説明

パン型造粒機用の大塊処理装置

【課題】パン型造粒機において、その運転中に自動的に大塊を除去することが可能な塊処理装置を提供する。
【解決手段】回転して粉体を造粒するパン23が備えられたパン型造粒機21用の大塊処理装置1であって、大塊を掬い上げる掬上げ治具3と、先端に掬上げ治具3が着脱自在に取り付けられ、パン23の回転方向に沿って掬上げ治具3をパン23に挿入させて大塊を掬い上げさせるロボットアーム2と、を具備してなることを特徴とするパン型造粒機用の大塊処理装置1を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン型造粒機用の大塊処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
傾斜した状態で回転するパンに、予め調湿した粉体またはバインダを添加した粉体を投入すると、転動作用によって、粉体がほぼ球状あるいは粒状に造粒される。この現象を利用したものがパン型造粒機であって、例えば、コークス粉末、製鋼ダスト、金属粉末、セメント原料、製鋼原料等の造粒に利用されている。
【0003】
パンは、平底部の周囲にリムが形成されてなる皿状の部材である。このパンに各種の粉体を連続して投入すると、回転するパンの下部に粉体が滞留し、パンの回転に伴う転動作用を受けて粉体が造粒される。この際、造粒に適した水分となるようにパン内の粉体に散水する。パンに対する粉体の投入量がある一定の分量を超えると、造粒物がリムから溢れてパンの外に排出される。造粒物の粒度は、粉体の物性、パン内の粉体への散水量、パンの回転数、傾斜角度またはリムの高さ等の条件を調整することによって制御され、所定の粒度の造粒物が連続的に得られる。
【0004】
ところで、パン型造粒機においては、回転するパンの下部に粉体が滞留しつつ転動造粒が行われるが、造粒中のパンから材料の剥離物等が発生する場合がある。このような剥離物が造粒物に付着すると、目標値を超えた粒径の大塊が発生する。大塊は、転動造粒に悪影響を与えるので、できるだけ早期に取り除く必要がある。
【0005】
また、この発生した大塊は、その一部が造粒物と共にパンから排出される場合がある。排出された大塊は、造粒物とともに造粒工程の後工程にそのまま送られてしまい、搬送や後工程での処理に支障が生じる場合があった。
【0006】
従来、造粒中に大塊が発生した場合は、その都度、パン型造粒機を一旦停止させた後、作業者が、掻出用器具をパンに挿入して除去していたが、パンの周囲は粉塵が立ち込めている環境なので、作業環境が悪く、しかも、生産性の悪いものであった。
【0007】
特許文献1には、造粒ディスクの作動領域内に鋤状工具を固定して、オーバーサイズの粒状物をこの鋤状工具によって造粒ディスクの外に排出させる除去装置が開示されている。しかし、一般的にはパン内の粉体にはバインダーが添加されていることから、この除去装置の鋤状工具に粉体が付着するために、この付着した粉体を頻繁に除去する必要があり、上記同様に作業性の悪いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2008−519158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、パン型造粒機において、その運転中に自動的に大塊を安定して除去することが可能な大塊処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1] 回転して粉体を造粒するパンが備えられたパン型造粒機用の大塊処理装置であって、
大塊を掬い上げる掬上げ治具と、
先端に前記掬上げ治具が着脱自在に取り付けられ、前記パンの回転により移動している粉体の中間部に間欠的に前記掬上げ治具を前記パンの回転方向に、または、回転方向とは逆方向に挿入させて大塊を掬い上げさせるロボットアームと、
を具備してなることを特徴とするパン型造粒機用の大塊処理装置。
[2] 前記掬上げ治具による掬上げ位置が複数の箇所に設定され、各掬い上げ位置において、順次、前記ロボットアームによる掬い上げ動作を行うことを特徴とする[1]に記載のパン型造粒機用の大塊処理装置。
[3] 前記掬上げ治具は、縦板と、前記縦板から相互に離間して突出された複数の棒状体とを備えたフォーク状部材であることを特徴とする[1]または[2]に記載のパン型造粒機用の大塊処理装置。
[4] 前記パンの排出部の下側に配置された造粒物の排出シュートの開口部に、相互に間隔を開けて配列された複数の破砕刃を有する破砕器が備えられ、
前記複数の破砕刃の各間隙に、前記掬い上げ治具の前記の各棒状体が、前記破砕刃と前記縦板とが当接する位置まで挿入可能とされていることを特徴とする[1]乃至[3]の何れか一項に記載のパン型造粒機用の大塊処理装置。
[5] 前記粉体の造粒後に、前記掬上げ治具に代えて、前記パンに残留する造粒物を掬い上げるバケット治具が前記ロボットアームの先端に装着されることを特徴とする[1]乃至[4]の何れか一項に記載のパン型造粒機用の大塊処理装置。
[6] 回転するパンによって粉体を造粒する際に生じる大塊を処理する方法であって、
先端に大塊を掬い上げる掬上げ治具が着脱自在に取り付けられたロボットアームによって、前記掬上げ治具を、前記パンの回転により移動している粉体の中間部に間欠的に、前記パンの回転方向に、または、回転方向とは逆方向に挿入して前記大塊を掬い上げることを特徴とするパン型造粒における大塊の処理方法。
[7] 前記掬上げ治具による掬上げ位置を複数の箇所に設定し、各掬い上げ位置において、順次、前記ロボットアームによる掬い上げ動作を行うことを特徴とする[6]に記載のパン型造粒における大塊の処理方法。
[8] 前記パンの下側に造粒物の排出シュートを配置させるとともに、前記シュートの開口部に、相互に間隔を開けて配列させた複数の破砕刃を有する破砕器を配置させておき、
前記掬上げ治具によって掬い上げた前記大塊を前記破砕器上に移送してから、前記複数の破砕刃同士の間隙に、前記掬い上げ治具の前記複数の棒状体をそれぞれ挿入することによって、前記縦板を前記破砕刃に押しつけて前記大塊を破砕することを特徴とする[6]または[7]に記載のパン型造粒における大塊の処理方法。
[9] 前記粉体の造粒後に、前記掬上げ治具に代えて、前記ロボットアームの先端にバケット治具を装着して、前記パンに残留する造粒物を撤去することを特徴とする[6]乃至[8]の何れか一項に記載のパン型造粒における大塊の処理方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパン型造粒機用の大塊処理装置によれば、掬上げ治具をロボットアームの先端に取り付けて、パン型造粒機の運転中に作業者が関与することなく、自動的に大塊が集まり易いパン内の粉体の中間部に掬上げ治具を間欠的に挿入させて大塊を掬い上げさせるので、自動的に、かつ、効率的に大塊除去が可能となると共に掬い上げ治具への粉体の付着を抑制出来、その除去も容易となる。
また、本発明のパン型造粒機用の大塊処理装置によれば、掬上げ治具が、縦板から突出された複数の棒状体を有するフォーク状部材で構成されるので、大塊と共に掬い上げられた造粒物を棒状体の間隙から落下させることができ、これにより大塊のみを確実に掬い上げることができる。
更に、本発明のパン型造粒機用の大塊処理装置によれば、掬上げ位置を複数の箇所に設定し、各掬い上げ位置において掬い上げ動作が行われるので、造粒中に常に移動する大塊を複数回の掬い上げ動作によって確実に掬い上げて除去できる。
また、本発明のパン型造粒機用の大塊処理装置によれば、パンの排出部の下側に配置された造粒物の排出シュートの開口部に破砕器が備えられ、更に、この破砕器の破砕刃の各間隙に、掬い上げ治具の各棒状体が、破砕刃と縦板とが当接する位置まで挿入可能とされているので、破砕刃と縦板によって大塊を押しつぶして破砕させ、造粒物とともに排出シュートから排出させることができる。
また、本発明のパン型造粒機用の大塊処理装置によれば、粉体の造粒後に、パンに残留する造粒物を掬い上げるバケット治具が装着可能なので、パン型造粒機に残留する造粒物をロボットアームによって払い出すことができる。
【0012】
次に、本発明のパン型造粒における大塊の処理方法によれば、掬上げ治具をロボットアームの先端に取り付けて、掬上げ治具をパンに挿入して前記大塊を掬い上げるので、パン型造粒機の運転中に作業者が関与することなく、自動的に大塊を除去できる。また、ロボットアームの自在な動きによって、流動速度の遅いパン内の粉体の中間部に掬上げ治具を挿入させて大塊を掬い上げさせるので、掬上げ治具に過度な負荷が加わることがなく、掬い上げ治具の破損を防止できる。
更に、本発明のパン型造粒における大塊の処理方法によれば、掬上げ治具による掬上げ位置を複数の箇所に設定し、各掬い上げ位置において、順次、前記ロボットアームによる掬い上げ動作を行うので、造粒中に常に移動する大塊を複数回の掬い上げ動作によって確実に掬い上げて除去できる。
更にまた、本発明のパン型造粒における大塊の処理方法によれば、造粒物の排出シュートの開口部に配置した破砕器の複数の破砕刃の各間隙に、掬い上げ治具の各棒状体が、破砕刃と縦板とが当接する位置まで挿入し、破砕刃と縦板によって大塊を押しつぶして破砕させるので、破砕後の大塊を造粒物とともに排出シュートから排出できる。
また、本発明のパン型造粒における大塊の処理方法によれば、粉体の造粒後に、パンに残留する造粒物を掬い上げるバケット治具を装着して、パン型造粒機に残留する造粒物をロボットアームによって払い出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態であるパン型造粒機用の大塊処理装置の側面模式図である。
【図2】図2は、図1に示す大塊処理装置の正面模式図である。
【図3】図3は、図1に示す大塊処理装置の平面模式図である。
【図4】図4は、図1の大塊処理装置に備えられた掬上げ治具を示す図であって、(a)は正面模式図であり、(b)は平面模式図であり、(c)は側面模式図である。
【図5】図5は、図1の大塊処理装置に備えられた排出シュート及び破砕器を示す平面模式図である。
【図6】図6は、図1に示す大塊処理装置における大塊の掬い上げ動作を説明する側面模式図である。
【図7】図7は、図1に示す大塊処理装置における大塊の破砕動作を説明する側面模式図である。
【図8】図8は、図1の大塊処理装置に取り付け可能なバケット治具を示す図であって、(a)は平面模式図であり、(b)は側面模式図であり、(c)は正面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態のパン型造粒機用の大塊処理装置について、図面を参照して説明する。
図1〜図3に示すように、本実施形態の大塊処理装置1は、パン型造粒機21の造粒工程で発生した大塊を除去する装置であり、ロボットアーム2と、ロボットアーム2の先端に着脱自在に装着された掬い上げ治具3とから概略構成されている。また、大塊除去装置1には、パン型造粒機21の排出シュート22に配置された破砕器4が備えられており、ロボットアーム2の可動範囲にパン23と破砕器4とが配置されている。また、ロボットアーム2と掬い上げ治具3との間には、過負荷保護装置5を備えることが好ましい。
【0015】
パン型造粒装置21は、平底部23aの周囲にリム23bが形成されてなる皿状の部材であるパン23と、パン23に接続されて、モータ等の回転駆動部(図示せず)で回転する回転シャフト24と、回転シャフト24を支持する傾き台26と、傾き台26を支持する支持体27とから概略構成されている。図1〜図3に示すように、回転シャフト24にはモータ等の回転駆動部(図示せず)が接続されている。そして、図1〜図3に示すように、パン23は傾斜され、かつ回転可能な状態で傾き台26に支持されている。
【0016】
傾き台26は、支持体27に設けられて傾斜角度が変更可能とされている。これにより、パン23の傾斜角度が任意に変更可能とされている。また、パン23は、リム23bの高さが調節可能とされている。更に、パン23の回転速度は任意の速度に調整可能とされている。原料となる粉体を回転するパン23に連続投入することで、粉体が転動造粒されて造粒物になり、造粒物はパン23のリム23bからあふれ出て排出シュート22に落下する。粉体としては例えば鉄を含有する粉体を例示できる。また、粉体には造粒物成形に要するバインダを添加しておいてもよい。バインダとしては例えば水又は速硬セメントを例示できる。粉体の造粒時には、造粒物とともに大塊が生成する。
【0017】
パン23の下側(排出側)には、造粒物の排出シュート22が備えられている。また、排出シュート22の開口部22bの幅方向一端側には、破砕器4が備えられている。また、排出シュート22の排出口22cの下には、造粒物を次工程に搬送するベルトコンベア31が備えられている。
【0018】
大塊除去装置1を構成するロボットアーム2は、6軸型のロボットアームであり、基端側から先端側に向けて順に、旋回部、第1関節部、第2関節部、第1回転部、第3関節部及び第2回転部が備えられており、アームの先端が3軸に自在に可動可能とされ、動作指令に基づいて任意の動作をさせることが可能である。ロボットアームの軸数は6軸に限定されるものではなく、3軸以上であればよい。
また、このロボットアーム2は、パン23のリム23bが設けられて原料を造粒する底面と対向し、排出シュート22を挟んだ位置に設けられている。
【0019】
掬い上げ治具3は、過負荷保護装置5の先端(過負荷保護装置5を備えていない場合はロボットアームの先端)に、図4に示すように、ボルト等により着脱自在に取り付け可能な縦板3aと、縦板3aの一面3bから相互に離間して突出された複数の棒状体3cとを備えたフォーク状部材である。この複数の棒状体3cは、所定の間隔dを開けて取り付けられている。また、複数の棒状体3cの縦板3aへの取り付け位置は、縦板3aの幅方向中央付近から両側になるに従って順次上方、即ち、幅方向中央が両側より凹になっている。更に、各棒状体3cは中間部から上方に屈曲(屈曲角度θ:5〜45°)している。これにより、掬い上げた大塊を安定して保持できるようになっている。
【0020】
棒状体3c同士の間隔dは、掬い上げた大塊を通過させず、造粒物を通過させる程度の間隔にすることが好ましい。より具体的には、製品として許容される造粒物の粒径の上限をD1とし、除去すべき大塊の最小粒径をD2としたとき、間隔dはD1超、D2以下の範囲とすることが好ましい。なお、大塊とは、パン型造粒機で粉体を造粒する際に生じたものであって、造粒物の粒径の許容範囲よりも大きな粒径を有する造粒粉である。許容範囲よりも大きな粒径とは、後段の工程において造粒物の搬送や処理に支障をきたす虞がある粒径を言う。
【0021】
次に、前記過負荷保護装置5は、ロボットアーム2の先部に設けられている。そして、掬い上げ治具3に過負荷が印加されると、印加された方向(例えば下向)に負荷保護装置5が折れ曲って、過負荷がロボットアーム2に伝達するのを抑制、又は防止する構造となっている。尚、この過負荷保護装置5は公知のシャーピン式、マグネット式、バネ式等が適用出来る。
【0022】
次に、図5に示すように、破砕器4は、造粒物の排出シュート22の開口部22bの端部に備えられている。この破砕器4は、相互に間隔を開けて配列された複数の破砕刃4a(横断面形状は、上部が山形状でも良いが、これに限る事無く四角形のものでも良い)から構成されている。破砕刃4a同士は所定の間隔(前記棒状体3cの間隔と同程度)を空けて離間されており、これら破砕刃4a同士の間隙にそれぞれ、掬い上げ治具3の棒状体3cがそれぞれ挿入可能となっている。破砕刃4a同士の間隙への棒状体3cの挿入は、ロボットアーム2を稼働することにより行う。
【0023】
次に、本実施形態の大塊処理装置の動作を説明する。
図2及び図3に示すように、パン23に連続的に各種の粉体を投入すると、回転するパン23の下部に粉体Mが滞留し、パン23の回転に伴う転動作用を受けて粉体Mが造粒される。パン23に対する粉体Mの投入量がある一定の分量を超えると、矢印Hに示すように、造粒物がリム23bを超えてパン23の外に排出され、排出シュート22に落下する。造粒物の粒径は、粉体Mの物性、パン3内の粉体Mへの散水量、パン23の回転数、傾斜角度またはリム23bの高さ等の条件を調整することによって制御され、これらの条件を一定に保つことで、一定の粒度分布を持った造粒物が連続して得られる。
【0024】
このとき、図2及び図3に示す様に、パン23内には造粒物とともに大塊Aが生成することがある。この発生した大塊Aは、パン23の中間部、即ち、パン23内の粉体がパンの回転方向に移動する部分とパンの回転方向とは逆方向に移動する部分の境界近傍で、粉体の移動速度が最も遅くなっている位置(図2の符号Bで示す位置)で、しかも、転動造粒中の粉体Mの表層部付近を流動する。そこで、この流動している大塊Aの掬い上げ動作を行う。掬い上げ動作は、予め設定した動作指令に基づきロボットアーム2を作動させて、図3の矢印Xに示すように、掬上げ治具3を移動して、初期位置からパン23内の粉体M内に挿入してパン23内を更に移動させる。この際、掬上げ治具3をパン23内の粉体M内に挿入する深さは、表層から300mmの範囲である。
【0025】
そして、図6に示すように、転動造粒中の粉体Mの表層部付近にある大塊Aを掬い上げる。大塊Aとともに造粒中の造粒物も掬い上げられるが、大塊よりも小さな造粒物は、棒状体3cの隙間から直ちに落下してパン23に戻される。
尚、掬い上げ動作は、図3の矢印X方向に掬上げ治具3を移動したが、これに代えて、矢印X方向とは逆方向から行うことも可能である。これは、前記の様にパン23の中間部は粉体の移動速度も遅いことから、矢印X方向とは逆方向から行っても、前記掬い上げ治具3には大きな負荷が掛ることはないためである。
【0026】
図2の一点鎖線で示す矢印は、回転中のパン23内における造粒物Mの流れ方向を示している。この大塊Aが滞留している前記流動粉体の中心部に於いては、パン23の回転方向(矢印C方向)と逆の反回転方向に流動している部分が存在することから、前記掬い上げは、掬上げ治具3をパン23の回転方向に挿入して移動する場合も、回転方向とは逆方向に挿入して移動する場合も、掬い上げ治具3及びロボットアーム2に加わる負荷は同じ条件となることから、掬い上げ治具3の挿入方向は前記矢印方向に限ることなく、矢印とは逆方向からでも良い。
また、この際、掬い上げ治具3の移動速度は、パン23の周速(例えば2〜3m/秒)の1/4〜1.0倍程度にすることが、掬い上げ治具3に加わる負荷が少なくて好ましい。
【0027】
また、大塊Aは、転動造粒中の粉体Mの表層に流動しているため、その挙動が安定することがなく常に位置が変動している。従って、掬い上げ治具3によって大塊を掬い上げる際には、前記パン23の左下半分(パンの中央をXY平面座標の原点とした場合の第3象限の領域)で流動している粉体の中央部において、掬い上げ治具3による掬い上げ位置を複数の箇所に設定し、各掬い上げ位置において、順次、前記ロボットアームによる掬い上げ動作を行うことが好ましい。これにより、1箇所だけでなく複数箇所で掬い上げ動作を行うので、位置が不定な大塊Aを確実に掬い上げることが可能になる。
【0028】
なお、掬い上げ動作は、所定の間隔をあけて繰り返し自動で行うとよい。また、掬い上げ位置を複数箇所に設定する場合は、各箇所における掬い上げ動作を順次連続して行うとよい。また、掬い上げ位置は、ロボットアーム2を制御する電子計算機等に学習させることが可能であり、学習させながら完全自動で運転させることができる。
【0029】
また、造粒中の粉体Mは常に流動しているので、掬い上げ動作中に、粉体の押圧力が予期しない過負荷となって掬い上げ治具3に印加される場合がある。この場合は、過負荷保護装置5が働き、ロボットアーム21に過負荷がかからない様にして、ロボットアーム2を保護すると共にロボットアーム21を待避させる。
【0030】
次に、掬い上げられた大塊は、破砕器4まで運んで破砕し、破砕物を造粒物とともに排出シュート22から排出する。この破砕動作について説明する。
まず、掬上げ治具3によって掬い上げた大塊Aを破砕器4上に移送する。そして、掬い上げ治具3の棒状体3cの先端を破砕器4の上部に接触させて掬い上げ治具3によって搬送した大塊Aを破砕器4の上に載せる。
【0031】
次に、ロボットアーム2の各関節部を動かして、ロボットアーム2の先端(掬い上げ治具3)を破砕器4に対して垂直に立てる。この動作によって、掬い上げ治具3によって移送された大塊Aの全部が破砕器4の上に載せられる。このとき、掬い上げ治具3の縦板3aは水平姿勢になる。
【0032】
次に、図7に示すように、ロボットアーム2の各関節部を動かして、掬い上げ治具3の棒状体3cを破砕刃4aの間に挿入しつつ、水平姿勢の縦板3aを破砕器4に向けて押し下げる。これにより、破砕器4の上に載せられた大塊Aは、縦板3aによって破砕器4の破砕刃4aに押しつけられて破砕される。破砕された破砕物は、破砕器4の下側から排出され、更に排出シュート22の排出口22cからベルトコンベア31に排出される。
【0033】
そして、前記とは逆に掬い上げ治具3の棒状体3cの先端が破砕器4の破砕刃4aの取り付け方向と平行にロボットアーム2の各関節部を動かして棒状体3cを抜き取る。これにより、破砕刃4aの間に詰まった破砕物を棒状体によって掻き出して落下させる。そして、掬い上げ治具3はロボットアーム2によって待機位置に移動されて、次の掬い上げ動作を行うまで待機する。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の大塊処理装置1及び大塊の除去方法によれば、掬上げ治具3をロボットアーム2の先端に取り付けて、パン型造粒機21の運転中に作業者が関与することなく、自動的に大塊を除去できる。また、このロボットアーム2の自在な動きによって、パン23の回転方向に沿って掬上げ治具3をパン23に挿入させて大塊を掬い上げさせるので、掬上げ治具3に過度な負荷が加わることがなく、掬い上げ治具3の破損を防止できる。
【0035】
また、掬上げ治具3が、縦板3aから突出された複数の棒状体3cを有するフォーク状部材なので、大塊と共に掬い上げられた造粒物を棒状体3cの間隙から落下させることができ、これにより大塊のみを掬い上げることができる。また、掬い上げた大塊を縦板3aによって安定して保持できる。
【0036】
更に、掬上げ位置を複数の箇所に設定し、各掬い上げ位置において掬い上げ動作が行われるので、造粒中に常に移動する大塊を複数回の掬い上げ動作によって確実に掬い上げて除去できる。
【0037】
また、パンの排出側に配置された造粒物の排出シュート22の開口部22aに破砕器4が備えられて、破砕器4の複数の破砕刃4aの各間隙に、掬い上げ治具3の各棒状体3cが、破砕刃4aと縦板3aとが当接する位置まで挿入可能とされているので、破砕刃4aと縦板3aによって大塊を押しつぶして適度の粒度に破砕させた後、造粒物とともに排出シュート22から排出させることができる。
【0038】
更にまた、ロボットアーム2と掬上げ治具3の間に過負荷保護装置5が備えられ、パン23に挿入された掬い上げ治具3に過負荷が印加された場合に、過負荷保護装置5が作動するので、掬上げ治具3及びロボットアーム2の破損を防止できる。
【0039】
本実施形態の大塊除去装置1には、掬い上げ治具3に代えて、図8に示すバケット治具33を装着することが可能である。このバケット治具33は、掬い上げ治具3にスコップ状のバケットアタッチメント32を装着してなるものである。掬い上げ治具3及びバケット治具33は、ロボットアーム2に対して着脱自在かつ交換可能である。
【0040】
造粒作業が完了、即ち、パン23の回転を停止した後に、掬い上げ治具3をバケット治具33に付加あるいは交換して、傾斜しているパン23の低部(図2で、パン23内の手前側)をリム23bに沿ってロボットアーム2をパン23が回転していた方向(図2で右側から左側の方向)または逆方向(図2で左側から右側の方向)に移動してパン23内に残る造粒物をバケット治具33で掬い上げる。
即ち、パン23の回転を停止すると、この残留造粒物は自重により該パン23の最低部(図2で、パン23内の手前側の矢印Dで示す点線で囲まれた位置)に滑落して集積することから、この集積した残留造粒物をバケット治具33によって効率的に払い出すことができる。
【符号の説明】
【0041】
1…大塊処理装置、2…ロボットアーム、3a…縦板、3c…棒状体、3…掬上げ治具、4…破砕器、4a…破砕刃、5…過負荷保護装置、21…パン型造粒機、22…排出シュート、22a…開口部、23…パン、33…バケット治具、M…粉体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転して粉体を造粒するパンが備えられたパン型造粒機用の大塊処理装置であって、
大塊を掬い上げる掬上げ治具と、
先端に前記掬上げ治具が着脱自在に取り付けられ、前記パンの回転により移動している粉体の中間部に間欠的に前記掬上げ治具を前記パンの回転方向に、または、回転方向とは逆方向に挿入させて大塊を掬い上げさせるロボットアームと、
を具備してなることを特徴とするパン型造粒機用の大塊処理装置。
【請求項2】
前記掬上げ治具による掬上げ位置が複数の箇所に設定され、各掬い上げ位置において、順次、前記ロボットアームによる掬い上げ動作を行うことを特徴とする請求項1に記載のパン型造粒機用の大塊処理装置。
【請求項3】
前記掬上げ治具は、縦板と、前記縦板から相互に離間して突出された複数の棒状体とを備えたフォーク状部材であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパン型造粒機用の大塊処理装置。
【請求項4】
前記パンの排出部の下側に配置された造粒物の排出シュートの開口部に、相互に間隔を開けて配列された複数の破砕刃を有する破砕器が備えられ、
前記複数の破砕刃の各間隙に、前記掬い上げ治具の前記の各棒状体が、前記破砕刃と前記縦板とが当接する位置まで挿入可能とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のパン型造粒機用の大塊処理装置。
【請求項5】
前記粉体の造粒後に、前記掬上げ治具に代えて、前記パンに残留する造粒物を掬い上げるバケット治具が前記ロボットアームの先端に装着されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のパン型造粒機用の大塊処理装置。
【請求項6】
回転するパンによって粉体を造粒する際に生じる大塊を処理する方法であって、
先端に大塊を掬い上げる掬上げ治具が着脱自在に取り付けられたロボットアームによって、前記掬上げ治具を、前記パンの回転により移動している粉体の中間部に間欠的に、前記パンの回転方向に、または、回転方向とは逆方向に挿入して前記大塊を掬い上げることを特徴とするパン型造粒における大塊の処理方法。
【請求項7】
前記掬上げ治具による掬上げ位置を複数の箇所に設定し、各掬い上げ位置において、順次、前記ロボットアームによる掬い上げ動作を行うことを特徴とする請求項6に記載のパン型造粒における大塊の処理方法。
【請求項8】
前記パンの下側に造粒物の排出シュートを配置させるとともに、前記シュートの開口部に、相互に間隔を開けて配列させた複数の破砕刃を有する破砕器を配置させておき、
前記掬上げ治具によって掬い上げた前記大塊を前記破砕器上に移送してから、前記複数の破砕刃同士の間隙に、前記掬い上げ治具の前記複数の棒状体をそれぞれ挿入することによって、前記縦板を前記破砕刃に押しつけて前記大塊を破砕することを特徴とする請求項6または請求項7に記載のパン型造粒における大塊の処理方法。
【請求項9】
前記粉体の造粒後に、前記掬上げ治具に代えて、前記ロボットアームの先端にバケット治具を装着して、前記パンに残留する造粒物を撤去することを特徴とする請求項6乃至請求項8の何れか一項に記載のパン型造粒における大塊の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−91009(P2013−91009A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233114(P2011−233114)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【出願人】(391063455)新日本海重工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】