載のバリ検出用照明装置。
【請求項6】
請求項5に記載のバリ検出用照明装置を用いたバリ検出用の画像の作成方法であって、成形品の外面と内部とに連続するように形成された互いに交差する孔と孔のうちの一方の孔の入口よりバリ検出用照明装置を孔内に挿入して、他方の孔の入口から他方の孔内を見た場合に2つの照明具の間の部分が見えて2つの照明具が見えないように照明装置を位置決めして2つの照明具のうちの少なくとも1つを点灯させた状態と2つの照明具の両方を点灯させた状態とにおいて他方の孔の入口側から他方の孔内を撮像手段で撮像して得られた互いに交差する孔と孔との境界縁に生じたバリの画像をコンピュータに出力することによって、2つの照明具のうちの少なくとも1つを点灯させた状態で撮像された画像と2つの照明具の両方を点灯させた状態で撮像された画像との差の絶対値を示す画像をコンピュータに作成させることを特徴とするバリ検出用の画像の作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−96323(P2008−96323A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279440(P2006−279440)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(394000873)株式会社エム・アイ・エル (8)
【Fターム(参考)】