説明

バンドパスフィルタ

【課題】 共振電極対の数を減らして、共振電極対によって発生する電磁界が他の電極に与える影響を低減する。
【解決手段】 バンドパスフィルタは、入力電極および出力電極と、第1基準電極および第2基準電極と、入力電極に電気的に接続された第1共振電極および第1容量電極と、出力電極に電気的に接続された第2共振電極および第2容量電極と、入力電極に電気的に接続され、第2容量電極および第1基準電極に対向する第3容量電極と、出力電極に電気的に接続され、第1容量電極および第2基準電極に対向する第4容量電極とを備える。第3容量電極は、入力電極との間のインダクタンスが、入力電極と第1容量電極との間のインダクタンスよりも大きくなるように設けられ、第4容量電極は、出力電極との間のインダクタンスが、出力電極と第2容量電極との間のインダクタンスよりも大きくなるように設けられる。第1共振電極および第2共振電極は、第1誘電体層上に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの周波数帯域の信号を通過させるデュアルモードのバンドパスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デュアルモードのバンドパスフィルタ(以下、「デュアルバンドパスフィルタ」という。)は、通過帯域が異なる2つのバンドパスフィルタを並列に接続することによって構成されている。通常、単一の通過帯域を有するバンドパスフィルタを基板に形成する場合、誘電体層上に2つの共振電極からなる共振電極対を設ける必要がある。よって、デュアルバンドパスフィルタを基板に形成する場合には、2組の共振電極対が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−70201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、共振電極対は、2つの共振電極が電磁結合することによって動作するため、共振電極対の周囲に電磁界が生じ、基板における他の電極に流れる信号に悪影響を及ぼす可能性がある。これは、共振電極対の数が増えるほど、問題となる。
【0005】
一方、この電磁界による影響を低減するために、他の電極の配置等に工夫をすること、および共振電極対の周囲に接地電極を配置することも考えられるが、この場合には基板が大型化してしまうという問題がある。
【0006】
よって、基板をできるだけ大型化せずに、共振電極対による電磁界の影響を低減することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によるバンドパスフィルタは、入力された高周波信号に対し、2つの周波数帯域の信号を通過させて出力するバンドパスフィルタであって、入力電極および出力電極と、第1基準電極および第2基準電極と、前記の入力電極に電気的に接続された第1共振電極および第1容量電極と、前記の出力電極に電気的に接続された第2共振電極および第2容量電極と、前記の入力電極に電気的に接続され、前記の第2容量電極および前記の第1基準電極に対向する第3容量電極と、前記の出力電極に電気的に接続され、前記の第1容量電極および前記の第2基準電極に対向する第4容量電極とを備える。また、前記の第3容量電極は、前記の入力電極との間のインダクタンスが、前記の入力電極と前記の第1容量電極との間のインダクタンスよりも大きくなるように設けられ、前記の第4容量電極は、前記の出力電極との間のインダクタンスが、前記の出力電極と前記の第2容量電極との間のインダクタンスよりも大きくなるように設けられる。前記の第1共振電極および前記の第2共振電極は、第1誘電体層上に設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によるバンドパスフィルタによれば、共振電極対の数を減らすことができ、その結果、共振電極対によって発生する電磁界が他の電極に流れる信号に与える影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態によるデュアルバンドパスフィルタの模式的な回路図である。
【図2】図1のデュアルバンドパスフィルタを基板に形成した場合のフィルタ装置の構成例を示す模式的な分解斜視図である。
【図3】図2のフィルタ装置の透過特性を示すグラフである。
【図4】第2の実施の形態によるデュアルバンドパスフィルタを基板に形成したフィルタ装置の構成例を示す模式的な分解斜視図である。
【図5】図4のフィルタ装置の透過特性を示すグラフである。
【図6】図4のフィルタ装置の変形例を示す図である。
【図7】第3の実施の形態によるデュアルバンドパスフィルタの模式的な回路図である。
【図8】第3の実施の形態によるバンドパスフィルタを基板に形成したフィルタ装置の構成例を示す模式的な分解斜視図である。
【図9】図8のフィルタ装置の信号の透過特性を示すグラフである。
【図10】第4の実施の形態によるバンドパスフィルタを基板に形成したフィルタ装置の構成例を示す模式的な分解斜視図である。
【図11】図10のフィルタ装置の信号の透過特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態によるデュアルバンドパスフィルタの模式的な回路図である。図1に示すように、デュアルバンドパスフィルタは、入力端子Tinと、出力端子Toutと、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に接続された第1信号回路部P1および第2信号回路部P2とを有する。第1信号回路部P1と第2信号回路部P2は、並列に接続されている。
【0012】
第1信号回路部P1は、共振器F1を有する。共振器F1は、インダクタL1とキャパシタC1とを有する。インダクタL1とキャパシタC1は、並列に接続される。インダクタL1の一方端とキャパシタC1の一方端は互いに接続され、インダクタL1の他方端とキャパシタC1の他方端は、接地されている。
【0013】
第1信号回路部P1は、入力端子Tinと共振器F1との間にインダクタL2を有し、F1と出力端子Toutとの間にキャパシタC2を有する。具体的には、インダクタL2は、その一端が入力端子Tinに接続され、他端がインダクタL1とキャパシタC1の接続部に接続される。また、キャパシタC2は、その一端がインダクタL1とキャパシタC1の接続部に接続され、他端が出力端子Toutに接続される。
【0014】
第2信号回路部P2は、共振器F2を有する。共振器F2は、インダクタL3とキャパシタC3とを有する。インダクタL3とキャパシタC3は、並列に接続される。インダクタL3の一方端とキャパシタC3の一方端は互いに接続され、インダクタL3の他方端とキャパシタC3の他方端は、接地されている。
【0015】
第2信号回路部P2は、入力端子Tinと共振器F2との間にキャパシタC4を有し、共振器F2と出力端子Toutとの間にインダクタL4を有する。具体的には、キャパシタC4は、その一端が入力端子Tinに接続され、他端がインダクタL3とキャパシタC3の接続部に接続される。また、インダクタL4は、その一端がインダクタL3とキャパシタC3の接続部に接続され、他端が出力端子Toutに接続される。
【0016】
図2は、図1のデュアルバンドパスフィルタを基板に形成した場合のフィルタ装置の構成例を示す模式的な分解斜視図である。図2に示すように、フィルタ装置10は、誘電体基板11を有する。誘電体基板11は、複数の誘電体層11a,11b,11c,11dが順に積層されてなる。フィルタ装置10は、誘電体層11aの下面に設けられた基準電極12bと、誘電体層11dの上面に設けられた基準電極12aとを有する。これらの基準電極12a,12bは、例えば接地電位が供給される電極である。
【0017】
また、誘電体層11dの上面に設けられた基準電極12aは、開口を有し、その開口に、図1の入力端子Tinおよび出力端子Toutに対応する入力電極13aおよび出力電極13bが設けられている。
【0018】
誘電体基板11の内部には、導体の線路パターン(ストリップライン)が形成される。これらの線路パターンにより、図1の回路におけるインダクタおよびキャパシタ等を構成する電極が形成されている。具体的に、誘電体層11cと誘電体層11dとの間には、共振器F1を構成する共振電極14、およびインダクタL2を構成するインダクタ用電極15が設けられている。共振電極14の一端とインダクタ用電極15の一端は接続されている。
【0019】
また、同じく誘電体層11cと誘電体層11dとの間には、共振器F2を構成する共振電極16、およびインダクタL4を構成するインダクタ用電極17が設けられている。共振電極14の一端とインダクタ用電極17の一端は接続されている。ここで、共振電極14の開放端および共振電極16の開放端が対向している。
【0020】
図2のフィルタ装置10において、共振電極14と共振電極16、およびインダクタ用電極15とインダクタ用電極17は、誘電体基板11を平面視したときに、誘電体基板11の中心点に関して点対称に配置されている。例えば、誘電体基板11を平面視した場合の形状が長方形であるとき、誘電体基板11の中心点とは、その長方形の2本の対角線が交わる点である。
【0021】
誘電体層11bと誘電体層11cとの間には、キャパシタ用電極18,19が設けられている。キャパシタ用電極18は、一点鎖線A1で示すように、その一端が、誘電体基板11の内部に設けられた貫通導体(図示せず)を介して、インダクタ用電極15および入力電極13aに電気的に接続される。キャパシタ用電極19は、一点鎖線A2で示すように、その一端が、誘電体基板11の内部に設けられた貫通導体(図示せず)を介して、インダクタ用電極17および出力電極13bに電気的に接続される。
【0022】
誘電体層11aと誘電体層11bとの間には、キャパシタ用電極20,21が設けられている。キャパシタ用電極21は、一点鎖線A3で示すように、その一端が誘電体基板11の内部に設けられた貫通導体(図示せず)を介して、共振電極14に電気的に接続される。また、キャパシタ用電極20は、一点鎖線A4で示すように、その一端が誘電体基板11の内部に設けられた貫通導体(図示せず)を介して、共振電極16に電気的に接続される。
【0023】
キャパシタ用電極18は、キャパシタ用電極20に電磁的に結合されるように、キャパシタ用電極20に対向させて設けられる。キャパシタ用電極19は、キャパシタ用電極21に電磁的に結合されるように、キャパシタ用電極21に対向させて設けられる。
【0024】
キャパシタ用電極21とキャパシタ用電極19との間に形成される容量は、図1のキャパシタC2の容量を構成する。また、キャパシタ用電極21と基準電極12bとの間に形成される容量は、図1のキャパシタC1の容量を構成する。
【0025】
また、キャパシタ用電極20とキャパシタ用電極18との間に形成される容量は、図1のキャパシタC4の容量を構成する。また、キャパシタ用電極20と基準電極12bとの間に形成される容量は、図1のキャパシタC3の容量を構成する。
【0026】
なお、ここでは、キャパシタ用電極21とキャパシタ用電極19とを対向させているが、これに限らず、キャパシタ用電極21に電気的に接続された新たなキャパシタ用電極(以下、「第1電極」ともいう。)を追加して、この第1電極とキャパシタ用電極19とを対向させてもよい。この場合、キャパシタ用電極19および第1電極によって、キャパシタC2を構成することができる。
【0027】
また、キャパシタ用電極20とキャパシタ用電極18とを対向させているが、これに限らず、キャパシタ用電極20に電気的に接続された新たなキャパシタ用電極(以下、「第2電極」ともいう。)を追加して、この第2電極とキャパシタ用電極20とを対向させてもよい。この場合、キャパシタ用電極18および第2電極によって、キャパシタC4を構成することができる。
【0028】
図3は、フィルタ装置10に入力された信号に対する透過特性を示すグラフである。図3に示すように、フィルタ装置10は、2つの周波数帯域を通過させるデュアルバンドパスフィルタとして作用する。
【0029】
ここで、インダクタ用電極15,17となるストリップラインの長さを1.4mm,幅を0.075mmとした。また、共振電極14,16となるストリップラインの長さを1.0mm、幅を0.075mmとした。さらに、キャパシタC2,C4の容量を1.0pFとし、キャパシタC1,C3の容量を2.3pFとした。
【0030】
上述のデュアルバンドパスフィルタは、入力端子Tinと出力端子Toutとの間で2つの信号経路を有する。高周波信号が入力端子Tinに入力されると、一部は第1信号回路部P1を通過し、他の一部は第2信号回路部P2を通過する。ここで、第1信号回路部P1の出力信号と第2信号回路部P2の出力信号は、2つの周波数f1,f2(以下、「第1の周波数f1」および「第2の周波数f2」ともいう。)において位相が一致する。言い換えると、第1信号回路部P1および第2信号回路部P2の出力信号は、上記2つの周波数f1,f2において、その位相差が0度になる。これにより、第1の周波数f1および第2の周波数f2において、第1信号回路部P1および第2信号回路部P2の出力信号は、打ち消しあうことなく合成され、この合成信号が出力端子Toutから出力される。
【0031】
そして、上記周波数f1,f2を中心周波数として帯域幅をもった2つの周波数帯域(以下、2つの周波数帯域をそれぞれ「第1の周波数帯域」および「第2の周波数帯域」ともいう。)が形成される。すなわち、第1および第2の周波数帯域において、第1信号回路部P1および第2信号回路部P2の出力信号の位相差は、小さく所定の範囲にある。これらの第1および第2の周波数帯域がフィルタの通過帯域となる。
【0032】
なお、図3のグラフにおいて、減衰極が発生する周波数(約6.2GHz)は、第1信号回路部P1および第2信号回路部P2の出力信号が、出力端子Toutにおいて正負逆位相になる、すなわち位相差が180度となる周波数である。
【0033】
また、第1の周波数帯域の中心周波数f1,および第2の周波数帯域の中心周波数f2、第1の周波数帯域の帯域幅、および第2の周波数帯域の帯域幅などの、図3のグラフで示される周波数特性は、誘電体基板11におけるストリップラインの幅および長さ等を変化させて、図1に示した回路のキャパシタ、およびインダクタ等の各構成要素の特性を変化させることにより調整できる。
【0034】
以上のように、フィルタ装置10は、入力端子Tinに入力された高周波信号に対して、2つの周波数帯域を通過させるデュアルバンドパスフィルタとして作用する。
【0035】
本実施の形態によるデュアルバンドパスフィルタによれば、基板に形成した場合に、用いる共振電極対を1組にすることができ、その結果、共振電極対によって発生する電磁界が他の電極に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0036】
(第2の実施の形態)
図4は、図1のバンドパスフィルタを基板に形成した場合のフィルタ装置の他の構成例を示す模式的な分解斜視図である。本実施の形態によるフィルタ装置30が、フィルタ装置10と異なる点は、共振器F1,F2がコムライン結合をしている点である。
【0037】
図4に示すように、フィルタ装置30は、誘電体基板31を有する。誘電体基板31は、複数の誘電体層31a,31b,31c,31d,31e,31fが順に積層されてなる。フィルタ装置30は、誘電体層31fの上面に設けられた基準電極32aと、誘電体層31aの下面に設けられた基準電極32bとを有する。これらの基準電極32a,32bは、例えば接地電位が供給される電極である。
【0038】
また、誘電体層31fの上面に設けられた基準電極32aは、開口を有し、その開口に、図1の入力端子Tinおよび出力端子Toutに対応する入力電極33aおよび出力電極33bが設けられている。
【0039】
誘電体層31eと誘電体層31fとの間には、インダクタL4を構成するインダクタ用電極35が設けられている。インダクタ用電極35は、一点鎖線B2で示すように、その一端が、誘電体基板31の内部に設けられた貫通導体(図示せず)を介して、出力電極33bに電気的に接続される。
【0040】
また、誘電体層31dと誘電体層31eとの間には、共振器F1を構成する共振電極34と、共振器F2を構成する共振電極36が設けられている。さらに、誘電層31cと誘電体層31dとの間には、インダクタL2を構成するインダクタ用電極37が設けられている。インダクタ用電極37は、一点鎖線B1で示すように、その一端が、誘電体基板31の内部に設けられた貫通導体(図示せず)を介して、入力電極33aに電気的に接続される。
【0041】
誘電体層31bと誘電体層31cとの間には、キャパシタ用電極38,39が設けられている。キャパシタ用電極39は、一点鎖線B3で示すように、誘電体基板31の内部に設けられた貫通導体(図示せず)を介して、インダクタ用電極37に電気的に接続される。また、キャパシタ用電極38は、一点鎖線B4で示すように、誘電体基板31の内部に設けられた貫通導体(図示せず)を介して、インダクタ用電極35に電気的に接続される。
【0042】
誘電体層31aと誘電体層31bとの間には、キャパシタ用電極40,41が設けられている。キャパシタ用電極41は、一点鎖線B5で示すように、その一端が誘電体基板11の内部に設けられた貫通導体(図示せず)を介して、共振電極36およびインダクタ用電極35の他端に電気的に接続される。また、キャパシタ用電極40は、一点鎖線B6で示すように、その一端が誘電体基板31の内部に設けられた貫通導体(図示せず)を介して、共振電極34およびインダクタ用電極37の他端に電気的に接続される。
【0043】
キャパシタ用電極40は、キャパシタ用電極38および基準電極32bに電磁的に結合されるように、キャパシタ用電極38および基準電極32bに対向させて設けられる。また、キャパシタ用電極41は、キャパシタ用電極39および基準電極32bに電磁的に結合されるように、キャパシタ用電極39および基準電極32bに対向させて設けられる。
【0044】
キャパシタ用電極40と基準電極32bとの間に形成される容量は、図1のキャパシタC1の容量を構成する。キャパシタ用電極40とキャパシタ用電極38の間に形成される容量は、図1のキャパシタC2の容量を構成する。
【0045】
また、キャパシタ用電極41と基準電極32bとの間に形成される容量は、図1のキャパシタC3の容量を構成する。キャパシタ用電極41とキャパシタ用電極39との間に形成される容量は、図1のキャパシタC4の容量を構成する。
【0046】
また、点線で囲まれた領域Sに示すように、誘電体層31dに設けられた共振電極34,36は、コムライン結合をしている。ここで、コムライン結合とは、共振電極34,36の互いの開放端同士が対向するとともに、互いに電気的に接続された短絡端同士が対向するように配置され、2つの共振電極34,36が互いに電磁結合されるようにした結合方法である。
【0047】
なお、ここでは、キャパシタ用電極41とキャパシタ用電極39とを対向させているが、これに限らず、キャパシタ用電極41に電気的に接続された新たなキャパシタ用電極(以下、「第3電極」ともいう。)を追加して、この第3電極とキャパシタ用電極39とを対向させてもよい。この場合、キャパシタ用電極39および第3電極によって、キャパシタC4を構成することができる。
【0048】
また、キャパシタ用電極40とキャパシタ用電極38とを対向させているが、これに限らず、キャパシタ用電極40に電気的に接続された新たなキャパシタ用電極(以下、「第4電極」ともいう。)を追加して、この第4電極とキャパシタ用電極38とを対向させてもよい。この場合、キャパシタ用電極38および第4電極によって、キャパシタC2を構成することができる。
【0049】
図5は、フィルタ装置30に入力された信号に対する透過特性を示すグラフである。図5に示すように、フィルタ装置30は、2つの周波数帯域を通過させるデュアルバンドパスフィルタとして作用する。
【0050】
また、フィルタ装置30では、共振器F1,F2がコムライン結合しているので、図5に示すように、低周波帯域側(約1.9GHz)に減衰極が発生する。これにより、バンドパスフィルタが通過させる低域側の周波数帯域(第1の周波数帯域)をより明確にすることができ、第1の周波数帯域よりも低い周波数帯域の信号をより確実に除去することが可能になる。これにより、フィルタ特性を向上させることができる。
【0051】
なお、誘電体基板31に設けられる各電極の形状および配置などは、図4に示したものに限らない。例えば、図6は、図4に示したフィルタ装置30の変形例である。ここで、図4と同一の構成には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0052】
図6に示したフィルタ装置50によれば、出力電極33bを誘電体層31aの下面に設け、共振電極34,36を誘電体層31cと誘電体層31dの間に設けている。また、誘電体層31dと誘電体層31eとの間に、インダクタ用電極37およびキャパシタ用電極38を設け、誘電体層31eと誘電体層31fとの間に、キャパシタ用電極40を設けている。さらに、誘電体層31bと誘電体層31cとの間に、インダクタ用電極35よびキャパシタ用電極39を設け、誘電体層31aと誘電体層31bとの間に、キャパシタ用電極41を設けている。
【0053】
また、誘電体層31dと誘電体層31eとの間には、共振器F1を構成する共振電極34と、共振器F2を構成する共振電極36が設けられている。
【0054】
フィルタ装置50では、一点鎖線B1で示すように、誘電体基板31の内部に設けられた貫通導体(図示せず)を介して、入力電極33aがインダクタ用電極37に電気的に接続され、一点鎖線B2で示すように、出力電極33bが、誘電体基板31の内部に設けられた貫通導体(図示せず)を介して、インダクタ用電極35に電気的に接続される。
【0055】
また、一点鎖線B3で示すように、誘電体基板31の内部に設けられた貫通導体(図示せず)を介して、キャパシタ用電極39がインダクタ用電極37に電気的に接続され、一点鎖線B4で示すように、キャパシタ用電極41が、誘電体基板31の内部に設けられた貫通導体(図示せず)を介して、インダクタ用電極35および共振電極36に電気的に接続される。
【0056】
また、一点鎖線B5で示すように、誘電体基板31の内部に設けられた貫通導体(図示せず)を介して、キャパシタ用電極38がインダクタ用電極35に電気的に接続され、一点鎖線B6で示すように、キャパシタ用電極40が、誘電体基板31の内部に設けられた貫通導体(図示せず)を介して、インダクタ用電極37および共振電極34に電気的に接続される。
【0057】
図6の構成によれば、誘電体層31bと誘電体層31cとの間に設けられた導体パターンの中心に関して、上下の誘電体層間における導体パターンが点対称に形成されているので、図4の構成と比較して、誘電体基板31内部の配線の無駄な引き回しが抑制され、貫通導体の長さを必要最小限に済ませることができる。これにより構成がより簡素になり、製造工程もより容易にすることができる。
【0058】
なお、ここでは、キャパシタ用電極41とキャパシタ用電極39とを対向させているが、これに限らず、キャパシタ用電極41に電気的に接続された新たなキャパシタ用電極(以下、「第5電極」ともいう。)を追加して、この第5電極とキャパシタ用電極39とを対向させてもよい。この場合、キャパシタ用電極39および第5電極によって、キャパシタC4を構成することができる。
【0059】
また、キャパシタ用電極40とキャパシタ用電極38とを対向させているが、これに限らず、キャパシタ用電極40に電気的に接続された新たなキャパシタ用電極(以下、「第6電極」ともいう。)を追加して、この第6電極とキャパシタ用電極38とを対向させてもよい。この場合、キャパシタ用電極38および第6電極によって、キャパシタC2を構成することができる。
【0060】
(第3の実施の形態)
図7は、本発明の第3の実施の形態によるデュアルバンドパスフィルタの模式的な回路図である。本実施の形態によるデュアルバンドパスフィルタが、図1のデュアルバンドパスフィルタと異なる点は、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、第1信号回路部P1および第2信号回路部P2に並列にキャパシタC5が接続されている点である。
【0061】
また、図8は、本実施の形態によるデュアルバンドパスフィルタを基板に形成したフィルタ装置60の構成例を示す模式的な分解斜視図である。本実施の形態によるフィルタ装置60は、フィルタ装置10の誘電体層11cと誘電体層11dとの間に、新たにマルチパス容量電極61を設けた構成をしている。
【0062】
このフィルタ装置60では、マルチパス容量電極61は、キャパシタ用電極18,19との間で容量を形成し、キャパシタC5の容量を構成する。
【0063】
図9は、フィルタ装置60に入力された信号に対する透過特性を示す図である。図9に示すように、フィルタ装置60は、2つの周波数帯域を通過させるデュアルバンドパスフィルタとして作用する。
【0064】
また、第1信号回路部P1および第2信号回路部P2に並列にキャパシタC5を接続したことから、図9に示すように、高周波帯域側(約14.2GHz)に減衰極が発生する。これにより、バンドパスフィルタが通過させる高域側の周波数帯域(第2の周波数帯域)をより明確にすることができ、第2の周波数帯域よりも高い周波数帯域の信号をより確実に除去することが可能になる。これにより、フィルタ特性を向上させることができる。
【0065】
なお、対応するキャパシタ用電極18,19は、同一の形状で、かつ同一の誘電体層上に設けられることが好ましい。このような構成では、例えば、キャパシタ用電極18,19が設けられた誘電体層11bの厚みがばらついた場合でも、キャパシタ用電極18と他の電極とで形成する第1容量と、キャパシタ用電極19と他の電極とで形成する第2容量とが同じようにばらつくことから、第1容量と第2容量との間の誤差が大きくならずにすむという利点がある。これは、キャパシタ用電極20,21についても同様に当てはまる。また、実施の形態1において図2で示したフィルタ装置10においても、同様に当てはまる。
【0066】
(第4の実施の形態)
図10は、図7のバンドパスフィルタを基板に形成した場合のフィルタ装置の他の構成例を示す模式的な分解斜視図である。本実施の形態によるフィルタ装置80は、フィルタ装置30の誘電体層31bと誘電体層31cとの間に、新たに誘電体層82を設け、その誘電体層82と誘電体層31cとの間にマルチパス容量電極83を設けた構成をしている。
【0067】
このフィルタ装置80において、マルチパス容量電極83は、キャパシタ用電極38,39との間で容量を形成し、キャパシタC5の容量を構成する。
【0068】
図11は、フィルタ装置80に入力された信号に対する透過特性を示す図である。図11に示すように、フィルタ装置80は、2つの周波数帯域を通過させるデュアルバンドパスフィルタとして作用する
また、フィルタ装置80では、共振器をコムライン結合しており、かつ第1信号回路部P1および第2信号回路部P2に並列にキャパシタC5を接続したことから、図11に示すように、低周波帯域側および高周波帯域側の両方(1.7GHz,12.9GHz)で減衰極が発生する。これにより、バンドパスフィルタが通過させる低域側および高域側の周波数帯域(第1および第2の周波数帯域)をより明確にすることができ、第1の周波数帯域よりも低い周波数帯域の信号、および第2の周波数帯域よりも高い周波数帯域の信号をより確実に除去することが可能になる。これにより、フィルタ特性を向上させることができる。
【0069】
なお、対応するキャパシタ用電極38,39は、同一の形状で、かつ同一の誘電体層上に設けられることが好ましい。このような構成では、例えば、キャパシタ用電極38,39が設けられた誘電体層31bの厚みがばらついた場合でも、キャパシタ用電極38と他の電極とで形成する第1容量と、キャパシタ用電極39と他の電極とで形成する第2容量とが同じようにばらつくことから、第1容量と第2容量との間の誤差が大きくならずにすむという利点がある。これは、キャパシタ用電極40,41についても同様の説明が当てはまる。また、第2の実施の形態において、図4で示したフィルタ装置30についても、同様に当てはまる。
【符号の説明】
【0070】
10 フィルタ装置
11 誘電体基板
12 基準電極
13a 入力電極
13b 出力電極
14,16 共振電極
15,17 インダクタ用電極
18,19,20,21 キャパシタ用電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された高周波信号に対し、2つの周波数帯域の信号を通過させて出力するバンドパスフィルタであって、
入力電極および出力電極と、
第1基準電極および第2基準電極と、
前記入力電極に電気的に接続された第1共振電極および第1容量電極と、
前記出力電極に電気的に接続された第2共振電極および第2容量電極と、
前記入力電極に電気的に接続され、前記第2容量電極および前記第1基準電極に対向する第3容量電極と、
前記出力電極に電気的に接続され、前記第1容量電極および前記第2基準電極に対向する第4容量電極と
を備え、
前記第3容量電極は、前記入力電極との間のインダクタンスが、前記入力電極と前記第1容量電極との間のインダクタンスよりも大きくなるように配置され、
前記第4容量電極は、前記出力電極との間のインダクタンスが、前記出力電極と前記第2容量電極との間のインダクタンスよりも大きくなるように配置され、
前記第1共振電極および前記第2共振電極は、第1誘電体層上に設けられているバンドパスフィルタ。
【請求項2】
前記第1共振電極と前記第2共振電極は、コムライン結合をしている請求項1に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項3】
前記第1容量電極および前記第4容量電極は、前記第1誘電体層の上方および下方のいずれか一方に位置し、
前記第2容量電極および前記第3容量電極は、前記第1誘電体層の上方および下方の前記一方に位置する請求項1又は請求項2に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項4】
前記第1容量電極および前記第4容量電極は、前記第1誘電体層の上方および下方の一方に位置し、
前記第2容量電極および前記第3容量電極は、前記第1誘電体層の上方および下方の他方に位置する請求項1又は請求項2に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項5】
前記第3容量電極および前記第4容量電極は、第2誘電体層を介して前記第2容量電極および第1容量電極と対向している請求項3に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項6】
前記第1基準電極および前記第2基準電極は、前記第1誘電体層の上方および下方の前記一方に位置し、
前記第3容量電極および前記第4容量電極は、第3誘電体層を介して前記第1基準電極および第2基準電極と対向している請求項3に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項7】
前記第1共振電極および前記第2共振電極は、開放端同士が対向しており、
前記第1共振電極の開放端と前記第2共振電極の開放端との間に位置する第5容量電極を有する請求項1に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項8】
前記第1誘電体層と前記第2誘電体層の間に位置する第6容量電極を有する請求項5に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項9】
前記第1基準電極と前記第2基準電極は、連続して接続されている請求項1に記載のバンドパスフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−239250(P2010−239250A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82802(P2009−82802)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】