説明

パターン形成方法

【課題】基板上に成膜された透明導電膜等の被加工膜にレーザー照射を行うことにより当該被加工膜に所定のパターンを形成するパターン形成方法において、レーザー照射によって発生する被加工膜のバリや溶融物等の不要物の付着が無くかつ所定のパターンを有する被加工膜を形成することができるパターン形成方法を提供する。
【解決手段】基板1上に成膜された透明導電膜2にレーザー照射を行うことにより透明導電膜2に所定のパターン5を形成するパターン形成方法において、透明導電膜2上にその上面を被覆する薄膜状の犠牲層4を成膜し、犠牲層4を介して透明導電膜2にレーザー照射を行い、その後、エッチング液として熱燐酸を用いて、レーザー照射により発生し犠牲層4の上面に付着した透明導電膜2及び犠牲層4のバリ、溶融物等の不要物3を犠牲層4と共に除去するウェットエッチング処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薄膜太陽電池パネルや電子ペーパーの電極膜等のデバイスを形成する工程において、基板上に成膜された被加工膜にレーザー照射を行うことにより当該被加工膜に所定のパターンを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種のパターン形成方法においては、例えば、薄膜太陽電池パネルの作製に当たり基板上に成膜された被加工膜に対して、レーザースクライブ法によって直接レーザー照射を行うことにより、当該被加工膜に所定のパターンを形成することが行われている。(例えば、特許文献1の段落番号[0007]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−87041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図2は、従来のパターン形成方法を示す模式図である。
【0005】
このパターン形成方法においては、集積型薄膜太陽電池パネルの作製において、図2(a)図示のように、まず基板1上にCVD等の蒸着法により下部電極膜として、例えばZnO膜やITO膜の透明導電膜2が成膜される。次に、図2(b)図示のように、レーザー光源(図示せず)よりレーザー光を直接透明導電膜2に対して出射し、透明導電膜2のレーザー光が照射された部分を除去することにより(レーザースクライブ法)、図2(c)図示のように、透明導電膜2に所定のパターン5が形成される。その後、この透明導電膜2上に半導体膜、上部電極としての導電膜が順次積層される。このようにして、集積型薄膜太陽電池パネルが形成される。
【0006】
この従来のレーザースクライブ法によるパターン形成方法においては、図2(b)図示のように、レーザー光の照射時に透明導電膜2のバリや溶融物等の不要物3が発生し、図2(c)図示のように、パターン形成と共にこのような不要物3が透明導電膜2の上面に付着してしまう。そして、一旦付着してしまうと、この不要物3のみを透明導電膜2の上面から除去することは困難となり、不要物3が付着したままの透明導電膜2上に半導体膜を積層するとデバイス特性の劣化等の不具合が発生してしまう。
【0007】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、基板上に成膜された透明導電膜等の被加工膜にレーザー照射を行うことにより当該被加工膜に所定のパターンを形成するパターン形成方法において、レーザー照射によって発生する被加工膜のバリや溶融物等の不要物の付着が無くかつ所定のパターンを有する被加工膜を形成することができるパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、基板上に成膜された被加工膜にレーザー照射を行うことにより当該被加工膜に所定のパターンを形成するパターン形成方法において、前記被加工膜上に当該被加工膜の上面を被覆する薄膜状の犠牲層を成膜し、前記犠牲層を介して前記被加工膜にレーザー照射を行い、その後、所定のエッチング液を用いて、前記レーザー照射により発生し前記犠牲層の上面に付着した前記被加工膜及び前記犠牲層の不要物を前記犠牲層と共に除去するウェットエッチング処理を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたパターン形成方法において、前記犠牲層はシリコン窒化膜であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載されたパターン形成方法において、前記エッチング液は熱燐酸であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1乃至請求項3に係る発明のパターン形成方法においては、パターン形成のためのレーザー照射により不可避的に発生し被加工膜の上面に付着する当該被加工膜のバリ、溶融物等の不要物を、被加工膜の上面を被覆するように成膜した薄膜状の犠牲層の上面に積極的に付着させた後、不要物が付着した犠牲層のみを選択的にエッチング除去することにより、デバイス特性の劣化等の不具合の原因となる不要物の付着が無くかつ所定のパターンを有する被加工導電膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るパターン形成方法を模式的に示す図である。
【図2】従来のパターン形成方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るパターン形成方法を模式的に示したものである。
【0015】
このパターン形成方法では、集積型薄膜太陽電池パネルの作製において、従来技術と同様にまず基板1にCVD等の蒸着法により下部電極膜として、例えばZnO膜やITO膜の透明導電膜2が成膜された後、図1(a)図示のように、透明導電膜2の上面を被覆するようにしてCVD等の蒸着法やスパッタリング法などによって、例えばシリコン窒化膜から成る薄膜状の犠牲層4を成膜する。なお、薄膜状の犠牲層4の膜厚は、出射されるレーザー光(後述)の強度により適宜設定される。次に、図1(b)図示のように、レーザー光源(図示せず)よりレーザー光を犠牲層4を介して透明導電膜2に対して出射し、犠牲層4及び透明導電膜2のレーザー光が照射された部分を除去することにより(レーザースクライブ法)、図1(c)図示のように、犠牲層4及び透明導電膜2に所定のパターン5が形成される。このレーザー光の照射時には、透明導電膜2及び犠牲層4のバリや溶融物等の不要物3が発生して、図1(c)図示のように、パターン5形成と共に犠牲層4の上面に付着する。
【0016】
その後、犠牲層4のみを選択的にエッチング除去するエッチング液、例えば熱燐酸を用いて従前公知のウェットエッチング方式により、不要物3が付着した状態の犠牲層4のみをエッチング除去する。その結果、図1(d)図示のように、不要物3の付着が無くかつ所定のパターン5を有する透明導電膜が基板1上に形成される。
【0017】
その後、この透明導電膜2上に半導体膜、上部電極としての導電膜が順次積層され、集積型薄膜太陽電池パネルが形成される。
【0018】
このように、本実施形態では、パターン5形成のためのレーザー照射により不可避的に発生し透明導電膜2の上面に付着する透明導電膜のバリ、溶融物等の不要物3を、透明導電膜2の上面を被覆するように成膜した薄膜状の犠牲層4の上面に積極的に付着させた後、不要物3が付着した犠牲層4のみを選択的にエッチング除去することにより、デバイス特性の劣化等の不具合の原因となる不要物3の付着を免れかつ所定のパターン5が形成された透明導電膜2を得ることができる。
【0019】
なお、上記の実施形態では、レーザー照射によりパターン5が形成される被加工膜として、基板1上に成膜された上部電極膜としての透明導電膜2について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、他の膜、例えば半導体膜を被加工膜とする場合にも適用でき、さらに、太陽電池パネルの作製に限らず、電子ペーパーの電極膜等のデバイスを形成する工程においてレーザー照射により被加工膜に所定パターンを形成する場合にも適用できる。
【0020】
また、上記の実施形態では、被加工膜の上面に成膜される薄膜状の犠牲層4として、シリコン窒化膜を適用する場合について説明してきたが、本発明はこれに限定されず他の成分の薄膜を犠牲層4として用いてもよい。
【0021】
さらに、薄膜状の犠牲層4を選択的にエッチング除去するエッチング液としては、熱燐酸に限定されず、除去対象である薄膜状の犠牲層4の種類に応じて適宜選択使用される。
【符号の説明】
【0022】
1 基板
2 透明導電膜(被加工膜)
3 不要物
4 犠牲層
5 パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に成膜された被加工膜にレーザー照射を行うことにより当該被加工膜に所定のパターンを形成するパターン形成方法において、
前記被加工膜上に当該被加工膜の上面を被覆する薄膜状の犠牲層を成膜し、
前記犠牲層を介して前記被加工膜にレーザー照射を行い、
その後、所定のエッチング液を用いて、前記レーザー照射により発生し前記犠牲層の上面に付着した前記被加工膜及び前記犠牲層の不要物を前記犠牲層と共に除去するウェットエッチング処理を行うことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたパターン形成方法において、前記犠牲層はシリコン窒化膜であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
請求項1に記載されたパターン形成方法において、前記エッチング液は熱燐酸であることを特徴とするパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−170955(P2012−170955A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31828(P2011−31828)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】