説明

パターン形成方法、パターン形成装置、並びにフォトマスクおよびその製造方法

【課題】電気的導通が不連続な被加工基板に対し、荷電粒子線を照射してパターン形成を行う場合、電界の発生を抑止しつつ、かつ、レジストの解像性を損なうことなく、微細なパターンを精度よく形成する手段を提供する。
【解決手段】被加工基板10の裏面に当たる第2の面10bに導電膜12を形成し、当該導電膜12と導通ピン15を接触させることで、荷電粒子線14の照射による蓄積電荷に対抗する電荷を導電膜12に発生させ、電界による荷電粒子線の偏向を抑止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線によりパターン形成を行うパターン形成方法およびパターン形成装置、並びに荷電粒子線を用いてパターン形成されたフォトマスクおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造するため、ウエハを加工するフォトリソグラフィー技術では、一般にフォトマスク上に形成されたパターンを4分の1に縮小してウエハ上に転写する。半導体装置の微細化に伴い、フォトマスクにおいても常にパターンの微細化が要求されている。特に近年のいわゆる超解像技術の導入により、フォトマスク上のパターン寸法はウエハ上のそれと比肩するほど微細化、かつ高精度化し、これを実現させることに困難が伴うようになった。
【0003】
図3に従来のフォトマスク製造工程を示す。フォトマスク基板20の上には、金属膜からなる遮光膜21が形成されている。位相シフト法などに代表される超解像技術では、遮光膜21をパターン状に形成した後、当該遮光膜をレジスト(第1レジスト23)で覆って再びパターンを形成する。
【0004】
パターン形成の際、荷電粒子線を用いる電子線リソグラフィ法によれば、光リソグラフィ法に比べて高い解像度が得られる。一方、荷電粒子線を用いてパターニングを行う場合、照射した荷電粒子の一部がレジスト中で停止して、パターニングの精度が低下する問題がある。これは、荷電粒子線がレジスト中に留まって電界が生じる結果、荷電粒子線の軌道が曲がるためである。
【0005】
そこで、図3に示すように、遮光膜21に導通手段(一般には金属からなるピンなど)としての導通ピン25を接触させることで、レジストの帯電防止が図られる。遮光膜21はクロムのような導電性材料で形成され、導通ピン25で接地することにより、荷電粒子線の照射により生成される電界は、シールド効果で相殺される。しかし、遮光膜21が島状にパターン形成されている領域では、導通ピン25による電気的な接地が得られないため電界(図示せず)が発生する。この電界は荷電粒子線の軌道を偏向させる効果があるため、所望のパターンが得られなくなる要因となる。
【0006】
従来、このような遮光膜が電気的に不連続であるような被加工基板に導通を与えつつパターニングを行う場合、第1レジスト23の上に塗布型の導電膜22を一様に形成し、このシールド効果により電界を相殺する方法が取られてきた。しかし、導電膜22を構成する成分が、第1レジスト23と意図しない反応を起こし、必要とされる微細なパターンを精度よく得られないことがあった。
【0007】
別の従来技術として、上記導電膜による悪影響を回避するため、パターン形成に係るポストエクスポージャーベークの前段で導電膜を除去する手段がある(例えば特許文献1)。あるいは、レジストと導電膜との間に干渉を遮断する膜を形成し、影響を回避する手段がある(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−307856号公報
【特許文献2】特開平11−097325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された技術によれば、ポストエクスポージャーベークを行う際に、レジストと導電膜が意図しない反応を起こすことを防止できる。しかし、ポストエクスポージャーベークを行う前にレジスト内部に拡散した導電膜の成分がレジストと反応し、微細なパターンを精度良く得られないことがあった。また特許文献2に記載された技術によれば、特許文献1と同様にレジストと導電膜の反応を防止できるが、荷電粒子線がレジスト上層に形成された膜を通過する際の散乱により、やはり微細なパターンを精度よく得られないことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる課題を解決するものであり、パターン形成される被加工基板のパターン形成面と反対面(裏面)に導電性の膜を形成して荷電粒子線の照射を行うことを特徴とする。そして、パターン形成装置に、被加工基板の裏面と電気的な導通をとる手段を設け、基板裏面の導電膜と導通をとることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項1に係る発明は、第1の面および前記第1の面と向かい合う第2の面を有する基板にパターンを形成するパターン形成方法であって、前記第2の面に導電膜を形成し、前記第1の面側から荷電粒子線を照射することにより前記第1の面側に前記パターンを形成するパターン形成方法としたものである。
【0011】
本発明の請求項2に係る発明は、前記導電膜に導通手段を接続し、前記パターンを形成する請求項1に記載のパターン形成方法としたものである。
【0012】
本発明の請求項3に係る発明は、前記第1の面上に、遮光膜を島状に配置し、前記遮光膜をレジストで覆い、前記荷電粒子線の照射を行う請求項1または2に記載のパターン形成方法としたものである。
【0013】
本発明の請求項4に係る発明は、第1の面および前記第1の面と向かい合う第2の面を有する基板をパターン形成するパターン形成装置であって、前記第1の面に向かって荷電粒子線を照射して前記第1の面側に前記パターンを形成する粒子線照射手段と、前記第2の面側と導通する導通手段と、を備えるパターン形成装置としたものである。
【0014】
本発明の請求項5に係る発明は、前記導通手段は、前記第2の面に形成された導電膜と接触して接地されている請求項4に記載のパターン形成装置としたものである。
【0015】
本発明の請求項6に係る発明は、第1の面および前記第1の面と向かい合う第2の面を有する基板と、前記基板の第1の面側に荷電粒子線照射により形成されたパターンと、を有し、前記第2の面を覆うように導電膜が形成され、または、前記第2の面を覆うように導電膜が形成され剥離されているフォトマスクとしたものである。
【0016】
本発明の請求項7に係る発明は、前記第1の面上に、遮光膜が島状に形成されている請求項6に記載のフォトマスクとしたものである。
【0017】
本発明の請求項8に係る発明は、第1の面および前記第1の面と向かい合う第2の面を有する基板の前記第1の面側にパターンが形成されたフォトマスクの製造方法であって、前記第2の面に導電膜を形成し、前記第1の面側から荷電粒子線を照射することにより前記第1の面側に前記パターンを形成するフォトマスクの製造方法としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、一様に接地された被加工基板を用いるため、基板表面に形成されたパターンの形状によらず荷電粒子線を照射することで発生する電界を抑止することが可能となり、所望のパターンを精度よく形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を用いて、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下ではレベンソン型位相シフトマスクを例示するが、これは発明の一形態を示すものである。本発明は電気的に不連続な被加工基板上に荷電粒子線でパターニングを行う際の電界の発生に起因するパターン精度の低下を防止することを目的としており、同様の効果が得られる限り、被加工物の種類や材料は限定されない。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る方法によりパターン形成され製造される、本発明の一実施形態に係るフォトマスク1の製造工程を示す模式図である。図2は、フォトマスク1の製造過程で行われるパターン形成に用いられるパターン形成装置2の概略構成を示す模式図である。
【0021】
本実施形態ではまず、フォトマスク1の基板10として、透明な基板(例えば石英板)を用意する。図1(a)に示すように、基板10の互いに向かい合う2つの面の片側(第1の面10a)には、クロムからなる遮光膜11が通常の方法によりパターン形成されている。遮光膜11は、第1の面10a全面を連続的に覆うものではなく、分断され周囲と隔絶された島状の部分11bを少なくとも1カ所以上(この図では2カ所)有している。
【0022】
遮光膜11上には、第2のパターンを形成するための第1レジスト13が、遮光膜11全体を覆うように成膜されている。第1レジスト13としては、電子線のような荷電粒子線に反応するものであれば制限なく使用できる。図1に示す例では、第1レジスト13としてポジ型のレジストを用いている。
【0023】
第1の面10aの反対面(第2の面10b)には、全面に渡って薄膜(導電膜)12が形成されている。導電膜12は、基板10の裏面に一様な導電性を付与するために設けられ、例えばクロムのような導電性の材料で形成されている。
【0024】
このように、基板10は、第1の面10a上に遮光膜11および第1レジスト13が形成され、第2の面10bを覆うように導電膜12が形成された、図1(a)に示す状態でパターン形成工程に供される。以下、図2に示すパターン形成装置2を用いる本発明の一実施形態に係るパターン形成方法を説明する。
【0025】
パターン形成装置2は、基板10を載せるステージ18と、荷電粒子線としての電子線を照射する粒子線照射手段としての電子光学系17と、導通手段としての導通ピン15と、を備える。電子光学系17と導通ピン15とは、基板10を挟んで向かい合うように配置される。電子線は電子光学系17で制御され、電子光学系17からステージ18上に載置された基板10に向かって電子線が照射される。この際マスクが設置されたステージ18が適宜移動することで基板10の第1の面10aの全面に所望のパターンが照射される。導通ピン15は、一端が基板10の裏面と接するように配置され、また、接地されている。導通ピン15からは正の電荷が供給され、導電膜12に正の電荷を発生させるように構成されている。
【0026】
図1(b)は、このようなパターン形成装置2のステージ18上に基板10が載置され、パターン形成される状態を示す。基板10は、第2の面10bを覆うように形成された導電膜12に導通ピン15の先端が接するようにステージ18上に配置される。この状態で、第1の面10aに形成された第1レジスト13に向かって、所望のパターンを形成するための電子線14が照射される。その際、基板10および第1レジスト13の内部には電子線に由来する電荷(図示せず)が蓄積される。
【0027】
ここで導電膜12はパターン形成装置2に具備された導通ピン15により電気的に接地されており、このことにより、電荷が蓄積された第1レジスト13と対向する領域の導電膜12には相反する電荷(図示せず)が発生する。すなわち、これら相反する電荷により電界は相殺され、電子線14の照射が所望のパターンどおりに精度よく行われる。
【0028】
電子線によりパターンを描画した後、現像工程で電子照射された部分のレジストを現像液に溶解させて除去する。そして、エッチングを行い、第1レジスト13で保護されず露出した部分をエッチングして遮光膜11および基板10に第2のパターンが形成される(図1(c)参照)。
【0029】
次に、第2のパターンが形成された基板10の上に、第2のパターンを被覆するための第2レジスト16を成膜する。この状態で基板10の第2の面10b側をエッチングすることで図1(d)に示すごとく、第2の面10b上に形成された導電膜12を除去する。導電膜12は通常のウエットエッチングにより除去すればよい。
【0030】
最後に図1(e)に示すごとく第2レジスト16を除去して、パターン形成が完了する。かかる工程により、基板10上に所望のパターンが形成されたフォトマスク1が得られる。
【0031】
フォトマスク1は、パターン形成される面(第1の面10a)と反対側の面(第2の面10b)に導電膜12を形成し、導通ピン15で導通をとった状態でパターン形成される。これにより電界の発生を抑止できるため、電子線の歪みが防止され、高精度でパターン形成されたフォトマスク1が得られる。
【0032】
導電膜12は、基板10の第2の面10b全面に形成されるので、遮光膜11が島状に形成され連続していない場合でも、電気的な接地が可能となる。また導電膜12は第1レジスト13と接触しないため、レジストの解像性を損なわない。
【0033】
さらに、図3に示す従来例に比べて、塵芥由来のパターニング不良の恐れが少ない。つまり、図3の従来例では、第1レジスト23を破って導通ピン25を遮光膜21に導通させるため、第1レジスト23を穿孔することにより、塵芥が発生してパターニング不良を引き起こす恐れがある。これに対し、本発明では第1レジスト13を穿孔する必要がないため、かかる恐れを回避できる。
【0034】
またパターン形成装置2は、被加工基板裏面に形成された導電膜と導通をとる手段を具備するため、当該導電膜に電界の発生を抑止する効果を付与することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係るパターン形成方法により製造されるフォトマスクの製造工程を示す模式図。
【図2】本発明に係るパターン形成装置の構成を示す模式図。
【図3】従来技術に係るパターン形成方法を示す模式図。
【符号の説明】
【0036】

10、20…基板
11、21…遮光膜
12、22…導電膜
13、23…第1レジスト
14…電子線
15、25…導通ピン
16…第2レジスト
17…電子光学系
18…ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面および前記第1の面と向かい合う第2の面を有する基板にパターンを形成するパターン形成方法であって、
前記第2の面に導電膜を形成し、
前記第1の面側から荷電粒子線を照射することにより前記第1の面側に前記パターンを形成するパターン形成方法。
【請求項2】
前記導電膜に導通手段を接続し、前記パターンを形成する請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記第1の面上に、遮光膜を島状に配置し、
前記遮光膜をレジストで覆い、前記荷電粒子線の照射を行う請求項1または2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
第1の面および前記第1の面と向かい合う第2の面を有する基板をパターン形成するパターン形成装置であって、
前記第1の面に向かって荷電粒子線を照射して前記第1の面側に前記パターンを形成する粒子線照射手段と、
前記第2の面側と導通する導通手段と、を備えるパターン形成装置。
【請求項5】
前記導通手段は、前記第2の面に形成された導電膜と接触して接地されている請求項4に記載のパターン形成装置。
【請求項6】
第1の面および前記第1の面と向かい合う第2の面を有する基板と、
前記基板の第1の面側に荷電粒子線照射により形成されたパターンと、を有し、
前記第2の面を覆うように導電膜が形成され、または、前記第2の面を覆うように導電膜が形成され剥離されているフォトマスク。
【請求項7】
前記第1の面上に、遮光膜が島状に形成されている請求項6に記載のフォトマスク。
【請求項8】
第1の面および前記第1の面と向かい合う第2の面を有する基板の前記第1の面側にパターンが形成されたフォトマスクの製造方法であって、
前記第2の面に導電膜を形成し、
前記第1の面側から荷電粒子線を照射することにより前記第1の面側に前記パターンを形成するフォトマスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−63799(P2009−63799A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231147(P2007−231147)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】