説明

パンタグラフの離線測定方法及び装置

【課題】簡易な構成で昼夜を問わずにパンタグラフの離線を測定することができる方法及び装置を提供する。
【解決手段】パンタグラフ67の離線測定装置1は、トロリ線65とパンタグラフ67の間に発生するアーク光SLを集光する紫外線透過レンズ11と、集光したアーク光を受光して電気信号に変換する光電変換素子13とを備える。該素子は、紫外線のみを光電変換する。これにより、該測定装置は、車両が走行する線路から離れた地上に設置されていても、該線路を走行する全ての車両におけるパンタグラフの離線を高精度に測定することができる。さらに、該測定装置は、太陽光の影響を排除することができ、日中・夜間を問わずにパンタグラフの離線を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気鉄道におけるトロリ線から車両に給電するパンタグラフの離線を測定する方法及び装置に関する。特には、地上から昼夜を問わずに離線測定可能な方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の電気鉄道においては、トロリ線(架線、給電線ともいう)から、車体屋根に搭載されたパンタグラフを介して車両に電力を送る方式が一般的である。
図1に示すように、トロリ線65は、車両61の走行区間中に所定間隔おきに立ち上げられた架線柱75に、吊架線71やハンガ73を介して吊られている。このトロリ線65は、多くのものは銅系の材料であるが、アルミニウム系や鉄系の材料のものもある。
パンタグラフ67は、上下のばね機構(復元ばね)を介して、所定の力で舟体をトロリ線65に向けて押し上げている。そして、該舟体上表面に設けられたすり板69が、トロリ線65に直接接触する。このすり板69は、一般に銅系合金、鉄系合金又はカーボン等で形成されている。
【0003】
ところで、トロリ線65とすり板69との接触力は、トロリ線65の高さ変動や静的な高さ不整、車両61・パンタグラフ67の振動、さらには吊架線71の機械インピーダンス(押し上がりにくさ)の不均一等によって変動する。この接触力の変動が大きくなると、すり板69がトロリ線65から離れる現象(離線)が生じ易くなる。また、すり板69やトロリ線65の異常磨耗の原因となる。
【0004】
この離線が生じた場合は、トロリ線65とすり板69との間にアーク放電が起こってアーク光(スパーク光)や騒音、熱が発生し、すり板69やトロリ線65の溶損が進み易くなる。そして、すり板69が一定程度以上溶損し劣化した場合には、該すり板69を交換する必要がある。
【0005】
従来より、パンタグラフの離線を測定する装置としては、例えば特許文献1(特開平5−328510号公報)に開示されたものが知られている。この測定装置は、すり板に取り付けられたフード付き光導入部を備えている。このフード付き光導入部で捕捉されたアーク光は、光ファイバを通して光電変換部に伝送され、電気信号に変換される。そして、この電気信号は、デジタル信号に変換された後に解析され、離線情報として測定される。
【0006】
【特許文献1】特開平5−328510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1記載の従来のパンタグラフの離線測定装置では、フード付き光導入部がすり板に取り付けられる構成なため、フード付き光導入部を車両毎に取り付ける必要がある。しかしながら、該測定装置を取り揃えるコストや取り付ける作業が嵩むことから、このような欠点のない測定方法及び装置の提供が求められている。
【0008】
さらに、該測定装置では、光電変換部が可視光線に対しても感度を持っているため、該測定は日中においては不可能である。そこで、夜間に車両を走行させて該測定を行っている。しかしながら、日中においても車両を走行させて測定できる方法及び装置の提供が求められている。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で昼夜を問わずにパンタグラフの離線を測定することができる方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための、本発明のパンタグラフの離線測定方法は、 地上においてトロリ線から車両に給電するパンタグラフと該トロリ線の間に発生するアーク光を集光し、 集光した前記アーク光を受光し、 受光した光の内の紫外線のみを電気信号に変換し、 変換した前記電気信号に基づいて前記パンタグラフの離線を測定することを特徴とする。
【0011】
このようなパンタグラフの離線測定方法によれば、任意に設定した地点から、日中・夜間を問わずに、同地点を通過する全車両のパンタグラフの離線を測定することができる。したがって、測定対象の車両毎に装置を取り付ける必要が無いので、該測定に掛かる手間やコスト等を従来よりも大幅に低減させることができる。さらに、地上から測定しているために、該測定地点近辺の鉄道に関わる地上設備と該測定データとの関連付けもできる。例えばトロリ線の吊架状態の不具合等も同時に把握することができる。
【0012】
上記目的を達成するための、本発明の一つの形態のパンタグラフの離線測定装置は、 トロリ線から車両に給電するパンタグラフの離線を地上から測定する装置であって、 前記トロリ線と前記パンタグラフの間に発生するアーク光を集光する紫外線透過レンズと、 集光した前記アーク光を受光して電気信号に変換する光電変換素子と、を備え、 前記光電変換素子が紫外線のみを光電変換することを特徴とする。
【0013】
このような構成のパンタグラフの離線測定装置によれば、紫外線透過レンズが、トロリ線とパンタグラフの間に発生するアーク光を集光する。このため、該測定装置は、車両が走行する線路から離れた地上に設置されていても、該線路を走行する全ての車両におけるパンタグラフの離線を高精度に測定することができる。該測定装置では、従来の測定装置のようなすり板への取り付け作業が不要となり、車両毎に取り付ける必要が無いので、簡易な構成でコストを抑えることができる。
【0014】
さらに、紫外線透過レンズが、紫外線を含むアーク光及び太陽光を透過し、該紫外線のみを紫外光にのみ感度を持つ光電変換素子が光電変換する。このときの光電変換素子は、紫外光領域の強度が低い太陽光には殆ど感応せず、紫外光領域に高いピークを持つアーク光に感応する。このため、該測定装置は、太陽光の影響を排除することができ、日中・夜間を問わずにパンタグラフの離線を測定することができる。
【0015】
本発明の他の形態のパンタグラフの離線測定装置は、 トロリ線から車両に給電するパンタグラフの離線を地上から測定する装置であって、 前記トロリ線と前記パンタグラフの間に発生するアーク光を集光する紫外線透過レンズと、 集光した前記アーク光を受光して電気信号に変換する光電変換素子と、 前記紫外線透過レンズの前段、もしくは前記光電変換素子の前段に配置された、紫外線のみを透過するフィルタと、 を備えることを特徴とする。
【0016】
このような構成のパンタグラフの離線測定装置によれば、紫外線透過レンズを有しているため、上述したように地上から線路を走行する全ての車両におけるパンタグラフの離線を高精度に測定することができる。そして、簡易な構成であるためにコストを抑えることができる。
【0017】
さらに、フィルタが、アーク光及び太陽光に含まれる紫外線のみを透過し、該紫外線を光電変換素子が光電変換する。このとき、太陽光は紫外光領域の強度が低く、アーク光は紫外光領域に高いピークを持っている。このため、該測定装置は、太陽光の影響を排除することができ、日中・夜間を問わずにパンタグラフの離線を測定することができる。
【0018】
本発明の他の形態のパンタグラフの離線測定装置は、 トロリ線から車両に給電するパンタグラフの離線を地上から測定する装置であって、 前記トロリ線と前記パンタグラフの間に発生するアーク光を集光する紫外線透過レンズと、 集光した前記アーク光を受光して電気信号に変換する光電変換素子と、 前記光電変換素子の前段に配置された、反射光を該素子に入射させる紫外線を反射するミラーと、 を備えることを特徴とする。
【0019】
このような構成のパンタグラフの離線測定装置によれば、紫外線透過レンズを有しているため、上述したように地上から線路を走行する全ての車両におけるパンタグラフの離線を高精度に測定することができる。そして、簡易な構成であるためにコストを抑えることができる。
【0020】
さらに、ミラーがアーク光及び太陽光に含まれる紫外線を反射し、該紫外線を光電変換素子が光電変換する。このとき、太陽光は紫外光領域の強度が低く、アーク光は紫外光領域に高いピークを持っている。このため、該測定装置は、太陽光の影響を排除することができ、日中・夜間を問わずにパンタグラフの離線を測定することができる。
【0021】
本発明の他の形態のパンタグラフの離線測定装置は、 トロリ線から車両に給電するパンタグラフの離線を地上から測定する装置であって、 前記トロリ線と前記パンタグラフの間に発生するアーク光を集光する紫外線透過レンズと、 集光した前記アーク光を受光して電気信号に変換する光電変換素子と、 前記光電変換素子の前段に配置された、反射光を該素子に入射させる紫外線を反射するミラーと、 前記ミラーの後段に配置された、透過光の入射するファインダと、 を備えることを特徴とする。
【0022】
このような構成のパンタグラフの離線測定装置によっても、上記形態の測定装置と同様の作用効果を奏する。さらに、紫外線が取り除かれたアーク光及び太陽光がファインダに入射する。このため、測定者は、ファインダを覗いて該測定装置の設置位置を正確に把握して位置決めすることができる。したがって、パンタグラフの離線測定区間を精度良く設定することができる。また、測定地点における吊架線や架線柱や線路の状況を同時に観測でき、該地上設備との関連を把握することができる。
【0023】
本発明の他の形態のパンタグラフの離線測定装置は、 トロリ線から車両に給電するパンタグラフの離線を地上から測定する装置であって、 前記トロリ線と前記パンタグラフの間に発生するアーク光を集光する紫外線透過レンズと、 集光した前記アーク光を受光して電気信号に変換する光電変換素子と、 前記光電変換素子の前段に直列に複数配置された、反射光を該素子に入射させる紫外線を反射するミラーと、 を備えることを特徴とする。
【0024】
紫外線を反射するミラーで反射した紫外線には、可視光領域の光が若干含まれる場合がある。そこで、紫外線を反射するミラーを複数設けることにより、光電変換素子に入射させる光の内の可視光領域の光をより確実に遮断することができる。したがって、光電変換素子に入射する紫外線のS/Nを向上できる。
【0025】
本発明の他の形態のパンタグラフの離線測定装置は、 トロリ線から車両に給電するパンタグラフの離線を地上から測定する装置であって、 前記トロリ線と前記パンタグラフの間に発生するアーク光を集光する紫外線透過レンズと、 集光した前記アーク光を受光して電気信号に変換する光電変換素子と、 前記光電変換素子の前段に直列に複数配置された、反射光を該素子に入射させる紫外線を反射するミラーと、 該複数のミラーの内、最も前段のミラーの後段に配置された、透過光の入射するファインダと、 を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、上述したように、簡易な構成で昼夜を問わずにパンタグラフの離線を測定することができる方法及び装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明のパンタグラフの離線測定方法及び装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明のパンタグラフの離線測定方法を説明するための図である。なお、本方法では、後述する第1〜第5の形態の離線測定装置1〜5が使用可能であるが、ここでは第4の形態の離線測定装置4を使用して測定する場合を説明する。
【0029】
まず、離線測定装置4の設置位置について説明する。この設置位置は、図1に示すように、車両61が走行する線路63脇における任意の地上位置Pである。該測定装置4は、線路63に対し略直角方向に所定距離d(例えば25m)だけ離れた地上位置Pにおいて三脚6を介して設置されている。このとき該測定装置4のファインダ43に映し出される映像の実際の横幅eは、10m〜50mとなっている。測定者は、該映像を見ながら、トロリ線65が映像略中央付近を横切るように三脚の高さを調整する。このとき、測定地点における吊架線71や架線柱75や線路63の状況を同時に観測する。
【0030】
車両61が測定地点を通過したときに、トロリ線65とパンタグラフ67のすり板69の間でアーク光SLが発生したら、メモリ17(図5参照)に格納されているデジタルの電気信号を読み出す。そして、該信号からアーク接続時間、アーク回数、アークタイミング等の測定データを求め、パンタグラフ67の離線を測定する。この測定は、日中・夜間を問わずに該測定地点を通過する全ての車両61に対して測定可能である。したがって、該測定に掛かる手間やコスト等を従来よりも大幅に低減させることができる。
【0031】
さらに、図1の方法においては地上から測定しているために該測定地点近辺の鉄道に関わる地上設備と該測定データとの関連付けが可能となる。例えばトロリ線65は、架線柱75間に架け渡された吊架線71に複数のハンガ73を介して吊られている。したがって、このトロリ線65、吊架線71及びハンガ73の吊架状態や架線柱75の不具合等も上記測定データから同時に把握することができる。
【0032】
図2は、本発明の第1の形態のパンタグラフの離線測定装置を示す構成図である。
この離線測定装置1は、同図に示すように、紫外線(以下、UVという)を含む光を集光して透過するUV透過レンズ11と、透過した光を受光してUVのみをアナログの電気信号に変換するUV用光電変換素子13と、変換されたアナログの電気信号をデジタルの電気信号に変換するA/Dコンバータ15と、変換されたデジタルの電気信号を格納するメモリ17を備えている。そして、該測定装置1を構成する上記レンズ11等は、アルミニウム等の金属もしくはポリカーボネイト等のプラスチックで成る筐体19に内蔵されている。これにより、測定者は、該測定装置1を地上において任意の測定地点に携行して設置することができる。
【0033】
UV透過レンズ11は、トロリ線65とすり板69の間に発生するアーク光SL及び太陽光をUVも含めて集光して透過する。該レンズ11を使用することにより、上記測定装置1は、すり板69から離れた位置において上記アーク光SLを検出することができる。このため、測定者は、上記測定装置1を例えば車両が走行する線路から所定距離離れた地上位置に設置して、同線路を走行する全車両のパンタグラフ67の離線を高精度に測定することが可能となる。なお、該レンズ11としては、例えば石英・合成石英レンズ(例えば山田光学工業製:型番SL−20−25)や、CaF2レンズ、MgF2レンズなどのUVを透過するレンズが使用される。
【0034】
UV用光電変換素子13は、UV透過レンズ11を透過したアーク光SL及び太陽光のうちUVのみを感知してアナログ電気信号に変換する。該素子13を使用することにより、上記測定装置1は、UV領域の強度が低い太陽光の影響を排除して、UV領域に高いピークを持つアーク光SLを優先的に検出することができる。このため、測定者は、昼夜を問わずにパンタグラフ67の離線を測定することが可能となる。該素子13としては、例えばソラーブラインド型光電子増倍管(フォトマル)(例えば浜松ホトニクス製:型番R7154)やダイヤモンドUVセンサなどのUVのみを感知してアナログ電気信号に変換する素子が使用される。
【0035】
A/Dコンバータ15及びメモリ17は、例えば一般的な半導体デバイスを用いるものが使用される。
以上のような構成のパンタグラフの離線測定装置1は、従来の測定装置のようなすり板への取り付け作業が不要となり、測定対象の車両毎に取り付ける必要が無いので、簡易な構成でコストを抑えることができる。
【0036】
図3は、本発明の第2の形態のパンタグラフの離線測定装置を示す構成図である。図3中において図2と同一構成部は同一番号を付している。
この離線測定装置2は、同図に示すように、UVのみをフィルタリングするUVフィルタ21と、フィルタリングしたUVを集光して透過するUV透過レンズ11と、透過したUVを受光してアナログの電気信号に変換する光電変換素子23と、変換されたアナログの電気信号をデジタルの電気信号に変換するA/Dコンバータ15と、変換されたデジタルの電気信号を格納するメモリ17を備えている。そして、該測定装置2を構成する上記フィルタ21等は、アルミニウム等の金属もしくはポリカーボネイト等のプラスチックで成る筐体29に内蔵されている。これにより、測定者は、該測定装置2を地上において任意の測定地点に携行して設置することができる。
【0037】
UVフィルタ21は、トロリ線65とすり板69の間に発生するアーク光SL及び太陽光のうち、UVのみをフィルタリングする。該フィルタ21を使用することにより、上記測定装置2は、UV領域の強度が低い太陽光の影響を排除して、UV領域に高いピークを持つアーク光SLのみを検出することができる。このため、測定者は、昼夜を問わずにパンタグラフ67の離線を測定することが可能となる。該フィルタ21としては、例えば紫外用バンドパスフィルタなどのUVのみをフィルタリングするフィルタが使用される。
【0038】
光電変換素子23は、UVフィルタ21によりUVのみを受光することになるので、UVを含む光を感知する素子で良い。該素子23は、UVのみを感知する上記UV用光電変換素子13よりもコスト面で有利である。該素子23としては、例えば汎用光電子増倍管(フォトマル)(例えば浜松ホトニクス製:型番R3788)やシリコンフォトダイオードなどのUVを含む光を感知してアナログ電気信号に変換する素子が使用される。
【0039】
なお、UV透過レンズ11、A/Dコンバータ15及びメモリ17は、図2にて説明したものと同一のものが使用されるため、ここでの説明は省略する。
以上のような構成のパンタグラフの離線測定装置2は、従来の測定装置のようなすり板への取り付け作業が不要となり、測定対象の車両毎に取り付ける必要が無いので、簡易な構成でコストを抑えることができる。
【0040】
図4は、本発明の第3の形態のパンタグラフの離線測定装置を示す構成図である。図4中において図3と同一構成部は同一番号を付している。
この離線測定装置3は、同図に示すように、UVフィルタ21をUV透過レンズ11と光電変換素子23の間に配置換えした点で図3に示す離線測定装置2と異なる構成となっている。このような構成においても、図3に示す離線測定装置2と同様な作用効果を奏する。
【0041】
図5は、本発明の第4の形態のパンタグラフの離線測定装置を示す構成図である。図5中において図2と同一構成部は同一番号を付している。
この離線測定装置4は、同図に示すように、UVを含む光を集光して透過するUV透過レンズ11と、透過した光のうち、UVのみを反射し、UV以外の光を透過するUV反射ミラー41と、反射したUVを受光してアナログの電気信号に変換する光電変換素子23と、変換されたアナログの電気信号をデジタルの電気信号に変換するA/Dコンバータ15と、変換されたデジタルの電気信号を格納するメモリ17と、上記ミラー41を透過したUV以外の光を入射するファインダ43とを備えている。そして、該測定装置4を構成する上記レンズ11等は、アルミニウム等の金属もしくはポリカーボネイト等のプラスチックで成る筐体49に内蔵されている。これにより、測定者は、該測定装置4を地上において任意の測定地点に携行して設置することができる。
【0042】
UV反射ミラー41は、トロリ線65とすり板69の間に発生するアーク光SL及び太陽光を入射角45°で入射し、UVのみを反射角45°で反射し、UV以外の光をそのままの角度で透過する。該ミラー41を使用することにより、上記測定装置4は、UV領域の強度が低い太陽光の影響を排除して、UV領域に高いピークを持つアーク光SLのみを検出することができる。
【0043】
このため、測定者は、昼夜を問わずにパンタグラフ67の離線を測定することが可能となる。さらに、測定者は、ファインダ43を覗いて該測定装置4の設置位置を正確に把握して位置決めすることができる。パンタグラフ67の離線測定区間を精度良く設定することができる。また、測定地点における吊架線や架線柱や線路の状況を同時に観測でき、該地上設備との関連を把握することができる。該ミラー41としては、例えばUV反射ミラー(例えば山田光学工業製:型番UV−210)などのUVのみを反射角45°で反射し、UV以外の光をそのままの角度で透過するミラーが使用される。
【0044】
なお、UV透過レンズ11、A/Dコンバータ15及びメモリ17は、図1にて説明したものと同一のものが使用され、光電変換素子22は、図2にて説明したものと同一のものが使用されるため、ここでの説明は省略する。また、ファインダ43は、例えば液晶等で成る一般的なものが使用される。
以上のような構成のパンタグラフの離線測定装置4は、従来の測定装置のようなすり板への取り付け作業が不要となり、測定対象の車両毎に取り付ける必要が無いので、簡易な構成でコストを抑えることができる。
【0045】
図6は、本発明の第5の形態のパンタグラフの離線測定装置を示す構成図である。図6中において図5と同一構成部は同一番号を付している。
この離線測定装置5は、同図に示すように、UV透過レンズ11をUV反射ミラー41と光電変換素子23の間に配置換えした点で図5に示す離線測定装置4と異なる構成となっている。このような構成においても、図5に示す離線測定装置4と同様な作用効果を奏する。
【0046】
図7は、本発明の第6の形態のパンタグラフの離線測定装置を示す構成図である。図6中において図5と同一構成部は同一番号を付している。
この離線測定装置4は、同図に示すように、UV透過レンズ11を透過した紫外線を反射するUV反射ミラーを2枚使用した点で図5に示す離線測定装置4と異なる構成となっている。
【0047】
すなわち、UV透過レンズ11の後段に、同レンズを透過した光のうち、UVを反射し、UV以外の光を透過する一次UV反射ミラー41を備える。さらに、この一次UV反射ミラー41の後段(光電変換素子23の前段)に、一次UV反射ミラー41で反射したUVを反射し、UV以外の光を透過する二次UV反射ミラー42を備える。
【0048】
UV反射ミラーは、UVを反射角45°で反射し、UV以外の光をそのままの角度で透過するものであるが、反射したUVに若干可視光領域の光が含まれる場合がある。そこで、UV反射ミラーを2段に配置することによって、可視光領域の光をより確実に遮断でき、光電変換素子23に入射するUVのS/Nを向上できる。
【0049】
なお、この例では、UV反射ミラーを2枚使用したが、3枚以上設けてもよい。また、一次UV反射ミラー41の後段に、同ミラーを透過したUV以外の光を入射するファインダ43を備えてもよい。
【0050】
なお、上述した第1の実施形態では、UVのみを感知して光電変換する素子13を使用したが、第2の実施形態等で使用したUVを含む光を感知して光電変換する素子23であっても良い。また、第4、5、6の実施形態で使用したファインダ43の代わりにデジタルカメラを使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のパンタグラフの離線測定方法を説明するための図である。
【図2】本発明の第1の形態のパンタグラフの離線測定装置を示す構成図である。
【図3】本発明の第2の形態のパンタグラフの離線測定装置を示す構成図である。
【図4】本発明の第3の形態のパンタグラフの離線測定装置を示す構成図である。
【図5】本発明の第4の形態のパンタグラフの離線測定装置を示す構成図である。
【図6】本発明の第5の形態のパンタグラフの離線測定装置を示す構成図である。
【図7】本発明の第6の形態のパンタグラフの離線測定装置を示す構成図である
【符号の説明】
【0052】
1、2、3、4、5・・・離線測定装置、11・・・UV透過レンズ、13・・・UV用光電変換素子、15・・・A/Dコンバータ、17・・・メモリ、19、29、49・・・筐体、21・・・UVフィルタ、23・・・光電変換素子、41、42・・・UV反射ミラー、43・・・ファインダ、61・・・車両、63・・・線路、65・・・トロリ線、67・・・パンタグラフ、69・・・すり板、71・・・架線柱、73・・・吊架線、75・・・ハンガ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上においてトロリ線から車両に給電するパンタグラフと該トロリ線の間に発生するアーク光(スパーク光)を集光し、
集光した前記アーク光を受光し、
受光した光の内の紫外線のみを電気信号に変換し、
変換した前記電気信号に基づいて前記パンタグラフの離線を測定することを特徴とするパンタグラフの離線測定方法。
【請求項2】
前記パンタグラフの離線と測定地点近辺の地上設備との関連を把握することを特徴とする請求項1記載のパンタグラフの離線測定方法。
【請求項3】
トロリ線から車両に給電するパンタグラフの離線を地上から測定する装置であって、
前記トロリ線と前記パンタグラフの間に発生するアーク光を集光する紫外線透過レンズと、
集光した前記アーク光を受光して電気信号に変換する光電変換素子と、
を備え、
前記光電変換素子が紫外線のみを光電変換することを特徴とするパンタグラフの離線測定装置。
【請求項4】
トロリ線から車両に給電するパンタグラフの離線を地上から測定する装置であって、
前記トロリ線と前記パンタグラフの間に発生するアーク光を集光する紫外線透過レンズと、
集光した前記アーク光を受光して電気信号に変換する光電変換素子と、
前記紫外線透過レンズの前段、もしくは前記光電変換素子の前段に配置された、紫外線のみを透過するフィルタと、
を備えることを特徴とするパンタグラフの離線測定装置。
【請求項5】
トロリ線から車両に給電するパンタグラフの離線を地上から測定する装置であって、
前記トロリ線と前記パンタグラフの間に発生するアーク光を集光する紫外線透過レンズと、
集光した前記アーク光を受光して電気信号に変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子の前段に配置された、反射光を該素子に入射させる紫外線を反射するミラーと、
を備えることを特徴とするパンタグラフの離線測定装置。
【請求項6】
トロリ線から車両に給電するパンタグラフの離線を地上から測定する装置であって、
前記トロリ線と前記パンタグラフの間に発生するアーク光を集光する紫外線透過レンズと、
集光した前記アーク光を受光して電気信号に変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子の前段に配置された、反射光を該素子に入射させる紫外線を反射するミラーと、
前記ミラーの後段に配置された、透過光の入射するファインダと、
を備えることを特徴とするパンタグラフの離線測定装置。
【請求項7】
トロリ線から車両に給電するパンタグラフの離線を地上から測定する装置であって、
前記トロリ線と前記パンタグラフの間に発生するアーク光を集光する紫外線透過レンズと、
集光した前記アーク光を受光して電気信号に変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子の前段に直列に複数配置された、反射光を該素子に入射させる紫外線を反射するミラーと、
を備えることを特徴とするパンタグラフの離線測定装置。
【請求項8】
トロリ線から車両に給電するパンタグラフの離線を地上から測定する装置であって、
前記トロリ線と前記パンタグラフの間に発生するアーク光を集光する紫外線透過レンズと、
集光した前記アーク光を受光して電気信号に変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子の前段に直列に複数配置された、反射光を該素子に入射させる紫外線を反射するミラーと、
該複数のミラーの内、最も前段のミラーの後段に配置された、透過光の入射するファインダと、
を備えることを特徴とするパンタグラフの離線測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−55778(P2009−55778A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29912(P2008−29912)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(595167535)山田光学工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】