説明

バルブタイミング調整装置

【課題】 エンジン停止中に少ない電流で吸気バルブの開閉タイミングを変更可能なバルブタイミング調整装置を提供する。
【解決手段】 S103では、エンジン停止時のクランク軸角度、カム軸角度、油温、および水温を検出する。S104では、カム軸角度、油温および水温に基づいて現在のカム軸角度から目標とするカム軸角度に変更するために必要なカムトルクを算出する。S105では、クランク軸角度、カム軸角度、油温および水温に基づいて位相調整部でのフリクショントルクを算出する。S106では、算出されたカムトルクおよびフリクショントルクからモータ出力トルクを算出する。S107では、算出されたモータ出力トルクから通電デューティ比を算出する。S108では、算出された通電デューティ比に応じた電流がモータに通電される。これにより、少ない電流で吸気バルブの開閉タイミングを変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブタイミング調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの回転トルクを利用してエンジンのバルブタイミングを調整する電動式のバルブタイミング調整装置が知られている。電動式のバルブタイミング調整装置では、クランク軸のトルクが伝達される駆動側回転体とカム軸にトルクを伝達する従動側回転体とを遊星回転体によって連結している。バルブタイミング調整装置のモータが駆動側回転体に対する遊星回転体の回転速度を変更することにより、駆動側回転体に対する従動側回転体の位相が変更され、カム軸によって開閉駆動するバルブの開閉タイミングが変更される。特許文献1には、エンジン停止中に吸気バルブの開閉タイミングを変更するとき、モータの回転トルクが伝達されるカム軸の回転速度を目標の回転速度とするように通電デューティ比のフィードバックを行う電動式可変バルブタイミング調整装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−94581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電動式可変バルブタイミング調整装置では、エンジン停止中に吸気バルブの開閉タイミングを変更するとき、モータには比較的大きな通電デューティ比に応じた電流が通電されるため、カム軸の回転動作や吸気バルブの開閉動作などにより大きな作動音が発生する。また、モータの消費電力が大きくなるため、モータからの発熱量も大きくなる。一方で通電デューティ比を小さくすると、カム軸が回転しないおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、エンジン停止中に少ない電流で吸気バルブの開閉タイミングを変更可能なバルブタイミング調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明によると、バルブタイミング調整装置は、内燃機関の駆動軸に対する従動軸の位相を調整することにより、従動軸と連動する弁の開閉タイミングを調整する。従動軸にはモータが発生する回転トルクが位相調整手段により伝達される。このとき、モータ通電手段に入力される通電デューティ比に応じてモータの回転数が変化することにより駆動軸に対する従動軸の位相が調整される。バルブタイミング調整装置では、駆動軸の回転角度は駆動軸角検出手段により検出され、駆動軸角検出手段は従動軸の回転角度に応じた信号を出力する。また、従動軸の回転角度は従動軸角検出手段により検出され、従動軸角検出手段は駆動軸の回転角度に応じた信号を出力する。
【0007】
請求項1に記載のバルブタイミング調整装置では、回転速度判定手段により駆動軸の回転速度が0であると判定される場合、従動軸トルク算出手段は、従動軸角検出手段が検出する従動軸の回転角度および第1マップに基づいて従動軸トルクを算出する。ここで、第1マップとは、第1記憶手段に記憶されており、従動軸の回転角度と従動軸の回転角度を変更するのに必要な従動軸トルクとの関係を示すマップである。また、フリクショントルク算出手段は、駆動軸角検出手段が検出する駆動軸の回転角度および従動軸角検出手段が検出する従動軸の回転角度に基づいて位相調整手段が駆動軸に対する従動軸の位相を目標位相に調整するために必要なフリクショントルクを算出する。出力トルク算出手段では、算出された従動軸トルクおよびフリクショントルクに基づいてモータが出力するモータ出力トルクを算出する。デューティ比算出手段では、算出されたモータ出力トルクおよび第2マップに基づいて、モータ出力トルクを出力するために必要な通電デューティ比を算出し、前記通電デューティ比に応じた信号をモータ通電手段に出力する。ここで、第2マップとは、第2記憶手段に記憶されており、モータ通電手段に入力される通電デューティ比とモータが出力する回転トルクとの関係を示すマップである。これにより、算出された通電デューティ比の大きさに応じた電流がモータに通電され、回転トルクが発生する。
【0008】
請求項1に記載のバルブタイミング調整装置では、エンジン停止中の駆動軸の回転角度および従動軸の回転角度に基づいてモータ通電手段に入力する通電デューティ比を決定する。当該通電デューティ比は、従動軸の回転角度を目標の回転角度にするために必要な従動軸トルクおよび位相調整手段が駆動軸に対する従動軸の位相を目標位相に調整するために必要なフリクショントルクから算出されており、弁の開閉タイミングを目標とする開閉タイミングに変更するために最小の通電デューティ比となっている。これにより、バルブタイミング調整装置は、比較的少ない電流をモータに通電することにより弁の開閉タイミングを目標とする開閉タイミングに変更することができる。したがって、バルブタイミング調整装置は、弁の開閉タイミングをスムーズに変更することができ、弁の開閉タイミング変更時に発生する作動音を小さくすることができる。
【0009】
また、モータ通電手段は、最小の通電デューティ比に応じた少ない電流をモータに通電する。これにより、エンジン停止中の弁の開閉タイミング変更に必要な電力を低減することができる。
【0010】
また、モータには最小の通電デューティ比に応じた少ない電流しか流れないため、電流が流れるときに発生する発熱量を小さくすることができる。これにより、モータ等の破損を防止することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によると、バルブタイミング調整装置は、内燃機関の内部を潤滑する潤滑油の温度を検出し、潤滑油の温度に応じた信号を出力する油温検出手段をさらに備える。このとき、従動軸トルク算出手段は、従動軸の回転角度および第1マップに加えて、油温検出手段が検出する潤滑油の温度にも基づいて従動軸トルクを算出する。また、フリクショントルク算出手段は、駆動軸の回転角度、従動軸の回転角度に加えて、油温検出手段が検出する潤滑油の温度にも基づいてフリクショントルクを算出する。
【0012】
請求項3に記載の発明によると、バルブタイミング調整装置は、内燃機関を冷却する冷却水の温度を検出し、冷却水の温度に応じた信号を出力する水温検出手段をさらに備える。このとき、従動軸トルク算出手段は、従動軸の回転角度および第1マップに加えて、水温検出手段が検出する冷却水の温度にも基づいて従動軸トルクを算出する。また、フリクショントルク算出手段は、駆動軸の回転角度、従動軸の回転角度に加えて、水温検出手段が検出する冷却水の温度にも基づいてフリクショントルクを算出する。
【0013】
従動軸トルクおよびフリクショントルクは、内燃機関の温度状態によって変化する。そこで、通電デューティ比を算出するとき、内燃機関の温度状態を示す潤滑油の温度、冷却水の温度にも基づいて従動軸トルクおよびフリクショントルクを算出する。これにより、内燃機関の状態に合わせた最小の通電デューティ比を算出することができる。したがって、弁の開閉タイミング変更時に発生する作動音をさらに小さくことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によると、バルブタイミング調整装置は、回数判定手段、回転速度算出手段、係数算出手段、および第2マップ補正手段をさらに備える。回数判定手段では、駆動軸に対する従動軸の位相の調整が1回目であるか否かを判定する。回転速度算出手段では、従動軸角検出手段により検出される従動軸の回転角度に基づいて従動軸の回転速度を算出する。係数算出手段では、回転速度算出手段により算出される従動軸の回転速度に基づいて第2マップを補正する補正係数を算出する。第2マップ補正手段では、係数算出手段により算出される補正係数に基づいて第2マップを補正する。
【0015】
請求項5に記載の発明によると、回転速度算出手段は、回数判定手段により今回の駆動軸に対する従動軸の位相の調整が1回目であると判定される場合、最大通電デューティ比の大きさに応じた電流がモータに通電されたときの従動軸の回転速度を算出する。
【0016】
請求項6に記載の発明によると、回転速度算出手段は、回数判定手段により今回の駆動軸に対する従動軸の位相の調整が1回目であると判定される場合、第2マップの初期値に所定の割合を乗じて算出される通電デューティ比の大きさに応じた電流がモータに通電されたときの従動軸の回転速度を算出する。
【0017】
請求項5または6に記載のバルブタイミング調整装置では、1回目の駆動軸に対する従動軸の位相の調整において、すでに第2記憶手段に記憶されている第2マップを補正する補正係数を算出する。このとき、請求項5に記載のバルブタイミング調整装置では、確実に従動軸が回転するように1回目の通電デューティ比を最大に設定し、このときの従動軸の回転速度を算出する。また、請求項6に記載のバルブタイミング調整装置では、1回目の通電デューティ比を第2マップの初期値に所定の割合を乗じて算出される値に設定し、このときの従動軸の回転速度を算出する。第2マップ補正手段では、算出された補正係数に基づいて第2マップを補正する。これにより、個々のバルブタイミング調整装置のばらつきに起因する通電デューティ比とモータ出力トルクとの関係を補正することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明によると、デューティ比算出手段は、回数判定手段により今回の駆動軸に対する従動軸の位相の調整が1回目でないと判定される場合、出力トルク算出手段によって算出されるモータ出力トルクおよび第2マップ補正手段によって補正された第2マップに基づいてモータ出力トルクを出力するために必要な通電デューティ比を算出する。
【0019】
2回目の駆動軸に対する従動軸の位相の調整では、1回目の位相の調整で補正した第2マップに基づいて通電デューティ比を算出する。モータには、当該通電デューティ比の大きさに応じた電流が通電され、回転トルクを発生する。これにより、個々のバルブタイミング調整装置のばらつきを考慮した弁の開閉タイミング変更処理を実施することができ、弁の開閉タイミング変更時に発生する作動音をさらに小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置を用いたエンジンの概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置の断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置の概略構成図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置における吸気バルブの開閉タイミング変更処理のフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置における吸気側カム軸の回転角度とカムトルクとの関係を示す模式図である。
【図6】本発明の第2実施形態によるバルブタイミング調整装置における吸気バルブの開閉タイミング変更処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置を図1から図5に示す。
バルブタイミング調整装置1は、「内燃機関」としてのエンジン6に設けられ、「駆動軸」としてのクランク軸8に対する「従動軸」としての吸気側カム軸2の位相(以下、「カム軸位相」という)を所定のカム軸位相に変更する。エンジン6では、カム軸位相の変更によって吸気側カム軸2が開閉駆動する吸気バルブ55(図3参照)の開閉タイミングが変更される。
【0022】
エンジン6は、クランク軸8からの動力がタイミングベルト9によりスプロケット25、65を介して吸気側カム軸2と排気側カム軸7とにそれぞれ伝達される。吸気側カム軸2の外周側には、吸気側カム軸2の回転に同期して吸気側カム軸2の回転角度(以下、「カム軸角度」という)に応じた信号を出力する「従動軸角検出手段」としてのカム角センサ71が取り付けられている。一方、クランク軸8の外周側には、クランク軸8の回転に同期してクランク軸8の回転角度(以下、「クランク軸角度」という)に応じた信号を出力する「駆動軸角検出手段」としてのクランク角センサ72が取り付けられている。カム角センサ71が検出するカム軸角度、および、クランク角センサ72が検出するクランク軸角度に応じた信号は、ECU60に入力される。
【0023】
ECU60は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御プログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて燃料噴射弁の燃料噴射量や点火プラグの点火時期を制御する。ECU60には、カム軸角度、クランク軸角度に加えて油温計62により検出されるエンジン6の内部を潤滑する潤滑油の温度(以下、「油温」という)、水温計61により検出されるエンジン6を冷却する冷却水の温度(以下、「水温」という)、および、モータ回転角センサ153により検出される変換部3のモータ軸15の回転角度、のそれぞれに応じた信号が入力される。ECU60は、これら入力される信号に基づいて実際のカム軸位相を算出するとともに、エンジン運転条件に応じて目標とするカム軸位相を算出する。ECU60では、目標とするカム軸位相から通電デューティ比を算出し、算出された通電デューティ比に応じた信号がモータ駆動制御回路(以下、「EDU」という)5に出力される。ECU60は、特許請求の範囲の「第1記憶手段」、「第2記憶手段」、「回転速度判定手段」、「従動軸トルク算出手段」、「フリクショントルク算出手段」、「出力トルク算出手段」、「デューティ比算出手段」に相当する。油温計62は、特許請求の範囲の記載の「油温検出手段」に相当する。水温計61は、特許請求の範囲の記載の「水温検出手段」に相当する。
【0024】
EDU5は、ECU60が出力する通電デューティ比の大きさに応じた電流をモータ10に通電する。EDU5では、目標とするモータ回転速度と実際のモータ回転速度との偏差を小さくするように通電デューティ比をフィードバック制御する。EDU5は、特許請求の範囲に記載の「モータ通電手段」に相当する。
【0025】
図2にバルブタイミング調整装置1の変換部3およびEDU5の断面図を示す。変換部3は、EDU5が出力する電流によって回転トルクを発生するモータ10、およびモータ10が出力する回転トルクによってカム軸位相を調整する位相調整部19から構成される。
【0026】
モータ10は、例えばブラシレスモータの電動モータであり、モータハウジング11、ステータ12、ロータ13、モータ軸15等を有する。
【0027】
モータハウジング11は、ケース111および蓋部材115を有し、内部にステータ12およびロータ13等を収容する。
【0028】
ケース111は、略有底円筒状に形成され、底部に開口112が形成される。開口112には、モータ軸15の一方の端部151側が挿通される。開口112とモータ軸15との間には、オイルシール113が設けられる。また、ケース111には、モータ軸15を回転可能に支持する軸受114が設けられる。
【0029】
蓋部材115は、略円板状に形成され、ケース111の反位相調整部19側を塞ぐように設けられる。蓋部材115には、モータ軸15の他方の端部152側を回転可能に支持する軸受118が軸受114と同軸に設けられる。これにより、モータ軸15は、軸受114、118によりモータハウジング11に正逆回転可能に支持される。
【0030】
ステータ12には、軸方向外側にボビン121が設けられる。ボビン121には、コイル122が巻回される。コイル122に通電することにより、ステータ12に回転磁界が生じる。ステータ12の径方向内側には、モータ軸15と一体となって回転するロータ13が設けられる。ロータ13の径方向外側には、N極とS極とが交互になるようにマグネット131が設けられている。これにより、ロータ13は、ステータ12のコイル122への通電により生じる回転磁界を受けて、モータ軸15と一体となって回転する。
【0031】
また、モータ10にはモータ軸15の回転角度を検出するモータ回転角センサ153のマグネット155が設けられている。モータ回転角センサ153は、蓋部材115の位相調整部19側に設けられているホール素子154とマグネット155との相対位置に基づいてモータ軸15の回転角度を検出する。
【0032】
モータハウジング11の蓋部材115の反位相調整部19側には、ベース16が設けられる。ベース16は、回路カバー119側に開口する略有底円筒状に形成され、蓋部材115と回路カバー119とで形成される空間に収容される。ベース16の内部には、基板に実装された各種電子部品等から構成され、モータ10を駆動する電流値を制御するEDU5の回路部17が収容される。ベース16は、コネクタ18と一体に形成される。コネクタ18は、ECU60や図示しないバッテリ等との接続に用いられる。
【0033】
位相調整部19は、モータ10の回転数の変化によってカム位相を調整するものであって、駆動側回転体20、従動側回転体30、偏芯シャフト40、および遊星回転体50等を備える。
【0034】
駆動側回転体20は略筒状に形成され、内部に従動側回転体30、偏芯シャフト40、および遊星回転体50等を収容する。駆動側回転体20は、カバー部材21、歯車部材23、およびスプロケット25を有する。カバー部材21、歯車部材23、およびスプロケット25は、EDU5側からこの順で配置され、位置決めピン27により同軸となるように位置決めされて、ボルト28により固定される。
【0035】
カバー部材21には、開口211が形成され、この開口211にはケース111の一部とモータ軸15の一方の端部151側が挿通される。また、カバー部材21には、偏芯シャフト40を相対回転可能に支持するベアリング49が設けられる。
歯車部材23の周壁部の径方向内側には、遊星回転体50の駆動側外歯車部52と噛み合う駆動側内歯車部24が形成される。
スプロケット25には、周壁部から径方向外側へ突出する歯26を回転方向に複数有している。この歯26とクランク軸8に形成されている複数の歯との間にタイミングベルト9が掛け渡される。これにより、クランク軸8の回転により出力されるトルクがタイミングベルト9を経由してスプロケット25に入力されると、駆動側回転体20は、クランク軸8と連動して回転する。
【0036】
従動側回転体30は、有底円筒状に形成され、駆動側回転体20と同軸に配置される。また、従動側回転体30は、ピン31にて吸気側カム軸2との周方向における位置が決められ、センターボルト32により吸気側カム軸2に固定される。これにより、従動側回転体30は、吸気側カム軸2と一体となって回転する。また、従動側回転体30は、駆動側回転体20と相対回転可能に設けられている。
【0037】
従動側回転体30の周壁部の径方向内側には、従動側内歯車部35が形成される。従動側内歯車部35の内径は、駆動側内歯車部24の内径よりも小さく設定される。従動側内歯車部35は、軸方向において、駆動側内歯車部24の反EDU5側に設けられる。
【0038】
偏芯シャフト40は、EDU5側に形成される入力部41、および、反EDU5側に形成される偏心部47を有し、全体として筒状に形成される。偏芯シャフト40は、モータジョイント44およびジョイントピン45によってモータ軸15と連結される。入力部41は、駆動側回転体20および従動側回転体30と同軸に配置される。また、入力部41は、カバー部材21に設けられるベアリング49に回転可能に支持される。これにより、偏芯シャフト40は、駆動側回転体20に対して相対回転可能に設けられる。
【0039】
偏心部47は、入力部41と偏心して形成される。したがって、偏心部47は、駆動側回転体20および従動側回転体30とも偏心して形成されている。
【0040】
偏芯シャフト40の偏心部47の径方向外側には、遊星回転体50が配置される。偏心部47と遊星回転体50との間には、ベアリング59が設けられる。これにより、遊星回転体50は、駆動側回転体20に対する偏芯シャフト40の相対回転に応じて遊星運動可能に偏芯シャフト40に支持される。ここでいう遊星運動とは、遊星回転体50が偏心部47の偏心中心線回りに自転しつつ、偏芯シャフト40の回転方向に公転する運動を指す。
【0041】
遊星回転体50は、駆動側回転体20側に形成される大径部51および従動側回転体30側に形成される小径部53を有し、全体として筒状に形成される。大径部51の径方向外側には駆動側外歯車部52が形成され、小径部53の径方向外側には従動側外歯車部56が形成される。駆動側外歯車部52は、駆動側内歯車部24の内周側に配置されて駆動側内歯車部24と噛み合う。従動側外歯車部56は、従動側内歯車部35の内周側に配置されて従動側内歯車部35と噛み合う。
【0042】
位相調整部19では、上述した構成により駆動側回転体20の回転トルクを従動側回転体30に伝達するとともに、駆動側回転体20の回転速度に対する遊星回転体50の旋回速度を変化させることで、駆動側回転体20に対する従動側回転体30の回転角度を調整する。これにより、従動側回転体30と一体となって回転する吸気側カム軸2のクランク軸8に対する位相、すなわちカム軸位相を調整し、吸気側カム軸2に開閉駆動される吸気バルブ55の開閉タイミングを調整する。
【0043】
次に、バルブタイミング調整装置1の変換部3における作動を図3に基づいて説明する。
【0044】
位相調整部19では、吸気側カム軸2をクランク軸8の回転速度の1/2の回転速度で駆動するように駆動側回転体20、従動側回転体30、および、遊星回転体50が構成されている。クランク軸8の回転速度の1/2の回転速度に対してモータ10の回転速度を調整することで、吸気バルブ55の開閉タイミングを調整する。
【0045】
吸気バルブ55の開閉タイミングを現在のタイミングで維持するとき、モータ10の回転速度を駆動側回転体20の回転速度に一致させることにより、遊星回転体50の旋回速度は駆動側回転体20の回転速度と一致する。これにより、カム軸位相は一定となり、カム軸2の回転に連動する吸気バルブ55の開閉タイミングは維持される。
【0046】
吸気バルブ55の開閉タイミングを一定のタイミングから変化させるとき、モータ10の回転速度を駆動側回転体20の回転速度に対して変化させることにより、遊星回転体50の旋回速度は駆動側回転体20の回転速度に対して変化する。これにより、カム軸位相が変化して吸気バルブ55の開閉タイミングが変化する。
【0047】
吸気バルブ55の開閉タイミングを進角する場合、モータ10の回転速度を駆動側回転体20の回転速度より速くすることにより、遊星回転体50の旋回速度を駆動側回転体20の回転速度より速くする。これにより、駆動側回転体20に対する従動側回転体30の回転角度は進角する。したがって、吸気バルブ55の開閉タイミングは進角する。
【0048】
また、吸気バルブ55の開閉タイミングを遅角する場合、モータ10の回転速度を駆動側回転体20の回転速度より遅くすることにより、遊星回転体50の旋回速度を駆動側回転体20の回転速度より遅くする。これにより、駆動側回転体20に対する従動側回転体30の回転位相を遅角する。したがって、吸気バルブ55の開閉タイミングは遅角する。
【0049】
(作用)
次に本発明の第1実施形態であるバルブタイミング調整装置1におけるエンジン停止後の吸気バルブ55の開閉タイミング変更処理について図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0050】
最初のステップ(以下、「ステップ」を省略し、単に記号Sで示す)101において、エンジン6が停止しているか否かを判定する。第1実施形態のバルブタイミング調整装置1では、ECU60がクランク角センサ72によって検出されるクランク軸角度から回転速度を算出する。このとき、クランク軸8の回転速度が0である場合、エンジン6は停止していると判定する。一方、クランク軸8の回転速度が0より大きい場合、エンジン6は稼働していると判定する。S101において、エンジン6が停止していると判定される場合、S102に移行する。エンジン6は稼働していると判定される場合、スタートに戻る。
【0051】
次にS102において、ECU60にエンジン停止中作動開始の指令が入力される。S101において、エンジン6が停止していると判定された後、次回のエンジン6の始動時に最適な吸気バルブ55の位相である目標位相に変更するための指令がECU60に入力される。例えば、S102における指令が入力された時点での吸気バルブ55の位相が0°であって、次回のエンジン6の始動時に最適な吸気バルブ55の位相が50°である場合、吸気バルブ55の位相を現在の位相0°から目標位相の50°にするといった具合である。
【0052】
次にS103において、エンジン停止時のクランク軸角度、カム軸角度、油温、および水温を検出する。バルブタイミング調整装置1では、クランク軸角度をクランク角センサ72により検出する。カム軸角度をカム角センサ71により検出する。エンジン6で使用されている潤滑油の温度は、油温計62により検出される。エンジン6を冷却する冷却水の温度は、水温計61により検出される。S103では、これら検出した数値に応じた信号がECU60に入力される。
【0053】
次にS104において、検出されたカム軸角度、油温および水温に基づいて現在のカム軸角度から目標とするカム軸角度までカム軸を回転させるために必要なカムトルクを算出する。ECU60は、図5に示すような吸気バルブ55の位相と一対一対応するカム軸角度とカムトルクとの関係を示す「第1マップ」としてのカムトルクマップを有している。図5の実線に示すように、カム軸角度によってカム軸を回転させるために必要なカムトルクが変化する。加えて、図5の破線で示すように、同じカム軸角度であってもエンジン6の油温および水温の高低によって、カム軸を回転させるために必要なカムトルクが変化する。具体的には、油温および水温が通常の状態のとき、カム軸角度を角度θに維持するにはトルクT1が必要であるが、油温または水温が通常の状態より低温である場合、カム軸角度を角度θに維持するにはトルクT1より大きいトルクT2が必要である。このように、油温および水温によってカム軸角度とカムトルクとの関係が変化することを考慮して、現在のカム軸角度から目標とするカム軸角度までカム軸を回転させるために必要なカムトルクを算出する。
【0054】
次にS105において、クランク軸角度、カム軸角度、油温および水温に基づいて位相調整部19でのフリクショントルクを算出する。位相調整部19の駆動側回転体20の回転力を従動側回転体30に伝達するとき、駆動側回転体20と遊星回転体50との関係および遊星回転体50と従動側回転体30との関係からフリクショントルクが発生する。S105では、駆動側回転体20の回転角度と従動側回転体30の回転角度との関係から当該フリクショントルクを算出する。また、このとき、駆動側回転体20の回転角度と従動側回転体30の回転角度との関係が同じであっても、エンジン6の油温および水温の高低によってフリクショントルクの大きさが異なる。S105でのフリクショントルクの算出では、エンジン6の油温および水温を考慮したフリクショントルクを算出する。
【0055】
次にS106において、算出されたカムトルクおよびフリクショントルクからモータ出力トルクを算出する。モータ出力トルクは、吸気バルブ55の開閉タイミングを目標の開閉タイミングに変更するためにモータ10が出力するトルクであって、S104で算出したカムトルクを位相調整部19の減速比で割った値とS105で算出したフリクショントルクの値との合計がこれに当たる。なお、ここでいう位相調整部19の減速比とは、駆動側回転体20の駆動側内歯車部24の歯数と遊星回転体50の駆動側外歯車部52の歯数とから算出される第1減速比に遊星回転体50の従動側外歯車部56の歯数と従動軸側回転体30の従動側内歯車部35の歯数とから算出される第2減速比を乗じた値となる。モータ出力トルクは、ECU60によって算出される。
【0056】
次にS107において、算出されたモータ出力トルクからEDU5に入力される通電デューティ比を算出する。ECU60は、通電デューティ比とモータ10が出力する回転トルクとの関係を示す「第2マップ」としての制御マップを有しており、当該制御マップを用いてS106で算出されたモータ出力トルクから吸気バルブ55の開閉タイミングを目標とする開閉タイミングとするために通電デューティ比を算出する。算出された通電デューティ比をEDU5に出力する。
【0057】
次にS108において、S109で算出された通電デューティ比に応じた電流をモータ10に通電する。S109で算出された通電デューティ比が入力されたEDU5は、バルブタイミング調整装置1の外部からコネクタ18を介して供給される電流を入力された通電デューティ比に応じた電流値に制御し、モータ10に通電する。これにより、モータ10が駆動し、カム軸位相が変更される。カム軸位相が変更することにより吸気バルブ55の開閉タイミングが変更される。
【0058】
次にS109において、変更されたカム軸位相が目標のカム軸位相であるか否かを判定する。カム軸位相は、吸気バルブ55の開閉タイミングと一対一対応となっているため、吸気バルブ55が目標とする開閉タイミングとなっているか否かをカム角センサ71により検出されるカム軸角度とクランク角センサ72によって検出されるクランク軸角度に基づいて判定する。このとき、カム軸位相が目標のカム軸位相である場合、S110に移行する。カム軸位相が目標のカム軸位相でない場合、S104に戻り、カム軸角度に基づいてカムトルクを算出する。
【0059】
次にS110において、ECU60にエンジン停止中作動終了の指令が入力される。これにより、吸気側バルブ55の開閉タイミング変更処理が終了する。
【0060】
(効果)
(A)第1実施形態のバルブタイミング調整装置1では、エンジン停止中のクランク軸角度およびカム軸角度から吸気側カム軸2が回転するために必要な最小限のトルクがモータ出力トルクとしてECU60によって算出される。EDU5では、モータ出力トルクを発生することができる通電デューティ比に応じた電流をモータ10に通電する。これにより、モータ10は、吸気側バルブ55の開閉タイミングをスムーズに変更することができるため、吸気側バルブ55の開閉タイミング変更時に発生する作動音を小さくすることができる。
【0061】
(B)従来、エンジン停止中にバルブの開閉タイミングを変更する際、カム軸を確実に回転することができるように比較的大きな通電デューティ比に応じた電流をモータに通電していた。しかしながら、第1実施形態のバルブタイミング装置1では、EDU5は吸気側カム軸2が回転するために必要な最小限の電流しかモータ10に通電しない。これにより、吸気側バルブ55の開閉タイミングの変更に必要な電力を低減することができ、バルブタイミング調整装置1での消費電力を低減することができる。
【0062】
(C)また、モータ10に通電される電流が小さいため、モータ10の発熱量が小さくなる。これにより、モータ10や、モータ10と隣り合うEDU5、位相調整部19における熱による変形や破損を防止することができる。
【0063】
(D)第1実施形態のバルブタイミング調整装置1では、カムトルクおよびフリクショントルクをエンジン6で使用する潤滑油の温度およびエンジン6を冷却する冷却水の温度に基づいて算出する。一般的に、エンジン停止から時間が経ってエンジンが冷えているとき、潤滑油の温度および冷却水の温度は低くなる。これにより、部品同士が摺動している部分では、潤滑油の粘度が上昇することによって摩擦が増加する。したがって、バルブタイミング調整装置1において吸気バルブ55の開閉タイミングを変更するとき、変更に必要なトルクはいずれも大きくなる。そこで、第1実施形態のバルブタイミング調整装置1では、潤滑油の温度および冷却水の温度に応じてカム軸角度とカムトルクとの関係、および、フリクショントルクの大きさを変更する。これにより、エンジン6の温度状態に合わせた最小限のモータ出力トルクを算出することができる。これにより、さらに発生する作動音を小さくすることができる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態によるバルブタイミング調整装置1を図6に基づいて説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して、1回目のカム軸位相変更でのフローが異なる。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0065】
図6に第2実施形態のバルブタイミング調整装置1におけるエンジン停止後の吸気バルブ55の開閉タイミング変更処理のフローチャートを示す。
【0066】
第1実施形態のときと同様にS103において、エンジン停止時のクランク軸角度、カム軸角度、油温、および水温を検出したのち、S204において今回のカム軸位相の変更が1回目であるか否かを判定する。第2実施形態のECU60では、制御マップの更新履歴を記録する。そこで、制御マップの更新履歴から今回のカム軸位相の変更が1回目であるか否かを判定する。S204において、制御マップに更新履歴がない場合、今回のカム軸位相の変更が1回目であると判定してS205に移行する。制御マップに更新履歴がある場合、今回のカム軸角度の変更が1回目でないと判定してS104に移行する。ECU60は、特許請求の範囲に記載の「回数判定手段」、「回転速度算出手段」、「係数算出手段」、「第2マップ補正手段」に相当する。
【0067】
次にS205において、EDU5はモータ10に通電する。このとき、ECU60は、吸気側カム軸2が必ず回転するように、例えば通電デューティ比100%をEDU5に入力する。これにより、カム軸位相が変更され、吸気側バルブ55の開閉タイミングも目標とする開閉タイミングに変更される。
【0068】
次にS206において、カム軸位相を変更しているときの吸気側カム軸2の回転速度を算出する。S205におけるモータ10への通電によって吸気側カム軸2は回転角度を変更する。このとき、ECU60は、カム角センサ71により検出されるカム軸角度から吸気側カム軸2の回転速度を算出する。
【0069】
次にS207において、算出された吸気側カム軸2の回転速度から「補正係数」としての制御定数を算出する。ECU60では、S206で算出された吸気側カム軸2の回転速度に基づいて、制御マップを補正する制御定数を算出する。
【0070】
次にS208において、算出された制御定数を用いて制御マップを更新する。ECU60では、S207で算出された制御定数を用いて通電デューティ比とモータ10が出力する回転トルクとの関係を示す制御マップを補正する。
【0071】
次にS110において、ECU60にエンジン停止中作動終了の指令が入力される。これにより、1回目の吸気側バルブ55の開閉タイミング変更処理が終了する。
【0072】
また、S204において、今回のカム軸角度の変更が1回目でないと判定される場合、S104以降において、第1実施形態のバルブタイミング調整装置1におけるエンジン停止後の吸気バルブ55の開閉タイミング変更処理(S104からS109まで)と同様の処理を行う。このとき、S107において、S106で算出されたモータ出力トルクから吸気バルブ55の開閉タイミングを目標とする開閉タイミングとするために必要な通電デューティ比は、S208で補正された制御マップを用いて算出する。
【0073】
第2実施形態のバルブタイミング調整装置1では、1回目のカム軸位相の変更において制御マップを補正する制御定数を算出する。これにより、バルブタイミング調整装置1を構成する部品のばらつきによって発生するモータ出力トルクと通電デューティ比との関係のばらつきを1回目のカム軸角度の変更において修正することができる。したがって、第2実施形態のバルブタイミング調整装置1は、第1実施形態の効果(A)〜(D)を奏するだけでなく、バルブタイミング調整装置1の個体差を考慮した吸気バルブ55の開閉タイミングの変更が可能となり、発生する作動音をさらに小さくすることができる。
【0074】
(他の実施形態)
(ア)上述の実施形態では、エンジンが停止しているか否かを判定するとき、クランク角センサが検出するクランク軸の回転角度から算出されるクランク軸の回転速度から判定するとした。しかしながら、エンジンが停止しているか否かを判定する方法はこれに限定されない。エンジンを始動または停止するイグニッションスイッチのオンオフによって判定してもよい。
【0075】
(イ)上述の実施形態では、クランク軸角度、カム軸角度を吸気バルブの開閉タイミング変更処理の段階でクランク角センサ、カム角センサによって検出するとした。しかしながら、クランク軸角度、カム軸角度を検出する段階はこれに限定されない。エンジン停止時のクランク軸角度、カム軸角度を記憶して、カムトルクおよびフリクショントルクの算出に用いてもよい。
【0076】
(ウ)上述の実施形態では、カム軸の回転角度をカム角センサによって検出するとした。しかしながら、カム軸の回転角度を検出する手段はこれに限定されない。カム角センサに加えて、モータのシャフトの回転角を検出する回転角センサによって検出されてもよい。
【0077】
(エ)上述の第1実施形態では、カム軸角度が目標のカム軸角度でないとき、カム軸角度からカムトルクを再度算出した。しかしながら、カム軸角度が目標のカム軸角度でないときの処理はこれに限定されない。すでに算出されたモータ出力トルクに100%より大きい所定の割合、例えば130%を乗じた数値を算出して、この数値から算出される通電デューティ比に応じた電流をモータに再度通電してもよい。
【0078】
(オ)上述の実施形態では、バルブタイミング調整装置は、吸気バルブに設けられた。しかしながら、バルブタイミング調整装置が設けられる位置はこれに限定されない。排気バルブに設けられてもよいし、吸気バルブおよび排気バルブの両方に設けられてもよい。
【0079】
(カ)上述の第2実施形態では、1回目のカム軸角度の変更の際、モータに必ずカム軸が作動することができるデューティ比として100%とした。しかしながら、1回目のカム軸角度の変更の際、モータに与えるデューティ比はこれに限定されない。吸気側カム軸が必ず回転するデューティ比であればよい。また、制御マップの初期値に100%より大きい所定の割合、例えば130%を乗じたデューティ比を与えてもよい。
【0080】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 ・・・バルブタイミング調整装置、
2 ・・・吸気側カム軸(従動軸)、
5 ・・・EDU(モータ通電手段)、
6 ・・・エンジン(内燃機関)、
8 ・・・クランク軸(駆動軸)、
10 ・・・モータ、
19 ・・・位相調整部(位相調整手段)、
55 ・・・吸気バルブ(弁)
60 ・・・ECU(第1記憶手段、第2記憶手段、回転速度判定手段、従動軸トルク算出手段、フリクショントルク算出手段、出力トルク算出手段、デューティ比算出手段、回数判定手段、回転速度算出手段、係数算出手段、第2マップ補正手段)、
61 ・・・水温計(水温検出手段)、
62 ・・・油温計(油温検出手段)、
71 ・・・カム角センサ(従動軸角検出手段)、
72 ・・・クランク角センサ(駆動軸角検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の駆動軸からのトルク伝達により回転駆動する従動軸の前記駆動軸に対する位相を調整することにより、前記従動軸と連動する弁の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
通電により回転トルクを発生するモータと、
前記モータに通電するモータ通電手段と、
前記モータが発生する回転トルクを前記従動軸に伝達するとともに、前記モータの回転数が変化することにより前記駆動軸に対する前記従動軸の位相を調整する位相調整手段と、
前記従動軸の回転角度を検出し、前記従動軸の回転角度に応じた信号を出力する従動軸角検出手段と、
前記駆動軸の回転角度を検出し、前記駆動軸の回転角度に応じた信号を出力する駆動軸角検出手段と、
前記従動軸の回転角度と前記従動軸の回転角度を変更するのに必要な従動軸トルクとの関係を示す第1マップが記憶された第1記憶手段と、
前記モータ通電手段に入力される通電デューティ比と前記モータが出力する回転トルクとの関係を示す第2マップが記憶された第2記憶手段と、
前記駆動軸角検出手段が検出する前記駆動軸の回転角度に基づいて前記駆動軸の回転速度が0であるか否かを判定する回転速度判定手段と、
前記従動軸角検出手段が検出する前記従動軸の回転角度及び前記第1マップに基づいて前記従動軸の回転角度を目標回転角度にするために必要な従動軸トルクを算出する従動軸トルク算出手段と、
前記駆動軸角検出手段が検出する前記駆動軸の回転角度及び前記従動軸角検出手段が検出する前記従動軸の回転角度に基づいて前記位相調整手段が前記駆動軸に対する前記従動軸の位相を目標位相に調整するために必要なフリクショントルクを算出するフリクショントルク算出手段と、
前記従動軸トルク算出手段によって算出される前記従動軸トルク及び前記フリクショントルク算出手段によって算出される前記フリクショントルクに基づいて前記弁の開閉タイミングを目標とする開閉タイミングにするために前記モータが出力するモータ出力トルクを算出する出力トルク算出手段と、
前記出力トルク算出手段によって算出される前記モータ出力トルク及び前記第2マップに基づいて前記モータ出力トルクを出力するために必要な通電デューティ比を算出し、前記通電デューティ比に応じた信号を前記モータ通電手段に出力するデューティ比算出手段と、
を備え、
前記モータ通電手段は、前記回転速度判定手段により前記駆動軸の回転速度が0であると判定される場合、前記デューティ比算出手段が算出する通電デューティ比の大きさに応じた電流を前記モータに通電することを特徴とするバルブタイミング調整装置。
【請求項2】
前記内燃機関の内部を潤滑する潤滑油の温度を検出し、前記潤滑油の温度に応じた信号を出力する油温検出手段をさらに備え、
前記従動軸トルク算出手段は、前記油温検出手段が検出する前記潤滑油の温度に基づいて前記従動軸トルクを算出し、
前記フリクショントルク算出手段は、前記油温検出手段が検出する前記潤滑油の温度に基づいて前記フリクショントルクを算出することを特徴とする請求項1に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項3】
前記内燃機関を冷却する冷却水の温度を検出し、前記冷却水の温度に応じた信号を出力する水温検出手段をさらに備え、
前記従動軸トルク算出手段は、前記水温検出手段が検出する前記冷却水の温度に基づいて前記従動軸トルクを算出し、
前記フリクショントルク算出手段は、前記水温検出手段が検出する前記冷却水の温度に基づいて前記フリクショントルクを算出することを特徴とする請求項1または2に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項4】
前記駆動軸に対する前記従動軸の位相の調整が1回目であるか否かを判定する回数判定手段と、
前記従動軸角検出手段により検出される前記従動軸の回転角度に基づいて前記従動軸の回転速度を算出する回転速度算出手段と、
前記回転速度算出手段により算出される前記従動軸の回転速度に基づいて前記第2マップを補正する補正係数を算出する係数算出手段と、
前記係数算出手段により算出される前記補正係数に基づいて前記第2マップを補正する第2マップ補正手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項5】
前記回転速度算出手段は、前記回数判定手段により今回の前記駆動軸に対する前記従動軸の位相の調整が1回目であると判定される場合、最大通電デューティ比の大きさに応じた電流が前記モータに通電されたときの前記従動軸の回転速度を算出することを特徴とする請求項4に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項6】
前記回転速度算出手段は、前記回数判定手段により今回の前記駆動軸に対する前記従動軸の位相の調整が1回目であると判定される場合、前記第2マップの初期値に所定の割合を乗じて算出される通電デューティ比の大きさに応じた電流が前記モータに通電されたときの前記従動軸の回転速度を算出することを特徴とする請求項4に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項7】
前記デューティ比算出手段は、前記回数判定手段により今回の前記駆動軸に対する前記従動軸の位相の調整が1回目以外であると判定される場合、前記出力トルク算出手段によって算出される前記モータ出力トルク及び前記第2マップ補正手段によって補正された第2マップに基づいて前記モータ出力トルクを出力するために必要な通電デューティ比を算出することを特徴とする請求項5または6に記載のバルブタイミング調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−83187(P2013−83187A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222945(P2011−222945)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】