説明

パラレルリンクステージの調整方法、基準位置決め治具、およびパラレルリンクステージ

【課題】パラレルリンクステージの調整方法、基準位置決め治具、およびパラレルリンクステージにおいて、ベースに対するエンドエフェクタの基準位置出しとアクチュエータの原点補正とを、高精度かつ容易に行うことができるようにする。
【解決手段】パラレルリンクステージの調整方法であって、各パラレルリンク機構の動作を自由化するリンク自由化工程と、ベース2およびエンドエフェクタ3を相対移動させ、上基準部材28および下基準部材30を介して、ベース2およびエンドエフェクタ3を一定の位置関係に連結する位置出し工程と、各パラレルリンク機構のエンコーダから、各リンク長を取得して制御部に記憶させる調整位置取得工程と、上基準部材28および下基準部材30をパラレルリンクステージから取り外す基準位置決め治具取り外し工程と、各パラレルリンク機構の各リンク長を、制御部に記憶された各リンク長に設定する位置初期化工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラレルリンクステージの調整方法、基準位置決め治具、およびパラレルリンクステージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベースとエンドエフェクタとが、複数の駆動軸を並列に配置したパラレルリンク機構で支持されたパラレルリンクステージとしては、複数本の直線状の駆動軸を協調して伸縮させ、エンドエフェクタの位置及び姿勢を制御する構成のスチュワートプラットフォーム型が広く知られている。このうち駆動軸が6本備えられているパラレルリンク機構は、並進3自由度と回転3自由度の計6自由度の相対運動が可能である。なお、駆動軸は、軸長自体を変化させるものと、固定長のリンクの一端をアクチュエータによって直進駆動させるものとが知られている。以下でいうリンク長可変のリンクは、いずれの場合も含むものとする。
このようなパラレルリンクステージは、各パラレルリンク機構の各リンク長によってベースに対するエンドエフェクタの位置、姿勢が確定するが、構成部品の加工誤差や取り付け誤差などにより、各リンク長の伸縮の指令値を理論値に合わせても、実際の動作におけるエンドエフェクタの位置、姿勢は、理論値とは必ずしも一致しない。
したがって、実際の使用にあたっては、少なくとも、エンドエフェクタの駆動の基準位置の位置出しを実機で行い、この基準位置における各リンク長の指令値の較正を行う必要がある。
例えば、特許文献1には、パラレルメカニズム装置(パラレルリンクステージ)のエンドエフェクタに、エンドエフェクタと主軸を一致させて調整用工具(基準位置決め治具)を取り付け、パラレルメカニズム装置の外部の、例えば、パラレルメカニズム装置が組み込まれた工作機械などの基準座標系に基づいて、調整用工具を用いた位置座標および姿勢角度座標の測定を行い、この測定値からパラレルリンクメカニズム機構(パラレルリンク機構)の運動学を記述する関係式を用いて機構パラメータを算出するパラレルメカニズム装置のキャリブレーション方法が記載されている。
特許文献1には、調整用工具および測定方法の形態として、調整用工具としてダイヤルゲージを用いて精密に加工された上面を持つ基準穴に基づいて姿勢角度を含めて手動位置決めを行う形態、基準球に接触させる形態、およびダブルボールバー(DBB)装置を使用する形態が記載されている。
一方、例えばシリアルリンク機構からなる多関節ロボットでも、同様に誤差の較正を行う必要がある。この場合、シリアルリンク機構を特定の姿勢をとらせて、この特定の姿勢に応じた基準位置決め治具を用いて、各リンクの位置、姿勢を測定することにより、特定の姿勢における位置、姿勢の誤差を検出し、基準位置出しを行っている。
例えば、特許文献2に記載された関節アームの原点合わせ治具(基準位置決め治具)では、第1アームに配設された原点合わせ用のセンターシャフトを、第1アームに連結された第2アームにセンターシャフトが遊嵌される凹設部を有する治具本体を取り付けて、第1および第2アームを平行状態にしたときに、凹設部に設けた変位測定器によってセンターシャフトの位置を測定することで、関節アームの原点の位置合わせを行うことができる。
また、特許文献3には、基準姿勢に対応して複数の接触部材を有する基準治具(基準位置決め治具)としてダイヤルゲージなどの接触間隔量測定具付き接触部材を用いて、ロボットの補正値を測定するロボットの座標補正値測定治具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−140575号公報
【特許文献2】実開平1−143377号公報
【特許文献3】特開昭63−318274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来のパラレルリンクステージの調整方法、基準位置決め治具、およびパラレルリンクステージには、以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、パラレルリンクステージが組み込まれる装置の基準座標系が設定される基準部材との関係で、パラレルリンクステージの基準位置決め治具の位置を測定し、そのときの各リンクのリンク長を運動学の関係式から算出して、位置出しおよび較正を行う。
そのため、高精度に位置出しを行うには、組み込まれる装置の基準部材に対する基準位置決め治具の位置を高精度に測定する必要がある。この結果、基準位置出しには測定作業に多くの時間がかかるという問題がある。
また、組み込まれる装置の種類や大きさによっては、距離測定に3次元測定機などの汎用的な測定手段を用いることができなくなる。したがって、工場の生産現場や客先等で、迅速、かつ容易に基準位置出しを行うには適さないという問題がある。
また、定規や水準器など簡易な計測治具を用いて基準位置と考えられる位置に位置合わせした後、移動等の実験を繰り返すことで誤差を補正することも考えられるが、ベースに対するエンドエフェクタの相対位置を正確に把握することは困難で、所要時間は膨大になり、エンドエフェクタの精度や再現性等が低下するだけでなく、最悪の場合、部品を損傷するという問題がある。
また、特許文献2、3に記載の技術では、シリアルリンク機構において、シリアルリンク機構単体で基準位置出しを行うことができる基準位置決め治具が開示されているが、いずれも、各リンクの基準位置からのずれを各リンクを側方で測定するものである。このような基準位置決め治具は、シリアルリンク機構特有の構造を利用しており、リンクが近接して並列に連結されているパラレルリンク機構では、機構上、配置が困難であるため、採用することはできないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、パラレルリンク機構を用いたパラレルリンクステージの、ベースに対するエンドエフェクタの基準位置出しとアクチュエータの原点補正とを、高精度かつ容易に行うことができるパラレルリンクステージの調整方法、基準位置決め治具、およびパラレルリンクステージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明では、ベースと、該ベースに対して間隔をあけて配置されるエンドエフェクタと、前記ベースおよび前記エンドエフェクタに端部が回動可能に連結され、前記ベースに対する前記エンドエフェクタの姿勢を変化させるためにリンク長可変に設けられた少なくとも3組からなるパラレルリンク機構と、該パラレルリンク機構の制御を行う制御部とを有するパラレルリンクステージの調整方法であって、前記パラレルリンクステージは、前記ベースに第1の位置決め基準部が設けられ、前記エンドエフェクタに第2の位置決め基準部が設けられ、前記各パラレルリンク機構は、リンク長を検出するエンコーダがそれぞれ備えられてなり、前記各パラレルリンク機構の駆動制御を停止して、前記各パラレルリンク機構の動作を自由化するリンク自由化工程と、該リンク自由化工程によって動作が自由化された状態で前記ベースおよび前記エンドエフェクタを相対移動させ、前記第1の位置決め基準部および前記第2の位置決め基準部にそれぞれ嵌合してそれぞれ一定の位置関係に係止可能とされ、前記第1の位置決め基準部および前記第2の位置決め基準部に係止するとともに前記第1の位置決め基準部および前記第2の位置決め基準部に互いに位置決めして連結できるようにした基準位置決め治具を介して、前記第1の位置決め基準部および前記第2の位置決め基準部を前記一定の位置関係に連結する位置出し工程と、該位置出し工程終了時に、前記各パラレルリンク機構の前記エンコーダから、前記各パラレルリンク機構の前記リンク長を取得して前記制御部に記憶させる調整位置取得工程と、該調整位置取得工程後に、前記基準位置決め治具を前記パラレルリンクステージから取り外す基準位置決め治具取り外し工程と、該基準位置決め治具取り外し工程後に、前記各パラレルリンク機構の前記各リンク長を、前記制御部に記憶された前記各リンク長に設定する位置初期化工程とを備える方法とする。
この発明によれば、まず、リンク自由化工程において、パラレルリンク機構の動作を自由化する。次に、位置出し工程において、動作が自由化された状態で、ベースおよびエンドエフェクタを相対移動させ、基準位置決め治具を介して、第1の位置決め基準部および前記第2の位置決め基準部を位置決めして連結する。次に、調整位置取得工程において、位置出し工程終了時に、各パラレルリンク機構のエンコーダから、各パラレルリンク機構のリンク長を取得して制御部に記憶させる。次に、基準位置決め治具取り外し工程において、調整位置取得工程後に、基準位置決め治具をパラレルリンクステージから取り外す。次に、位置初期化工程において、基準位置決め治具取り外し工程後に、各パラレルリンク機構の各リンク長を制御部に記憶された各リンク長に設定する。これにより、ベースとエンドエフェクタとの位置関係が、位置出し工程で基準位置決め治具を介して連結された一定の位置関係に初期化される。
【0007】
また、本発明では、第1の位置決め基準部を有するベースと、該ベースに対して間隔をあけて配置され第2の位置決め基準部を有するエンドエフェクタと、前記ベースおよび前記エンドエフェクタに端部が回動可能に連結され、前記ベースに対する前記エンドエフェクタの姿勢を変化させるためにリンク長可変に設けられた少なくとも3組からなるパラレルリンク機構とを有するパラレルリンクステージの調整に用いる基準位置決め治具であって、前記パラレルリンクステージの前記第1の位置決め基準部および前記第2の位置決め基準部に、それぞれ嵌合してそれぞれ一定の位置関係に取り付けられる第1の取付部および第2の取付部を備え、前記第1の取付部および前記第2の取付部を前記第1の位置決め基準部および前記第2の位置決め基準部にそれぞれ位置決めして取り付けるとともに、前記第1の位置決め基準部および前記第2の位置決め基準部を互いに位置決めして連結できるようにした構成とする。
この発明によれば、上述したパラレルリンクステージの調整方法に用いることができる基準位置決め治具となっているため同様の作用を備える。
【0008】
また、本発明では、上記の基準位置決め治具において、前記第1の取付部を有する第1位置決め部材と、前記第2の取付部を有する第2位置決め部材とからなり、前記第1位置決め部材と前記第2位置決め部材とは、互いに着脱可能に嵌合され、嵌合時に前記第1の取付部および前記第2の取付部の互いの相対位置を固定した状態で連結し合う凹凸嵌合部をそれぞれ備える構成とすることが可能である。
この発明によれば、基準位置決め治具が、第1位置決め部材と第2位置決め部材とからなり、それぞれの凹凸嵌合部同士を嵌合させることで、第1の取付部および第2の取付部の互いの相対位置を固定した状態で連結することができる。そのため、パラレルリンク機構のベースの第1の位置決め基準部に第1の取付部を介して第1位置決め部材を取り付け、エンドエフェクタの第2の位置決め基準部に第2の取付部を介して第2位置決め部材を取り付け、それぞれの凹凸嵌合部が互いに嵌合するように、ベースとエンドエフェクタとを相対移動させることで、位置出し工程を行うことができる。
【0009】
また、本発明では、ベースと、該ベースに対して間隔をあけて配置されるエンドエフェクタと、前記ベースおよび前記エンドエフェクタに端部が回動可能に連結され、前記ベースに対する前記エンドエフェクタの姿勢を変化させるためにリンク長可変に設けられた少なくとも3組からなるパラレルリンク機構と、該パラレルリンク機構の制御を行う制御部とを有するパラレルリンクステージであって、前記ベースおよび前記エンドエフェクタを一定の位置関係に連結する基準位置決め治具を嵌合して係止させる第1の位置決め基準部および第2の位置決め基準部が、それぞれ前記ベースおよび前記エンドエフェクタに設けられ、前記各パラレルリンク機構は、リンク長を検出するエンコーダがそれぞれ備えられ、前記制御部は、前記各パラレルリンク機構の駆動制御を停止して、前記各パラレルリンク機構の動作を自由化するリンク自由化手段と、該リンク自由化手段で前記各パラレルリンク機構の動作が自由化されたときに、前記各パラレルリンク機構のリンク長を取得して記憶するリンク長記憶手段と、該リンク長記憶手段に記憶された前記各リンク長を、前記各パラレルリンク機構に設定するリンク長初期化手段とを備える構成とする。
この発明によれば、上述したパラレルリンクステージの調整方法を行うことができるパラレルリンクステージとなっているため同様の作用を備える。
【0010】
また、本発明では、上記のパラレルリンクステージにおいて、前記ベースおよび前記エンドエフェクタの内部には、それぞれ対向(略対向も含む)する位置に対向方向に貫通する貫通孔が設けられ、前記第1の位置決め基準部は、前記ベースの前記貫通孔および該貫通孔近傍に形成され、前記第2の位置決め基準部は、前記エンドエフェクタの前記貫通孔および該貫通孔近傍に形成され、前記各貫通孔の間に、柱状(略柱状も含む)の基準位置決め治具が配置可能な開放空間が形成された構成とすることが可能である。
この発明によれば、ベースおよびエンドエフェクタに設けられた各貫通孔の間に、略柱状の基準位置決め治具が配置可能な開放空間が形成されているため、ベースおよびエンドエフェクタの内部側で、基準位置決め治具を用いた基準位置出しが行えるので、パラレルリンク機構を配置するスペースさえあれば、どのような場所であっても、容易に基準位置出しを行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパラレルリンクステージの調整方法、基準位置決め治具、およびパラレルリンクステージによれば、基準位置決め治具をベースおよびエンドエフェクタにそれぞれ設けられた第1および第2の位置決め基準部に嵌合させて互いに位置決めして連結し、このときの各パラレルリンク機構のリンク長を取得するため、パラレルリンク機構を用いたパラレルリンクステージの、ベースに対するエンドエフェクタの基準位置出しとアクチュエータの原点補正とを、高精度かつ容易に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るパラレルリンクステージの調整方法に用いるパラレルリンクステージの構成を示す斜め上側から見た斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るパラレルリンクステージの調整方法に用いるパラレルリンクステージの構成を示す斜め下側から見た斜視図である。
【図3】図1のA視の部分平面図である
【図4】図1のB視の部分側面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るパラレルリンクステージの制御部の機能ブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るパラレルリンクステージの調整方法に用いる基準位置決め治具の1つを示す斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るパラレルリンクステージの調整方法に用いる基準位置決め治具の他を示す斜視図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るパラレルリンクステージの調整方法に用いる基準位置決め治具の模式的な断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係るパラレルリンクステージの調整方法の位置出し工程終了時の様子を示す模式的な断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係るパラレルリンクステージの調整方法の位置出し工程終了時の様子を示す模式的な斜視図である。
【図11】本発明の第1の実施形態の第2変形例に係るパラレルリンクステージの調整方法に用いる基準位置決め治具を示す模式的な断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係るパラレルリンクステージの調整方法に用いるパラレルリンクステージの主要部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るパラレルリンクステージの調整方法について、それに用いる基準位置決め治具およびパラレルリンクステージとともに説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るパラレルリンクステージの調整方法に用いるパラレルリンクステージの構成を示す斜め上側から見た斜視図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係るパラレルリンクステージの調整方法に用いるパラレルリンクステージの構成を示す斜め下側から見た斜視図である。図3、4は、それぞれ図1のA視の部分平面図、およびB視の部分側面図である。図5は、本発明の第1の実施形態に係るパラレルリンクステージの制御部の機能ブロック図である。図6、7は、それぞれ本発明の第1の実施形態に係るパラレルリンクステージの調整方法に用いる基準位置決め治具の1つおよび他を示す斜視図である。図8は、本発明の第1の実施形態に係るパラレルリンクステージの調整方法に用いる基準位置決め治具の模式的な断面図である。
【0015】
本実施形態のパラレルリンクステージ1は、被保持体の位置姿勢を高精度に調整して保持することができるステージであり、ステージ単体として用いることもできるが、例えば、図示しない測定装置や組立装置などに組み込んで、それぞれの被検体やワークなどを被保持体として高精度に位置調整して保持するといった用途にも好適なものである。
以下では簡単のため、パラレルリンクステージ1が組み込まれる装置に設けられた水平面上に取り付けられ、パラレルリンクステージ1の上側に被保持体を保持し、一定の基準水平面を保持の中立位置として、被保持体の位置、姿勢を変化させる場合の例で説明する。ただし、パラレルリンクステージ1は、用途に応じて、これとは異なる向き、例えば、横向き、下向きなどの任意の向きに配置することができる。
パラレルリンクステージ1は、図1、2に示すように、ベース2と、ベース2に対して間隔をあけて配置されるエンドエフェクタ3と、ベース2とエンドエフェクタ3との間に配置され、ベース2とエンドエフェクタ3とを6箇所で距離可変に連結する6組のリンク部4(パラレルリンク機構)と、リンク部4の駆動制御を行う制御ユニット50(制御部)とを備えている。
【0016】
ベース2は、図2に示すように、ドーナツ状の穴あき円板部材であり、パラレルリンクステージ1の装置底面を構成し、他の装置に組み込んで用いる場合には、他の装置に対する取付固定部を構成するものである。
ベース2の下面に形成されたベース平面部2aは、高精度の平面度を有し、パラレルリンクステージ1の高さ方向の基準面となっている。
ベース2の中心には、ベース2の径方向の位置決めを行うため、ベース平面部2aと直交する板厚方向に貫通して設けられた円筒孔からなるベース嵌合部2cが形成されている。
本実施形態のベース嵌合部2cによって形成される開口は、パラレルリンクステージ1の用途や、被保持体の大きさなどに応じて、例えば、エンドエフェクタ3上に保持した被保持体を下側から観察したり、操作したりすることができる大きさを有している。例えば、パラレルリンクステージ1が被検レンズの透過率測定装置に組み込まれる場合には、被検レンズのレンズ有効径よりも大きな開口に形成されている。
【0017】
また、ベース嵌合部2cの近傍の縁部には、ベース嵌合部2cの中心に対する周方向の位置決めを行うための径方向に延びる長穴などからなる位置決め穴25と、後述する下基準部材30をネジで固定するための複数の雌ネジ部2dとが、それぞれ、ベース嵌合部2cの中心軸と同軸の円周上において、厚さ方向に貫通して設けられている。
また、この他にも、ベース2の上面側(ベース平面部2aと反対側)には、リンク部4を取り付けるための位置決め部や、雌ねじやボルト穴などの固定部などが必要に応じて設けられている。
【0018】
ベース平面部2a、ベース嵌合部2c、および位置決め穴25は、後述する下基準部材30を嵌合して一定の位置関係に位置決めする第1の位置決め基準部を構成している。
以下では、ベース嵌合部2cの中心軸Cは、パラレルリンクステージ1の基準中心軸C、基準中心軸Cとベース平面部2aに整列する平面との交点Oは、パラレルリンクステージ1の装置の位置基準点Oと称する。
【0019】
エンドエフェクタ3は、図1、2に示すように、中心に貫通孔が設けられた略多角錐台状の外形を有する、全体として略円環状の部材からなる。本実施形態では、エンドエフェクタ3の外径は、ベース2の外径よりも小さい設定とされている。
エンドエフェクタ3の上面には、被保持体を保持するエンドエフェクタ平面部3aが形成され、エンドエフェクタ3の下面側は、リンク部4をエンドエフェクタ3の中心軸に対して斜め方向に傾斜させて取り付けるための複数の斜面を有するエンドエフェクタ下面部3bが形成されている。
エンドエフェクタ3の中心には、エンドエフェクタ3の径方向の位置決めを行うため、エンドエフェクタ平面部3aと直交する板厚方向に貫通して設けられた円筒孔からなるエンドエフェクタ嵌合部3cが形成されている。
本実施形態のエンドエフェクタ嵌合部3cによって形成される開口は、ベース嵌合部2cによる開口と同様に、パラレルリンクステージ1の用途や、被保持体の大きさなどに応じて、例えば、エンドエフェクタ3上に保持した被保持体を下側から観察したり、操作したりすることができる大きさを有している。本実施形態では、エンドエフェクタ嵌合部3cの内径は、ベース嵌合部2cの内径よりも小径に設定されている。
【0020】
また、エンドエフェクタ嵌合部3cの近傍の縁部には、エンドエフェクタ嵌合部3cの中心に対する周方向の位置決めを行うためにエンドエフェクタ平面部3a上に立設された位置決めピン21と、後述する上基準部材28をネジで固定するための厚さ方向に貫通された複数の雌ネジ部3dとが、それぞれ、エンドエフェクタ嵌合部3cの中心軸と同軸の円周上に設けられている。
また、この他にも、エンドエフェクタ3の上面側(エンドエフェクタ平面部3a側)には、用途に応じて、例えばワークなどを取り付けたり、保持したりするための治具等(図示せず)を固定する位置決め部や、雌ねじやボルト穴などの固定部などが必要に応じて設けられている。
【0021】
エンドエフェクタ平面部3a、エンドエフェクタ嵌合部3c、および位置決めピン21は、後述する上基準部材28を嵌合して一定の位置関係に位置決めする第2の位置決め基準部を構成している。
ここで、エンドエフェクタ平面部3aの法線でもあるエンドエフェクタ嵌合部3cの中心軸Dは、エンドエフェクタ3の姿勢を代表することができる軸となっているので、以下では、エンドエフェクタ3の姿勢基準軸Dと称する。また、姿勢基準軸Dとエンドエフェクタ平面部3aに整列する平面との交点Pは、エンドエフェクタ3の移動位置を代表することができる点となっているので、以下では、エンドエフェクタ3の移動基準点Pと称する。
【0022】
6組のリンク部4は、可変長のリンクで構成してリンク長を変えることでベース2とエンドエフェクタ3との間の連結長さを変える構成としてもよいが、本実施形態では、一例として、固定長のリンクを直動アクチュエータで移動させることで、ベース2とエンドエフェクタ3との間の連結長さを変える構成の例で説明する。ただし、以下では、誤解のおそれのない限り、リンク部4による連結長さをリンク部4のリンク長と称する場合がある。すなわち、リンク部4のリンク長とは、ベース2およびエンドエフェクタ3に対する固定位置の間の距離を意味する。
本実施形態の各リンク部4は、すべて同一の構成を有しており、図1に示すように、それぞれ、可動リンク5および直動アクチュエータ部6を備える。
【0023】
可動リンク5は、一端側がボールジョイントからなる上側ジョイント7を介してエンドエフェクタ3のエンドエフェクタ下面部3bに回動可能に取り付けられた一定長さの棒状部材であり、他端側はボールジョイントからなる下側ジョイント8を介して回動可能な状態で直動アクチュエータ部6に固定されている。
上側ジョイント7は、エンドエフェクタ下面部3bの外周側に、2つ1組で近接され、これら3組が、周方向に120°ピッチで取り付けられている。
【0024】
直動アクチュエータ部6は、図1に示すように、下側ジョイント8を介して回動可能に連結された可動リンク5の他端部を、ベース2側からエンドエフェクタ3側に向かって、それぞれ一定の斜め方向に沿って移動させる直動機構である。
本実施形態の直動アクチュエータ部6は、図3、4に示すように、ボールネジ14、ナット15、およびモータ10を備えるボールネジ送り機構によって、下側ジョイント8が固定され、ガイドレール17上を一定の軸線方向に沿って直線移動するスライダ18に支持されたナットブロック16を駆動する構成を採用している。
【0025】
ボールネジ14は、ガイドレール17の一定の軸線方向に平行となるように設置されている。そして、ボールネジ14の一端部は、ガイドレール17のベース2側の端部に設けられたブラケット9に貫通するように配置され、不図示の軸受を介してブラケット9に回転可能に固定されている。
ブラケット9からベース2側に突出されたボールネジ14の一端には、ボールネジ14に回転を伝達するためのタイミングプーリ11bが固定されている。
また、ボールネジ14の他端側の中間部は、ナットブロック16に固定されたナット15に螺合されている。
【0026】
モータ10は、ボールネジ14を回転させるための回転駆動部であり、本実施形態では、エンコーダを内蔵したサーボモータを採用している。モータ10に内蔵されたエンコーダ(不図示)は、モータ10の回転角度を検出し、制御ユニット50(図5参照)にエンコーダの値を送出できるように構成されている。
モータ10は、モータシャフトがボールネジ14と平行な状態でブラケット9からベース2側に突出する位置関係となるように、ブラケット9に固定されている。
モータ10のモータシャフトの先端には、タイミングプーリ11aが取り付けられ、このタイミングプーリ11aと、ボールネジ14に固定されたタイミングプーリ11bとの間に、タイミングベルト11cが巻き掛けられている。これにより、モータ10の回転によって、ボールネジ14が回転駆動されるようになっている。
このようにタイミングプーリ11a、11b、およびタイミングベルト11cは、モータ10の回転をボールネジ14に伝達する回転伝達部11を構成している。
【0027】
このような直動アクチュエータ部6は、ベース2のベース上面部2bの外周側の部分に固定する取付面19aと、取付面19aに対して傾斜して形成された傾斜取付部19bとを有するブロック部材からなるガイドベース19の傾斜取付部19bに固定されている。
直動アクチュエータ部6が固定された各ガイドベース19は、ベース2のベース上面部2b上の外周側の円周上に、等ピッチで設けられた6箇所の取付部に、取付面19aで位置決めされた状態で、それぞれ固定されている。
各ガイドベース19の配置姿勢は、傾斜取付部19bに取り付けられたガイドレール17の移動の軸線方向が、ベース2側からエンドエフェクタ3側に向かうにつれて、ベース2の中心軸側に所定の傾斜角度、例えば0°〜45°の角度をなして、傾斜するように設定されている。
このため、パラレルリンクステージ1において、ベース2とエンドエフェクタ3との間には、6組のリンク部4に囲まれる内側には、ベース嵌合部2cとエンドエフェクタ嵌合部3cと間に連通する略柱状の開放空間が形成されている。
【0028】
制御ユニット50は、例えば、キーボードや操作パネルなどの操作入力手段からなる操作部60の操作入力に応じて、ベース2に対するエンドエフェクタ3の位置姿勢を制御するためのもので、操作部60および各リンク部4の各モータ10と電気的に接続されている。
操作部60は、少なくとも、パラレルリンクステージ1の各リンク部4のモータ10の動作を自由化するリンク自由化指示と、各リンク部4のモータ10から、エンコーダの値をリンク部4の原点として取得させる原点取得指示と、各リンク部4の各リンク長を原点のリンク長にリセットする原点復帰指示と、エンドエフェクタ3の移動基準点Pおよび姿勢基準軸Dが、目的の位置、姿勢となるようにエンドエフェクタ3を移動させる移動指示とが行えるようになっている。
本実施形態の移動指示は、一例として、エンドエフェクタ3の移動基準点Pの平行移動量および移動方向と、エンドエフェクタ3の姿勢基準軸Dの、移動基準点Pを中心とする3軸回りの回転角および回転方向とを制御ユニット50に送出することで行う。
制御ユニット50の機能構成は、図5に示すように、リンク自由化部51(リンク自由化手段)、指令値生成部52、モータ駆動制御部53、原点復帰制御部54(リンク長初期化手段)、原点位置記憶部55(リンク長記憶手段)、および原点取得制御部56からなる。
【0029】
リンク自由化部51は、操作部60からリンク自由化指示を受けたときに、各モータ10の動作を自由化する制御信号を原点復帰制御部54に送出するものである。本実施形態では、モータ10の駆動電源をオフにする動作を行う。
指令値生成部52は、操作部60から入力された移動指示の情報を解析して、各リンク部4のリンク長を算出し、これらのリンク長を得るためのモータ10の回転角の指令値に変換して、モータ駆動制御部53に送出するものである。
モータ駆動制御部53は、各モータ10から取得されるエンコーダの値から、各モータ10の回転角が、指令値生成部52から送出された各モータ10の回転角の指令値に合致するように、各モータ10の回転量を制御するものである。
原点取得制御部56は、各モータ10の回転角が調整された後に、操作部60から入力される原点取得指示に基づいて、各モータ10のエンコーダ値を取得し、これらを、各リンク部4の各リンク長に対応する原点位置として、原点位置記憶部55に記憶させるものである。
原点復帰制御部54は、操作部60から入力された原点復帰指示に基づいて、原点位置記憶部55に記憶された各リンク部4の原点位置に対応するモータ10の回転角の指令値をモータ駆動制御部53に送出するものである。
【0030】
このような制御ユニット50の装置構成は、ハードウェアのみで構成してもよいし、適宜のハードウェアと、CPU、メモリ、入出力インターフェース、外部記憶装置などからなるコンピュータとから構成して、上記の制御機能を、コンピュータで制御プログラムを実行することで実現してもよい。
【0031】
次にこのようなパラレルリンクステージ1の基準位置出しを行うために用いる基準位置決め治具について説明する。
本実施形態の基準位置決め治具は、図6〜8に示すように、上基準部材28(第2位置決め部材)および下基準部材30(第1位置決め部材)の2体からなる。
【0032】
上基準部材28は、図6、8に示すように、エンドエフェクタ嵌合部3cに内嵌する円筒部である上基準部材嵌合部28dと、上基準部材嵌合部28dの上端部の外周に設けられたフランジ部28aと、上基準部材嵌合部28dの下端部の先端に上基準部材嵌合部28dと同軸に設けられた先細の円錐台状の外形を有する上基準部材凸テーパ部28eとを備え、それぞれの中心に貫通孔28hが形成された部材である。
【0033】
上基準部材嵌合部28dは、エンドエフェクタ嵌合部3cに内嵌されることで、エンドエフェクタ3に対して上基準部材28の径方向の位置決めが行うことができるようになっている。
また、フランジ部28aの上基準部材嵌合部28d側の面である上基準部材平面部28bは、上基準部材嵌合部28dをエンドエフェクタ嵌合部3cに嵌合させた状態で、エンドエフェクタ平面部3aと密着して当接できるようになっており、上基準部材28の軸方向の位置決め面を構成している。
また、フランジ部28aには、エンドエフェクタ平面部3a上の位置決めピン21と嵌合して、上基準部材28を、エンドエフェクタ3の姿勢基準軸D回りの周方向の位置決めを行うための上基準部材位置決め穴28cが厚さ方向に貫通して設けられている。
また、フランジ部28aには、エンドエフェクタ3上に設けられた各雌ネジ部3dに対応する位置において、ネジ29(図8参照)によるネジ止めを行うための止め孔28gがそれぞれ設けられている。
【0034】
また、上基準部材凸テーパ部28eの側面には、上基準部材28を上基準部材嵌合部28dの中心軸回りに位置決めするための位置決めピン28fが、上基準部材嵌合部28dの中心軸と直交する方向に立設されている。
位置決めピン28fの中心軸は、上基準部材嵌合部28dの中心軸と上基準部材位置決め穴28cの中心軸とを含む平面に整列されている。
【0035】
このような構成により、上基準部材平面部28b、上基準部材位置決め穴28c、上基準部材嵌合部28dは、上基準部材28をエンドエフェクタ3の第2の位置決め基準部に位置決めして取り付ける第2の取付部を構成している。
【0036】
下基準部材30は、図7、8に示すように、ベース嵌合部2cより小径の外径を有する円筒部30dと、円筒部30dの基端部に形成されてベース嵌合部2cに内嵌する円柱状の段部からなる下基準部材嵌合部30cと、下基準部材嵌合部30cの下端側で、径方向外方に延ばされたフランジ部30aとを備え、それぞれの中心に貫通孔30hが形成された部材である。
【0037】
下基準部材嵌合部30cは、ベース嵌合部2cに内嵌されることで、下基準部材嵌合部30cが、パラレルリンクステージ1の基準中心軸Cと同軸となるように、径方向の位置決めが行うことができるようになっている。
また、フランジ部30aの下基準部材嵌合部30c側の面である下基準部材平面部30bは、下基準部材嵌合部30cをベース嵌合部2cに嵌合させた状態で、ベース平面部2aと密着して当接できるようになっており、下基準部材30の軸方向の位置決め面を構成している。
また、フランジ部30aの下基準部材平面部30b上には、ベース2に設けられた位置決め穴25と嵌合して、下基準部材30を、パラレルリンクステージ1の基準中心軸C回りの周方向の位置決めを行うための位置決めピン30iが立設されている。
また、フランジ部30aには、ベース2上に設けられた各雌ネジ部2dに対応する位置において、ネジ29(図8参照)によるネジ止めを行うための止め孔30gがそれぞれ設けられている。
【0038】
このような構成により、下基準部材平面部30b、位置決めピン30i、下基準部材嵌合部30cは、下基準部材30をベース2の第1の位置決め基準部に位置決めして取り付ける第1の取付部を構成している。
【0039】
円筒部30dの先端部の内周側には、下基準部材嵌合部30cの中心軸と同軸となる位置に、基端部側から先端側に向かって拡径し、上基準部材28の上基準部材凸テーパ部28eと密着して同軸に嵌合する下基準部材凹テーパ部30eが形成されている。
また、円筒部30dの先端側には、上基準部材28の位置決めピン28fの外径に嵌合する側面視略U字状の溝からなる下基準部材位置決め溝30fが、円筒部30dの径方向に貫通して設けられている。
下基準部材位置決め溝30fの溝中心面は、下基準部材嵌合部30cの中心軸と位置決めピン30iの中心軸とを含む平面に整列されている。
下基準部材位置決め溝30fの溝深さは、上基準部材凸テーパ部28eを下基準部材凹テーパ部30e内に挿入していくとき、それぞれのテーパ面が互いに密着して嵌合するまで、位置決めピン28fが下基準部材位置決め溝30fに接触しない程度の深さに設定されている。
【0040】
このように、上基準部材28および下基準部材30は、それぞれ上基準部材凸テーパ部28eと位置決めピン28fとからなる凹凸嵌合部、および下基準部材凹テーパ部30eと下基準部材位置決め溝30fとからなる凹凸嵌合部を備えることにより、上基準部材位置決め穴28cと位置決めピン30iとの周方向の位置関係を固定した状態に互いに連結することができるようになっている。
【0041】
次に、本実施形態のパラレルリンクステージの調整方法について説明する。
図9、10は、それぞれ本発明の第1の実施形態に係るパラレルリンクステージの調整方法の位置出し工程終了時の様子を示す模式的な断面図および斜視図である。
【0042】
本実施形態のパラレルリンクステージの調整方法は、パラレルリンクステージ1のベース2およびエンドエフェクタ3の相対的な位置関係を一定の位置関係である基準位置に設定して、各リンク部4の原点補正を行うことにより、各リンク部4を原点に駆動することで、ベース2およびエンドエフェクタ3を基準位置の位置関係とするリンク長が得られるようにするものである。
本調整方法は、リンク自由化工程、位置出し工程、調整位置取得工程、基準位置決め治具取り外し工程、および位置初期化工程を備える。
【0043】
リンク自由化工程は、各リンク部4の駆動制御を停止して、各リンク部4の動作を自由化する工程である。
本工程では、まず操作者が操作部60からリンク自由化指示を行う。制御ユニット50では、リンク自由化指示を受けると、リンク自由化部51からモータ駆動制御部53に、各モータ10の動作を自由化する制御信号を送出する。モータ駆動制御部53はこの制御信号に応じて、各モータ10への駆動電源をオフにする。これにより、各モータ10は、操作者がタイミングプーリ11aを回転させることで、自由に回転できる状態となる。
この状態では、タイミングプーリ11aを回転させると、タイミングベルト11cが巻き掛けられているタイミングプーリ11bおよびタイミングプーリ11bが取り付けられたボールネジ14が回転される。ボールネジ14が回転すると、回転方向に応じて、ナット15がボールネジ14上を移動し、ナットブロック16がガイドレール17上を軸線方向に沿って移動する。
このナットブロック16の移動に伴って、可動リンク5が移動される。このため、ガイドベース19の取付面19aと可動リンク5の一端が固定された上側ジョイント7との間の連結長さであるリンク部4のリンク長を変化させることができる。
【0044】
次に、位置出し工程を行う。本工程は、リンク自由化工程によって動作が自由化された状態でベース2およびエンドエフェクタ3を相対移動させ、上基準部材28および下基準部材30を介して、ベース2の第1の位置決め基準部およびエンドエフェクタ3の第2の位置決め基準部を一定の位置関係に連結する工程である。
【0045】
まず、操作者は、図8に示すように、上基準部材28および下基準部材30を、それぞれベース2およびエンドエフェクタ3に係止する。このとき、上基準部材28および下基準部材30の先端部が互いに干渉しないように、ベース2とエンドエフェクタ3との間には十分離間させておく。
【0046】
上基準部材28は、エンドエフェクタ嵌合部3cの上方から上基準部材28の上基準部材凸テーパ部28e、上基準部材嵌合部28dを挿入するとともに、上基準部材28を姿勢基準軸D回りに回転させて、位置決めピン21が上基準部材位置決め穴28cに嵌合する位置を探し、さらに上基準部材28の挿入を続けて、エンドエフェクタ平面部3aと上基準部材平面部28bとを密着して係止させる。この状態で、ネジ29を用いて、上基準部材28をエンドエフェクタ3に固定する。
これにより、上基準部材28は、上基準部材嵌合部28dの中心軸が、姿勢基準軸Dに同軸に整列されるとともに、位置決めピン28fおよび上基準部材凸テーパ部28eが、移動基準点Pに対して、一定の位置関係に配置される。すなわち、上基準部材28はエンドエフェクタ3の第2の取付部に位置決めして取り付けられたことになる。
【0047】
下基準部材30は、ベース嵌合部2cの下方から下基準部材30の下基準部材凹テーパ部30e、円筒部30dを挿入するとともに、下基準部材30を基準中心軸C回りに回転させて、位置決めピン30iが、ベース2の位置決め穴25に嵌合する位置を探し、さらに下基準部材30の挿入を続けて、下基準部材嵌合部30cがエンドエフェクタ嵌合部3cに嵌合され、ベース平面部2aと下基準部材平面部30bとを密着して係止させる。この状態で、ネジ29を用いて下基準部材30をベース2に固定する。
これにより、下基準部材30は、下基準部材嵌合部30cの中心軸が、基準中心軸Cに同軸に整列されるとともに、下基準部材位置決め溝30fおよび下基準部材凹テーパ部30eが、位置基準点Oに対して、一定の位置関係に固定される。すなわち、下基準部材30はベース2の第1の取付部に位置決めして取り付けられたことになる。
【0048】
次に、操作者は、6組のリンク部4のボールネジ14を適宜回転させて、各リンク長を縮めていき、ベース2に対するエンドエフェクタ3の位置姿勢を確認しながら、ベース2に対してエンドエフェクタ3を相対移動させる。
そして、径方向の相対位置を調整して、位置決めピン28fが下基準部材位置決め溝30fに上方から嵌合できる位置関係として、ベース2とエンドエフェクタ3との間の隙間を徐々に低減させる。そして、上基準部材凸テーパ部28eを下基準部材凹テーパ部30eの内部に挿入し、上基準部材凸テーパ部28eが、下基準部材凹テーパ部30eに密着して嵌合する位置関係に各リンク長を調整していく。
【0049】
このとき、互いに凹凸嵌合部を構成する上基準部材凸テーパ部28eと下基準部材凹テーパ部30eとは、上基準部材凸テーパ部28eが先細の(先端側に縮径する)凸部とされ、下基準部材凹テーパ部30eが先端側に拡径する凹部とされている。このため、互いの位置が定まりにくい挿入の初期において、それぞれの姿勢の自由度を大きくとることができて、操作者の作業が容易となる。例えば、エンドエフェクタ3の姿勢基準軸Dがベース2の基準中心軸Oに対してずれていたり、斜めに交差したりしても、挿入を開始することができる。
また、挿入作業が進むにつれて、上基準部材凸テーパ部28eと下基準部材凹テーパ部30eとの径方向の隙間が狭まっていくため、各テーパ面が互いに案内面となって、挿入方向が調心されていくため、円滑に嵌合させることができる。
【0050】
このようにして、図9、10に示すように、上基準部材凸テーパ部28eと下基準部材凹テーパ部30eとが嵌合されると、上基準部材28および下基準部材30、並びにこれらに固定されたベース2およびエンドエフェクタ3は、全ての自由度が拘束され、互いの相対的な位置関係が一定の基準位置に位置合わせされた状態で連結される。
本実施形態の基準位置は、エンドエフェクタ3の姿勢基準軸Dがベース2の基準中心軸Cと同軸に整列され、移動基準点Pおよび位置基準点Oが一定距離だけ離され、ベース平面部2aとエンドエフェクタ平面部3aとが平行に配置されている。そして、ベース2の位置決めピン21の中心軸と、エンドエフェクタ3の位置決め穴25の中心軸とが、基準中心軸Cを通る平面内に整列され、これにより、ベース2およびエンドエフェクタ3は基準中心軸C回りの回転位置が拘束される。
以上で位置出し工程が終了する。
【0051】
次に、調整位置取得工程を行う。本工程は、位置出し工程終了時に、各リンク部4のエンコーダから、各リンク部4のリンク長を取得して制御ユニット50に記憶させる工程である。本実施形態では、リンク長に対応するモータ10のエンコーダの値を記憶させる。
操作者は、上基準部材28および下基準部材30による基準位置出しが完了したと判断すると、操作部60を介して制御ユニット50に原点取得指示を行う。制御ユニット50では、原点取得制御部56によって、この時点における各モータ10のエンコーダの値を取得し、これらの値を原点位置記憶部55に各リンク部4の原点位置として記憶する。すでに原点位置記憶部55に他の値が記憶されている場合にも上書きする。これにより、過去に記憶された原点位置が最近の位置出し工程における調整状態と異なっていても、原点位置を最新の状態に補正することができる。
以上で調整位置取得工程を終了する。
【0052】
次に、基準位置決め治具取り外し工程を行う。本工程は、調整位置取得工程後に、上基準部材28および下基準部材30をパラレルリンクステージ1から取り外す工程である。
操作者は、調整位置取得工程後に、ネジ29を外して、上基準部材28および下基準部材30をパラレルリンクステージ1から取り外す。本実施形態では、各ネジ29を取り外した後、上基準部材28、下基準部材30を互いに軸方向に離間する方向に引き抜くことで、パラレルリンクステージ1から取り外すことができる。
【0053】
次に位置初期化工程を行う。本工程は、基準位置決め治具取り外し工程後に、各リンク部4のリンク長を、制御ユニット50に記憶された各リンク長に設定する工程である。
操作者は、基準位置決め治具取り外し工程後に、操作部60から原点復帰指示を行う。制御ユニット50では、原点復帰制御部54によって、原点位置記憶部55から、各リンク部4のリンク長に対応する各モータ10の原点位置を呼び出して、モータ駆動制御部53に送出する。
モータ駆動制御部53は、各原点位置が送出されると、各モータ10の駆動電圧をオン状態とし、各モータ10のエンコーダ値が、これらの各原点位置に一致するように、各モータ10を駆動する。これにより、調整基準治具取り外し工程で、ベース2、エンドエフェクタ3の間の位置関係が変化しても、各リンク部4のリンク長を位置出し工程における基準位置の状態に再現することができる。
以上で、パラレルリンクステージ1の調整を終了する。
【0054】
本実施形態のパラレルリンクステージの調整方法によれば、上基準部材28および下基準部材30をベース2およびエンドエフェクタ3に連結して、ベース2およびエンドエフェクタ3の自由度を拘束し、これにより一意に決まる基準位置の位置出しを行って、リンク長(原点位置)を較正するので、再現性のよい調整を行うことができる。
また、ベース2に対するエンドエフェクタ3の位置や姿勢を、精密に測定し、測定結果を演算処理したりするといった手間をかけることなく、容易かつ迅速に調整を行うことができる。
このため、高精度な計測装置などを持ち込んだり、配置したりすることができないパラレルリンクステージであっても、高精度な調整が行える。
本実施形態の上基準部材28、下基準部材30は、ベース2およびエンドエフェクタ3の内周側のベース嵌合部2c、エンドエフェクタ嵌合部3cに挿通され、ベース2とエンドエフェクタ3との間の空間で連結されるので、調整作業を、パラレルリンクステージ1の大きさの範囲で行うことができる。このため、例えば、工場の生産現場や客先等、パラレルリンクステージ1が他の装置に組み込まれて用いられ、パラレルリンクステージ1のまわりにあまり作業スペースがとれない場合でも、容易に調整作業を行うことができる省スペースな調整方法となっている。
【0055】
次に、本実施形態の第1変形例のパラレルリンクステージの調整方法について説明する。
本変形例は、上記位置出し工程における上基準部材28および下基準部材30の固定の仕方に関するものである。
上記第1の実施形態の位置出し工程では、ベース2およびエンドエフェクタ3にそれぞれ上基準部材28および下基準部材30を係止、固定してから、ベース2およびエンドエフェクタ3を相対移動させて、上基準部材28および下基準部材30を各先端部で連結した。
本変形例では、上基準部材28または下基準部材30を係止、固定する前、または略同時(同時も含む、以下同じ)に、上基準部材28および下基準部材30の先端部を連結する。
例えば、ベース2に上記第1の実施形態と同様にして、下基準部材30を固定する。そして、上基準部材28をエンドエフェクタ嵌合部3cに挿通させて、上基準部材28の上基準部材凸テーパ部28e、位置決めピン28fを下基準部材30の下基準部材凹テーパ部30e、下基準部材位置決め溝30fに嵌合させて、これらを互いに連結する。これにより、ベース2、上基準部材28、および下基準部材30の自由度が拘束されて一体化される。
次に、上記第1の実施形態と同様にして、エンドエフェクタ3の位置を移動させることにより、下基準部材30に連結された上基準部材28の第2の取付部に、エンドエフェクタ3の第2の位置決め基準部が位置決めして取り付けられるようにする。
また、これとは逆に、エンドエフェクタ3に上基準部材28を固定してから、ベース2の位置を移動させることにより、上基準部材28に連結された下基準部材30の第1の取付部に、ベース2の第1の位置決め基準部が位置決めして取り付けられるようにしてもよい。
【0056】
また、上記の例で、ベース2に固定された下基準部材30に、上基準部材28の先端部を連結する前に、上基準部材28およびエンドエフェクタ3を移動させ、エンドエフェクタ3に対する上基準部材28の嵌合状態と、上基準部材28の先端部と下基準部材30の先端部との嵌合状態とを操作者が確かめつつ、それぞれを略同時に嵌合させていき、上基準部材28のエンドエフェクタ3への係止と、上基準部材28の下基準部材30に対する連結とが略同時に完了するようにしてもよい。
【0057】
また、上記第1の実施形態と同様に、ベース2およびエンドエフェクタ3に上基準部材28および下基準部材30を一旦固定して、上基準部材28および下基準部材30を連結するための位置合わせを進め、上基準部材28と下基準部材30とが連結される前に、上基準部材28または下基準部材30の固定を緩めて、上基準部材28および下基準部材30を連結してから、固定が緩められたベース2またはエンドエフェクタ3を移動させるようにしてもよい。
【0058】
次に、本実施形態の第2変形例のパラレルリンクステージの調整方法に用いる基準位置決め治具について説明する。
図11は、本発明の第1の実施形態の第2変形例に係るパラレルリンクステージの調整方法に用いる基準位置決め治具を示す模式的な断面図である。
【0059】
本変形例は、上記第1の実施形態のパラレルリンクステージ1の調整に用いることもできるが、ベース2およびエンドエフェクタ3の中心に貫通孔が設けられていなくても調整が行えるようにしたものである。すなわち、図11に示すように、上記第1の実施形態のパラレルリンクステージ1のベース2、エンドエフェクタ3に代えて、ベース2A、エンドエフェクタ3Aを備えるパラレルリンクステージ1Aを好適に調整することができるものである。
パラレルリンクステージ1Aのベース2Aは、ベース2のベース嵌合部2cを削除し、ベース2の外形を高精度な円筒面に仕上げたベース嵌合部2Cを設けたものである。
パラレルリンクステージ1Aのエンドエフェクタ3Aは、エンドエフェクタ3のエンドエフェクタ嵌合部3cを削除し、エンドエフェクタ3の外形を高精度な円筒面に仕上げたエンドエフェクタ嵌合部3Cを設けたものである。
【0060】
ベース嵌合部2C、エンドエフェクタ嵌合部3Cは、それぞれの中心軸が、上記第1の実施形態と同様に、基準中心軸C、姿勢基準軸Dを構成している。
また、ベース平面部2a、ベース嵌合部2C、および位置決め穴25は、後述する下基準部材300を嵌合して一定の位置関係に位置決めする第1の位置決め基準部を構成している。
また、エンドエフェクタ平面部3a、エンドエフェクタ嵌合部3C、および位置決めピン21は、後述する上基準部材280を嵌合して一定の位置関係に位置決めする第2の位置決め基準部を構成している。
【0061】
本変形例では、基準位置決め治具として、上記第1の実施形態の上基準部材28、下基準部材30に代えて、上基準部材280、下基準部材300を用いる。
上基準部材280は、エンドエフェクタ3Aの外径よりも大きな内径を有し、かつ各リンク部4を内部に収容可能に設けられた略有底円筒状部材の内底部に、エンドエフェクタ3Aのベース嵌合部2Cを外嵌する上基準部材嵌合部28Dと、エンドエフェクタ平面部3aと密着して当接する上基準部材平面部28bとからなる位置決め穴が設けられている。
そして上基準部材平面部28bには、上記第1の実施形態と同様に、上基準部材位置決め穴28c、止め孔28gが設けられている。
上基準部材280の開口側の先端部には、下基準部材300に内嵌して径方向および軸方向の位置決めを行う上基準部材位置決め円筒面28Eおよび上基準部材位置決め平面28Fがそれぞれ設けられている。上基準部材位置決め円筒面28Eは上基準部材嵌合部28Dと同軸に設けられ、上基準部材位置決め平面28Fは上基準部材平面部28bと平行に設けられている。
また、上基準部材位置決め円筒面28Eには、位置決めピン28fが、上記第1の実施形態のベース2と同様の位置関係に設けられている。
【0062】
このような構成により、上基準部材平面部28b、上基準部材位置決め穴28c、上基準部材嵌合部28Dは、上基準部材280をエンドエフェクタ3Aの第2の位置決め基準部に位置決めして取り付ける第2の取付部を構成している。
【0063】
下基準部材300は、ベース2Aの外径より大きな内径を有し、かつ各リンク部4を内部に収容可能に設けられた略有底円筒状部材の内底部に、ベース2Aのベース嵌合部2Cを外嵌する下基準部材嵌合部30Cと、エンドエフェクタ平面部3aと密着して当接する下基準部材平面部30bとからなる位置決め穴が設けられている。
そして下基準部材平面部30bには、上記第1の実施形態と同様に、位置決めピン30i、止め孔30gが設けられている。
下基準部材300の開口側の先端部には、上基準部材280に外嵌して径方向および軸方向の位置決めを行う下基準部材位置決め円筒面30Eおよび下基準部材位置決め平面30Fがそれぞれ設けられている。下基準部材位置決め円筒面30Eは下基準部材嵌合部30Cと同軸に設けられ、下基準部材位置決め平面30Fは下基準部材平面部30bと平行に設けられている。
また、下基準部材位置決め円筒面30Eには、下基準部材位置決め溝30fが、上記第1の実施形態のエンドエフェクタ3と同様の位置関係に設けられている。
なお、特に図示しないが、下基準部材300の側面には、モータ10と制御ユニット50を電気的に接続するケーブル(図示せず)や、動作が自由化された状態の各リンク部4のタイミングプーリ11a、11bを操作者が外側から操作するための適宜の開口が設けられている。
【0064】
このような構成により、下基準部材平面部30b、位置決めピン30i、下基準部材嵌合部30Cは、下基準部材300をベース2Aの第1の位置決め基準部に位置決めして取り付ける第1の取付部を構成している。
【0065】
また、このような構成により、上基準部材280および下基準部材300は、それぞれ上基準部材位置決め円筒面28Eおよび上基準部材位置決め平面28F、および位置決めピン28fからなる凹凸嵌合部、並びに下基準部材位置決め円筒面30E、下基準部材位置決め平面30F、および下基準部材位置決め溝30fからなる凹凸嵌合部を備えることにより、上基準部材位置決め穴28cと位置決めピン30iとの周方向の位置関係を固定した状態に互いに連結することができるようになっている。
なお、図11は模式図のため、上基準部材280、下基準部材300の開口側の先端部が角部であるように描かれているが、互いの嵌合が容易となるように面取りなどの形状が適宜設けられている。
【0066】
本変形例の上基準部材280、下基準部材300は、上記第1の実施形態の上基準部材28、下基準部材30と比較すると、それぞれベース2A、エンドエフェクタ3Aを外嵌して取り付けるものであること、およびそれぞれの凹凸嵌合部がテーパ部ではなく円筒突起から構成されることのみが異なる。
したがって、位置出し工程において、円滑な作業を行うためには、上基準部材280および下基準部材300が固定されたベース2Aおよびエンドエフェクタ3Aを、まず同軸の位置関係に相対移動してから、上基準部材280、下基準部材300を軸方向に移動する必要があるが、その他の点では、上記第1の実施形態と同様に、各工程を行って基準位置出しと原点補正の調整とを行えばよい。その詳細については、当業者には容易に理解されるため説明は省略する。
【0067】
本変形例によれば、上基準部材280、下基準部材300をベース2A、エンドエフェクタ3Aに外嵌して取り付けるので、ベース2A、エンドエフェクタ3Aの内部には、上記第1の実施形態のような大きな貫通孔を設けることなく、パラレルリンクステージ1Aの調整を行うことができる。
また、本変形例は、基準位置決め治具の凹凸嵌合部がテーパ部でない場合の例となっている。
【0068】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るパラレルリンクステージの調整方法について、それに用いる基準位置決め治具およびパラレルリンクステージとともに説明する。
図12は、本発明の第2の実施形態に係るパラレルリンクステージの調整方法に用いるパラレルリンクステージの主要部の構成を示す断面図である。
【0069】
本実施形態のパラレルリンクステージの調整方法は、上記第1の実施形態のパラレルリンクステージ1に代えて、パラレルリンクステージ1Bを調整対象とし、上記第1の実施形態の上基準部材28のみを基準位置決め治具として用いて調整する方法である。
本実施形態のパラレルリンクステージ1Bは、図12に主要部を示すように、上記第1の実施形態のパラレルリンクステージ1のベース2に代えて、ベース2Bを備える。
ベース2Bは、上記第1の実施形態のベース2のベース嵌合部2cを削除し、ベース2の中心軸と同軸に円筒突起部2eを設け、円筒突起部2eの先端部に、上記第1の実施形態の下基準部材30の下基準部材凹テーパ部30eおよび下基準部材位置決め溝30fと同様な形状を有する凹テーパ部2fおよび位置決め溝2gを形成したものである。
ここで、凹テーパ部2fおよび位置決め溝2gは、ベース平面部2aに対して、ベース2に固定されたときに下基準部材30の下基準部材凹テーパ部30eおよび下基準部材位置決め溝30fがベース2のベース平面部2aに対するのと同様な位置関係に形成されている。
また、円筒突起部2eの内部には貫通孔30hが形成されている。
凹テーパ部2fの中心軸は、ベース2Bの基準中心軸Cを構成し、基準中心軸Cとベース平面部2aに整列する平面との交点は、上記第1の実施形態と同様に位置基準点Oとなっている。
【0070】
このような構成によれば、ベース2Bのベース上面部2bより上側の形状は、上記第1の実施形態のベース2に下基準部材30が固定されたのとまったく同様な形状となっている。
このため、本実施形態の具体的な調整方法は、上記第1の実施形態のパラレルリンクステージの調整方法において、位置出し工程で下基準部材30をベース2に係止、固定する工程と、基準位置決め治具取り外し工程で下基準部材30を取り外す工程とを省略し、下基準部材凹テーパ部30eおよび下基準部材位置決め溝30fを凹テーパ部2fおよび位置決め溝2gに読み替える。
本実施形態は、基準位置決め治具が1体の上基準部材28のみからなる場合の例となっており、凹テーパ部2fおよび位置決め溝2gは、第1の位置決め基準部を構成し、上基準部材28の上基準部材凸テーパ部28eおよび位置決めピン28fは、第1の取付部を構成している。
このため、位置出し工程で、上基準部材28の上基準部材凸テーパ部28eおよび位置決めピン28fを、ベース2Bの凹テーパ部2fおよび位置決め溝2gに連結する工程は、第1の第1の位置決め基準部および第2の位置決め基準部を一定の位置関係に連結する工程となっている。
【0071】
このように、本実施形態によれば、1体の上基準部材28を着脱することで、パラレルリンクステージ1Bの基準位置出しと原点補正とを行うことができるので、調整の作業効率を向上することができる。
また、ベース2Bには基準位置決め治具を固定しなくてよいため、パラレルリンクステージ1Bが組み込まれる装置に、ベース2Bを固定された状態でも、ベース2Bを取り外すことなく調整を行うことができる。
また、ベース2Bの貫通孔30hは、上記第1の実施形態のベース2によって形成される開口と同様に、例えば、エンドエフェクタ3上に保持した被保持体を下側から観察したり、操作したりする開口として用いることができる。
【0072】
なお、上記の説明では、パラレルリンクステージの基準位置は、ベースの基準面(ベース平面部2a)と、エンドエフェクタの被保持体の保持面(エンドエフェクタ平面部3a)とが互いに平行、かつそれぞれの中心軸が互いに同軸となる位置関係の例で説明したが、基準位置はこのような位置関係には限定されず、必要に応じて様々な一定の位置関係を採用することができる。例えば、ベースの基準面とエンドエフェクタの保持面は互いに傾斜していてもよいし、それぞれの中心軸は整列していなくてもよい。
【0073】
また、上記の説明では、パラレルリンクステージが6組のパラレルリンク機構を備える場合の例で説明したが、パラレルリンクステージとして機能するためには、少なくとも3組のパラレルリンク機構を備えていればよく、例えば、3組のパラレルリンク機構を備えたパラレルリンクステージであっても、本発明の調整方法を好適に適用することができる。
【0074】
また、上記の説明では、上基準部材28、下基準部材30の内部にそれぞれ貫通孔28h、30hが設けられた場合の例で説明したが、これらは削除してもよい。
ただし、このような貫通孔を設けておくと、位置出し工程において、例えば、対向する側の下基準部材30、上基準部材28の様子を、上方、下方から、観察したり、照明光を通したりするのに用いたり、例えば、棒状の補助治具をこれら貫通孔28h、30hに挿通させて上基準部材28、下基準部材30の径方向の概略位置を合わせたりするのに用いることができて好都合である。
【0075】
また、上記第1の実施形態の説明では、基準位置決め治具取り外し工程において、上基準部材28および下基準部材30をパラレルリンクステージ1から取り外す場合の例で説明したが、パラレルリンクステージ1の使用に支障がない場合には、いずれか一方を取り外さなくてもよい。
例えば、下基準部材30を取り外さない場合には、2回目以降の調整では、上記第2の実施形態と同様に、上基準部材28のみを用いて調整を行うことになる。
【0076】
また、上記の説明では、第1および第2の位置決め基準部、第1および第2の取付部、凹凸嵌合部の各嵌合形状として、一例として、軸と孔との嵌合、軸と溝との嵌合、凸テーパ部と凹テーパ部との嵌合、円筒部同士の嵌合などの例で説明したが、各嵌合形状はこれらに限定されるものではなく、これら以外の嵌合形状を採用してもよい。
【0077】
また、上記の説明では、直動アクチュエータ部6として、ボールネジ送り機構を採用しており、一般に微小送りを行うボールネジ送り機構では、ネジピッチの関係でナットを容易には直線移動させることができないため、位置出し工程では、動作が自由化されたボールネジ14の軸を回転させるものとして説明した。
ただし、ネジピッチがある程度大きい場合には、ナットブロック16を軸方向に容易に進退させることができる。この場合、操作者は、上基準部材28および下基準部材30が互いに先端部で嵌合するように、軸方向にベース2およびエンドエフェクタ3を連続的に押し込む作業を行うことで位置出し工程を行うことができる。
また、ボールネジ送り機構に代えてリニア駆動による可変長リンクを採用する場合も、駆動力をオフすると、リンクの軸方向の伸縮量を自由化できるため、同様の作業を行うことができる。
【0078】
また、上記の各実施形態、各変形例に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0079】
1、1A、1B パラレルリンクステージ
2、2A、2B ベース
2a ベース平面部
2c ベース嵌合部(貫通孔)
2C ベース嵌合部
2f 凹テーパ部
2g 位置決め溝
3、3A エンドエフェクタ
3c エンドエフェクタ嵌合部(貫通孔)
3C エンドエフェクタ嵌合部
3a エンドエフェクタ平面部
4 リンク部(パラレルリンク機構)
5 可動リンク
6 直動アクチュエータ部
7 上側ジョイント
8 下側ジョイント
10 モータ
11 回転伝達部
21 位置決めピン
25 位置決め穴
28、280 上基準部材(基準位置決め治具、第2位置決め部材)
28b 上基準部材平面部(第2の取付部)
28c 上基準部材位置決め穴(第2の取付部)
28d 上基準部材嵌合部(第2の取付部)
28e 上基準部材凸テーパ部(凹凸嵌合部)
28f 位置決めピン(凹凸嵌合部)
28D 上基準部材嵌合部
28E 上基準部材位置決め円筒面
28F 上基準部材位置決め平面
30、300 下基準部材(基準位置決め治具、第1位置決め部材)
30b 下基準部材平面部(第1の取付部)
30c、30C 下基準部材嵌合部(第1の取付部)
30e 下基準部材凹テーパ部(凹凸嵌合部)
30f 下基準部材位置決め溝(凹凸嵌合部)
30i 位置決めピン(第1の取付部)
30E 下基準部材位置決め円筒面
30F 下基準部材位置決め平面
50 制御ユニット(制御部)
51 リンク自由化部(リンク自由化手段)
52 指令値生成部
53 モータ駆動制御部
54 原点復帰制御部(リンク長初期化手段)
55 原点位置記憶部(リンク長記憶手段)
56 原点取得制御部
C 基準中心軸
D 姿勢基準軸
O 位置基準点
P 移動基準点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、該ベースに対して間隔をあけて配置されるエンドエフェクタと、前記ベースおよび前記エンドエフェクタに端部が回動可能に連結され、前記ベースに対する前記エンドエフェクタの姿勢を変化させるためにリンク長可変に設けられた少なくとも3組からなるパラレルリンク機構と、該パラレルリンク機構の制御を行う制御部とを有するパラレルリンクステージの調整方法であって、
前記パラレルリンクステージは、
前記ベースに第1の位置決め基準部が設けられ、
前記エンドエフェクタに第2の位置決め基準部が設けられ、
前記各パラレルリンク機構は、リンク長を検出するエンコーダがそれぞれ備えられてなり、
前記各パラレルリンク機構の駆動制御を停止して、前記各パラレルリンク機構の動作を自由化するリンク自由化工程と、
該リンク自由化工程によって動作が自由化された状態で前記ベースおよび前記エンドエフェクタを相対移動させ、前記第1の位置決め基準部および前記第2の位置決め基準部にそれぞれ嵌合してそれぞれ一定の位置関係に係止可能とされ、前記第1の位置決め基準部および前記第2の位置決め基準部に係止するとともに前記第1の位置決め基準部および前記第2の位置決め基準部に互いに位置決めして連結できるようにした基準位置決め治具を介して、前記第1の位置決め基準部および前記第2の位置決め基準部を前記一定の位置関係に連結する位置出し工程と、
該位置出し工程終了時に、前記各パラレルリンク機構の前記エンコーダから、前記各パラレルリンク機構の前記リンク長を取得して前記制御部に記憶させる調整位置取得工程と、
該調整位置取得工程後に、前記基準位置決め治具を前記パラレルリンクステージから取り外す基準位置決め治具取り外し工程と、
該基準位置決め治具取り外し工程後に、前記各パラレルリンク機構の前記各リンク長を、前記制御部に記憶された前記各リンク長に設定する位置初期化工程とを備えることを特徴とするパラレルリンクステージの調整方法。
【請求項2】
第1の位置決め基準部を有するベースと、該ベースに対して間隔をあけて配置され第2の位置決め基準部を有するエンドエフェクタと、前記ベースおよび前記エンドエフェクタに端部が回動可能に連結され、前記ベースに対する前記エンドエフェクタの姿勢を変化させるためにリンク長可変に設けられた少なくとも3組からなるパラレルリンク機構とを有するパラレルリンクステージの調整に用いる基準位置決め治具であって、
前記パラレルリンクステージの前記第1の位置決め基準部および前記第2の位置決め基準部に、それぞれ嵌合してそれぞれ一定の位置関係に取り付けられる第1の取付部および第2の取付部を備え、
前記第1の取付部および前記第2の取付部を前記第1の位置決め基準部および前記第2の位置決め基準部にそれぞれ位置決めして取り付けるとともに、前記第1の位置決め基準部および前記第2の位置決め基準部を互いに位置決めして連結できるようにしたことを特徴とする基準位置決め治具。
【請求項3】
前記第1の取付部を有する第1位置決め部材と、
前記第2の取付部を有する第2位置決め部材とからなり、
前記第1位置決め部材と前記第2位置決め部材とは、互いに着脱可能に嵌合され、嵌合時に前記第1の取付部および前記第2の取付部の互いの相対位置を固定した状態で連結し合う凹凸嵌合部をそれぞれ備えることを特徴とする請求項2に記載の基準位置決め治具。
【請求項4】
前記第1の位置決め部材および前記第2の位置決め部材の一方の前記凹凸嵌合部は、先端側に細るテーパ形状を有することを特徴とする請求項3に記載の基準位置決め治具。
【請求項5】
ベースと、
該ベースに対して間隔をあけて配置されるエンドエフェクタと、
前記ベースおよび前記エンドエフェクタに端部が回動可能に連結され、前記ベースに対する前記エンドエフェクタの姿勢を変化させるためにリンク長可変に設けられた少なくとも3組からなるパラレルリンク機構と、
該パラレルリンク機構の制御を行う制御部とを有するパラレルリンクステージであって、
前記ベースおよび前記エンドエフェクタを一定の位置関係に連結する基準位置決め治具を嵌合して係止させる第1の位置決め基準部および第2の位置決め基準部が、それぞれ前記ベースおよび前記エンドエフェクタに設けられ、
前記各パラレルリンク機構は、リンク長を検出するエンコーダがそれぞれ備えられ、
前記制御部は、
前記各パラレルリンク機構の駆動制御を停止して、前記各パラレルリンク機構の動作を自由化するリンク自由化手段と、
該リンク自由化手段で前記各パラレルリンク機構の動作が自由化されたときに、前記各パラレルリンク機構のリンク長を取得して記憶するリンク長記憶手段と、
該リンク長記憶手段に記憶された前記各リンク長を、前記各パラレルリンク機構に設定するリンク長初期化手段とを備えることを特徴とするパラレルリンクステージ。
【請求項6】
前記ベースおよび前記エンドエフェクタの内部には、それぞれ対向する位置に対向方向に貫通する貫通孔が設けられ、
前記第1の位置決め基準部は、前記ベースの前記貫通孔および該貫通孔近傍に形成され、
前記第2の位置決め基準部は、前記エンドエフェクタの前記貫通孔および該貫通孔近傍に形成され、
前記各貫通孔の間に、柱状の基準位置決め治具が配置可能な開放空間が形成されたことを特徴とする請求項5に記載のパラレルリンクステージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−207967(P2010−207967A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57023(P2009−57023)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】