説明

バルブ装置

【課題】高圧ガスが急速に出口路へ流出することを防止して、断熱圧縮による発熱を防止し、下流側の配管やガス機器等への負担を軽減する。
【解決手段】閉止弁室(11)に開口する出口路(12)の周囲に閉止弁座(14)を形成する。閉止部材(15)を第1閉止部材(16)と第2閉止部材(17)とから構成し、第1閉止部材(16)を閉止弁座(14)へ接離させる。第1閉止部材(16)に通路断面積の小さい連通路(18)を形成する。連通路(18)の一端を出口路(12)に対面させ、他端に第2弁座(19)を形成して第2閉止部材(17)を接離させる。第2閉止部材(17)から作動軸(20)を延設し、作動室(24)へ突入した先端にピストン部材(27)を形成する。作動室(24)に受圧室(28)をピストン部材(27)で区画形成し、作動流体を導入する。閉弁ばね(30)で閉止部材(15)を閉止弁座(14)側へ付勢する。閉止弁室(11)に開弁ばね(44)を収容し、第1閉止部材(16)を開弁方向へ付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスなど高圧ガスの制御に使用されるバルブ装置に関し、さらに詳しくは、高圧ガスが急速に出口路へ流出することを防止して、断熱圧縮による発熱の防止や、下流側の配管やガス機器等への負担軽減が可能なバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染の少ない水素ガスを燃料とする車両の開発が進められている。この水素ガスの貯蔵容器は大容量化と小形化が望まれており、従って貯蔵ガス圧も、例えば70MPaなどの高圧化が望まれている。
【0003】
従来の高圧ガス用バルブ装置には、圧縮空気や圧油などの作動流体を用いてバルブの開閉を遠隔操作するものがある(例えば、特許文献1参照)。
このバルブ装置は、ハウジング内に入口路と閉止弁室と出口路とが順に形成してある。上記の閉止弁室には閉止弁座が形成してあり、この閉止弁室へ閉止部材を挿入して、この閉止部材を閉止弁座に対し進退させることで、このバルブ装置が開閉される。
【0004】
上記のハウジングには、上記の閉止弁室の近傍に作動室を形成してあり、この作動室と上記の閉止弁室との隔壁のうち、上記の閉止弁座と対面する部位に挿通孔を透設し、上記の閉止部材から閉止弁座とは反対側へ延設した作動軸をこの挿通孔へ保密摺動可能に挿通してある。この作動軸の先端は上記の作動室内に突入してあり、この先端に形成したピストン部材を上記の作動室内面に保密摺動可能に構成してある。上記の作動室はこのピストン部材により区画され、閉止弁室側に受圧室が形成してあり、この受圧室に作動流体導入路を接続してこの受圧室へ作動流体を導入可能に構成してある。上記の作動室には閉弁付勢手段である閉弁ばねを挿入してあり、この閉弁ばねにより上記のピストン部材を介して前記の閉止部材を閉止弁座側へ付勢してある。
【0005】
上記の受圧室に作動流体を導入すると、上記の閉弁ばねの付勢力に抗してピストン部材が開弁側へ押圧されて移動し、これにより上記の閉止部材が閉止弁座から離隔してバルブ装置が開弁し、入口路から閉止弁室に流入した高圧ガスが出口路へ取り出される。
【0006】
このとき、上記の入口路から流入する高圧ガスが出口路へ急速に流入すると、断熱圧縮を生じて高温となり、フィルタや弁シート等の樹脂製部品を熱で溶かしたり、熱分解して微粉末を発生したりするなど種々の問題を生じる。また、このバルブ装置の下流側に接続される配管や他のバルブ装置、ガス機器等に、急激な圧力上昇による大きな負担が加わる問題もある。このため、上記のバルブ装置はゆっくりと開く必要があり、上記の従来技術では、作動流体導入路にオリフィス部を設け、上記の作動流体の流れに対し抵抗を与えることで、作動流体が受圧室へゆっくりと流入するようにしてある。
【0007】
【特許文献1】特開平11−30399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の入口路や出口路は平常状態におけるガス流量を確保するため、通路断面積が広く形成されており、従って上記の従来技術では、閉止部材が閉止弁座から僅かに離隔しても、その開口面積が急速に広がることとなる。特に水素のように分子量の小さなガスにあっては僅かな間隙から大量に流出するため、上記のように作動流体の流入速度を制限するだけでは、高圧ガスが出口路へ急速に流出し易い。このため、この従来のバルブ装置では、断熱圧縮による発熱の防止や、下流側のガス機器等への負担軽減が容易でない問題があった。
【0009】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、高圧ガスが急速に出口路へ流出することを防止して、断熱圧縮による発熱の防止や、下流側の配管やガス機器等への負担軽減が可能なバルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の課題を解決するため、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図6に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち本発明はバルブ装置に関し、ハウジング(2・2a)内に入口路(9)と閉止弁室(11)と出口路(12)とを順に形成し、閉止弁室(11)に閉止弁座(14)を形成するとともに、この閉止弁室(11)へ閉止部材(15)を上記の閉止弁座(14)に対し進退可能に挿入し、上記のハウジング(2・2a)に作動室(24)を形成して、この作動室(24)と上記の閉止弁室(11)との間の隔壁(25)のうち、上記の閉止弁座(14)と対面する部位に挿通孔(26)を透設し、上記の閉止部材(15)から閉止弁座(14)とは反対側へ延設した作動軸(20)を上記の挿通孔(26)へ保密摺動可能に挿通し、上記の作動室(24)内に突入した上記の作動軸(20)の先端にピストン部材(27)を形成し、このピストン部材(27)を作動室(24)内面に保密摺動可能に構成して、このピストン部材(27)により作動室(24)内の閉止弁室(11)側に受圧室(28)を区画形成し、この受圧室(28)に作動流体導入路(31)を接続してこの受圧室(28)へ作動流体を導入可能に構成し、上記の作動軸(20)に加わる閉止弁室(11)内のガス圧力に抗して、上記の閉止部材(15)を閉止弁座(14)側へ付勢する閉弁付勢手段(30)を設けたバルブ装置であって、
上記の閉止弁座(14)を、閉止弁室(11)に開口する上記の出口路(12)の上流開口端の周囲に形成し、上記の閉止部材(15)を第1閉止部材(16)と第2閉止部材(17)とから構成して、この第1閉止部材(16)を上記の閉止弁座(14)へ接離可能に構成し、この第1閉止部材(16)に上記の出口路(12)よりも通路断面積の小さい連通路(18)を形成し、この連通路(18)の一端を上記の出口路(12)に対面させるとともに、他端を上記の第2閉止部材(17)に対面させて、この他端の周囲に上記の閉止弁座(14)よりもシール面積の狭い第2弁座(19)を形成し、上記の第2閉止部材(17)を、上記の第1閉止部材(16)とは独立して進退移動させて上記の第2弁座(19)へ接離するように構成するとともに、この第2閉止部材(17)に上記の作動軸(20)を延設して、上記の受圧室(28)へ流入する作動流体の圧力により、この第2閉止部材(17)を上記の閉弁付勢手段(30)の付勢力に抗して開弁移動可能に構成し、上記の第1閉止部材(16)を開弁方向へ付勢する開弁付勢手段(44)を設け、上記の第2閉止部材(17)が開弁した状態で、上記の出口路(12)の内圧と閉止弁室(11)の内圧との差圧が所定圧力以下に低下すると、その差圧による閉弁力に抗して第1閉止部材(16)を上記の開弁付勢手段(44)の付勢力で開弁移動可能に構成したことを特徴とする。
【0011】
上記の受圧室に作動流体の圧力が加えられていない状態にあっては、上記の第1閉止部材と第2閉止部材は、上記の閉弁付勢手段により閉止弁座側へ付勢されている。上記の作動軸には、閉止弁室内の高圧ガスによる開弁方向の押圧力がそのシール断面積に加わる。しかし上記の閉弁付勢手段による付勢力は、この高圧ガスによる開弁方向への押圧力よりも大きく設定してあり、これにより両閉止部材は閉止弁座側に移動して、第1閉止部材が閉止弁座に当接するとともに第2閉止部材が第2弁座に当接し、閉止弁室と出口路との連通が遮断される。
【0012】
上記の作動流体導入路から受圧室に圧縮空気や圧油などの作動流体が流入すると、その圧力により第2閉止部材が上記の閉弁付勢手段の付勢力に抗して開弁移動し、第2弁座から離隔する。これにより、閉止弁室内は上記の第1閉止部材に形成した連通路を介して出口路に連通する。しかしながら上記の第2閉止部材が開弁したのちも、この第1閉止部材は閉止弁室の内圧と出口路の内圧との差圧により閉止弁座へ押圧されており、閉止弁座に当接した閉弁姿勢に維持される。従って、この閉止弁室は上記の連通路のみが出口路に連通した、いわば半開状態に維持され、閉止弁室内の高圧ガスは、この連通路の通路断面積に応じた少ないガス流量で出口路へ流出する。
【0013】
上記の高圧ガスが出口路へ少流量で流出することにより、出口路内のガス圧力が徐々に上昇し、閉止弁室内のガス圧力との差圧が小さくなる。そしてその差圧が所定圧力以下に低下すると、その差圧による閉弁力に抗して第1閉止部材が開弁付勢手段の付勢力により開弁移動し、閉止弁座から離隔する。これにより、閉止弁室はいわば全開状態となり、閉止弁室内の高圧ガスは出口路へ通常の流量で流出する。
【0014】
上記の開弁付勢手段は、上記の第2閉止部材が開弁した状態で、出口路の内圧と閉止弁室の内圧との差圧が所定圧力以下に低下したときに、第1閉止部材を開弁方向へ移動できるものであればよく、特定の構造のものに限定されない。しかしこの開弁付勢手段を開弁ばねで構成すると、上記の第1閉止部材を開弁方向へ確実に付勢できるうえ、その付勢力の設定が容易であり、第1閉止部材を開弁させる際の上記の所定圧力を精緻に設定できるので好ましい。なお、この場合、開弁ばねで構成された開弁付勢手段は小さな付勢力でよいため小形に形成できるので、上記の閉止弁室内に容易に配置することができ、バルブ装置全体をコンパクトに維持できるので好ましい。
【0015】
上記の閉弁付勢手段は、上記の受圧室に作動流体の圧力が加わらない状態で、作動軸に加わる閉止弁室内のガス圧力に抗して、閉止部材を閉止弁座側へ移動できるものであればよく、特定の構造のものに限定されないが、閉弁ばねを用いると上記の閉止部材を閉弁方向へ確実に付勢できるので好ましい。また、上記の作動室に収容するピストン部材は上記の作動流体の圧力を広い面積で受けるため、例えば閉止部材よりも大径に形成される。従って上記の閉弁ばねは、このピストン部材を介して上記の閉止部材を付勢するように上記の作動室に収容すると、強い弾圧力を備えた大形のばねであっても装着が容易であり、好ましい。
【0016】
上記の閉止部材は、作動流体を供給できない場所での使用時や作動流体を供給する装置が故障した時など、作動流体を調達できない状況でも開弁操作できるように、手動で開弁操作ができる強制開弁具を備えると好ましい。具体的には、例えば上記のピストン部材の受圧室とは反対側に、手動で操作される強制開弁具が着脱可能に連結される。また、この強制開弁具とその連結は特定の構成に限定されず、例えば、上記の作動室のうち上記の受圧室とは反対側に開弁具挿通孔を形成し、この開弁具挿通孔を介して上記の強制開弁具を上記のピストン部材へ連結できるように構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0018】
(1) 開弁操作の際、受圧室に作動流体を流入させると、その圧力で第2閉止部材は開弁移動するが、第1閉止部材は閉止弁座に当接した閉弁姿勢に維持される、いわば半開状態となることから、この第1閉止部材に形成した連通路を介して、高圧ガスを少量ずつ出口路へ流出させることができる。即ち、開弁した後の平常状態では通常の流量で高圧ガスが出口路へ流出するものでありながら、開弁操作時にあっては、上記の連通路の通路断面積に応じて高圧ガスを閉止弁室から出口路へ徐々に流出させるので、この高圧ガスが急速に出口路へ流出することを防止できる。この結果、出口路内のガス圧力は急速に上昇することがないので、断熱圧縮による発熱を防止できるうえ、下流側の配管やガス機器等への負担を軽減することができる。
【0019】
(2) 閉止弁室内のガス圧力は、例えば貯蔵ガスの消費により変化していく。また閉弁付勢手段は、その付勢力がガス圧力の高圧化に伴って大きくなると、加工誤差や組付誤差の累積が大きくなり易い。しかし上記の閉弁付勢手段の付勢力は、閉止弁室内のガス圧力で作動軸に加わる開弁方向への押圧力よりも確実に大きければよく、その付勢力は上限値が制限されないので精緻に設定する必要がない。一方、作動流体の圧力は、閉弁付勢手段の付勢力に抗して第2閉止部材を開弁移動できればよく、この圧力も上限値が制限されないので精緻に設定する必要がない。これ等の結果、閉弁付勢手段を簡単に構成できるうえ、作動流体の圧力制御が容易であり、安価に実施することができる。
【0020】
(3) 上記の開弁付勢手段は、出口路の内圧と閉止弁室の内圧との差圧が所定圧力以下になったときに第1閉止部材を開弁できればよいことから、この開弁付勢手段の付勢力は、その小さな差圧による押圧力に対応させて設定すればよい。従って、閉止弁室内の高いガス圧力やこれに対する閉弁付勢手段の大きな付勢力とは無関係に、所定の付勢力に設定することができ、第1閉止部材を開弁させる際の上記の所定圧力を、容易に精緻に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1から図6は本発明の実施形態を示し、図1は閉弁状態のバルブ装置の縦断正面図、図2はバルブ装置の横断平面図、図3は閉弁状態での閉止弁室近傍の拡大断面図、図4は開弁初期のいわゆる半開状態での閉止弁室近傍の拡大断面図、図5は全開状態での閉止弁室近傍の拡大断面図、図6は手動による開弁操作を説明する強制開弁具近傍の断面図である。
【0022】
図1に示すように、このバルブ装置(1)は本体ハウジング(2)の下部にガス容器(3)へ接続される脚ネジ部(4)を備え、横一側に出口ノズル(5)を形成し、他側に遠隔操作用開閉作動部(6)を備え、上部に手動で開閉操作ができる主止弁(41)を備えている。上記の脚ネジ部(4)の下面にはガス入口(7)がガス容器(3)のガス収容空間(3a)に臨ませて開口してあり、上記の出口ノズル(5)の端面にはガス出口(8)が開口してある。
【0023】
図1と図2に示すように、上記の本体ハウジング(2)内には、上記のガス入口(7)とガス出口(8)との間に入口路(9)と閉止弁(10)の閉止弁室(11)と出口路(12)とが順に形成してある。上記の入口路(9)には上記の主止弁(41)の主止弁室(42)が設けてあり、この主止弁室(42)と上記のガス入口(7)との間でガス逃し路(13)が分岐され、このガス逃し路(13)に安全弁(43)が付設してある。なお、上記の主止弁(41)は、上記の遠隔操作用開閉作動部(6)が万一故障した場合やこれをメンテナンスする場合などに、この主止弁(41)を閉弁操作することで入口路(9)からのガスの取出しが強制的に停止される。
【0024】
上記の閉止弁室(11)には、これに開口する出口路(12)の上流開口端の周囲に、閉止弁座(14)が形成してある。この閉止弁室(11)内に閉止部材(15)が、上記の閉止弁座(14)に対し進退可能に挿入してある。
【0025】
図1と図2及び図3に示すように、上記の閉止部材(15)は、閉止弁座(14)側から順に配置した第1閉止部材(16)と第2閉止部材(17)とから構成してある。この第1閉止部材(16)は閉止弁座(14)へ接離可能に構成してあり、この第1閉止部材(16)に上記の出口路(12)よりも通路断面積の小さい連通路(18)が透設してある。この連通路(18)は一端を上記の出口路(12)に対面させるとともに、他端を上記の第2閉止部材(17)に対面させてあり、この他端の周囲に、上記の閉止弁座(14)よりもシール面積の狭い第2弁座(19)が形成してある。そして図3に示すように、上記の第1閉止部材(16)が閉止弁座(14)に当接し、第2閉止部材(17)が第2弁座(19)に当接することで、閉止弁室(11)と出口路(12)との連通が遮断された閉弁状態(X)となる。
【0026】
上記の第2閉止部材(17)は、上記の第1閉止部材(16)とは独立して進退移動が可能であり、上記の第2弁座(19)へ接離できるようにしてある。そして、この第2閉止部材(17)の閉止弁座(14)とは反対側に作動軸(20)が延設してある。また、上記の閉止弁室(11)内には開弁付勢手段としての開弁ばね(44)が配置してあり、この開弁ばね(44)の弾圧力で上記の第1閉止部材(16)を開弁方向へ付勢してある。
【0027】
上記の閉止弁室(11)の周壁のうち、上記の閉止弁座(14)と対面する部位に筒部材(23)が保密状に固定してあり、この筒部材(23)の外側に上記の遠隔操作用開閉作動部(6)の作動部ハウジング(2a)が付設してある。この作動部ハウジング(2a)内には作動室(24)が形成してあり、この作動室(24)と上記の閉止弁室(11)との間の隔壁(25)に、上記の筒部材(23)内と連なる挿通孔(26)が形成してある。この挿通孔(26)には上記の作動軸(20)が保密摺動可能に挿通してあり、この作動軸(20)の先端が上記の作動室(24)内へ突入してある。
【0028】
上記の作動軸(20)の先端には、作動室(24)の内面に保密摺動するピストン部材(27)が固設してあり、このピストン部材(27)により作動室(24)が閉止弁室(11)側の受圧室(28)と反対側のばね収容室(29)とに区画してある。このばね収容室(29)には閉弁付勢手段として閉弁ばね(30)が収容してあり、ピストン部材(27)と作動軸(20)を介して、上記の両閉止部材(16・17)を閉止弁座(14)側へ弾圧付勢してある。また、上記の作動部ハウジング(2a)には作動流体導入路(31)が形成してあり、この作動流体導入路(31)を介して上記の受圧室(28)が図外の圧力流体供給装置に連通してある。
【0029】
上記のばね収容室(29)の周壁には、上記のピストン部材(27)の略中央部と対面する位置に筒状のストッパー(32)が螺着固定してある。このストッパー(32)をピストン部材(27)側へ前進させることにより、作動軸(20)を介して閉止部材(15)を閉弁姿勢に保持し、これにより、例えば搬送中に振動等をうけた場合や受圧室(28)に作動流体が誤って流入した場合などに、高圧ガスが閉止弁室(11)から出口路(12)へ流出することがないようにしてある。そしてこのストッパー(32)を作動室(24)から後退させることにより、上記のピストン部材(27)や閉止部材(15)のストロークが確保される。このストッパー(32)の内部には開弁具挿通孔(33)が透設してあり、上記のピストン部材(27)には、受圧室(28)とは反対側でこの開弁具挿通孔(33)と対面する部位に、開弁具装着部(34)が形成してある。
【0030】
次に上記のバルブ装置の開閉作動を、図1と図2及び図3〜5に基づいて説明する。
図3に示す閉弁状態(X)にあっては、前記の受圧室(28)に作動流体の圧力が加わっておらず、上記の第1閉止部材(16)と第2閉止部材(17)は、上記の閉弁ばね(30)の弾圧力で閉止弁座(14)側へ付勢されている。上記の閉止弁室(11)内のガス圧力は、通常、充填直後のガス圧力が最も高く、ガス容器(3)内の貯蔵ガスの消費に伴って低下していく。上記の閉弁ばね(30)の弾圧力は、閉止弁室(11)内のガス圧力が最も高い場合でも、この高圧ガスが上記の作動軸(20)を開弁方向へ押圧する力よりも大きく設定してある。これにより、上記の作動軸(20)とともに両閉止部材(16・17)がこの閉弁ばね(30)の弾圧力に付勢されて閉止弁座(14)側へ移動し、第1閉止部材(16)が閉止弁座(14)に当接するとともに第2閉止部材(17)が第2弁座(19)に当接して、閉止弁室(11)が閉じた閉弁状態(X)に保持される。
【0031】
上記の閉弁状態(X)から、図外の圧力流体供給装置により、前記の作動流体導入路(31)から受圧室(28)に圧縮空気や圧油などの作動流体を供給すると、上記のピストン部材(27)が上記の閉弁ばね(30)の付勢力に抗して開弁方向へ押圧される。
【0032】
このとき、上記の作動流体の圧力は、第2閉止部材(17)が閉弁ばね(30)の付勢力に抗して開弁方向へ移動する値以上に設定してある。即ち、上記の閉弁状態(X)では、閉弁ばね(30)による閉弁方向への弾圧力と、第2弁座(19)のシール面積に加わる閉止弁室(11)内のガス圧による閉弁方向への押圧力と、作動軸(20)のシール断面積に加わる閉止弁室(11)内のガス圧による開弁方向への押圧力と、開弁ばね(44)による開弁方向への弾圧力との総和の、閉弁方向への押圧力が上記のピストン部材(27)に加わっている。上記の作動流体の圧力は、上記の閉弁方向への押圧力の総和に抗して、上記のピストン部材(27)を開弁側へ移動できるだけの圧力以上に設定してある。
【0033】
ここで、上記の閉止弁室(11)内のガス圧は、前記のように貯蔵ガスの消費に伴って変動する。上記の作動軸(20)のシール断面積は、通常、第2弁座(19)のシール面積よりも大きいので、閉止弁室(11)内のガス圧が低下すると、上記の閉弁方向への押圧力の総和は小さくなる。そこで上記の作動流体の圧力は、閉止弁室(11)内のガス圧が最も低い状態でも、上記のピストン部材(27)を開弁側へ移動できる圧力以上に設定してある。この結果、上記の作動流体の圧力によりピストン部材(27)が開弁方向へ確実に移動し、作動軸(20)とともに第2閉止部材(17)が開弁方向へ移動して、第1閉止部材(16)に形成された第2弁座(19)から離隔する。
【0034】
一方、上記の第1閉止部材(16)は、閉止弁座(14)のシール面積に応じて、閉止弁室(11)内のガス圧力と出口路(12)の内圧との差圧により、閉止弁座(14)へ押圧されている。上記の第2閉止部材(17)はこの第1閉止部材(16)とは独立して開弁移動しており、しかも、この第1閉止部材(16)を開弁方向へ付勢する開弁ばね(44)の弾圧力は弱く、上記の差圧が大きい間は、その差圧による閉弁力よりも小さいので、この第1閉止部材(16)は閉止姿勢に保持される。
【0035】
これ等の結果、上記の第1閉止部材(16)は閉止弁座(14)に当接した状態から移動せず、図4に示すように、閉止弁室(11)が上記の連通路(18)のみを介して出口路(12)に連通した半開状態(Y)となる。従って、閉止弁室(11)内の高圧ガスはこの連通路(18)の通路断面積に応じた少ないガス流量で出口路(12)へ流出する。
【0036】
上記の連通路(18)からの高圧ガスの流出が続くと、上記の出口路(12)の内圧が徐々に上昇し、閉止弁室(11)の内力と出口路(12)の内圧との差圧が低くなっていく。そして、この差圧が所定圧力以下に低下すると、上記の第1閉止部材(16)は上記の開弁ばね(44)の弾圧力で、上記の差圧による閉弁力に抗して開弁方向へ移動し、閉止弁座(14)から離隔して、図5に示す全開状態(Z)となる。これにより、上記の閉止弁室(11)内の高圧ガスは、第1閉止部材(16)と閉止弁座(14)との間隙から出口路(12)へ、通常の流量で流出する。
【0037】
上記のバルブ装置(1)を上記の全開状態(Z)から閉じる場合は、上記の受圧室(28)内の作動流体の圧力が抜かれる。これにより作動軸(20)に加わる閉止弁室(11)内のガス圧力に抗して、ピストン部材(27)が閉弁ばね(30)の弾圧力で閉弁側へ移動し、第1閉止部材(16)が閉止弁座(14)に当接するとともに第2閉止部材(17)が第2弁座(19)に当接した、図3に示す閉弁状態(X)となる。
【0038】
上記のバルブ装置(1)は、前記のガス容器(3)の配設位置によっては、前記の作動流体導入路(31)を圧力流体供給装置に接続できない場合があり、またこの圧力流体供給装置と接続できる場合であってもこれが故障した場合は、作動流体を受圧室(28)へ供給することができなくなる。これらの場合は、図6に示すように、上記のバルブ装置(1)に強制開弁具(35)が装着される。
【0039】
即ち、上記の強制開弁具(35)は、一端に係止部(36)が形成された取付軸部(37)と、この取付軸部(37)の他端へ回動自在に付設されたL字状の操作レバー(38)と、上記の取付軸部(37)が挿通可能な透孔(39)を中央に備える受台(40)とからなる。
【0040】
図6に示すように、上記の受台(40)は前記の作動部ハウジング(2a)の外面に付設され、上記の取付軸部(37)が前記の開弁具挿通孔(33)へ挿通されて、上記の係止部(36)が前記の開弁具装着部(34)に螺着固定される。そして、上記の操作レバー(38)を図6において反時計回りに回動させると、梃子の原理により、上記のピストン部材(27)が作動軸(20)とともに、閉弁ばね(30)の弾圧力に抗してばね収容室(29)側へ引き寄せられ、これにより、第2閉止部材(17)が第2弁座(19)から離隔し、前記の図4に示す半開状態(Y)となる。そして閉止弁室(11)からのガスの流出により、出口路(12)の内圧と閉止弁室(11)の内圧との差圧が所定圧力以下になると、第1閉止部材(16)が開弁ばね(44)の弾圧力で閉止弁座(14)から離隔し、前記の図5に示す全開状態(Z)に切換えられる。
【0041】
なお、上記の操作レバー(38)を時計回りに回動して戻すと、閉弁ばね(30)の弾圧力によりピストン部材(27)が作動軸(20)とともに閉止弁室(11)側へ移動し、これにより、第1閉止部材(16)と第2閉止部材(17)が前記の図3に示す閉弁状態(X)に切換えられる。
【0042】
上記の実施形態で説明したバルブ装置は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、ハウジングや閉止弁室、閉止部材、作動軸、遠隔操作用開閉作動部、ピストン部材、開弁付勢手段、閉弁不正手段などの形状や構造、形成位置等を、この実施形態等に限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0043】
例えば上記の実施形態では、作動部ハウジングを本体ハウジングとは別体に形成してこれを本体ハウジングに固定したが、本発明ではこれらを一体に形成してもよい。また上記の実施形態では入口路にガス逃し路を分岐して安全弁を付設したが、この逃し路や安全弁を省略することも可能である。さらに、上記の入口路に設けた主止弁を省略することも可能である。なお本発明のバルブ装置は、取り扱うガスが特定の種類に限定されないことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のバルブ装置は、高圧ガスが急速に出口路へ流出することを防止して、断熱圧縮による発熱の防止や、下流側の配管やガス機器等への負担軽減が可能となるので、高圧の水素ガスなど、可燃性ガス等を収容した高圧ガスを取り扱う、遠隔操作で開閉される容器弁に特に好適であるが、他のガス容器用バルブ装置や配管用バルブ装置にも好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態を示す、閉弁状態のバルブ装置の縦断正面図である。
【図2】本発明の実施形態を示す、閉弁状態のバルブ装置の横断平面図である。
【図3】本発明の実施形態の、閉弁状態での閉止弁室近傍の拡大断面図である。
【図4】本発明の実施形態の、半開状態での閉止弁室近傍の拡大断面図である。
【図5】本発明の実施形態の、全開状態での閉止弁室近傍の拡大断面図である。
【図6】本発明の実施形態の、遠隔操作用開閉作動部に付設した強制開弁具近傍の断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1…バルブ装置
2…本体ハウジング
2a…作動部ハウジング
9…入口路
11…閉止弁室
12…出口路
14…閉止弁座
15…閉止部材
16…第1閉止部材
17…第2閉止部材
18…連通路
19…第2弁座
20…作動軸
24…作動室
25…作動室(24)と閉止弁室(11)との間の隔壁
26…挿通孔
27…ピストン部材
28…受圧室
30…閉弁付勢手段(閉弁ばね)
31…作動流体導入路
33…開弁具挿通孔
35…強制開弁具
44…開弁付勢手段(開弁ばね)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2・2a)内に入口路(9)と閉止弁室(11)と出口路(12)とを順に形成し、閉止弁室(11)に閉止弁座(14)を形成するとともに、この閉止弁室(11)へ閉止部材(15)を上記の閉止弁座(14)に対し進退可能に挿入し、
上記のハウジング(2・2a)に作動室(24)を形成して、この作動室(24)と上記の閉止弁室(11)との間の隔壁(25)のうち、上記の閉止弁座(14)と対面する部位に挿通孔(26)を透設し、上記の閉止部材(15)から閉止弁座(14)とは反対側へ延設した作動軸(20)を上記の挿通孔(26)へ保密摺動可能に挿通し、
上記の作動室(24)内に突入した上記の作動軸(20)の先端にピストン部材(27)を形成し、このピストン部材(27)を作動室(24)内面に保密摺動可能に構成して、このピストン部材(27)により作動室(24)内の閉止弁室(11)側に受圧室(28)を区画形成し、この受圧室(28)に作動流体導入路(31)を接続してこの受圧室(28)へ作動流体を導入可能に構成し、
上記の作動軸(20)に加わる閉止弁室(11)内のガス圧力に抗して、上記の閉止部材(15)を閉止弁座(14)側へ付勢する閉弁付勢手段(30)を設けたバルブ装置であって、
上記の閉止弁座(14)を、閉止弁室(11)に開口する上記の出口路(12)の上流開口端の周囲に形成し、
上記の閉止部材(15)を第1閉止部材(16)と第2閉止部材(17)とから構成して、この第1閉止部材(16)を上記の閉止弁座(14)へ接離可能に構成し、
この第1閉止部材(16)に上記の出口路(12)よりも通路断面積の小さい連通路(18)を形成し、この連通路(18)の一端を上記の出口路(12)に対面させるとともに、他端を上記の第2閉止部材(17)に対面させて、この他端の周囲に上記の閉止弁座(14)よりもシール面積の狭い第2弁座(19)を形成し、
上記の第2閉止部材(17)を、上記の第1閉止部材(16)とは独立して進退移動させて上記の第2弁座(19)へ接離するように構成するとともに、この第2閉止部材(17)に上記の作動軸(20)を延設して、上記の受圧室(28)へ流入する作動流体の圧力により、この第2閉止部材(17)を上記の閉弁付勢手段(30)の付勢力に抗して開弁移動可能に構成し、
上記の第1閉止部材(16)を開弁方向へ付勢する開弁付勢手段(44)を設け、上記の第2閉止部材(17)が開弁した状態で、上記の出口路(12)の内圧と閉止弁室(11)の内圧との差圧が所定圧力以下に低下すると、その差圧による閉弁力に抗して第1閉止部材(16)を上記の開弁付勢手段(44)の付勢力で開弁移動可能に構成したことを特徴とする、バルブ装置。
【請求項2】
上記の開弁付勢手段(44)を開弁ばねで構成した、請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
上記の開弁付勢手段(44)を上記の閉止弁室(11)内に配置した、請求項2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
上記の閉弁付勢手段(30)を閉弁ばねで構成した、請求項1から3のいずれか1項に記載のバルブ装置。
【請求項5】
上記の閉弁付勢手段(30)を上記の作動室(24)の受圧室(28)とは反対側に収容して、上記のピストン部材(27)を介して上記の第2閉止部材(17)を閉弁方向へ弾圧した、請求項4に記載のバルブ装置。
【請求項6】
上記のピストン部材(27)の受圧室(28)とは反対側に、手動操作される強制開弁具(35)を着脱可能に連結した、請求項1から5のいずれか1項に記載のバルブ装置。
【請求項7】
上記の作動室(24)のうち上記の受圧室(28)とは反対側に開弁具挿通孔(33)を形成し、この開弁具挿通孔(33)を介して上記の強制開弁具(35)を上記のピストン部材(27)へ連結した、請求項6に記載のバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−247697(P2007−247697A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68697(P2006−68697)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(591038602)株式会社ネリキ (54)
【Fターム(参考)】