説明

バルブ機構

【課題】圧力の調整を容易に行うことができる。
【解決手段】バルブ機構は、動力部の駆動によってバルブスリーブ62及びバルブプランジャ63がバルブホルダ61の内部を移動し、所定の位置にあるときには、バルブプランジャ63の流路63Aに設けられた連結口63Cとバルブホルダ61のスリット610とが連通することで調整オイル収容領域52と受感領域15とが接続されて、調整オイル収容領域52及び受感領域15の内圧が互いに異なる場合にはこれを等しくするように圧力が変動する。一方、所定の位置以外にあるときには、連結口63Cとスリット610とが連通しないことにより、調整オイル収容領域と受感領域との接続が切断されるため、高温高圧な環境下であっても、圧力の調整を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地震予測等を目的とし、地盤の歪みの測定等による地殻変動の観測が行われている。このような地盤の歪みを測定する方法の一つとしては、例えば特許文献1に記載の歪検知装置のように、その内部に流体が充填された検知装置を陸上に設けられた孔内に挿入し、孔の形状変化による孔内の体積変化を内部の流体によって検知する方法が知られている。さらに、近年では陸上における歪みの測定に加えて、海底等の水底でも歪みの測定を行うことで、地殻内の応力の変化をより詳細に把握することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平11−512828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の歪検知装置は陸上に設けられた孔内での測定を目的とした装置であり、水底での測定のように高圧環境下でこの歪検知装置を使用した場合には水圧による外圧と検知装置の内圧との差が大きくなるため、歪検知装置が破損するおそれがある。これに対しては装置内の圧力を調整するための機構が必要となるが、水底での測定に歪検知装置を用いる場合には、装置内の圧力の調整を外部から頻繁に行うことができない。また、測定時は装置内の圧力を一定に保った状態にする必要がある。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、圧力の調整を容易に行うことができるバルブ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るバルブ機構は、筺体の内部に設けられた第1の空間と第2の空間との接続及び切断を切り替えるバルブ機構であって、筒状部材と、筒状部材の内部に筒状部材の軸線方向に移動可能に設けられる柱状部材と、柱状部材を移動させる動力部と、を備え、筒状部材は、筒状部材の側面に筒状部材の内部と第1の空間との間を接続させるための開口を有し、柱状部材は、一端が第2の空間に接続されると共に他端が柱状部材の側面に設けられた連結口とされた流路を有し、連結口は、柱状部材が筒状部材の内部の所定の位置にあるときには開口と連通し、柱状部材が筒状部材の内部の所定の位置以外にあるときには開口と連通しないことを特徴とする。
【0007】
上記のバルブ機構では、動力部の駆動によって柱状部材が筒状部材内を移動し、所定の位置にあるときには、柱状部材の流路に設けられた連結口と筒状部材の開口とが連通することで第1の空間と第2の空間とが接続されて、第1の空間と第2の空間の内圧が異なる場合にはこれを等しくするように圧力が変動する。一方、所定の位置以外にあるときには、柱状部材の流路に設けられた連結口と筒状部材の開口とが連通しないことにより、第1の空間と第2の空間との接続が切断され、圧力の変動が行われない状態となる。そして、第1の空間と第2の空間との接続及び切断の切替えは、動力部による柱状部材の移動のみによって行われる。したがって、本発明に係るバルブ機構によれば、柱状部材を移動させることのみで第1の空間と第2の空間との接続及び切断を切り替えることができるため、圧力の調整を容易に行うことができる。
【0008】
また、上記のバルブ機構は、柱状部材の移動により、連結口と開口とが連通しない位置になったことを検知する検知手段を更に備え、動力部は、連結口と開口とが連通しない位置となったことを検知手段が検知したことに基づいて、柱状部材の移動を停止させる態様とすることができる。
【0009】
上記のように、連結口と開口とが連通しない位置になったことの検知に基づいて動作部による柱状部材の移動を検知手段によって検知し、これに基づいて、動力部が柱状部材の移動を停止させることで、第1の空間と第2の空間との接続から切断への切替えを終えた後に速やかに柱状部材を移動させることが防止され、柱状部材を不要に移動させることを抑制できる。
【0010】
さらに、柱状部材は、動力部によって動作する第1の部材と、筒状部材の軸線方向に沿って第1の部材よりも第1の空間側で配置されると共に第1の部材と弾性部材によって接続され、内部に流路を備える第2の部材と、を有する態様とすることもできる。
【0011】
上記のように筒状部材の軸線方向に沿って配置され、弾性部材によって互いに接続された2つの部材を有し、その一方の第1の部材が動力部によって動作し、他方の第2の部材が流路を備える構成とされていることで、例えば動力部の駆動が停止され、この動力部と接続する第1の部材が筒状部材の内部を移動できない場合であっても、第1の部材と弾性部材により接続されている第2の部材は移動可能であるため、例えば、第2の空間の圧力が一度に大きくなった場合に、第2の空間の圧力変動に応じて柱状部材の第2の部材が移動して、流路の連結口と筒状部材の開口とが連通する位置に第2の部材が移動した場合には、第2の部材の流路を介して第1の空間と第2の空間とを接続することができ、第2の空間の圧力変動を第1の空間に伝えることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、圧力の調整を容易に行うことができるバルブ機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るバルブ機構が取り付けられた歪計測装置の概略断面図である。
【図2】歪計測装置を構成する計測部の概略断面図である。
【図3】歪測定装置を構成する圧力調整部の概略断面図である。
【図4】差動変位計の概略構成図である。
【図5】バルブ機構の外観を示す概略図である。
【図6】図5紙面に対して垂直方向からバルブ機構を見たときの断面図である。
【図7】図6のVII−VII線におけるバルブスリーブの断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線におけるバルブプランジャの断面図である。
【図9】動力部の駆動によるバルブ機構の動作を説明する図である。
【図10】動力部が駆動せずにバルブ機構のバルブプランジャが移動する場合について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、実施形態に係るバルブ機構60が取り付けられた歪計測装置100の概略断面図であり、図2は、歪計測装置100を構成する計測部30の概略断面図であり、図3は、歪計測装置100を構成する圧力調整部50の概略断面図である。まず、図1〜図3を用いて、本実施形態に係るバルブ機構及びこのバルブ機構が取り付けられた歪計測装置の構成について説明する。
【0016】
本実施形態に係る歪計測装置100は、水中で用いられて、略円柱状の本体の側面形状の変化等から地盤の歪を計測する装置であり、特に水深2000m以上の深海のように高圧であり、且つ温度が125℃以上となるような高温の環境下での測定に好適に用いられる装置である。この歪計測装置100は、図1に示すように、水底の地盤1に形成された垂直方向に延びる縦穴2の内部に挿入される。この歪計測装置100は、例えば、直径約200mm、長さ約3.8mの装置であり、例えば水深2000m以上の水底の地盤1に設けられた深さ約3500mの縦穴2に挿入して用いられる。そして、歪計測装置100を縦穴2の内部に設置した後、縦穴2の内部をセメント3で充填することにより、歪計測装置100は地盤1と一体化され、この状態で地盤1の歪の計測が行われる。
【0017】
この歪計測装置100は、図1に示すように、計測部30、検知部10及び圧力調整部50を含んで構成され、歪計測装置100を縦穴2に挿入したときに、上方から下方に向かってこの順となるように配置されている。さらに、歪計測装置100の計測部30、検知部10及び圧力調整部50の内部を通過するようにセメント配管70が設けられている。このセメント配管70は、縦穴2の内部に歪計測装置100を配置した後にその周囲を充填するためのセメントを供給するための管である。また、歪計測装置100の上方の計測部30の周囲と、下方の圧力調整部50の周囲には、スタビライザ羽40(40A,40B)が複数個取り付けられている。このスタビライザ羽40は、歪計測装置100をガイドして縦穴2の中央に歪計測装置100を配置するために取り付けられたものであると共に、歪計測装置100本体が縦穴2と衝突して破損することを防止するためのものである。
【0018】
次に、歪計測装置100に含まれる検知部10、計測部30、及び圧力調整部50について説明する。
【0019】
検知部10は、歪計測装置100の周囲の地盤1の歪による変位を検知する機能を有する。この検知部10は、セメント配管70をその内部に有する内筒11と、内筒11の外面(側面)を覆うように設けられた外筒13(容器、受感部)とを含んで構成される。そして、内筒11の外面と外筒13の内面との間は離間して設けられている。また、検知部10の下方は、後述の圧力調整部50が設けられていて、検知部10の上方は、後述の計測部30が設けられている。このため、内筒11の外面と外筒13の内面との間には、略円筒状(リング状)の空間である受感領域(第2の空間)15が形成されていて、この受感領域15にはシリコンオイルLが充填されている。このシリコンオイルLは、外筒13の下方に設けられた注入口19から受感領域15の内部に充填される。また、この受感領域15と後述の調整オイル収容領域52(第1の空間)との間にはバルブ機構60が設けられていて、バルブ機構60により受感領域15と調整オイル収容領域52とが接続されている場合には、シリコンオイルLは、両領域を移動する。このように調整オイル収容領域52と受感領域15とは流体が充填されている領域であって、この受感領域15を覆う外筒13及び調整オイル収容領域52を覆う筺体部53は、このシリコンオイルLを収容する容器として機能する。なお、シリコンオイルLを注入するための注入口19は、通常は閉じられていて、シリコンオイルLの充填時にのみ開口される。
【0020】
検知部10の内筒11は、直径約200mm、長さ約2mのステンレスからなる剛性の高い部材である。一方、外筒13は、厚さ約2.7mmのステンレスからなり、地盤1の変化等によって歪計測装置100の周囲に歪が生じた場合には、その歪に応じて変形可能とされている。したがって、周囲の歪によって外筒13が変形(弾性変形)し、内筒11側へ凹んだ場合には、受感領域15の体積が小さくなって受感領域15の内圧が上昇する。そして、この内圧の変化を後述の計測部30が計測することによって、歪計測装置100の周囲の歪の分析が行われる。この外筒13は非常に薄い部材であるが、後述の圧力バランス機構51によって、歪計測装置100の外圧と受感領域15の内圧との圧力差が小さくなるように調整されているため、圧力差に由来する破損が防止され、歪による微小な変形を感知することが可能となっている。
【0021】
さらに、歪計測装置100の側面の検知部10の表面には差動変位計20(20A,20B,20C)が取り付けられている。この差動変位計20の構成を図4に示す。図4に示すように、差動変位計20はいわゆる差動トランス方式の変位計であって、外筒13から外部へ露出するセンサヘッド201と、このセンサヘッド201に接続すると共に、受感領域15の内部に設けられてセンサヘッド201と連動して移動する可動鉄心202と、可動鉄心202の周囲を覆うように設けられた1次コイル203及び2つの2次コイル204と、を備える。この1次コイル203及び2つの2次コイル204は、内筒11の内部に設けられる。また、可動鉄心202は受感領域15の内部に配置されるように、可動鉄心202の周囲において受感領域15が内部へ突出する構成とされている。そして、1次コイル203を交流(一定周波数電圧)で励磁した状態で、歪の発生等によりセンサヘッド201が移動した場合には、センサヘッド201に連動して可動鉄心202が移動することにより、2次コイル204に誘起電圧が発生する。差動変位計20は、この誘起電圧の検出を、変位の発生として検知する。このような構成を有する差動変位計20では、高感度・高分解能な計測が可能とされる。
【0022】
ここで、歪計測装置100の外圧と受感領域15の内圧との圧力差が大きい場合には、歪の発生によるセンサヘッド201の移動を正確に検出することが困難となるため、差動変位計20を歪計測装置100に適用することは困難である。しかしながら、本実施形態の歪計測装置100では、後述の圧力バランス機構51によって、歪計測装置100の外圧と受感領域15の内圧との圧力差が小さくなるように調整されているため、歪の発生によるセンサヘッド201の微小な移動を内部に設けられた差動変位計20により高精度で検知することができる。
【0023】
本実施形態の歪計測装置100では、検知部10の延在方向(上下方向)に沿った3つの位置に上記の差動変位計20(20A,20B,20C)が取り付けられる。さらに、それぞれの位置での外筒13の円周状の外面に沿って、差動変位計20が3箇所ずつ取り付けられる。したがって、本実施形態の歪計測装置100には、差動変位計20が9個取り付けられ、これらの差動変位計20による測定結果は、解析部(図示せず)に送られて、後述の圧力計による歪の発生量の測定結果と共に地盤1で発生した歪についての詳細な解析、特に歪の発生方向やその大きさ等の解析に用いられる。したがって、本実施形態の歪計測装置100のように、差動変位計20を複数個異なる位置に配置することで、テンソルである歪についての多成分の計測が可能となり、受感領域15の圧力変動(体積変動)を引き起こした歪が発生した方角や高さ(深さ)及びその大きさ等を測定することができる。
【0024】
なお、この差動変位計20の数や取付け位置は、測定対象の地盤1の特性等を考慮して適宜変更される。取付け位置の例としては、例えば、検知部10を構成する外筒13の軸方向に沿った配置や、外筒13の外面のうち外筒13の軸に対して直交する面の外周に沿った配置や、外筒13の軸方向に沿って螺旋状となるような配置等が挙げられる。また、外筒13の軸に対して直交する面の外周である外筒13の円周状の外面に沿って複数の差動変位計20を配置する場合、外筒13の中心に対して対称となるように差動変位計20を配置することができる。この場合、種々の方向の変位を差動変位計20によってより高精度に検知することが可能となる。
【0025】
次に、計測部30について説明する。計測部30は、上記の検知部10の受感領域15の圧力変動(体積変動)の大きさを測定し、歪の大きさを計測する機能を有する。図2に示すように、計測部30は、耐圧外筒31と、圧力計収納部32とを含んで構成される。圧力計収納部32は、検知部10の外筒13とほぼ同じ外径の耐圧外筒31に収容されていて、耐圧外筒31の内部には、さらにセメント配管70が設けられている。圧力計収納部32の内部には、受感領域15内のシリコンオイルLの圧力を測定するための水晶圧力計(商品名:PARO、型式:Submersible Depth Sensors 8B7000-2、Paroscientific社製)が収容されており、圧力計収納部32に収容された圧力計の測定部と受感領域15とを接続する流路33が設けられている。この圧力計による測定結果は、解析部へ送られて、上述のように差動変位計20による測定結果と共に地盤1で発生した歪の解析に用いられる。上記の圧力計による歪の測定方法及び検知部10と計測部30とを接続する構成は、従来の歪計の構成と同様である。
【0026】
また、計測部30内の圧力計収納部32の周囲及び圧力計収納部32の上方は受感領域15と接続していて、シリコンオイルLが充填されている。そして、圧力計収納部32の上方であって受感領域15と接続している領域の上部には圧力受板37が設けられていて、受感領域15内のシリコンオイルLが歪計測装置100の上方へ行かないようにせき止める機能を有している。そして、圧力受板37の上方には解析部(図示せず)が設けられ、上述の差動変位計20による測定結果と、圧力計収納部32内の圧力計による測定結果とを用いて、地盤1で発生した歪についての解析及び解析結果の保存が行われる。この解析部による解析結果は、例えば、無線又は有線通信によって地上に設けられた詳細な分析を行うためのシステムへ送信される。なお、計測部30に含まれる各機器等の制御や、後述の動力部65の制御は制御部(図示せず)によって行われる。この制御部は、CPU(Central Processing Unit)及び外部記憶装置から構成され、CPUは、所定の演算処理を行う演算プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)と演算処理の際に各種データを記憶するRAM(Random Access Memory)とを有していて、これらが機能することにより、計測部30に含まれる各機器等の制御や、動力部65の制御が行われる。
【0027】
次に、圧力調整部50について説明する。圧力調整部50は、受感領域15内部の圧力の調整を行う機能を有する。本実施形態に係る歪計測装置100は、上述のように水底に設けられた縦穴の底部に取り付けられるため、歪計測装置100の周囲の圧力は地上の圧力に比べて非常に大きく約100MPaとなり、また、周囲の温度も125℃程度まで上昇する。したがって、歪計測装置100の受感領域15に対して地上でシリコンオイルLを充填し、これを測定位置である水底の縦穴の底部に移動させた場合、受感領域15の内部のシリコンオイルLの圧力に対して歪計測装置100の周囲の外圧が非常に大きくなり、地盤の歪のような微小な変化を適切に測定することができない。また、歪計測装置100によって歪を計測する際には、受感領域15の圧力変動(体積変動)を検知することで歪を測定することから、歪以外の理由によって受感領域15の圧力が変動すると、測定精度が低下する。これらの理由から、歪計測装置100に対して、外圧の変化に応じて受感領域15内部の圧力を調整する機能を有する圧力調整部50が設けられている。
【0028】
この圧力調整部50は、図3に示すように、歪計測装置100の周囲の外圧に応じて、受感領域15に接続可能である調整オイル収容領域(第1の空間)52の圧力を変動させる圧力バランス機構51と、調整オイル収容領域(第1の空間)52と受感領域(第2の空間)15との接続及び切断を切替えるバルブ機構60と、を備える。
【0029】
圧力バランス機構51は、歪計測装置100の側面を形成する円筒状の筺体部53と、筺体部53の内部に設けられた筒状の開口部53Aを摺動可能なピストン54によって構成される。より具体的には、本実施形態の歪計測装置100の内部にはセメント配管70が設けられているため、ピストン54は、筺体部53の内面とセメント配管70の外側表面とを塞ぐようなドーナツ型の形状とされている。そして、筺体部53の内部のうち、このピストン54よりも上方側(受感領域15側)は調整オイル収容領域52とされていて、ピストン54よりも下方側は泥水収容領域55とされている。調整オイル収容領域52にはシリコンオイルLが注入されていて、後述のバルブ機構60によって調整オイル収容領域52と受感領域15とが接続されている場合には、シリコンオイルLがその内部を移動する。また、泥水収容領域55には、外部の泥水(流体)を供給する泥水注入孔56が接続されている。これにより、泥水収容領域55内部の圧力と歪計測装置100の周囲の外圧とは等しくされている。すなわち、この圧力バランス機構51の筺体部53は、外部と連通する開口部53Aを備える外筒部として機能する。
【0030】
ここで、歪計測装置100の周囲の外圧が上昇すると、泥水収容領域55内部の圧力も上昇するため、泥水収容領域55の容積を大きくする方向、すなわち上方へ向かってピストン54を移動させる力が生じる。そしてピストン54が上方へ移動すると、調整オイル収容領域52の体積が小さくなり、調整オイル収容領域52側の内部の圧力が上昇する。ここで、調整オイル収容領域52と受感領域15とが接続している場合には双方の圧力が上昇する。そして、泥水収容領域55側の圧力と、調整オイル収容領域52側の圧力が等しくなった位置でピストン54は保持される。このように、圧力バランス機構51は、外圧の変動に応じて、内圧と外圧と等しくなる位置までピストン54が移動することで、外圧に応じた内圧の調整を行う機能を有する。
【0031】
次に、バルブ機構60について説明する。バルブ機構60は調整オイル収容領域52に対して接続する流路59が設けられた隔壁58の上方に接するように設けられ、検知部10の内部の受感領域15に接する位置に設けられている。このバルブ機構60の構成及び動作について図5〜図8を用いて説明する。図5は、バルブ機構の外観を示す概略図であり、図6は、バルブ機構の構成を説明する概略断面図(図5紙面に対して垂直方向からバルブ機構60を見たときの断面図)であり、図7は、バルブ機構に含まれるバルブプランジャの構成を説明する断面図(図6のVII−VII線における断面図)であり、図8は、バルブ機構に含まれるバルブスリーブの構成を説明する断面図(図6のVIII−VIII線における断面図)である。
【0032】
図5及び図6に示すように、バルブ機構60は、バルブホルダ(バルブベース、筒状部材)61と、バルブスリーブ(第1の部材)62と、バルブプランジャ(第2の部材)63と、バルブネジ64と、動力部65と、を含んで構成される。バルブスリーブ62は、バルブホルダ61の内部に設けられてバルブホルダ61の内部を軸線方向(図示上下方向)に移動可能である略円筒状の部材である。また、バルブプランジャ63は、バルブスリーブ62の内側に設けられた部材である。また、バルブネジ64は、バルブホルダ61の隔壁58に対して離間して設けられた端部側に設けられた底部61Aの開口61Bに対して挿入されて、バルブホルダ61の軸線方向に沿って延びると開口61Bに対して摺動可能とされ、さらに、バルブスリーブ62に対してネジ留めにより固定された部材である。そして、動力部65は、バルブホルダ61の外側でバルブネジ64と接続されて、バルブネジ64をバルブホルダ61の軸線方向に沿って移動させる動力部65と、を備える。バルブスリーブ62とバルブプランジャ63とは弾性部材66によって接続されている。図5に示すように、バルブホルダ61の下方側の端部は、隔壁58と接するように取り付けられることで、バルブホルダ61の内側と隔壁58とに囲まれた空間にバルブスリーブ62及びバルブプランジャ63が設けられた構成となる。
【0033】
バルブホルダ61は略円筒状の部材であって、隔壁58に対して離間して設けられた端部側(図示上方)は中央に開口61Bを有する底部61Aとなっている。この開口61Bの径は、バルブホルダ61の内径よりも小さい。また、バルブホルダ61は、側面に軸線方向に沿って延びるスリット610を備える。このスリット610の外側(バルブホルダ61の外側)は、図3に示すように受感領域15と接している。すなわち、このスリット610は受感領域15とバルブホルダ61の内部とを接続する開口とされている。
【0034】
図5に戻って、バルブホルダ61の外側には、スリット610の延在方向に対して垂直に交わるように、側面に互いに離間した2本の溝が設けられ、この2本の溝のそれぞれに2本のリング67A,67Bが取り付けられている。このリング67A,67Bは、例えば電気伝導性を有する金属からなり、バルブホルダ61の内部に収容されるバルブスリーブ62の位置を検知する検知手段の一部として機能する。この検知手段としての機能については後述する。
【0035】
バルブスリーブ62は、図7に示すように略円筒状の部材であって、一端側(図示上方)は、中央に開口62Bを有する底部62Aとなっている。そして、この開口62Bには、バルブホルダ61の軸線方向に延びるバルブネジ62がネジ留めされている。そして、バルブスリーブの外側の側面には、外側に突出する突起部62Cを有し、この突起部62Cは、絶縁体で被覆された導線62Dを介して動力部65と接続されている。そして、バルブスリーブ62は、この突起部62Cはバルブホルダ61の内側からスリット610を介して、且つ、バルブホルダ61の側面に取り付けられたリング67A,67Bの間から外方へ突出するように、バルブホルダ61の内部に取り付けられる。そして、バルブスリーブ62の内側には、バルブプランジャ63が挿入される。そして、バルブスリーブ62がバルブホルダ61内を移動し、突起部62Cがリング67A,67Bと接触した場合にはこれを動力部65に伝達する。すなわち、突起部62C及び導線62Dは、検知手段の一部として機能する。この検知手段としての機能については後述する。
【0036】
また、上記のバルブスリーブ62は、底部62Aが設けられた側とは逆の端部(図示下方)にバルブホルダ61の内面と当接するフランジ部62Eを有する。バルブホルダ61のスリット610は、フランジ部62Eよりも下方まで延びて設けられている。具体的には、図5に示すように、バルブホルダ61の外側からスリット610内を見たときに、バルブプランジャ63が見えるような位置まで延びるように設けられている。このような構成を有することで、後述のバルブプランジャ63に設けられた流路の連結口63Cと、受感領域15と接する開口であるスリット610とが連通できるようになっている。なお、受感領域15と接続し、連結口63Cと連通する開口をスリット610とは別に設ける構成としてもよい。
【0037】
バルブプランジャ63は、図8に示すように円柱状の部材であって、その内部に流路63Aを備える。この流路63Aは、一端側(下方側)の開口63Bがバルブプランジャ63の端部に設けられていて、この開口63Bは、図3に示すように、調整オイル収容領域52に対して接続する流路59に対して接続する。また、流路63Aの他端側(上方側)は、バルブプランジャ63の側面に設けられた連結口63Cとされている。そして、このバルブプランジャ63は、図6に示すように、流路63Aの開口63Bが設けられた端部とは逆側の端部(図6における上方側の端部)に弾性部材66が取り付けられていて、この弾性部材66を介してバルブスリーブ62の内面と接続されている。弾性部材66としては、例えばコイルバネ等が好適に用いられる。弾性部材66としてばねを用いる場合、ばね定数は、歪計測装置100において許容可能な外圧と受感領域15の内圧との差を考慮して選定される。すなわち、弾性部材66は、歪計測装置100の外圧と受感領域15の内圧との差を小さくするために駆動するものであるから、例えば所定の値よりも圧力差が大きくなると歪計測装置100の構成部品が破損する可能性がある場合には、当該圧力差を超えない圧力で縮むようにばね定数が選定される。
【0038】
図5,6に戻って、動力部65は、例えば耐高圧モータ等からなり、バルブネジ64をバルブホルダ61の軸線方向に沿って移動させる機能を有する。そして、動力部65がバルブネジ64を移動させることで、バルブネジ64に対してネジ留め固定されたバルブスリーブ62も移動する。さらに、バルブプランジャ63の一端側(図示上方)がバルブスリーブ62の内面と弾性部材66によって連結されているため、バルブスリーブ62の移動に対応して移動する。すなわち、上記のバルブスリーブ62とバルブプランジャ63は、バルブホルダ61の内部で軸線方向に移動可能とされた柱状部材として機能する。動力部65の駆動は、制御部(図示せず)からの指示によって開始され、リング67Bと突起部63Cとが接触したことにより発生する電位の変化が導線62Dを介して動力部65に通知されることで、バルブスリーブ62が所定の位置まで移動したことを検知して停止される。
【0039】
上記の構成を有するバルブ機構60の動作について、図9,図10を用いて説明する。図9は、動力部65の駆動によるバルブ機構60の動作を説明する図であり、図10は、動力部65が駆動せずにバルブ機構60のバルブプランジャ63が移動する場合について説明する図である。
【0040】
まず、図9を用いて、動力部65の駆動によるバルブ機構60の動作を説明する。図9(A)は、調整オイル収容領域52と受感領域15とが接続されている状態を説明する図であり、図9(B)は調整オイル収容領域52と受感領域15とが切断されている状態を説明する図である。この動力部65の駆動によるバルブ機構60の動作は、計測に用いるために歪計測装置100を地上から計測位置である水底の地盤1にある縦穴2の底部まで降下させた後、計測を開始する前に行われる。
【0041】
ここで、歪計測装置100を地上から計測位置の縦穴2の底部まで移動させる間は、歪計測装置100の周囲の外圧が大きく変動することから、受感領域15と調整オイル収容領域52とを連通させることによる圧力調整を圧力バランス機構51によって行う。ここでの連通とは、具体的には、調整オイル収容領域52、隔壁58内の流路59、バルブプランジャ63内の流路63A、バルブホルダ61の内部及び受感領域15の間をシリコンオイルLが流通可能となることをいう。地上から計測位置の縦穴2の底部まで歪計測装置100を降下させる際には、歪計測装置100の降下に伴って外圧が大きくなる。この外圧の上昇に伴って、泥水収容領域55の圧力も大きくなるため、泥水収容領域55の圧力と調整オイル収容領域52の圧力とが等しくなるように圧力バランス機構51のピストン54が上方へ移動する。このピストン54の移動は外圧の上昇に伴って連続的に行われる。
【0042】
上記の間、すなわち、歪計測を行う位置に向けて歪計測装置100を降下させる間は、図9(A)に示すように、調整オイル収容領域52と受感領域15とが接続される位置にバルブスリーブ62及びバルブプランジャ63とが配置される。具体的には、バルブスリーブ62の側面に取り付けられた突起部62Cは、バルブホルダ61の周囲に取り付けられた2つのリングのうち、上方のリング67Aと接する位置となるようにバルブスリーブ62が配置される。そして、内部のバルブプランジャ63の連結口63Cと、バルブホルダ61のスリット610とが連通することにより、バルブプランジャ63の開口63Bと接続する流路59と、バルブプランジャ63内の流路63Aと、を介して調整オイル収容領域52と受感領域15とが接続された(連通した)状態となり、調整オイル収容領域52の圧力と同一となるように受感領域15の圧力が変更される。したがって、外圧(泥水の圧力)の上昇に伴って圧力バランス機構51のピストン54が調整オイル収容領域52の圧力を高めるように上方へ移動し、調整オイル収容領域52内の圧力と、この調整オイル収容領域52に接続する受感領域15の圧力とが互いに等しくなるように、圧力が変動する。
【0043】
次に、バルブ機構60により調整オイル収容領域52と受感領域15とを切断する場合について説明する。歪計測装置100を縦穴2の底部に設置し、歪計測装置100の周囲にセメントを充填した後に歪の計測を開始する際には、受感領域15と調整オイル収容領域52とを切断することで、受感領域15は、検知部10の外筒13からの歪の影響のみによって体積が変動する構成とさせる。したがって、動力部65の駆動によるバルブ機構60の動作は、歪計測装置100が計測のために安定な状態で設置された時点、すなわち、縦穴2に歪計測装置100を設置し、周囲にセメントを充填した後に行われる。なお、歪計測装置100の周囲にセメントを充填した後も泥水収容領域55は泥水注入孔56を介して外部と接続されていることから、圧力バランス機構51のピストン54は、外圧の変動に応じて上下方向に移動可能であるが、バルブ機構60によって受感領域15と調整オイル収容領域52とが切断されることから、受感領域15と調整オイル収容領域52との間の圧力差がある一定の値を超えるまでは、ピストン54の移動による調整オイル収容領域52の圧力変化は受感領域15には伝達されない。
【0044】
バルブ機構60の動作としては、歪計測を行う位置、すなわち縦穴2の底部に歪計測装置100を載置し、セメントにより周囲を充填した後、図9(B)に示すように、制御部の指示によって動力部65が駆動することによって、調整オイル収容領域52と受感領域15とが切断される位置にバルブスリーブ62及びバルブプランジャ63とが移動される。具体的には、セメントの充填終了を検知した制御部が動力部65に対して指示することによって動力部65が駆動を開始し、バルブスリーブ62及びバルブプランジャ63は下方に移動され、バルブスリーブ62の側面に取り付けられた突起部62Cが、バルブホルダ61の周囲に取り付けられた2つのリングのうち、下方のリング67Bと接する位置まで移動する。このとき、内部のバルブプランジャ63の連結口63Cが隔壁58の内壁と対向する位置まで移動するため、連結口63Cとバルブホルダ61のスリット610とが連通しない状態となる。これによって、調整オイル収容領域52と受感領域15とが切断され、シリコンオイルLが内部を移動できなくなる。そして、突起部62Cとリング67Bとが接触したことが導線62Dを介して動力部65に伝達されると、動力部65は駆動を停止し、バルブスリーブ62及びバルブプランジャ63の移動が停止される。このように、動力部65は、突起部62Cとリング67Bとの接触を検知することでバルブスリーブ62及びバルブプランジャ63の移動を停止させるため、動力部65の駆動の停止に係る複雑な制御プログラム等を備えておく必要がなく、且つ動力部65の不要な駆動による電力の消費を抑制することができる。
【0045】
次に、図10を用いて、動力部65が駆動せずにバルブ機構60のバルブプランジャ63が移動する場合を説明する。これは、歪計測装置100を縦穴2の底部に載置し周囲にセメントを充填し、図9(B)に示すように動力部65の駆動によってバルブスリーブ62及びバルブプランジャ63は下方に移動させて調整オイル収容領域52と受感領域15とが切断された状態で、歪計測装置100の周囲の環境の変化(例えば水温の変化等)によって、歪計測装置100の外圧が大きくなった場合に発生する。外圧が大きくなった場合は、圧力バランス機構51のピストン54が移動することにより、泥水収容領域55及び調整オイル収容領域52の内圧が等しくなる。このとき、図9(B)に示すように、調整オイル収容領域52と受感領域15の間は切断されていることから、外圧の変動に応じて受感領域15内の圧力が変動することはない。しかしながら、外圧の変動が大きい場合(例えば、内圧と外圧の差が5MPa以上となる場合)を放置しておくと、検知部10を構成する外筒13は非常に薄いため、圧力差によって破損する可能性がある。
【0046】
これに対して、本実施形態の歪計測装置100では、受感領域15内部の圧力に対して調整オイル収容領域52内部の圧力が大きい場合には、弾性部材66が縮む構成となっている。そして、図10に示すように、受感領域15内部の圧力と外圧に応じて変動する調整オイル収容領域52内部の圧力との差が所定の値より大きくなった場合に、弾性部材66が縮むことによって、バルブプランジャ63の連結口63Cと、バルブホルダ61のスリット610とが連通し、バルブプランジャ63の開口63Bと接続する流路59と、バルブプランジャ63内の流路63Aと、を介して調整オイル収容領域52と受感領域15とが接続される。そして、調整オイル収容領域52と受感領域15との圧力差が小さくなるように受感領域15内部の圧力が変動される。そして、圧力差が所定の値より小さくなると、弾性部材66の復元力によって、図9(B)に示すように、調整オイル収容領域52と受感領域15とが切断された状態に戻る。
【0047】
このように、調整オイル収容領域52と受感領域15との接続及び切断を動力部65の駆動によって切り替えない場合であっても、外圧の変化に由来する調整オイル収容領域52と受感領域15との圧力差が所定値を超えた場合に、バルブプランジャ63が移動する構成を有することから、動力部65の駆動に頼らない圧力調整を簡単な構成によって実現でき、検知部10の外筒13の破損を防止することができる。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る歪計測装置100では、筺体部53に設けられた筒状の開口部53Aに取り付けられたピストン54が外部の圧力に対応して摺動する。これにより、外部の圧力とのバランスを取るように調整オイル収容領域52及び受感領域15の体積が変動することで、内圧が変更される。そして、上記の歪計測装置100では、ピストン54の摺動のみによって、外圧の変化に応じて調整オイル収容領域52及び受感領域15の内圧が変更されることから、内圧の調整を容易に行うことができる。また、上記の圧力バランス機構51は、簡単な構成によって実現されるため、高温・高圧な環境下でも外圧と内圧の調整を容易に行うことができる。
【0049】
そして、上記の歪計測装置100では、圧力バランス機構51におけるピストン54の摺動のみによって、外圧の変化に応じて、外圧と内圧との差を小さくするように、調整オイル収容領域52及び受感領域15の内圧が変更されるため、外部の圧力に応じて変形(弾性変形)可能な部材から形成される外筒13を、受感領域15を覆う容器の一部として含むことが可能となり、水中のような高圧環境下であっても外筒13の変形による圧力変化を測定することが可能となる。
【0050】
また、上記の歪計測装置100では、外筒13の変位を検知する差動変位計20をさらに備えることにより、外筒13の変形による受感領域15の内圧の変化では検知することが困難な変位の計測も可能となり、より高い精度で歪計測を行うことが可能となる。また、上記の歪計測装置100のように、外筒13に対応して差動変位計20を複数備える態様とすることで、差動変位計20の取り付け位置毎にその変位を測定することができるため、外筒13の変形をより詳細に把握することができ、歪計測の精度をさらに高めることができる。
【0051】
また、上記の歪計測装置100では、シリコンオイルLが収容される領域が調整オイル収容領域(第1の空間)52と受感領域(第2の空間)15とに区切られていて、外部と接続する筺体53(外筒部)及びピストン54は調整オイル収容領域52に対して取り付けられると共に、調整オイル収容領域52と受感領域15との接続及び切断を切り替えるバルブ機構60をこれらの間に備えることで、調整オイル収容領域52は外圧の変化に由来するピストン54の摺動に対応してその内圧が変化する一方、バルブ機構60によって調整オイル収容領域52と受感領域15とが切断されている場合には、受感領域15は調整オイル収容領域52の内圧の変動を受けない状態となる。上記の構成によれば、歪計測装置100の受感部として機能する外筒13が受感領域15側に設けられ、バルブ機構60によって調整オイル収容領域52と受感領域15とが切断された状態で、受感領域15の内圧を計測することができる。したがって、ピストン54が摺動することで容器の調整オイル収容領域52及び受感領域15の内圧が外圧と一致するように変動することができ、外圧の変化に応じてその内圧を変更することが可能であると共に、受感領域15側に設けられた外筒13において地盤の歪の発生により引き起こされる変動を高い精度で計測することができ、より高い精度で歪計測を行うことができる。
【0052】
そして、本実施形態の歪計測装置100のバルブ機構60によれば、動力部65の駆動によってバルブスリーブ62及びバルブプランジャ63からなる柱状部材がバルブホルダ61の内部を移動し、所定の位置にあるときには、バルブプランジャ63の流路63Aに設けられた連結口63Cとバルブホルダ61のスリット610とが連通することで調整オイル収容領域52と受感領域15とが接続されて、調整オイル収容領域52及び受感領域15の内圧が互いに異なる場合にはこれを等しくするように圧力が変動する。一方、所定の位置以外にあるときには、連結口63Cとスリット610とが連通しないことにより、調整オイル収容領域52と受感領域15との接続が切断され、圧力の変動が行われない状態となる。そして、上記の調整オイル収容領域52と受感領域15との接続及び切断の切替えは、動力部65によるバルブスリーブ62及びバルブプランジャ63の移動のみによって行われるため、高温高圧な環境下であっても、圧力の調整を容易に行うことができる。
【0053】
また、上記のバルブ機構60は、従来、水底等の高圧環境下での圧力調整に用いられていたソレノイドバルブと比較して、小電流で駆動することができるという利点があるため、水底に長期間設置する等の理由により供給電力が制限されている装置に好適に用いられる。また、上記のバルブ機構60は、バルブスリーブ62及びバルブプランジャ63の移動速度を抑制することで接続/切断の切り替えを滑らかに行うことができ、ソレノイドバルブと比較して接続/切断の切り替え動作時にバルブに由来して発生する圧力変動を小さくすることができる。このため、上記の歪計測装置100のように、微小な圧力変化を測定する装置において好適に使用することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の歪計測装置及びこの歪計測装置に取り付けられたバルブ機構は種々の変更を行うことができる。
【0055】
例えば、上記実施形態の歪計測装置100に含まれるバルブ機構60は、バルブホルダ61の内部にバルブスリーブ62及びバルブプランジャ63の2つの部材が挿入されているが、バルブスリーブ62とバルブプランジャ63とは一体化されていてもよく、一体化された部材が動力部65によって駆動することで、調整オイル収容領域52と受感領域15との接続及び切断の切替えを行う構成であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態の歪計測装置100におけるバルブ機構60では、バルブプランジャ63の連結口63Cがバルブホルダ61の内部と接続しない位置までバルブプランジャ63が移動することによって、調整オイル収容領域52と受感領域15とが切断される構成について説明したが、調整オイル収容領域52と受感領域15との接続及び切断の切替えは他の構成によっても実現できる。例えば、上記実施形態のようにバルブプランジャ63に設けられた流路の連結口63Cと、バルブホルダ61の開口とが当接するような構成とされている場合には、これらが重なるような位置ではない場合には調整オイル収容領域52と受感領域15とは切断される。このように、上記実施形態のバルブ機構60には、調整オイル収容領域52と受感領域15との接続及び切断の切替えを実現する種々の構成を利用することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、バルブ機構60を歪計測装置100に適用した構成について説明しているが、バルブ機構60は、歪計測装置100以外の装置に適用することができる。すなわち、上記実施形態のバルブ機構60は、2つの空間の接続及び切断を切り替える用途において、種々の装置で用いることができる。また、上記実施形態の歪計測装置100で用いられる圧力バランス機構51は他の水中作業装置に適用することができる。また、バルブ機構60で接続/切断の切り替えが行われる受感領域15及び調整オイル収容領域52の2つの空間には、シリコンオイルLに代えて、鉱油、アルキルベンゼン、ポリブデン、アルキルナフタレン、アルキイルジフェニルエタン等の熱膨張係数が小さく(1×10−4以下)且つ粘性が低い(100cps以下)絶縁油を充填してもよく、また、液体であるシリコンオイルLに代えて種々の流体が充填された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…地盤、2…縦穴、10…検知部、11…内筒、13…外筒(容器、受感部)、15…受感領域(第2の空間)、20…差動変位計、30…計測部、50…圧力調整部、51…圧力バランス機構、52…調整オイル収容領域(第1の空間)、53…筺体部(容器、外筒部)、53A…開口部、60…バルブ機構、61…バルブホルダ(筒状部材)、62…バルブスリーブ(第1の部材)、62C…突起部、63…バルブプランジャ(第2の部材)、63A…流路、63B…開口、63C…連結口、64…バルブネジ、65…動力部、66…弾性部材、100…歪計測装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筺体の内部に設けられた第1の空間と第2の空間との接続及び切断を切り替えるバルブ機構であって、
筒状部材と、
前記筒状部材の内部に前記筒状部材の軸線方向に移動可能に設けられる柱状部材と、
前記柱状部材を移動させる動力部と、
を備え、
前記筒状部材は、前記筒状部材の側面に前記筒状部材の内部と前記第2の空間との間を接続させるための開口を有し、
前記柱状部材は、一端が前記第1の空間に接続されると共に他端が前記柱状部材の側面に設けられた連結口とされた流路を有し、
前記連結口は、前記柱状部材が前記筒状部材の内部の所定の位置にあるときには前記開口と連通し、前記柱状部材が前記筒状部材の内部の前記所定の位置以外にあるときには前記開口と連通しない
ことを特徴とするバルブ機構。
【請求項2】
前記柱状部材の移動により、前記連結口と前記開口とが連通しない位置になったことを検知する検知手段を更に備え、
前記動力部は、前記連結口と前記開口とが連通しない位置となったことを前記検知手段が検知したことに基づいて、前記柱状部材の移動を停止させる
ことを特徴とする請求項1記載のバルブ機構。
【請求項3】
前記柱状部材は、
前記動力部によって動作する第1の部材と、
前記筒状部材の前記軸線方向に沿って前記第1の部材よりも前記第1の空間側で配置されると共に前記第1の部材と弾性部材によって接続され、内部に前記流路を備える第2の部材と、
を有することを特徴とする請求項1又は2記載のバルブ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−133092(P2011−133092A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295352(P2009−295352)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【出願人】(510000770)サイスモテック株式会社 (2)
【Fターム(参考)】