説明

バルブ装置

【課題】スライド機構を利用しなくても、弁体および弁軸を備えた開閉部材を変位可能に支持することができるバルブ装置を提供すること。
【解決手段】バルブ装置1において、開閉部材5は、流路310を開閉する可撓性の弁体51、および弁体51の中央から開方向に延在する弁軸53を備えており、弁軸53は、付勢部材9によって閉方向に付勢されている。ここで、弁体51の外周部たる環状部分515はハウジング2に保持されており、開閉部材5は、ハウジング2による弁体51の環状部分515の保持、および付勢部材9による閉方向に向けての付勢により、弁軸53の軸線方向Lに移動可能にハウジング2に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路の開閉を行う弁体を備えたバルブ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体や気体等の流体の供給を制御するバルブ装置としては、流路を開閉するための弁体、および弁体から延在する弁軸を備えた開閉部材をカム機構で駆動するものが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる特許文献1に記載のバルブ装置において、ケースに形成された穴内には筒状のスライド部材とバネとが配置され、スライド部材の内側に弁軸が挿入されている。従って、カム機構によってスライド部材を押圧すれば、開閉部材が閉方向に変位するとともに、カム機構によるスライド部材の押圧を停止すれば、バネの付勢力によって開閉部材が開方向に変位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−170521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、開閉部材を開方向および閉方向に変位可能に支持するにあたって、特許文献1に記載の技術のように、ケースに設けた穴内でスライド部材がスライドする機構を採用すると、スライド部材と穴の内壁との間に発生する摺動抵抗によって余計な負荷が発生するため、駆動部に無駄な電力消費が発生するという問題点がある。また、穴内に異物が侵入すると、スライド部材がスムーズに移動できず、その結果、流路の開閉を制御できなくなるという問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、スライド機構を利用しなくても、弁体および弁軸を備えた開閉部材を変位可能に支持することができるバルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るバルブ装置は、流路を開閉する可撓性の弁体、および該弁体の中央から閉方向および開方向のうちの一方方向に延在する弁軸を備えた開閉部材と、該弁軸を閉方向および開方向のうちの他方方向に付勢する付勢部材と、前記開閉部材を前記一方方向側に向けて駆動する際に前記弁軸に当接して前記開閉部材を前記一方方向に押圧する弁軸駆動部と、前記開閉部材、前記付勢部材および前記弁軸駆動部を支持する支持体と、を有し、前記開閉部材は、前記支持体による前記弁体の外周部の保持、および前記付勢部材による前記他方方向に向けての付勢により、前記弁軸の軸線方向に移動可能に前記支持体に支持されていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、開閉部材は、流路を開閉する可撓性の弁体、および弁体の中央から閉方向および開方向のうちの一方方向に延在する弁軸を備えており、弁軸は、付勢部材によって閉方向および開方向のうちの他方方向に付勢されている。このため、弁軸駆動部が弁軸を押圧していない間、開閉部材は、付勢部材に付勢された他方方向に位置する。この状態から、弁軸駆動部が弁軸に当接して開閉部材を一方方向に押圧すると、開閉部材は、付勢部材の付勢力に抗して一方方向に移動する。かかる開閉部材の変位によって、弁体は流路を開閉する。ここで、弁体の外周部は支持体に保持されており、開閉部材は、支持体による弁体の外周部の保持、および付勢部材による他方方向に向けての付勢により、弁軸の軸線方向に移動可能に支持体に支持されている。このため、開閉部材に対してスライド機構を設ける必要がない。それ故、スライド機構での摺動抵抗に起因する余計な負荷の発生や、スライド機構での引っ掛かり等に起因する不具合の発生を防止することができる。
【0009】
本発明において、前記弁軸駆動部は、駆動源、および該駆動源からの駆動力を前記弁軸に伝達する伝達機構と、を有し、前記伝達機構は、前記開閉部材を前記一方方向に向けて駆動する際、前記弁軸において前記他方方向に向く被伝達部に当接した状態で摺動しながら当該開閉部材を前記一方方向に向けて押圧する出力部材を備えていることが好ましい。かかる構成によれば、伝達機構の出力部材と開閉部材とを連結しなくても開閉部材を一方方向に駆動することができる。それ故、開閉部材が閉方向に変位する際、出力部材から開閉部材に大きな負荷が加わらないので、付勢部材の付勢力によって開閉部材を他方方向に変位させることができる。
【0010】
本発明において、前記伝達機構は、前記駆動源により駆動されるカム部材を備えたカム機構を有していることが好ましい。かかる構成によれば、カム形状によって開閉部材を任意のパターンで変位させることができる。
【0011】
本発明において、前記伝達機構は、前記出力部材として、前記弁軸の軸線方向に対して交差する軸線周りに揺動可能に前記支持体に支持された揺動部材を備え、前記弁軸駆動部からの駆動力は、前記カム部材に従動して前記揺動部材が揺動することにより前記被伝達部に伝達されることが好ましい。かかる構成によれば、カムによって弁軸を直接、軸線方向に押圧する場合に比して、弁軸に対して軸線方向に沿う方向の力を加えることができる。従って、開閉部材を一方方向に押圧する際、弁軸が傾かないので、開閉部材を適正な姿勢で変位させることができる。
【0012】
本発明において、前記弁軸は、前記被伝達部をもって前記軸線方向に対して交差する方向に突出した凸部を備え、前記付勢部材は、前記凸部において前記一方方向に位置する面に当接して当該面を前記他方方向に向けて付勢していることが好ましい。かかる構成によれば、弁軸に対して、簡素な構成で、付勢部材による付勢力および弁軸駆動部による駆動力を印加することができる。
【0013】
本発明において、前記開閉部材を複数備え、当該複数の開閉部材はいずれも、共通の前記駆動源により駆動されることが好ましい。かかる構成によれば、簡素な構成で複数の流路の開閉を制御することができる。
【0014】
本発明において、前記カム部材は、前記駆動源により回転駆動される軸部から外周側にカム部が突出したカムシャフトであることが好ましい。かかる構成によれば、簡素な構成で複数の開閉部材を駆動することができる。
【0015】
本発明において、前記付勢部材は、前記弁軸に対して同軸状に配置されたコイルバネであることが好ましい。かかる構成によれば、付勢部材によって弁軸を付勢する構成を採用した場合、弁軸が傾かないので、開閉部材を適正な姿勢で変位させることができる。
【0016】
本発明において、前記弁体は、ダイヤフラム弁であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明において、開閉部材は、流路を開閉する可撓性の弁体、および弁体の中央から閉方向および開方向のうちの一方方向に延在する弁軸を備えており、弁軸は、付勢部材によって閉方向および開方向のうちの他方方向に付勢されている。このため、弁軸駆動部が弁軸を押圧していない間、開閉部材は、付勢部材に付勢された他方方向に位置する。この状態から、弁軸駆動部が弁軸に当接して開閉部材を一方方向に押圧すると、開閉部材は、付勢部材の付勢力に抗して一方方向に移動する。かかる開閉部材の変位によって、弁体は流路を開閉する。ここで、弁体の外周部は支持体に保持されており、開閉部材は、支持体による弁体の外周部の保持、および付勢部材による他方方向に向けての付勢により、弁軸の軸線方向に移動可能に支持体に支持されている。このため、開閉部材に対してスライド機構を設ける必要がない。それ故、スライド機構での摺動抵抗に起因する余計な負荷の発生や、スライド機構での引っ掛かり等に起因する不具合の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用したバルブ装置の外観を示す説明図である。
【図2】本発明を適用したバルブ装置を部分的に分解した様子を示す説明図である。
【図3】本発明を適用したバルブ装置をさらに分解した様子を示す説明図である。
【図4】本発明を適用したバルブ装置の流路構成部材における流路等を示す説明図である。
【図5】本発明を適用したバルブ装置のカムシャフト等の可動部の説明図である。
【図6】本発明を適用したバルブ装置を、弁体を通る位置で切断したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(バルブ装置の全体構成)
図1は、本発明を適用したバルブ装置の外観を示す説明図であり、図1(a)、(b)は、バルブ装置を斜め上方からみた斜視図、およびバルブ装置を斜め下方からみた斜視図である。図2は、本発明を適用したバルブ装置を部分的に分解した様子を示す説明図であり、図2(a)、(b)は、バルブ装置を部分的に分解した様子を斜め上方からみた分解斜視図、およびバルブ装置を部分的に分解した様子を斜め下方からみた分解斜視図である。図3は、本発明を適用したバルブ装置をさらに分解した様子を示す説明図であり、図3(a)、(b)は、バルブ装置の分解斜視図、および開閉部材の斜視図である。図4は、本発明を適用したバルブ装置の流路構成部材における流路等を示す説明図であり、図4(a)、(b)、(c)は、下ケースの流路の一部を拡大して示す平面図、上ケースに形成した流路の一部を拡大して示す底面図、および流路構成部材の断面図である。
【0021】
図1、図2および図3に示すように、本形態のバルブ装置1は、略直方体のハウジング2から弁軸駆動部6の駆動源60として用いたモータが突出した構造になっている。かかるバルブ装置1において、ハウジング2は、ハウジング本体20と、ハウジング本体20の上部開口を覆う上カバー26と、ハウジング本体20の下部開口を覆う流路構成体3とから構成されており、ハウジング本体20の内部には、詳しくは後述する弁軸駆動部6、付勢部材9、および開閉部材5が配置されている。かかるバルブ装置1では、共通の流体供給装置から供給された流体を所定のタイミングで貫通穴351に供給するのに利用することができる。また、本形態のバルブ装置1では、貫通穴351が複数形成されていることから、共通の流体供給装置から供給された流体を所定のタイミングで複数の貫通穴351に分配しながら供給するのに利用することができる。
【0022】
(流路構成体3の構成)
図2および図3に示すように、ハウジング2の底部に連結された流路構成体3は、下ケース35、ゴムシート等からなるシール材33、および上ケース31が積層された構造になっており、下ケース35とハウジング本体20とは、シール材33および上ケース31を間に挟んだ状態でボルト39により連結されている。また、上ケース31の下面からは円柱状の突起319が2つ形成されており、シール材33において突起319と重なる位置には貫通穴339が形成され、下ケース35の上面には、突起319と重なる位置に貫通穴359が形成されている。従って、下ケース35、シール材33、および上ケース31を重ねた際、下ケース35、シール材33、および上ケース31は、突起319によって互いの位置合わせが行われる。
【0023】
かかる流路構成体3の底面では流体入口11と流体出口12とが開口しており、流体入口11および流体出口12には流入管110および流出管120(図1参照)が接続される。本形態においては、1つの流体入口11と3つの流体出口12とが設けられており、流体入口11は、上ケース31に形成された流路310、および下ケース35に形成された共通流路350を経由して3つの流体出口12の各々に連通している。
【0024】
かかる流路を構成するにあたって、まず、下ケース35は四角形の板状であり、かかる下ケース35の上面には、溝状の共通流路350が形成されている。共通流路350の底部には、貫通穴350aが1つ形成されており、貫通穴350aは、下ケース35の下面で流体入口11として開口している。また、下ケース35において共通流路350の側方位置には、共通流路350の延在方向に沿って3つの貫通穴351が等間隔に形成されており、3つの貫通穴351は各々、下ケース35の下面で流体出口12として開口している。また、下ケース35において、ボルト39が止められる位置等には貫通穴358が形成されている。
【0025】
シール材33は、下ケース35の上面と略同一サイズのゴム製シートであり、ボルト39が止められる位置等には切り欠き338が形成されている。シール材33において、下ケース35の3つの貫通穴351に対して重なる位置の各々には3つの貫通穴331が形成されているとともに、共通流路350と重なる位置に3つの貫通穴332が等間隔に形成されている。
【0026】
上ケース31は、下ケース35の上面と略同一サイズの板材であり、ボルト39が止められる位置等には貫通穴318が形成されている。上ケース31の上面には、円形の凹部からなる流路310が等間隔に3つ形成されており、流路310の底部の中央には円筒状の段部313が形成されている。かかる円筒状の段部313の上面は、後述する弁体51に対するシール面314として機能する。また、流路310の周りには、環状凸部317が形成されており、かかる環状凸部317は、後述する弁体51をハウジング本体20との間で保持する。
【0027】
3つの段部313の各々の中央には貫通穴312が形成されており、かかる3つの貫通穴312は、シール材33に形成された貫通穴332に対して一対一の関係をもって重なる。従って、3つの流路310は各々、上ケース31の貫通穴312およびシール材33の貫通穴332を介して共通流路350に連通し、かかる共通流路350を介して流体入口11に連通している。
【0028】
また、3つの流路310の各々において、段部313の外側に位置する底部には貫通穴311が形成されており、かかる貫通穴311は、シール材33に形成された貫通穴331に対して一対一の関係をもって重なる。従って、3つの流路310は各々、上ケース31の貫通穴311、シール材33の貫通穴331、および下ケース35の貫通穴351を介して流体出口12に連通している。
【0029】
図4(a)に示すように、下ケース35の上面には、共通流路350を全周で囲むリブ状の突条部355と、貫通穴351を全周で囲むリブ状の突条部356とが形成されている。本形態において、突条部355と突条部356とは部分的に繋がっている。また、図4(b)に示すように、上ケース31の下面には、貫通穴312を全周で囲むリブ状の突条部315と、貫通穴311を全周で囲むリブ状の突条部316とが形成されている。本形態において、突条部315、316、355、356はいずれも、断面三角形状を有している。
【0030】
ここで、下ケース35の突条部355、356と上ケース31の突条部315、316とは、互いにずれた位置に形成されており、シール材33を互いに異なる位置で押圧する。より具体的には、上ケース31の突条部315は、下ケース35の突条部355と共通流路350とによって挟まれた領域に重なるように形成され、上ケース31の突条部316は、下ケース35の突条部356と貫通穴351とによって挟まれた領域に重なるように形成されている。従って、シール材33は、共通流路350および貫通穴312の周りにおいて、上ケース31の突条部315によって押圧され、さらに、上ケース31の突条部315によって押圧されている箇所より外側では、下ケース35の突条部355によって押圧されている。また、シール材33は、貫通穴311、351の周りにおいて、上ケース31の突条部316によって押圧され、さらに、上ケース31の突条部316によって押圧されている箇所より外側では、下ケース35の突条部356によって押圧されている。それ故、共通流路350の周りおよび貫通穴311、312、351の周りは確実に封止されている。
【0031】
(弁体51および付勢部材9の構成)
図5は、本発明を適用したバルブ装置1のカムシャフト等の可動部の説明図であり、図5(a)、(b)は、可動部の斜視図、および可動部の分解斜視図である。
【0032】
図1、図2、図3、図4および図5において、ハウジング本体20の底部には、上ケース31の上面に形成された流路310と重なる位置に弁体配置穴205が形成されており、かかる弁体配置穴205、およびハウジング本体20と上カバー26との間に形成された空間を利用して、上ケース31の段部313の上面(シール面314)に対向するように開閉部材5が配置されている。本形態において、弁体配置穴205は、ハウジング本体20の底部において等間隔に3つ形成されており、それ故、開閉部材5は、等間隔に3つ配置されている。また、本形態のバルブ装置1では、ハウジング本体20と上カバー26との間に形成された空間を利用して、開閉部材5を開方向(シール面314から離間する方向)に駆動する弁軸駆動部6が構成されており、弁軸駆動部6は、3つの開閉部材5を各々、所定のタイミングで駆動して、開閉部材5がシール面314に形成された貫通穴312を塞いだ閉状態、および開閉部材5が貫通穴312を開放した開状態を実現する。
【0033】
かかる開閉動作を実現するにあたって、本形態では、まず、図4(c)および図5(b)に示すように、開閉部材5は、シール面314に対向する可撓性の弁体51と、弁体51の中央から閉方向および開方向のうちの開方向に延在する弁軸53を備えており、弁軸53と弁体51の中央部分とは一体に変位する。本形態において、弁体51と弁軸53とは別部材からなり、弁体51の背面(開方向の側の面)で開口する穴519内に弁軸53の端部539が係合して弁体51と弁軸53とが一体に連結された構造になっている。本形態において、弁体51は、ダイヤフラム弁であり、かかるダイヤフラム弁(弁体51)は、中央の肉厚部分からなる円柱状部分511と、円柱状部分511から外周側に向けて拡径した円形の肉薄部分からなるフランジ部513と、フランジ部513の外周部分でフランジ部513よりも肉厚に形成された環状部分515とを備えている。また、円柱状部分511に形成された穴519内に、弁軸53において括れ部分539aが形成された端部539が嵌っている。
【0034】
また、図4(c)に示すように、弁体51において、シール面314に対向する面には、貫通穴312の内径寸法よりもわずかに大径で、シール面314の外径寸法よりわずかに小径の環状突起518が形成されており、開閉部材5が閉方向に変位した際、環状突起518がシール面314に当接することにより、流体入口11側の貫通穴312と流体出口12側の貫通穴311とが遮断される。これに対して、開閉部材5が開方向に変位した際、環状突起518がシール面314から離れるので、流体入口11側の貫通穴312と流体出口12側の貫通穴311とが連通する状態となる。このようにして流路310の開閉が行われる。
【0035】
ここで、弁軸53は、等しい外径をもって延在する軸部531と、軸部531の長さ方向の途中部分で外周側に張り出した凸部532とを有している。本形態において、凸部532は、軸部531を中心に互いに逆方向に延在する板状部分であり、凸部532は、延在している方向に直交する方向では、軸部531よりわずかに突出しているだけである。
【0036】
かかる構成の開閉部材5において、弁体51の外周部(環状部分515)は、全周にわたって、上ケース31の上面に形成された環状凸部317と、ハウジング本体20の底部との間に挟持されている。
【0037】
また、バルブ装置1において、上カバー26とハウジング本体20との間には、開閉部材5に対して開方向で重なる位置に、開閉部材5を閉方向に付勢する付勢部材9が配置されている。本形態において、付勢部材9は、上カバー26と開閉部材5の凸部532との間に配置されたコイルバネ90からなり、かかる付勢部材9(コイルバネ90)は、弁軸53と同軸状に配置されている。より具体的には、上カバー26の下面には、弁軸53と対向する位置にコイルバネ90の一方の端部が嵌る円柱状突起261が形成されており、コイルバネ90の他方の端部は、弁軸53の軸部531のうち、凸部532より開方向の側に位置する部分に嵌っている。従って、開閉部材5は、ハウジング2を構成するハウジング本体20と上ケース31とによる弁体51の外周部(環状部分515)の保持、および付勢部材9による閉方向に向けての付勢により、弁軸53の軸線方向Lに移動可能な状態にハウジング2に支持され、弁軸53は、開方向および閉方向に延在する軸線に平行な姿勢で支持されている。
【0038】
(弁軸駆動部6の構成)
図1、図2、図3、図4および図5において、本形態のバルブ装置1において、弁軸駆動部6は、駆動源60としてのモータと、駆動源60からの駆動力を弁軸53に伝達する伝達機構61とを備えている。駆動源60は、ハウジング本体20の側面に固定されており、伝達機構61は、ハウジング本体20と上カバー26との間に形成された空間に配置されている。
【0039】
図5に示すように、本形態において、駆動源60はステッピングモータであり、伝達機構61は、駆動源60から出力を伝達する歯車機構65と、歯車機構65から出力された回転駆動力を伝達するカム機構7と、カム機構7によって変位する揺動部材8とを備えている。歯車機構65は、駆動源60としてのモータの出力軸に固着されたピニオン651と、ピニオン651に噛合する大径歯車652を備えた複合歯車655と、複合歯車655の小径歯車653に噛合する大径歯車656とを備えており、減速機構として構成されている。
【0040】
カム機構7は、カム部材として、大径歯車656が固着されたカムシャフト70を有している。カムシャフト70は、駆動源60により回転駆動される軸部71と、かかる軸部71の側面から外周側に突出したカム部72とを備えており、両端側が各々、軸受79によってハウジング本体20に回転可能に支持されている。本形態において、カム部72は、軸部71の長さ方向で離間する3個所に設けられており、3つのカム部72は、軸部71に対して互いに異なる角度位置に設けられている。なお、本形態において、カムシャフト70は、軸体73に対して複数の円筒部材76を取り付けた構造になっている。このため、軸部71は、円筒部材76の円筒状胴部760と軸体73とによって形成され、カム部72は、円筒部材76から外周側に張り出す板状部からなる。ここで、複数の円筒部材76はいずれも同一構造の部材であるため、軸体73に対する固定角度を相違させることにより、カム部72を所定の角度位置に設けることができる。
【0041】
伝達機構61において、揺動部材8は、弁軸駆動部6における出力部材として用いられており、ハウジング本体20に固定された支軸89が貫通する軸穴85が形成された筒部81と、筒部81から一方側に突出した板状凸部82と、板状凸部82とは反対側に突出した出力部83とを備えている。支軸89は、開閉部材5の開方向および閉方向(弁軸53の軸線方向)と交差する方向に軸線が向くように配置されており、揺動部材8は、支軸89の軸線周りに回転可能である。
【0042】
出力部83は、幅方向の中央に形成されたスリット84によって2つに分割されており、かかるスリット84内に、開閉部材5の弁軸53が配置される。また、弁軸53の凸部532の両面のうち、出力部83の端部と対向する閉方向側の面は、出力部83から駆動力が伝達される被伝達部533として利用され、出力部83において、被伝達部533と対向する面側は断面円形に突出した当接部830になっている。
【0043】
なお、図1および図3に示すように、カムシャフト70の先端部には、カムシャフト70の回転位置や回転数等を検出する回転検出装置68が設けられている。回転検出装置68を設けるにあたって、本形態では、カムシャフト70の先端部には磁石ホルダ681を介して永久磁石(図示せず)が固定されており、かかる永久磁石に対向するように、ホール素子等の感磁素子が実装されたセンサ基板682が配置されている。従って、カムシャフト70が回転すると、磁石が回転するので、感磁素子からの出力信号によれば、カムシャフト70の回転角度や回転数等を検出することができる。
【0044】
(開閉動作)
図6は、本発明を適用したバルブ装置1を、弁体51を通る位置で切断したときの断面図であり、図6(a)、(b)は、流路310を閉状態にしたときの断面図、および流路310を開状態にしたときの断面図である。本形態のバルブ装置1において、流体の供給を制御する際、駆動源60であるモータが回転し、モータの出力は、伝達機構61の歯車機構65で減速された後、カム機構7のカムシャフト70に伝達される。ここで、カムシャフト70のカム部72が揺動部材8に当接するまでの間、開閉部材5は、図6(a)に示す閉位置にある。かかる状態では、弁体51の環状突起518がシール面314に当接することにより、流体入口11側の貫通穴312と流体出口12側の貫通穴311とが遮断される。この状態は、付勢部材9の付勢力によって保持される。
【0045】
そして、図6(b)に示すように、カムシャフト70が時計回りCWに回転してカム部72が揺動部材8の板状凸部82を押し下げると、揺動部材8が支軸89を中心に反時計回りCCWに回転する。その結果、出力部83の先端部が、開閉部材5の弁軸53の凸部532において閉方向に位置する面(被伝達部533)に当接し、付勢部材9の付勢力に抗して、弁軸53を開方向に押圧する。その際、揺動部材8の出力部83に設けた当接部830は、凸部532の被伝達部533に摺動しながら当接し、弁軸53を開方向に押圧する。従って、開閉部材5は開方向に変位し、環状突起518がシール面314から離れるので、流体入口11側の貫通穴312と流体出口12側の貫通穴311とが連通する状態となる。それ故、流体入口11から流入した流体は、流体出口12から流出することになる。
【0046】
その間もカムシャフト70は回転し続け、揺動部材8が開閉部材5を開方向に変位させている間、開状態が保持される。そして、カムシャフト70のカム部72が揺動部材8の板状凸部82から離間すると、開閉部材5は、付勢部材9の付勢力によって閉方向に変位する。その際、弁軸53の凸部532の被伝達部533によって揺動部材8の出力部83に設けた当接部830が押し下げられる。より具体的には、被伝達部533と当接部830とが摺動しながら、被伝達部533によって揺動部材8の当接部830が押し下げられる。その結果、揺動部材8は、時計方向CWに回転する。従って、開閉部材5には大きな負荷が加わらない。それ故、開閉部材5は、円柱状突起261、付勢部材9、弁軸53、および弁体51の外周部(環状部分515)によって、姿勢が保持された状態にある。このため、開閉部材5は、傾くことなく閉方向に安定して動作する。よって、弁体51の環状突起518は、シール面314に適正に当接するので、流体入口11側の貫通穴312と流体出口12側の貫通穴311とを確実に遮断することができる。
【0047】
かかる開閉動作は、バルブ装置1に設けた3つの開閉部材5において、各々、カム部72の位置によって規定されたタイミングで実行される。
【0048】
(本形態の主な効果)
このように本形態のバルブ装置1において、開閉部材5は、流路310を開閉する可撓性の弁体51、および弁体51の中央から閉方向および開方向のうちの開方向(一方方向)に延在する弁軸53を備えており、弁軸53は、付勢部材9によって閉方向および開方向のうちの閉方向(他方方向)に付勢されている。ここで、弁体51の外周部(環状部分515)はハウジング2(支持体)に保持されており、開閉部材5は、ハウジング2による弁体51の外周部(環状部分515)の保持、および付勢部材9による閉方向に向けての付勢により、弁軸53の軸線方向Lに移動可能にハウジング2に支持されている。このため、開閉部材5に対してスライド機構を設ける必要がない。それ故、スライド機構での摺動抵抗に起因する余計な負荷の発生や、スライド機構での引っ掛かり等に起因する不具合の発生を防止することができる。
【0049】
また、弁軸駆動部6は、駆動源60および伝達機構61を有し、伝達機構61は、開閉部材5を開方向に向けて駆動する際、弁軸53において閉方向に向く被伝達部533に当接した状態で摺動しながら開閉部材5を開方向に向けて押圧する揺動部材8(出力部材)を備えている。このため、伝達機構61の出力部材と開閉部材5とを連結しなくても開閉部材5を開方向に駆動することができる。それ故、開閉部材5が閉方向に変位する際、出力部材(揺動部材8)から開閉部材5に大きな負荷が加わらないので、付勢部材9の付勢力によって開閉部材5を閉方向に変位させることができる。
【0050】
また、本形態において、伝達機構61には、駆動源60により駆動されるカムシャフト70(カム部材)を備えたカム機構7を有しているため、カム形状によって開閉部材5を任意のパターンで変位させることができる。また、本形態では、カム部材として、軸部71から外周側にカム部72が突出したカムシャフト70を用いたため、簡素な構成で複数の開閉部材5を駆動することができる。それ故、複数の開閉部材5はいずれも、共通の駆動源60により、複数の流路310の開閉を制御することができる。
【0051】
また、伝達機構61は、出力部材として、弁軸53の軸線方向に対して交差する軸線周りに揺動可能にハウジング2に支持された揺動部材8を備え、弁軸駆動部6からの駆動力は、カムシャフト70に従動して揺動部材8が揺動することにより弁軸53の被伝達部533に伝達される。このため、カムによって弁軸53を直接、軸線方向に押圧する場合に比して、弁軸53に対して軸線方向Lに沿う方向の力を加えることができる。従って、開閉部材5を開方向に押圧する際、弁軸53が傾かないので、開閉部材5を適正な姿勢で変位させることができる。
【0052】
また、弁軸53は、被伝達部533をもって軸線方向に対して交差する方向に突出した凸部532を備え、付勢部材9は、凸部532において被伝達部533とは反対側(開方向側)に位置する面に当接して弁軸53を閉方向に向けて付勢している。このため、弁軸53に対して、簡素な構成で、付勢部材9による付勢力および弁軸駆動部6による駆動力を印加することができる。
【0053】
しかも、付勢部材9は、弁軸53に対して同軸状に配置されたコイルバネ90であるため、付勢部材9によって弁軸53を付勢する構成を採用した際に弁軸53が傾かないので、開閉部材5を適正な姿勢で変位させることができる。すなわち、弁軸53は、付勢部材9(コイルバネ90)の付勢力、およびハウジング2を構成するハウジング本体20と上ケース31とによる弁体51の外周部(環状部分515)の保持によって調芯されているため、弁軸53の周りをガイド部材によってガイドしなくても、軸方向に移動可能である。
【0054】
さらに、本形態では、揺動部材8の出力部83は、スリット84によって2つに分割されており、かかるスリット84内に開閉部材5の弁軸53が配置される。このため、弁軸53において両側に設けられた2つの被伝達部533が各々、出力部83でバランスよく押圧されるので、開閉部材5は安定した動作を行う。
【0055】
また、揺動部材8の出力部83は、弁軸53の中心軸線に近い位置を押圧するため、揺動部材8が円弧動作を行った際に力を加える方向と開閉部材5が移動する方向との間に多少の差があっても、かかる差は当接部830によって吸収することができるので、弁軸53に対して概ね直線動作を行わせることができる。
【0056】
[他の実施形態]
上記実施形態では、開閉部材5が複数設けられているバルブ装置1に本発明を適用したが、開閉部材5が1つだけ設けられているバルブ装置1に本発明を適用してもよい。
【0057】
上記実施形態では、付勢部材9が開閉部材5を閉方向に付勢し、弁軸駆動部6が弁軸53を開方向に押圧する構成であったが、付勢部材9が開閉部材5を開方向に付勢し、弁軸駆動部6が弁軸53を閉方向に押圧するバルブ装置1に本発明を適用してもよい。
【0058】
上記実施形態では、カム部72の動作を揺動部材8を介して開閉部材5に伝達したが、カム部72によって開閉部材5を直接、駆動してもよい。また、上記実施の形態では、カムシャフト70が1回転する間に開閉部材5が開閉動作を1回行う構成であったが、周方向の複数個所にカム部72を設け、カムシャフト70が1回転する間に開閉部材5が開閉動作を複数回行う構成を採用してもよい。また、上記実施の形態では、カム部72が板状であったが、カム部72の断面形状を、例えば三角形等に変更して、開閉部材5の移動速度や変位量を制御してもよい。
【0059】
上記実施形態では、共通の液体を分配するバルブ装置1に本発明を適用したが、複数の液体をある比率で混合するバルブ装置に本発明を適用してもよい。いずれの場合も、流入側の圧力については、流出側の圧力より高く設定することになる。
【0060】
上記実施形態では、揺動部材8において回転中心からみて力点までの寸法と作用点までの寸法が概ね2:1であったが、軸からの長さを変えることで、開閉部材5のストロークを調整してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1・・バルブ装置
2・・ハウジング(支持体)
5・・開閉部材
6・・弁軸駆動部
7・・カム機構
8・・揺動部材(出力部材)
9・・付勢部材
51・・弁体
53・・弁軸
60・・駆動源
61・・伝達機構
70・・カムシャフト
310・・流路
515・・弁体の環状部分(外周部)
533・・弁軸の被伝達部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を開閉する可撓性の弁体、および該弁体の中央から閉方向および開方向のうちの一方方向に延在する弁軸を備えた開閉部材と、
該弁軸を閉方向および開方向のうちの他方方向に付勢する付勢部材と、
前記開閉部材を前記一方方向側に向けて駆動する際に前記弁軸に当接して前記開閉部材を前記一方方向に押圧する弁軸駆動部と、
前記開閉部材、前記付勢部材および前記弁軸駆動部を支持する支持体と、
を有し、
前記開閉部材は、前記支持体による前記弁体の外周部の保持、および前記付勢部材による前記他方方向に向けての付勢により、前記弁軸の軸線方向に移動可能に前記支持体に支持されていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
前記弁軸駆動部は、駆動源、および該駆動源からの駆動力を前記弁軸に伝達する伝達機構と、を有し、
前記伝達機構は、前記開閉部材を前記一方方向に向けて駆動する際、前記弁軸において前記他方方向に向く被伝達部に当接した状態で摺動しながら当該開閉部材を前記一方方向に向けて押圧する出力部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記伝達機構は、前記駆動源により駆動されるカム部材を備えたカム機構を有していることを特徴とする請求項2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記伝達機構は、前記出力部材として、前記弁軸の軸線方向に対して交差する軸線周りに揺動可能に前記支持体に支持された揺動部材を備え、
前記弁軸駆動部からの駆動力は、前記カム部材に従動して前記揺動部材が揺動することにより前記被伝達部に伝達されることを特徴とする請求項3に記載のバルブ装置。
【請求項5】
前記弁軸は、前記被伝達部をもって前記軸線方向に対して交差する方向に突出した凸部を備え、
前記付勢部材は、前記凸部において前記一方方向に位置する面に当接して当該面を前記他方方向に向けて付勢していることを特徴とする請求項3または4に記載のバルブ装置。
【請求項6】
前記開閉部材を複数備え、
当該複数の開閉部材はいずれも、共通の前記駆動源により駆動されることを特徴とする請求項3乃至5の何れか一項に記載のバルブ装置。
【請求項7】
前記カム部材は、前記駆動源により回転駆動される軸部から外周側にカム部が突出したカムシャフトであることを特徴とする請求項6に記載のバルブ装置。
【請求項8】
前記付勢部材は、前記弁軸に対して同軸状に配置されたコイルバネであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載のバルブ装置。
【請求項9】
前記弁体は、ダイヤフラム弁であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載のバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−225499(P2012−225499A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96466(P2011−96466)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】