説明

パッド、シート、クッション及びそれらの製造方法

【課題】設備の増加を極力防ぎ、製造コストを下げることができるパッド、シート、クッション及びそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合した混合物を型に注入し、軟質ポリウレタンフォームを形成し、前記軟質ポリウレタンフォームを脱型した後に、前記軟質ポリウレタンフォームをクラッシングし、前記クラッシング後で且つ前記軟質ポリウレタンフォームが常温になる前に、前記軟質ポリウレタンフォームの少なくとも一部を常温の加圧板によって圧縮する軟質ポリウレタンフォームの製造方法において、圧縮しない前記軟質ポリウレタンフォームの10%歪み時荷重に対する圧縮した前記軟質ポリウレタンフォームの一部の10%歪み時荷重の変化率が30%以上であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリウレタンフォームを有するパッド、シート及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用シートや家具用シート等、人が接触する部分を有するシート(以下、単に「シート」という。)においては、人がシートに接触する際の座り心地、ホールド感及びタッチ感の良さ等が求められている。
【0003】
従来のウレタンフォーム等からなるシートは、シートに座る人(以下、「乗員」という。)の着座時初期における座り心地の良さを求め、着座時の硬さを柔軟にする傾向があった。しかし、かかるシートは、ヒップポイントが低くなり、底付き感、突き上げ感を乗員に与え、結果として疲労感を乗員に与えやすいシートとなっていた。
【0004】
これを解決するために、ある程度の硬さ、弾力を持つ成型後のポリウレタンフォームの表面に柔らかいスラブウレタン(厚さ10〜20mm)を接着する技術がある。これにより、着座後のヒップポイントが低くなり過ぎることがなく、柔らかいタッチ感を有するシートを得ることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−186499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような二層構造のシートは、ポリウレタンフォームパッドの表面にスラブウレタンを接着する工程を要し、製造コストの増加を招く。また、デザインの自由度が小さいという問題点もある。さらに、接着層を有するため、乗員に微妙な異物感を与えることがある。
【0007】
そこで、本発明は、上述の問題を鑑みてなされたものであり、スラブウレタンの接着工程及び加熱圧縮等に伴う設備の増加を極力防ぎ、製造コストを下げ、かつ、柔らかいタッチ感を有するシート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、
少なくとも、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合した混合物を型に注入し、
軟質ポリウレタンフォームを形成し、
前記軟質ポリウレタンフォームを脱型した後に、前記軟質ポリウレタンフォームをクラッシングし、
前記クラッシング後で且つ前記軟質ポリウレタンフォームが常温になる前に、前記軟質ポリウレタンフォームの少なくとも一部を常温の加圧板によって圧縮する軟質ポリウレタンフォームの製造方法において、
圧縮しない前記軟質ポリウレタンフォームの10%歪み時荷重に対する圧縮した前記軟質ポリウレタンフォームの一部の10%歪み時荷重の変化率が30%以上であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明の一実施形態によると、
少なくとも、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合した混合物を型に注入し、
軟質ポリウレタンフォームを形成し、
前記軟質ポリウレタンフォームを脱型した後に、前記軟質ポリウレタンフォームをクラッシングし、
前記クラッシング後で且つ前記軟質ポリウレタンフォームを脱型してから30分以内に、前記軟質ポリウレタンフォームの少なくとも一部を常温の加圧板によって圧縮する軟質ポリウレタンフォームの製造方法において、
圧縮しない前記軟質ポリウレタンフォームの10%歪み時荷重に対する圧縮した前記軟質ポリウレタンフォームの一部の10%歪み時荷重の変化率が30%以上であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明の一実施形態によると、
少なくとも、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合した混合物を型に注入し、
軟質ポリウレタンフォームを形成し、
前記軟質ポリウレタンフォームを脱型した後に、前記軟質ポリウレタンフォームをクラッシングし、
前記クラッシング後で且つ前記軟質ポリウレタンフォームを脱型してから30分以内に、前記軟質ポリウレタンフォームの少なくとも一部を常温の加圧板によって圧縮する軟質ポリウレタンフォームの製造方法において、
圧縮しない前記軟質ポリウレタンフォームの10%歪み時荷重に対する圧縮した前記軟質ポリウレタンフォームの一部の10%歪み時荷重の変化率が30%以上であって、かつ、圧縮しない前記軟質ポリウレタンフォームの加圧板として鉄研盤を使用した静荷重たわみ試験における490N時減圧側たわみ量に対する圧縮した前記軟質ポリウレタンフォームの一部の490N時減圧側たわみ量の変化率が10%以下であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の一実施形態によると、
少なくとも、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合した混合物を型に注入し、
軟質ポリウレタンフォームを形成し、
前記軟質ポリウレタンフォームを脱型した後に、前記軟質ポリウレタンフォームをクラッシングし、
前記クラッシング後で且つ前記軟質ポリウレタンフォームが常温になる前に、前記軟質ポリウレタンフォームの少なくとも一部を常温の加圧板によって圧縮した軟質ポリウレタンフォームを有するシートであって、
圧縮しない前記軟質ポリウレタンフォームの10%歪み時荷重に対する圧縮した前記軟質ポリウレタンフォームの一部の10%歪み時荷重の変化率が30%以上であることを特徴とするシートが提供される。
【0012】
また、本発明の一実施形態によると、
少なくとも、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合した混合物を型に注入し、
軟質ポリウレタンフォームを形成し、
前記軟質ポリウレタンフォームを脱型した後に、前記軟質ポリウレタンフォームをクラッシングし、
前記クラッシング後で且つ前記軟質ポリウレタンフォームを脱型してから30分以内に、前記軟質ポリウレタンフォームの少なくとも一部を常温の加圧板によって圧縮した軟質ポリウレタンフォームを有するシートであって、
圧縮しない前記軟質ポリウレタンフォームの10%歪み時荷重に対する圧縮した前記軟質ポリウレタンフォームの一部の10%歪み時荷重の変化率が30%以上であることを特徴とするシートが提供される。
【0013】
また、本発明の一実施形態によると、
少なくとも、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合した混合物を型に注入し、
軟質ポリウレタンフォームを形成し、
前記軟質ポリウレタンフォームを脱型した後に、前記軟質ポリウレタンフォームをクラッシングし、
前記クラッシング後で且つ前記軟質ポリウレタンフォームを脱型してから30分以内に、前記軟質ポリウレタンフォームの少なくとも一部を常温の加圧板によって圧縮した軟質ポリウレタンフォームを有するシートであって、
圧縮しない前記軟質ポリウレタンフォームの10%歪み時荷重に対する圧縮した前記軟質ポリウレタンフォームの一部の10%歪み時荷重の変化率が30%以上であって、かつ、圧縮しない前記軟質ポリウレタンフォームの加圧板として鉄研盤を使用した静荷重たわみ試験における490N時減圧側たわみ量に対する圧縮した前記軟質ポリウレタンフォームの一部の490N時減圧側たわみ量の変化率が10%以下であることを特徴とするシートが提供される。
【0014】
また、前記軟質ポリウレタンフォームを圧縮速度50mm/minによってその厚さの40%まで予備圧縮した後、再度厚さの40%まで圧縮し、圧縮を解除して求めた荷重―たわみ曲線において、
前記荷重-たわみ曲線の原点A、前記荷重-たわみ曲線の最高点B、前記荷重0−たわみ曲線の最高点Cとし、
A、B及びCの3点を結んだ三角部の面積Dに対し、AとBとを結んだ直線と、前記荷重−たわみ曲線の加圧側たわみ曲線との面積差をEとし、
AとBとを結んだ直線と、前記荷重-たわみ曲線の減圧側たわみ曲線との面積差を面積Fとする場合、
以下の式を満足する前記軟質ポリウレタンフォームを一部に有するようにしてもよい。
(E+F)/D×100≦25
【発明の効果】
【0015】
本発明により得られたシートの圧縮部分は、小変位時の硬さが小さいため、柔らかいタッチ感を有し、かつ、ある程度の弾力を有するため、座り心地感も良好である。つまり、成型後のポリウレタンフォームの所望の部分に、柔らかいタッチ感を自由に設定できる。
【0016】
また、本発明によると、圧縮率を変えることにより、パッドやシートクッションに無段階に小変位時の硬さを設定することができ、多種多様な乗り心地ニーズに対応することができる。したがって、自動車、航空機、船舶などの乗り物の座席用クッションや家具等の座席用クッションに適用することができる。また、シートの部分ごとに所望の小変位時の硬さを設定することが可能である。
【0017】
さらに、本発明は、スラブウレタンの接着工程及び加熱圧縮を必要としないため、製造コストを大幅に下げ、かつ、柔らかいタッチ感を有するシートを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態について以下説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
本実施形態においては、本発明にかかるシート及びその製造方法を自動車用シートに適用した場合について説明する。但し、本発明にかかるシート及びその製造方法は、自動車用シートに限定されるわけではなく、家具用シートその他のシートにも適用できることは言うまでもない。
【0020】
図1及び図2を参照する。図1及び図2に本発明の本実施形態に係る車両用シートの外観図を示す。図1には、本実施形態に係るシートの座部100の外観図を示し、図2には、本実施形態に係るシートの背部200の外観図を示している。
【0021】
図1に示すとおり、本実施形態に係る車両用シートの座部100は、側部102及び104、前部108並びに後部106を有している。本実施形態に係る車両用シートの座部100の側部102及び104の一部には、乗員の大腿部が接触する。また、本実施形態に係る車両用シートの座部100の前部108並びに後部106の一部には、乗員の臀部及び大腿部が接触する。これらシートに座る人の一部が接触する部分には、柔らかいタッチ感が要求される。
【0022】
また、図2に示すとおり、本実施形態に係る車両用シートの背部200は、側部202及び204、上部206並びに及び下部208を有している。本実施形態に係る車両用シートの背部200の側部202及び204、上部206並びに及び下部208一部には、乗員の背中及び脇部等が接触する。これら乗員の一部が接触する部分には、柔らかいタッチ感が要求される。
【0023】
本実施形態に係る車両用シートにおいては、座部100及び背部200をそれぞれ一体成型し、特定部分(特に、乗員が接触する部分)を圧縮することにより、10%歪み時荷重(小変位時の硬さ)が低下し、タッチ感が向上する。490N時減圧側のたわみ量がほとんど変化しないため、着座後のたわみ量(ヒップポイント)がほとんど変化しない。
【0024】
10%歪み時荷重(小変位時の硬さ)とは、シートの厚さを元の厚さの10%まで圧縮するときの力[N]をいい、これによりタッチ感が表現される。乗員は、シートに腰を掛ける瞬間(臀部が座部100に接触する瞬間)、10%歪み時荷重が小さいと、柔らかいタッチ感を得ることができる。同様に、乗員は、シートに背をもたれる瞬間(背中が背部200に接触する瞬間)、10%歪み時荷重が小さいと、柔らかいタッチ感を得ることができる。さらに、乗員は、完全に着座した後でも、体の一部が座部100の側部102及び104に軽く接触する時、10%歪み時荷重が小さいと、柔らかいタッチ感を得ることができる。同様に、乗員は、体の一部が背部200の側部202及び204に軽く接触する時、10%歪み時荷重が小さいと、柔らかいタッチ感を得ることができる。
【0025】
以下、本実施形態に係る本発明の車両用シートにおいて、特定部分を圧縮し、10%歪み時荷重(小変位時の硬さ)を低下させる方法について説明する。
【0026】
図3には、主成分として、少なくともポリオール、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、整泡剤及び触媒の原料(原液)を型に注入し、加熱することによって発泡させた本実施形態に係る軟質モールドポリウレタンフォームが示されている。
【0027】
本実施形態においては、まず、ポリオール、イソシアネート化合物、発泡剤、整泡剤及び触媒等の原料(原液)を型に注入し、加熱することによって発泡させた軟質ポリウレタンフォームを形成する。発泡終了後、発泡させた軟質モールドポリウレタンフォームを脱型することによって、被加工物300を準備する。その後、被加工物300をクラッシングする。本実施形態においては、クラッシングは、後述する「クラッシング工程」に記載の条件で行った。なお、本発明の軟質ポリウレタンフォーム及びシートのクラッシングの条件は上述した条件に限定されるわけではない。
【0028】
クラッシング後、被加工物300の2点鎖線で囲まれた部分302を加圧板で圧縮する。このとき、加圧板及び周囲の温度は、常温でよい。ここで、図4に、圧縮率を変化させた場合の被加工物300の2点鎖線で囲まれた部分306を加圧板で圧縮する際の圧縮率を変化させた軟質モールドポリウレタンフォームの10%歪み時荷重[N]、非圧縮部分の10%歪み時荷重に対する圧縮部分の10%歪み時荷重の変化率[%]、コア密度[kg/m]、490Nで圧縮した時の減圧側たわみ量[mm]、40%圧縮時の荷重−たわみ曲線の直線性[%]を示す。後程詳述するが、本発明の軟質ポリウレタンフォームにおいては、脱型後軟質ポリウレタンフォームが常温になる前に、好ましくは、脱型後30分以内に軟質ポリウレタンフォームを圧縮することが好ましい。
【0029】
このように、被加工物300の2点鎖線で囲まれた部分302を圧縮することによって、非圧縮部分に対する圧縮部分302の一部の10%歪み時荷重の変化(10%歪み時荷重変化率)が約30%以上変化する(図4、実施例1〜実施例11)。つまり、前記圧縮により、タッチ感はおよそ3割以上小さな硬さを有するフォームと同等になるといえる。また、被加工物300の圧縮部分306の10%歪み時荷重と非圧縮部分の10%歪み時荷重が3割以上異なる車両用シートを形成することができる。
【0030】
一方、被加工物300の2点鎖線で囲まれた部分302を圧縮率10%以上で圧縮することによって、非圧縮部分に比べて圧縮部分302の490N圧縮時減圧側たわみ量はほとんど変化しない(図4、比較例1及び実施例1〜11参照)。つまり、着座後のシートのたわみ量(ヒップポイント代用値)はほとんど変化しない。特に、非圧縮部分に比べて圧縮部分306の490N圧縮時減圧側たわみ量の変化率が10%以下であると、たわみ量(ヒップポイント代用値)の変化の許容できる範囲であり好ましい。
【0031】
つまり、本発明によると、着座後におけるヒップポイントは従来とほとんど変わらず、かつ、シートのタッチ感は大きく向上する。又、40%圧縮時荷重−たわみ曲線を直線に近づけることにより、応力に対してたわみ量が比例に近づき、フィーリングが良く、異物感を感じさせにくいシートとなる。
【0032】
本実施形態に係るシートにおいては、図1に示すとおり、シートの座部の所望の部分(例えば、乗員の主に臀部が接触する座部100の部分108)のタッチ感を向上させる。かかる場合、脱型から圧縮までの時間を30分以内とし、座部100の部分108を圧縮率10%以上50%以下で圧縮することにより、非圧縮部分102、104及び106の10%歪み時荷重に比べて圧縮部分108の10%歪み時荷重が低下し、圧縮部分108が柔らかいタッチ感のシートの座部を形成することができる(図4、実施例1〜11)。したがって、シートに腰掛ける時に、乗員の臀部が座部100の部分108に接触する時に、乗員は柔らかさを体感できる。
【0033】
本実施形態に係るシートにおいては、図1に示すとおり、シートの座部の所望の部分(例えば、乗員の主に大腿部の側部が接触する座部100の一部分103、105)のタッチ感を向上させる。かかる場合、脱型から圧縮までの時間を30分以内とし、座部100の一部分103、105を圧縮率10%以上50%以下で圧縮することにより、非圧縮部分の10%硬さに比べて圧縮部分103、105の10%歪み時荷重が低下し、圧縮部分103、105が柔らかいタッチ感のシートの座部を形成することができる。尚、圧縮する部分は厚さが減少するため、必要に応じてその分軟質ポリウレタンフォームの厚さは厚く設定しておく。本発明により作製されたシートは自動車の運転中の振動により、乗員の大腿部の側部が座部100の一部分103、105に接触する時にも、乗員は柔らかさを体感できる。
【0034】
本実施形態に係る車両用シートにおいては、図2に示すとおり、シートの背部の所望の部分についても、前記座部の圧縮部分と同様に、柔らかさを体感できる。
【0035】
以上の説明した車両用シートの座部100及び背部200を組み合わせ、また、その他の部品(例えば、ヘッドレスト等)を組み合わせることによって、シートが完成する。
【0036】
以下、本実施形態に係るシートに用いる軟質ポリウレタンフォームの原料及び配合重量比率について具体的に説明する。
【0037】
[ポリオール]
本発明のシートに用いる軟質ポリウレタンフォームの原料となるポリオールは、通常使用されるタイプのもので良く、例えばポリエーテルポリオールやポリマーポリオールが用いられる。また、それらを混合しても良い。その水酸基価は15〜60[mgKOH/g]の範囲のものが好ましい。
【0038】
[イソシアネート化合物]
本発明のシートに用いるイソシアネート化合物は、特に限定されないが、イソシアネート基を2以上有する芳香族、脂環族、もしくは脂肪族系のイソシアネート化合物、又はこれらの混合物、変性体を用いることができる。その例として、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の単体及び化合物を例示することができる。
【0039】
[触媒]
本発明のシートに用いる触媒としては、軟質ポリウレタンフォームの製造分野において公知である各種触媒が用いることができる。例えばトリエチレンジアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチルジエチレンアミン、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ブチル−2−メチルイミダゾール、N,N−ジメチル−N−ヘキサノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N−トリオキシエチレン−N,N−ジメチルアミン、等のアミン、又はこれらの有機酸塩及びスタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、ナフタン酸亜鉛等の有機金属化合物が挙げられる。
【0040】
[発泡剤]
本発明のシートに用いる発泡剤としては、軟質ポリウレタンフォームの製造分野において公知である各種発泡剤を用いることができる。本実施形態においては、例えば、イソシアネート基と水(H2O)の反応で発生する炭酸ガスを使用する。尚、補助的に低沸点有機化合物の使用やCO2ローディング装置で原液中に炭酸ガス等を混入させて発泡させることも可能である。
【0041】
[整泡剤]
本発明のシートに用いる整泡剤としては、軟質ポリウレタンフォームの製造分野において公知である各種整泡剤を用いることができる。例えば、整泡剤として軟質ポリウレタンフォームの製造分野において公知である有機珪素系界面活性剤やフッ素系界面活性剤を使用できる。例えば、東レ・ダウ
コーニング・シリコーン社製SZ-1306、SZ-1313、SZ−1327、SZ−1333、SZ−1336、SZ−1342、PRX−607、SF−2969、SF−2964、SRX−274C、SF−2961、SF−2962、SF−2965、等が挙げられる。
【0042】
[架橋剤]
本発明のシートにおいては、架橋剤は特に使用しなくても良いが、物性向上のために架橋剤を用いることができる。使用する場合には水酸基価200〜1800mgKOH/gの化合物が用いられる。例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、N−メチル−ジエタノールアミン、N−フェニル−ジプロパノールアミン等のアミノアルコール類、トリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、イソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリジアミン等のポリアミン類、ポリアミンやアミノアルコール等にアルキレンオキサイドを付加させた化合物、グリセリン等の脂肪族多価アルコール類などが用いられる。その他、従来公知の架橋剤を用いてもよく、これらは単独でも複数を併用しても良い。
【0043】
[その他の添加剤]
本発明のシートにおいては、破泡剤は目的を損なわない範囲で用いることができ、軟質ポリウレタンフォームの通気性及びクラッシング性をコントロールする目的で公知であるセルオープナーが使用できる。例えば、三井化学ポリウレタン社製EP-505s、旭硝子社製 EL-985等が挙げられる。さらに、必要に応じて、難燃剤、可塑剤等の添加物を適宜使用することもある。
【0044】
[使用原料と配合重量比率]
・EP-950:50 (三井化学ポリウレタン社製 ポリオール)
・POP-31/28:50 (三井化学ポリウレタン社製ポリマーポリオール)
・H2O:2.8(発泡剤)
・DABCO 33LV:0.36 (エアプロダクツ・ジャパン社製 アミン触媒)
・NIAX A-1:0.08 (GE東芝シリコーン社製 アミン触媒)
・KL-210:0.5 (三井化学ポリウレタン社製架橋剤)
・SF-2962:0.2 (東レ・ダウコーニング・シリコーン社製 シリコーン整泡剤)
・SZ-1336:0.8 (東レ・ダウコーニング・シリコーン社製 シリコーン整泡剤)
・TM-20:36.78 (三井化学ポリウレタン社製イソシアネート)
【0045】
以下、本実施形態に係るシートの製造方法について具体的に説明する。なお、以下の具体例は、本発明のシートを製造する一例に過ぎず、本発明のシートの製造方法は、これに限定されるわけではない。
【0046】
[軟質ポリウレタンフォームの製造工程]
本実施形態に係るシートの座部100及び背部200の原型となる軟質ポリウレタンフォームの製造について、以下説明する。合計重量が所定の量になる様に、イソシアネート以外の原料成分を上述の配合重量比率で容積3リットルの手付きビーカーに配合する。配合した原料をラボミキサーで30秒間攪拌する。この混合液をA混合液とする。
【0047】
前記A混合液及びイソシアネートは、25±1℃に温調され、ラボミキサーで15秒間攪拌した後、前記A混合液にイソシアネートを入れ5秒間攪拌する。この混合液をB混合液とする。直ちに、B混合液を60±2℃に温調された縦405、横405、厚さ98,93mmの金型に注入し型を閉じ、6分間硬化させる。これにより、一体成形された軟質ポリウレタンフォームを準備する。
【0048】
「クラッシング工程」
クラッシングは2本の回転するローラー間に軟質ポリウレタンフォームを挟み込む方法で、圧縮率は2段階の装置を使用した。ローラーの直径250mm、1段階目はローラー間距離50mm、2段階目はローラー間距離20mmに設定した。尚、1段階目と2段階目のローラーの中心間距離は500mm、ローラーの回転速度は10秒/回転とした。前記軟質ポリウレタンフォームのセル膜を破り変形を防止し、各性能を向上させるため、軟質ポリウレタンフォームを金型から脱型し、直ちにクラッシング装置を使用し、厚さ方向で50mm、20mmまで連続して各1回ずつクラッシングを実施し、十分にクラッシングした。
【0049】
[圧縮工程]
脱型から所定の時間経過後に、常温常湿下で、前記軟質ポリウレタンフォーム全体を常温のアルミ板(縦300、横300、厚さ10mm)を使用して圧縮率10%以上50%以下で圧縮する。
【0050】
脱型後30分以内の前記軟質ポリウレタンフォームは、内部の熱が残存しており、かつ、内部の反応が完全に完了していない状態である。かかる状態の軟質ポリウレタンフォームを圧縮することにより、前記軟質ポリウレタンフォームの一部の10%歪み時荷重が低下する。よって、本発明の軟質ポリウレタンフォームにおいては、脱型後軟質ポリウレタンフォームが常温になる前に、好ましくは、脱型後30分以内に軟質ポリウレタンフォームを圧縮することが好ましい。尚、脱型直後の軟質ポリウレタンフォームの内部温度は約120℃であるが、脱型後数日放置した状態の軟質ポリウレタンフォームをオーブンでその温度まで加熱し、その後圧縮工程を行っても、10%歪み時荷重は大きく変化しない。つまり、脱型後、軟質ポリウレタンフォームの内部の反応が完全に完了する前に、圧縮工程を行う必要があると考えられる。
【0051】
前記部分圧縮工程により、前記圧縮部分106の一部の10%歪み時荷重が、非圧縮部分の10%歪み時荷重に比べて30%以上小さくなり、柔らかいタッチ感を部分的に有するシートの座部を形成することができる。
【0052】
前記製造方法によれば、柔らかいタッチ感を所望する部分を簡単に形成することができ、容易に異硬度のシートを形成することができる。また、シートの継ぎ目の部分、凹凸のある部分及び端部等のタッチ感も簡単に向上させることができる。さらに、部分圧縮工程における圧縮率を変えることにより、無段階で10%歪み時荷重の異なる異硬度のシートを形成することができる。この場合でも、本発明のシートにおいては、着座時のたわみ量(ヒップポイント代用値)は変化が少ない。
【0053】
次に、本発明のシートに用いる軟質ポリウレタンフォームの物性の測定法及び試験法について説明する。なお、以下説明する軟質ポリウレタンフォームの物性の測定法及び試験法は、大きさが縦約400×横約400×厚さ60〜95mmのテストピースサンプルを用いた例について説明する。
【0054】
[コア密度試験]
本発明の本実施形態に係るシートに用いる軟質ポリウレタンフォームの物性を測定するために作製したテストピースサンプルは温度20±2℃、湿度65±5%の環境下に72時間以上放置した。その後、テストピースサンプルの表面から10mm以上取り除き、縦及び横約50mm、厚さ約40mmのサンプルを切り出した。そのサンプルの縦、横、厚さをノギスで測定し、前記サンプルの体積(m)を測定した。その後、前記サンプルの質量(kg)を測定し、質量/体積を計算し、コア密度(kg/m)を測定した。
【0055】
[静荷重たわみ試験]
本発明の本実施形態に係るシートに用いる軟質ポリウレタンフォームの物性を測定するために作製したテストピースサンプルを温度20±2℃、湿度65±5%の環境下に72時間以上放置後、ミネベア製引っ張り圧縮試験機TG−5kNにて加圧板としてJIS E7104(2002年版)に準拠した鉄研盤を使用して静荷重たわみ試験を実施した。前記テストピースサンプルは加圧速度150mm/minで882Nまで圧縮され、直ちに荷重が取り除かれる。1分間放置後、同様の条件で前記テストピースサンプルの荷重−たわみを測定し、490N時減圧側たわみ量 (mm)を測定した。
【0056】
[10%歪み時荷重試験]
本発明の本実施形態に係るシートに用いる軟質ポリウレタンフォームの物性を測定するために発泡したテストピースサンプルを温度20±2℃、湿度65±5%の環境下に72時間以上放置した。その後、テストピースサンプルの表面から10mm以上取り除き、発泡方向に対して垂直な方向の厚さが約40mm、縦、横が約50mmのサンプルを切り出した。次に、ミネベア製引っ張り圧縮試験機TG−5kNを使用し、直径200mmの加圧板にて圧縮速度10mm/minにて、フォームサンプルの厚さ40mm方向に対して垂直になる様に前記テストピースサンプルを圧縮し、0.5N荷重が発生した時のフォーム厚さをフォーム初期厚さとした。圧縮速度50mm/minにてフォーム初期厚さの75%まで前記テストピースサンプルを圧縮し、直ちに荷重を取り除いた。1分間放置後、圧縮速度50mm/minでフォーム初期厚さの10%の厚さまで前記テストピースサンプルを圧縮し、圧縮停止から20秒後の荷重を測定し、それを10%歪み時荷重(N)とした。タッチ感は、この10%歪み時荷重に大きく依存する。
【0057】
[40%圧縮時荷重‐たわみ曲線の直線性試験]
本発明の本実施形態に係るシートに用いる軟質ポリウレタンフォームの物性を測定するために発泡したテストピースサンプルを温度20±2℃、湿度65±5%の環境下に72時間以上放置した。その後、テストピースサンプルの表面から10mm以上取り除き、発泡方向に対して垂直な方向の厚さが約40mm、縦、横が約50mmのサンプルを切り出した。切り出したクッション材を、ミネベア製引っ張り圧縮試験機TG−5kNにて、圧縮速度50mm/minにて厚さの40%まで予備圧縮した後、再度厚さの40%まで圧縮し、さらに、圧縮を解除することにより、荷重‐たわみ曲線を得た。ここで、得られた荷重−たわみ曲線において、(1)この荷重-たわみ曲線の原点A、(2)荷重-たわみの最高点B、(3)荷重0−たわみの最高点Cと定義する。これらA、B及びCの3点を結んだ三角部の面積Dに対し、原点Aと荷重−たわみの最高点Bとを結んだ直線と、荷重−たわみ曲線の加圧側たわみ曲線との面積差を面積Eと定義する。また、原点Aと荷重-たわみ曲線の最高点Bとを結んだ直線と、荷重-たわみ曲線の減圧側たわみ曲線との面積差を面積FFと定義する。そして、以下の式を用いて40%圧縮時荷重‐たわみ曲線の直線性(%)を求めた。(図5参照)
(E+F)/D×100(%)
【0058】
(実施例及び比較例)
以下に本発明の本実施形態に係るシートの製造方法及びシートについて、実施例により更に詳細に説明するが、本発明のシートはこれらに限定されるものでは無い。また、本発明のシートの製造方法及びシートを説明するために、比較例を示す。
【0059】
図4は、本発明のシートに用いる軟質ポリウレタンフォームにおいて、脱型から圧縮までの時間、圧縮時間、圧縮率を変化させた場合の物性及び比較例の物性をまとめた表である。
【0060】
比較例1(圧縮率0%(圧縮なし))に係る軟質ポリウレタンフォームにおいては、コア密度が50.5kg/m3、490N加圧時の減圧側たわみ量が39.8mm、40%圧縮時荷重‐たわみ曲線の直線性が54.4%である。この場合のタッチ感を一般的なタッチ感と定義する。
【0061】
比較例2(圧縮率5%)に係る軟質ポリウレタンフォームにおいては、脱型から圧縮までの時間を1分、圧縮時間を10分とした場合、コア密度が51.9kg/m、10%歪み時荷重変化率が13.4%、490N加圧時の減圧側たわみ量が38.5mm、40%圧縮時荷重−たわみ曲線の直線性が43.1%である。タッチ感は、一般的なタッチ感と変わりなかった。
【0062】
実施例1(圧縮率10%)に係る本発明の車両用シートに用いる軟質ポリウレタンフォームにおいては、脱型から圧縮までの時間を1分、圧縮時間を10分とした場合、コア密度が53.2kg/m、10%歪み時荷重変化率が31.9%、490N加圧時の減圧側たわみ量が38.3mm、490N時の減圧側たわみ量の、圧縮率0%(比較例1)のウレタンフォームの490N時の減圧側たわみ量に対する変化率が3.8%、40%圧縮時荷重−たわみ曲線の直線性が23.4%である。タッチ感は、良好であった。
【0063】
実施例2(圧縮率15%)に係る本発明の車両用シートに用いる軟質ポリウレタンフォームにおいては、脱型から圧縮までの時間を1分、圧縮時間を10分とした場合、コア密度が53.5kg/m、10%歪み時荷重変化率が39.4%、490N加圧時の減圧側たわみ量が38.7mm、490N時の減圧側たわみ量の、圧縮率0%(比較例1)のウレタンフォームの490N時の減圧側たわみ量に対する変化率が2.8%、40%圧縮時荷重−たわみ曲線の直線性が15.9%である。タッチ感は、良好であった。
【0064】
実施例3(圧縮率20%)に係る本発明の車両用シートに用いる軟質ポリウレタンフォームにおいては、脱型から圧縮までの時間を1分、圧縮時間を10分とした場合、コア密度が54.6kg/m、10%歪み時荷重変化率が45.9%、490N加圧時の減圧側たわみ量が39.1mm、490N時の減圧側たわみ量の、圧縮率0%(比較例1)のウレタンフォームの490N時の減圧側たわみ量に対する変化率が1.8%、40%圧縮時荷重−たわみ曲線の直線性が13.0%である。タッチ感は、良好であった。
【0065】
実施例4(圧縮率25%)に係る本発明の車両用シートに用いる軟質ポリウレタンフォームにおいては、脱型から圧縮までの時間を1分、圧縮時間を10分とした場合、コア密度が56.7kg/m、10%歪み時荷重変化率が51.8%、490N加圧時の減圧側たわみ量が37.9mm、490N時の減圧側たわみ量の、圧縮率0%(比較例1)のウレタンフォームの490N時の減圧側たわみ量に対する変化率が4.8%、40%圧縮時荷重−たわみ曲線の直線性が13.5%である。タッチ感は、良好であった。
【0066】
実施例5(圧縮率30%)に係る本発明の車両用シートに用いる軟質ポリウレタンフォームにおいては、脱型から圧縮までの時間を1分、圧縮時間を10分とした場合、コア密度が58.3kg/m、10%歪み時荷重変化率が54.4%、490N加圧時の減圧側たわみ量が36.0mm、490N時の減圧側たわみ量の、圧縮率0%(比較例1)のウレタンフォームの490N時の減圧側たわみ量に対する変化率が9.5%、40%圧縮時荷重−たわみ曲線の直線性が17.6%である。タッチ感は、良好であった。
【0067】
実施例6(圧縮率35%)に係る本発明の車両用シートに用いる軟質ポリウレタンフォームにおいては、脱型から圧縮までの時間を1分、圧縮時間を10分とした場合、コア密度が60.5kg/m、10%歪み時荷重変化率が57.5%、490N加圧時の減圧側たわみ量が33.0mm、490N時の減圧側たわみ量の、圧縮率0%(比較例1)のウレタンフォームの490N時の減圧側たわみ量に対する変化率が17.1%、40%圧縮時荷重−たわみ曲線の直線性が20.7%である。タッチ感は、良好であった。
【0068】
実施例7(圧縮率40%)に係る軟質ポリウレタンフォームにおいては、脱型から圧縮までの時間を1分、圧縮時間を10分とした場合、コア密度が66.0kg/m、10%歪み時荷重変化率が52.9%、490N加圧時の減圧側たわみ量が30.8mm、490N時の減圧側たわみ量の、圧縮率0%(比較例1)のウレタンフォームの490N時の減圧側たわみ量に対する変化率が22.6%、40%圧縮時荷重−たわみ曲線の直線性が25.4%である。タッチ感は、良好であった。
【0069】
実施例8(圧縮率45%)に係る軟質ポリウレタンフォームにおいては、脱型から圧縮までの時間を1分、圧縮時間を10分とした場合、コア密度が74.4kg/m、10%歪み時荷重変化率が44.4%、490N加圧時の減圧側たわみ量が27.2mm、490N時の減圧側たわみ量の、圧縮率0(比較例1)のウレタンフォームの490N時の減圧側たわみ量に対する変化率が31.7%、40%圧縮時荷重−たわみ曲線の直線性が29.8%である。タッチ感は、良好であった。
【0070】
実施例9(圧縮率50%)に係る軟質ポリウレタンフォームにおいては、脱型から圧縮までの時間を1分、圧縮時間を10分とした場合、コア密度が83.3kg/m、10%歪み時荷重変化率が36.1%、490N加圧時の減圧側たわみ量が20.0mm、490N時の減圧側たわみ量の、圧縮率0(比較例1)のウレタンフォームの490N時の減圧側たわみ量に対する変化率が49.7%、40%圧縮時荷重−たわみ曲線の直線性が36.5%である。タッチ感は、良好であった。
【0071】
実施例10(圧縮率30%)に係る軟質ポリウレタンフォームにおいては、脱型から圧縮までの時間を30分、圧縮時間を60分とした場合、コア密度が51.4kg/m、10%歪み時荷重変化率が31.5%、490N加圧時の減圧側たわみ量が40.7mm、490N時の減圧側たわみ量の、圧縮率0(比較例1)のウレタンフォームの490N時の減圧側たわみ量に対する変化率が−2.3%、40%圧縮時荷重−たわみ曲線の直線性が33.1%である。タッチ感は、良好であった。
【0072】
実施例11(圧縮率50%)に係る軟質ポリウレタンフォームにおいては、脱型から圧縮までの時間を30分、圧縮時間を60分とした場合、コア密度が54.8kg/m、10%歪み時荷重変化率が34.3%、490N加圧時の減圧側たわみ量が42.4mm、490N時の減圧側たわみ量の、圧縮率0(比較例1)のウレタンフォームの490N時の減圧側たわみ量に対する変化率が−6.5%、40%圧縮時荷重−たわみ曲線の直線性が46.4%である。タッチ感は、良好であった。
【0073】
比較例3(圧縮率50%)に係る軟質ポリウレタンフォームにおいては、脱型から圧縮までの時間を60分、圧縮時間を60分とした場合、コア密度が51.7kg/m、10%歪み時荷重変化率が23.6%、490N加圧時の減圧側たわみ量が43.3mm、490N時の減圧側たわみ量の、圧縮率0(比較例1)のウレタンフォームの490N時の減圧側たわみ量に対する変化率が−8.8%、40%圧縮時荷重−たわみ曲線の直線性が54.4%である。タッチ感は、一般的なタッチ感と変わりなかった。
【0074】
比較例4(圧縮率70%)に係る軟質ポリウレタンフォームにおいては、脱型から圧縮までの時間を60分、圧縮時間を60分とした場合、コア密度は56.7kg/m、10%歪み時荷重変化率が21.8%、490N加圧時の減圧側たわみ量が44.3mm、490N時の減圧側たわみ量の、圧縮率0(比較例1)のウレタンフォームの490N時の減圧側たわみ量に対する変化率が−12.8%、40%圧縮時荷重−たわみ曲線の直線性が55.6%である。タッチ感は、一般的なタッチ感と変わりなかった。
【0075】
比較例5(圧縮率70%)に係る軟質ポリウレタンフォームにおいては、脱型から圧縮までの時間を360分、圧縮時間を60分とした場合、コア密度が50.8kg/m、10%歪み時荷重変化率が16.4%、490N加圧時の減圧側たわみ量が42.3mm、490N時の減圧側たわみ量の、圧縮率0(比較例1)のウレタンフォームの490N時の減圧側たわみ量に対する変化率が−6.3%、40%圧縮時荷重−たわみ曲線の直線性が57.7%である。タッチ感は、一般的なタッチ感と変わりなかった。
【0076】
上述したとおり、図6は、40%圧縮時の荷重に対するたわみ量の変化を示したグラフである。図6においては、実施例4及び比較例1における40%圧縮時の荷重に対するたわみ量の変化を示している。また、図7は、各実施例及び比較例における圧縮率に対する荷重−たわみ曲線の直線性の変化を示したグラフである。
【0077】
以上述べたとおり、本実施形態に係る本発明のシートにおいては、軟質ポリウレタンフォームの一部を圧縮率10以上50%以下の範囲で圧縮することが望ましいことがわかる。よって、本実施形態に係る本発明のシートは、その一部に圧縮率10以上50%以下である、又、40%圧縮時荷重−たわみ曲線の直線性((E+F)/D×100)が25%以下である軟質ポリウレタンフォームを含んでいることが望ましい。
【0078】
なお、本実施形態においては、座部100の全体を一体成型しているが、座部200の前部108及び後部106を一体成型し、また、座部200の側部102及び104を一体成型し、これらのパーツを組み合わせて車両用シートを構成するようにしてもよい。
【0079】
なお、本実施形態においては、座部100の全体を一体成型しているが、座部200の前部108及び後部106を一体成型し、また、座部200の側部102及び104を一体成型し、これらのパーツを組み合わせて車両用シートを構成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本実施形態においては、本発明を車両用シートに適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、航空機、船舶等の乗り物の座席用シート、又は、家具用のシートに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの座部100の外観図である。
【図2】本発明の一本実施形態に係る車両用シートの背部及び側部200の外観図である。
【図3】本発明の一本実施形態に係る軟質モールドポリウレタンフォームの製造方法を説明した図である。
【図4】本発明のシートに用いる軟質ポリウレタンフォームにおいて、圧縮率を変化させた場合(圧縮率10%、15%、20%、25%、30%、35%)の物性及び比較例(圧縮率0%、5%、40%、45%、50%)の物性をまとめた表である。
【図5】40%圧縮時荷重‐たわみ曲線の直線性(%)を定義するための説明図である。
【図6】実施例3及び比較例1における荷重に対するたわみ量の変化を示したグラフである。
【図7】各実施例及び比較例における圧縮率に対する荷重−たわみ曲線の直線性の変化を示したグラフである。
【符号の説明】
【0082】
100 車両用シートの座部
103、105 座部100の圧縮部分
102 側部
104 側部
106 後部
108 前部
200 車両用シートの背部
202 側部
204 側部
206 上部
208 下部
300 被加工物
302、306 被加工物の圧縮部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合した混合物を型に注入し、
軟質ポリウレタンフォームを形成し、
前記軟質ポリウレタンフォームを脱型した後に、前記軟質ポリウレタンフォームをクラッシングし、
前記クラッシング後で且つ前記軟質ポリウレタンフォームが常温になる前に、前記軟質ポリウレタンフォームの少なくとも一部を常温の加圧板によって圧縮する軟質ポリウレタンフォームの製造方法において、
圧縮しない前記軟質ポリウレタンフォームの10%歪み時荷重に対する圧縮した前記軟質ポリウレタンフォームの一部の10%歪み時荷重の変化率が30%以上であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項2】
少なくとも、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合した混合物を型に注入し、
軟質ポリウレタンフォームを形成し、
前記軟質ポリウレタンフォームを脱型した後に、前記軟質ポリウレタンフォームをクラッシングし、
前記クラッシング後で且つ前記軟質ポリウレタンフォームを脱型してから30分以内に、前記軟質ポリウレタンフォームの少なくとも一部を常温の加圧板によって圧縮する軟質ポリウレタンフォームの製造方法において、
圧縮しない前記軟質ポリウレタンフォームの10%歪み時荷重に対する圧縮した前記軟質ポリウレタンフォームの一部の10%歪み時荷重の変化率が30%以上であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項3】
少なくとも、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合した混合物を型に注入し、
軟質ポリウレタンフォームを形成し、
前記軟質ポリウレタンフォームを脱型した後に、前記軟質ポリウレタンフォームをクラッシングし、
前記クラッシング後で且つ前記軟質ポリウレタンフォームを脱型してから30分以内に、前記軟質ポリウレタンフォームの少なくとも一部を常温の加圧板によって圧縮する軟質ポリウレタンフォームの製造方法において、
圧縮しない前記軟質ポリウレタンフォームの10%歪み時荷重に対する圧縮した前記軟質ポリウレタンフォームの一部の10%歪み時荷重の変化率が30%以上であって、かつ、圧縮しない前記軟質ポリウレタンフォームの加圧板として鉄研盤を使用した静荷重たわみ試験における490N時減圧側たわみ量に対する圧縮した前記軟質ポリウレタンフォームの一部の490N時減圧側たわみ量の変化率が10%以下であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
少なくとも、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合した混合物を型に注入し、
軟質ポリウレタンフォームを形成し、
前記軟質ポリウレタンフォームを脱型した後に、前記軟質ポリウレタンフォームをクラッシングし、
前記クラッシング後で且つ前記軟質ポリウレタンフォームが常温になる前に、前記軟質ポリウレタンフォームの少なくとも一部を常温の加圧板によって圧縮した軟質ポリウレタンフォームを有するシートであって、
圧縮しない前記軟質ポリウレタンフォームの10%歪み時荷重に対する圧縮した前記軟質ポリウレタンフォームの一部の10%歪み時荷重の変化率が30%以上であることを特徴とするシート。
【請求項5】
少なくとも、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合した混合物を型に注入し、
軟質ポリウレタンフォームを形成し、
前記軟質ポリウレタンフォームを脱型した後に、前記軟質ポリウレタンフォームをクラッシングし、
前記クラッシング後で且つ前記軟質ポリウレタンフォームを脱型してから30分以内に、前記軟質ポリウレタンフォームの少なくとも一部を常温の加圧板によって圧縮した軟質ポリウレタンフォームを有するシートであって、
圧縮しない前記軟質ポリウレタンフォームの10%歪み時荷重に対する圧縮した前記軟質ポリウレタンフォームの一部の10%歪み時荷重の変化率が30%以上であることを特徴とするシート。
【請求項6】
少なくとも、ポリオール、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合した混合物を型に注入し、
軟質ポリウレタンフォームを形成し、
前記軟質ポリウレタンフォームを脱型した後に、前記軟質ポリウレタンフォームをクラッシングし、
前記クラッシング後で且つ前記軟質ポリウレタンフォームを脱型してから30分以内に、前記軟質ポリウレタンフォームの少なくとも一部を常温の加圧板によって圧縮した軟質ポリウレタンフォームを有するシートであって、
圧縮しない前記軟質ポリウレタンフォームの10%歪み時荷重に対する圧縮した前記軟質ポリウレタンフォームの一部の10%歪み時荷重の変化率が30%以上であって、かつ、圧縮しない前記軟質ポリウレタンフォームの加圧板として鉄研盤を使用した静荷重たわみ試験における490N時減圧側たわみ量に対する圧縮した前記軟質ポリウレタンフォームの一部の490N時減圧側たわみ量の変化率が10%以下であることを特徴とするシート。
【請求項7】
前記軟質ポリウレタンフォームを圧縮速度50mm/minによってその厚さの40%まで予備圧縮した後、再度厚さの40%まで圧縮し、圧縮を解除して求めた荷重―たわみ曲線において、
前記荷重-たわみ曲線の原点A、前記荷重-たわみ曲線の最高点B、前記荷重0−たわみ曲線の最高点Cとし、
A、B及びCの3点を結んだ三角部の面積Dに対し、AとBとを結んだ直線と、前記荷重−たわみ曲線の加圧側たわみ曲線との面積差をEとし、
AとBとを結んだ直線と、前記荷重-たわみ曲線の減圧側たわみ曲線との面積差を面積Fとする場合、
以下の式を満足する前記軟質ポリウレタンフォームを一部に有することを特徴とする請求項4乃至6の何れか一に記載のシート。
(E+F)/D×100≦25

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−149546(P2008−149546A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339107(P2006−339107)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】