説明

パターン配置方法およびその方法を用いて作成されたマスク、並びにそのマスクを用いた転写方法

【課題】分割不可パターンの配置可能領域の不足を解消できるパターン配置方法を提供する。
【解決手段】所定幅の素子領域を有するように設計したパターンを所定幅のスクライブライン領域を空けた所定の配置ピッチで配置する第1工程と、マスク上のスクライブライン領域に分割不可パターンを配置する第2工程とを備え、第1工程は、デバイスチップの配置ピッチを1つのサブフィールドの一辺の正の整数倍の値に設定すると共に、スクライブライン領域を有するサブフィールドと隣接し素子領域の縁に相当するサブフィールドに所定幅の空白領域をスクライブライン領域と平行に、かつ、空白領域とスクライブライン領域との境界がサブフィールドどうしの境界と一致するように配置する工程を含み、第2工程は、スクライブライン領域を含むサブフィールド内に分割不可パターンを配置する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パターン配置方法およびその方法を用いて作成されたマスク、並びにそのマスクを用いた転写方法に関し、詳しくは、分割転写方式用のマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体回路製造工程の1つである露光工程では、光源としてi線、KrFレーザー、ArFレーザーなどの光を用いた一括転写方式が用いられてきた。
一括転写方式とは、マスク上に設けられた1つまたは複数のデバイスチップを一括してウエハ上に順次転写していく方式である。
これらの一括転写範囲はウエハ上で縦横20〜30mm前後であり、この大きさは光露光機の光学フィールドの大きさによって決められている。
【0003】
一方、光露光機を上回る解像度の実現を目指して、光源に電子線などの荷電粒子線を用いた荷電粒子線転写装置の検討が進められている。
しかし、荷電粒子線を用いる場合、収差制御やマスク精度の問題から、光露光機のように大面積に対して一括転写することは非常に困難である。
このため、荷電粒子線転写装置の開発においては、分割転写方式を用いた転写装置が幾つか検討されている。
なお、分割転写方式とは転写すべきデバイスパターンを、サブフィールドと呼ばれる複数の小領域に分割し、サブフィールドごとに順次ウエハ上に転写していく方式のことである(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−251317号公報
【特許文献2】特開平9−180987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、分割転写方式は、電子線などの荷電粒子線を用いることに起因する収差制御やマスク精度の問題を解決するうえでは有利である。
しかしながら、従来のような画一的な分割方法では、以下に述べるようにアライメントマークのような分割不可パターンを配置できる領域が不足する恐れがある。以下、アライメントマークを例に述べる。
【0006】
デバイスチップの製造工程では、数回から数十回の露光工程があり、各露光工程では予め前工程でウエハ上に設けられたアライメントマークを読み取ることによって、重ね合わせ露光を行う。
上記のアライメントマークとしては、例えば、例えば、図12(a)や図12(b)に示されるようなパターンからなるアライメントマーク105が用いられる。
デバイスチップの製造工程では、各層ごとに複数のアライメントマーク105を配置するのが一般的で、アライメントマーク105は、図13に示されるデバイスチップ102間のスクライブライン領域104に配置されることが多い。
スクライブライン領域104とは、図13に示されるように、ウエハ上に複数のデバイスチップ102が一括して作り込まれた後、各デバイスチップ102にダイシングされる際の切り代として確保されるデバイスチップ102間の領域のことである。
スクライブライン領域104には、上述のアライメントマーク105の他にも重ね合せ測定用のマークや評価用のTEGパターンなども配置される。
【0007】
しかし、分割転写方式の場合には、サブフィールドごとに分割して転写するため、以下の理由によりアライメントマークの配置位置が制約を受けてしまう。
例えば、図14(a)に示されるようなCADレイアウトの場合を考える。スクライブライン領域104にアライメントマーク5が配置されている。
これを複数のサブフィールド103に分割するときに、仮に図14(b)に示されるような位置で分割するのであれば、アライメントマーク105は図14(c)のように転写されるので問題はない。
【0008】
しかし、仮に図14(d)に示されるように、サブフィールド103どうしの境界がアライメントマーク105と重なってしまうと、アライメントマーク105が上下のサブフィールド103に分割されることになる。
この上下のサブフィールド103をウエハ上で正確につなぎ合わせて転写することができれば問題ないが、サブフィールド103のつなぎ合わせ精度はある程度のばらつきをもつため、つなぎ合わせ精度が不十分な場合、図14(e)に示されるようにアライメントマーク105に位置ずれが生じる恐れがある。
図14(e)に示されるような位置ずれの生じたアライメントマーク105は次工程の露光で読み取る際に測定を誤らせる恐れがある。したがって、アライメントマーク105は、図14(b)に示されるように、サブフィールド103どうしの境界と重ならない位置に配置することが望ましい。
【0009】
次に、図15に示されるようなCADレイアウトについて考える。同一寸法のデバイスチップ102が計25個配置されており、このレイアウトを250μm角の矩形のサブフィールド103に分割したのが図16であり、図16のC部を拡大した部分拡大図が図17である。図15および図17に示されるCADレイアウト上の各寸法を以下のように定義する。なお、このCADレイアウトは、ウエハ上と同じ寸法で作画されている。
【0010】
A1x CAD上のX方向のサブフィールドサイズ
A1y CAD上のY方向のサブフィールドサイズ
B1x CAD上のX方向のデバイスチップのサイズ
B1y CAD上のY方向のデバイスチップのサイズ
C1x CAD上のX方向のスクライブライン領域の幅
C1y CAD上のY方向のスクライブライン領域の幅
【0011】
A1x=A1y=250μm
B1x=1070μm
B1y=1210μm
C1x=100μm
C1y=100μm
【0012】
ここで、図17に示されるように、スクライブライン領域104aにはサブフィールド103の境界が横たわっていないため、サブフィールド103どうしの境界に配慮すればアライメントマーク5を配置することができる。スクライブライン104bについても同様である。
一方、スクライブライン領域104cでは、サブフィールド103どうしの境界が左から右まで横たわっているため、このスクライブライン領域104cにはアライメントマーク5を一切配置することができない。スクライブライン領域104dについても同様である。
【0013】
以上のように、従来例のような画一的な分割方法ではスクライブライン領域上にアライメントマークのような分割不可パターンを配置できる領域が限定されてしまう。
また、前述のように、スクライブライン領域にはアライメントマークだけでなく、他の用途のマークやスクライブTEGのようなパターンも配置されるため、それらのパターンについても分割を回避しようとすると、分割不可パターンの配置可能領域が不足する恐れがより高くなる。
【0014】
この発明は以上のような事情を考慮してなされたものであり、分割不可パターンの配置可能領域の不足を解消できるパターン配置方法およびその方法を用いて作成されたマスク、並びにそのマスクを用いた転写方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、1つのデバイスチップのパターンを複数の矩形のサブフィールド毎に分割してウエハ上に転写する分割転写方式用のマスク上に、所定幅の素子領域を有するように設計されたデバイスチップのパターンを所定幅のスクライブライン領域を空けた所定の配置ピッチで配置する第1工程と、マスク上のスクライブライン領域に分割不可パターンを配置する第2工程とを備え、第1工程は、デバイスチップの配置ピッチを1つのサブフィールドの一辺の正の整数倍の値に設定すると共に、スクライブライン領域を有するサブフィールドと隣接し素子領域の縁に相当するサブフィールドに所定幅の空白領域をスクライブライン領域と平行に、かつ、空白領域とスクライブライン領域との境界がサブフィールドどうしの境界と一致するように配置する工程を含み、第2工程は、スクライブライン領域を含むサブフィールド内に分割不可パターンを配置する工程を含むことを特徴とするパターン配置方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、マスク上におけるデバイスチップの配置ピッチが1つのサブフィールドの一辺の整数倍となるように設定されると共に、所定幅の空白領域がスクライブライン領域を有するサブフィールドに隣接し素子領域の縁に相当するサブフィールドにスクライブライン領域と平行に、かつ、空白領域とスクライブライン領域との境界がサブフィールドどうしの境界と一致するように配置されるので、サブフィールドどうしの境界がスクライブライン領域に横たわることがなくなり、スクライブライン領域にサブフィールドの境界を横切らないように分割不可パターンを配置することが可能となり、分割不可パターンの配置可能領域の不足を解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明によるパターン配置方法は、1つのデバイスチップのパターンを複数の矩形のサブフィールド毎に分割してウエハ上に転写する分割転写方式用のマスク上に、所定幅の素子領域を有するように設計されたデバイスチップのパターンを所定幅のスクライブライン領域を空けた所定の配置ピッチで配置する第1工程と、マスク上のスクライブライン領域に分割不可パターンを配置する第2工程とを備え、第1工程は、デバイスチップの配置ピッチを1つのサブフィールドの一辺の正の整数倍の値に設定すると共に、スクライブライン領域を有するサブフィールドと隣接し素子領域の縁に相当するサブフィールドに所定幅の空白領域をスクライブライン領域と平行に、かつ、空白領域とスクライブライン領域との境界がサブフィールドどうしの境界と一致するように配置する工程を含み、第2工程は、スクライブライン領域を含むサブフィールド内に分割不可パターンを配置する工程を含むことを特徴とする。
【0018】
この発明によるパターン配置方法において、サブフィールドとは、マスク上において1つのデバイスチップのパターンを複数の矩形の領域に分割したものを意味する。
デバイスチップとは、例えば、IC、SSI、MSI、LSI、VLSI、ULSIなどの半導体集積回路を意味する。
素子領域とは、デバイスチップのパターンが形成された領域を意味する。
スクライブライン領域とは、マスク上において、ウエハ上に作成される複数のデバイスチップ間に設けられるスクライブラインに相当する領域を意味する。
配置ピッチとは、サブフィールドの一辺と平行な方向に沿った素子領域の幅、空白領域の幅およびスクライブライン領域の幅の合計値を意味する。
空白領域とは、デバイスチップのパターンが配置されていない空白の領域を意味する。
分割不可パターンとは、ウエハ上に複数のデバイスチップを作成していくうえで必要となり、サブフィールドによって分割されることが好ましくない様々なパターンやマークを意味し、例えば、アライメントマーク、重ね合せ測定用のマーク、評価用のTEGパターンなどが挙げられる。
【0019】
この発明によるパターン配置方法において、マスク上の素子領域の幅をB2、マスク上のスクライブライン領域の幅をC2、マスク上のサブフィールドの一辺の寸法をA2としたとき、正の整数nは次の式(1)を満たすように設定され、マスク上の空白領域の幅Eは次の式(2)を満たすように設定されてもよい。
【数1】

【数2】

【0020】
上述の方法によれば、マスク上におけるデバイスチップの配置ピッチと空白領域の幅を容易かつ一義的に設定できるようになり、この発明によるパターン配置方法を実施するうえで非常に好ましい。
【0021】
この発明は別の観点からみると、この発明による上述のパターン配置方法を用いて作成されたマスクを提供するものでもある。
【0022】
この発明は更に別の観点からみると、この発明による上述のパターン配置方法を用いて作成されたマスクを用いてデバイスチップのパターンを矩形のサブフィールド毎に分割してウエハ上に転写する方法であって、素子領域の縁に相当し空白領域を有するサブフィールドを介してウエハに転写する第3工程と、前記サブフィールドに隣接しスクライブライン領域を有するサブフィールドを介してウエハに転写する第4工程とを備え、第4工程は、サブフィールドの一部が前記空白領域と重なるように転写する工程を含むことを特徴とする転写方法を提供するものでもある。
【0023】
この発明による上述の転写方法によれば、第4工程でスクライブライン領域を有するサブフィールドを介して転写を行う際に、サブフィールドの一部が前記空白領域と重なるように転写が行われるので、ウエハに対するチップ乗り数を減少させることなく転写できる。
また、上述のとおり、マスク上においてサブフィールドどうしの境界がスクライブライン領域に横たわることがなくなり、スクライブライン領域にサブフィールドの境界を横切らないように分割不可パターンを配置することが可能となるためスクライブライン領域上に位置ずれのない分割不可パターンを精度よく正確に転写できる。
なお、この発明において、マスクを介して転写する際の光源としては、電子線などの荷電粒子線が好適に用いられる。
【0024】
以下、図面に示す実施例に基づいてこの発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0025】
図1〜11に基づいて、この発明の実施例によるパターン配置方法と転写方法について説明する。
図1は実施例によるパターン配置方法を実施する対象となるCAD上のデバイスチップの配置図、図2は図1に示される配置図をCAD上で複数のサブフィールドに分割した状態を示す説明図、図3は図2のA部をした部分拡大図、図4は図1に示される配置図を基に実施例によるパターン配置方法を適用してマスク上で複数のサブフィールドに分割した状態を示す説明図、図5は図4の左下部分を拡大した部分拡大図、図6は空白領域とスクライブライン領域との配置関係を示す説明図である。
【0026】
図4〜6に示されるように、実施例によるパターン配置方法は、1つのデバイスチップ2のパターンを複数の矩形のサブフィールド3ごとに分割してウエハ(図示せず)上に転写する分割転写方式用のマスク1上に、所定幅の素子領域を有するように設計されたデバイスチップ2のパターンを所定幅のスクライブライン領域4を空けたX方向およびY方向の所定の配置ピッチD2x,D2yで配置する第1工程と、マスク1上のスクライブライン領域4に分割不可パターン5を配置する第2工程とを備えてなる。
【0027】
第1工程は、図4に示されるデバイスチップ2のX方向の配置ピッチD2xおよびY方向の配置ピッチD2yを、図5に示される1つのサブフィールド3のX方向およびY方向のサブフィールドサイズ(サブフィールドの一辺の寸法)A2x,A2yの正の整数倍の値に設定すると共に、スクライブライン領域4を有するサブフィールド3と隣接し素子領域の縁に相当するサブフィールド3に所定幅のX方向およびY方向の空白領域6をスクライブライン領域4と平行に、かつ、空白領域6とスクライブライン領域4との境界がサブフィールド3どうしの境界と一致するように配置する工程を含み、第2工程は、図5に示されるスクライブライン領域4を含むサブフィールド3内に図6に示される分割不可パターン5を配置する工程を含んでいる。
【0028】
以下、上記のパターン配置方法についてより詳細に説明する。なお、図1〜3に示されるデバイスチップ2の配置図はCADを用いて作成され、CAD上の寸法はウエハ上と同じ寸法で作画されているものとする。
【0029】
図1および図3に示される配置図中の符号について次のように定義する。
A1x CAD上のX方向のサブフィールドサイズ
A1y CAD上のY方向のサブフィールドサイズ
B1x CAD上のX方向のデバイスチップのサイズ
B1y CAD上のY方向のデバイスチップのサイズ
C1x CAD上のX方向のスクライブライン領域の幅
C1y CAD上のY方向のスクライブライン領域の幅
D1x CAD上のX方向のデバイスチップの配置ピッチ
D1y CAD上のY方向のデバイスチップの配置ピッチ
【0030】
図4および図5に示されるマスク上の符号について次のように定義する。
A2x マスク上のX方向のサブフィールドサイズ
A2y マスク上のY方向のサブフィールドサイズ
B2x マスク上のX方向のデバイスチップのサイズ
B2y マスク上のY方向のデバイスチップのサイズ
C2x マスク上のX方向のスクライブライン領域の幅
C2y マスク上のY方向のスクライブライン領域の幅
D2x マスク上のX方向のデバイスチップの配置ピッチ
D2y マスク上のY方向のデバイスチップの配置ピッチ
Ex マスク上のX方向の空白領域の幅
Ey マスク上のY方向の空白領域の幅
なお、図1〜3に示されるCAD上の配置図に対するマスク上のマスク倍率をmとする。
【0031】
各寸法は以下の関係にある。
D1x=B1x+C1x,D1y=B1y+C1y
A2x=A1x*m,A2y=A1y*
B2x=B1x*m,B2y=B1y*
C2x=C1x*m,C2y=C1y*
D2x=B2x+C2x+Ex,D2y=B2y+C2y+Ey
【0032】
なお、図6に示されるように、スクライブライン領域4に配置される分割不可パターン5の幅は、スクライブライン領域4の幅を上回らないものとし、かつ分割不可パターン5の長さもサブフィールドサイズを上回らないものとする。
【0033】
ここで、
A1x(nx−1)<D1x≦A1x*nx
となる正の整数nxを求める。
この時のA1x*nxをm倍したものを、図4に示されるマスク1上のデバイスチップ2の配置ピッチD2xと定義する。すなわち、
D2x=A1x*nx*
である。
これから図5に示されるマスク1上の空白領域6の幅Exが求まる。
D2x=B2x+C2x+Ex
であるから、
Ex=D2x−B2x−C2x
である。
【0034】
次に、
A1y(ny−1)<D1y≦A1y*ny
となる正の整数nyを求める。
この時のA1y*nyをm倍したものを、図4に示されるマスク1上のデバイスチップ2の配置ピッチD2yと定義する。すなわち、
D2y=A1y*ny*
である。
これから図5に示されるマスク1上の空白領域6の幅Eyが求まる。
D2y=B2y+C2y+Ey
であるから、
Ey=D2y−B2y−C2y
である。
【0035】
次に、図5に示されるように、マスク1上において、あるデバイスチップ2の左辺からその左側のサブフィールド3の境界までの距離がC2xとなり、かつ、デバイスチップ2の下辺からその下側のサブフィールド3の境界までの距離がC2yとなるようにデバイスチップ2のパターンを配置する。
その他のデバイスチップ2は、求めたマスク1上のデバイスチップ2の配置ピッチD2xとD2yに従ってマスク1上に配置する。
この時、図5に示されるように、各デバイスチップ2間のX方向の空き領域の幅はC2x+Exとなり、図6に示されるように、スクライブライン領域4と空白領域6との境界はサブフィールド3どうしの境界に一致する。
つまり、図5に示されるように、各デバイスチップ2の左辺側からその左側のサブフィールド3の境界までの幅C2xの領域がY方向のスクライブライン領域4となり、各デバイスチップ2の右辺側からその右側のサブフィールド3の境界までの幅Exの領域がY方向の空白領域6になる。
【0036】
同様に各デバイスチップ2間のY方向の空き領域の幅はC2y+Eyとなり、スクライブライン領域4と空白領域6との境界はサブフィールド3どうしの境界に一致する。
つまり、各デバイスチップ2の下辺側からその下側のサブフィールド3の境界までの幅C2yの領域がX方向のスクライブライン領域4となり、各デバイスチップ2の上辺側からその上側のサブフィールド3の境界までの幅Eyの領域がX方向の空白領域6になる。
【0037】
次に、図6に示されるように、上記のY方向の各スクライブライン領域4にて、X方向のサブフィールド3どうしの境界を横切らない位置に分割不可パターン5を順に配置する。
同様に、上記のX方向の各スクライブライン領域4にて、Y方向のサブフィールド3どうしの境界を横切らない位置に分割不可パターン5を順に配置する。空白領域6には何もパターンを配置しない。
【0038】
以上の方法によって作成した分割転写方式用のマスク1を用いてウエハ上に分割転写を行うにあたり、空白領域6を有するサブフィールド3を介して電子線で転写した後、転写された空白領域6を覆い隠すように、スクライブライン領域4を有するサブフィールド3を空白領域6に一部重ねて電子線で転写する。以下、更に詳細な具体例を用いて説明する。
【0039】
図1に示されるCAD上の配置図を基に、上述の実施例によるパターン配置方法を適用してスクライブライン領域4に分割不可パターン5としてアライメントマークを配置する場合の具体例について、図7〜11を更に用いて説明する。図7〜9は具体例におけるマスクの部分拡大図であり、図10は転写工程を説明する説明図であり、図11はマスクを介してウエハ上に転写されたデバイスチップを示す説明図である。
【0040】
この具体例では、図1および図3に示されるCAD上の各サイズが次のように設定されている。
CAD上のX方向のサブフィールドサイズ:A1x=250μm
CAD上のY方向のサブフィールドサイズ:A1y=250μm
CAD上のX方向のデバイスチップのサイズ:B1x=1070μm
CAD上のY方向のデバイスチップのサイズ:B1y=1210μm
CAD上のX方向のスクライブライン領域の幅:C1x=100μm
CAD上のY方向のスクライブライン領域の幅:C1y=100μm
CAD上のX方向のデバイスチップの配置ピッチ:D1x=1170μm
CAD上のY方向のデバイスチップの配置ピッチ:D1y=1310μm
また、CAD上の配置図に対するマスクの倍率はm=4に設定されている。
【0041】
したがって、図7および図8に示されるように、
マスク上のX方向のサブフィールドサイズ:A2x=1000μm
マスク上のY方向のサブフィールドサイズ:A2y=1000μm
マスク上のX方向のデバイスチップのサイズ:B2x=4280μm
マスク上のY方向のデバイスチップのサイズ:B2y=4840μm
マスク上のX方向のスクライブライン領域の幅:C2x=400μm
マスク上のY方向のスクライブライン領域の幅:C2y=400μm
である。
【0042】
この時、
A1x(nx−1)<D1x≦A1x*nx
となる正の整数nxを求めるには、
250*(nx−1)<1170≦250*nx
となるnxを求めればよい。
仮に、nx=5とすると、
1000<1170≦1250
となるから、nx=5とすることができる。
したがって、図7に示されるマスク1(図4参照)上のX方向のデバイスチップ2の配置ピッチD2xは、
D2x=Alx*nx*m=250**4=5000μm
である。
また、図7に示されるマスク1上のX方向の空白領域の幅Exは、
Ex=D2x−B2x−C2x=5000−4280−400=320μm
となる。
【0043】
同様に、
A1y(nx−1)<D1y≦A1y*ny
となる正の整数nyを求めるには、
250*(ny−1)<1310≦250*ny
となるnyを求めればよい。
仮に、ny=6とすると、
1250<1310≦1500
となるから、ny=6とすることができる。
したがって、図8に示されるマスク1上のY方向のデバイスチップ2の配置ピッチD2yは、
D2y=Aly*ny*m=250**4=6000μm
である。
また、図8に示されるマスク1上のY方向の空白領域6の幅Eyは、
Ey=D2y−B2y−C2y=6000−4840−400=760μm
となる。
【0044】
次に、図7および図8に示されるように、マスク1上において、デバイスチップ2の左辺からその左側のサブフィールド3の境界までの距離がC2x=400μmとなり、かつ、デバイスチップ2の下辺からその下側のサブフィールド3の境界までの距離がC2y=400μmとなるようにデバイスチップ2を配置する。その他のデバイスチップ2は、求めたマスク1上のデバイスチップの配置ピッチD2x=5000μm、D2y=6000μmに従ってマスク1上に配置する。
【0045】
図7に示されるように、各デバイスチップ2間のX方向の空き領域の幅はC2x+Ex=400+320=760μmであり、各デバイスチップ2の左辺側からその左側のサブフィールド3の境界までの幅C2x=400μmの領域がY方向のスクライブライン領域4になり、各デバイスチップ2の右辺側からその右側のサブフィールド3の境界までの幅Ex=320μmの領域がY方向の空白領域6になる。
【0046】
また、図8に示されるように、各デバイスチップ2間のY方向の空き領域の幅はC2y+Ey=400+760=1160μmで、各デバイスチップ2の下辺側からその下側のサブフィールド3の境界までの幅C2y=400μmの領域がX方向のスクライブライン領域4になり、各デバイスチップ2の上辺側からその上側のサブフィールド3の境界までの幅Ey=760μmの領域がX方向の空白領域6になる。
【0047】
次に、図9に示されるように、マスク1上のY方向の各スクライブライン領域4にて、X方向のサブフィールド3どうしの境界を横切らない位置に分割不可パターン5としてアライメントマークを配置する。同様に、X方向の各スクライブライン領域4にも、Y方向のサブフィールド3どうしの境界を横切らない位置に分割不可パターン5としてアライメントマークを配置する。空白領域6には何もパターンを配置しない。
【0048】
以上の方法に従って作成した分割転写方式用のマスク1を用いてウエハ上に分割転写を行うにあたり、空白領域6を有するサブフィールド3を介して転写した後、転写された空白領域6を覆い隠すように、スクライブライン領域4を有するサブフィールド3を空白領域6に一部重ねて転写する。
【0049】
この転写工程について、図10に基づいて詳しく説明する。
図10(a)は、図9において一点鎖線で示されたB部に相当する2つのサブフィールド3a,3bを表している。サブフィールド3aは素子領域の縁に相当するパターンと空白領域6を有し、サブフィールド3bはスクライブライン領域4と分割不可パターン5としてのアライメントマークを有している。
まず、サブフィールド3aを介して素子領域の縁に相当するパターンを空白領域6と共に電子線でウエハ上に転写する。
【0050】
図10(b)はウエハ上に転写されたサブフィールド3aを示しており、ウエハ上に素子領域の縁に相当するパターンと空白領域6が転写されている。
次に、図10(c)に示されるように、サブフィールド3bの一部を空白領域6の上に重ねて電子線で転写する。
このようにして転写された結果、図10(d)に示されるようにサブフィールド3bのスクライブライン領域4と分割不可パターン5としてのアライメントマークが空白領域6を覆い隠すように転写される。
【0051】
このようにして転写された結果、図11に示されるように、ウエハに転写されたデバイスチップ2間にはスクライブライン領域4とスクライブライン領域上の分割不可パターン5しか介在せず、マスク1(図4参照)上の空白領域6(図6参照)は、転写結果に何ら影響を及ぼさない。このため、マスク上1に空白領域6を設けたことに起因して、ウエハ上のチップ乗り数が減少することはない。
そして、上述のとおり、分割不可パターン5は、マスク1上のサブフィールド3どうしの境界を横切らない位置に配置されるため、転写された分割不可パターン5は、分割転写によって位置ずれが生ずることなく、精度よく正確にウエハ上に転写される。
【0052】
以上、詳細に説明したように、この発明の実施例によれば、CADレイアウトと同様のデバイスピッチで転写でき、マスク上のサブフィールドの境界上に分割不可パターンが配置されることに起因する分割不可パターンの位置ずれも解消できる。
【0053】
なお、上述の実施例では、Y方向のスクライブライン領域4を設けたのは各デバイスチップ2の左辺側としたが、右辺側に設けても同様の効果が得られ、その場合は、各デバイスチップ2の左辺側が空白領域6となる。
同様に、X方向のスクライブライン領域4を各デバイスチップ2の上辺側に設けても同様の効果が得られ、その場合は各デバイスチップの下辺側が空白領域6になる。
【0054】
また、上述の実施例では、空白領域6を有するサブフィールド3を転写した後に、隣のサブフィールド3を転写する方法を示したが、転写順序を逆にしても同様の効果が得られる。
また、上述の実施例では、全てのデバイスチップ2間のスクライブライン領域4に空白領域6を隣接して配置した例を示したが、一部のデバイスチップ2間のスクライブライン領域4に限って空白領域6を配置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の実施例によるパターン配置方法を実施する対象となるCAD上のデバイスチップの配置図である。
【図2】図1に示される配置図をCAD上で複数のサブフィールドに分割した状態を示す説明図である。
【図3】図2のA部を拡大した部分拡大図である。
【図4】図1に示される配置図を基に実施例によるパターン配置方法を適用してマスク上で複数のサブフィールドに分割した状態を示す説明図である。
【図5】図4の左下部分を拡大した部分拡大図である。
【図6】空白領域とスクライブライン領域との配置関係を示す説明図である。
【図7】実施例の具体例におけるマスクの部分拡大図である。
【図8】実施例の具体例におけるマスクの部分拡大図である。
【図9】実施例の具体例におけるマスクの部分拡大図である。
【図10】実施例の具体例における転写工程を説明する説明図である。
【図11】実施例の具体例におけるマスクを介してウエハ上に転写されたデバイスチップを示す説明図である。
【図12】アライメントマークの例を示す説明図である。
【図13】スクライブライン領域を説明する説明図である。
【図14】従来の分割転写方式における課題を説明する説明図である。
【図15】従来のCADレイアウト図である。
【図16】従来の分割方法によって複数のサブフィールドに分割されたCADレイアウト図である。
【図17】図16のC部を拡大した部分拡大図である。
【符号の説明】
【0056】
1・・・マスク
2・・・デバイスチップ
3・・・サブフィールド
4・・・スクライブライン領域
5・・・分割不可パターン
6・・・空白領域
A1x・・・CAD上のX方向のサブフィールドサイズ
A1y・・・CAD上のY方向のサブフィールドサイズ
B1x・・・CAD上のX方向のデバイスチップのサイズ
B1y・・・CAD上のY方向のデバイスチップのサイズ
C1x・・・CAD上のX方向のスクライブライン領域の幅
C1y・・・CAD上のY方向のスクライブライン領域の幅
D1x・・・CAD上のX方向のデバイスチップの配置ピッチ
D1y・・・CAD上のY方向のデバイスチップの配置ピッチ
A2x・・・マスク上のX方向のサブフィールドサイズ
A2y・・・マスク上のY方向のサブフィールドサイズ
B2x・・・マスク上のX方向のデバイスチップのサイズ
B2y・・・マスク上のY方向のデバイスチップのサイズ
C2x・・・マスク上のX方向のスクライブライン領域の幅
C2y・・・マスク上のY方向のスクライブライン領域の幅
D2x・・・マスク上のX方向のデバイスチップの配置ピッチ
D2y・・・マスク上のY方向のデバイスチップの配置ピッチ
Ex・・・マスク上のX方向の空白領域の幅
Ey・・・マスク上のY方向の空白領域の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのデバイスチップのパターンを複数の矩形のサブフィールド毎に分割してウエハ上に転写する分割転写方式用のマスク上に、所定幅の素子領域を有するように設計されたデバイスチップのパターンを所定幅のスクライブライン領域を空けた所定の配置ピッチで配置する第1工程と、マスク上のスクライブライン領域に分割不可パターンを配置する第2工程とを備え、第1工程は、デバイスチップの配置ピッチを1つのサブフィールドの一辺の正の整数倍の値に設定すると共に、スクライブライン領域を有するサブフィールドと隣接し素子領域の縁に相当するサブフィールドに所定幅の空白領域をスクライブライン領域と平行に、かつ、空白領域とスクライブライン領域との境界がサブフィールドどうしの境界と一致するように配置する工程を含み、第2工程は、スクライブライン領域を含むサブフィールド内に分割不可パターンを配置する工程を含むことを特徴とするパターン配置方法。
【請求項2】
マスク上の素子領域の幅をB2、マスク上のスクライブライン領域の幅をC2、マスク上のサブフィールドの一辺の寸法をA2としたとき、正の整数nは次の式(1)を満たすように設定され、マスク上の空白領域の幅Eは次の式(2)を満たすように設定される請求項1に記載のパターン配置方法。
【数1】

【数2】

【請求項3】
請求項1又は2に記載のパターン配置方法を用いて作成されたマスク。
【請求項4】
請求項3に記載のマスクを用いてデバイスチップのパターンを矩形のサブフィールド毎に分割してウエハ上に転写する方法であって、素子領域の縁に相当し空白領域を有するサブフィールドを介してウエハに転写する第3工程と、前記サブフィールドに隣接しスクライブライン領域を有するサブフィールドを介してウエハに転写する第4工程とを備え、第4工程は、サブフィールドの一部が前記空白領域と重なるように転写する工程を含むことを特徴とする転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−158189(P2007−158189A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353868(P2005−353868)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】