説明

パネルの組立て方法

【課題】 アウターパネルとインナーパネルとを合せて溶接する際に、シーリング剤のずれの有無を容易に発見することができるパネルの組立て方法を提供する。
【解決手段】 アウターパネル3の合せ部3aに沿って、シーリング剤9を塗布する。次いでアウターパネル3とインナーパネル4とを合せ、その後、アウターパネル3をインナーパネル4から引き剥がす。すると、インナーパネル4の合せ部4aに、アウターパネル3の合せ部3aに塗布されたシーリング剤9の一部が転写される。この転写されたシーリング剤9の位置或いはシーリング剤9の有無を目視することで、適切な箇所にシーリング剤9が塗布されているか否かを判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のサイドパネルのように2枚の鋼板からなるパネルを組立てる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のサイドパネルの組立てラインでは、特許文献1に示されるように、ロボットによってアウターパネル又はインナーパネルの一方にシーリング剤を塗布し、次いで、別のロボットによってインナーパネルをアウターパネルに重ねてセットし、所定箇所をスポット溶接するようにしている。
【0003】
シーリング剤の塗布に関しては、特許文献2に開示されるように、固定のシーラーガンに対し、パネルをロボットで把持し、ロボットによってパネルを動かすことでパネルの所定箇所にシーリング剤を塗布する方法がある。
【0004】
また特許文献3には、シーリング剤を塗布する代わりに、軟質ポリ塩化ビニルや常温硬化型シリコンゴムなどからなるフレキシブルガイドにシーラー本体を嵌合させ、ガイドを曲げることでシーラー本体をパネルの所定箇所に合せて貼り付ける提案がなされている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−315675号公報
【特許文献2】特開昭62−50089号公報
【特許文献3】特開昭63−57965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に開示される方法にあっては、塗布ロボットを用いてシーリング剤をパネルに塗布した時点では予定の箇所に正確に塗布されていても、このパネルに別のパネルを重ねてセットしたときにずれ、一方のパネルの予定の箇所にシーリング剤が塗布されず、後に水漏れなどの不具合が生じることがある。
【0007】
特許文献3にあっては、塗布ロボット(シーラーガン)が不要となるが、フレキシブルガイドの種類が限られ、細かな部分にまで正確にシーリング剤を貼り付けることができない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明に係るパネルの組立て方法は、パネルを構成するアウターパネル及びインナーパネルの一方の合せ部にシーリング剤を塗布し、次いでアウターパネルとインナーパネルとを合せ、この後、アウターパネルとインナーパネルとを分離して、シーリング剤を塗布しなかったパネルに転写されたシーリング剤の有無または位置を確認し、正しい位置にシーリング剤が転写されていた場合に、再びアウターパネルとインナーパネルとを合せて両者を溶接するようにした。
【0009】
前記アウターパネル及びインナーパネルはパネルの組立てラインに沿って搬送され、この組立てラインの途中で、塗布ロボットによってアウターパネルまたはインナーパネルの一方にシーリング剤が塗布され、これよりも下流側の組立てラインの途中で、組立てロボットによってアウターパネルとインナーパネルとを組み合わすラインに適用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2枚のパネルを重ねた後に、これら2枚のパネルの間に介在しているシーリング剤が正しい位置にあるかを簡単に確認することができる。このため、スポット溶接後に水漏れなどの不具合が発生するのを未然に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るパネルの組立て方法を適用したサイドパネル組立てラインの概略図、図2は組立て後のサイドパネルのホイールハウス部分の断面図、図3サイドパネルを構成するアウターパネルとインナーパネルの斜視図である。
【0012】
サイドパネル組立てラインはレール1に沿って走行するハンガー2に自動車のサイドパネルを構成するアウターパネル3とインナーパネル4が保持されている。尚、実施例では組立て対象となるパネルは、自動車のサイドパネルを用いて説明したが、これに限定されるものではない。
【0013】
また、レール1に沿って上流側から下流側に向かって、塗布ロボット5、組立てロボット6及び溶接ロボット7が配置されている。
【0014】
サイドパネルはアウターパネル3とインナーパネル4からなる。アウターパネル3は下端をインナーパネル4との合せ部3aとし、インナーパネル4は下端をアウターパネル3との合せ部4aとしている。そして合せ部4aは合せ部3aよりも長くされ、合せ部4aをヘミング処理した後にスポット溶接している。そして、この溶接部分8よりも上方部分にシーリング剤9を塗布している。
【0015】
次に、図4乃至図7に従って、アウターパネル3とインナーパネル4との組立て手順を説明する。先ず図4に示すように、アウターパネル3の予定の箇所、例えばアウターパネル3の合せ部3aの上部内側に沿って、塗布ロボット5を用いてシーリング剤9を塗布する。
【0016】
次いで組立てロボット6を用いて、図5に示すように、アウターパネル3とインナーパネル4とを合せる。その後、図6に示すようにアウターパネル3をインナーパネル4から引き剥がす。
【0017】
すると、図7に示すように、インナーパネル4の合せ部4aに、アウターパネル3の合せ部3aに塗布されたシーリング剤9の一部が転写される。この転写されたシーリング剤9の位置或いはシーリング剤9の有無を目視することで、適切な箇所にシーリング剤9が塗布されているか否かを判断する。
【0018】
適切な箇所に塗布されていると判断した場合には、合せ部4aにヘミング処理を施し、溶接ロボット7によりスポット溶接を行う。また、適切な箇所に塗布されていないと判断した場合には、その原因を調べ修理などを行う。
【0019】
尚、上記した検査は全てのサイドパネルに対して行う必要はなく、例えば50回に1回程度の割合で行えばよい。また、転写されているか否かの確認を容易にするため、シーリング剤にパネルの色と異なる着色を施すようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るパネルの組立て方法を適用したサイドパネル組立てラインの概略図
【図2】組立て後のサイドパネルのホイールハウス部分の断面図
【図3】サイドパネルを構成するアウターパネルとインナーパネルの斜視図
【図4】アウターパネルの内側にシーリング剤を塗布した状態を示す図
【図5】アウターパネルとインナーパネルとを合せた状態を示す図
【図6】合せた状態からアウターパネルを剥がした状態のインナーパネルを示す図
【図7】アウターパネルを剥がした状態のインナーパネルを側方から見た図
【符号の説明】
【0021】
1…レール、2…ハンガー、3…アウターパネル、3a…アウターパネルの合せ部、4…インナーパネル、4a…インナーパネルの合せ部、5…塗布ロボット、6…組立てロボット、7…溶接ロボット、8…スポット溶接部、9…シーリング剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターパネル及びインナーパネルの一方の合せ部にシーリング剤を塗布し、次いでアウターパネルとインナーパネルとを合せ、この後、アウターパネルとインナーパネルとを分離して、シーリング剤を塗布しなかったパネルに転写されたシーリング剤の有無または位置を確認し、正しい位置にシーリング剤が転写されていた場合に、再びアウターパネルとインナーパネルとを合せて両者を溶接することを特徴とするパネルの組立て方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパネルの組立て方法において、前記アウターパネル及びインナーパネルはパネルの組立てラインに沿って搬送され、この組立てラインの途中で、塗布ロボットによってアウターパネルまたはインナーパネルの一方にシーリング剤が塗布され、これよりも下流側の組立てラインの途中で、組立てロボットによってアウターパネルとインナーパネルとが組み合わされることを特徴とするパネルの組立て方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−87655(P2008−87655A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271520(P2006−271520)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】