説明

パワーウィンドウ装置

【課題】ウィンドウガラスが全閉位置に達するまでの時間を短縮することが可能なパワーウィンドウ装置を提供すること。
【解決手段】ウィンドウガラスの閉動作に伴ってウィンドウガラスに挟まれた物に対して加わることが許される荷重の最大値(許容最大荷重)ΔTacが該物に加わったときにモータに流れる電流を許容最大電流と規定する。例えば、モータに負荷電流Iaが流れている場合にあって、ウィンドウガラスに物が挟まれて該物にΔTacが加わったとき、許容最大電流はIcである。コントローラは、ウィンドウガラスに物が挟まれた旨を検出していないとき、モータの停動電流が前記許容最大電流となるような電力よりも大きな電力をモータに供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転駆動力に基づいてウィンドウガラスを自動的に開閉させるパワーウィンドウ装置に関し、より詳しくは、ウィンドウガラスの閉動作に伴ってウィンドウガラスに何らかの物が挟まれた場合にウィンドウガラスに物が挟まれた旨を検出するための機能(挟まれ検出機能)を有するパワーウィンドウ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のパワーウィンドウ装置では、ウィンドウガラスが例えば全開位置にある状態からオート閉スイッチが操作されてウィンドウガラスの閉動作が一旦開始された後においては、ウィンドウガラスの閉動作を解除するための操作が行われた場合等を除いて、ウィンドウガラスが全閉位置に達するまでウィンドウガラスの閉動作が自動的に継続される。このため、ウィンドウガラスが全閉位置に達するまでマニュアル閉スイッチを操作し続ける必要がないことから利便性に優れていると言える一方で、ウィンドウガラスの閉動作に伴ってウィンドウガラスに何らかの物が挟まれた場合には、ウィンドウガラスに物が挟まれた旨を自動的に検出して適切に対応する必要があるとも言える。
【0003】
そこで、パワーウィンドウ装置において、挟まれ検出機能を有するものが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1に開示されているパワーウィンドウ装置では、ウィンドウガラスに挟まれた物に対して加わることが許される荷重の最大値(許容最大荷重)が該物に加わったとき、モータがロックしてモータに停動電流が流れるように、ウィンドウガラスの位置毎に所定のデューティ比でモータをPWM制御している。従って、特許文献1に開示されているパワーウィンドウ装置によると、ウィンドウガラスに物が挟まれたとしても、許容最大荷重を超える荷重が物に対して加わることが防止されるようになっている。
【特許文献1】特開2005−133449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているパワーウィンドウ装置では、ウィンドウガラスに物が挟まれているか否かに拘わらず、常にモータのPWM制御が行われる。このため、ウィンドウガラスに物が挟まれていないときにあって、ウィンドウガラスの閉動作の速度が前記デューティ比に依存して小さなものとなる。その結果、ウィンドウガラスが全閉位置に達するまでに長時間を要することとなる。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、ウィンドウガラスが全閉位置に達するまでの時間を短縮することが可能なパワーウィンドウ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、モータの回転駆動力に基づいてウィンドウガラスを自動的に開閉させるパワーウィンドウ装置において、ウィンドウガラスの閉動作に伴ってウィンドウガラスに物が挟まれた場合にウィンドウガラスに物が挟まれた旨を検出する挟まれ検出手段と、ウィンドウガラスの閉動作に伴ってウィンドウガラスに挟まれた物に対して加わることが許される荷重の最大値が該物に加わったときにモータに流れる電流を許容最大電流と規定し、前記挟まれ検出手段によりウィンドウガラスに物が挟まれた旨が検出されていないとき、モータの停動電流が前記許容最大電流となるような電力よりも大きな電力をモータに供給するモータ制御手段を備えていることをその要旨としている。
【0007】
同構成によると、ウィンドウガラスに物が挟まれていないとき、モータの停動電流が許容最大電流となるような電力よりも大きな電力がモータに供給される。このため、ウィンドウガラスに物が挟まれているか否かに拘わらず、常にモータの停動電流が許容最大電流となるような電力をモータに供給し続ける構成と比較して、ウィンドウガラスに物が挟まれていないときにあって、ウィンドウガラスの閉動作の速度を上昇させることが可能となる。従って、ウィンドウガラスが全閉位置に達するまでの時間を短縮することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のパワーウィンドウ装置において、前記モータ制御手段は、前記挟まれ検出手段によりウィンドウガラスに物が挟まれた旨が検出されたとき、モータの停動電流が前記許容最大電流となるような電力をモータに供給することをその要旨としている。
【0009】
同構成によると、ウィンドウガラスに物が挟まれたとき、モータの停動電流が許容最大電流となるような電力がモータに供給される。つまり、ウィンドウガラスの閉動作に伴ってウィンドウガラスに挟まれた物に対して加わることが許される荷重の最大値(許容最大荷重)が該物に加わったとき、モータがロックしてモータに許容最大電流となるよう制御された停動電流が流れる。従って、ウィンドウガラスに物が挟まれたとしても、許容最大荷重を超える荷重が該物に対して加わることを防止できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のパワーウィンドウ装置において、前記モータ制御手段は、モータをPWM制御するものであって、同モータ制御手段は、前記挟まれ検出手段によりウィンドウガラスに物が挟まれた旨が検出されていないとき、オンデューティ100%でモータを駆動することをその要旨としている。
【0011】
同構成によると、ウィンドウガラスに物が挟まれていないとき、オンデューティ100%でモータが駆動される。このため、ウィンドウガラスに物が挟まれているか否かに拘わらず、常にモータの停動電流が許容最大電流となるようなデューティ比でモータを駆動し続ける構成と比較して、ウィンドウガラスに物が挟まれていないときにあって、ウィンドウガラスの閉動作の速度を上昇させることが可能となる。従って、ウィンドウガラスが全閉位置に達するまでの時間を短縮することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のパワーウィンドウ装置において、前記モータ制御手段は、前記挟まれ検出手段によりウィンドウガラスに物が挟まれた旨が検出されたとき、モータの停動電流が前記許容最大電流となるようなデューティ比でモータを駆動することをその要旨としている。
【0013】
同構成によると、ウィンドウガラスに物が挟まれたとき、モータの停動電流が許容最大電流となるようなデューティ比でモータが駆動される。つまり、ウィンドウガラスの閉動作に伴ってウィンドウガラスに挟まれた物に対して加わることが許される荷重の最大値(許容最大荷重)が該物に加わったとき、モータがロックしてモータに許容最大電流となるよう制御された停動電流が流れる。従って、ウィンドウガラスに物が挟まれたとしても、許容最大荷重を超える荷重が該物に対して加わることを防止できる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のパワーウィンドウ装置において、前記モータ制御手段は、前記挟まれ検出手段によりウィンドウガラスに物が挟まれた旨が検出されていないとき、前記許容最大電流にモータコイルの電気抵抗値を乗じた電圧である許容最大電圧よりも大きな電圧をモータに印加することをその要旨としている。
【0015】
同構成によると、ウィンドウガラスに物が挟まれていないとき、許容最大電圧よりも大きな電圧がモータに印加される。このため、ウィンドウガラスに物が挟まれているか否かに拘わらず、常に許容最大電圧をモータに印加し続ける構成と比較して、ウィンドウガラスに物が挟まれていないときにあって、ウィンドウガラスの閉動作の速度を上昇させることが可能となる。従って、ウィンドウガラスが全閉位置に達するまでの時間を短縮することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のパワーウィンドウ装置において、前記モータ制御手段は、前記挟まれ検出手段によりウィンドウガラスに物が挟まれた旨が検出されたとき、前記許容最大電圧をモータに印加することをその要旨としている。
【0017】
同構成によると、ウィンドウガラスに物が挟まれたとき、許容最大電圧がモータに印加される。つまり、ウィンドウガラスの閉動作に伴ってウィンドウガラスに挟まれた物に対して加わることが許される荷重の最大値(許容最大荷重)が該物に加わったとき、モータがロックしてモータに許容最大電流となるよう制御された停動電流が流れる。従って、ウィンドウガラスに物が挟まれたとしても、許容最大荷重を超える荷重が該物に対して加わることを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
本発明によれば、ウィンドウガラスが全閉位置に達するまでの時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を車両用のパワーウィンドウ装置に具体化した一実施形態を説明する。
図1に示すように、パワーウィンドウ装置1は、スイッチ群10の操作に応じてパワーウィンドウ制御装置20によりモータ30の駆動制御が行われるとともに、そのモータ30の回転駆動力に基づいてウィンドウガラスを自動的に開閉させるためのものである。
【0020】
パワーウィンドウ制御装置20のコントローラ50は、ウィンドウガラスの開動作及び閉動作がいずれも行われていない待機時には、FET61〜64をいずれもOFF作動させる。このため、待機時には、モータ30に電流が流れないことからウィンドウガラスの開動作及び閉動作がいずれも行われない。
【0021】
そして、前記待機時からマニュアル開スイッチ11が操作されたとき、マニュアル開スイッチ11からコントローラ50にマニュアル開要求信号が入力される。すると、コントローラ50は、マニュアル開要求信号が入力されている期間(マニュアル開スイッチ11が操作されている期間)に亘って、FET61,62をON作動させるとともに、FET63,64をOFF作動させる。従って、この場合、車載バッテリのプラス側端子からFET61、モータ30、FET62、シャント抵抗70を介して車載バッテリのマイナス側端子に電流が流れることによってモータ30が正転駆動されるとともに、ウィンドウガラスの開動作が行われる。
【0022】
一方、前記待機時からマニュアル閉スイッチ12が操作されたとき、マニュアル閉スイッチ12からコントローラ50にマニュアル閉要求信号が入力される。すると、コントローラ50は、マニュアル閉要求信号が入力されている期間(マニュアル閉スイッチ12が操作されている期間)に亘って、FET63,64をON作動させるとともに、FET61,62をOFF作動させる。従って、この場合、車載バッテリのプラス側端子からFET63、モータ30、FET64、シャント抵抗70を介して車載バッテリのマイナス側端子に電流が流れることによってモータ30が逆転駆動されるとともに、ウィンドウガラスの閉動作が行われる。
【0023】
他方、前記待機時からオート開スイッチ13が操作されたとき、オート開スイッチ13からコントローラ50にオート開要求信号が入力される。すると、コントローラ50は、ウィンドウガラスの開動作を解除するための操作が行われた場合を除いて、ウィンドウガラスが全開位置に達するまで、FET61,62をON作動させ続けるとともに、FET63,64をOFF作動させ続ける。従って、この場合、車載バッテリのプラス側端子からFET61、モータ30、FET62、シャント抵抗70を介して車載バッテリのマイナス側端子に電流が流れることによってモータ30が正転駆動されるとともに、ウィンドウガラスの開動作が行われる。
【0024】
最後に、前記待機時からオート閉スイッチ14が操作されたとき、オート閉スイッチ14からコントローラ50にオート閉要求信号が入力される。すると、コントローラ50は、ウィンドウガラスの閉動作を解除するための操作が行われた場合等を除いて、ウィンドウガラスが全閉位置に達するまで、FET63,64をON作動させ続けるとともに、FET61,62をOFF作動させ続ける。従って、この場合、車載バッテリのプラス側端子からFET63、モータ30、FET64、シャント抵抗70を介して車載バッテリのマイナス側端子に電流が流れることによってモータ30が逆転駆動されるとともに、ウィンドウガラスの閉動作が行われる。
【0025】
尚、コントローラ50は、シャント抵抗70の両端電圧を監視するとともに、それをシャント抵抗70の電気抵抗値で除することにより、モータ30に流れる負荷電流を検知するようになっている。また、コントローラ50は、シャフト31の回転に同期したパルス信号を生成する2個のパルスセンサ34,35の各々から入力されるパルス信号を解析して、ウィンドウガラスの移動量やウィンドウガラスの移動方向を検知するとともに、現在のウィンドウガラスの位置を認識するようになっている。
【0026】
コントローラ50は、パルスセンサ34から入力されるパルス信号の立ち上がりの数をカウンタ51を用いてカウントすることで、ウィンドウガラスの移動量を検知する。また、コントローラ50は、パルスセンサ34から入力されるパルス信号の立ち上がりを検出したときの、パルスセンサ35から入力されるパルス信号のレベル、を検出することで、ウィンドウガラスの移動方向を検知する。
【0027】
詳述すると、コントローラ50は、パルスセンサ34から入力されるパルス信号の立ち上がりを検出したときにあって、パルスセンサ35から入力されるパルス信号のレベルがHレベルであるとき、ウィンドウガラスの移動方向が開方向である旨を検知する。また、コントローラ50は、パルスセンサ34から入力されるパルス信号の立ち上がりを検出したときにあって、パルスセンサ35から入力されるパルス信号のレベルがLレベルであるとき、ウィンドウガラスの移動方向が閉方向である旨を検知する。
【0028】
そして、コントローラ50は、ウィンドウガラスの移動方向とウィンドウガラスの移動量とを用いて、現在のウィンドウガラスの位置を認識する。そして、コントローラ50は、シャント抵抗70の両端電圧を指標として検知したモータ30の負荷電流をウィンドウガラスの位置と関連付けしてメモリ52に記憶するようになっている。尚、図2には、オンデューティ100%でモータ30が駆動されるとともに、ウィンドウガラスに物が挟まれていないときのモータ30の負荷電流であって、ウィンドウガラスの位置毎のそれが示されている。また、メモリ52には、モータ30の「トルク−電流特性」が記憶されている。尚、図3には、モータ30の「トルク−電流特性」であって、オンデューティ100%でモータ30が駆動されるときのそれが示されている。ちなみに、コントローラ50は、モータ30をPWM制御するモータ制御手段に相当する。
【0029】
次に、パワーウィンドウ装置1の特徴点について説明する。
図4に示すように、オンデューティ100%でモータ30が駆動されるとともに、モータ30に負荷電流Iaが流れているときにモータ30が発生するトルクはTaである。同じくモータ30に停動電流Ibが流れているときにモータ30が発生する停動トルクはTbである。従って、オンデューティ100%でモータ30が駆動されるとともに、モータ30に負荷電流Iaが流れている場合にあって、ウィンドウガラスの閉動作に伴ってウィンドウガラスに物が挟まれたことでモータ30がロックしたとき、ウィンドウガラスに挟まれた物に対して加わる荷重ΔTabは、以下の式で表すことができる。
【0030】
ΔTab=Tb−Ta …(1)
ここで、ウィンドウガラスの閉動作に伴ってウィンドウガラスに挟まれた物に対して加わることが許される荷重の最大値(許容最大荷重)ΔTacが予め設定されている。本実施形態において許容最大荷重ΔTacは、前記ΔTabよりも小さな値に設定されている。そして、本実施形態では、モータ30に例えば負荷電流Iaが流れているときにあって、ウィンドウガラスに挟まれた物に対して許容最大荷重ΔTacが加わったとき、モータ30がロックしてモータ30に停動電流Icが流れるようなデューティ比でモータ30が駆動されるようになっている。尚、モータ30に停動電流Icが流れているときにモータ30が発生するトルクはTcである。そして、許容最大荷重ΔTacは、以下の式で表すことができる。
【0031】
ΔTac=Tc−Ta …(2)
そして、ウィンドウガラスに物が挟まれたことによる電流の増加分ΔIacは、以下の式で表すことができる。
【0032】
ΔIac=Ic−Ia …(3)
そして、(3)式をIcについて解くと、Icは、以下の式で表すことができる。
Ic=ΔIac+Ia …(4)
ここで、モータ30の「トルク−電流特性」において、トルクの変化に対する電流の変化の度合を示す傾きKは、以下の式で表すことができる。
【0033】
K=ΔIac/ΔTac …(5)
そして、(5)式をΔIacについて解くと、ΔIacは、以下の式で表すことができる。
【0034】
ΔIac=K×ΔTac …(6)
よって、(6)式を(4)式に代入すると、Icは、以下の式で表すことができる。
Ic=K×ΔTac+Ia …(7)
従って、(7)式に、既知数であるKと、予め設定されているΔTacと、シャント抵抗70の両端電圧を指標としてコントローラ50により検知されるIaとを入れることで、Iaに関連付けされているウィンドウガラスの位置でのIcを算出することができる。尚、K及びΔTacは、メモリ52に記憶されている。
【0035】
そして、コントローラ50は、シャント抵抗70の両端電圧を指標として検知したモータ30の負荷電流が例えばIaである場合、(7)式に、そのIaと、メモリ52に記憶されているK及びΔTacとを入れることで、Iaに関連付けされているウィンドウガラスの位置でのIcを算出するようになっている。尚、Icは、ウィンドウガラスに挟まれた物に対して許容最大荷重ΔTacが加わったときにモータ30に流れる電流であって、本実施形態ではこのIcを許容最大電流と規定する。
【0036】
そして、コントローラ50は、(7)式に、ウィンドウガラスに物が挟まれていないときのモータ30の負荷電流(例えばIa)と、メモリ52に記憶されているK及びΔTacとを入れることで、モータ30の負荷電流(この場合、Ia)に関連付けされているウィンドウガラスの位置での許容最大電流(この場合、Ic)を算出する。そして、コントローラ50は、このように算出した許容最大電流をウィンドウガラスの位置と関連付けしてメモリ52に記憶するようになっている。
【0037】
尚、図5には、ウィンドウガラスに物が挟まれていないときのモータ30の負荷電流であって、ウィンドウガラスの位置毎のそれが実線で示されている。また、図5には、(7)式に、メモリ52に記憶されているK及びΔTacと、ウィンドウガラスに物が挟まれていないときのモータ30の負荷電流とを入れることで算出される許容最大電流であって、ウィンドウガラスの位置毎のそれが一点鎖線で示されている。
【0038】
次に、パワーウィンドウ装置1の作用について説明する。
図5に実線で示すように、メモリ52には、ウィンドウガラスに物が挟まれることなくウィンドウガラスが全開位置から全閉位置まで移動されたときのモータ30の負荷電流(前回のウィンドウガラスの閉動作が正常に完了されたときのモータ30の負荷電流)であって、ウィンドウガラスの位置毎のそれが記憶されている。また、図5に一点鎖線で示すように、メモリ52には、ウィンドウガラスの位置毎の許容最大電流が記憶されている。
【0039】
そして、コントローラ50は、今回のウィンドウガラスの閉動作に伴うモータ30の負荷電流を、シャント抵抗70の両端電圧を指標として検知するとともに、それが許容最大電流に達しているか否かを判断する。ここで、今回のウィンドウガラスの閉動作に伴ってウィンドウガラスに物が挟まれていない場合、今回のウィンドウガラスの閉動作に伴うモータ30の負荷電流は、前回のウィンドウガラスの閉動作に伴うそれと略同じである。従って、この場合、シャント抵抗70の両端電圧を指標としてコントローラ50により検知されるモータ30の負荷電流は許容最大電流に達しないから、コントローラ50は、オンデューティ100%でモータ30を駆動する。このようにコントローラ50は、ウィンドウガラスに物が挟まれた旨を検出していないとき、モータ30の停動電流が許容最大電流となるような電力よりも大きな電力をモータ30に供給する。
【0040】
これに対して、今回のウィンドウガラスの閉動作に伴って図5にP0で示されたウィンドウガラスの位置でウィンドウガラスに物が挟まれた場合、図5に二点鎖線で示すように、今回のウィンドウガラスの閉動作に伴うモータ30の負荷電流は、P0でのモータ30の負荷電流を基点として、前回のウィンドウガラスの閉動作に伴うそれから上昇する。そして、今回のウィンドウガラスの閉動作に伴うモータ30の負荷電流は、図5にP1で示されたウィンドウガラスの位置で許容最大電流(この場合、Ic)に達することとなる。
【0041】
すると、コントローラ50は、このように今回のウィンドウガラスの閉動作に伴うモータ30の負荷電流が許容最大電流(この場合、Ic)に達したとき、ウィンドウガラスの閉動作に伴ってウィンドウガラスに物が挟まれた旨を検出する。そして、コントローラ50は、このようにウィンドウガラスに物が挟まれた旨を検出したとき、モータ30の停動電流が許容最大電流(この場合、Ic)となるようなデューティ比でモータ30を駆動する。このようにコントローラ50は、ウィンドウガラスに物が挟まれた旨を検出したとき、モータ30の停動電流が許容最大電流となるような電力をモータ30に供給する。
【0042】
尚、ウィンドウガラスに物が挟まれた旨がコントローラ50により検出されたとき、ウィンドウガラスの閉動作が一旦停止された後、所定の時間に亘ってウィンドウガラスの開動作が行われる。その結果、ウィンドウガラスに挟まれた物は、このようなウィンドウガラスの反転動作に基づいて、解放されることになる。
【0043】
以上、詳述したように本実施形態によれば、次のような作用、効果を得ることができる。
(1)ウィンドウガラスに物が挟まれていないとき、モータ30の停動電流が許容最大電流となるような電力よりも大きな電力がモータ30に供給される。このため、ウィンドウガラスに物が挟まれているか否かに拘わらず、常にモータ30の停動電流が許容最大電流となるような電力をモータ30に供給し続ける構成と比較して、ウィンドウガラスに物が挟まれていないときにあって、ウィンドウガラスの閉動作の速度を上昇させることが可能となる。従って、ウィンドウガラスが全閉位置に達するまでの時間を短縮することができる。
【0044】
(2)ウィンドウガラスに物が挟まれたとき、モータ30の停動電流が許容最大電流となるような電力がモータ30に供給される。つまり、ウィンドウガラスの閉動作に伴ってウィンドウガラスに挟まれた物に対して加わることが許される荷重の最大値(許容最大荷重)ΔTacが該物に加わったとき、モータ30がロックしてモータ30に許容最大電流となるよう制御された停動電流が流れる。従って、ウィンドウガラスに物が挟まれたとしても、許容最大荷重ΔTacを超える荷重が該物に対して加わることを防止できる。
【0045】
(3)ウィンドウガラスに物が挟まれていないとき、オンデューティ100%でモータ30が駆動される。このため、ウィンドウガラスに物が挟まれているか否かに拘わらず、常にモータ30の停動電流が許容最大電流となるようなデューティ比でモータ30を駆動し続ける構成と比較して、ウィンドウガラスに物が挟まれていないときにあって、ウィンドウガラスの閉動作の速度を上昇させることが可能となる。従って、ウィンドウガラスが全閉位置に達するまでの時間を短縮することができる。
【0046】
(4)ウィンドウガラスに物が挟まれたとき、モータ30の停動電流が許容最大電流となるようなデューティ比でモータ30が駆動される。つまり、ウィンドウガラスの閉動作に伴ってウィンドウガラスに挟まれた物に対して加わることが許される荷重の最大値(許容最大荷重)ΔTacが該物に加わったとき、モータ30がロックしてモータ30に許容最大電流となるよう制御された停動電流が流れる。従って、ウィンドウガラスに物が挟まれたとしても、許容最大荷重ΔTacを超える荷重が該物に対して加わることを防止できる。
【0047】
(5)許容最大荷重ΔTacは、ΔTabよりも小さな値に設定されている。従って、ウィンドウガラスに挟まれた物に対して加わる荷重を低減できる。
(6)ウィンドウガラスの位置毎に許容最大電流が設定されている。従って、ウィンドウガラスの閉動作に伴う摺動抵抗がウィンドウガラスの位置毎に異なる場合でも、モータ30の負荷電流がウィンドウガラスの位置毎の許容最大電流に達しているか否かを判断することで、ウィンドウガラスに物が挟まれているか否かをウィンドウガラスの位置毎に確実に検出できる。
【0048】
尚、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ウィンドウガラスに物が挟まれていないとき、モータ30の停動電流が許容最大電流となるような電力よりも大きな電力をモータ30に供給する構成は、オンデューティ100%でモータ30を駆動する構成に限定されない。即ち、ウィンドウガラスに物が挟まれていないとき、オンデューティ100%でなくても、モータ30の停動電流が許容最大電流となるようなデューティ比よりも大きなデューティ比でモータ30が駆動されればよい。
【0049】
・ウィンドウガラスに物が挟まれていないとき、モータ30の停動電流が許容最大電流となるようなデューティ比よりも大きなデューティ比でモータ30が駆動される構成において、ウィンドウガラスに物が挟まれていないとき、ウィンドウガラスの閉動作の速度が一定となるようなデューティ比でモータ30が駆動されるようにしてもよい。尚、ウィンドウガラスの位置毎に摺動抵抗は異なるので、ウィンドウガラスに物が挟まれていないときのモータ30の負荷電流は、ウィンドウガラスの位置毎に異なる。従って、ウィンドウガラスに物が挟まれていないときにあって、常に同じデューティ比でモータ30を駆動し続ける構成では、ウィンドウガラスの閉動作の速度がウィンドウガラスの位置毎に異なってしまう。そこで、本別例のように構成すれば好適である。
【0050】
・前回のウィンドウガラスの閉動作が正常に完了されたときのモータ30の負荷電流から許容最大電流を算出する構成に限定されない。即ち、次のようにして許容最大電流を設定してもよい。
【0051】
コントローラ50は、今回のウィンドウガラスの閉動作に伴うモータ30の負荷電流を、シャント抵抗70の両端電圧を指標として検知するとともに、それをウィンドウガラスの位置と関連付けしてメモリ52に記憶する。そして、コントローラ50は、シャント抵抗70の両端電圧を指標として検知したモータ30の負荷電流が例えばIaである場合、(7)式に、そのIaと、メモリ52に記憶されているK及びΔTacとを入れることで、Iaに関連付けされているウィンドウガラスの位置でのIcを算出するとともに、このIcを許容最大電流として設定する。尚、このように許容最大電流(例えばIc)を設定したとき、それを算出するに際して用いたモータ30の負荷電流(この場合、Ia)をメモリ52から消去しても差し支えない。
【0052】
そして、コントローラ50は、許容最大電流(例えばIc)に関連付けされているウィンドウガラスの位置(この場合、P1)の次のウィンドウガラスの位置(これをP2とする)でのモータ30の負荷電流が許容最大電流(この場合、Ic)に達しているとき、ウィンドウガラスに物が挟まれた旨を検出する。そして、コントローラ50は、ウィンドウガラスに物が挟まれた旨を検出したとき、モータ30の停動電流が許容最大電流(この場合、Ic)となるようなデューティ比でモータ30を駆動する。
【0053】
このようにすれば、前回のウィンドウガラスの閉動作が正常に完了されたときのモータ30の負荷電流をメモリ52に記憶しておかなくても事が足りる。従って、小容量のメモリ52を使用することができる。
【0054】
・コントローラ50は、ウィンドウガラスに物が挟まれた旨を検出していないとき、許容最大電流にモータコイルの電気抵抗値を乗じた電圧である許容最大電圧よりも大きな電圧をモータ30に印加するようにしてもよい。この場合、メモリ52には、モータコイルの電気抵抗値が記憶される。同構成によると、ウィンドウガラスに物が挟まれていないとき、許容最大電圧よりも大きな電圧がモータ30に印加される。このため、ウィンドウガラスに物が挟まれているか否かに拘わらず、常に許容最大電圧をモータ30に印加し続ける構成と比較して、ウィンドウガラスに物が挟まれていないときにあって、ウィンドウガラスの閉動作の速度を上昇させることが可能となる。従って、ウィンドウガラスが全閉位置に達するまでの時間を短縮することができる。
【0055】
・上記別例において、コントローラ50は、ウィンドウガラスに物が挟まれた旨を検出したとき、許容最大電圧をモータ30に印加するようにしてもよい。同構成によると、ウィンドウガラスに物が挟まれたとき、許容最大電圧がモータ30に印加される。つまり、ウィンドウガラスの閉動作に伴ってウィンドウガラスに挟まれた物に対して加わることが許される荷重の最大値(許容最大荷重)ΔTacが該物に加わったとき、モータ30がロックしてモータ30に許容最大電流となるよう制御された停動電流が流れる。従って、ウィンドウガラスに物が挟まれたとしても、許容最大荷重ΔTacを超える荷重が該物に対して加わることを防止できる。
【0056】
・ウィンドウガラスに物が挟まれることなくウィンドウガラスの閉動作が正常に完了される度に、その閉動作に伴うモータ30の負荷電流にあって、ウィンドウガラスの位置毎のそれを、前回のそれから更新してメモリ52に記憶するようにしてもよい。このようにすれば、ウィンドウガラスの位置毎の摺動抵抗が経年変化により変動したとしても、モータ30の負荷電流が、最新の記憶内容を用いて設定されるウィンドウガラスの位置毎の許容最大電流に達しているか否かを判断することで、ウィンドウガラスに物が挟まれているか否かをウィンドウガラスの位置毎に確実に検出できる。
【0057】
・ウィンドウガラスに物が挟まれたか否かを判断する手法は、モータ30の負荷電流が許容最大電流に達したか否かを判断する手法に限定されない。即ち、パルスセンサ34からコントローラ50に入力されるパルス信号の間隔が基準間隔よりも広いか否かをコントローラ50が判断する手法により、ウィンドウガラスに物が挟まれたか否かを判断してもよい。このようにすれば、モータ30の周辺環境(例えば、モータ30の雰囲気温度)の変化により、今回のモータ30の負荷電流が前回のモータ30の負荷電流から変動するような場合でも、温度変化による変動の度合の小さなパルス信号の間隔を基に、ウィンドウガラスに物が挟まれたか否かを検出する訳であるから、それを確実に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】パワーウィンドウ装置の構成を示す電気回路図。
【図2】ウィンドウガラスの位置とモータの負荷電流との関係を示す特性図。
【図3】モータのトルクと電流との関係を示す特性図。
【図4】パワーウィンドウ装置の特徴点を説明するための説明図。
【図5】パワーウィンドウ装置の作用を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0059】
1…パワーウィンドウ装置、30…モータ、50…コントローラ(挟まれ検出手段、モータ制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転駆動力に基づいてウィンドウガラスを自動的に開閉させるパワーウィンドウ装置において、
ウィンドウガラスの閉動作に伴ってウィンドウガラスに物が挟まれた場合にウィンドウガラスに物が挟まれた旨を検出する挟まれ検出手段と、
ウィンドウガラスの閉動作に伴ってウィンドウガラスに挟まれた物に対して加わることが許される荷重の最大値が該物に加わったときにモータに流れる電流を許容最大電流と規定し、前記挟まれ検出手段によりウィンドウガラスに物が挟まれた旨が検出されていないとき、モータの停動電流が前記許容最大電流となるような電力よりも大きな電力をモータに供給するモータ制御手段を備えていることを特徴とするパワーウィンドウ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーウィンドウ装置において、
前記モータ制御手段は、前記挟まれ検出手段によりウィンドウガラスに物が挟まれた旨が検出されたとき、モータの停動電流が前記許容最大電流となるような電力をモータに供給することを特徴とするパワーウィンドウ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のパワーウィンドウ装置において、
前記モータ制御手段は、モータをPWM制御するものであって、
同モータ制御手段は、前記挟まれ検出手段によりウィンドウガラスに物が挟まれた旨が検出されていないとき、オンデューティ100%でモータを駆動することを特徴とするパワーウィンドウ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のパワーウィンドウ装置において、
前記モータ制御手段は、前記挟まれ検出手段によりウィンドウガラスに物が挟まれた旨が検出されたとき、モータの停動電流が前記許容最大電流となるようなデューティ比でモータを駆動することを特徴とするパワーウィンドウ装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のパワーウィンドウ装置において、
前記モータ制御手段は、前記挟まれ検出手段によりウィンドウガラスに物が挟まれた旨が検出されていないとき、前記許容最大電流にモータコイルの電気抵抗値を乗じた電圧である許容最大電圧よりも大きな電圧をモータに印加することを特徴とするパワーウィンドウ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のパワーウィンドウ装置において、
前記モータ制御手段は、前記挟まれ検出手段によりウィンドウガラスに物が挟まれた旨が検出されたとき、前記許容最大電圧をモータに印加することを特徴とするパワーウィンドウ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−327220(P2007−327220A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158398(P2006−158398)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】