説明

パケット通信方法および通信システム

【課題】 伝送量を増大させることなく、デジタルデータの再生品質の劣化を抑えることができるパケット通信方法および通信システムを提供する。
【解決手段】 パケット送信手段が、一つのパケット内に、再生情報の再生時に隣接することとなる単位データが含まれないように、再生情報内で複数の単位データを所定の順序に並び替えるデータ順序並替ステップと、データ順序並替ステップにより並び替えられた複数の単位データの順序に基づいて、単位データを所定数ごとにパケットに含めて複数のパケットを生成するパケット生成ステップと、パケット受信ステップにより受信したパケットから単位データを抽出して、該抽出された単位データを再生可能な順序に再配列させるデータ順序再現ステップと、を有するパケット通信方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アナログ−デジタル変換された複数の単位データにより構成される再生情報をパケットに含めて伝送するパケット通信方法、および該パケット通信方法を利用した2次元拡散通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にパケット通信等のデジタル通信では、パケットの伝送中に発生するエラー(ビットエラー)を検出・補正する為に、パケットに付加ビット(誤り訂正符号等)を挿入して冗長性を高める工夫がなされている。しかし、そのような付加ビットの数を増やして冗長性を高くすればするほど、パケットサイズが増大するため、パケットの伝送路には高いスループットが必要とされる。
【0003】
音声信号や画像信号等のアナログ信号からデジタル信号に変換された複数の単位データ(単位データとは、サンプリングの結果得られたデータのうち、基本的な単位となるデータであり、画像信号からサンプリングした場合は1画素に対応するデータであるものと定義する)により構成される再生デジタルデータをパケットを用いて伝送する場合、当該再生デジタルデータを分割して各パケットに振り分ける処理が行われる。一般に、一つのパケットに振り分けられた再生デジタルデータは、時間的或いは空間的に連続した複数の単位データにより構成されている。また、パケットには、再生デジタルデータ以外に、送受信の同期調整用のビット、ヘッダ、フッタ等の通信用デジタルデータも含まれている。送受信の同期調整用のビット、ヘッダ、フッタ等の通信用デジタルデータがビットエラーを起こすと、受信側ではパケットそのものが認識されなくなってしまう(これをパケットの消失という)。伝送中にパケットが消失すると、当然、受信側では、パケットに含まれていた再生デジタルデータが欠落してしまう。パケットに含まれていた再生デジタルデータは、上述のように時間的或いは空間的に連続した単位データを含んでいため、受信したパケットのみから画像等を再生した場合、隣接する複数の画素が欠陥し、画像の再生品質が著しく劣化してしまうという問題点があった。
【0004】
このようなパケットの消失に対する対応策として、一般的には、消失したパケットと同じパケットを再送する等の方法が用いられている。例えば、特許文献1には、TCPプロトコルで運ばれた画像或いは音声情報を受信する際、パケットの欠落の発生が確認された場合には、再送手段により受信端末側は確実に画像或いは音声情報を受信することが可能であることが記載されている。また、特許文献2には、TCP/IPを用いたパケット通信方式を適用した場合には、再送信処理があるので高信頼な伝送が実現されることが記載されている。
【0005】
ところで、特許文献3には、カプセル内視鏡から取得された画像信号の伝送にパケット通信方式を採用している画像信号処理装置が記載されている。この画像信号処理装置は、個別の配線を形成することなく複数の素子を用いて中継することにより信号(パケット)を伝送する通信技術である2次元拡散通信技術を用いて、カプセル内視鏡の画像信号を所望の位置まで伝送している。
【0006】
【特許文献1】特開2000−151680号公報
【特許文献2】特開平10−56479号公報
【特許文献3】特開2005−295518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、パケット通信方式では、パケットの消失が生じた際、再生品質の低下を抑えるため、パケットの再送処理が行われる。しかし、パケットの再送処理を行うと、信頼性の高い伝送を実現することができる反面、高いスループットを有する伝送路が必要とされる。
【0008】
また、特許文献3に示したような、画像信号処理装置において、パケットの消失が生じた際の再生品質の低下を抑えるためには、高価・高性能な素子を用いて信号を中継して高いスループットを得なければならない。
【0009】
そこで本発明は上記の事情に鑑み、伝送量を増大させることなく、デジタルデータの再生品質の劣化を抑えることができるパケット通信方法および通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、少なくともパケット送信手段とパケット受信手段とを用いることにより、複数の単位データにより構成される再生情報を複数のパケットに分けて伝送するパケット通信方法において、前記パケット送信手段が、一つのパケット内に、前記再生情報の再生時に隣接することとなる単位データが含まれないように、前記再生情報内で前記複数の単位データを所定の順序に並び替えるデータ順序並替ステップと、前記データ順序並替ステップにより並び替えられた前記複数の単位データの順序に基づいて、単位データを所定数ごとにパケットに含めて複数のパケットを生成するパケット生成ステップと、前記パケット生成ステップにより生成された複数のパケットを送信するパケット送信ステップと、前記パケット受信手段が、前記パケット送信ステップにより送信された複数のパケットのうちの少なくとも1つを受信するパケット受信ステップと、前記パケット受信ステップにより受信したパケットから単位データを抽出して、該抽出された単位データを再生可能な順序に再配列させるデータ順序再現ステップと、を有することを特徴とするパケット通信方法を提供する。
【0011】
したがって、本発明によれば、パケットの伝送路中で、一部のパケットが消失したとしても、再生情報に含まれる単位データは離散的な欠落となるため、再生時にその欠陥が目立ち難くなる。よって、パケットを再送しなくても再生時の品質の劣化を抑えることができる。すなわち、パケット再生により伝送量を増大させることなく、再生品質の劣化を抑えることができる。
【0012】
また、本発明に係るパケット通信方法では、前記パケット受信手段が、前記パケット受信ステップにより受信したパケットの数が前記パケット送信ステップにより送信されたパケットの数よりも少ない場合、前記パケット受信ステップにより受信できなかったパケットに含まれていた単位データを補間するデータ補間ステップをさらに有することを特徴とする。この構成によれば、離散的な欠落となっていた単位データを補間することができるため、さらに再生品質の劣化を抑えることができる。
【0013】
また、本発明に係るパケット通信方法では、前記データ補間ステップは、具体的には、前記パケット受信ステップにより受信できなかったパケットに含まれていた単位データに対して再生時に隣接する単位データに基づいて算出される代替データを生成し、前記パケット受信ステップにより受信できなかったパケットに含まれていた単位データが本来再配列されるべき位置に当該代替データを挿入することにより補間する。
【0014】
また、具体的には、前記パケット生成ステップにおいて1つのパケットにN個の単位データを含める場合、前記データ順序並替ステップは再生時に隣接することとなる単位データ間に少なくともN−1個の再生時に隣接することがない単位データを挿入する。
【0015】
また、前記単位データは、画像を再生するための画素データを含む。そして、前記データ順序並替ステップは、一つのパケット内に、前記複数の画素データを画像として再生した場合に空間的に隣接することとなる画素データが含まれることがないように、前記再生情報内で前記複数の画素データを所定の順序に並び替える。
【0016】
また、前記パケット送信手段と前記パケット受信手段とはパケット中継手段を介してパケットの送受信が可能であり、前記パケット送信ステップは、前記パケット中継手段にパケットを送信し、前記パケット受信ステップは、前記パケット中継手段からパケットを受信することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、複数の単位データにより構成される再生情報を複数のパケットに分けて伝送可能なパケット通信方式を用いた2次元拡散通信システムにおいて、一つのパケット内に、前記再生情報の再生時に隣接することとなる単位データが含まれないように、前記再生情報内で前記複数の単位データを所定の順序に並び替えるデータ順序並替手段と、前記データ順序並替手段により並び替えられた前記複数の単位データの順序に基づいて、単位データを所定数ごとにパケットに含めて複数のパケットを生成するパケット生成手段と、前記パケット生成手段により生成された複数のパケットを送信するパケット送信手段と、を有する第一の通信手段と、前記パケット送信手段により送信された複数のパケットのうちの少なくとも1つを受信するパケット受信手段と、前記パケット受信手段により受信したパケットから単位データを抽出して、該抽出された単位データを再生可能な順序に再配列させるデータ順序再現手段と、を有する第二の通信手段と、前記第一の通信手段により送信されたパケットを受信し、前記第二の通信手段へパケットを送信する機能を有する少なくとも一つの第三の通信手段と、を有することを特徴とする2次元拡散通信システムを提供する。
【0018】
また、前記第二の通信手段が、前記パケット受信手段により受信したパケットの数が前記パケット送信手段により送信されたパケットの数よりも少ない場合、前記パケット受信手段により受信できなかったパケットに含まれていた単位データを補間するデータ補間手段をさらに有することを特徴とする。
【0019】
また、前記データ補間手段は、前記パケット受信手段により受信できなかったパケットに含まれていた単位データに対して再生時に隣接する単位データに基づいて算出される代替データを生成し、前記パケット受信手段により受信できなかったパケットに含まれていた単位データが本来再配列されるべき位置に当該代替データを挿入することにより補間することを特徴とする。
【0020】
また、前記パケット生成手段において1つのパケットにN個の単位データを含める場合、前記データ順序並替手段は再生時に隣接することとなる単位データ間に少なくともN−1個の再生時に隣接することがない単位データを挿入することを特徴とする。
【0021】
また、前記第一の通信手段と、前記第二の通信手段と、前記第三の通信手段とが一つの通信チップに組み込まれており、当該通信チップを複数用いることにより通信を行う。
【発明の効果】
【0022】
したがって、本発明によれば、伝送量を増大させることなく、再生情報の再生品質の劣化を抑えることができるパケット通信方法および通信システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に係るパケット通信方法およびそのパケット通信方法を用いた通信システムについて説明する。なお、本発明の実施形態では、当該パケット通信方法を、カプセル内視鏡から無線送信される画像信号が2次元拡散通信技術により伝送される場合に適用して説明する。しかし、本発明に係るパケット通信方法は、2次元拡散通信技術への適用に限らず、音声信号や画像信号等のアナログ信号から変換された再生デジタルデータに対してパケット通信を行う環境であれば実施可能である。
【0024】
図1は、本発明に係るパケット通信方法が適用される2次元拡散通信システム(以降、通信システム100と称す)を説明するための図である。通信システム100は、2次元拡散信号伝送(2D−DST)テクノロジを用いたシステムである。本発明の実施形態では、通信システム100は着衣(ジャケット)の外観を有している。通信システム100は、カプセル内視鏡により患者1の体内から送信される無線信号を患者1の体の周囲で受信し、所定の信号処理を施すと共に該信号をパケット通信により伝送する機能を有する。
【0025】
次に、通信システム100の詳細について説明する。通信システム100は、2D−DST基板200と、2D−DSTチップ220と、制御部250とを有する。2D−DST基板200は、可撓性を有するシート状の部材であり、患者1の体の一部を覆うジャケット状に型取られている。2D−DST基板200中に散在された複数の2D−DSTチップ220は、カプセル内視鏡から送信された画像データを含む無線信号を受信するアンテナ機能、パケットの送受信機能等を有する。また、2D−DST基板200には制御部250が接続されている。制御部250は、患者1の腰付近に位置するよう取り付けられており、各2D−DSTチップ220の制御を行う機能、各2D−DSTチップ220が取得したカプセル内視鏡からの画像データを収集して管理する機能等を有する。
【0026】
また、2D−DSTチップ220は、近接したチップとの間で信号の送受信を行うことにより、順次パケットを伝送することができる。よって、通信システム100は、回路パターンを有さなくても、2D−DSTチップ220を中継させることでパケットを所望の位置へ伝送することができる。
【0027】
図2は、2D−DSTチップ220を用いてパケットを伝送する場合の、各チップの機能を説明するための図である。カプセル内視鏡C1は、CCD等の撮像素子を備えており、撮像により出力される画像信号を無線信号に含めて患者1の体外に送信する。
【0028】
2D−DSTチップ220は、状況に応じて、パケット送信チップ(S1)、パケット中継チップ(T1)、パケット受信チップ(R1)のいずれかの役割を果たす。各2D−DSTチップ220はアンテナ機能を備えており、カプセル内視鏡C1からの無線信号を受信した2D−DSTチップ220がパケット送信チップS1としての役割を果たす。なお、複数の2D−DSTチップ220が同時に無線信号を受信する可能性があるが、そのような場合は、例えば、最も受信強度が高いと判定された2D−DSTチップ220がパケット受信チップR1となる等の制御が行われてもよい。また、パケット受信チップR1の位置により、カプセル内視鏡C1のおおよその位置を特定することも可能である。
【0029】
パケット送信チップS1は、受信した無線信号に対し増幅等の信号処理を行う機能、アナログ−デジタル変換(A/D)機能(画素に合わせてサンプリングを含む)、「再生情報」としての画像デジタルデータをパケットに含めて送信する機能等を有する。なお、本発明の実施形態では、画像デジタルデータをパケットに含める際に、画像デジタルデータを構成する画素データ(単位データ)の時間的な(或いは空間的な)順序を入れ替える処理を行う。パケット送信チップS1により送信されたパケットは、最終的にパケット受信チップR1へ到達するように、少なくとも一つのパケット中継チップT1が選択されて伝送される。すなわち、パケット中継チップT1は、パケットを受信して、すぐにそのパケットを送信する機能を有する。パケット受信チップR1は、例えば、制御部250に最も近い2D−DSTチップ220であり、パケットを受信して制御部250へパケットを供給することができる。
【0030】
図3は、パケット送信チップS1(図2)により送信されるパケット10の内容を示す模式図である。パケット10は、同期ビット部11、ヘッダ部12、データ部13、フッタ部14を有する。ヘッダ部12には送信元ID、受信先ID、パケット番号、データの種類、データ長等のデータが含まれている。データ部13には、画像デジタルデータの一部が含まれている。
【0031】
図4は、本発明に係るパケット通信方法の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、図2に示したパケット送信チップS1、パケット中継チップT1、パケット受信チップR1により行われる処理であり、パケット送信チップS1がカプセル内視鏡C1からの無線信号を受信したところから開始するものとする。例えば、ステップS101からステップS107までがパケット送信チップS1により行われ、ステップS109がパケット中継チップT1により行われ、ステップS111からステップS119までがパケット受信チップR1により行われる。なお、ステップS113からステップS119までの処理は、パケット受信チップR1に限らず、例えば、制御部250において行われても良い。
【0032】
ステップS101では、無線信号に対して各種信号処理(復調、増幅、A/D変換等)を行う。アナログ信号であった画像信号は、画素単位でサンプリングされ、画素データにより構成される画像デジタルデータとなる。次に、ステップS103では、画像デジタルデータ中の画素データを並び替える処理を行う。ここでは、1つのパケット内に、時間的に(或いは画像を再生した場合、空間的に)隣接する画素データが含まれることがないような順序へと並び替えがなされる。
【0033】
ステップS105では、ステップS103において並べ替えられた画素データをその順序のはじめから順番に所定数ずつパケット10のデータ部13に含める処理を行い、併せて同期ビット部11、ヘッダ部12、フッタ部14に必要なデータを含めることにより、パケットを生成する処理を行う。
【0034】
ステップS107では、ステップS105において生成されたパケットを送信する。パケットを受信したパケット中継チップT1はさらにそのパケットを送信する(ステップS109)。2次元拡散通信技術では、パケット送信チップS1からパケット受信チップR1までの間で、最短の経路となるようにパケット中継チップT1が選択される。また、パケット中継チップT1等の2D−DSTチップ220から送信されたパケットは、複数の2D−DSTチップ220に受信される可能性がある。2次元拡散通信技術では、予め最短の経路となるパケット中継チップT1がどのチップであるかを制御部250が把握して制御しているため、経路として選択された2D−DSTチップ220以外の2D−DSTチップ220がパケットを受信したとしても、その後パケットを送信しない構成となっている。
【0035】
ステップS111では、パケット受信チップR1がパケット中継チップT1を経て伝送されてきたパケットを受信する。ステップS113では、ステップS103において並び替えられた画素データを本来の再生可能な順序に再配列するデータ順序再現処理が行われる。
【0036】
ステップS115では、パケットの消失があったかどうかが判定される。例えば、パケット10のヘッダ部12には、パケットNo.が付されており、ステップS105において各パケットに連続する番号を付しておけば、パケットの消失を判定することができる。或いは、ステップS113において、画素データの順序を再配列させた際に、欠落している画素データがあるか否かでパケットの消失を判定することができる。パケットの消失があれば(ステップS115:YES)、ステップS117へ進む。パケットの消失がなければ(ステップS115:NO)、ステップS119へ進む。
【0037】
ステップS117では、パケット消失により欠落した画素データを補間する処理が行われる。この補間処理は、画素データが再配列された状態において、欠落した画素データに隣接する画素データの値に基づいて行われる。ステップS119では、画素データからなる画像デジタルデータが記憶・蓄積される。
【0038】
上述のような処理によれば、パケットの伝送路中で、一部のパケットが消失したとしても、画像デジタルデータに含まれる画素データの欠落は再生時に離散的となるとともに、ある程度は補間されるため、画素欠陥が目立ち難くなる。したがって、パケットを再送しなくても再生時の品質の劣化を抑えることができる。すなわち、パケット再生により伝送量を増大させることなく、再生品質の劣化を抑えることができる。
【0039】
次に、図5を参照して、本発明に係るパケット通信方法による処理の具体例を示す。例えば、1画素分のデータは8ビットA/D変換される。すなわち、画素データは256段階で示される。図5(a)はAD変換後の画像デジタルデータの一部を示す。例えば、A/D変換により生成された画像デジタルデータは画素データD00からD63の計64データで構成されているとする。画素データD00からD63はその番号順に連続するデータである。また、図5(a)の上段は、各画素データの値をグラフで示したものである。
【0040】
図5(b)は、画素データの順序を入れ替えた後の画像デジタルデータを示す図である。なお、1つのパケットに8画素分のデータを含めるものとする(全8パケット)。例えば、パケット1には、D00、D08、D16、D24、D32、D40、D48、D56の8画素分のデータを含める。次にパケット2には、D01、D09、D17、D25、D33、D41、D49、D57の8画素分のデータを含める。すなわち、連続する画素データ間には少なくとも7つの画素データが挿入される(当然挿入される7つの画素データには、連続する画素データが含まれない)。また、さらに、画素データの順序の入れ替えでは、画像デジタルデータを画像として再生した場合に、隣接する画素(例えば、一つの画素の周囲8箇所に配置される画素)が一つのパケットに含まれないようにすることが好ましい。
【0041】
図5(c)は、例えば、パケット受信チップR1(図2)がパケットを受信したときの画像デジタルデータを示す図である。この例では、パケット2が消失しているものとする。すなわち、画素データD01、D09、D17、D25、D33、D41、D49、D57の8画素分のデータが欠落した画像デジタルデータとなる。この状態からデータ順序再現処理(ステップS113)を行った後の画像デジタルデータを図5(d)に示す。
【0042】
図5(d)は、上段がデータ順序再現後の画素データの配置を示す図、下段が各画素データの値をグラフとして示したものである。では、パケット2の消失により、7画素おきに画素データが欠落していることがわかる。すなわち、画像デジタルデータの一次元的な配列において、画素データは連続的に欠落しないことがわかる。
【0043】
なお、図5(b)において、連続する画素データ間に7つの画素データを挿入する構成としたが、少なくとも7つの画素データを挿入すればよく、その順序の入れ替えは様々な形態が考えられる。したがって、本発明に係るパケット通信方法により行われる、画素データの並び替えは、図5(b)に示される配列に限定されるものではない。
【0044】
次に、パケットが消失した場合の、データ補間処理(ステップS117)について具体例を挙げて説明する。図6は、画像デジタルデータを再生する場合に表示される画面上の一部を模式的に示す図である。説明の便宜上、画面上の9画素(P11、P12、P13、P21、P22、P23、P31、P32、P33)のみ示すものとする。本発明の実施形態では、P22の画素データが欠落していた場合、その周囲の画素データを用いてP222の補間処理を行う。当該補間処理はフルカラーCCD等において、隣り合う画素をもとに中間の画素を新たに作る際に一般的に行われる処理である。例えば、以下のような式によりP22’の値が算出される。
P22’=a*(P12+P21+P23+P32)+b*(P11+P13+P31+P33)
ここで、aは、P22に直交する方向の重み付けを表す係数であり、bは、P22の斜め方向の重み付けを表す係数である。なお、本発明の実施形態では、隣接する画素データは欠落する可能性が低いため、このような処理が実行可能となる。
【0045】
図7は、図5(c)で示したパケット伝送後の画像デジタルデータに対し、図6に示したような方法で補間処理を行った場合を模式的に示す図である。図7(a)は、図5(d)の上段と同様の状態を示している。欠落している画素データD01、D09、D17・・・に対してそれぞれ、図6で示したような補間処理が行われ、D01’、D09’、D17’・・・が算出される。図7(b)は、算出された画素データが挿入された状態を示す。画像デジタルデータは、データ欠落部分(図5(d))が平均化される。したがって、本発明のパケット通信方法を適用すれば、パケットの欠落が生じたとしても、パケットの再送を行わないで、画像の品質を大きく劣化させることなく表示させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るパケット通信方法を用いた通信システムの一例を示す外観図である。
【図2】2D−DSTチップの機能を説明するための図である。
【図3】パケットの内容を示す図である。
【図4】本発明に係るパケット通信方法の処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係るパケット通信方法の具体例を示す。
【図6】画像デジタルデータを再生する場合に表示される画面上の一部を模式的に示す図である。
【図7】パケットに対し補間処理を行った場合を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
10 パケット
11 同期ビット部
12 ヘッダ部
13 データ部
14 フッタ部
100 通信システム
200 2D−DST基板
220 2D−DSTチップ
250 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともパケット送信手段とパケット受信手段とを用いることにより、複数の単位データにより構成される再生情報を複数のパケットに分けて伝送するパケット通信方法において、
前記パケット送信手段が、
一つのパケット内に、前記再生情報の再生時に隣接することとなる単位データが含まれないように、前記再生情報内で前記複数の単位データを所定の順序に並び替えるデータ順序並替ステップと、
前記データ順序並替ステップにより並び替えられた前記複数の単位データの順序に基づいて、単位データを所定数ごとにパケットに含めて複数のパケットを生成するパケット生成ステップと、
前記パケット生成ステップにより生成された複数のパケットを送信するパケット送信ステップと、
前記パケット受信手段が、
前記パケット送信ステップにより送信された複数のパケットのうちの少なくとも1つを受信するパケット受信ステップと、
前記パケット受信ステップにより受信したパケットから単位データを抽出して、該抽出された単位データを再生可能な順序に再配列させるデータ順序再現ステップと、
を有することを特徴とするパケット通信方法。
【請求項2】
前記パケット受信手段が、
前記パケット受信ステップにより受信したパケットの数が前記パケット送信ステップにより送信されたパケットの数よりも少ない場合、前記パケット受信ステップにより受信できなかったパケットに含まれていた単位データを補間するデータ補間ステップをさらに有することを特徴とする請求項1に記載のパケット通信方法。
【請求項3】
前記データ補間ステップは、前記パケット受信ステップにより受信できなかったパケットに含まれていた単位データに対して再生時に隣接する単位データに基づいて算出される代替データを生成し、前記パケット受信ステップにより受信できなかったパケットに含まれていた単位データが本来再配列されるべき位置に当該代替データを挿入することにより補間することを特徴とする請求項2に記載のパケット通信方法。
【請求項4】
前記パケット生成ステップにおいて1つのパケットにN個の単位データを含める場合、前記データ順序並替ステップは再生時に隣接することとなる単位データ間に少なくともN−1個の再生時に隣接することがない単位データを挿入することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパケット通信方法。
【請求項5】
前記単位データは、画像を再生するための画素データであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のパケット通信方法。
【請求項6】
前記データ順序並替ステップは、一つのパケット内に、前記複数の画素データを画像として再生した場合に空間的に隣接することとなる画素データが含まれることがないように、前記再生情報内で前記複数の画素データを所定の順序に並び替えることを特徴とする請求項5に記載のパケット通信方法。
【請求項7】
前記パケット送信手段と前記パケット受信手段とはパケット中継手段を介してパケットの送受信が可能であり、
前記パケット送信ステップは、前記パケット中継手段にパケットを送信し、
前記パケット受信ステップは、前記パケット中継手段からパケットを受信することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のパケット通信方法。
【請求項8】
前記パケット中継手段は、複数のチップを有することを特徴とする請求項7に記載のパケット通信方法。
【請求項9】
複数の単位データにより構成される再生情報を複数のパケットに分けて伝送可能なパケット通信方式を用いた2次元拡散通信システムにおいて、
一つのパケット内に、前記再生情報の再生時に隣接することとなる単位データが含まれないように、前記再生情報内で前記複数の単位データを所定の順序に並び替えるデータ順序並替手段と、前記データ順序並替手段により並び替えられた前記複数の単位データの順序に基づいて、単位データを所定数ごとにパケットに含めて複数のパケットを生成するパケット生成手段と、前記パケット生成手段により生成された複数のパケットを送信するパケット送信手段と、を有する第一の通信手段と、
前記パケット送信手段により送信された複数のパケットのうちの少なくとも1つを受信するパケット受信手段と、前記パケット受信手段により受信したパケットから単位データを抽出して、該抽出された単位データを再生可能な順序に再配列させるデータ順序再現手段と、を有する第二の通信手段と、
前記第一の通信手段により送信されたパケットを受信し、前記第二の通信手段へパケットを送信する機能を有する少なくとも一つの第三の通信手段と、
を有することを特徴とする2次元拡散通信システム。
【請求項10】
前記第二の通信手段が、
前記パケット受信手段により受信したパケットの数が前記パケット送信手段により送信されたパケットの数よりも少ない場合、前記パケット受信手段により受信できなかったパケットに含まれていた単位データを補間するデータ補間手段をさらに有することを特徴とする請求項9に記載の2次元拡散通信システム。
【請求項11】
前記データ補間手段は、前記パケット受信手段により受信できなかったパケットに含まれていた単位データに対して再生時に隣接する単位データに基づいて算出される代替データを生成し、前記パケット受信手段により受信できなかったパケットに含まれていた単位データが本来再配列されるべき位置に当該代替データを挿入することにより補間することを特徴とする請求項10に記載の2次元拡散通信システム。
【請求項12】
前記パケット生成手段において1つのパケットにN個の単位データを含める場合、前記データ順序並替手段は再生時に隣接することとなる単位データ間に少なくともN−1個の再生時に隣接することがない単位データを挿入することを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の2次元拡散通信システム。
【請求項13】
前記第一の通信手段と、前記第二の通信手段と、前記第三の通信手段とが一つの通信チップに組み込まれており、当該通信チップを複数用いることにより通信を行うことを特徴とする請求項9から12のいずれかに記載の2次元拡散通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−53894(P2008−53894A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226248(P2006−226248)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】