バンドルファイバ及び光源装置
【課題】耐熱温度の制限が少なく、しかも製造作業が容易かつ安価に行うことができ、さらに機能の低下をもたらすことがない、バンドルファイバを提供する。
【解決手段】光源からの光を各光ファイバ11で伝送して出射面11Aからまとめて出射するバンドルファイバ10であって、複数本の光ファイバ11の少なくとも一端部側をまとめて金属性のスリーブ12内に挿入するとともにその一端部側を固化してスリーブ12と一体化させた構造を有し、スリーブ12の出射端面12Aからスリーブ12の長手方向に沿った一定長さLの領域に亙り、スリーブ12内部の光ファイバ11間に耐熱性部材である充填金属13が充填されている。
【解決手段】光源からの光を各光ファイバ11で伝送して出射面11Aからまとめて出射するバンドルファイバ10であって、複数本の光ファイバ11の少なくとも一端部側をまとめて金属性のスリーブ12内に挿入するとともにその一端部側を固化してスリーブ12と一体化させた構造を有し、スリーブ12の出射端面12Aからスリーブ12の長手方向に沿った一定長さLの領域に亙り、スリーブ12内部の光ファイバ11間に耐熱性部材である充填金属13が充填されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光などをまとめて伝送させて高パワーの光を出力させることができ、レーザ露光装置やレーザ加工装置などの光伝送手段として用いることができるバンドルファイバ及び光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、光加工技術が普及し、複数の光ファイバを束ねたバンドルファイバを用いて、高出力、高パワー密度の光を伝送する機会が増えている。ところで、従来のバンドルファイバは、一般に、接着剤を使用して光ファイバ同士を固定させている。ところが、加工対象であるワークなどの被照射物からの反射光がバンドルファイバ端面に戻った場合、接着固定用の樹脂が光エネルギーを吸収して発熱する。その結果、樹脂の耐熱温度以上に温度上昇が生じ、樹脂損傷を起こす場合がある。また、被照射物からの反射戻り光がバンドルファイバに入射することにより、接着剤が光化学的な損傷や熱による損傷を受ける虞もある。即ち、接着剤は、通常、光吸収率が高いので光化学的な反応で接着剤自体がぼろぼろに劣化しやすく、しかも、材質的に熱伝導率が低い反面、耐熱性などが低いため、熱による溶解などの虞もある。
【0003】
そこで、このバンドルファイバとして、耐熱温度を向上させるため接着剤を使用しないで、ガラスパイプに光ファイバを束ねて一体化させたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このバンドルファイバは、各光ファイバ素線の一端部側の被覆層を除去した光伝送用ガラスファイバ同士を集めて束ね、この束ねた部分をガラスパイプ内に充填し、そのガラスパイプを加熱して軟化したところで延伸し、全体の溶融一体化を図ったものである。これにより、図13に示すように、パイプ状の石英ガラス層101の内部には、多数のコア102が共通のクラッド103内に整列した状態で形成される。
【特許文献1】特開平7−56027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガラスパイプとバンドルファイバの溶融一体化作業は、制御が困難で、コスト高となっている。即ちこれは、ガラスの長さ方向の温度管理、溶融延伸時のガラス径の管理等が複雑で困難であるからである。また、歩留まりも低い。しかも、温度管理が不十分だと、内部のファイバのコア、クラッド構造が崩れる可能性がある。その場合、光ファイバとしての機能の劣化、例えば、NA(Numerical Aperture;開口数)低下による光漏れ、FFP(Far Field Pattern;遠視野像)の乱れ、散乱光の発生などの不具合をもたらす。
【0005】
以上のように、接着剤で端部を固定したバンドルファイバの場合は、その端面部分での耐熱温度が用いる接着剤に依存しており、バンドルファイバの使用範囲が制限される。一方、接着剤を用いずにガラスパイプとバンドルファイバを溶融一体化した構造の場合は、その一体化作業が困難で、しかもコストが嵩み、さらに光ファイバ機能の低下を招きやすい。
【0006】
本発明の目的は、耐熱温度の制限が少なく、しかも製造作業を容易かつ安価に行うことができ、さらに光ファイバ機能低下を回避可能なバンドルファイバ及び光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にかかるバンドルファイバは、光源からの光を複数本の光ファイバで伝送して出射端面から出射するバンドルファイバであって、複数本の光ファイバをスリーブ内に挿入し、前記スリーブの出射端面から前記スリーブの長手方向に沿った一定長さの領域で、前記光ファイバ間に、金属またはガラスからなる耐熱性部材が充填されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかるバンドルファイバは、前記耐熱性部材は、前記スリーブ内部に複数本の光ファイバを挿入して接着剤で固化した後、前記出射端面から前記光ファイバの長手方向に沿った一定領域まで、前記接着剤を除去後に前記光ファイバ間に充填した金属であってもよい。
【0009】
また、本発明にかかるバンドルファイバは、前記スリーブ内部の前記光ファイバ間に、ダミーファイバを挿入していてもよい。
【0010】
また、本発明にかかるバンドルファイバは、前記スリーブ内部に挿入する前記光ファイバは、外周面に金属のコーティング層を有していてもよい。
【0011】
また、本発明にかかる光源装置は、複数の光源とバンドルファイバとを含む光源装置であって、前記バンドルファイバは、前記複数の光源と一対一に対応し、それぞれの前記光源からの光を一端に入射し他端から出射する複数本の第一の光ファイバと、複数本の第二の光ファイバと、前記複数本の第一の光ファイバの他端部及び前記複数本の第二の光ファイバの一端部が束ねて挿入され、前記バンドルファイバの出射端部を形成するスリーブと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐熱温度の制限が少なく、しかも製造作業が容易かつ安価に行うことができ、さらに光ファイバ機能の低下をもたらすことがない、バンドルファイバを提供できる。
また、本発明の光源装置によれば、スリーブ内に第一の光ファイバとともに配置された第二の光ファイバが、耐熱性部材として機能するため、バンドルファイバの出射端部における耐熱性が良好で、耐熱温度の制限が少ない。また、製造作業が容易かつ安価に行うことができる。さらに、光源の経時劣化や故障による露光量の低下や、必要露光量が増加した際に新たに光源を追加する場合に、第二の光ファイバの他端部側に個別に光源を設けることで、第二の光ファイバを予備用光ファイバとして使用することもできる。これにより、バンドルファイバを新規に交換する手間が省け、修理コストが抑えられる。しかも、第二の光ファイバからの露光のON/OFFを切替えるようにすれば、露光量が調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るバンドルファイバ10を示すものであり、このバンドルファイバ10は、半導体製造用の光源装置の一部、具体的には、光源となる複数の半導体レーザ(LD)52からの出力ピグテールを1本にバンドルして高出力化する光源装置の一部を構成している。
【0014】
バンドルファイバ10には、複数本の光ファイバ11(図2参照)と、これらの光ファイバ11の後述するワーク55と対向配置する出射側の端面(以下、「出射面」とよぶ)11A側を束ねて挿入しこれらを一体化させた金属性のスリーブ12とを備えている。本実施形態のバンドルファイバ10は、光ファイバ11ごとに備えたレンズ53及びコネクタ51を介して、光源である半導体レーザ(LD)52から光(照明光)を光ファイバ11へ取り込み、その後、各光ファイバ11内部を伝送させた後、各光ファイバの出射端面11Aから出射させ、レンズ54を介して被照明物であるワーク55にそれぞれ照射・露光させるように構成する。
【0015】
各光ファイバ11の一例として、石英ガラスなどで形成されたガラスファイバであって大径のコアとクラッド(図示せず)からなるものを用いている。なお、本実施形態のバンドルファイバ10のスリーブ12に収容する光ファイバ11の心数は、例えば20心から100心程度で構成しているが、特にその心数には限定されない。
【0016】
金属性のスリーブ12は、少なくとも出射端部から光ファイバの軸方向に沿った所定長さの部分まで配設するように一定長さを有しており、出射端部から光ファイバの軸方向に沿った所定長さの部分まで複数本の光ファイバ11をまとめて束ねている(若しくは、光ファイバ11の全長に亙りスリーブ12を設けてもよい)。なお、本実施形態のスリーブ12には、ステンレスを用いている。
【0017】
図2(A)、(B)に示すように、この金属スリーブ12内部の光ファイバ11間には、金属性のスリーブ12の出射側の端面(以下、これを「出射端面」とよぶ)12Aから長手方向に沿った所要長さLまでの領域に、耐熱性部材を構成する熱伝導率の高い適宜の金属(以下、「充填金属」とよぶ)13、例えば、アルミニウム、金、銀などが流し込まれて充填されている。充填金属13は、使用する光源の波長に対して、反射率の高い金属を選択して用いることが好ましい。例えば、波長300〜600nm帯であればアルミニウムが、波長800〜1100nm帯であれば金や銀が好適である。この充填金属13は、被照射物であるワーク10の表面で反射して戻る反射光(以下、「戻り光」とよぶ)が受光することにより各種トラブルが発生するのを防止するため、その戻り光を端面で反射させ、再度ワーク55へ送り返して再照射させる。
【0018】
また、この金属性のスリーブ12内部の光ファイバ11同士は、充填金属13で充填されている部分よりも入射端面寄り(図2(B)では出射面11Aから距離L以上離れた左寄り)の領域において、所定の接着剤14、例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂などで一体に固着されている。
【0019】
以上説明してきたように、本実施形態のバンドルファイバ10には、金属スリーブ12内の光ファイバ11間には充填金属13が充填して設けてある。従って、前述の露光装置の一部に本実施形態のバンドルファイバ10を設置し、光源からの照射光をこのバンドルファイバ10で伝搬してワーク55を露光・照射させる際に、ワーク55からの戻り光をバンドルファイバ10の出射端面12Aに受光して熱エネルギーが発生しても、熱伝導率の高い充填金属13がその熱を半径方向に逃がし、金属性のスリーブ12へ伝導させる。その結果、金属性のスリーブ12の外周面から外部へその熱を効果的に放出できる。
【0020】
従って、例えば光ファイバ11の長手方向に沿って接着剤14の充填領域まで熱が伝搬し、接着剤14が溶融するといったトラブルを回避できる。また、光ファイバ11のコア、クラッド構造が崩れて、光ファイバ11としての機能が劣化する、といったトラブルも回避できる。
また、バンドルファイバ10端面の光ファイバ11以外の領域に配する充填金属13の出射側端面は、鏡面加工してあるので、戻り光をワークに向けて反射させ、光エネルギーを加工対象物の方に送り返すことができる。これにより、露光用の光に対する利用効率が高まる。
【0021】
また、前述したように、本実施形態では一例として光ファイバ11を20から100心のもので構成しているが、本発明での光ファイバの設置本数は、本数(心数)が少ない場合、例えば2本(心)のものでもよい。その場合、光ファイバ間の隙間であるスリーブ内の空間スペースが増大することは幾何学的に容易に分かる。従って、2心の場合には、充填金属13の充填量も増大する。その結果、同一スリーブ径でも多心のものに比べ、或いは接着剤のみを充填したものに比べて、金属スリーブ12の半径方向への熱伝搬性が大幅に増大して冷却効果も増大するので、より効果的である。
【0022】
次に、本実施形態に係るバンドルファイバ10の製造方法について説明する。最初に一定長さを有する複数本の光ファイバ11の出射面11Aとなる一端部側を集めて束ねた後に、金属性のスリーブ12にその一端部側を挿入する。次に、その金属製のスリーブ12内の光ファイバ11の間に形成されている隙間に、接着剤14である適宜の樹脂充填する(図3参照)。その後、光ファイバ11の出射面11Aに対応するスリーブ12の出射端面12A側から溶剤を浸漬させてエッチング等を行い、所定長L0だけ光ファイバ11間の接着剤14を浅く除去する。これにより、図4に示すようにスリーブ12内の光ファイバ11の間には、出射端面12Aから所定長さL0の領域に亙って多数の穴(隙間)、つまり空間Sが形成される。次に、その接着剤14を除去した空間Sに、反射率が高く、かつ、耐熱性の充填金属13を流し込んで充填させる。これにより、図5に示すようにスリーブ12の出射端面12A側から所定長L0だけ、光ファイバ11間の隙間に充填金属13が隙間なく充填される。最後に、反射率を高めるために出射端面12Aに鏡面加工を施せば、本実施形態に係るバンドルファイバ10が出来上がる。
【0023】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
図6は本発明の第2の実施形態に係るバンドルファイバ20を示すものであり、このバンドルファイバ20は、第1の実施形態と同様に半導体製造用の光源装置の一部を構成している。
【0024】
本実施形態の光源装置20Aは、複数の光源52とバンドルファイバ20とを含む。
本実施形態のバンドルファイバ20は、複数の光源52と一対一に対応し、それぞれの光源52からの光を一端(コネクタ51側)に入射し他端(スリーブ12側)から出射する複数本の光ファイバ(第一の光ファイバ)11と、これらの光ファイバ11の出射面11A側の端部を束ねて接着剤で接着させて一体化させた金属性のスリーブ12との他に、スリーブ12内部にその一端部を複数本設置した予備用のダミーファイバ(第二の光ファイバ)21(図7ではクロスハッチングで示す)とを備えている。つまり、本実施形態では、バンドルファイバ20の接着剤14の充填部分に、第1の実施形態のバンドルファイバ10には含まれていなかったダミーファイバ21を追加挿入して光ファイバ11と一体に接着させ、出射端面における接着剤14である樹脂の占有面積を減らしている。
【0025】
本実施形態では、金属製のスリーブ12内に、光ファイバ11とともにダミーファイバ21をできるだけ均等配置した状態で配設しており、このスリーブ12の全長に亙り、光ファイバ11とダミーファイバ21とが接着剤14で固化され、スリーブ12に一体に固着される。つまり、本実施形態では、スリーブ12内部の光ファイバ11間の隙間にダミーファイバ21を設置することにより、スリーブ12内でのファイバ設置密度を高めているわけである。なお、スリーブ12内の光ファイバ11とダミーファイバ21の間の隙間には、図2に示すスリーブ12の出射端面12A寄りに充填金属13を充填させた第1の実施形態のものとは異なり、出射端面12A寄りにも、充填金属ではなく接着剤14が充填させて固化させている。
【0026】
ダミーファイバ21には、光ファイバ11と同じガラスを用いており、接着剤14である樹脂に比べると耐熱性がはるかに高い材料で形成している。このように、スリーブ12内部の隙間の一部(第1の実施形態では接着剤14が占有する領域)にダミーファイバ21を設置しているので、第1の実施形態に比べて、スリーブ12の出射端面12Aから露出する接着剤14の占有領域が少なくて済む。
【0027】
従って、本実施形態によれば、このダミーファイバ21を設置したことにより、スリーブ12内での光ファイバ11を押さえ付ける作用が発生して、接着剤14や充填金属13が固化するまでの間、第1の実施形態のときより、スリーブ12内で光ファイバ11同士をさらにしっかりと不動状態に固定することができる。また、接着剤14の設置エリアの一部に、耐熱性が高いガラスで形成されたダミーファイバ21を設けた分だけ耐熱性が向上する。その結果、戻り光を受光することによる温度の上昇が低減し、その温度上昇に起因した端面損傷も発生し難くなる。さらに、ワーク55に対する露光量の調整を行うこともできる。即ち、各ダミーファイバ21の入射端面にコネクタを介して光源となるLDをそれぞれ設け、そのLDのON/OFFを切替えるようにすれば、露光量が調整できる。さらに、光ファイバ11の予備機能、或いは補完機能を付与することもできる。即ち、バンドルファイバ20製造の際に一部の光ファイバ11が折損するなどにより、必要な露光量が得られないような場合には、ダミーファイバ21をその光ファイバ11の代替用にもできる。また、光源52の経時劣化や故障による露光量の低下や、必要露光量が増加した際に新たに光源52を追加する場合に、ダミーファイバ21の他端部側に個別に光源52を設けることで、ダミーファイバ21を予備用光ファイバとしても使用できる。これにより、バンドルファイバ20を新規に交換する手間が省け、修理コストが抑えられる。
【0028】
なお、本実施形態では、出射端面寄りに充填金属を充填させず、全長に亙って接着剤が充填されて固化されているが、図8に示すように、図2に示すスリーブ12の出射端面12A寄りに充填金属13を充填させた第1の実施形態のものと同様に構成してもよい。つまり、出射端面から一定長さの領域に亙り、光ファイバ11とダミーファイバ21(図8ではクロスハッチングで示す)との間の隙間を埋める接着剤14を除去し、そこに充填金属13を充填させてもよい。このようにすれば、さらに耐熱性が向上する。
【0029】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
図9は本発明の第3の実施形態に係るバンドルファイバ30を示すものであり、このバンドルファイバ30は、第1の実施形態と同様に半導体製造用の光源装置の一部を構成している。
【0030】
本実施形態のバンドルファイバ30は、各光ファイバ11の外周面に所定金属でメタルコートされたファイバ(以下、これを「メタルファイバ」とよぶ)31を用いる。また、本実施形態では、スリーブ12内部のメタルファイバ31間の隙間に、第1の実施形態とは異なり、出射端面寄りの領域、つまり出射端面側から一定長さの領域に充填金属を充填させておらず、スリーブ12内にあるメタルファイバ31の全長に亙り接着剤14を充填させてスリーブ12と一体化させた状態で固化させている。
【0031】
このメタルファイバ31は、図10に示すように、クラッド31Aの外周面に、メッキすることができ、かつ熱伝導性の高い金属32、例えば、アルミニウム、金、銀などをコーティングさせている。この金属32は、使用する光源の波長に対して、反射率の高い金属を選択して用いることが好ましい。例えば、波長300〜600nm帯であればアルミニウムが、波長800〜1100nm帯であれば金や銀が好適である。なお、同図中、符号31Bはコアを示す。
【0032】
従って、本実施形態によれば、ワークで反射した戻り光がバンドルファイバ30の出射端面に受光すると、この戻り光を受光することにより熱エネルギーを発生するが、各メタルファイバ31に金属32がコーティングされている。このため、その金属32の高い熱伝導性を利用して、露出する出射端面の部分から長手方向に逃がすことができる。従って、出射端面に臨む接着剤14が加熱されることにより従来発生していた各種トラブル、例えば光化学的な反応で接着剤自体がぼろぼろに劣化したり、熱で接着剤が溶解するなどといったトラブルが回避できる。
【0033】
また、本実施形態のバンドルファイバ30において、第1の実施形態のように、スリーブ12内部の出射端面からスリーブ12の長手方向の一定長さに亙りメタルファイバ31間の接着剤14を除去し、そこに形成される隙間に充填金属13を充填させてもよい。このように構成すれば、耐熱性が一層向上する。
【0034】
また、第2の実施形態では、スリーブ12内部に光ファイバ11とともにダミーファイバ21を配設してあるが、本実施形態でも同様の構成にしてもよい。即ち、本実施形態のバンドルファイバ30において、第2の実施形態のスリーブ12内部のダミーファイバ21を設置してある領域に対応した部分にも、ダミーのメタルファイバを追加して配設するようにしてもよい。このように構成すれば、第2の実施形態で記載したように、押さえ付け効果、耐熱性の向上、露光量調整機能、予備機能或いは補完機能などの各効果や機能を付与できる。
【0035】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、本実施形態において、第1〜第3の実施形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
図11は本発明の第4の実施形態に係るバンドルファイバ40を示すものであり、このバンドルファイバ40は、第1〜第3の実施形態と同様に、半導体製造用の光源装置の一部を構成している。
【0036】
本実施形態のバンドルファイバ40は、第1の実施形態と同じ光ファイバ11を用いているが、この光ファイバ11を束ねて挿入し一体に固着させるスリーブには、出射端面から所定の長さに亙って外周面に放熱用のフィン42を取付けたヒートシンク付きの金属性のスリーブ41を用いている。本実施形態のスリーブ41を形成する金属材料には、第1の実施形態と同じステンレスを用いている。また、本実施形態では、スリーブ41内部の各光ファイバ11の間の隙間に、第1の実施形態と同じように、スリーブ41の出射端面41Aから一定長さ領域に亙り充填金属を充填させるのではなく、出射端面41Aまでスリーブ41全体に亙り、各光ファイバ11の間の隙間に接着剤14を充填させてスリーブ41と一体化させている。
【0037】
なお、本実施形態でも、図2に示すスリーブ12の出射端面12A寄りに充填金属13を充填させた、第1の実施形態のものと同様に構成してもよい。つまり、図12に示すように、出射端面41Aから一定長さLの領域に亙り、各光ファイバ11の間の隙間の接着剤14を除去し、そこに充填金属13を充填させてもよい。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のバンドルファイバは、耐熱温度の制限が少なく、しかも製造作業が容易かつ安価に行うことができ、さらに光ファイバ機能の低下をもたらすことがない、といった効果を有し、ステッパなどのような、半導体製造用の光源装置の露光照明光の伝送手段等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るバンドルファイバを用いた光源装置により被露光物を露光させるときの全体構成を示す説明図である。
【図2】(A)はそのバンドルファイバを示す縦断面図、(B)はその出射端面側の構成を示す要部側断面図である。
【図3】(A)はそのバンドルファイバを製造する際に、初めに光ファイバ間に接着剤を充填させた状態を示す縦断面図、(B)はその出射端面側の構成を示す要部側断面図である。
【図4】次工程である、光ファイバ間に充填させた接着剤を除去したときの状態を示す出射端面側の要部側断面図である。
【図5】その次工程である、光ファイバ間の接着剤を除去した隙間に金属を流し込んで充填させたときの状態を示す出射端面側の要部側断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るバンドルファイバを用いた光源装置により被露光物を露光させるときの全体構成を示す説明図である。
【図7】そのバンドルファイバの構成を示す縦断面図である。
【図8】そのバンドルファイバの変形例の構成を示す縦断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るバンドルファイバの構成を示す縦断面図である。
【図10】そのバンドルファイバの内部に挿入する光ファイバの替わりに用いるメタルファイバの一部を示す斜視図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係るバンドルファイバの出射端面側の構成を示す要部側断面図である。
【図12】その変形例を示す要部側断面図である。
【図13】従来例のバンドルファイバの構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
10、20、30、40 バンドルファイバ
11 光ファイバ(第一の光ファイバ)
11A 出射側の端面(出射面)
12 金属性のスリーブ
12A (スリーブの)出射端面
13 充填金属
14 接着剤
20A 光源装置
21 ダミーファイバ(第二の光ファイバ)
31 メタルファイバ
41 金属性のスリーブ
42 フィン
51 コネクタ
52 半導体レーザ(LD;光源)
53、54 レンズ
55 被照明物(ワーク)
S 空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光などをまとめて伝送させて高パワーの光を出力させることができ、レーザ露光装置やレーザ加工装置などの光伝送手段として用いることができるバンドルファイバ及び光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、光加工技術が普及し、複数の光ファイバを束ねたバンドルファイバを用いて、高出力、高パワー密度の光を伝送する機会が増えている。ところで、従来のバンドルファイバは、一般に、接着剤を使用して光ファイバ同士を固定させている。ところが、加工対象であるワークなどの被照射物からの反射光がバンドルファイバ端面に戻った場合、接着固定用の樹脂が光エネルギーを吸収して発熱する。その結果、樹脂の耐熱温度以上に温度上昇が生じ、樹脂損傷を起こす場合がある。また、被照射物からの反射戻り光がバンドルファイバに入射することにより、接着剤が光化学的な損傷や熱による損傷を受ける虞もある。即ち、接着剤は、通常、光吸収率が高いので光化学的な反応で接着剤自体がぼろぼろに劣化しやすく、しかも、材質的に熱伝導率が低い反面、耐熱性などが低いため、熱による溶解などの虞もある。
【0003】
そこで、このバンドルファイバとして、耐熱温度を向上させるため接着剤を使用しないで、ガラスパイプに光ファイバを束ねて一体化させたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このバンドルファイバは、各光ファイバ素線の一端部側の被覆層を除去した光伝送用ガラスファイバ同士を集めて束ね、この束ねた部分をガラスパイプ内に充填し、そのガラスパイプを加熱して軟化したところで延伸し、全体の溶融一体化を図ったものである。これにより、図13に示すように、パイプ状の石英ガラス層101の内部には、多数のコア102が共通のクラッド103内に整列した状態で形成される。
【特許文献1】特開平7−56027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガラスパイプとバンドルファイバの溶融一体化作業は、制御が困難で、コスト高となっている。即ちこれは、ガラスの長さ方向の温度管理、溶融延伸時のガラス径の管理等が複雑で困難であるからである。また、歩留まりも低い。しかも、温度管理が不十分だと、内部のファイバのコア、クラッド構造が崩れる可能性がある。その場合、光ファイバとしての機能の劣化、例えば、NA(Numerical Aperture;開口数)低下による光漏れ、FFP(Far Field Pattern;遠視野像)の乱れ、散乱光の発生などの不具合をもたらす。
【0005】
以上のように、接着剤で端部を固定したバンドルファイバの場合は、その端面部分での耐熱温度が用いる接着剤に依存しており、バンドルファイバの使用範囲が制限される。一方、接着剤を用いずにガラスパイプとバンドルファイバを溶融一体化した構造の場合は、その一体化作業が困難で、しかもコストが嵩み、さらに光ファイバ機能の低下を招きやすい。
【0006】
本発明の目的は、耐熱温度の制限が少なく、しかも製造作業を容易かつ安価に行うことができ、さらに光ファイバ機能低下を回避可能なバンドルファイバ及び光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にかかるバンドルファイバは、光源からの光を複数本の光ファイバで伝送して出射端面から出射するバンドルファイバであって、複数本の光ファイバをスリーブ内に挿入し、前記スリーブの出射端面から前記スリーブの長手方向に沿った一定長さの領域で、前記光ファイバ間に、金属またはガラスからなる耐熱性部材が充填されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかるバンドルファイバは、前記耐熱性部材は、前記スリーブ内部に複数本の光ファイバを挿入して接着剤で固化した後、前記出射端面から前記光ファイバの長手方向に沿った一定領域まで、前記接着剤を除去後に前記光ファイバ間に充填した金属であってもよい。
【0009】
また、本発明にかかるバンドルファイバは、前記スリーブ内部の前記光ファイバ間に、ダミーファイバを挿入していてもよい。
【0010】
また、本発明にかかるバンドルファイバは、前記スリーブ内部に挿入する前記光ファイバは、外周面に金属のコーティング層を有していてもよい。
【0011】
また、本発明にかかる光源装置は、複数の光源とバンドルファイバとを含む光源装置であって、前記バンドルファイバは、前記複数の光源と一対一に対応し、それぞれの前記光源からの光を一端に入射し他端から出射する複数本の第一の光ファイバと、複数本の第二の光ファイバと、前記複数本の第一の光ファイバの他端部及び前記複数本の第二の光ファイバの一端部が束ねて挿入され、前記バンドルファイバの出射端部を形成するスリーブと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐熱温度の制限が少なく、しかも製造作業が容易かつ安価に行うことができ、さらに光ファイバ機能の低下をもたらすことがない、バンドルファイバを提供できる。
また、本発明の光源装置によれば、スリーブ内に第一の光ファイバとともに配置された第二の光ファイバが、耐熱性部材として機能するため、バンドルファイバの出射端部における耐熱性が良好で、耐熱温度の制限が少ない。また、製造作業が容易かつ安価に行うことができる。さらに、光源の経時劣化や故障による露光量の低下や、必要露光量が増加した際に新たに光源を追加する場合に、第二の光ファイバの他端部側に個別に光源を設けることで、第二の光ファイバを予備用光ファイバとして使用することもできる。これにより、バンドルファイバを新規に交換する手間が省け、修理コストが抑えられる。しかも、第二の光ファイバからの露光のON/OFFを切替えるようにすれば、露光量が調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るバンドルファイバ10を示すものであり、このバンドルファイバ10は、半導体製造用の光源装置の一部、具体的には、光源となる複数の半導体レーザ(LD)52からの出力ピグテールを1本にバンドルして高出力化する光源装置の一部を構成している。
【0014】
バンドルファイバ10には、複数本の光ファイバ11(図2参照)と、これらの光ファイバ11の後述するワーク55と対向配置する出射側の端面(以下、「出射面」とよぶ)11A側を束ねて挿入しこれらを一体化させた金属性のスリーブ12とを備えている。本実施形態のバンドルファイバ10は、光ファイバ11ごとに備えたレンズ53及びコネクタ51を介して、光源である半導体レーザ(LD)52から光(照明光)を光ファイバ11へ取り込み、その後、各光ファイバ11内部を伝送させた後、各光ファイバの出射端面11Aから出射させ、レンズ54を介して被照明物であるワーク55にそれぞれ照射・露光させるように構成する。
【0015】
各光ファイバ11の一例として、石英ガラスなどで形成されたガラスファイバであって大径のコアとクラッド(図示せず)からなるものを用いている。なお、本実施形態のバンドルファイバ10のスリーブ12に収容する光ファイバ11の心数は、例えば20心から100心程度で構成しているが、特にその心数には限定されない。
【0016】
金属性のスリーブ12は、少なくとも出射端部から光ファイバの軸方向に沿った所定長さの部分まで配設するように一定長さを有しており、出射端部から光ファイバの軸方向に沿った所定長さの部分まで複数本の光ファイバ11をまとめて束ねている(若しくは、光ファイバ11の全長に亙りスリーブ12を設けてもよい)。なお、本実施形態のスリーブ12には、ステンレスを用いている。
【0017】
図2(A)、(B)に示すように、この金属スリーブ12内部の光ファイバ11間には、金属性のスリーブ12の出射側の端面(以下、これを「出射端面」とよぶ)12Aから長手方向に沿った所要長さLまでの領域に、耐熱性部材を構成する熱伝導率の高い適宜の金属(以下、「充填金属」とよぶ)13、例えば、アルミニウム、金、銀などが流し込まれて充填されている。充填金属13は、使用する光源の波長に対して、反射率の高い金属を選択して用いることが好ましい。例えば、波長300〜600nm帯であればアルミニウムが、波長800〜1100nm帯であれば金や銀が好適である。この充填金属13は、被照射物であるワーク10の表面で反射して戻る反射光(以下、「戻り光」とよぶ)が受光することにより各種トラブルが発生するのを防止するため、その戻り光を端面で反射させ、再度ワーク55へ送り返して再照射させる。
【0018】
また、この金属性のスリーブ12内部の光ファイバ11同士は、充填金属13で充填されている部分よりも入射端面寄り(図2(B)では出射面11Aから距離L以上離れた左寄り)の領域において、所定の接着剤14、例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂などで一体に固着されている。
【0019】
以上説明してきたように、本実施形態のバンドルファイバ10には、金属スリーブ12内の光ファイバ11間には充填金属13が充填して設けてある。従って、前述の露光装置の一部に本実施形態のバンドルファイバ10を設置し、光源からの照射光をこのバンドルファイバ10で伝搬してワーク55を露光・照射させる際に、ワーク55からの戻り光をバンドルファイバ10の出射端面12Aに受光して熱エネルギーが発生しても、熱伝導率の高い充填金属13がその熱を半径方向に逃がし、金属性のスリーブ12へ伝導させる。その結果、金属性のスリーブ12の外周面から外部へその熱を効果的に放出できる。
【0020】
従って、例えば光ファイバ11の長手方向に沿って接着剤14の充填領域まで熱が伝搬し、接着剤14が溶融するといったトラブルを回避できる。また、光ファイバ11のコア、クラッド構造が崩れて、光ファイバ11としての機能が劣化する、といったトラブルも回避できる。
また、バンドルファイバ10端面の光ファイバ11以外の領域に配する充填金属13の出射側端面は、鏡面加工してあるので、戻り光をワークに向けて反射させ、光エネルギーを加工対象物の方に送り返すことができる。これにより、露光用の光に対する利用効率が高まる。
【0021】
また、前述したように、本実施形態では一例として光ファイバ11を20から100心のもので構成しているが、本発明での光ファイバの設置本数は、本数(心数)が少ない場合、例えば2本(心)のものでもよい。その場合、光ファイバ間の隙間であるスリーブ内の空間スペースが増大することは幾何学的に容易に分かる。従って、2心の場合には、充填金属13の充填量も増大する。その結果、同一スリーブ径でも多心のものに比べ、或いは接着剤のみを充填したものに比べて、金属スリーブ12の半径方向への熱伝搬性が大幅に増大して冷却効果も増大するので、より効果的である。
【0022】
次に、本実施形態に係るバンドルファイバ10の製造方法について説明する。最初に一定長さを有する複数本の光ファイバ11の出射面11Aとなる一端部側を集めて束ねた後に、金属性のスリーブ12にその一端部側を挿入する。次に、その金属製のスリーブ12内の光ファイバ11の間に形成されている隙間に、接着剤14である適宜の樹脂充填する(図3参照)。その後、光ファイバ11の出射面11Aに対応するスリーブ12の出射端面12A側から溶剤を浸漬させてエッチング等を行い、所定長L0だけ光ファイバ11間の接着剤14を浅く除去する。これにより、図4に示すようにスリーブ12内の光ファイバ11の間には、出射端面12Aから所定長さL0の領域に亙って多数の穴(隙間)、つまり空間Sが形成される。次に、その接着剤14を除去した空間Sに、反射率が高く、かつ、耐熱性の充填金属13を流し込んで充填させる。これにより、図5に示すようにスリーブ12の出射端面12A側から所定長L0だけ、光ファイバ11間の隙間に充填金属13が隙間なく充填される。最後に、反射率を高めるために出射端面12Aに鏡面加工を施せば、本実施形態に係るバンドルファイバ10が出来上がる。
【0023】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
図6は本発明の第2の実施形態に係るバンドルファイバ20を示すものであり、このバンドルファイバ20は、第1の実施形態と同様に半導体製造用の光源装置の一部を構成している。
【0024】
本実施形態の光源装置20Aは、複数の光源52とバンドルファイバ20とを含む。
本実施形態のバンドルファイバ20は、複数の光源52と一対一に対応し、それぞれの光源52からの光を一端(コネクタ51側)に入射し他端(スリーブ12側)から出射する複数本の光ファイバ(第一の光ファイバ)11と、これらの光ファイバ11の出射面11A側の端部を束ねて接着剤で接着させて一体化させた金属性のスリーブ12との他に、スリーブ12内部にその一端部を複数本設置した予備用のダミーファイバ(第二の光ファイバ)21(図7ではクロスハッチングで示す)とを備えている。つまり、本実施形態では、バンドルファイバ20の接着剤14の充填部分に、第1の実施形態のバンドルファイバ10には含まれていなかったダミーファイバ21を追加挿入して光ファイバ11と一体に接着させ、出射端面における接着剤14である樹脂の占有面積を減らしている。
【0025】
本実施形態では、金属製のスリーブ12内に、光ファイバ11とともにダミーファイバ21をできるだけ均等配置した状態で配設しており、このスリーブ12の全長に亙り、光ファイバ11とダミーファイバ21とが接着剤14で固化され、スリーブ12に一体に固着される。つまり、本実施形態では、スリーブ12内部の光ファイバ11間の隙間にダミーファイバ21を設置することにより、スリーブ12内でのファイバ設置密度を高めているわけである。なお、スリーブ12内の光ファイバ11とダミーファイバ21の間の隙間には、図2に示すスリーブ12の出射端面12A寄りに充填金属13を充填させた第1の実施形態のものとは異なり、出射端面12A寄りにも、充填金属ではなく接着剤14が充填させて固化させている。
【0026】
ダミーファイバ21には、光ファイバ11と同じガラスを用いており、接着剤14である樹脂に比べると耐熱性がはるかに高い材料で形成している。このように、スリーブ12内部の隙間の一部(第1の実施形態では接着剤14が占有する領域)にダミーファイバ21を設置しているので、第1の実施形態に比べて、スリーブ12の出射端面12Aから露出する接着剤14の占有領域が少なくて済む。
【0027】
従って、本実施形態によれば、このダミーファイバ21を設置したことにより、スリーブ12内での光ファイバ11を押さえ付ける作用が発生して、接着剤14や充填金属13が固化するまでの間、第1の実施形態のときより、スリーブ12内で光ファイバ11同士をさらにしっかりと不動状態に固定することができる。また、接着剤14の設置エリアの一部に、耐熱性が高いガラスで形成されたダミーファイバ21を設けた分だけ耐熱性が向上する。その結果、戻り光を受光することによる温度の上昇が低減し、その温度上昇に起因した端面損傷も発生し難くなる。さらに、ワーク55に対する露光量の調整を行うこともできる。即ち、各ダミーファイバ21の入射端面にコネクタを介して光源となるLDをそれぞれ設け、そのLDのON/OFFを切替えるようにすれば、露光量が調整できる。さらに、光ファイバ11の予備機能、或いは補完機能を付与することもできる。即ち、バンドルファイバ20製造の際に一部の光ファイバ11が折損するなどにより、必要な露光量が得られないような場合には、ダミーファイバ21をその光ファイバ11の代替用にもできる。また、光源52の経時劣化や故障による露光量の低下や、必要露光量が増加した際に新たに光源52を追加する場合に、ダミーファイバ21の他端部側に個別に光源52を設けることで、ダミーファイバ21を予備用光ファイバとしても使用できる。これにより、バンドルファイバ20を新規に交換する手間が省け、修理コストが抑えられる。
【0028】
なお、本実施形態では、出射端面寄りに充填金属を充填させず、全長に亙って接着剤が充填されて固化されているが、図8に示すように、図2に示すスリーブ12の出射端面12A寄りに充填金属13を充填させた第1の実施形態のものと同様に構成してもよい。つまり、出射端面から一定長さの領域に亙り、光ファイバ11とダミーファイバ21(図8ではクロスハッチングで示す)との間の隙間を埋める接着剤14を除去し、そこに充填金属13を充填させてもよい。このようにすれば、さらに耐熱性が向上する。
【0029】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
図9は本発明の第3の実施形態に係るバンドルファイバ30を示すものであり、このバンドルファイバ30は、第1の実施形態と同様に半導体製造用の光源装置の一部を構成している。
【0030】
本実施形態のバンドルファイバ30は、各光ファイバ11の外周面に所定金属でメタルコートされたファイバ(以下、これを「メタルファイバ」とよぶ)31を用いる。また、本実施形態では、スリーブ12内部のメタルファイバ31間の隙間に、第1の実施形態とは異なり、出射端面寄りの領域、つまり出射端面側から一定長さの領域に充填金属を充填させておらず、スリーブ12内にあるメタルファイバ31の全長に亙り接着剤14を充填させてスリーブ12と一体化させた状態で固化させている。
【0031】
このメタルファイバ31は、図10に示すように、クラッド31Aの外周面に、メッキすることができ、かつ熱伝導性の高い金属32、例えば、アルミニウム、金、銀などをコーティングさせている。この金属32は、使用する光源の波長に対して、反射率の高い金属を選択して用いることが好ましい。例えば、波長300〜600nm帯であればアルミニウムが、波長800〜1100nm帯であれば金や銀が好適である。なお、同図中、符号31Bはコアを示す。
【0032】
従って、本実施形態によれば、ワークで反射した戻り光がバンドルファイバ30の出射端面に受光すると、この戻り光を受光することにより熱エネルギーを発生するが、各メタルファイバ31に金属32がコーティングされている。このため、その金属32の高い熱伝導性を利用して、露出する出射端面の部分から長手方向に逃がすことができる。従って、出射端面に臨む接着剤14が加熱されることにより従来発生していた各種トラブル、例えば光化学的な反応で接着剤自体がぼろぼろに劣化したり、熱で接着剤が溶解するなどといったトラブルが回避できる。
【0033】
また、本実施形態のバンドルファイバ30において、第1の実施形態のように、スリーブ12内部の出射端面からスリーブ12の長手方向の一定長さに亙りメタルファイバ31間の接着剤14を除去し、そこに形成される隙間に充填金属13を充填させてもよい。このように構成すれば、耐熱性が一層向上する。
【0034】
また、第2の実施形態では、スリーブ12内部に光ファイバ11とともにダミーファイバ21を配設してあるが、本実施形態でも同様の構成にしてもよい。即ち、本実施形態のバンドルファイバ30において、第2の実施形態のスリーブ12内部のダミーファイバ21を設置してある領域に対応した部分にも、ダミーのメタルファイバを追加して配設するようにしてもよい。このように構成すれば、第2の実施形態で記載したように、押さえ付け効果、耐熱性の向上、露光量調整機能、予備機能或いは補完機能などの各効果や機能を付与できる。
【0035】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、本実施形態において、第1〜第3の実施形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
図11は本発明の第4の実施形態に係るバンドルファイバ40を示すものであり、このバンドルファイバ40は、第1〜第3の実施形態と同様に、半導体製造用の光源装置の一部を構成している。
【0036】
本実施形態のバンドルファイバ40は、第1の実施形態と同じ光ファイバ11を用いているが、この光ファイバ11を束ねて挿入し一体に固着させるスリーブには、出射端面から所定の長さに亙って外周面に放熱用のフィン42を取付けたヒートシンク付きの金属性のスリーブ41を用いている。本実施形態のスリーブ41を形成する金属材料には、第1の実施形態と同じステンレスを用いている。また、本実施形態では、スリーブ41内部の各光ファイバ11の間の隙間に、第1の実施形態と同じように、スリーブ41の出射端面41Aから一定長さ領域に亙り充填金属を充填させるのではなく、出射端面41Aまでスリーブ41全体に亙り、各光ファイバ11の間の隙間に接着剤14を充填させてスリーブ41と一体化させている。
【0037】
なお、本実施形態でも、図2に示すスリーブ12の出射端面12A寄りに充填金属13を充填させた、第1の実施形態のものと同様に構成してもよい。つまり、図12に示すように、出射端面41Aから一定長さLの領域に亙り、各光ファイバ11の間の隙間の接着剤14を除去し、そこに充填金属13を充填させてもよい。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のバンドルファイバは、耐熱温度の制限が少なく、しかも製造作業が容易かつ安価に行うことができ、さらに光ファイバ機能の低下をもたらすことがない、といった効果を有し、ステッパなどのような、半導体製造用の光源装置の露光照明光の伝送手段等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るバンドルファイバを用いた光源装置により被露光物を露光させるときの全体構成を示す説明図である。
【図2】(A)はそのバンドルファイバを示す縦断面図、(B)はその出射端面側の構成を示す要部側断面図である。
【図3】(A)はそのバンドルファイバを製造する際に、初めに光ファイバ間に接着剤を充填させた状態を示す縦断面図、(B)はその出射端面側の構成を示す要部側断面図である。
【図4】次工程である、光ファイバ間に充填させた接着剤を除去したときの状態を示す出射端面側の要部側断面図である。
【図5】その次工程である、光ファイバ間の接着剤を除去した隙間に金属を流し込んで充填させたときの状態を示す出射端面側の要部側断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るバンドルファイバを用いた光源装置により被露光物を露光させるときの全体構成を示す説明図である。
【図7】そのバンドルファイバの構成を示す縦断面図である。
【図8】そのバンドルファイバの変形例の構成を示す縦断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るバンドルファイバの構成を示す縦断面図である。
【図10】そのバンドルファイバの内部に挿入する光ファイバの替わりに用いるメタルファイバの一部を示す斜視図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係るバンドルファイバの出射端面側の構成を示す要部側断面図である。
【図12】その変形例を示す要部側断面図である。
【図13】従来例のバンドルファイバの構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
10、20、30、40 バンドルファイバ
11 光ファイバ(第一の光ファイバ)
11A 出射側の端面(出射面)
12 金属性のスリーブ
12A (スリーブの)出射端面
13 充填金属
14 接着剤
20A 光源装置
21 ダミーファイバ(第二の光ファイバ)
31 メタルファイバ
41 金属性のスリーブ
42 フィン
51 コネクタ
52 半導体レーザ(LD;光源)
53、54 レンズ
55 被照明物(ワーク)
S 空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を複数本の光ファイバで伝送して出射端面から出射するバンドルファイバであって、
複数本の光ファイバをスリーブ内に挿入し、前記スリーブの出射端面から前記スリーブの長手方向に沿った一定長さの領域で、前記光ファイバ間に、金属またはガラスからなる耐熱性部材が充填されていることを特徴とするバンドルファイバ。
【請求項2】
前記耐熱性部材は、前記スリーブ内部に複数本の光ファイバを挿入して接着剤で固化した後、前記出射端面から前記光ファイバの長手方向に沿った一定領域まで、前記接着剤を除去後に前記光ファイバ間に充填した金属であることを特徴とする請求項1に記載のバンドルファイバ。
【請求項3】
前記スリーブ内部の前記光ファイバ間に、ダミーファイバを挿入してあることを特徴とする請求項1又は2に記載のバンドルファイバ。
【請求項4】
前記スリーブ内部に挿入する前記光ファイバは、外周面に金属のコーティング層を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバンドルファイバ。
【請求項5】
複数の光源とバンドルファイバとを含む光源装置であって、
前記バンドルファイバは、前記複数の光源と一対一に対応し、それぞれの前記光源からの光を一端に入射し他端から出射する複数本の第一の光ファイバと、
複数本の第二の光ファイバと、
前記複数本の第一の光ファイバの他端部及び前記複数本の第二の光ファイバの一端部が束ねて挿入され、前記バンドルファイバの出射端部を形成するスリーブと、を含むことを特徴とする光源装置。
【請求項1】
光源からの光を複数本の光ファイバで伝送して出射端面から出射するバンドルファイバであって、
複数本の光ファイバをスリーブ内に挿入し、前記スリーブの出射端面から前記スリーブの長手方向に沿った一定長さの領域で、前記光ファイバ間に、金属またはガラスからなる耐熱性部材が充填されていることを特徴とするバンドルファイバ。
【請求項2】
前記耐熱性部材は、前記スリーブ内部に複数本の光ファイバを挿入して接着剤で固化した後、前記出射端面から前記光ファイバの長手方向に沿った一定領域まで、前記接着剤を除去後に前記光ファイバ間に充填した金属であることを特徴とする請求項1に記載のバンドルファイバ。
【請求項3】
前記スリーブ内部の前記光ファイバ間に、ダミーファイバを挿入してあることを特徴とする請求項1又は2に記載のバンドルファイバ。
【請求項4】
前記スリーブ内部に挿入する前記光ファイバは、外周面に金属のコーティング層を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバンドルファイバ。
【請求項5】
複数の光源とバンドルファイバとを含む光源装置であって、
前記バンドルファイバは、前記複数の光源と一対一に対応し、それぞれの前記光源からの光を一端に入射し他端から出射する複数本の第一の光ファイバと、
複数本の第二の光ファイバと、
前記複数本の第一の光ファイバの他端部及び前記複数本の第二の光ファイバの一端部が束ねて挿入され、前記バンドルファイバの出射端部を形成するスリーブと、を含むことを特徴とする光源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−83690(P2008−83690A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218148(P2007−218148)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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