説明

パワーユニット支持ブラケット、及びそれを用いたパワーユニット支持構造

【課題】前面衝突時に、パワーユニットの前面を支持するマウントブラケットを破断させて圧潰ゾーンを確保し、車体フレームの軸圧潰或いは変形により衝撃エネルギを効率よく吸収できるようにする。
【解決手段】パワーユニット14に固定する取付けブラケット21と、フロントサイドフレーム4L,4Rに支持されているサブフレーム7に固定されるマウント部材24と、取付けブラケット21から延出する第1アーム部22と、先端部にマウント部材24を固設する第2アーム部材23とを備え、第2アーム部材23とマウント部材24とを第1結合部29を介して結合し、第1アーム部22と第2アーム部材23の後端部とを第2結合部26を介して結合する。前面衝突時においては、先ず第1結合部29を破断させ、次いで、第2結合部26を破断させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面衝突時にパワーユニットを支持する部材を破壊させてエンジンま脱落を促進させるパワーユニット支持ブラケット、及びそれを用いたパワーユニット支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両のエンジンルームには、左右のフロントホイールエプロンに沿って前後方向に延設されたフロントサイドフレームが対向配設されており、この両フロントサイドフレームに、エンジンやトランスミッションを代表とする動力伝達系の諸装置であるパワーユニット(「パワープラント」とも云う)が直接支持され、或いはサブフレームを介して支持される。
【0003】
この両フロントサイドフレームの先端はバンパビーム等のクロス部材で連結されており、前面衝突時の衝撃荷重は、クロス部材を介して、左右のフロントサイドフレームに伝達される。フロントサイドフレームは軸圧潰により変形して衝撃エネルギを吸収すると共に、衝撃荷重をフロントサイドフレームに連続するリヤフレームやフロントピラー等のサイドストラクチャへ分散させることで、キャビン(車室)への衝撃荷重の伝達を阻止し、乗員を保護する。
【0004】
その際、パワーユニットは高剛体であり破壊され難く、前面衝突時においてフロントサイドフレームが軸圧潰されたとき破壊されずに後退してしまうと、キャビンが圧迫されてしまう可能性がある。そのため、前面衝突時にパワーユニットを車体フレームから離脱させてフロントサイドフレームが正常に軸圧潰されるようにしている。
【0005】
例えば特許文献1(特開2004-231018号公報)には、マウント部材を破断させることでパワーユニットを車体フレームを離脱させる技術が開示されている。すなわち、同文献には、マウント部材のパワーユニットに固定される固定部と車体フレームに固定される固定部とを連結する連結部に脆弱部を形成しておき、前面衝突時の衝撃荷重が連結部に印加されたとき、この脆弱部を破断させることで、パワープラントを脱落させるようにしている。
【特許文献1】特開2004-231018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した文献に開示されている技術では、マウント部材を構成する連結部に脆弱部を形成し、それを破断させることでパワーユニットを脱落させるようにしているが、連結部材が1部品で形成されているので、完全に破断されるまでの塑性変形に要する時間が比較的長くなってしまう。変形時間が比較的長くなると、その間は、マウント部材を介して車体フレームとパワーユニットとの連結状態が維持されているため、車体フレームを充分に圧潰、或いは変形させることが困難となる。
【0007】
特に、パワーユニットをその重心を囲う3点で支持する支持構造では、1つのマウント部材が、必然的にパワーユニットの前端面を支持する構造となり、このマウント部材がパワーユニットよりも前方へ突出した構造となる。マウント部材がパワーユニットよりも前方へ突出していると、前面衝突時に、車体フレームが充分に圧潰或いは変形して衝撃エネルギを吸収する際の圧潰ゾーンが制限されてしまうため、このマウント部材を介して衝撃荷重がパワーユニット側へ伝達され易くなり、衝撃エネルギを充分に吸収することができなくなる問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、前面衝突時の衝撃荷重を受けた際に直ちに破断させることで、パワーユニットとパワーユニット支持ブラケットとの間の圧潰ゾーンを確保し、車体フレームの圧潰或いは変形により衝撃エネルギを充分に吸収させることのできるパワーユニット支持ブラケット、及びそれを用いたパワーユニット支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明によるパワーユニット支持ブラケットは、パワーユニットに固定する取付け部と、車体フレームに固定する支持部材と、上記取付部から延出する第1アーム部と、上記支持部材を一端に固設する第2アーム部とを備え、上記第2アーム部と上記支持部材とが第1結合部を介して結合され、上記第1アーム部と上記第2アーム部の他端とが第2結合部を介して結合され、上記第1結合部と上記第2結合部とが前面衝突時の衝突荷重で破断される起点として設定されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によるパワーユニット支持構造は、パワーユニット支持ブラケットに設けた上記取付部をパワーユニットに固設し、上記支持部材を車体フレームに支持部材を介して固設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前面衝突時の衝撃荷重を受けると、第1結合部と第2結合部とが破断して、第2アーム部から、車体フレームに固定されている支持部材が分離すると共に、第1アーム部と第2アーム部との結合が解離されるので、パワーユニットとパワーユニット支持ブラケットとの間の圧潰ゾーンを確保することができ、車体フレームの圧潰或いは変形による衝撃エネルギの吸収効果を充分に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の一形態を説明する。図1〜図5に本発明の第1形態を示す。図1に車体前部の概略側面図、図2に車体前部の概略平面図を示す。
【0013】
同図の符号1は車体、1aは車体1の前部に設けられたエンジンルームであり、このエンジンルーム1aの後部に、エンジンルーム1aとキャビン2とを区画するトーボード3が配設されている。又、エンジンルーム1aの車体幅方向両側に、閉断面形状に形成された互いに平行な一対のフロントサイドフレーム4L,4Rが配設されている。尚、この各フロントサイドフレーム4L,4Rの後部はトーボード3の傾斜に沿って下方且つ後方へ延出され、フロアパネル(図示せず)の車体幅方向両側に配設されているサイドシル5の前端部に各々連結されている。
【0014】
又、両フロントサイドフレーム4L,4Rの前端部間がフロントクロスメンバ或いはバンパビーム等のクロス部材6を介して互いに結合されている。更に、エンジンルーム1aの下部に車体フレームとしてのサブフレーム7が配設されている。このサブフレーム7は、各フロントサイドフレーム4L,4Rの下方に配設されて車体前後方向へ延出する左右一対のサブサイドメンバ8L,8Rと、両サブサイドフレーム8L,8Rの前端を連設するサブフロントクロスメンバ9と、両サブサイドフレーム8L,8Rの後端を連設するサブリヤクロスメンバ10とで枠状に形成されている。又、両サブサイドフレーム8L,8Rの前端部が、フロントサイドフレーム4L,4Rにサブフレーム用支持ブラケット11を介して連結され、又、後端部がフロントサイドフレーム4L,4Rに直接固定されている。
【0015】
又、エンジンルーム1a内に、エンジン本体12とトランスミッション13とが結合して構成されたパワーユニット14が搭載されている。尚、本形態ではエンジン本体12として水平対向エンジンが示されており、トランスミッション13がエンジン本体12の後部に連結されて車体後方へ延出されている。
【0016】
パワーユニット14の重心はエンジン本体12側の車幅方向ほぼ中央部に有り、この重心を囲む前端部と両側部との3箇所が各マウントブラケット15〜17を介してサブフレーム7に支持固定されている。更に、パワーユニット14の後部上面と車体1とがピッチングストッパ(図示せず)を介して連設されている。フロントマウントブラケット15は、エンジン本体12のクランク軸(図示せず)の下方を支持し、又、サイドマウントブラケット16,17が、トランスミッション13の前部両側を支持している。尚、サイドマウントブラケット16,17は従来と同様の構成であるため、説明を省略する。又、符号1bはラジエータユニットである。
【0017】
図3、図4に示すように、フロントマウントブラケット15は、パワーユニット14を構成するエンジン本体12側に固定する取付けブラケット21と、この取付けブラケット21に設けた第1アーム部22に連結される第2アーム部材23と、この第2アーム部材23の先端部に固設された支持部材としてのマウント部材24とを備えている。
【0018】
取付けブラケット21は、エンジン本体12に固定されるベース部21aを有し、第1アーム部22が、このベース部21aの幅方向中央から前方へ延出されている。又、この第1アーム部22にスリット部22aが前端から後部方向へ形成されている。このスリット部22aに、第2アーム部としての第2アーム部材23の他端側である後端部が嵌入され、後述する第2結合部26を介して連結固定されている。この第2アーム部材23の後部はスリット部22aに対して比較的タイトな状態で嵌入されている。
【0019】
又、第2アーム部材23の後端とスリット部22aの底部との間に所定クリアランスLを有する空隙部27が設けられている。空隙部27は、前面衝突時において、第2アーム部材23を退避させるためのもので、クリアランスLは、第2アーム部材23を後退させることで、その先端部がエンジン本体12の前方に突出されている最先端面(例えばクランクプーリの先端面)よりも内方へ没入する値に設定されている。
【0020】
又、マウント部材24が第2アーム部材23の先端部の下側に、後述する第1結合部29を介して結合されている。マウント部材24は、外筒24aと、この外筒24aの内周に同軸上に配設された内筒24bと、この両筒24a,24b間に介装されると共に、その外周及び内周が各筒24a,24bに加硫接着などの接着手段を介して固着された弾性部材24cとで構成されている。一方、第2アーム部材23の先端部下側は、マウント部材24の外筒24aの外周に沿う形状に形成されている。
【0021】
本形態による第1結合部29は、図4(b)にハッチングで示すように、第2アーム部材23の先端部の下側と、これに当接するマウント部材24の外筒24aの外周と、この両者を接合する溶接或いは接着剤等の接合手段とで構成されている。更に、この第2アーム部材23の先端部の、マウント部材24に対する接合面に逃げ部23aが形成されている。この逃げ部23aは、第1結合部29の剪断面積を調整するためのものである。すなわち、前面衝突時の襲撃荷重がマウント部材24に入力されたとき、第1結合部29を起点として予め設定された破断荷重で破断される剪断面積を求め、第1結合部29の面積が当該剪断面積となるように調整する。
【0022】
一方、第2アーム部材23の後端部と第1アーム部22に形成したスリット部22aとを結合する第2結合部26は、第2アーム部材23の後端部外側面と、これに当接するスリット部22aの内側面と、この両者を接合する溶接或いは接着剤等の接合手段とで構成されている。更に、この第2結合部26に上下方向へ貫通する逃げ部30が穿設されている。この逃げ部30は、第2結合部26の剪断面積を調整するためのものである。すなわち、前面衝突時の衝撃荷重が第2アーム部材23に入力されたとき、第2結合部26を起点として予め設定された破断荷重で破断される剪断面積を求め、第2結合部26の面積が当該剪断面積となるように調整する。
【0023】
本形態では、第1結合部29の破断荷重を、第2結合部26の破断荷重よりも小さくなるような剪断面積に設定されている。従って、前面衝突時においては、先ず、第1結合部29が破断され、次いで、第2結合部26が破断される。
【0024】
尚、上述したように、各逃げ部23a,30は、第1結合部29、第2結合部26の剪断面積を調整するものであるため、形状は丸形に限るものではない。
【0025】
又、サブフロントクロスメンバ9の車幅方向中央に、車体側ブラケット31が固設されている。この車体側ブラケット31は、所定間隔を開けて対設する一対のブラケット部材31aを有し、この両ブラケット部材31aの上部に支持孔31bが穿設されている。この両ブラケット部材31a間にマウント部材24が挿通され、内筒24bと支持孔31bとに挿通する支持軸32、及び、この支持軸32の先端部に螺設されているねじに螺入するナット33を介して、マウント部材24が車体側ブラケット31に回動自在に支持される。一方、取付けブラケット21がエンジン本体12のクランク軸の下方、すなわち、ローリング振動の中心軸の下方に固設されている。
【0026】
次に、このような構成による本形態の作用について説明する。パワーユニット14は、その重心を囲む前端部と両側部との3箇所が各マウントブラケット15〜17を介してサブフレーム7に支持固定されているため、パワーユニット14自体のローリング振動は勿論のこと、ヨーイング振動を代表とする外部振動も効率よく減衰させることができる。
【0027】
この状態で、車体1が前面衝突して、そのときの衝撃荷重が、左右のフロントサイドフレーム4L,4Rの先端を連結するクロス部材6を介して、両フロントサイドフレーム4L,4Rの前端部に伝達されると、この各フロントサイドフレーム4L,4Rの先端部が蛇腹状に軸圧潰、或いは変形されて衝撃エネルギが吸収される。
【0028】
一方、その際、両フロントサイドフレーム4L,4Rに支持されているサブフレーム7は、このサブフレーム7に各マウントブラケット15〜17を介して支持されているエンジン本体12、トランスミッション13を含むパワーユニット14と共に、両フロントサイドフレーム4L,4Rの先端部の軸圧潰或いは変形に伴い、前方へ相対移動される。そして、このサブフレーム7のサブフロントクロスメンバ9に固設されている車体側ブラケット31に支持軸32を介して支持されているフロントマウントブラケット15の先端が、前方のクロス部材6などに衝突すると、先ず、フロントマウントブラケット15の各構成部品を連結する部位に応力が集中する。
【0029】
本形態では、前面衝突時の衝撃荷重が、フロントマウントブラケット15に印加された場合、第2アーム部材23の先端とマウント部材24とを結合する第1結合部29、及び、第2アーム部材23の後端部と取付けブラケット21から延出する第1アーム部22とを結合する第2結合部26を起点として破断するように設定されている。しかも、第1結合部29の破断荷重が、第2結合部26の破断荷重よりも小さく設定されている。
【0030】
従って、フロントマウントブラケット15に衝撃荷重が印加されると、第2アーム部材23とマウント部材24とを結合する第1結合部29が直ちに破断され、その後、第2アーム部材23の後端部と取付けブラケット21から延出する第1アーム部22とを結合する第2結合部26が破断される。
【0031】
第1結合部29が破断されると、マウント部材24と第2アーム部材23とが分断されるため、第2アーム部材23の後方への移動が可能となる。その後、第2アーム部材23に対し、前方から衝撃荷重が印加されると、図5に示すように、第2アーム部材23が第1アーム部22に形成したスリット部22aに沿って後退する。この後退する際の第2結合部26を構成する各部品の変形、及び摩擦力により衝撃エネルギの一部が吸収される。
【0032】
第2アーム部材23の後退を許容するクリアランスLは、第2アーム部材23の先端が、エンジン本体12の前方に突出されている最先端面(例えばクランクプーリの先端面)よりも内方へ没入する値に設定されているため、第2アーム部材23が後退することで、パワーユニット14による前方への突っ張りが無くなり、従って、パワーユニット14の前端をフロントマウントブラケット15で支持させたとしても、前面衝突時においては、両フロントサイドフレーム4L,4Rの先端部を良好に軸圧潰或いは変形させることが可能となり、パワーユニット14の前端とクロス部材6との間にフロントマウントブラケット15の突出量分の圧潰ゾーンを新たに確保することなく、従来のままの圧潰ゾーンで衝撃エネルギを効率よく吸収することができる。
【0033】
このように、本形態では、フロントマウントブラケット15に前面衝突時に破断する第1結合部29と第2結合部26とを設け、第2結合部26の破壊荷重を第1結合部29の破壊荷重よりも大きく設定したので、前面衝突時に、先ず、第1結合部29を破断させて、パワーユニット14とサブフレーム7との連結状態を直ちに解除して、フロントサイドフレーム4L,4Rの軸圧潰を可能にすると共に、それに遅れて、第2結合部26を破断させることで、破断の際の第2結合部29を構成する部品の変形及び摩擦力によって衝撃エネルギを吸収させることができるので、前面衝突時の衝撃をより効率よく減衰させることができる。
【0034】
尚、本形態では、第2結合部26を溶接等の接合手段で結合することで剪断面積を得るようにしているが、この第2結合部26は、第1アーム部22と第2アーム部材23の後端部とをしばりばめ状態に緊縮させることで固定するようにしても良い。しばりばめ状態で固定することで、接合手段を別途設ける必要が無くなり、製造が容易になる。この場合、
取付けブラケット21と第2アーム部材23とを板金製としても良いが、取付けブラケット21を鉄やアルミニュウムを用いた板金製とし、第2アーム部材23をアルミニュウム合金などを素材とする鋳造製としても良い。
【0035】
又、図6、図7に本発明の第2形態を示す。尚、第1形態と同一の構成部分については同一の符号を付して、説明を省略する。上述した第1形態に示すフロントマウントブラケット15は、第2アーム部材23を後退させることで、圧潰ゾーンを確保したが、本形態によるフロントマウントブラケット41では、第2アーム部材23を回転させることで、圧潰ゾーンを確保するようにしたものである。
【0036】
すなわち、本形態によるフロントマウントブラケット41は、取付けブラケット42と第2アーム部材44とマウント部材24とで構成されており、取付けブラケット42のベース部21aがエンジン本体12の前面に固設される。
【0037】
又、第2アーム部としての第2アーム部材44の先端部のマウント部材24との接合面に逃げ部44aが形成されており、この逃げ部44aにより、第2アーム部材44の先端部とマウント部材24とを結合する第1結合部29の、予め設定された破断荷重で破断する剪断面積が設定される。
【0038】
又、この第2アーム部材44の後端部が、ベース部21aの幅方向中央から前方へ延出されている第1アーム部43に形成されているスリット部43aに嵌入され、支持軸34、及び、この支持軸34の先端部に螺設されているねじに螺入されるナット35にて、回動自在に支持されている。尚、図7(b)に示すように、第1アーム部43と第2アーム部材44とは、ほぼ同一の高さを有している。
【0039】
更に、第1アーム部43の上下面に、板状の下面リミッタ50a、及び上面リミッタ50bが各々固設されている。この両リミッタ50a,50bは、第2アーム部材44の回転を規制するものであり、図7(a),(b)に示すように、スリット部43aを横断するように配設されており、通常の状態においては、両リミッタ50a,50bに規制されて第1アーム部43と第2アーム部材44とが一体動作される。従って、本形態てでは、この両リミッタ50a,50bが第2結合部として機能する。又、この両リミッタ50a,50bの破断荷重が、第1結合部29の破断荷重よりも大きく設定されている。
【0040】
尚、図7(a),(c)に示すように、第2アーム部材44の後端とスリット部43aの底部との間に確保されている空隙部48のクリアランスLは、第2アーム部材44の支持軸34を中心とする回転を許容するために確保されている。又、図7(c)に示すように、第2第2アーム部材44が回転された状態では、第1アーム部43、及び第2アーム部材44の前方への突出量が、エンジン本体12の前方に突出されている最先端面(例えばクランクプーリの先端面)よりも内方へ没入する値に設定されている。
【0041】
このような構成において、前面衝突時の衝撃荷重がフロントマウントブラケット41に印加されると、フロントマウントブラケット41は、第2アーム部材44の先端とマウント部材24とを結合する第1結合部29の破断荷重が、第2アーム部材44の後端部と取付けブラケット42から延出する第1アーム部43との回動方向の移動を規制する両リミッタ50a,50bの破断荷重よりも小さく設定されているため、先ず、第1結合部29(図7(b)のハッチングで示す部分)が破断される。すると、マウント部材24と第2アーム部材44の先端部とが分断されるため、第2アーム部材44は、支持軸34を中心とする上下方向への回動が可能となる。
【0042】
その後、第2アーム部材44に対し、前方から衝撃荷重が印加されると、第2アーム部材44は、その衝撃荷重で支持軸34を中心に上方或いは下方へ回動し、両リミッタ50a,50bを破壊する。尚、図7(c)には、第2アーム部材44が下方へ回動した状態が示されているが、衝撃荷重の印加方向によっては、上方へ回動する場合もある。但し、以下においては、第2アーム部材44が下方へ回動する場合についてのみ説明し、上方へ回動する場合については説明を省略する。
【0043】
そして、第2アーム部材44が下方へ回動すると、その途中において、第2アーム部材44に発生するモーメント荷重により、両リミッタ50a,50bが破壊され、図7(c)に示すように、第2アーム部材44は下方へ回動される。その結果、取付けブラケット42、及び第2アーム部材44が、エンジン本体12の前方に突出されている最先端面(例えばクランクプーリの先端面)よりも内方に収められ、その分、両フロントサイドフレーム4L,4Rの先端部を良好に軸圧潰或いは変形させることが可能となる。
【0044】
又、両リミッタ50a,50bが破壊される際の変形によっても衝撃エネルギが吸収されるため、前面衝突時の衝撃をより効率よく減衰させることができる。
【0045】
尚、本発明は上述した各形態に限るものではなく、例えば各マウントブラケット15〜17がフロントサイドフレーム4L,4Rとパワーユニット14との間を支持するものであっても良い。更に、本発明はピッチングストッパに適用することも可能であり、この場合、取付けブラケット21,42をパワーユニット14の上部に固設し、支持部材を車体1aに固設する。又、パワーユニット14は、エンジン本体のみ、エンジンとモータとの組み合わせ、或いはモータのみであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1形態による車体前部の概略側面図
【図2】同、車体前部の概略平面図
【図3】同、フロントマウントブラケットの斜視図
【図4】同、(a)はフロントマウントブラケットの平面図、(b)はフロントマウントブラケットの側面図
【図5】同、(a)は前面衝突の際のフロントマウントブラケットの平面図、(b)は前面衝突の際のフロントマウントブラケットの側面図
【図6】第2形態によるフロントマウントブラケットの斜視図
【図7】同、(a)はフロントマウントブラケットの平面図、(b)はフロントマウントブラケットの側面図、(c)は前面衝突の際のフロントマウントブラケットの側面図
【符号の説明】
【0047】
1…車体、
1a…エンジンルーム、
4L,4R…フロントサイドフレーム、
6…クロス部材、
7…サブフレーム、
8L,8R…サブサイドメンバ、
14…パワーユニット、
15,41…フロントマウントブラケット、
21,42…取付けブラケット、
21a…ベース部、
22,43…第1アーム部、
22a,43a…スリット部、
23,44…第2アーム部材、
23a,30,44a…逃げ部、
24…マウント部材、
26…第2結合部、
29…第1結合部、
31…車体側ブラケット、
32,34…支持軸、
50a…下面リミッタ、
50b…上面リミッタ、
L…クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーユニットに固定する取付け部と、
車体フレームに固定する支持部材と、
上記取付部から延出する第1アーム部と、
上記支持部材を一端に固設する第2アーム部と
を備え、
上記第2アーム部と上記支持部材とが第1結合部を介して結合され、
上記第1アーム部と上記第2アーム部の他端とが第2結合部を介して結合され、
上記第1結合部と上記第2結合部とが前面衝突時の衝突荷重で破断される起点として設定されている
ことを特徴とするパワーユニット支持ブラケット。
【請求項2】
上記第1結合部の破断荷重が上記第2結合部の破断荷重よりも小さく設定されている
ことを特徴とする請求項1記載のパワーユニット支持ブラケット。
【請求項3】
上記第1アーム部と上記第2アーム部の他端との間に衝撃荷重の入力方向にクリアランスが設けられている
ことを特徴とする請求項1或いは2記載のパワーユニット支持ブラケット。
【請求項4】
上記第2結合部は、上記第2アーム部を上記第1アーム部に支持する支持軸と、該第2アーム部の該支持軸を中心とする回動を規制するリミッタとで構成されている
ことを特徴とする請求項1或いは2記載のパワーユニット支持ブラケット。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のパワーユニット支持ブラケットを用い、
上記パワーユニット支持ブラケットに設けた上記取付部をパワーユニットに固設し、上記支持部材を車体フレームに支持部材を介して固設する
ことを特徴とするパワーユニット支持構造。
【請求項6】
上記パワーユニット支持ブラケットがマウントブラケットであり、
上記パワーユニット支持ブラケットに設けた上記取付部を上記パワーユニットの前端面に固設する
ことを特徴とする請求項5記載のパワーユニット支持構造。
【請求項7】
上記パワーユニット支持ブラケットがピッチングストッパであり、
上記パワーユニット支持ブラケットに設けた上記取付部を上記パワーユニットの上部に固設する
ことを特徴とする請求項5記載のパワーユニット支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−261529(P2007−261529A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92213(P2006−92213)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】