説明

パラレルメカニズムロボット

【課題】 軸回転機構を繰り返し回転したとしても軸回転機構における回転方向の位相ずれを僅かなものに維持する。
【解決手段】 軸端部36と軸受カップ37との連結部において、角柱形の軸端部36の少なくとも2つの外側面43a,43bを軸受カップ37の2つの内側面44a,44bに押し付けた状態で軸端部36を軸受カップ37に連結固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドエフェクタを軸回転させるための軸回転機構を備えたパラレルメカニズムロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
軸回転機構を備えたパラレルメカニズムロボットの基本構造は、特許文献1に公知である。公知のパラレルメカニズムロボットは、ベースと、このベースに設けられる3つのリンクモータと、各リンクモータにより動作される3本のリンクと、3本のリンクにより支持される操作ヘッドとを有する。各リンクモータの回転を独立に制御することで、操作ヘッドが上下左右前後の任意の位置で動作及び停止する。パラレルメカニズムロボットの軸回転機構は、ベースと操作ヘッドとの間で伸縮しながら回転動力を操作ヘッドの操作軸に伝える入れ子式軸と、この入れ子式軸の動力源としての軸モータとを含む。軸モータの回転を入れ子式軸を通じて操作軸に伝え、操作ヘッドに取り付けられたエンドエフェクタが軸回転する。
【0003】
既に実用化されているパラレルメカニズムロボットでは、入れ子式軸の駆動軸と軸モータ、及び入れ子式軸の受動筒と操作ヘッドの操作軸のいずれもが自在継手(ユニバーサルジョイント)を介して連結される。図10に、既存の連結構造の一例を示す。駆動軸101の端部102と自在継手103の一方の軸受カップ104とが連結している。駆動軸端部102を軸受カップ104に挿入し、駆動軸端部102の貫通孔及び軸受カップ104の孔にスプリングピン106を圧入し、セットスクリュー105が駆動軸端部102を軸受カップ104の内周面に押し付ける。こうして、駆動軸101と自在継手103とが回転を伝達可能に連結されている。
【0004】
図10に示す連結構造では、軸モータにより軸回転する自在継手103の回転がスプリングピン106を通じて駆動軸101に伝わる。本件発明者らが、図10の連結構造を採用した既存の軸回転機構について耐久試験を実施したところ、軸回転機構の往復回転数が概ね4,000万回を超えると、貫通孔とスプリングピン106の外周との間に僅かな隙間が形成され、駆動軸端部102と軸受カップ104との回転方向の位相ずれが飛躍的に大きくなることを見出した。さらに、スプリングピン106を駆動軸端部102の貫通孔に差し込む又は抜き出す作業は作業者にとって比較的に面倒であるため、軸回転機構の組立て及び解体作業の効率化の点において改善される必要があった。
【0005】
この改善項目に対して、本件発明者らは、摩擦締結構造により軸と自在継手とを連結することを提案して組立て及び解体作業の効率化を図っており、既に特許文献2にこれを開示している。図10に、特許文献2の摩擦締結構造を駆動軸111の端部112と自在継手113の一方の軸受カップ114との連結に適用した例を示す。この例では、テーパ面を介して内外に隣接する内輪115及び外輪116と、外輪116を軸線に沿って移動させるナット117とで摩擦締結構造118を構成している。このため、ナット117を締める又は緩める操作だけで、駆動軸端部112と軸受カップ114とが連結され又は解体される。図10の摩擦締結構造118は、その磨耗に起因する位相ずれを僅かなものに留める効果を達成できたが、部品点数の大幅な増加に伴うコストの上昇の点、及びナット117を締める又は緩める際にアームのロッドが邪魔になることの作業容易性の点において、未だ改善の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表昭63−501860号公報
【特許文献2】特開2009−255195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、パラレルメカニズムロボットにおいて本発明が解決した課題は、軸回転機構を繰り返し回転したとしても軸回転機構における回転方向の位相ずれを僅かなものに維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ベースと、エンドエフェクタを軸回転させるための操作軸が取り付けられたヘッドと、前記ベースと前記ヘッドとを並列に連結する複数のリンクとから構成される移動機構と、入れ子式軸と、前記ベースに固定される軸モータと、第1及び第2の自在継手とから構成される軸回転機構とを含み、第1の自在継手では、一方の軸受カップに前記軸モータの出力軸の軸端部を挿入して連結し、他方の軸受カップに前記入れ子式軸の一方軸端部を挿入して連結し、第2の自在継手では、一方の軸受カップに前記入れ子式軸の他方軸端部を挿入して連結し、他方の軸受カップに前記ヘッドの操作軸の軸端部を挿入して連結したパラレルメカニズムロボットに関する。その好ましい態様では、前記入れ子式軸の一方軸端部及び他方軸端部、前記操作軸の軸端部並びに前記軸モータの出力軸の軸端部と、前記第1及び第2の自在継手の各軸受カップとの連結部の少なくとも一つにおいて、前記軸端部が角柱であり且つ前記軸受カップの受入凹所が前記角柱の相似形であり、前記軸端部を前記軸受カップの受入凹所に挿入した状態に固定する固定部材を少なくとも一つ以上を有し、固定状態において前記軸端部の少なくとも2つの外側面が前記軸受カップの対応する少なくとも2つの内側面に対して押し当てられる。
【0009】
前述の好ましい態様に従うと、いずれかの軸の軸端部と軸受カップとの連結部において、角柱形の軸端部の少なくとも2つの外側面を軸受カップの角柱形の受入凹所の2つの内側面に押し付けた状態で軸端部を軸受カップに固定している。従って、軸回転機構が軸回転した際に回転方向のトルクが平面で受け止められ、軸端部の外側面と軸受カップの内側面との間ですべりや磨耗が殆ど生じない。このため、軸回転機構の述べ回転回数が増大しても、軸端部と軸受カップの回転方向の位相ずれが殆ど変わらない。さらに、特許文献2の摩擦締結構造に比較すると、部品点数が極めて少なく且つ組み付け作業性も良好である。また、特許文献2の摩擦締結構造に比較すると、メンテナンス時に軸端部と軸受カップを分離した後に、再組み付け時において両者の相対的な角度位置を再現できる。
【0010】
本発明では、前記軸端部が正角柱であり且つ前記軸受カップの受入凹所が前記正角柱に相似形であることが好ましく、例えば、前記軸端部が偶数個の外側面を持つ正角柱であり且つ前記軸受カップの受入凹所が前記正角柱の相似形であることがなお好ましく、さらに例えば、前記軸端部が正四角柱であり且つ前記軸受カップの受入凹所が前記正四角柱の相似形であることがなお好ましい。
【0011】
前述の好ましい態様に従うと、軸端部及び軸受カップの受入凹所の形状を正角柱としたので、軸回転機構が軸回転した際に回転方向のトルクを面積の等しい2つ以上の平面で受けることになるため、力のバランスが良く、軸回転機構が安定して軸回転できる。
【0012】
本発明では、前記少なくとも一つ以上の固定部材が前記角柱の側面を押すことにより、前記軸端部の少なくとも2つの外側面が前記軸受カップの対応する少なくとも2つの内側面に対して押し当てられることが好ましい。
【0013】
前述の好ましい態様に従うと、軸端部の外側面と一つ以上の固定部材との当接部においても、軸回転機構が軸回転した際の回転トルクを受けることができるので、軸端部の外側面と軸受カップの内側面との間ですべりや磨耗がさらに生じない。
【0014】
本発明では、前記角柱が任意の一つの切断線で2つの第1及び第2ブロックに分割され、第1ブロックのみに貫通孔が形成され、該貫通孔に挿入した前記固定部材を前記第2ブロックの切断線に面する面に当接させ、前記第1ブロック及び第2ブロックを前記切断線を基準に互いに離れる方向に押し広げることにより、前記第1ブロックの2つの外側面と前記第2ブロックの2つの外側面とが前記軸受カップの対応する内側面に押し当てられることが好ましい。特に、前記切断線が前記角柱の第1の対角線であって、前記貫通孔が前記第1対角線とは異なる任意の第2対角線上に形成されていることが好ましい。
【0015】
前述の好ましい態様に従うと、軸端部の少なくとも4つの外側面が軸受カップの受入凹所を画定する内側面に押し当てられるので、軸回転機構が軸回転した際の回転トルクを均等に且つさらに広い面積で受けることができるので、当接面においてすべりや磨耗が殆ど生じない。さらに、軸受カップの軸中心に対して軸端部の軸中心が一致する又は殆どずれないから、軸回転機構はさらに安定して軸回転する。
【0016】
本発明では、前記固定部材がピン形状であり、さらに言えばこのピン形状の固定部材がセットスクリューであることが好ましい。
【0017】
セットスクリューなどのピン形状の固定部材を採用することで、軸回転機構の組立て及び解体作業の簡便性が確保される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、軸回転機構の述べ回転数が増大しても軸回転機構における回転方向の位相ずれを僅かなものに維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】発明の第1実施例を示す側面図である。
【図2】発明の各実施例に共通する構成を示す正面図である。
【図3】発明の第1実施例を示す断面図である。
【図4】発明の第2実施例を示す側面図である。
【図5】発明の第2実施例を示す断面図である。
【図6】発明の第3実施例を示す断面図である。
【図7】発明の第4実施例を示す断面図である。
【図8】発明の第5実施例を示す図である。
【図9】第1従来例を示す側面図である。
【図10】第2従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜図8を参照して本発明を好適な複数の実施例として説明するが、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載により定められるべきものであり、これらの実施例の記載により限定的に解釈されるべきではない。
【0021】
図2に、本発明の一実施態様のパラレルメカニズムロボット31の正面図を示す。パラレルメカニズムロボット31は、ベース2が高剛性の架台1に固定され、テーブルやコンベアを跨ぐ状態に支持される。パラレルメカニズムロボット31は、移動機構32と軸回転機構33とを備える。移動機構32は、エンドエフェクタが取り付けられる操作ヘッド5を上下左右前後の任意の空間位置に移動及び停止する。軸回転機構33は、操作ヘッド5に取り付けられた操作軸20を軸回転する。吸着パッド、ベルヌーイチャック又はクランプ等のエンドエフェクタが、操作軸20に固定される。エンドエフェクタに保持された太陽電池セル、包装食品又は錠剤等の被搬送物は、移動機構32により任意の空間位置に移動し、軸回転機構33によりその向きが整えられる。
【0022】
移動機構32は、ベース2、このベース2の下面に配列される3つのリンクモータ3、リンクモータ3で駆動される3本のリンク4、及びリンク4によりベース2に並列に支持される操作ヘッド5等を備える。ベース2の下面に3つのモータブラケット10が均等な間隔をあけて設けられ、各モータブラケット10がリンクモータ3を固定的に支持する。
【0023】
リンク4は、リンクモータ3で上下に揺動されるアーム12、及びこのアーム12の揺動を操作ヘッド5に伝える一対のロッド13等を含む。アーム12の基端のボス14がリンクモータ3の出力軸に固定される。一対のロッド13は互いに平行に並べられ、ロッド13の上下端寄りに設けた2つのばねユニット16,16が一対のロッド13を互いに引き寄せる。ロッド13の上下両端は、アーム12及び操作ヘッド5に対して、それぞれボールジョイント17を介して連結される。アーム12をリンクモータ3で上下に往復揺動することにより、ロッド13がアーム12に追従して動き、操作ヘッド5が所定の3次元空間内で移動する。
【0024】
操作ヘッド5は三角形状の板状ブロックであって、その中央部分に操作軸20が回転自在に軸支され、この操作軸20の下端部にエンドエフェクタが取り付けられる。この操作軸20に軸回転機構33の回転が伝達され、エンドエフェクタが回転し、保持された被搬送物も回転する。
【0025】
軸回転機構33は、上下に延びる入れ子式軸6、ベース2に出力軸を下向きにして固定される軸モータ7、入れ子式軸6の上端部と軸モータ7の出力軸とを回転伝達可能に連結する第1自在継手(ユニバーサルジョイント)18、及び入れ子式軸6の下端部と操作ヘッド5の操作軸20の上端とを回転伝達可能に連結する第2自在継手(ユニバーサルジョイント)19等を含む。
【0026】
入れ子式軸6は、上側の駆動軸22と下側の受動筒23とを含む。駆動軸22は、軸線に沿って延びる細長い円柱体又は円筒体であり、受動筒23は軸線に沿って延びる細長い中空円筒体である。駆動軸22が受動筒23内に上下に摺動可能に挿入され、両者はセレーション部を通じて互いに回転が伝えられる。
【0027】
駆動軸22の上側軸端部が、第1自在継手18の下側の軸受カップに連結される。第1自在継手18の上側の軸受カップに、軸モータ7の出力軸端部が連結される。受動筒23の下側軸端部が第2自在継手19の上側の軸受カップに連結される。第2自在継手19の下側の軸受カップに、操作軸20の上側端部が連結される。こうした連結態様により、軸モータ7の回転が入れ子式軸6及び操作軸20を介してエンドエフェクタに伝えられ、エンドエフェクタに保持されたワークの向きが変えられる。
【0028】
本実施形態のパラレルメカニズムロボット31においては、入れ子式軸6の一方軸端部(駆動軸22の上側軸端部)及び他方軸端部(受動筒23の下側軸端部)、操作軸20の上側軸端部並びに軸モータ7の出力軸端部と、第1及び第2自在継手18,19の各軸受カップとの4つの連結部の少なくとも一つの連結部において、以下に詳細に説明する第1〜第5実施例の連結構造を採用し得る。第1〜第5実施例では、駆動軸22の上側軸端部と第1自在継手18の下側の軸受カップとの連結を一例として説明する。
【0029】
(第1実施例)
図1及び図3に第1実施例を示す。図1は、駆動軸22の上側軸端部36と第1自在継手18の下側の軸受カップ37との連結構造を示す側面図である。図3は、図1のA−A断面を示す断面図である。駆動軸22は、全体として細長い円柱体又は円筒体であり、その軸端部36を、偶数である4個の外側面を持つ中実の正四角柱として形成する。第1実施例は軸端部36の最も好ましい形状を示すが、軸端部36として、中空の角柱、奇数個の外側面を持つ角柱又は正角柱でない角柱であってもよい。
【0030】
第1自在継手18において、上下一対の軸受カップ37,38が、互いに直交する軸中心周りに揺動可能に十字軸40を介在して連結される。以下、下側の軸受カップ37についてのみその構造を説明する。なお、上側の軸受カップ38に軸受カップ37と同構造を採用し得るが、異なる構造を採用しても構わない。
【0031】
軸受カップ37に、軸端部36を受け入れる受入凹所39が形成される。受入凹所39は、隣り合う面が直交する4つの内側面44a〜44dによって画定され、十字軸40の配設側とは反対側において開口し、軸端部36の外形形状に相似で僅かに大きい正四角柱形状を有する。この軸受カップ37に、その外周面から受入凹所39までを連通した2つの連通孔41,41が形成される。連通孔41,41は、軸中心L2に関して互いに直交関係にある。この連通孔41,41に、ピン部材としてのセットスクリュー42,42が挿入される。
【0032】
セットスクリュー42,42の先端は受入凹所39に挿入された軸端部36の2つの隣り合う外側面43c,43dに当接しており、セットスクリュー42,42は軸端部36の外側面43a,43bを連通孔41を持たない内側面44a,44bに押し付ける。こうして、軸受カップ37に軸端部36が連結固定される。
【0033】
第1実施例の連結構造によると、軸端部36の2つの外側面43a,43bと軸受カップ37の2つの内側面44a,44bとの当接面と、セットスクリュー42,42の先端と軸端部の2つの外側面44c,44dの接触部とを通じて、軸受カップ37の回転が軸端部36に伝達されるため、回転方向のトルクを平面で受け止めることになる。従って、これらの当接面及び接触部において軸端部36と軸受カップ37とのすべりや磨耗が殆ど生じない。また、両当接面の接触面積が等しい故に、トルク伝達のバランスが良く、軸回転機構33の軸回転が安定する。さらに、図10の摩擦締結構造に比較すると、部品点数が極めて少なく且つ組み付け作業性も良好である。また、図10の摩擦締結構造に比較すると、メンテナンス時に軸端部と軸受カップを分離した後に、再組み付け時において両者の相対的な角度位置を再現できる。
【0034】
(第2実施例)
図4及び図5に第2実施例を示す。図4は、駆動軸122の上側軸端部136と第1の自在継手18の下側の軸受カップ137との連結構造の側面図である。図5は、図4のB−B断面図である。駆動軸122は、全体として細長い円柱体又は円筒体である。駆動軸122の軸端部136は、偶数である4個の外側面143a〜143dを持つ中実の正四角柱を、任意の一つの切断線である第1対角線M1において分割した2つの形状の等しい、二等辺三角柱形状の第1及び第2ブロック150a,150bとして構成する。一方の第1ブロック150aのみに、第1対角線M1と異なる第2対角線M2に沿った貫通孔としての雌ねじ151が形成されており、この雌ねじ151にピン部材としてのセットスクリュー142がねじ入れられる。
【0035】
軸受カップ137は、軸端部136を受け入れる受入凹所139を有する。受入凹所139は、隣り合う面が直交する4つの内側面144a〜144dによって画定され、十字軸40の配設側とは反対側において開口し、軸端部136の外形形状に相似で僅かに大きい正四角柱形状を有している。この軸受カップ137に、その外周面から受入凹所139までを連通した一つの連通孔141が形成される。この連通孔141は、受入凹所139の正方形断面における任意の対角線M3に沿っている。
【0036】
軸端部136は、雌ねじ151と連通孔141とを位置合わせして、受入凹所139に挿入される。セットスクリュー142は、外側から軸受カップ137の連通孔141に緩やかに挿入され、第1ブロック150aの雌ねじ151に緊密にねじ入れられる。セットスクリュー142は、その先端を第2のブロック150bの第1対角線M1に面する面152に押し付けており、第1ブロック150aと第2ブロック150bとは、第1対角線M1を基準に互いに離れる方向、つまり第2対角線M2に沿って押し広げられる。従って、第1ブロック150aの2つの外側面143a,143bがそれぞれ軸受カップ137の2つの内側面144a,144bに押し当たり、第2ブロック150bの2つの外側面143c、143dがそれぞれ軸受カップ137の2つの内側面144c,144dに押し当たる。こうして、軸受カップ137に軸端部136が連結固定される。
【0037】
こうした第2実施例の連結構造によると、軸端部136の4つの外側面143a〜143dと軸受カップ137の4つの内側面144a〜144dの当接面を通じて、軸受カップ137の回転が軸端部136に伝達されるため、第1実施例に比較して、回転方向のトルクをさらに広い平面で伝えることになる。したがって、全ての当接面において、軸端部136と軸受カップ137とのすべりや磨耗が殆ど生じない。また、全ての当接面の接触面積が概ね等しく、且つ当接面が軸中心L1に均等に配置されているために、回転トルクの伝達バランスに特に秀でており、軸回転機構33の軸回転がさらに安定している。また、軸受カップ137の軸中心L1と軸端部136の軸中心とが一致又は殆どずれていないことも、軸回転機構33の安定的な軸回転に寄与している。なお、第2実施例の連結構造も、第1実施例の連結構造の効果を奏することは勿論である。
【0038】
図7に第3実施例を示す。第3実施例では、駆動軸の上側軸端部236を、奇数である3個の外側面243a〜243cを持つ中実の正三角柱として形成し、第1自在継手の軸受カップ237に上側軸端部236を受け入れるための正三角柱形状の受入凹所239を形成している。軸受カップ237には一つの連通孔241が形成され、この連通孔241は内側面の一つと外周とを連通する。この連通孔にセットスクリュー242を挿入し、セットスクリュー242の先端を受入凹所239に挿入された軸端部236の一つの外側面243cに強く当接させて、軸端部236の2つの外側面243a,243bを軸受カップ237の2つの内側面244a,244bに押し付けている。こうして、軸受カップ237に軸端部236が連結固定される。この第3実施例の連結構造によっても、第1実施例と同様に、回転方向のトルクを平面で受け止めることになり、当接面及び接触部において軸端部236と軸受カップとのすべりや摩擦が殆ど生じない。なお、第3実施例の連結構造も、第1実施例の連結構造の効果を奏することは勿論である。
【0039】
図8に第4実施例を示す。第4実施例では、駆動軸の上側軸端部336を、中実の正六角柱を任意の一つの第1対角線D6で分割した2つの形状の等しい、断面台形の角柱形状の第1及び第2ブロック350a,350bとして構成し、且つ軸受カップ337も受入凹所を軸端部336の外形形状に相似で僅かに大きい正六角柱形状として構成している。セットスクリュー342の先端を第1ブロック350aの第一対角線D6に面する面に押し付けることによって、第1及び第2ブロック350a,350bの4つの外側面のそれぞれを軸受カップ337の対応する内側面に押し当てている。この第4実施例の連結構造によっても、第2実施例と同様に、回転トルクの伝達バランスに特に秀でており、軸受カップ337の軸中心と軸端部336の軸中心とが一致又は殆どずれていない。なお、第4実施例の連結構造も、第1実施例の連結構造の効果を奏することは勿論である。
【0040】
図9に第5実施例を示す。第5実施例では、駆動軸の上側軸端部436を、中実の正六角柱を任意の2辺に垂直な切断線D7で分割した2つの形状の等しい、断面五角形の角柱形状の第1及び第2ブロック450a,450bとして構成し、且つ軸受カップ437も受入凹所を軸端部436の外形形状に相似で僅かに大きい正六角柱形状として構成している。この第5実施例では、セットスクリュー442を挿通するための貫通孔としての雌ねじ451を第2ブロック450bに形成し、雌ねじ451を切断線D7に直交する対角線上に位置させたものである。セットスクリュー342の先端を第1ブロック450aの切断線D7に面する面に押し付けることによって、第1及び第2ブロック450a,450bの少なくとも4つの外側面のそれぞれを軸受カップ437の対応する内側面に押し当てている。この第5実施例の連結構造によると、軸対称に均等に配置された少なくとも4つの当接面で回転が伝達され且つ各当接面の当接面積は概ね等しくなるので、回転トルクの伝達バランスに特に秀でており、軸受カップ437の軸中心と軸端部436の軸中心とが一致又は殆どずれていない。なお、第5実施例の連結構造も、第1実施例の連結構造の効果を奏することは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
2 ベース
5 操作ヘッド
6 入れ子式軸
7 軸モータ
18 第1自在継手
19 第2自在継手
20 操作軸
31 パラレルメカニズムロボット
32 移動機構部
33 軸回転機構部
36 軸端部
37 軸受カップ
39 受入凹所
41 貫通孔
42 セットスクリュー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、エンドエフェクタを軸回転させるための操作軸が取り付けられたヘッドと、前記ベースと前記ヘッドとを並列に連結する複数のリンクとから構成される移動機構と、
入れ子式軸と、前記ベースに固定される軸モータと、第1及び第2の自在継手とから構成される軸回転機構とを含み、
第1の自在継手では、一方の軸受カップに前記軸モータの出力軸の軸端部を挿入して連結し、他方の軸受カップに前記入れ子式軸の一方軸端部を挿入して連結し、
第2の自在継手では、一方の軸受カップに前記入れ子式軸の他方軸端部を挿入して連結し、他方の軸受カップに前記ヘッドの操作軸の軸端部を挿入して連結したパラレルメカニズムロボットであって、
前記入れ子式軸の一方軸端部及び他方軸端部、前記操作軸の軸端部並びに前記軸モータの出力軸の軸端部と前記第1及び第2の自在継手の各軸受カップとの連結部の少なくとも一つにおいて、
前記軸端部が角柱であり且つ前記軸受カップの受入凹所が前記角柱の相似形であり、前記軸端部を前記軸受カップの受入凹所に挿通した状態に固定する固定部材を少なくとも一つ以上を有し、
固定状態において、前記軸端部の少なくとも2つの外側面が前記軸受カップの対応する少なくとも2つの内側面に対して押し当てられている、ことを特徴とするパラレルメカニズムロボット。
【請求項2】
前記軸端部が正角柱であり、且つ前記軸受カップの受入凹所が前記正角柱に相似形である、ことを特徴とする請求項1に記載のパラレルメカニズムロボット。
【請求項3】
前記軸端部が偶数個の外側面を持つ正角柱であり、且つ前記軸受カップの受入凹所が前記正角柱の相似形である、ことを特徴とする請求項2に記載のパラレルメカニズムロボット。
【請求項4】
前記軸端部が正四角柱であり、且つ前記軸受カップの受入凹所が前記正四角柱の相似形である、ことを特徴とする請求項2に記載のパラレルメカニズムロボット。
【請求項5】
前記少なくとも一つ以上の固定部材が前記角柱の側面を押し付けることにより、前記軸端部の少なくとも2つの外側面が前記軸受カップの対応する少なくとも2つの内側面に対して押し当てられている、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のパラレルメカニズムロボット。
【請求項6】
前記角柱が任意の一つの切断線上で2つの第1及び第2ブロックに分割され、第1ブロックのみに貫通孔が形成され、該貫通孔に挿入した前記固定部材を前記第2ブロックの切断線に面する面に当接させ、前記第1ブロック及び第2ブロックを前記切断線を基準に離れる方向に押し広げることにより、前記第1ブロックの2つの外側面と前記第2ブロックの2つの外側面とが前記軸受カップの対応する内側面に押し当てられる、ことを特徴とする請求項3又は4に記載のパラレルメカニズムロボット。
【請求項7】
前記切断線が前記角柱の第1の対角線であって、前記貫通孔が前記第1対角線とは異なる任意の第2対角線上に形成されている、ことを特徴とする請求項6に記載のパラレルメカニズムロボット
【請求項8】
前記固定部材がピン形状である、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のパラレルメカニズムロボット。
【請求項9】
前記ピン形状の固定部材が、セットスクリューであることを特徴とする請求項8に記載のパラレルメカニズムロボット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−251358(P2011−251358A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125479(P2010−125479)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】