説明

パワードア

【課題】挟み込み検知用のセンサをスイングドアとスライドドアについて共通化したパワードアを実現する。
【解決手段】スイングドア(300)とスライドドア(400)の少なくとも一方が動力源を有する開閉機構で開閉し、両ドアがともに閉じた状態においてそれらの開閉端同士が最接近するパワードア(200)は、前記スイングドアと前記スライドドアの少なくとも一方の開閉に伴って相互間の距離が増減する2つの部材の一方に設けられた障害センサ(600)と、前記障害センサの検知信号に基づいて、前記スイングドアと前記スライドドアの少なくとも一方が閉じる方向への前記開閉機構の作動を禁止する制御手段を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワードアに関し、特に、スイングドアとスライドドアの少なくとも一方が動力源を有する開閉機構で開閉し、両ドアがともに閉じた状態においてそれらの開閉端同士が最接近するパワードアに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等のパワードアは、動力源を有する開閉機構で開閉するようになっている。ワンボックス型やミニバン型の車両では、前部座席側のサイドドアをスイングドアとし、後部座席側のサイドドアをスライドドアとすることが多い。スイングドアの開閉は、ヒンジを中心とするスイング運動によって行われ、スライドドアの開閉はレールに沿ったスライド運動によって行われる。
【0003】
スライドドアについては、動力源を有する開閉機構が設けられ(例えば、特許文献1参照)、スイングドアについても、必要に応じて、動力源を有する開閉機構が設けられる(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
スイングドアとスライドドアの開閉端同士は、両ドアがともに閉じたときに最接近する。この部分は、人体等の挟み込みが発生しやすいところなので、それを防止するために、スライドドアの開閉端に挟み込みセンサを設け、その検知信号に基づいてスライドドアを停止させるようにしている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−322725号公報(段落番号0015−0017、0032−0034、図1,2,5)
【特許文献2】特開2005−271825号公報(段落番号0016−0025、図1,2)
【特許文献3】特開平10−338029号公報(段落番号0012−0014、0032−0034、図1,3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
人体等の挟み込みは、スイングドアを閉じるときにも発生し得る。そのような挟み込みを防止するには、スイングドアにも挟み込みセンサを設ける必要があるが、スライドドアに加えてスイングドアにも挟み込みセンサを設けると、部品点数と工数が増加する。
【0006】
そこで、本発明の課題は、挟み込み検知用のセンサをスイングドアとスライドドアについて共通化したパワードアを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するための請求項1に係る発明は、スイングドアとスライドドアの少なくとも一方が動力源を有する開閉機構で開閉し、両ドアがともに閉じた状態においてそれらの開閉端同士が最接近するパワードアであって、前記スイングドアと前記スライドドアの少なくとも一方の開閉に伴って相互間の距離が増減する2つの部材の一方に設けられた障害センサと、前記障害センサの検知信号に基づいて、前記スイングドアと前記スライドドアの少なくとも一方が閉じる方向への前記開閉機構の作動を禁止する制御手段を具備することを特徴とするパワードアである。
【0008】
課題を解決するための請求項2に係る発明は、前記障害センサは、可撓性の対物電極とこの対物電極から離間した対向電極を有し、前記制御手段は、前記両ドアが閉じきる間際における前記障害センサの検知信号に応答せず、前記対物電極の静電容量が増加したとき、または、前記対物電極が前記対向電極に接触したとき、前記開閉機構の前記の作動を禁止することを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載のパワードアである。
【0009】
課題を解決するための請求項3に係る発明は、前記スイングドアは、前記両ドアがともに閉じた状態において前記スライドドアの開閉端に隙間を隔てて対向する端面と、この端面から前記スライドドアの方向に延出する縁部を有し、前記スライドドアは、前記両ドアがともに閉じた状態において前記スイングドアの縁部の先端に隙間を隔てて対向する端面と、この端面から前記スイングドアの方向に延出し外向きの面が前記縁部の内向きの面に隙間を隔てて対向するフランジ部を有し、前記障害センサは、前記スライドドアのフランジ部に支持部材を介して取り付けられ、前記両ドアがともに閉じた状態において前記スイングドアの端面から縁部の内向きの面にかけての部分と前記スライドドアのフランジ部の先端から外向きの面にかけての部分の間に入ることを特徴とする請求項2に記載のパワードアである。
【0010】
課題を解決するための請求項4に係る発明は、前記障害センサの対向電極は、前記両ドアがともに閉じた状態において前記対物電極を挟んで前記スイングドアの端面および縁部の内向きの面とそれぞれ対向する第1電極部分および第2電極部分を有することを特徴とする請求項3に記載のパワードアである。
【0011】
課題を解決するための請求項5に係る発明は、前記障害センサの対物電極は、前記対向電極の第1電極部分および第2電極部分にそれぞれ平行な第1平行部分および第2平行部分を有することを特徴とする請求項4に記載のパワードアである。
【0012】
課題を解決するための請求項6に係る発明は、前記支持部材は、前記フランジ部に嵌合するU字形部分と、このU字形部分の開口側の先端から前記スライドドアの端面に沿って外向きに延出する延出部分を有し、前記対物電極は、片側が前記支持部材の延出部分の先端に結合することを特徴とする請求項5に記載のパワードアである。
【0013】
課題を解決するための請求項7に係る発明は、前記対物電極は、前記両ドアがともに閉じた状態において前記スイングドアの縁部をよけるための段差を有することを特徴とする請求項6に記載のパワードアである。
【0014】
課題を解決するための請求項8に係る発明は、前記段差は、斜面を有することを特徴とする請求項7に記載のパワードアである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、スイングドアとスライドドアの少なくとも一方が動力源を有する開閉機構で開閉し、両ドアがともに閉じた状態においてそれらの開閉端同士が最接近するパワードアは、前記スイングドアと前記スライドドアの少なくとも一方の開閉に伴って相互間の距離が増減する2つの部材の一方に設けられた障害センサと、前記障害センサの検知信号に基づいて、前記スイングドアと前記スライドドアの少なくとも一方が閉じる方向への前記開閉機構の作動を禁止する制御手段を具備するので、挟み込み検知用のセンサをスイングドアとスライドドアについて共通化したパワードアを実現することができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、前記障害センサは、可撓性の対物電極とこの対物電極から離間した対向電極を有し、前記制御手段は、前記両ドアが閉じきる間際における前記障害センサの検知信号に応答せず、前記対物電極の静電容量が増加したとき、または、前記対物電極が前記対向電極に接触したとき、前記開閉機構の前記の作動を禁止するので、人体の露出部と非露出部のどちらについても挟み込みを検知することができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、前記スイングドアは、前記両ドアがともに閉じた状態において前記スライドドアの開閉端に隙間を隔てて対向する端面と、この端面から前記スライドドアの方向に延出する縁部を有し、前記スライドドアは、前記両ドアがともに閉じた状態において前記スイングドアの縁部の先端に隙間を隔てて対向する端面と、この端面から前記スイングドアの方向に延出し外向きの面が前記縁部の内向きの面に隙間を隔てて対向するフランジ部を有し、前記障害センサは、前記スライドドアのフランジ部に支持部材を介して取り付けられ、前記両ドアがともに閉じた状態において前記スイングドアの端面から縁部の内向きの面にかけての部分と前記スライドドアのフランジ部の先端から外向きの面にかけての部分の間に入るので、スライドドアによる挟み込みとスイングドアによる挟み込みを単一のセンサで検知することができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、前記障害センサの対向電極は、前記両ドアがともに閉じた状態において前記対物電極を挟んで前記スイングドアの端面および縁部の内向きの面とそれぞれ対向する第1電極部分および第2電極部分を有するので、ドアのスライドによる挟み込みとドアのスイングによる挟み込みをそれぞれ検知することができる。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、前記障害センサの対物電極は、前記対向電極の第1電極部分および第2電極部分にそれぞれ平行な第1平行部分および第2平行部分を有するので、スライドドアのスライドによる挟み込みと、スイングドアのスイングによる挟み込みをそれぞれ検知するタイミングを同一とすることができる。また、挟み込み位置がどこであったとしても、つぶれよる挟み込み検知のタイミングが同一となる。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、前記支持部材は、前記フランジ部に嵌合するU字形部分と、このU字形部分の開口側の先端から前記スライドドアの端面に沿って外向きに延出する延出部分を有し、前記対物電極は、片側が前記支持部材の延出部分の先端に結合するので、対物電極を、両ドアがともに閉じた状態において、スイングドアとスライドドアの間の見切りシールとして機能させることができる。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、前記対物電極は、前記両ドアがともに閉じた状態において前記スイングドアの縁部をよけるための段差を有するので、挟み込み検知を、スイングドアの縁部とスライドドアのフランジ部がオーバーラップする段階まで有効にすることができる。
【0022】
請求項8に係る発明によれば、前記段差は、斜面を有するので、両ドアの閉じきり時の負荷を分散することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、発明を実施するための最良の形態に限定されるものではない。
図1に、パワードアを装備した車両の外観を左側面図によって示す。図1に示すように、車両100は、サイドドアとして、パワードア200を装備している。パワードア200は、前部座席側のスイングドア300と後部座席側のスライドドア400とで構成される。スイングドア300とスライドドア400は、それぞれ、動力源を有する周知の開閉機構によって開閉される。
【0024】
パワードア200は、発明を実施するための最良の形態の一例である。パワードア200の構成によって、パワードアに関する発明を実施するための最良の形態の一例が示される。
【0025】
スイングドア300は、前部がヒンジ310を介して車両100のボディに取り付けられ、ヒンジ310を中心とする外側への往復的なスイング運動により開閉する。これによって、スイングドア300の後端が開閉端となる。
【0026】
スライドドア400は、後部がレール410を介して車両100のボディに取り付けられ、レール410に沿った後方への往復的なスライド運動により開閉する。これによって、スライドドア400の前端が開閉端となる。
【0027】
スイングドア300とスライドドア400がともに閉じた状態では、スイングドア300の後端とスライドドア400の前端の距離が最小になる。すなわち、両ドアがともに閉じた状態においては、それらの開閉端同士が最接近する。
【0028】
図2に、両ドアの開閉端部分の構成を模式的に示す。図2は、図1に示したパワードア200のAA部分の断面図に相当する。図2に示すように、スイングドア300とスライドドア400は、センターピラー500の車外側で閉じており、それらの端部同士が隙間を隔てて対向する。図2では、上が車外、下が車内、右が前方、左が後方である。以下、同様である。
【0029】
スイングドア300は、スライドドア400の開閉端に隙間を隔てて対向する端面302と、この端面302からスライドドア400の方向に延出する縁部304を有する。縁部304は、スイングドア300の外側面に沿って延出する。端面302は、縁部304から見て車内側となる。
【0030】
端面302および縁部304は、紙面に垂直な方向(車両100の鉛直方向)に、スイングドア300の全高にわたって延在する。端面302は、本発明における端面の一例である。縁部304は、本発明における縁部の一例である。
【0031】
スライドドア400は、スイングドア300の縁部304の先端に隙間を隔てて対向する端面402と、この端面からスイングドア300の方向に延出するフランジ部404を有する。フランジ部404は、端面402から見て車内側となる。
【0032】
フランジ部404は、その先端がスイングドア300の端面302に隙間を隔てて対向し、外向きの面が、スイングドア300の縁部304の内向きの面に隙間を隔てて対向する。
【0033】
端面402およびフランジ部404は、紙面に垂直な方向(車両100の鉛直方向)に、スライドドア400の全高にわたって延在する。端面402は、本発明における端面の一例である。フランジ部404は、本発明におけるフランジ部の一例である。
【0034】
スライドドア400のフランジ部404には、障害センサ600が設けられる。障害センサ600は、フランジ部404の外向きの面から先端にかけての部分と、スイングドア300の縁部304の内向きの面から端面302にかけての部分の間に入る。
【0035】
障害センサ600は、対物電極602と、この対物電極602に隙間を隔てて対向する対向電極604を有する。対物電極602と対向電極604は、支持部材610を介してフランジ部404に取り付けられる。支持部材610は絶縁材料で構成される。支持部材610は、フランジ部404に嵌合するU字形の構造となっている。
【0036】
障害センサ600は、本発明における障害センサの一例である。対物電極602は、本発明における対物電極の一例である。対向電極604は、本発明における対向電極の一例である。支持部材610は、本発明における支持部材の一例である。
【0037】
対物電極602はグラウンドから浮かせた電極であり、対向電極604を囲むように概ね管状に構成される。対向電極604はグラウンドに接続された電極であり、対物電極602の内側で平行に延在する。
【0038】
対向電極604は、対物電極602を挟んでスイングドア300の端面302と対向する第1電極部分642と、対物電極602を挟んでスイングドア300の縁部304の内向きの面と対向する第2電極部分644を有する。第1電極部分642は、本発明における第1電極部分の一例である。第2電極部分644は、本発明における第2電極部分の一例である。
【0039】
対物電極602は、対向電極604の第1電極部分642に平行な第1平行部分622と、対向電極604の第2電極部分644に平行な第2平行部分624を有する。第1平行部分622は、本発明における第1平行部分の一例である。第2平行部分624は、本発明における第2平行部分の一例である。
【0040】
対物電極602は可撓性の導電材料で構成される。可撓性の導電材料としては、例えば導電ゴムや導電性プラスチックス等が用いられる。対向電極604は導電材料で構成される。対向電極604の材料は、可撓性導電材料または非可撓性導電材料のいずれでも良く、例えば対物電極602と同じ材料あるいは金属導電体等が用いられる。
【0041】
対物電極602と対向電極604はキャパシタを構成する。これによって、障害センサは、静電容量方式の障害センサとなる。対物電極602に素手や素足等人体の露出部が接近または接触したときは、人体の静電容量が並列接続されるので対物電極602の静電容量が増加する。このような静電容量の増加が、人体の接近ないし接触の検知に利用される。以下、人体の接近ないし接触を単に接触という。
【0042】
一方、手袋をした手や靴を履いた足等人体の非露出部が対物電極602に接触したときは、静電容量の増加は生じない。しかし、押し潰された対物電極602が対向電極604に接触すると、対物電極602と対向電極604の間が短絡される。このような短絡状態が、非露出人体の挟み込み検知に利用される。
【0043】
なお、障害センサは、静電容量方式に限らず、例えば、図3に示すように、圧電素子606をブラケット612で支持した圧電方式障害センサによって物体の接触を検知するものであって良い。また、気体や液体の圧力あるいは電気抵抗等、適宜の物理量を利用する方式であって良い。以下、静電容量方式の例で説明するが、他の方式の場合も同様である。
【0044】
障害センサ600は、スライドドア400の代わりに、スイングドア300に取り付けても良く、あるいは、センターピラー500に取り付けるようにしても良い。これら三者間の隙間は、スイングドア300とスライドドア400の開閉に伴って増減するので、障害センサを配置することにより、挟み込みを検知することが可能である。スイングドア300、スライドドア400およびセンターピラー500は、本発明における、スイングドアとスライドドアの少なくとも一方の開閉に伴って相互間の距離が増減する2つの部材の一方の一例である。
【0045】
図4に、スイングドア300とスライドドア400が閉じるときの、両ドアの開閉端の関係を示す。図4の(a)は、スイングドア300が既に閉じているところに、スライドドア400が閉じてゆく様子を示す。スライドドア400は、矢印で示すように、前に向かってスライドし、次に車内方向に斜にスライドして、図2に示したような閉じきり状態となる。
【0046】
このようなスライドドア400のスライドの過程で、フランジ部404の先端がスイングドア300の縁部304の先端に接近するので、この部分において人体等の挟み込みが発生し得る。
【0047】
図4の(b)は、スライドドア400が既に閉じているところに、スイングドア300が閉じてゆく様子を示す。スイングドア300は、矢印で示すように、車内方向にスイングして、図2に示したような閉じきり状態となる。
【0048】
このようなスライドドア400のスイングの過程で、縁部304の内向きの面がスライドドア400のフランジ部404の外向きの面に接近するので、この部分において人体等の挟み込みが発生し得る。
【0049】
図5に、パワードア200の開閉制御系のブロック図を示す。図5に示すように、障害センサ600の出力信号は、前処理部701を通じて判定部703に入力され、判定部703の出力信号が制御部705a,705bに入力される。
【0050】
制御部705a,705bには、開閉スイッチ707a,707bを通じてユーザーの開閉指令も入力される。制御部705a,705bは、それぞれ、スイングドア300用およびスライドドア400用の制御部であり、開閉スイッチ707a,707bは、それぞれ、スイングドア300用およびスライドドア400用の開閉スイッチである。
【0051】
制御部705a,705bは、ユーザーの開閉指令と判定部703の出力信号に基づいて、それぞれ、スイングドア300用およびスライドドア400用の開閉機構の動力源800a,800bを制御する。判定部703と制御部705a,705bからなる部分は、本発明における制御手段の一例である。これらは、例えばマイクロコンピュータ等によって構成される。
【0052】
動力源800a,800bとしては、例えばモータ等が用いられる。なお、動力源800a,800bは、モータに限らず例えば油圧、空気圧または電気式のシリンダ等、適宜の動力源であって良い。以下、モータの例で説明するが、他の動力源の場合も同様である。
【0053】
図6に、障害センサ600と前処理部701からなる部分の電気的構成を示す。図6に示すように、障害センサ600は、電気的には、対物電極602と対向電極604からなるキャパシタCに、インダクタLと抵抗Rを並列接続したものとなっている。
【0054】
前処理部701は、発振回路701aと波形整形回路701bで構成され、これら発振回路701aと波形整形回路701bに、LCR並列回路が共通に接続される。
発振回路701aの発振周波数は次式で与えられる。
【0055】
【数1】

【0056】
ここで、
C’:キャパシタCの静電容量と発振回路の静電容量の合成値
L’:インダクタLのインダクタンスと発振回路のインダクタンスの合成値
である。これによって、対物電極602の静電容量Cが周波数fに変換される。周波数fは、静電容量Cの増加および減少に対応して、それぞれ、減少および増加する。
【0057】
波形整形回路701bは、LCR並列回路の両端電圧を入力信号とし、その波形を矩形波に整形して出力する。図7の(a)および(b)に、波形整形回路701bの入力信号波形および出力信号波形をそれぞれ示す。
【0058】
波形整形回路701bによって、(a)に示すような直流バイアスを有する正弦波交流電圧が、波形整形閾値Vpを利用して、(b)に示すような矩形波信号に整形される。矩形波信号の周波数は、正弦波交流電圧の周波数に一致する。正弦波交流電圧の周波数は、発振回路701aの発振周波数fである。
【0059】
これによって、静電容量Cに対応した周波数をもつ矩形波信号が得られる。矩形波信号の周波数は、静電容量Cの増加および減少に対応して、それぞれ、減少および増加する。静電容量Cの増加にともなう発振周波数の減少と、それに対応した矩形波信号の周波数の減少を、図8の(a)および(b)それぞれに示す。
【0060】
対物電極602が対向電極604に接触したときは、LCR並列回路は短絡状態となる。このため、波形整形回路701bの入力信号が消滅して、図9の(a)に示すように0となり、それに対応して波形整形回路701bの出力信号は図9の(b)に示すように0となる。
【0061】
判定部703は、波形整形回路701bから入力される矩形波信号の周波数を計測する。周波数計測は、計測期間(例えば1mS)内の矩形波の立ち上がりエッジ数を計測すること等により行われる。
【0062】
判定部703は、また、周波数計測値を所定の閾値と比較して、接触または挟み込みの有無を判定する。閾値は、接触判定用と挟み込み判定用にそれぞれ用意される。以下、接触判定用の閾値を接触閾値といい、挟み込み判定用の閾値を挟込閾値という。挟込閾値は接触閾値より小さい。
【0063】
それら2種類の閾値に基づいて、露出人体等の接触と非露出人体等の挟み込みが区別して判定される。制御部705a,705bは、それら判定信号とユーザーの開閉指令に基づいて動力源800a,800bをそれぞれ制御する。
【0064】
制御部705a,705bは、露出人体等の接触または非露出人体等の挟み込みが判定されたときは、ドアが閉じる方向への開閉機構の作動を禁止し挟み込みを阻止する。このとき、ドアが反転する方向に開閉機構を作動させるようにしても良い。
【0065】
図10に、接触検知状態を示す。図10の(a)は、スライドドア400が閉じてゆく過程で、障害センサ600に露出人体10が接触した状態を示す。このとき、障害センサ600の対物電極602の静電容量が増加し、それに基づいて露出人体10の接触が検知されるので、制御部705bによってスライドドア400の停止または反転が行われる。
【0066】
スライドドア400の停止または反転は、図示のような閉じきり間際ばかりでなく、閉じる方向へのスライドドア400のスライド開始後のどの段階でも、障害センサ600による接触検知次第に直ちに行われる。
【0067】
図10の(b)は,スイングドア300が閉じてゆく過程で、障害センサ600に露出人体10が接触した状態を示す。このとき、障害センサ600の対物電極602の静電容量が増加し、それに基づいて露出人体10の接触が検知されるので、制御部705aによってスイングドア300の停止または反転が行われる。
【0068】
スイングドア300の停止または反転は、図示のような閉じきり間際ばかりでなく、閉じる方向へのスイングドア300のスイング開始後のどの段階でも、障害センサ600による接触検知次第に直ちに行われる。
【0069】
図11に、挟み込み検知状態を示す。図11の(a)は、スライドドア400が閉じてゆく過程で、スライドドア400とスイングドア300の間に非露出人体10’が挟み込まれた状態を示す。このとき、障害センサ600の対物電極602がつぶれて、第1平行部分622が第1電極部分642に短絡する。それに基づいて非露出人体10’の挟み込みが検知され、制御部705bによってスライドドア400の停止または反転が行われる。
【0070】
図11の(b)は,スイングドア300が閉じてゆく過程で、スイングドア300とスライドドア400の間に非露出人体10’が挟み込まれた状態を示す。このとき、障害センサ600の対物電極602がつぶれて、第2平行部分624が第2電極部分644に短絡する。それに基づいて非露出人体10’の挟み込みが検知され、制御部705aによってスイングドア300の停止または反転が行われる。
【0071】
第1平行部分622と第1電極部分642、および、第2平行部分624と第2電極部分644がそれぞれ平行になっているので、スライドドア400が閉じるときもスイングドア300が閉じるときも、挟み込みを統一的なタイミングで検出することができる。
【0072】
図12に、障害センサ600の具体的構成の一例を示す。図12において、図2と同様な部分は、同一の符号を付して説明を省略する。図12に示すように、障害センサ600の支持部材610は、延出部分614を有する。延出部分614は、スライドドア400の端面402に沿って外向きに、スライドドア400の外面と同レベルまで延出する。延出部分614は、本発明における延出部分の一例である。
【0073】
障害センサ600の対物電極602は、第2平行部分624の延長部分が逆S字状に立ち上がり、その先端が支持部材610の延出部分614の先端に横向きに結合する。これによって、第2平行部分624の延長部分は、立ち上がり部の斜面626と、スライドドア400の外面と同レベルのシール面628を有する。
【0074】
シール面628は、第2平行部分624に対して段差dを有する。この段差dは、スイングドア300の縁部304をよける程度の段差となっている。段差dは、本発明における段差の一例である。
【0075】
段差dがあることにより、図13に示すように、スイングドア300の縁部304とスライドドア400のフランジ部404がオーバーラップするようになっても、スイングドア300の縁部304が対物電極602に接触しない。このため、接触または挟み込みを検知可能な範囲を閉じきり間際まで広げることができる。
【0076】
閉じきり状態では、図14に示すように、スイングドア300の縁部304の先端が対物電極602の斜面626に接触する。このとき、接触時の負荷は斜面626によって分散されるので、対物電極602の接触耐久性が良くなる。
【0077】
なお、斜面606への縁部304の接触による誤作動を避けるために、制御部705a,705bは、閉じきり間際から閉じきるまでの検知信号に応答しないようになっている。このような動作は、スイングドア300およびスライドドア400からそれぞれフィードバックされる位置信号に基づいて行われる。
【0078】
閉じきり状態においては、スイングドア300の縁部304の先端とスライドドア400の端面402の間の隙間が、対物電極602のシール面628によって塞がれる。シール面628は、スライドドア400の外面と同レベルである。このため、対物電極602は、見切りシールとしても機能する。
【0079】
以上、発明を実施するための最良の形態として車両用のパワードアを例示したが、本発明のパワードアは、車両用に限らず、船舶や航空機等用のパワードア、あるいは、屋内や屋外で使用されるパワードア等、適宜の用途のパワードアであって良い。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】発明を実施するための最良の形態の一例のパワードアを装備した車両の外観を示す図である。
【図2】スイングドアとスライドドアの開閉端部分の構成を模式的に示す図である。
【図3】スイングドアとスライドドアの開閉端部分の構成を模式的に示す図である。
【図4】スイングドアとスライドドアの開閉端部分の作動状態を示す図である。
【図5】発明を実施するための最良の形態の一例のパワードアの制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】発明を実施するための最良の形態の一例のパワードアの制御系の部分的構成を示すブロック図である。
【図7】波形整形回路の入力信号波形および出力信号波形をそれぞれ示す図である。
【図8】波形整形回路の入力信号波形および出力信号波形をそれぞれ示す図である。
【図9】波形整形回路の入力信号波形および出力信号波形をそれぞれ示す図である。
【図10】接触検知状態を示す図である。
【図11】挟み込み検知状態を示す図である。
【図12】スイングドアとスライドドアの開閉端部分の作動状態を示す図である。
【図13】スイングドアとスライドドアの開閉端部分の作動状態を示す図である。
【図14】スイングドアとスライドドアの開閉端部分の作動状態を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
100 : 車両
200 : パワードア
300 : スイングドア
302 : 端面
304 : 縁部
310 : ヒンジ
400 : スライドドア
402 : 端面
404 : フランジ部
410 : レール
500 : センターピラー
600 : 障害センサ
602 : 対物電極
604 : 対向電極
606 : 圧電素子
610 : 支持部材
612 : ブラケット
614 : 延出部分
622 : 第1平行部分
624 : 第2平行部分
626 : 斜面
628 : シール面
642 : 第1電極部分
644 : 第2電極部分
701 : 前処理部
701a : 発振回路
701b : 波形整形回路
703 : 判定部
705a,705b : 制御部
707a,707b : 開閉スイッチ
800a,800b : 動力源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイングドアとスライドドアの少なくとも一方が動力源を有する開閉機構で開閉し、両ドアがともに閉じた状態においてそれらの開閉端同士が最接近するパワードアであって、
前記スイングドアと前記スライドドアの少なくとも一方の開閉に伴って相互間の距離が増減する2つの部材の一方に設けられた障害センサと、
前記障害センサの検知信号に基づいて、前記スイングドアと前記スライドドアの少なくとも一方が閉じる方向への前記開閉機構の作動を禁止する制御手段
を具備することを特徴とするパワードア。
【請求項2】
前記障害センサは、
可撓性の対物電極とこの対物電極から離間した対向電極を有し、
前記制御手段は、
前記両ドアが閉じきる間際における前記障害センサの検知信号に応答せず、
前記対物電極の静電容量が増加したとき、または、前記対物電極が前記対向電極に接触したとき、前記開閉機構の前記の作動を禁止する
ことを特徴とする請求項1に記載のパワードア。
【請求項3】
前記スイングドアは、
前記両ドアがともに閉じた状態において前記スライドドアの開閉端に隙間を隔てて対向する端面と、この端面から前記スライドドアの方向に延出する縁部を有し、
前記スライドドアは、
前記両ドアがともに閉じた状態において前記スイングドアの縁部の先端に隙間を隔てて対向する端面と、この端面から前記スイングドアの方向に延出し外向きの面が前記縁部の内向きの面に隙間を隔てて対向するフランジ部を有し、
前記障害センサは、
前記スライドドアのフランジ部に支持部材を介して取り付けられ、前記両ドアがともに閉じた状態において前記スイングドアの端面から縁部の内向きの面にかけての部分と前記スライドドアのフランジ部の先端から外向きの面にかけての部分の間に入る
ことを特徴とする請求項2に記載のパワードア。
【請求項4】
前記障害センサの対向電極は、
前記両ドアがともに閉じた状態において前記対物電極を挟んで前記スイングドアの端面および縁部の内向きの面とそれぞれ対向する第1電極部分および第2電極部分を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載のパワードア。
【請求項5】
前記障害センサの対物電極は、
前記対向電極の第1電極部分および第2電極部分にそれぞれ平行な第1平行部分および第2平行部分を有する
ことを特徴とする請求項4に記載のパワードア。
【請求項6】
前記支持部材は、
前記フランジ部に嵌合するU字形部分と、このU字形部分の開口側の先端から前記スライドドアの端面に沿って外向きに延出する延出部分を有し、
前記対物電極は、
片側が前記支持部材の延出部分の先端に結合する
ことを特徴とする請求項5に記載のパワードア。
【請求項7】
前記対物電極は、
前記両ドアがともに閉じた状態において前記スイングドアの縁部をよけるための段差を有する
ことを特徴とする請求項6に記載のパワードア。
【請求項8】
前記段差は、斜面を有する
ことを特徴とする請求項7に記載のパワードア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−79406(P2009−79406A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248993(P2007−248993)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【Fターム(参考)】